1 ご 挨 拶
ご 挨 拶
会長 引田 弘道
理事長 石上 和敬
2018年5月26日に龍谷大学にて開催されたパーリ学仏教文化学会総会に おいて,引田弘道が新たに会長に就任することが承認されました。また,会 則に従い,本部が東部地区に移ることに伴い,新理事長として石上和敬が選 出されました。これにより,会長と理事長とを中心に,新たに就任いただい た新執行部体制のもと,学会が運営されていくことになりました。会員の皆 様のご指導,ご協力をどうかよろしくお願い申し上げます。 また,これまで3年間にわたり,会長として本学会の発展に多大なるご尽 力をされた奥田清明(聖應)前会長に深甚なる謝意を捧げたいと存じます。 さて,本学会を創設され,長く会長職を務められた前田惠學先生は,学会 名称に含まれる「仏教文化学」について次のようなお考えを述べておられま す。 「仏教文化学は,仏教教理の研究をその中枢に置きつつ,さらに広く,そ の周辺に及ぶもので,仏教を最も広い意味において考える学問である。仏教 文化学は仏教が浸透して根を張っている,あらゆる分野にわたって掘り起こ し,仏教をその全き姿において浮き彫りにして,全体像を明らかにするもの である」(「創刊の辞」『パーリ学仏教文化学』創刊号,1988) また,前田先生は,学会創設10年の節目にあたり,それまで本学会の目 指した方向性をさらに発展させるべく,特に「現代仏教の研究」の重要性を 強調されています。「現代仏教の研究」とは単に現代の仏教を研究するとい うことに留まらず,次のような意味を持つと言われます。 「現代仏教の研究によって,過去の時代の仏教研究についても,再検討の2 パーリ学仏教文化学 必要が起きるであろう。例えば,中世の人々にとっては,中世の仏教がその まま現代の仏教であったはずである。近世の人々にとっては近世仏教が実は 現代仏教であったはずである。そうした視点から見て再検討が促されること になるであろう。そして我々の知っている古代や中世・近世の仏教も単なる 過去のものではなく,現代仏教の中の問題として,とらえ直される可能性が 生まれる。古代・中世・近世・近代の仏教も,現代仏教の中に層を成して生 きている」(「巻頭言」『パーリ学仏教文化学』第10号,1997) 前田先生の本学会に対するこのようなご提言を再読するとき,前田先生の 文字通りの先見の明に感嘆させられると同時,本学会の目指すべき方向性も 自ずと明らかになってくるように思います。 学会創設時に比して,近年,東南アジア諸国の経済発展に起因する当該地 域との各種交流の活発化などもあり,パーリ聖典に基づく仏教の存在が国内 にも 広く周知されるようになってきたと感じられます。このようなパーリ学 仏教文化学に関連する周辺環境の変化に鋭敏に対応し,その波を巧みに捉え ていくことも,本学会発展のために心掛けなければならない一つの課題かと 愚考します。そして,そのことが,これまで本学会が指向してきた斯学の更 なる発展にいくばくかの寄与を成すことでもあると期待します。 会員の皆様の一層のお力添えを賜りたく,重ねてのお願いを申し上げ,ご 挨拶とさせていただきます。