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児童養護施設職員の心身の健康に関する心理学的研究

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-89 296

-児童養護施設職員の心身の健康に関する心理学的研究

○江草 信子、岩佐 和典 就実大学大学院 教育学研究科 教育臨床心理学コース 【問題と目的】 児童養護施設は何らかの理由で保護者と生活を共に することの難しい児童が利用する入所施設である。児 童養護施設では様々な職種が協働しており,なかには 保育士や児童指導員といった対人援助職も含まれてい る。これら職員は,職務特有の要因を含む多くのスト レスに日々晒されている。先行研究では,対応困難な 子どもとのかかわりが職務特有のストレス源となるこ と(森本ら,2007),共感疲労による代理性トラウマ (藤岡,2012)等のストレス反応を呈しやすいことが 明らかになっている。加えて,児童養護施設職員の労 働環境は「週40時間勤務,職員配置基準の実現は著し く低いレベル」(岡本,2000)と指摘されており,充 実したものとは言い難い。全国児童養護施設協議会 が,心身の健康や働き方を改善し職員のモチベーショ ンを向上させる必要性を訴えてはいるものの,実際に はその対応に苦慮する声も挙がっている。こうした状 況においては,まず児童養護職員の心身の健康や,職 務の遂行状況に関する実態を示すデータが必要だと言 える。しかし,現状ではこの点を詳しく調査した研究 は存在しない。そこで本研究では,児童養護職員を対 象とした実態調査を行うこととした。その際,同じく ストレスフルな職務を伴うことが指摘されている教員 や,他の対人援助職(看護・介護職)との比較を通じ て,児童養護施設職員が抱える心身の健康問題につい て明確化することを目指す。 【方法】 《対象》中国,四国,中部地方の 4 県の児童養護施設 (15か所,452人)に勤務する職員を対象に,質問紙調 査を行った。このうち14か所315人から回答を得た。 そして子どもと関わる時間を 5 時間未満と自己報告し た 人 を 除 く244名( 平 均 年 齢37.1歳, 有 効 回 答 率 54.0%)を分析対象とした。なお研究実施に際して は,就実大学研究倫理安全委員会による承認を受け た。《手続き》研究の質問紙調査依頼を X 年 2 〜 3 月 に行い,同 5 月中旬までに,郵送もしくは直接受け取 る形で回収を行った。その際,各施設長に対してし, 各々の施設で配布・実施をするよう依頼した。調査協 力者には本研究に関するインフォームド・コンセント の資料を提供し,それを読んだうえで参加に同意でき た場合にのみ回答するよう依頼した。《尺度》( 1 ) 新 職業性ストレス簡易調査票(42尺度80項目;川上ら, 2012)身体愁訴と心身のストレス反応を測る29項目か らなる尺度の内,心身の健康を測る18項目への回答を 求めた。( 2 ) 健康と労働パフォーマンスに関する質 問紙短縮版日本語版(WHO-HPQ;宮木,2013)労働生 産性や健康リスクを測る 7 つの項目からなる尺度の 内,疾病就労を測るプレゼンティーイズムに関する 3 項目への回答を求めた。《分析》児童養護施設職員の 心身の健康を,他の対人援助職者の健康度と比較する ため, 新職業性ストレス簡易調査票のうち,「活気」 「イライラ感」「疲労感」「不安感」「抑うつ感」で構成 される「心身の健康」項目を用いた。本調査では( 0: ほとんどなかった〜 3 :ほとんどいつもあった)で回 答を得た。欠損値は,多重代入法を用いて,代入した。 本研究で調査を行った児童養護施設職員のデータを他 職種と比較するために小学校,中学校,高校教師などの 「教育・学習支援事業」の全国データ(川上ら,2012) と,医師,看護師,福祉の仕事をする人含む「医療・ 福祉」の全国データ(川上ら,2012)のなかで報告さ れた平均値と標準偏差を利用した。そして,職種(児 童養護施設職員,教育・学習支援事業従事者,医療・ 福祉従事者)を独立変数とした 1 要因 3 水準の被験者 間分散分析を行った。なお,他職種の全国データが男 女別で報告されていたため,これを統合して分析に用 いた。分析には, HADと R を用いた。 【結果と考察】 分散分析の結果(Table 1),心身の健康について, 職 種 に よ る 効 果 は 有 意 で な か っ た(F(2,527) = 3.721, p = 0.025)。加えて,その下位項目である「イ ライラ感」「疲労感」「抑うつ感」「不安感」においても, 同様に職種による効果は認められなかった。ここか ら,児童養護施設職員の心身の健康は,対人援助職者 の中でも職場の人間関係や職務上のストレスが高く, 心身の健康を崩しやすいとされる他職種と同じ水準に あることが示された。また,対応が困難な子どもたち と日常的に接し,被虐待児らの指導で,共感疲労にさ らされているもののイライラ感,疲労感,抑うつ感, 不 安 感 も 同 じ 水 準 で あ る と 言 え る だ ろ う。 小 堀 (2005)は対人援助職者の職務の特徴として,労働環境 や個人特性等の調整変数によって正にも負にも転じう ることを指摘している。人員配置の問題や地域小規模 施設への制度的移行,被虐待児の相対的な増加も進む 中,「心身の健康」を良い状態に保つためには,子ど もたちの問題などを職員間で情報共有すること(山 地・宮本,2012)や,対人援助職者への支援の必要性

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-89 297 -(藤岡,2004,2005)指摘されており,今後はこうし た調整変数を考慮した研究が必要である。次に,職務 遂行の指標である絶対的プレゼンティーズムの平均は 50.6(SD=19.8), 相対的プレゼンティーズムは0.89 (SD=0.37)だった。プレゼンティーズムについては, 絶対的プレゼンティーズムが40を下回り, 相対的プ レゼンティーズムが0.8を下回る場合は将来, 精神疾 患 に よ る 欠 勤 に つ な が る こ と が 指 摘 さ れ て お り (Suzuki et al., 2014),これを基準とすれば,児童 養護施設職員は平均的に見てこの水準には至っていな いことが示唆される。今後は児童養護施設職員の職務 遂行の水準に影響する要因についても調査を行う必要 がある。 【主な引用文献】 川 上 憲 人・ 下 光 輝 一・ 原 谷 隆 史・ 堤 明 純・ 島 津 明 人・吉川徹 (2012). 労働者のメンタルヘルス不調の 第一次予防の浸透手法に関する調査研究.平成23年度 厚生労働科学研究費労働安全総合研究事業. 川上憲 人・下光輝一・堤明純・島津明人・原谷隆史・吉川 徹・小田切優子・井上彰大臣 (2012). 新職業性スト レス簡易調査票の開発 3 新職業性ストレス簡易調査票 尺度の標準化のための全国調査.Suzuki T, Miyaki K, Sasaki Y, Song Y, Tsutsumi A, Kawakami N, et al. (2 0 1 4) O p t i m a l C u t o f f V a l u e s o f W H O - H P Q P r e s e n t e e i s m S c o r e s b y R O C A n a l y s i s f o r Preventing Mental Sickness Absence in Japanese Prospective Cohort. PLoS ONE 9(10): e111191. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0111191

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