本レポートは、特定の金融商品の販売等を目的とした資料ではありません。 経済情勢、市況などの投資環境に関する参考情報としてご活用ください。
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エコノミスト
執筆者
渡辺 浩志
マクロ経済展望
GDPギャップ(需給ギャップ)
足下、米国・ユーロ圏・日本の実質GDP成長率はいずれも各国の潜在成長率を上回っています。ただし、そのペースは過去
に比べると緩やかで、過熱感のない適度なものとなっています(図表1)。
堅調な世界経済の背景には各国の金融政策の効果があ
ります。各国中銀が緩和的な金融政策を行ってきたことで、
住宅・生産設備といった実物資産への投資や、ITデジタル
製品などの耐久財需要が刺激されてきました。また、これ
が雇用や家計所得、個人消費の増加へ繋がる内需の好
循環を生み、緩やかな景気回復が長期化しています。こう
した内需主導の回復は米国にとどまりません。ユーロ圏や
日本の経済は回復が始まった当初こそ自国通貨安による
外需の増加が牽引役でしたが、現在は個人消費や設備投
資が経済成長を主導しつつあります。
潜在成長率を上回る経済成長はGDPギャップを縮小させ、賃金・物価を押し上げます。既に各国の労働市場は完全雇用に
近付いており、賃金・物価にも動意がみられます(図表2)。また、こうした中で米連邦準備制度(FRB)や欧州中銀(ECB)は金融
政策の正常化へ歩を進めています。 この10月からはFRBが保有資産の圧縮を、ECBは資産買入縮小の議論を始めました。
一方、日本では物価の動きはまだ弱く、日本銀行は現行の金融緩和策を当面維持する公算です。また、10月の衆院選での
安倍首相の勝利は、金融緩和継続のほか黒田日銀総裁再任の可能性をも高めました。金融政策正常化へ向けた序列では
米国、ユーロ圏、日本の順が明確化してきており、この先、通貨の強さもドル、ユーロ、円の順がはっきりしてくることでしょう。
図表1:米・欧・日の成長速度 (実質GDP成長率-潜在成長率) 各国・地域とも実力以上だが過熱感はない 図表2:米国の賃金、物価の動き GDPギャップの縮小が賃金・物価上昇に波及する局面へ 注:潜在成長率の推計は、米国はCBO、日本は内閣府、ユーロ圏はBloomberg 出所:各国統計、Bloomberg、SonyFH 注:実質金利は10年債利回り-期待インフレ率 出所:CBO、S&P、SonyFHなお、各国とも金融政策正常化の進め方は慎重です。物
価上昇がまだ十分ではないこと、ユーロ圏では期待先行で
進んでしまったユーロ高の経済・物価情勢への影響が懸
念されていることなどが背景です。また、長期的な視点でも、
高齢化に伴う生産性の低下などが危惧されています。FRB
は9月の連邦公開市場委員会で政策金利の長期見通しを
2.75%としました。これは4%前後で推移する米国の名目
GDP成長率を大きく下回るものです。このような緩和的な
金融政策が続くうちは世界経済の拡大が腰折れするリスク
は低いでしょう。
世界経済の緩やかな回復は持続、米・ユーロ圏は金融政策正常化へ前進
一国経済の需要と供給のバランスを表す指標です。需要を表す実質GDPと供給力を表す潜在GDPの水準にもとづいて、
GDPギャップ(%)=(実質GDP-潜在GDP)/潜在GDP×100で計算されます。GDPギャップがプラスであれば需要が供給
を上回っており、生産設備や労働力が不足していることを意味します。こうした状況では賃金や物価が上昇しやすく、「物価
の安定」等を責務とする中央銀行の金融政策は引き締め方向に向かいやすくなります。
-2.5 -1.5 -0.5 0.5 1.5 2.5 11 12 13 14 15 16 17 18 19 ユーロ圏 日本 米国 (%pt) (年) 当社予想 潜在成長率以上 好景気 潜在成長率以下 不景気 過熱感はない 0.6 0.9 1.3 1.6 2.0 2.3 2.6 3.0 3.3 3.7 -9.0 -6.0 -3.0 0.0 3.0 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 GDPギャップ(1年先行、左軸) 平均時給(右軸) コアCPI(右軸) (%) (年) (前年比、%) 当社予想為替相場展望
為替アナリスト
執筆者
石川 久美子
ドル円相場は北朝鮮が9月9日の建国記念日に、懸念されていたミサイル発射を行わなかったことを背景に反発。その後は
金融市場全般的にリスクオンムードに切り替わるなかで上昇しました。20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が市場予想
通り10月からのバランスシート縮小を発表。また、年内あと1回の利上げを示唆しました。市場では、事前にインフレ率の伸び
が弱いことで年内の追加利上げは難しいのではとの見方が広がっていたため、反動でドル高が進行。米国の財政改革が進
むのでは、との見方なども追い風となり、9月27日には一時113円台を回復しました。しかし、その後は上値が重い状態。北朝
鮮の動向に対する警戒感が引き続きドルの重しとなったほか、米国の物価関連指標の強い伸びがなかなか確認できないな
かで、本当にFOMCの見通しどおり「年内にあと1回、2018年中に3回の利上げ」が実現できるのか、懐疑的な見方が広がった
ことから、膠着状態となりました。目下のところ、米国の利上げペースが市場の最大の関心事であることは変わりありません。
複数の物価関連指標が力強い上昇を見せないことには、この膠着状態が続く可能性があります。また、引き続き北朝鮮情勢
やトランプ政権の先行きの安定性などについてもドル円にとっては波乱要因となるでしょう。
当面の注目ポイント
米経済指標が好調で、12月利上げや来年3回の利上げが可能かどうか(利上げの可能性UPならドル高要因に)
北朝鮮と米国の関係が悪化し、直接の武力衝突に至らないかどうか(リスクが意識されれば円高要因に)
米国の税制改革法案の年内成立に向けて、順調に話し合いが進んでいるか(混迷していればドル安要因に)
米トランプ政権の運営がうまくいっているかどうか(政権要人に辞任が出るなど、問題が浮上するとドルにはマイナス)
日本の金融政策が緩和的な状態を維持しているか
材料が一巡し、ドル円は膠着状態に
出所:Bloomberg、SonyFH *執筆日:2017年10月25日107
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109
110
111
112
113
114
115
2017/08/25
2017/9/8
2017/9/22
2017/10/6
2017/10/20
(円)
北朝鮮が9/9の建国記念日に警戒されて
いたミサイルを発射せず、楽観ムードへ
8/29
北朝鮮が中距離弾道
ミサイル「火星12」を発
射し、日本上空を通過
10/6
米国の9月雇用統計に
おいて平均時給、失業
率が良好な結果に
10/13
米国の9月消費者物価指数(CPI)
が予想を下回る弱い結果に
9/27
トランプ米大統領がこの日
発表予定の税制改革案へ
の期待が高まる
金融・経済見通し
経済見通し
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
実質GDP
3.1
2.5
2.4
2.2
2.2
2.4
コアPCEデフレータ
1.5
1.4
1.6
1.7
1.5
1.8
実質GDP
2.5
1.2
1.4
1.4
1.5
1.4
コアCPI
0.4
0.6
0.7
0.8
0.5
0.8
実質GDP
2.6
2.3
2.1
2.0
2.2
2.0
CPI
1.5
1.4
1.6
1.6
1.6
1.7
実質GDP
6.9
6.8
6.5
6.4
6.8
6.3
CPI
1.4
1.6
1.9
2.2
1.6
2.2
注: 実質GDPは、米国・日本・ユーロ圏は前期比年率、中国は前年比。物価は前年比
金利見通し
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
政策金利
1.00~1.25 1.00~1.25 1.25~1.50 1.25~1.50 1.25~1.50 2.00~2.25
10年債利回り
2.30
2.33
2.40
2.50
2.40
2.75
政策金利
-0.10
-0.10
-0.10
-0.10
-0.10
-0.10
10年債利回り
0.09
0.07
0.07
0.10
0.07
0.20
政策金利
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
独10年債利回り
0.46
0.46
0.6
0.7
0.6
0.89
中国
政策金利
4.35
4.35
4.35
4.35
4.35
4.35
為替見通し
4-6月期
7-9月期
10-12月期
1-3月期
米ドル
ドル円
112
113
115
118
115
120
ユーロ円
127
133
135
136
135
132
ユーロドル
1.13
1.18
1.17
1.15
1.17
1.10
ポンド円
142
151
152
153
152
142
ポンドドル
1.27
1.34
1.32
1.30
1.32
1.18
豪ドル円
82
88
89
90
89
88
豪ドル米ドル
0.73
0.78
0.77
0.76
0.77
0.73
注: 全て期末値
2018年
2017年
2018年
2017年
中国
ユーロ圏
日本
米国
2018年
2017年
(%)
ユーロ
豪ドル
ポンド
2017年
2018年
(%)
2017年
日本
米国
注: 政策金利は、米国がFF金利、日本が政策金利残高への適用金利、ユーロ圏は資金供給オペ金利、中国は貸出基準金利。
ユーロ圏
2018年
2018年
2017年
ソニーフィナンシャルホールディングス
アナリストの紹介
尾河 眞樹(おがわ まき)
ソニーフィナンシャルホールディングス
執行役員 兼 金融市場調査部長 チーフアナリスト
ファースト・シカゴ銀行、JPモルガン証券などの為替ディーラーを経て、ソニー財務部にて為替リスクヘッジと市場 調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市 場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。2016年8月より現職。 テレビ東京「Newsモーニングサ テライト」、日経CNBCなどにレギュラー出演し、金融市場の解説を行っている。著書に『為替がわかればビジネス が変わる(2014年日経BP社)』、『富裕層に学ぶ外貨投資術(2015年日経新聞出版社)』、『〈新版〉本当にわかる 為替相場(2016年日本実業出版社)』などがある。菅野 雅明(かんの まさあき)
ソニーフィナンシャルホールディングス
シニアフェロー チーフエコノミスト
1974年日本銀行に入行後、秘書室兼政策委員会調査役、ロンドン事務所次長、調査統計局経済統計課長・同参 事などの役職を歴任。日本経済研究センター主任研究員(日本銀行より出向)を経て、1999年JPモルガン証券入 社、チーフエコノミスト・経済調査部長・マネジングディレクターとして日本の金融経済分析・予測を担当。2017年4 月より現職。総務省「統計審議会」委員、財務省「関税・外国為替等審議会」専門委員、内閣府「経済財政諮問会 議グローバル化改革専門調査会、金融・資本市場ワーキンググループ」メンバー、内閣官房「公的・準公的資金 の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」メンバー、厚生労働省「年金積立金の管理運用に係る法 人のガバナンスの在り方検討作業班」専門委員などを歴任。日本経済新聞「十字路」「経済教室」、日経QUICK 「QUICKエコノミスト情報」、東洋経済「経済を見る眼」「論点」、NTT出版「危機の日本経済」など執筆多数。テレビ 東京「Newsモーニングサテライト」レギュラーコメンテーター。1974年東京大学経済学部卒、1979年シカゴ大学大 学院経済学修士号取得。渡辺 浩志(わたなべ ひろし)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部 エコノミスト
1999年に大和総研に入社し、経済調査部にてエコノミストとしてのキャリアをスタート。2006年~2008年は内閣府 政策統括官室(経済財政分析・総括担当)へ出向し、『経済財政白書』等の執筆を行う。2011年からはSMBC日興 証券金融経済調査部および株式調査部にて機関投資家向けの経済分析・情報発信に従事。2017年1月より現職。 内外のマクロ経済についての調査・分析業務を担当。ロジカルかつデータの裏付けを重視した分析を行っている。石川 久美子(いしかわ くみこ)
ソニーフィナンシャルホールディングス
金融市場調査部 為替アナリスト
商品先物専門紙での貴金属および外国為替担当の編集記者を経て、2009年4月に外為どっとコムに入社し、外 為どっとコム総合研究所の立ち上げに参画。同年6月から研究員として、外国為替相場について調査・分析、レ ポートや書籍、ブログ、Twitterなどの執筆、セミナー講師、テレビやラジオなどのコメンテーターとして活動。2016 年11月より現職。外国為替市場の調査・分析業務を担当。ソニーフィナンシャルホールディングスの公式ホームページでは、様々なマーケットレポートをご用意しております。ぜひご覧ください。
http://www.sonyfh.co.jp/ja/financial_info/market_report/
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