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大学生の対人恐怖心性に対する社会的スキルと親和動機の関連

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-88 472

-大学生の対人恐怖心性に対する社会的スキルと親和動機の関連

○杉山 智風1)、小関 俊祐2) 1 )桜美林大学大学院心理学研究科、 2 )桜美林大学心理・教育学系 【問題と目的】 青年期における友人関係は,精神的健康や適応,あ るいは学業達成と密接に関連することが示されている (Hartup & Stevens,1997;Ryan,2000)。しかしなが ら,大学生において仲間集団から離れようとしたり対 人関係の希薄さを指摘する声もある(岡田,1993;坂 本・鳴沢,2001;松下・吉田,2007;ほか)。現代青 年の友人関係の希薄化の一因として,対人恐怖心性の 高まりが考えられる。対人恐怖心性が高まる要因の一 つとして,社会的スキルの欠如がある。Arkowitzら (1978)による「社会的スキル欠如仮説」では,対人 恐怖心性の上位概念である対人不安の発生・増大の原 因は,社会的スキルの欠如によるものと述べられてい る。Leary(1983)によると,社会的スキルが低いとい う自己評価が,対人不安を引き起こす要因として重要 であるとしている。さらに,Smariら(1998)による と,社会的スキルの自己評価が低い者ほど,対人不安 は高くなるという結果が報告されている。しかし,対 人恐怖心性と社会的スキルの自己評価との関連につい ては明らかにされていない。橋本(2000)は,現代青 年の対人関係に関する特徴として,個人が主体的に望 んでいるわけではなく,社会的スキル欠如のために対 人関係を深化させないという可能性を指摘している。 また,自己や他人に関心をもち,関与しようとしなけ れば,社会的適応の客観性という視点からは必ずしも 適応的とはいえないものの,心理的には適応的な状態 にあることが述べられている。他の人と友好的な関係 を成立させ,それを維持しようとする行動に対する動 機づけは親和動機と呼ばれているが,対人恐怖心性の 発生・増大には,社会的スキルの自己評定の低さと, この親和動機の高さという 2 つの要因が影響している と考えられる。そこで本研究の仮説として,社会的ス キルの自己評定が低く親和動機が高い人ほど対人恐怖 心性が高いことを設定し,検討を行う。また,対人恐 怖心性の特徴を把握するために,どのような社会的ス キルを評価することが対人恐怖心性の高まりに寄与し ているのかについても検討することとする。 【方法】 大学生128名を対象とした質問紙調査を行った。回 答者には年齢,性別,学年,学科について記入を依頼 し,無記名による調査を実施した。使用した尺度は, 成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田, 2005),親和動機測定尺度(岡島,1988),対人恐怖心 性尺度(堀井・小川,1996;1997)である。 X 年 7 月 および10月に東京都内の私立 A 大学の授業後に質問紙 を配布し,その日のうちに回収した。回答所要時間 は,およそ 5 〜15分であった。調査実施前に,研究の 目的,方法,研究成果の公表と個人情報の保護,調査 を拒否できること,また,拒否による不利益は生じな いこと,研究の問い合わせ先等についてを依頼文およ び研究趣旨説明書をもとに,口頭で説明を行った。回 答は任意であり,提出をもって本研究の参加に同意し たものとした。また,本研究の実施は,所属する大学 の研究倫理委員会の倫理審査規定に該当しなかったた め,質問紙の配布は調査協力に応じた大学の規定に基 づいて,大学の許可を得て実施した。 【結果】 社会的スキル総得点,および親和動機総得点を平均 ±1SDで区切り,平均+1SDを高群,平均±1SDを中群, 平均-1SDを低群に分類した。社会的スキルの自己評 価と親和動機が対人恐怖心性に及ぼす影響を検討する ために,社会的スキルと親和動機を独立変数,対人恐 怖心性を従属変数とする 2 要因分散分析を行った。そ の結果,社会的スキルの主効果が有意であった(F( 2 , 119) = 9.698,p<.001)。そこで多重比較を実施した ところ,社会的スキルの自己評価が低いほど,対人恐 怖心性は高い傾向にあることが示された。一方,親和 動機の主効果,および社会的スキルの自己評価と親和 動機の交互作用は示されなかった。また,どの社会的 スキルを評価するかによって,対人恐怖心性との関連 が異なるか検討するために,各下位尺度ごとの社会的 スキル(「記号化」,「解読」,「感情統制」,「関係開始」, 「主張性」,「関係維持」)の自己評価得点と対人恐怖心 性総得点を用いて,対人恐怖心性を目的変数,成人用 ソーシャルスキル自己評定尺度の各下位尺度得点を説 明変数とする重回帰分析を実施した。その結果,有意 な回帰式が得られ(p <.001 ),決定係数は大きかっ た(調整済みR2 = .565 )。標準偏回帰係数は「解読」 (β = .165 , p<.05 ),「感情統制」(β= .132 , p <.05 ),「関係開始」(β = -.630 , p<.001 ),「関 係維持」(β = -.218 , p<.01 )において有意であっ たが,「記号化」(β = -.121 , n.s. )と「主張性」 (β = .051 , n.s. ) においては有意ではなかった。 このことから,特に関係開始といった社会的スキルを 評価することが,対人恐怖心性に強い影響を示すこと が明らかになった。

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-88 473 -【考察】 本研究の結果から,自分の社会的スキルを低く評価 している人ほど,対人恐怖心性を感じやすいことが示 された。この結果は,Leary(1983)やSmariら(1998) の研究によって示された,自らの社会的スキルを低く 評価することで,対人恐怖心性の上位概念である対人 不安は高くなるという研究結果と一致するものであ る。そのため,対人恐怖心性においても、自らの社会 的スキルを低く評価することで、負の影響を及ぼすこ とが明らかとなった。一方,親和動機においては対人 恐怖心性との関連はみられなかった。今後の課題とし て,親和動機の測定方法については,質問紙の教示を 工夫することや,インタビューなどの質的手法での測 定も含めて検討を行う必要が示唆された。また,特に 「関係開始」といった社会的スキルを低く評価するこ とで,対人恐怖心性に負の影響を与えている可能性が 示唆された。この点において,人間関係を開始するこ とへの自信の無さや,他者を不快にさせるのではない かという懸念が生じることで,新たな人間関係を形成 することが難しくなるために,対人恐怖心性を高める 恐れがあると推測された。そのため,対人恐怖心性が 高い青年に対して心理的支援を行う場合,本研究の結 果から明らかとなった特徴をふまえると,「関係開 始」,「解読」,「感情統制」,「関係維持」といった社会 的スキルをターゲットスキルとしたSSTが有効である と期待される。また,本研究では,社会的スキルの自 己評価の関連を検討しているため,他者評価が高いも のの,自己評価が低い対象に対しては,実際にスキル を遂行できていることに気付かせることを目的とする ようなセルフモニタリングなどの手続きや,ビデオ フィードバックなどの手続きが有効であると期待され る。

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