EAA アルミニウム自動車マニュアル‐接合編
7. 固相接合
目次:
7. 固相接合
7.0
はじめに
7.1
摩擦接合
7.1.1 コンポーネントの摩擦接合 7.1.1.1 回転摩擦接合 7.1.1.2 線状摩擦接合 7.1.1.3 軌道摩擦接合と多軌道摩擦接合 7.1.2 線状摩擦撹拌接合 7.1.2.1 線状摩擦撹拌接合 7.1.2.2 線状摩擦撹拌接合 7.1.2.3 線状摩擦撹拌接合の種類 7.1.3 摩擦撹拌スポット接合 7.1.3.1 摩擦撹拌スポット接合 7.1.3.2 摩擦撹拌スポット接合の進歩 7.1.4 摩擦スタッド接合 7.1.5 摩擦エレメント接合7.2
圧力接合
7.2.1 接触又は常温圧力接合 7.2.2 拡散接合と高温圧力接合 7.2.3 爆発接合 7.2.4 電磁パルス接合 7.2.5 ロール接合 7.2.6 共押出接合7.3
超音波接合
7.0 はじめに
固相接合は第三の金属を使用せずに母材金属の融点以下の温度で合着を得る接合技術である。接 合プロセスを補助するために外部の圧力と相対移動を伴うプロセスとすることも可能である。固 相接合の種類としては摩擦(撹拌)接合、常温圧力接合、拡散接合、爆発接合、電磁パルス接合 及び超音波接合がある。これらのいずれの接合方法も、プロセスパラメータ(時間、温度又は圧 力、又は、それらの組合せ)を正しく制御することにより、母材金属界面での溶融なしで、又は、 非常に僅かの溶融により、母材金属間の合着を得ることができる。技術的には、固相接合は材料 温度が融点に達しない方法であり、鍛造技術に近いものであり、従って、従来の定義による溶接 とは異なる。 固相接合では母材金属が(殆ど)溶解・凝固しないので、それによるメリットがある。母材金属 は基本的に元の物性値から変わらない。これは、母材金属が溶けないために熱影響の問題が殆ど ないためである。さらに、脆弱で腐食しやすい中間金属相が界面位置に形成されることもない(殆 ど形成されない)。さらに、異種金属どうしを接合する場合、材料の熱膨張率と熱伝導率の違い による継手性能への影響が融接の場合と較べて非常に小さい。7.1 摩擦接合
摩擦接合とは界面の機械的摺動運動によって発生する熱によって材料どうしが合着するプロセ スである。接合部材は圧力を加え、互いに密着するように保持する。機械的摩擦を発生させる方 法としては片方の部材を固定して、もう一方の部材を動かす、両方の部材を動かす、又は、可動 ツールを使用する 3 つの方法がある。 摩擦接合は通常、溶解を伴わず、母材金属は融点又は液相線温度以下に保たれる。摩擦熱は接合 面に塑性域を形成する(“界面を柔らかくする”)。部材どうしは外力を加えて密着し、そして、 接合させる。短い処理時間中における界面位置での熱の発生と、そして、その間に継手界面の一 部をアプセットすることによって、その部分の狭い範囲に熱影響部が形成される。熱影響部の幅 が最少に保たれるため、通常では、接合前後において応力除去のための部材の熱処理は不要であ る。さらに、熱影響部の割れや耐食性の低下といった問題も排除、又は、減らすことができる。 溶加材とフラックスは使用しない。 もう一つの利点は、部材が動くことによって結果的に接合面をクリーニングすることができる。 最高の接合強度を得るためには、境界層の結合が正しく行われなければならない。そのため、界 面が汚染されていてはならない(クリーンでなければならない)。摩擦接合は界面部の材料を置 き換えることによって接合する方法であるので、部材のクリーニングと前処理は最小限で済む。 摩擦接合は短い時間で、そして、追加の接合材料(つまり余分な重量及びコスト)を要せずに高 品質な継手を作ることができる。摩擦接合の大きな利点の一つは融接が不可能と考えられるアル ミニウム合金 (EN AW-2xxx と 7xxx シリーズ)、及び、異種金属どうしを接合できることで ある。摩擦接合の継手強度は接合条件にもよるが、一般的には弱い方の母材金属の強度に近い値 となる(継手効率 70~90%)。異種金属どうしの摩擦接合としてはアルミニウムと鋼、アルミ ニウムと銅、アルミニウムとセラミック等がある。 摩擦接合は幾つかのバリエーションがあるが、原理は全て同じである。 7.1.1 コンポーネントの摩擦接合 網形状の部材や、それに近い形状の部材は摩擦接合によって直接接合することができる。実際の 現場で使用する方法は主に接合品の往復運動の種類によって異なる。接合品の対称性と、そして、継手の品質要件により、接合品の動かし方を変える場合がある。そ して、動かし方によって機械の複雑さが大きく異なる場合があり、それが継手の品質、生産性、 そして、コストにも影響する場合がある。 7.1.1.1 回転摩擦接合 回転(スピン)摩擦接合では片方の部材を固定し、もう一方の部材を回して接合面に摩擦熱を発 生させる。十分な高温が得られたら、回転を止め、圧力を増して(アプセットステージ)、合着 を起こす。 回転摩擦接合 (出典:KUKA) 回転摩擦接合には 2 種類のバリエーションがある。一つ(“直接駆動”式)は回転側の部材を定 速モータで回す方法である。両方の接合品は一定時間、一定圧力で密着される。その後、モータ が止められて、そして、押付圧力が上げられる。部材の回転が止まった時点で接合完了である。 本プロセスは速度、圧力及び時間のパラメータを正しく選ぶことによって正確に行うことができ る。もう一つのバリエーション(慣性接合とも言う)は一方の部材をはずみ車を使用して回す方 法である。はずみ車が規定の速度に達したら、モータを止め、部材どうしを押しつける。押付力 ははずみ車が完全に停止するまで維持しておき、停止後、押付力を大きくする。いずれの方法に よっても継手品質は変わらないが、“直接駆動”式の場合は若干、制御の精度が高いとされてい る。 回転摩擦接合は短時間サイクルであり、自動化が簡単であるが、機械設備が高価である。高品質 の摩擦接合を得るための 3 つの重要なファクタは以下のとおり。 1. 回転速度:被接合品の材料の種類と接合面の直径に依存する。 2. 部材どうしの押付圧力:回転開始時、圧力は低めでスタートし、徐々に上げていき、摩擦熱 を発生させる。回転停止と供に圧力を急激に上げ、これにより、回転停止の直前又は直後に 合着を起こさせる。 3. 接合時間(通常は数秒):部品の寸法・形状、被接合品の材料の種類、及び、界面の状態に依 存する。 回転摩擦接合の場合、少なくても一方の部材は対称に回転しなければならない。但し、条件によ っては例外もある。加えられた熱と、そして、界面に直角方向の押付力により、界面位置の材料 が変形・可塑化を起こす。可塑化した材料の大部分は押付力と回転運動によって界面から接合ビ ード内に移動する。可塑化した材料と一緒に表面の酸化物とその他の不純物も取り除かれ、これ によって部材間の金属接触が確保され、そして、継手の形成が可能になる。継手品質の目視検査 は接合部外周部にできるビードの形状を検査することによる。理想的には、ビードは接合品の外 径の外側まで延びていなければならず、そして、その先端がカールして接合品側に僅かに戻って 接合面 固定側の部材 回転側の部材 圧力
いるのがよい。最後に、継手の用途等に応じてビードは機械加工によって除去することができる。 回転摩擦接合によって作られたコンポーネント:アルミニウム製ショックアブソーバ(左)、 アルミニウム/鋼製駆動軸(中央)及びアルミニウム/銅製ケーブルエンド部品(右) (写真: KUKA) 回転摩擦接合により接合する部材は軸力と摩擦モーメントを伝えられる十分な強度と、そして、 十分な熱容量を有していなければならない。通常、材料データを見ただけでは摩擦接合を正しく 行えるほどの十分な強度を有しているかどうかは分からない。さらに、母材金属の強度と摩擦接 合継手の強度の間に直接的な相関はない。そのため、通常は、接合方法を決める時は実験によら ざるを得ない。悪条件下では、異種材料間の摩擦接合継手は塑性歪が殆どない状態でぜい性破壊 を起こすことがある。 7.1.1.2 線状摩擦接合 線状摩擦接合は被接合品の動きが回転運動ではなくて往復運動であることを除けば、回転摩擦接 合と同じである。線状摩擦接合も母材金属に固相接合が得られる高品質の接合プロセスである。
線状摩擦接合の原理 (出典: GKN Aerospace) 被接合品の片方は強固に固定し、もう一方の被接合品は小さな振幅で往復運動させる。被接合品 どうしを規定の力で密着させると、その界面部分に摩擦熱が発生し、両方の部材が接合温度にま で加熱される。その後、両方の部材の合わせ位置が調整され、その間、押付力(軸力)をそのま ま維持するか、又は、さらに大きくして接合プロセスを完結する。継手にできたビードはフライ ス削りにより除去する。 線状摩擦接合は矩形の部品や不規則断面を有する部品に適していて、接合箇所が複数ある複雑な 製品や、複数の部品からなる組立品等の製造に使用される。但し、機械設備は回転摩擦接合の場 合よりも複雑である。さらに、回転摩擦接合の方がより大きな断面積の部材を接合できる。線状 摩擦接合は機器コストとツールコストが高いのが難点である。そのため、自動車産業では今のと ころ、線状摩擦接合は使用されていないようである。 7.1.1.3 軌道摩擦接合と多軌道摩擦接合 軌道摩擦接合では、被接合品は回転対称である必要はない。この場合、摩擦熱は被接合品の一方 又は両方が円を描いて振動することによって生じる両者の相対運動の結果として発生する。但し、 被接合品は互いに反対方向には回転しない。つまり、軸の方向は同じ方向に維持される。軌道摩 擦接合では一方の部材だけが振動し、一方、多軌道摩擦接合では両方の部材が振動する。材料に よって決まっている可塑化温度に達すると、軌道運動が停止して両方の部材が互いに押し付けら れて強い継手ができる。 接合面上のある点の相対速度は、回転摩擦接合の場合は部材の直径によって決まるが、軌道摩擦 接合の場合は軌道の直径だけで決まる。接触面上の各点は同じ速度で動くため、高効率で安定し たエネルギー入力が得られる。従って、応力割れを起こしやすい材料(セラミック等)や、継手 の温度差に弱い材料等についても、継手の性能を大きく改善することができる。但し、この場合、 線状摩擦接合の場合と同様の制約が課される。自動車産業では用いられていない技術である。 軌道摩擦接合の原理 (出典: TWI) 運動 荷重 軌道
7.1.2 線状摩擦撹拌接合 摩擦撹拌接合は第三の物体(ツール)を使用して摩擦接合継手を作る固相接合法の一種である。 摩擦撹拌接合は摩擦熱を使用して材料を可塑化するが、材料を接合するメカニズムは上記の摩擦 接合の場合と大きく異なる。摩擦撹拌接合は高品質、高強度、低歪の継手を作ることができる。 様々な材料の種類と厚さの突合せ継手とオーバラップ継手を作ることができる。摩擦撹拌溶接は 1991 年に TWI のウェイン・トーマスが発見し、これにより、継手技術に関する多くの問題が 解決されることとなった。 摩擦撹拌接合はアルミニウム合金に適した接合技術である。そのため、自動車産業では広く採用 されている。 7.1.2.1 線状摩擦撹拌接合 摩擦撹拌接合では、先端にピンを取り付けた円筒形のツールを回転させて、そのピンを接合面に 差し込む。両部材は互いに引き離されないように固定位置に強固に固定される。低回転の耐摩耗 ツールによって発生した熱は摩擦撹拌接合ツール付近の材料を軟化させるので、これによってツ ールが継手を横断する方向に動けるようになる。ピンが前方に移動することによって、ピン前縁 部の特殊な形状によって可塑化した材料がピン(プローブ)の後縁側に押しやられ、そして、ク ランプ力と、そして、ツールのショルダー部とピンが発生する圧力によって両方の部材が圧接さ れる。ツールのショルダーを部材の上の載せた時、プローブの先端は要求接合深さよりも若干浅 い位置に達する。接合面は滑らかで、そして、被接合品とほぼ同一面である。接合部の表面には 摩擦撹拌接合ツールを擦った跡(波模様)が残る。 線状摩擦撹拌接合 (出典: TWI/Sapa) 接触を維持するための下向きの力 接合部先行側 ショルダー 回転ツールの 後縁部 接合部後行側 プローブ 継手 回転ツールの 前縁部
摩擦撹拌接合の断面と上面 (出典:Sapa) 摩擦撹拌接合のプロセスパラメータ: - ツールの回転速度と横行速度 これらの 2 つのパラメータは接合時の熱入力を制御するパラメータであり、高品質で高効率の接 合を得るためには慎重に決めなければならないパラメータである。回転ツール周囲の材料の温度 は塑性フローを確保し、そして、ツールに作用する力を最小限に抑えるために十分に高くなけれ ばならない。ツール周囲の材料の温度が低すぎると、撹拌域に空孔等の欠陥が生じて、最悪の場 合はツールが破損する。 一方、熱入力が大きすぎると、できあがった継手の物性値が悪くなり、低融点相の液化によって 欠陥を生じることもある。ツールの回転速度と横行速度と熱入力の関係は複雑であるが、一般的 に言えることは回転速度が早いほど、あるいは、横行速度が遅いほど、接合温度が高くなるとい うことである。そのため、ツールの回転速度と横行速度は規定の範囲内に制御しなければならな い。 - ツールの傾斜角度と差込深さ 高品質の接合を得るためにはツールの傾斜角度と差込深さも重要なパラメータである。ツールの ショルダーを部材表面の下まで差し込むと、ツール下の圧力が増してツール後部において材料の 接合が起こる。ツールの種類によっては、ツールを僅かに傾けることによってツールの後部側が 前部側よりも下がり、接合プロセスの効率が向上する。 - ツールの設計 良いツールを使用すれば継手の品質向上と、そして、接合速度を上げることができるので、ツー ルの設計は極めて重要である。ツールは熱入力性能と撹拌性能を向上できる最適な設計仕様とす ることにより酸化層を破壊・混合する性能が向上し、さらに、発熱効率も向上する(接合速度の アップと品質向上)。
摩擦撹拌接合ツールの基本形状の一部 (出典: TWI) ツールの材料は接合温度での強度、靱性及び耐食性が十分に大きくなければならない。ツールは さらに耐酸化性が良好で、さらに、熱損失が最小となるように、そして、ドライブトレインまで の機械部分の熱による損傷を抑えるために熱伝導率が低くなければならない。そのため、ツール の寿命を考える時にはツールと母材金属との相性がポイントである。アルミニウム合金が母材金 属の場合、熱間工具鋼は全く問題なく使用できるが、それよりも厳しい条件の場合はさらに高度 な工具鋼を使用しなければならない。ツールの性能が高いほど生産性と品質を向上することがで きる。ツールの設計次第で溶込深さが増し、その結果、より厚い材料の接合が可能になる。 TWI が開発した先進型撹拌接合ツール (出典: TWI) 摩擦撹拌接合中、ツールには複数種類の力が作用する。 - 下向きの力:ツールを材料の表面又はそれよりも下方に保持する。一部の摩擦撹拌接合機 は荷重制御式であるが、ツールの垂直方向の位置は通常、あらかじめ決められていて、そ して、荷重は接合作業中に変化する。 - 横行力はツールの動きと平行な力である。この力はツールの動きに対する材料の抗力によ るものである。この力はツール周囲の材料温度が上がると小さくなる。 - 横向き力はツールの横行方向に直角な力である。 - ツールを回すためにはトルクが必要である。トルク量は下向き力、摩擦係数、及び、周辺 領域内での材料のフロー強度によって決まる。 ツールの損傷予防と摩耗の低減のため、ツールに作用する力について、それを最小に抑え、そし て、突然の変化が起こらないようにするため、接合サイクルを適切に管理すること。 摩擦撹拌接合では作用する力が重要であり、そして、良好な接合を得るためには部材の固定装置 も重要である。固定装置は摩擦撹拌接合時に被接合品を所定の位置に保持し、そして、被接合品 の変形を予防するものである。接合機は、プロセス中に撓みや振動等が発生すると接合品質に影 響するので、安定性も重要な設計ポイントである。固定装置の要求仕様はその使途内容にもよる が、接合機が十分に剛な構造のものである場合は、固定装置は単なるクランプ器具でもよい。一 方、シート材料専用の接合機の場合は、固定装置は簡単な支持棒から、ツールに組み込んだカス タム仕様のものまで様々である。固定装置は温度影響も考慮して設計しなければならない。 漸進的に変化 するピッチ& 角度 (a)楕円形プロ ーブ (b)パドル形プロー ブ (c) 3 面フラット形 プローブ (d) 3 面凹入形プロ ーブ (d)漸進的に変化する螺旋 形状&フレアプローブ
ツール 円筒形 Whorl™ MX triflute™ Flared triflute™ A-skew™ Re-stir™ 略図 ツールピン形 状 円筒+ねじ テーパねじ テーパねじ+3 フルート 3 フレア形フ ルート 傾斜円筒+ねじ テーパねじ
継手部に発生する熱は材料の局部温度を融点の 80~90%まで上昇する。熱源はツール表面での 材料の摩擦熱と、そして、ツール周囲での材料の変形によるものの 2 種類である。熱は主にツー ルのショルダーの下の部分で作られる。熱の流れと温度プロファイルは接合サイクル中に変化す る。最初、材料は定位置で回転しているツールによって予熱される。この状態はツール前方の材 料温度が上昇してツールが前方に動けるようになるまで続く。この状態では、ツールが材料内部 に入り込んでいく工程も起こる。ツールが動き始めたら、一時的に(定常状態が得られるまで) ツール周辺の熱の発生状況と温度が複雑に変化する。定常状態後も熱の発生状況は変動する可能 性があるが、ツール周辺の加熱部は少なくても巨視的には一定である。接合部の終端付近に限り、 プレート端から反射する熱の流れが生じて、これによってツール周辺がさらに加熱する。 摩擦撹拌接合は特殊なミクロ組織構造を作るのが特徴である。 - 撹拌域では、可塑化チューブ内の接合線に沿って横行するツールにより母材金属が大きく 変形し、その後、金属組織の再結晶化が起こる。できあがった結晶組織はほぼ等軸結晶粒 組織であり、粒子サイズは概して母材金属のそれより 1 桁小さい。 - 接合面にはフローアームゾーンができる。このゾーンはツールのショルダーによってツー ル後部付近の後行側からドラッグされた材料からなり、ツールの先行側に分布するゾーン である。 - 撹拌域の両側に熱機械影響部が存在する。この領域では、歪と温度は低く、ミクロ組織へ の影響は小さい。そのため、母材金属のミクロ組織は依然として顕在するが、それは大き く変形/回転したものである。 - 隣接する熱影響部は温度サイクルに晒されるが、接合プロセス中の変形はない。それでも、 アルミニウム合金の機械的物性値への影響は小さくない。 摩擦撹拌接合によるアルミニウム継手部のミクロ組織 (出典:Sapa) 7.1.2.2 線状摩擦撹拌接合 摩擦撹拌接合の対象材料は最初から非鉄金属合金であった。摩擦撹拌接合はアルミニウム合金 (シート、押出成形品、鋳物)には理想的な接合方法であり、溶接ワイヤとシールドガスのいず れも不要な接合方法である。0.5~65mm 厚さの材料についてはポロシティや空孔を生じること となく、片側からの完全溶込深さの接合が可能である。 最近の研究の結果、摩擦撹拌接合はアルミニウム以外の様々な材料にも適用できることが分かっ てきた。摩擦撹拌接合は高張力鋼、ステンレス鋼、チタン等、様々な金属や合金の接合に適用で きることが分かっている。接合技術やツール材料の改良、及び、新たな技術開発により、摩擦撹 拌接合は今後さらにその用途が広がっていくものと期待される。 高い繰返し性と継手品質を確保するためには、適切な仕様の摩擦撹拌接合機を使用しなければな らない。単純な継手であれば殆ど、通常の CNC マシンを使用することができるが、難しい用途 の場合はカスタム機器が必須である。プロセスパラメータは全て、純粋に機械的なパラメータ(力、
摩擦、回転)である。一番重要な制御パラメータは下向きの力であり、これにより、部材の寸法 誤差が大きい場合でも高品質の継手を作ることができる。下向きの力によって部材を軟化させる ための摩擦熱が得られるので、これによって安定したプロセス制御が可能になる。その他のプロ セスパラメータとしては横行速度、ツールの回転速度及び傾斜角が重要である。実機では、アル ミニウム合金の接合速度は約 2000mm/min(板厚が約 2mm の押出成形品を接合する場合等) である。板厚が増すほど、それ相応に接合速度は遅くなる。 摩擦撹拌接合の継手の品質は通常の融接継手の場合よりも上である。 - 高強度(特に疲労強度) - 均質な継手:有害な空孔や酸化物が皆無である。 - 継手は基本的に材料面と面一である。 - 熱による変形の減少:寸法精度向上 - 繰返し性の向上(プロセス変動極小) - 耐食性への影響殆どなし(又は皆無) 継手の機械特性(及び防食特性)は材料の組合せによって変わる。一例として、T6 テンパーの EN AW-6xxx 合金を摩擦撹拌接合により接合した場合、継手の引張強度は母材金属の 70%以 上である。T4 テンパーの条件で接合した後に時効化処理を行った場合は、継手の引張強度は母 材金属の 90%以上である。細粒ミクロ組織と滑らかな接合面の故に、疲労強度は母材金属に近 い値となる。 本プロセスは各種の継手に適用できる。突合せ継手とラップ継手は互いに厚さの異なる材料にも 適用できる。摩擦撹拌接合機下で部材を回転することによって得ることができるのが環状または 円周継手である。非線状継手や三次元継手には CNC マシンやロボットを使用する。 摩擦撹拌接合による継手の種類: (a)I形突合せ、(b) へり継手、(c) T 突合せ継手、 (d) ラップ継手、(e) 多層ラップ継手、(f) T ラップ継手、(g) 隅肉継手 摩擦撹拌接合の場合の制約条件として、接合する全ての継手部にスピンドルを当てることができ なければならない。その他の制約事項として、接合作業の開始/終了時の影響、及び、固定装置 とクランプ装置の要件がある。
線状摩擦撹拌接合の制約事項 母材は裏当て板に留め、そして、母材を持ち上げる力と引き離そうとする力に抗するため、垂直 方向、縦方向及び横方向に部材を拘束する。通常、継手の品質上、隙間の大きさは板厚の 10% 以下まで許容できる。一般に、特別な表面処理は不要である。但し、表面の状態によってはクリ ーニングが必要な場合もある(例えば潤滑油がこびりついた部材は洗浄が必要である)。 線状摩擦撹拌接合はアルミニウム押出成形品の製造技術として最適である。中空製品の場合、材 料を所定の位置に配置するか、又は、レグを支持することによる内部バッキングによって接合す ることができる。 中空プロファイルの摩擦撹拌接合(上と右)と空洞部カバープレートの接合(左) 7.1.2.3 線状摩擦撹拌接合の種類 摩擦撹拌接合は各種バリアントプロセスが開発されていて、特許技術となっている。但し、技術 開発は現在も続いており、さらなる進化が期待されている。 これらプロセスのバリアントは品質向上、生産性向上、そして、接合作業の最適化に貢献するも のである。但し、これらのカスタムマシンは機器コストを急激に上昇させる要因となるので、コ スト効率はプロジェクト毎に慎重に検討しなければならない。 接合ツール 母材は裏当て板に留 め、そして、母材を持 ち上げる力と引き離そ うとする力に抗するた め、垂直方向、縦方向 及び横方向に部材を拘 束する。 ツール取外し 稼働中 裏当て板 溶接部の最初と最後の 部分は溶込みが不完全 である。溶接の終端位置 ではツールを取り外し た後に穴が残る。
a) Twin-stir™接合技術 一つの部材に対して 2 以上の摩擦撹拌接合ツールを同時に使用するシステムについて、様々な用 途への適性が評価されている。初期のコンセプトとして、互いに逆回転するツールを母材の反対 側から当てるシステムが提案された。両側同時接合と合同接合パスの組合せにより、慣性トルク が減少し、その結果、より対称な接合と熱入力が得られるようになっている。プローブは互いに 接する必要はないが、十分に接近させて 2 つのプローブの周囲で軟化した材料がオーバラップし て全通接合が得られるようにしなければならない。厚さ方向の中心部で速度がゼロであることに 起因して起こる問題がある。これを回避するため、プローブは移動方向に若干ずらして配置する ことができる。 互いに逆回転の両側同時摩擦撹拌接合(左)と中空押出品への適用例(右) (出典: TWI/Sapa) もう一つのシステムは摩擦予熱ツールを先行させ、その後ろに摩擦撹拌接合ツールを後続させる システムである。直列システムは両ツールを同じ方向に回転させるものもあるが、互いに逆回転 させる方式の方がより有効である。Twin-stirTM直列逆回転システムは従来の全ての摩擦撹拌接 合の技術に適用でき、さらに、反力トルクを減らすことができる。これにより、部材保持装置(ク ランプと冶具)を簡素化することができる。さらに重要なポイントとして、直列システムは最初 の接合域内に残った酸化層を後続のツールで破壊/粉砕することができるので、これにより継手 の無欠性を向上することができる。 線状逆回転直列システムと接合方向 (出典: TWI) Twin-stir™並列逆回転システムはラップ継手の欠陥部を 2 つの接合線の間に配置することがで きる。並列オーバラップ接合の場合、入熱量を増やすことによって走行速度又は回転速度を落と すことができる。 接合域
ツールを接合方向に対して横並べしたシステム (出典: TWI) 本方法のバリエーションとしてツールを千鳥状に配置したものがある。この場合、ツールは互い に斜めにずらして配置して、後ろのツールが前のツールの接合域の一部をオーバラップするよう にする。これにより、広い接合域が得られる。2 つの接合域のオーバラップ部分の酸化層は粉砕・ 除去される。 b) ボビン撹拌接合 摩擦撹拌接合の難点の一つは裏当て棒、又は、先行位置に固定装置が必要なことである。この問 題を解決するのが両側接合を可能にするボビンツール(自己反応形摩擦撹拌接合)である。ルー ト欠陥のリスクも避けることができる接合方法である。本ツールは被接合品の両サイドに一つず つ配置した 2 つのショルダーからなる。これらの 2 個のショルダーは部材内部を通過するピン で連結されている。 ボビン摩擦撹拌接合 (出典:ESAB) ボビンは 2 つのショルダー間の隙間を一定に保つ。 一方、適応型技術を使用した場合は接合工 程中のショルダー間の隙間の大きさを調整することができる。最初のバリアントの例として、ツ ールのインターフェース位置に従来のツールと変わらない固定ボビンツールを用いたシステム で、一番シンプルな溶接ヘッドの機械的ソリューションを提供した例がある。これとは対照的に、 適応型ツールは 2 つのショルダーの接触条件をそれぞれ単独に制御して、これによって材料の厚 さの変化に応じて補正することができるシステムである。ボビン接合をスタートすると最初にツ ールを挿入するための穴が材料に開けられる。または、材料に最初から穴を開けておく場合もあ る。部材端部は通常、継手を貫通させ、後から除去できるように端部(出口)は開放しておく。 自己反応型の場合、通常の摩擦撹拌接合の場合よりも下向きの力が少なくて済み、そのため、接 合部内部の反力がショルダー間に制限される。さらに用途によっては、ボビンツールは両端から 駆動する方式も可能である。二重駆動ボビンシステムはさらに二重適応型技術と組み合わせるこ とが可能である。この場合、ショルダーはそれぞれ単独で制御することが可能で、そして、荷重 は両端からかけることができる。 接合域
c) コーナ接合及び二重回転摩擦撹拌接合 TWI は主に、熱の一様入力のメリットが大きい低熱伝導性材料の接合に適した静止ショルダー摩 擦撹拌接合と呼ばれる接合方法を開発した。本方法は部材表面を(回転せずに)スライド移動す るショルダー内に回転するピンを取り付けたものである。 T 継手のコーナ接合 (出典: TWI) 本方法はある角度を付けて接合する場合(T 継手等)に適用できる接合技術であり、継手形状(角 度)に合わせた形状の静止ショルダーを使用して行う接合技術である。ショルダーは撹拌材料を 収容し、そして、溶接の際に部材表面をスライド移動する機能を果たす。 プローブとショルダーが同じ方向に回転する二重回転摩擦撹拌接合 (出典: TWI) 静止ショルダーの新たなバリエーションとして二重回転摩擦撹拌接合がある。二重回転摩擦撹拌 接合は独立で回転するプローブとショルダー間の速度又は方向、又は、その両方を変えることが できる。例えば、過熱や溶解を防止するために、プローブの高回転を維持したままショルダーの 回転速度を下げることができる。そのため、熱処理可能なアルミニウム合金の場合、接合温度を 下げて接合部の軟化を最小限に抑えることができる。 d) ピンが引込式の摩擦撹拌接合 摩擦撹拌接合は 2 つの難点がある。接合終了時、ピンが引き込まれ、そして、その位置にキーホ ールが残るが、そのキーホールはドラム、管、貯蔵タンク等の円筒形の物体を接合する場合は取 り除かなければならない。もう一つの難点は材料の厚さが変わるとピンの長さも変えなければな らないことである。 NASA のマーシャル宇宙飛行センターはキーホールができないようにするため、接合作業終了 時にピンを自動的に引き込むことができるコンピュータ制御モータ駆動の自動引込式ピンツー ルを開発した。本システムは材料の厚さに合わせてピンの角度と長さを調節でき、これによって 接合部端部の穴をふさいで表面を滑らかにすることができる。 傾斜形静止ショルダー FSW ツール 部材 FSW ツール 傾斜形静止ショルダー 部材
ピンが引込式の摩擦撹拌接合ツール (出典: NASA マーシャル宇宙飛行センター) 7.1.3 摩擦撹拌スポット接合 最近、自動車業界では線状摩擦撹拌接合の一種である摩擦撹拌スポット接合の技術(1993 年に マツダ自動車が開発)が注目されている。本技術は抵抗スポット溶接やリベット等のシングルス ポット接合にとって代わる技術として大きな可能性を秘めており、更なる開発がなされている。 7.1.3.1 摩擦撹拌スポット接合 摩擦スポット接合は摩擦撹拌接合に似ているが、適用範囲は通常、オーバラップシート接合に限 られている。いずれの接合方法も回転ツール、ピン及びショルダーを使用する点は同じである。 但し、線状摩擦撹拌接合の場合は、ツールは 2 枚の金属板間のシームに沿って横行するのに対し て、摩擦撹拌スポット接合の場合は、ツールは 1 点にとどまっている。ツールの形状及び寸法は、 特にピンも含め、材料の種類、シート厚さ、及び、継手の強度要件によって異なる。 摩擦撹拌スポット接合 (出典: 川崎重工業) 摩擦撹拌スポット接合プロセスは 4 つのステップからなる。先ず、ツールを被接合品に直角に 当て、大きな角速度で回転をスタートする。次に、ツールを母料に挿入する。ツールのショルダ ーがシート上面に当たるまで差し込む。摩擦によって材料が加熱し、軟化した材料にピンがささ る。ピンが完全に母料に差し込まれた後もツールは回転を続け、決められた時間だけ加圧し続け る。局部的に軟化した材料が加圧下でピンとショルダーに沿って動いている間、ツールと材料の 界面は摩擦と塑性変形によってさらに加熱される。これにより、母材金属の融点よりも低い温度 でシート間に強い金属間接合が起こる。十分に長い保持時間の後に接合プロセスが完了し、ツー ルが材料から引き離される。この間の所要時間はおよそ 2 秒である。裏当て棒は凹みを防止し、 挿入 撹拌 抜取
そして、ツールがシートに真っ直ぐ、めり込んでしまわないようにするものである。継手上面の 中央部に円形の凹み(キーホール又は出口穴)ができ、そして、その外縁部に小さなリング状の 突起ができる。裏当て棒に押し付けられていた面には傷がない。本プロセスは過大な熱を生じな いので、シートの歪は最小限で済む。 本プロセスの主要パラメータはツールの回転速度、軸力、及び、力の作用時間である。ツールの 回転速度は通常、一定である。ピンが部材に接した時点から軸力が急激に増加する。そして、軸 力が設定値に達したら、その値が保持される。ツールがシートに入り込む速度は、ショルダーが 材料に接するまで、概ね一定である。その後、ツールがシートに入り込む速度は減速し、停止す る。品質管理に関わる上記の 3 つのパラメータは全てモニターすることができる。 ツールの貫通深さはピンの長さによって決まっている。従って、シートの厚さが変わる時はツー ルを変えなければならない。シートが厚いほど、長いピンが必要である。ピンは通常、工具鋼製 で、先端にテーパねじを切ったものである。厚さの異なるシートどうしを接合する時は、厚い方 のシートを下に置く。 摩擦スポット接合は厚さが 1~3mm のアルミニウムシートに使用されている。これよりも厚い シートに適用することは可能であるが、ツールがシートに入り込むまでの時間が長くなり、これ が問題になる場合がある。本接合技術は元々、アルミニウム材料用に開発されたものであるが、 マグネシウム等の他の軽量金属の他、アルミ/鋼の異種金属継手にも適用することができる。摩 擦撹拌スポット接合を高張力鋼に適用できることは実証済であるが、加圧力とプロセス温度を上 げなければならない点は大きな問題である。 摩擦撹拌スポット接合システムは 2 個のサーボモータを使用する。一つはツールを回すためのモ ータであり、もう一つはツールを母材に押し付けるためのモータである。ツールは裏当て棒と反 対の面にセットする。裏当て棒は C 形フレームの端部に固定する。本接合システムは単独の機械 として使用できる他、6 軸ロボットとの一体システムとして使用することも可能である。 摩擦スポット接合の継手強度は抵抗溶接のそれに匹敵する(クリンチングよりも強く、セルフピ アスリベットより弱い)。本接合システムの難点はスポットの中心にできるキーホールである。 このキーホールは継手の機械強度を大きく低下させる要因である。 摩擦撹拌スポット接合適用例 (出典: マツダ) 7.1.3.2 摩擦撹拌スポット接合の進歩 キーホールをなくすことができるバリエーションや、摩擦撹拌スポット接合の継手強度を増すた めのバリエーションが幾つか提案されている。
Helmholtz-Zentrum Geesthacht(ドイツ)が開発したリフィル摩擦撹拌スポット接合プロセ スは 2 枚以上のシートをオーバラップ接合する技術である。キーとなる要素はピン、スリーブ及 びクランプリングからなるツールである。クランプは裏当て板にシートを固定し、そして、プロ セス中の材料の流れを制限する。先ず、ピンとスリーブが同じ方向に回転して、そして、両方の コンポーネントが同時にシートに押付けられる(“摩擦”)。次に、ピンとスリーブが反対方向 に回り始め(一方は材料にもぐりこむ方向に、そして、もう一方は持ちあがる方向に回る)、そ れによって可塑化した材料を収容するための空洞が作られる(“最初の押出”)。ピン又はスリ ーブが所定のプラグ深さに達したら、ピンとスリーブは元の場所に戻り、そして、排除された材 料によってキーホールが埋められる(“第二の押出”)。最後に、ツールの回転が止まり、ツー ルが引き戻され、そして、シート表面には材料ロスがミニマムのフラットな面ができる(“引出”)。 リフィル摩擦撹拌スポット接合 (出典: GKSS Forschungszentrum) リフィル摩擦撹拌スポット接合機 (出典: Harms+Wende) 本プロセスの難点は手順が複雑なこと、保持時間が長いこと、そして、コストが高いことである。 但し、キーホールは排除でき、さらに、継手強度と外観は大幅に改善される。 クランプ 荷重 クランプ 荷重 ステージ 1 ステージ 2 ステージ 3 ステージ 4
リフィル摩擦スポット接合によって作成した継手 (出典: Riftec Gmbh) ピンを使用しない(ピンレス)摩擦撹拌スポット接合法が 2009 年に Tazokai 他によって開発 された。本方法は摩擦撹拌スポット接合法の一種であるが、ピンを使用しないことと、そして、 ショルダーの表面に渦巻状の溝が設けられているのが特徴である。薄い(~1mm)アルミニウ ムシートの場合等、ショルダー部の変形ゾーンが下側のシートまで十分に貫通するので、このよ うな場合には、ピンレスツールはツールの全面を一様にシートに接触させることができ、その結 果、上質な接合が得られる。(底面からの熱損を抑えるため)鋼製又はセラミック製のアンビル を使用している場合は、最適な長さのピンを使用した場合と同じ接合強度が得られる。実験デー タによれば、本方法を使用した場合には短い保持時間で高強度の継手が得られることが分かって いる。 ピンレス摩擦撹拌スポット接合 スイング式摩擦撹拌スポット接合は TWI が開発したものである。本プロセスで、ツールはシー トにもぐりこんだ後、あらかじめ決められているパス上を動く。本プロセスにより、接合面積が 大きくなり、継手強度が増すが、キーホールをなくすことはできない。 FSSW ツール FSSW ツール FSSW ツール アンビル アンビル アンビル FSSW ツール アンビル ピンなし
スイング摩擦撹拌スポット接合の原理 (出典: TWI) Sun 他も 2011 年に摩擦撹拌スポット接合の新たなバリエーションを提案している。先ず、特 別に設計された丸い凹みを有する裏板を使用して摩擦撹拌スポット接合を行う。継手部にキーホ ールが形成され、そして、凹み部分に材料が流れ込むため、それに沿う位置の下側のシートの表 面に突起が形成される。次に、ピンレスツールと平らな裏板を使用してキーホールと突起を除去 する。 摩擦撹拌スポット接合
(出典: Science and Technology of Welding and Joining, vol. 16, no. 7, pp. 605–612, 2011) 7.1.4 摩擦スタッド接合 一番単純な摩擦スタッド接合はスタッド(中実ロッド)を母料の表面に押付けて回転する方式の ものである。回転と下向きの力によって摩擦熱が生じ、その結果、その部分の材料が可塑化する。 その後、スタッドの回転が止まり、そして、軸力がそのまま維持されるか、又は、増されて継手 が形成される。 接合時間は非常に短くて、直径 10mm のスタッドの場合で約 4 秒である。継手品質は高いレベ ルで安定している。破壊検査の結果では、破壊するのは必ず、弱い母材金属の部分であり、接合 部から十分に離れた場所である。摩擦スタッド接合は、特に異種金属の場合等、様々な材料の組 合せに適用することができる。但し、摩擦スタッド接合を適用する場合の重要な条件として、異 種材料の場合、材料の鍛接温度が互いに違っていなければならない。一般に、最適なプロセス条 件は個別に実験によって決めなければならない。さらに、実用実験により、高回転によって鍛接 力を小さくできるかどうかを評価する必要がある。 円と正方形の中間形状 スタート/エンドポイン ト スタートアーク(半径 0.5mm) 円形パス(半径 1mm) エンドアーク(半径 0.5mm) ツール 裏板
摩擦スタッド接合 (出典: TWI/IEV グループ) 小径のスタッドを薄板に接合する場合、小形の持運び式の摩擦スタッド接合機を手動で、又は、 ロボットに取り付けて使用することができる。 場合によっては、スタッドとシート間を機械式のインターロックで固定しなければならない場合 がある。異種金属どうしを接合する時は、摩擦差込み接合が本要件を満足することができる。レ セス付ピンとコンテインメントショルダーは硬質材料製としなければならない。ピンは材料の軟 化部分の可塑材料がショルダーの力によってレセス内に圧接されるまで回転し続ける。本プロセ スは安全上重要な部品の接合方法として技術的メリットが大きい。 硬度が同等である場合、比較的低融点の中間層を挿入するのが有効である。中間層は接合プロセ スの途中で軟化して排除される。凹部(レセス)は、冶金学的結合が得られない場合であっても 機械的ロックとして機能することができる。本プロセスはサードボディ摩擦接合とも呼ばれる。 摩擦差込み接合(左)とサードボディ摩擦接合(右) (出典: TWI) 7.1.5 摩擦エレメント接合 EJOWELD®摩擦エレメント接合は前処理(クリーニング、塗装剥し、プレドリリング等)なし に異種材料(軽量材料と高強度鋼)どうしの接合に使用することができる。摩擦エレメント接合 は補助要素を加えることによって熱的接合と機械的接合のメカニズムを合体したものである。 比較的柔らかい材 料が比較的硬い材 料の上に戻され る。 コンテインメ ントショルダ ー付 スタッド コンテインメント ショルダー プレート サードボディ: 低融点材料
EJOWELD®摩擦接合 (出典:Ejot) 2 つの被接合品を柔らかい方の材料を上にして(硬い方の材料を下にして)オーバラップするように セットする。スタート時、先ず回転対称材料(“摩擦エレメント”)を高回転(10000~20000rpm) まで加速する。次に、回転している摩擦エレメントを上側の部材に押付ける。摩擦熱が生じ、それに よってカバーシートの可塑化が起こり、事前の穴穿作業や溶解なしに上側の部材への貫通が可能にな る。摩擦エレメントが下側の硬い部材に当たると、摩擦が増加し、さらに、摩擦エレメントの温度が 大きく上昇する。これにより、接合エレメントも可塑化して、そして、アプセットが形成される。ア プセットの滑り面は下側のシート部材の表面をクリーニングし、そして、活性化する。摩擦エレメン トが規定値まで短くなったら、回転を止め、そして、軸力を増した状態を一定時間保持する。この“圧 接”プロセスの結果、クリーニングされた摩擦エレメントと下側のシートが強い金属結合を形成する。 摩擦エレメント接合の原理 (出典: LWF Paderborn) 摩擦エレメント/母材金属間の接合完了後の温度低下により摩擦エレメントが軸方向に収縮し て、その結果、摩擦エレメントとカバーシート間にロック力が生じる。さらに、可塑化したカバ ーシート材料が半径方向にずれて、それが摩擦エレメントの表面の溝に入り込んで、それがロッ スピンドル ブランク ホルダー 摩擦リベット (鋼) アルミシート 鋼シート 1.ブランクホルダーのポジショニン グとスピンドルの加速 2. リベットとカバーシートの 摩擦接触 3. カバーシートの可塑化、リベッ ト/鋼シートの摩擦接触 4.摩擦熱によるリベットの可塑化 と表面の活性化 5.リベットの圧力接合と軸 の短小化 リング状の溝の 中に集められた カバーシート材 料 ©LWF アルミニウム 鋼 アルミニウム アルミニウム アルミニウム 鋼 鋼 鋼
速度及び摩擦時間である。 摩擦エレメント接合によるアルミニウム/鋼継手 (出典: LWF Paderborn) 既存の機械的/熱的接合プロセスと較べて、摩擦エレメント接合の場合、引張強度が約 1500 MPa の最高強度のシート金属を使用することが可能であり、新たな用途が広がっている。この 他、摩擦エレメント接合は複数材料の接合にも使用することができる。 7.2 圧力接合 圧力接合プロセスは様々なバリエーションがテストされている。使用する圧力は広範囲である。 熱も使用することができる。しかし特殊な用途以外では、圧力接合は工業用途では殆ど使用され ていない。 圧力接合(鍛接)は一番古い固相接合法である。接合する部材金属を両方とも高温に加熱し、そ して、たたいて接合する。一番単純な金属の接合方法であるが、同じ金属どうし、あるいは、異 種金属どうしのいずれの接合にも使用できることから、その用途は非常に広い。但し、工業用途 では、圧力接合(鍛接)はその大部分が他の接合方法にとって代わられている。 同じ金属どうしの圧力接合(鍛接)は固体拡散による。これは溶加材もブリッジも使用せず、母 材金属のみからなる継手を作る。異種金属間の圧力接合(鍛接)は融点が低い方の金属の融点温 度で共晶反応が起こることによる。圧力接合(鍛接)に必要な温度は通常、融点の 50~90%で ある。 7.2.1 接触又は常温圧力接合 接触又は常温圧接は接合面の溶融/加熱なしで接合を行う固相接合プロセスである。1940 年代、 同種金属のクリーンでフラットな面どうしは真空下において強い密着が得られることが分かっ た。しかし実際には、表面の不規則性、有機物汚染、あるいは、酸化皮膜などの化学的皮膜が存 在するため、接合は事実上不可能である。
適正な接合効率を得るためには、接合面の汚染は最小に抑えなければならず、そして、接触面積 はできるだけ大きくなければならない。 対照的に、常温圧接は室温状態で非常な高圧を使用して金属間の合着を得る。この場合、接合面 に大きな変形が起こる。接合は非常に大きな圧力を使用することにより、そして、接合面を極度 にクリーンにすることにより起こすことができる。本プロセスはアルミニウムや銅などの延性材 料の接合には容易に使用することができる。突合せとラップ継手のいずれの接合にも使用するこ とができる。但し、実際に使用されているのは電気接点を作る用途だけである。その他の用途と してはアルミニウムクラッド材料製の調理器具の製造があるが、この場合は加熱(比較的低温) の操作が加わる。 GEC が開発したマルチアプセット法を用いれば、高度な突合せ接合が可能である。接合する材 料を金型に挿入し、接合機を稼働すると、材料は金型で保持され、そして、前方に送られる。両 方の材料が互いに押付けられて、その結果、両方の材料が(横に)伸びて大きくなる。酸化物や その他の汚染物は材料の外に押し出され、その結果、良好な結合が得られる。接合面の不純物を 全て排除するためには、通常、少なくとも 4 回のアプセットが必要であるとされている。 常温圧接による銅/アルミニウム棒 常温圧接を適用できるのは非鉄金属だけである。銅とアルミニウムを接合する技術として、常温 圧接は金属間相の延性を低下させることなく両金属を接合することができる一番優良な接合技 術である。本継手は融接による鋳物構造と違ってマシン加工構造であるため、品質は優良である。 さらに熱影響部もない。 7.2.2 拡散接合と高温圧力接合 拡散接合は 2 つの金属(通常は異種金属)を結合する固相接合法の一種である。拡散接合は濃度 勾配による界面沿いの原子の移動を伴うプロセスである。両方の部材の接合面を可能な限り滑ら かに加工して、そして、汚染物を除去した上で、融点の 50~70%の高温で互いに押し付ける。 圧力を加えるのは表面の凹凸の隙間に生じている空洞を排除するためである。本プロセスは塑性 変形、部材の溶融、及び、部材の相対移動は伴わない。溶加材(電気メッキによって表面に付着 させたもの等)を使用する場合と、使用しない場合とがある。部材をクランプ後、圧力と熱を加 える。通常、圧力と熱を加える時間は長時間に及び、そして、作業は真空又は不活性ガス雰囲気 中で行うのが望ましい。特に溶加材の層を接合面に挿入して行う場合、本プロセスを“拡散ろう 付”と言う。 一方、高温圧接は熱と圧力を加えて界面に塑性変形を起こして合着させる固相接合法である。界 面の変形によって酸化皮膜が破壊され、これによってクリーンな部分の面積が増化する。接合は 接合面のクリーンな部分に沿って起こる拡散によるものである。この種の作業は通常、真空又は 不活性ガス雰囲気を作ることができる密閉式のチャンバ内で行う。部材は油圧装置等を使用して 圧力を加え、互いに押し付ける(アプセットする)。
一つのバリエーションとして高温平衡圧力接合法がある。この場合、圧力は圧力容器中で高温の 不活性ガスを加圧することによって加える。 7.2.3 爆発接合 爆発接合は片方の部材を高速で移動することによってもう一方の部材に衝突させて合着を起こ させる固相接合法の一種である。部材は化学爆弾の爆発により加速する。本プロセスの性質上、 継手形状はシンプルでなければならない(板材や管等)。 衝撃エネルギーによって材料が可塑化し、接合が得られる。爆発により急激に熱が発生するが、 その熱が金属に伝達するための時間が足りず、従って、金属の温度が十分に上がらず、金属の材 料特性に有意な変化は起こらない。 熱源は幾つかある。一つは衝突エネルギーである。一つは超高圧を発生する衝突の衝撃波である。 衝撃波は伝播して接合面に“物質波”を発生させる。さらに、熱は接合面に噴流とさざ波を生じ る塑性変形によっても生じる。衝突点では材料の細い噴流が高温に加熱され、その結果、接合面 で溶解と機械的混合が起こる。表面沿いの噴流により母材金属間の塑性相互作用が助長されて、 高品質の接合が得られる。 爆発接合
(出典: Dynamic Materials Corporation)
爆発接合は殆ど全ての金属について、強い接合を作ることができる。表面を軽く研磨して滑らか に仕上げ、酸化物やその他の汚染物質を除去し、冶金学的に純粋な状態を維持して、そして、冶 金学的結合を得る。アルミニウムはアルミニウム及び鋼や銅などの異種金属のいずれとも接合す ることができる。異種金属どうしの接合強度はいずれか弱い方の金属の強度と同じか、又は、そ れ以上である。 爆発接合の用途は限られている。一番重要な用途は厚い金属板に別の材料をクラッドする場合で ある。爆発接合のもう一つの重要な用途は異種金属間にバイメタルを挿入する作業である。 7.2.4 電磁パルス接合 電磁パルス接合は電磁力を使用して部材を変形・接合する。チューブやシート材料のオーバラッ プ接合に使用できる自動接合技術である。爆発接合に似ていて、両方とも大きな衝撃速度によっ て冶金学的結合を得る技術であり、接合面にさざ波効果が現れるのが特徴である。 一般的な電磁パルス接合システムはコンデンサ式電源装置、高速スイッチングシステム及びコイ ルからなる。電源装置はコンデンサの充電用である。必要量の電気がコンデンサに蓄えられたら、 非常に短い時間(10~15s)、コイルに通電する。これによってコイル内に強い磁場ができ、 短い時間の間、強い磁気圧力が発生して片方の部材がもう一方の部材に衝突する。数ミリメート ルの距離の範囲に超高速(600~1000 m/sec)が発生する。 爆発前縁 爆薬 クラッド層 噴流 衝突点 冶金学的結合 ライン 裏板
管の電磁パルス接合 (出典: PST) 磁気パルス接合法のプロセスパラメータは形状パラメータ(部材間隙間、コイル内の軸方向位置、 及び、部材間のオーバラップ長さ)と電気パラメータ(充電電圧と放電周波数)である。磁気パ ルス接合の場合、上手く接合するには、接合面間に平均 1mm の隙間が必要である。それは、衝 撃時にターミナル速度に達するまでの時間が必要だからである。隙間が小さすぎると、良好な波 形はできるが、接合は起こらない。さらに、隙間の大きさは外側の部材の厚さの 2~3 倍以上が 必要である。磁気パルス接合の場合、軽微な酸化層であれば衝撃波によって破壊され、さらに、 汚染物質も排除されるので、クリーニングは一般的な方法で行えば十分である。 磁気パルス接合法は常温の接合法である。温度の上昇は非常に狭い範囲(50m)で起こるので、 部材の外表面の温度は 30~50℃を超えることはない。 熱影響部はなく、金属の強度低下も起 こらない。接合部はできあがった組立品の中で最強の部分となる。磁気パルス接合法のもう一つ の利点は接触のない方法であることである。つまりツールの跡が残らない方法である。 高電流スイッチ 充電器 コンデンサ 磁場 コイル 外側部材 内側部材 パルス後 パルス期間内 誘導渦電流 コンデンサ放電電流 電流 磁気圧力 AC 電源 磁気パルスシステム コイ ル
管材(左)とシート材(右)の成形用または接合用コイル (出典: PST) 本プロセスは円筒部品のオーバラップ接合用の市販の装置であるが、シート材のオーバラップ接 合にも使用可能である。管材の接合はエネルギー消費とコイルの設計の両面から一番簡単な作業 である。接合部はそれを囲う位置にコイルを配置できるように十分な隙間を確保できていなけれ ばならない。一番一般的なコイルは部材を挿入して使用する方式の密閉形コイルである。この場 合、コイルの少なくても一端は継手部の直径よりも十分に大きくなければならない。この他、コ イル内部に挿入できない部材に適用するコイルとして、部材をクランプする方式のスイベル式コ イルが開発されている。重要なポイントは比較的高価なコイルの寿命である。そのため、現時点 では殆ど実用化されていない。 電磁パルスシート接合 (出典: PST) 磁気パルス接合法は各種の電気伝導性金属に適用できる。但し、電気伝導性が低い金属に適用す る場合は大きなエネルギーが必要である。同じ金属どうしと異種金属どうしのいずれの場合にも 適用できることが既に分かっている。接合部の断面は爆発接合によるものと似通っている。 渦巻 絶縁板 補強棒 固定装置 Fe シート ギャップ(接合前) アルミシート フラックスライン コイル 鋼(SPCC) 鋼(SPCC)
磁気パルス接合法によるアルミニウム/銅継手(左)とアルミニウム/鋼継手(右) (出典: PST) 磁気パルス接合法は金属-非金属接合の場合等の冶金学的結合を要しない場合には接続/クリン プ手段として使用することができる。磁気パルス接合法はセラミック、ポリマー、ゴム又は複合 材料の機械的ロックを作ることができ、従って、この場合は接着剤、シーラント、機械式クリン プ等が不要になる。本プロセスはコンポーネントの上から金属をシュリンクラッピングする接合 方法である。 7.2.5 ロール接合 ロール接合は圧延により複数の金属を接合する固相接合法の一種である。部材を予熱後、圧延装 置によって十分に大きな圧力をかけて接合面を変形する。母材金属どうしは接合面での拡散によ って合着する。そのため、拡散焼きなましが追加で行われることが多い。スタート材料の表面の クリーンリネスが一番重要である。そのため、材料は通常、化学的又は機械的なクリーニングを 行って汚染のない表面を作らなければならない。板材又はストリップ材料はその後、ホットミル (アルミニウムシートのろう付の場合)、又は、クラッディング用に高度にカスタマイズしたコ ールドミルに通す。 実際には、ロール接合は半完成品の組立以外の用途には使用されていない。ロール接合について は、アルミニウムシートのろう付以外では、アルミニウムと他の金属(特に銅や鋼)のロールク ラッドプレート/シートの製造にも使用されている。 ロール接合によるクラッド金属の製造 (出典: Wickeder Westfalenstahl) プレクリーニング/活性化 クラッディング 焼きなまし 圧延
7.2.6 共押出接合 共押出接合は押出ダイを使用して両方の部材を同時に押し出すことによって接合する固相接合 法の一種である。本プロセスは通常、接合品質を向上するためと、そして、押出圧力を下げるた めに高温で行う。 共押出接合技術は各種断面のアルミニウム製品の製造に広く使用されている。アルミニウムとそ の他の金属(鋼や銅)からなる押出成形品はストリップ材やワイヤ材の形状品を押出チャンバに 供給する方法で製造することができる。押出条件を最適に制御しながら可塑化アルミニウムと固 体材料を押出ダイの中で同時に加圧することにより、金属間結合を得ることができる。この場合、 母材金属どうしは接合面での拡散によって合着する。
7.3 超音波接合
超音波接合は前述の圧力接合と較べると、使用する圧力が比較的小さい。従って、接合部材間の 接触圧力は摩擦接合や圧力接合の場合と較べてかなり小さい。超音波接合は加圧下の接合部に高 周波振動を局部的に加えることによって行う固相接合の一種である。超音波接合の場合、超音波 エネルギーによって生じる熱は接合の基本的要件ではないので、超音波接合は常温のプロセスと 言える。接合は部材に固定されている超音波チップが接合界面と平行な面内で振動することによ って起こる。 超音波接合は 1950 年代から金属接合の手段として使用されている。超音波接合はフレキシブ ルで高速な接合プロセスであり、エネルギー消費と初期投資が少ないのが特徴である。接合の所 要時間は 0.25~2.0 秒であり、サイクル時間は(ツールの起動に要する時間も含めて)1~3 秒である。ラップせん断強度は通常の抵抗スポット接合の場合と較べて若干低いだけであるが、 断面方向の引張強度はかなり低い。接合時間を長くとるほど均一な継手が得られ、そして、降伏 強度と疲労強度も向上する。 超音波接合に適した材料は柔らく、降伏強度が小さな材料である。超音波接合は特にアルミニウ ムとアルミニウム合金の接合、及び、アルミニウムと他の金属(特に銅)の接合に適している。 本プロセスを適用できるのは比較的薄い材料に限る(ワイヤや薄いホイル材料等)。但し、アル ミニウムについては 1.0mm までの厚さのものに適用できることが分かっている。本プロセスは 厚い材料の接合にも使用できるが、現時点では市販のシステムが少なく、厚いアルミニウムシー ト(1mm 以上)については高品質を望むことはできない。 溶接作業の前に、被接合部材を接合チップとアンビルの間にクランプする。静的圧力を加えたま ま、高周波数の振動性のせん断力を加える。但し、部材内部の力が弾性限度内である限り、部材 が変形することはない。接合面の汚染物質と酸化層がせん断力によって破壊され、排除される。 そのため、化学クリーニングと機械式クリーニングは不要である(油や潤滑剤を除去する場合は 除く)。コーティング(コーティングされたワイヤ等)は不純物の一種である。同時に、表面の 局部的な凹凸が摩擦のような動きによって変形・せん断され、クリーンな金属面が現れ、原子拡 散による固相接合が可能になる。さらなる振動によって接合面の変形域が大きくなり、接合が進 んでいく。 接合面上での微小な変形が温度上昇を招く。但し、圧力、振幅及び接合時間が正しく調整されて いれば溶融が起こることはない。局部のピーク温度は母材金属の融点の 35–50%程度と推定さ れる。 微小変形を生じさせる振動エネルギーは高周波交流電流エネルギーを機械エネルギーに変換す ることによって供給される。超音波接合法にはスポット接合、ねじり接合、シーム接合、マイク ロ接合等、多くのバージョンがある。横駆動方式とウェッジリード方式の超音波接合 (出典:EWI) 超音波接合法のアプリケーションとして一番適しているのは横駆動式又はウェッジリード方式 のスポット接合である。ソノトロードは母材に結合されて振動エネルギーを伝える。横駆動式の 場合、母材が押付けられるソノトロードの先端はナール加工が施される。ソノトロードと同様の ナール加工が施されたアンビルはもう一方の母材を定位置に固定する。アンビルとその支持構造 物は、溶接サイクルの際に、静的クランプ力と接合面に作用するせん断力の両方を支持できなけ ればならない。 ウェッジリード式の場合は、変換器とウェッジが縦モードで振動し、一方、リードは曲げ振動モ ードで振動する。チップは交換可能で、先端は被接合部材を保持できるようにナール加工が施さ れている。アンビルは通常、剛な構造であるが、アンビルもリードと非同期で曲げモードで振動 するため、母材間の相対運動が大きくなる。自動車産業では、ウェッジリード方式は C フレーム が採用されていて、これによりアクセスと自動化が容易になっている。 WELDMASTERTMC-フレーム超音波スポット接合機 (出典: Sonobond Ultrasonics) 超音波接合の一般的パラメータは次のとおり。 - 振動周期 超音波接合に使用する周波数は通常 15~60 kHz であるが、マイクロ接合の場合は数百 kHz まで使用される。但し、0.8mm 以上のアルミニウムシートの接合の場合は、20kHz を超える周波数では必要なパワーが得られない場合がある。 - 振動振幅 振動振幅は接合面と平行な方向の接合チップの線状運動の振幅である。ピーク間距離は通 変換器 ブースター ホーン/ソノトロード 振動 母材 静的力 ソノトロード 静的力 (A)横方向ドライブ アンビル 静的力 変換器 電源 (B)ウェッジリード 振動 母材 リード/ソノトロード アンビル 接合域 接合域 母材 振動 アンビル 電源