繰 り返 し体験す る夢見の形式的特徴
岡 田 斉
夢の内容 は日々異 なるばか りでな く,同 じ夜 に何度か体験 した時 にも全 く違 う内容であ ることが普通であろう。 このような夢の内容の不安定 さはなぜ生 じるのであろうか。
Ant
r
obus(
1
9
9
1) はREM
,NREM
,覚醒時の脳の状態をモデル化 し,鮮明な夢が体験 されると言われるREM
期 においては強 い感覚遮断状態であることを示 唆 して いる。 そ し てこのような状況下で大脳皮質視覚野 において多少の自発的放電があれば,それを種 とし て視覚野内の活性化が進み, さらに高次の思考などの働 きが活性化 され夢が形成 されるこ とをPDPモデルを用 いて示 している。 種 となる自発性の放電が ランダムであるとす ると, このモデルは我 々の夢体験のば らつ きの大 きさを説明す る上で納得ので きる説明を提供す る。一方,同 じ夢を何度 も繰 り返 し 体験す ることも時 としてあ り,不思議 に思 うこともあろ う。 このよ うな現象 は,先 に挙げ たモデルで考え られている視覚野 におけるランダムな活性化 という前提 にある程度制限が あることを窺わせる。 しか し,繰 り返 し見 る夢 はいっ起 こるか予想 で きないので,REM
期覚醒法などの実験室 における検討 にはな じまない現象であろう。 ただ,調査 によってあ る程度 は検討が可能 となる側面 もあるように思われる。入眠前の状況が夢見の内容 に与え る影響 について調査を行 ったCar
t
wr
i
ght(
1
9
7
9
)
は1
6
7
人の女性の被験者の うち,6
5%
が 同 じ夢を繰 り返 し体験す るという体験があることを報告 し,その内容 は非常 に不快である とす るものが4
6%
を占めると報告 している。 さらに彼 は覚醒時 に高 い レベルの情動的体験 があると同 じ夢を繰 り返 し体験す る傾向があることを報告 し,発達的には発達段階の節 目 にあたる時期 に現れることを示唆 している。 しか し,彼の研究で取 り上 げ られた繰 り返 し 体験す る夢の内容 につ いて数量化 されている側面 は,同 じ夢を繰 り返 し体験す るという体 験のある被験者の割合 と入眠前 の状況,夢が快か不快か といった程度である。 もし,脳内 に起 こる現象 との関連性 について検討 しようとす ると,Hobs
on(
1
9
8
8
)
が主張す るよ う に,夢の内容ではな くどのような感覚を体験す るか, どのような種類の感情 をどの程度体 験す るのか といった,夢見の形式的特徴を調査す る必要があろう。 そ こで,一本研究では,繰 り返 して体験す る夢の形式的特徴 に着 目し,感覚的,感情の種 類別の鮮明性を質問紙 によって調査す る。 さらに,一般的に体験す る夢 について も同 じ内 容の質問紙 を用いて調査 し,両者の違 いについて比較検討を行 う。方 法 被 験 者 被験者 は,繰 り返 し同 じ夢 を体験す るか どうか調査 した群 と,通常 の夢体験 につ いて調 査 した二つの群か らなる。 いずれの群 も被験者 は大学生 である。繰 り返 し同 じ夢 を体験す ることにつ いて調査 した群 は,男子
3
4
人,女子1
0
0
人,平均年齢2
0
.1歳SDO.
6
9(
1
9
-2
3
歳), 通常 の夢 につ いて調査 した群 は,男1
3
4
人,女1
1
1
人,平均年齢1
9
.1歳SD1
.
2
7
(1
8
-2
3
歳) であ った。 質問紙 を作成 し,心理学 の授業 を選択 している学生 に対 して授業時間内に実施 した。 質 問 紙 我 々 (岡田 ・松岡 ・畠山,1
9
9
4
)
が作成 した,過去1
カ月 につ いて夢 の中での体験頻度 を問 う5
0
項 目か らな る夢見 の形式的特徴 に関す る質問紙調査v
e
r
6.
0
の一部 を修正 し用いた。 先 の調査で は,夢見 における体験頻度を問 うたが,今回の質問紙で は,体験 した内容 の鮮 明性 を問 う。今回の報告で は,感覚 に関す る7
項 目 (視覚,聴覚,皮膚感覚,運動感覚, 味覚,喚覚, 内臓感覚),発話 と色彩 の体験頻度,感情 について頻 度 を問 う9
項 目をあわ せた1
7
項 目につ いて分析す る。通常の夢 については過去1
カ月の間に体験 した夢 について, 頻度 と鮮明性 の評定 を求 めた。繰 り返 しの夢 の群 については全 く同 じ夢 を繰 り返 して体験 したか どうかを問い, その後でその内容 の鮮明性 につ いて評定 を求 めた。 感覚 モ ダ リテ ィ別鮮 明性 の評定 については次 の5
段階で求 め られた01
.非常 にはっきりしていて,実際の経験 と同 じくらいであ った2.
かな りはっきりしていたが,実際の経験 ほどではなか った3.
あまーりはっきりと していなか った4.
ぼんや りしていてかすかだ った5.
ただ (その感覚 の体験 が) あ った とい うことを覚 えているだけである さ らに,夢 の中で感 じる9
の感情 (嬉 しさあるいは楽 しさ,希望 あるいは期待感,幸福 感,怒 り,悲 しみ,恐怖感,緊張感,不安感,懐か しさ) の体験頻度の評定が次 の6
段階 で求 め られた。1.
非常 に感 じた2.
そ うとう感 じた3.
かな り感 じた4.
す こし感 じた5.
やや感 じた6.
全 く感 じない結 果 繰 り返 して同 じ夢 を体験 す るとい う回答 を した被験者 は
7
6
人 (男2
0
人, 女5
6
人), その ような経験 がない と答 えた被験者 は5
7
人であ った。 1.繰 り返 し体験す る夢 と通常の夢の評定値の分布 の比較 両群 の夢 の形式的特徴 を比較す るために各評定段階 ごとに全被験者 に対す る選択比率 を 算出 した。Fi
gu
r
e
lか らFi
gu
r
e1
8
までの グラフの縦軸 はその反応段階 を選択 した被験 者 の割合 (%),横軸 は反応段階である。黒 の棒 が繰 り返 し体験す る夢 の群, 白抜 きの棒 が 通常 の夢 の群 であ る。両群 の間の比率の差異 につ いて x2検定 を行 った。 (1)知覚的側面9
つの項 目につ いて,5
つの評定値 の度数分布 をそれぞれの群 の被験者数 に対す る百分 率で示す(
Fi
gur
el
∼Fi
gur
e9
)
0Figure2 色彩感覚の評定尺度の比率 視覚,色彩感覚 については有意 な差異 はなか った。 Figure3 聴覚の評定尺度の比率 聴覚 については,「かな りはっきりしている」(x2-5.60,\p<.017), 「あ ま りは っき りしていない」(x2-7
.
46,p-<.006)が有意であ った。感覚の鮮 明性 は通常 の夢 の方 が高 い傾向が見 られる。Figure4 発話 の評定尺度の比率 発話 について も聴覚 と同様 に,「かな りはっきり」では通常の夢の方が比率が高い
(
x 2-5
.
9
4
,p<.
0
1
4
)
の に対 して, 「ぼんや り」
で は逆 に繰 り返 し体験す る夢 の比率が高 い(
x 2-5
.
3
6
,P<.
0
2
1). Figure5 皮膚感覚の評定尺度の比率 皮膚感覚 は,通常の夢の方が,「かな りはっきり」 の比率が高 い(
x2
-5
.
2
5
,p<.
0
2
2
)
0
Fi
gu
r
e6
運動感覚の評定尺度の比率 運動感覚 は,繰 り返 し体験する夢の方が 「非常 にはっきり」の比率が高い(
x 2-5
.
6
3
,p<.
01
8
)
。
Fi
g
u
r
e7
味覚の評定尺度の比率 味覚 については,多 くの項 目で有意差があった。「かな りはっきり」(x2
-5
.
8
2
,p<.
01
6
)
「ぼんや り」(x2
-3.
9
9
,P<.
0
4
6
)
,の二つの項 目では通常の夢の頻度が高かったが,「あま りはっきりしない」 は逆 に繰 り返 し体験 す る夢 の頻度が高 い
(x2
-7
.
8
5
,p<.
0
0
5
)
0
Fi
9u
r
e8
嘆覚の評定尺度の比率 嘆覚 については,「あま りはっきりしない」で は繰 り返 し体験する夢の比率が高い(
x2
-1
3.
6
9
,p<.
0
0
0
2
)
が,「ぼんや り」 は通常 の夢 の比率が高 い (x 2-1
6
.
8
3
,p<.0
0
01
)
。 繰 り返 し体験す る夢の方が味覚 はやや鮮明であ ることも示唆 され る。Fi
gu
r
e9
内臓感覚の評定尺度の比率内臓感覚 については,「かな りはっきりしている」で通常 の夢の比率が高か った (x 2
-4.
7
6
,p<.
0
2
9
)
0
これ ら知覚的特徴 についてまとめると,聴覚 ・発話 の頻度 は通常 の夢の方が鮮明である が,運動感覚 ・味覚 ・嘆覚 は繰 り返 し体験する夢が鮮明であると思われ る。
(2)情動の側面
9
つの情動 についての結果をFi
gur
el
Oか らFi
gur
e1
8
に示す。 知覚 的側面 に比 べ ると 差異が顕著である。FigurelO 嬉 しさ ・楽 しさの評定尺度の比率
嬉 しさ ・楽 しさについて
Fi
gur
el
Oに示す。「そ うとう感 じた」 (x2
-3
4.
3
2
,P<.
0
0
0
1), 「かな り感 じた」 (x2
-2
3.
2
6
,p<.
0
0
0
1),「全 くない」 (x2
-1
2
9.
3
4
,p<.0
0
01
)
の3
つ の項 目が有意 となった。Figurell希望あるいは期待感の評定尺度の比率
希望 あ るい は期待感 につ いてFigurellに示 す。 「そ うと う感 じた」(x2-9.96,p<.00 16), 「か な り感 じた
」(
x2-20.72,p<.0001), 「少 し感 じた」
(
x
24.
45,p<.03),「全くな
い
」 (x2-108.92,P<.0001) の各尺度 で有意 とな った。幸福感 について
Fi
gur
e1
2
に示す。「そ うとう感 じた」 (x 2-
ll
.
6
4
,p<.0
0
0
6)
, 「かな り感 じた」 (x2
-2
5.
1
2
,p<.
0
0
0
1),「全 くない」 (x 2-1
1
7
.
3
8
,p<.0
0
01
)
の3
つ の尺 度で有意 とな った。繰 り返 し体験す る夢 においては,嬉 しさあるいは楽 しさ,希望 あるい は期待感,幸福感 とい った肯定的感情を体験す る比率が顕著 に低 い。 Figure13 怒りの評定尺度の比率 怒 りについては,「そ うとう感 じた」(x2
-5.
4
8,p<.
01
9
)
,「かな り感 じた」 (x2-7
.
5
5
,p<.
0.
0
0
6
)
,「やや感 じた」, (x2-1
3
.
5
2
,p<.
0
0
01),「全 くない」 (x2-8
6
.
7
2
,p<.
0
0
0
1)の4
つの尺度で有意 とな った(
Fi
gur
e1
3
)
0 一,/、\ rJFi
gu
r
e1
4
悲 しみの評定尺度の比率 悲 しみ につ いてFigure14に結果 を示す。「やや感 じた」(x2-5.01,p<.025),「全 く ない」 (x2-52.
12,p<.0001) の二 つの項 目で有意 とな った。Fi
g
u
r
e1
5
悲 しみの評定尺度の比率 恐怖感 につ いての結果 をFigure15に示す。6つの項 目,「非常 に感 じた」
(
x2-31.61, p<.001),「そ うとう感 じた」
(x2-6.56,p<.01),「かな り感 じた」(x
2-6.20,p<.013),「少 し感 じた」 (x2-5.70,p<.017)「全 くない」 (x 2
-2
2
.
0
9
,p<.001), の全 てで 有意差が見 られた。通常の夢では,「かな り感 じた」
を中心 とした一 山の分布 で あ るが, 繰 り返 し体験す る夢 は非常 に恐怖感 を感 じる群 と全 くない群 の二山に分離す る傾向が見 ら れ る。 Fi9ure16 緊張感 の評定尺度の比率 緊張感 につ いて も恐怖感 とほぼ同様の結果 とな った(
Fi
gur
e1
6
)
。 検定 の結果 「非常 に感 じた」 (x2-3
1
.
0
9
,P<.0001),「かな り感 じた」 (x2-9
.
4
6
,p<.002), 「少 し感 じ た」 (x2-8.
40,p<.004),「全 くない」 (x2-15.57,p<.0001) の4項 目が有意 とな っFigure17 不安感の評定尺度の比率 不安感 について も恐怖感,緊張感 と同様の結果が得 られた。有意 とな った項 目は 「非常 に感 じた
」
(x2
-2
3.
1
9
,p<.
0
0
0
1),「かな り感 じた」(x2
-5
.
8
7
,p<.
0
1
5
)
, 「少 し感 じ た」(x2
-4.
9
9
,p<.
0
2
6
)
,「全 くない」
(x2
-6
.
9
3
,P<.
0
0
8
)
の4
項 目であ った。 感情 に関す る項 目では両群の群間差が顕著であった。繰 り返 し体験す る夢 は通常の夢 と 比較す ると嬉 しさ,楽 しさ,幸福感 といった肯定的感情,悲 しみ,怒 りといった強い情動 を感 じることが少 な く,恐怖感,緊張感,不安感 といった否定的感情 を感 じることが多い という差異であった。 ただ,否定的感情 については全 くないという反対の傾向を示す群 も やや多 く2
極 に分かれる傾向 も見 られる。 2.両群の項 目の因子分析 項 目感の関係を調べ るために両群 について因子分析 を行 った。因子の抽出には主因子法 を用い,斜交Obl
i
mi
n
回転を施 した。Tabl
e
lに回転後の因子負荷量を,Tabl
e2
に因子 問 の相関関係 を示す。Tab一el繰 り返 し体験 す る夢 の因子分析 の結 果得 られた因子負荷量 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 感 望 さ 感 感 福 し 安 怖 幸 希 嬉 不 恐 発 話 視 覚 聴 覚 色 彩 感 覚 運 動 感 覚 嘆 覚 味 覚 内 臓 感 覚 皮 膚 感 覚 り み 感 し 張 怒 悲 緊 値 .T。lrL U 有 率 固 比 3 1 0 6 5 9 9 9 6 6 0 0 0 0 0 一 一 7 9 9 5 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 6 4 0 0 0 0 1 0 0 0 0 一 一 一 8 3 2 1 1 4 0 0 0 I 一 4 9 3 8 4 1 0 2 0 2 0 0 0 0 0 7 7 6 9 7 7 7 7 6 6 0 0 0 0 0 6 3 0 3 0 0 2 4 0 0 0 0 9 3 4 1 0 1 0 0 0 4 5 4 0 8 0 1 1 2 2 0 0 0 0 0 3 1 3 6 5 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 一 一 一 1 5 5 0 9 8 5 5 0 0 0 0 L 1 ( I 3 5 4 0 0 3 0 0 0 7 4 2 2 3 0 2 0 4 3 0 0 0 0 0 3 4 7 3 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 [ 1 [ 1 7 7 4 0 1 4 2 0 0 0 0 1 8 9 9 6 4 0 0 0 0 3 0 2 7 9 8 9 8 7 0 0 0 0 0 7 8 9 8 6 6 5 5 4 4 0 0 0 0 0 2 7 9 9 8 7 5 5 0 0 0 0 4 2 8 7 5 6 0 0 0 Table2 繰 り返 し体験 す る夢 の因子 間 の相 関 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 第 1因 子 1.00 第 2因 子 0.13 1.00 第 3因 子 -0.05 -0.16 1.00 第 4因 子 -0.23
*
0.24*
0.09*
p<.05**
p<.01Table3 通常の夢の因子分析 の結果得 られた因子負荷量 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 7 3 3 1 7 6 6 6 5 4 0 0 0 0 0 4 8 7 8 9 7 6 6 6 4 0 0 0 0 0 7 5 6 7 7 6 0 0 0 9 5 5 7 6 6 5 5 0 0 0 0 1 2 5 3 3 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 一 一 一 6 2 0 5 4 0 1 2 2 2 0 0 0 0 0 L l ( 4 1 1 0 0 0 0 0 0 9 8 9 9 7 7 6 6 0 0 0 0 0 2 6 1 0 2 1 1 0 0 0 0 0 0 0 一 一 ∩∠ 3 7 2 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 一 一 一 7 6 0 8 8 8 0 0 0 5 5 3 9 1 0 0 2 0 0 0 0 8 3 3 8 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 一 一 6 2 9 5 2 8 8 7 7 6 0 0 0 0 0 3 4 1 0 0 0 0 0 0 3 0 0 3 0 2 2 0 0 0 0 0 一 一 9 8 0 6 5 7 7 7 6 6 0 0 0 0 0 8 4 0 6 1 0 0 2 1 0 0 0 0 0 0 一 一 5 4 9 0 0 0 0 0 0 5 5 2 1 0 0 0 1 0 0 0 0 発 話 視 覚 運 動 感 覚 聴 覚 色 彩 感 感 感 み り 安 怖 張 し 不 恐 緊 悲 怒 感 望 さ 福 し 章 希 嬉 覚 覚 覚 覚 感 感 臓 膚 嘆 味 内 皮 植 付( 有 率 固 比 Table4 通常の夢 の因子間の相関 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 第 1因 子 1 第 2因 子 0.06 第 3因 子 0.09 第 4因 子 0.26
*
*
*
p<.05**
p<.01固有値 1以上の基準で因子数を決定 したところ,繰 り返 し体験する夢,通常の夢 ともに
4
因子が抽出された。感覚 モダ リティに関す る項 目はいずれの群においても,視覚 ・聴覚 ・ 運動感覚が一つの因子,味覚 ・嘆覚 ・皮膚感覚 ・内臓感覚が一つの因子 にまとまる傾向が 見 られる。前者 は一般的に夢で体験 される感覚,後者 は夢ではあまり体験 されない感覚で ある。 これはこれまでの我々の知見を裏付 ける結果である (畠山,岡田,松岡,1992;岡 田,松岡,畠山,1993;岡田,畠山,松岡,1993;岡田,畠山,松岡,1994a;岡田,畠山 松岡;1994b)。 しか し,感情 に関す る項 目は繰 り返 し体験す る夢 と通常 の夢 で相違 が見 ら れる。 通常の夢の場合,不安感,恐怖感,緊張感 といった否定的な感情 と,悲 しみ,怒 り という強い感情が一つの因子を形成 し,嬉 しさ,楽 しさ,希望,幸福感 といった肯定的感 情が独立 した別の因子を形成する。 これに対 して繰 り返 し体験す る夢 は否定的感情 と肯定 的感情が一つの軸を形成す る。 つまり,通常 に夢においては否定的感情 と同時に肯定的感 情 を伴 う夢を体験することがあ り得 るが,繰 り返 し体験す る夢 については夢が肯定的感情 を伴 うか, さもな くじ否定的感情を伴 うかのどちらか一方 しかないことを示唆す るもので ある。 因子感の相関について も両群で差異が見 られる。 通常の夢 については知覚的特徴に関す る二つの因子 (第1
因子 と第4
因子)の問の相関だけが有意であるが,繰 り返 し体験する 夢 については感情 についての二つの因子 (第1因子 と第 4因子),感情 につ いての因子 と 知覚的特徴 に関す る因子 (第2
因子 と第4
因子)の問で有意な相関が得 られた。通常の夢 の群では知覚的特徴 と感情の間にはあまり関連がないが,繰 り返 し体験する夢の場合には 両者の結 びっ さが強いことを示唆す るものである。 考 察 ・ノ大学生を被験者 とした場合,56%が繰 り返 し同 じ夢を体験す るという体験があることが 明 らかにな った。 この割合 は,Cartwright(1979)が調査 した結果 の65% と近 い値 であ り,彼の結果を裏付 けるものである。夢見の内容 は全 くランダムなわけではな く,何 らか の条件がそろった場合 には同 じ内容が繰 り返 される可能性があることが示唆 される。 繰 り返 し体験す る夢 と通常の夢の形式的特徴を比較 した結果,繰 り返 し体験す る夢 は, 不安感,緊張感,恐怖感 といった否定的感情をより強 く体験す ることが多いことが見出さ れた。そ して,繰 り返 し体験す る夢の因子分析の結果得 られた第1
因子が恐怖感 ・幸福感 の軸で特徴づけられること, この因子が知覚的特徴に関す る因子 と有意な相関を示す こと を考え合わせると,繰 り返 し体験す る夢 は強い情動が夢体験の核を占め,知覚的内容 にも 影響を与えている可能性があることを示唆す る。 この結果 は繰 り返 し体験する夢 は強い感 情 によって特徴づけ られるというCartwright(1979)の結果を支持す るものであ る。 これに対 して, 通常 の夢 の第
1
因子 は視覚, 聴覚, 運動感覚 とい った一 般 的 に夢 で体 験 され る感覚 モ ダ リテ ィが集 ま ってい る ものの, 感情 に関す る因子 とは関連性 がな く, 逮 常 の夢 は知覚 的体験 によ って特徴づ け られ るよ うで あ る。 通常 の夢 につ いて の結 果 は明 噺夢, 通常 の夢, 鮮 明な夢 の形式 的特徴 を質 問紙法 によ って比較 し因子分析 を行 った, GackenbachandSchillig(1
9
8
3
)
の報告 に含 まれ る通常 の夢,鮮 明な夢 に関す る結 果 と 一致す る。 なぜ不 快 な情 動 が繰 り返 し体験 す る夢 体 験 の核 にな るので あ ろ うか。 Cartwright (1
9
7
9
)
は入眠前 の心理 的状況が夢 の内容 に も反 映 され ると考 え,入 眠前 に強 い情動 を体 験すれば夢 の テーマがその体験 に大 き く影響 を受 け,単一 の夢 の中で も何度 も繰 り返 され ることにな り,覚醒後想起 しやす くな るとい うモデルを提唱 している。彼 は一 晩 の夢 の中 での夢 の内容 の繰 り返 しにつ いて は検討 して いないが,入眠前 に強 い情動 的 ス トレスが あ れば夢 を想起 しやす い ことを示唆 して い る。 今 回の研究 で は,入眠前 の状況 につ いて は検 討 していないので このモデルの妥 当性 につ いて は検討 で きないが,繰 り返 し体験 す る夢 の 主題 は多 くの場合強 い否定 的感情 を含 む とい う点 で彼 の知見 を支持す る結果 といえ よ う。 しか し,今 回の結果か ら,繰 り返 し体験 す る夢 で は,常 に否定的感情 が体験 され るとは 言 えない。繰 り返 し体験 す る夢 にはいろいろな内容 が あ るが,強 い否定 的感情 を伴 う内容 だけがた またま良 く想起 で きた可能性 もあ るか らで あ る。 Cartwright(1
9
7
9
)
は女性 の被験者 だ けを用 いて い るが性 差 が あ る可 能 性 を示 唆 して いる。今 回 は男性 の被験者 も用 いたが,数 が十分ではな く性差を検討す ることはで きなか っ た。今後検討 の必要 があ るよ うに思 われ る。 本研究 のデー タの一部 は,本学平成7
年3
月卒業,熊倉紋 さんの卒業研究 によ る もので ある。 引用文献Antrobus,J.(1991)Dreaming:Cognitiveprocessesduringcorticalactivationandhigh afferentthresholds.PsychologicalReview,98,96-121.
Cartwright,氏.D.(1979)Thenatureandfunctionofrepetitivedreams:asurveyandspecul a-tion.PsychiatTT,42,131-137.
GackenbachandSchilig(1983)Luciddreams:thecontentofconsciousawarenessof dreami ngduringdream.JoumalofMentalIm
a
gery,7,1114.畠山孝男,岡田 斉,松岡和生 (1992)夢見の形式的特徴 に関す る質問紙調査(3)児童 にお ける夢 見の形式的特徴 と各種 イメージテス トとの関連,東北心理学研究,42,109-110.
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