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高カルシウム血症,腎石灰化,硬化性糸球体腎炎を伴ったサルコイドーシスの一例

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Academic year: 2021

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(1)

高カルシウム血症,腎石灰化,硬化性糸球体腎炎を

伴ったサルコイドーシスの一例

高橋葉子,四十坊典晴,北田順也,鈴木一彦,鈴木明宏,寺本 信,山田 玄,阿部庄作

【要旨】

 症例は57歳男性.高カルシウム血症と腎機能障害を主訴として入院となった.患者は血中および尿中カルシウムと活性化ビ タミンDの上昇を伴っており,レントゲン写真とCT所見で両側肺門リンパ節の腫大と腎結石を認めた.肺と縦隔リンパ節生検 で乾酪壊死を伴わない肉芽腫を認め,腎生検では硬化性糸球体腎炎の所見と尿細管へのカルシウム結晶の沈着を認めた.血清 カルシウム値と腎機能並びに活性化ビタミンDは副腎皮質ホルモンによる治療の結果低下し改善した.腎病変を伴ったサ症 について文献的考察を加えて報告する. [日サ会誌 2002;22:51-55] キーワード: 腎サルコイドーシス,ビタミンD,ステロイド療法

A Case of Sarcoidosis with Hypercalcemia, Renal Calcification

and Sclerosing Glomerulonephritits

Yoko Takagi-Takahashi, Noriharu Shijubo, Junya Kitada, Kazuhiko Suzuki,

Akihiro Suzuki, Shin Teramoto, Gen Yamada, Shosaku Abe

【ABSTRACT】

 A 57-year-old Japanese man was admitted to Sapporo medical university hospital because of hypercalcemia and renal dys-function. Laboratory data disclosed elevated levels of serum and urine calcium and serum 1,25(OH)2D3. Radiological examinations showed bilateral hiliar lymphangiopathy and renal stones. Histopathological findings of the lung and mediastinal lymph nodes biopsy specimens showed non-caseating epithelioid cell granulomas. Histopathological findings of the renal biopsy specimens were sclerosing glomerulonephritis and deposits of calcium crystal in renal tubules. Renal dysfunction improved with corticosteroid therapy, in parallel with decrease in serum 1,25(OH)2D3 and serum calcium level. We reviewed reports on sarcoi-dosis with renal involvement.

[JJSOG 2002;22:51-55]

keywords ;

Renal sarcoidosis, Vitamin D, Corticosteroid therapy

………

札幌医科大学医学部第3内科 著者連絡先 : 高橋葉子 〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目 札幌医科大学医学部第3内科 TEL: 011-611-2111 FAX: 011-613-1543

The Third Department of Internal Medicine, Sapporo Medical University School of Medcine

(2)

はじめに

 サルコイドーシス(以下サ症)における高カルシウム (Ca)血症の頻度は諸外国では,報告によってばらつきは あるが2-10%と報告されているのに対し1)2)3),本邦では比 較的少なく,森川らは130例中7例(5.4%)4),山本は316例 中16例,5.3%5)に高Ca血症を認めたと報告し,濱田らはイ オン化Caのcut off値からみると44%に高Ca血症を認めた6) と報告している.  本邦のサ症剖検例における腎病変の頻度は,13%から26 %と報告されている7)8).サ症の腎病変については報告者に よって若干の違いはあるが,Mutherらは1)Ca代謝異常に よるもの,2)間質性腎炎,3)糸球体腎炎に分類している. このうち最も多いのはCa代謝異常であり,高Ca血症,高Ca 尿症,腎石灰化症などでサ症腎不全症例の50%以上に腎石 灰化症を認めると報告している9).糸球体病変はサ症にお ける免疫学的背景と強く結びついていると考えられ,サ症 外国症例における膜性腎症の頻度は原発性糸球体疾患にお ける膜性腎症の頻度と比較して高いと報告されている10). 今回我々は,高Ca血症と硬化性糸球体腎炎を伴ったサ症を 経験したので文献的考察を加えて報告する.

症例呈示

●症 例:57歳男性. ●主 訴:頻尿,口渇,体重減少 ●既往歴:49歳・狭心症 ●喫煙歴:20本/日×37年. ●現病歴:平成4年,腎結石,腎機能不全を指摘された.平 成9年ブドウ膜炎と診断され加療されていた.平成12年8月 頃より全身倦怠感,頻尿,口渇,急激な体重減少(64kgか ら59kg)のため当院を受診し,腎機能障害及び高Ca血症を 認めたため,同年10月精査目的で入院となった. ●入院時現症:身長170.0cm,体重58.9kg,体温36.2℃,脈 拍60/分,整.心音清.呼吸音に異常を認めず.表在リンパ 節は触知しなかった.腹部平坦で,肝脾は触知しなかった. 神経学的異常所見を認めなかった. ●入院時検査所見:(Table 1)  血算は正常範囲であったが,血清Ca12.2 mg/L,ACE 24.1 IU/L,リゾチーム56.1 mg/Lと上昇していた.ホルモン検査 で は 血 清1,25(OH)2D3 70.3 pg/ml(正 常 値20-60 pg/ml), PTHrP-c末端 87.6 mol/L(正常値13.8-55.3 mol/L)と上昇を 認めたが,PTHrP-intactは1.1 pmol/L未満(正常値0-1.1 pmol/ L)であった.またPTH-intactは2.0 pg/ml未満 ( 正常値 6.5-59.7 pg/ml)と低下していた.尿中Ca値は6.86 mg/kg/dayと 上昇し,24時間クレアチニンクリアランスは29.7 ml/minと 低下していた.気管支肺胞洗浄ではリンパ球比率は16.0% と軽度増加し,CD4/8比は22.5と著明に上昇していた. ●心電図:異常なし. ●胸部単純X線像:明らかな肺門リンパ節の腫大や肺野病 変は指摘できなかった. ●胸部CT:軽度の縦隔リンパ節の腫大と右下葉の胸膜下に 淡い肺野濃度の上昇を認めた(Figure 1). ●腹部CT:左右の腎萎縮と結石を認め,腹部大動脈周囲に 直径1cm程度のリンパ節腫大を数ヶ認めた(Figure 2). ●Ga67シンチグラフィー:両肺門及び縦隔リンパ節に集積 を認めたが,腎臓に明らかな集積を認めなかった(Figure 3).  以上より,高Ca血症を伴うサ症を疑い,経気管支肺生検, 経皮腎生検を予定したが,患者が気管支肺胞洗浄に引き続 く気管支鏡検査を拒否され,より確実な方法を希望された ため胸腔鏡下肺生検,縦隔リンパ節生検,経皮腎生検を施 行した. ●胸腔鏡下肺生検組織像:肺生検では,細気管支,血管周 囲および末梢肺胞に多核巨細胞を伴う,非乾酪性類上皮細 胞肉芽腫を認めた(Figure 4).また,縦隔リンパ節生検で も,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.

(3)

●経皮腎生検組織像:一部の糸球体の硬化性変化を認め た.近位尿細管上皮は腫大し顆粒状変性を認めた(Figure 5a).また,尿細管の一部でCaの沈着を認めた(Figure 5b). 肉芽腫形成は認めなかった.  以上より,高カルシウム血症,腎石灰化,硬化性糸球体 腎炎を伴ったサ症と診断した.

Figure 1. Chest CT showing ground glass opacity in right lower lobe.

Figure 2. Abdominal CT showing bilateral renal stones and swelling of paraaortic lymph nodes.

Figure 3. Gallium scintigraphy showing high uptake of pulmonary hilum.

Figure 4. Histopathological findings of a lung biopsy specimen revealing non-caseating epithelioid cell granulomas.

Figure 5. Histopathological findings of a renal biopsy specimen, revealing sclerosing glomerulonephritis (a) and deposits of calucium crystal in renal tubules (b).

(4)

●治療経過(Figure 6):高Ca血症改善目的として,プレド ニゾロン30mgを一日量として内服治療を開始した.治療開 始より血清Ca値及び尿中Ca値は低下傾向を示し,治療約2 週間後には正常域にまで改善した.治療4週後には血清 1,25(OH)2D3は70.3 pg/mlから8.3 pg/mlと低下し,24時間ク レアチニンクリアランスは29.7 ml/minより56.2 ml/minま で改善した.図には示していないがβ2MGは94400 μg/Lか ら12500 μg/Lまで低下し,PTH-intactは治療後2週間後には 基準値以下から48.1 pg/mlと正常範囲に回復した. PTHrP-C末端も治療後2週間後には正常範囲まで低下した.

考察

 サ症における高Ca血症のメカニズムは腎外性に肺胞マ クロファージと病変肉芽腫で生成される1,25(OH)2D3の増 加に起因するものと考えられている11).新美らはビタミン Dレセプター遺伝子多型を検討し,ビタミンDレセプター メッセンジャーRNAの転写活性の効率の良い遺伝子多型 が,サ症患者において健常者と比較して有意に多く存在し たことを報告している12).本症例のビタミンDレセプター 遺伝子多型は不明であるが,過剰な1,25(OH)2D3により,骨 吸収,遠位尿細管での再吸収,腸管でのCa吸収の増加がお こり高Ca血症を呈したと考えられる.  また,血中PTHrPもサ症例の肉芽腫より産生され,高Ca 血症の一因であるとの報告され13),本邦でも血清中PTHrP が異常高値を示した高Ca血症サ症例が報告されている14). 本症例ではPTHrP-intactは正常範囲であったため,本症例に おいてはPTHrPの上昇が高Ca血症の要因になっていた可能 性は低い.同様に,PTHrP-intact,PTHrPが正常範囲であっ たが,高Ca血症と腎機能障害を呈したサ症例も報告され15), PTHrPの過剰産生を伴わず,高Ca血症を呈するサルコイ ドーシスがかなりの頻度で存在する可能性がある.  サ症の腎病変は本邦の剖検例では13%から26%に合併す ると報告されているが,本邦における初診時の腎病変につ いての統計学的検討はほとんどされていない7)8)16).当院 180例のサ症患者のうち,高Ca血症を合併していた症例は5 例で,腎機能障害を呈した症例は2例であった.また,血清 イオン化Caが腎障害をよく反映する指標であり,血清イオ ン化Caと腎障害が相関することが報告されている17).

Figure 6. Clinical course of the present case.

Definition of abbreviations: S-Ca=serum calcium, Ur-Ca=urinary

calcium, 24hCcr=creatinine clearance in 24 hours, 1,25(OH)2D3 =1,25-dihydroxy-vitaminD3, PSL=prednisolone.

(5)

Mutherら9)はサ症における腎病変を1)Ca代謝異常によるも の,2)間質性腎炎,3)糸球体腎炎3つに分類した.サ症 に合併する糸球体病変の頻度に関する報告はないが,糸球 体病変は多彩であり,膜性腎症,IgA腎症,膜性増殖性糸 球体腎炎,急速進行性糸球体腎炎,巣状糸球体硬化症など が報告されているがその頻度については不明な点が多い. 今回の腎生検で得られた硬化性糸球体腎炎は,いわゆる糸 球体病変の終末像であり,萎縮と結合織の増生像である. 一般に荒廃が著明なため,原病を推定できる例はほとんど ない18).本症例の腎病変には肉芽組織は認めず,尿細管に Ca沈着を認めたことより,高Ca血症,高Ca尿症による,尿 細管間質性腎炎の存在も推定された.しかし,硬化性糸球 体腎炎との関連や,可逆性変化の範囲について,本症例の 病理組織から判断する事は出来なかった.  高Ca血症による腎障害は,Caの組織への沈着,尿細管障 害,動脈収縮,糸球体濾過値の低下,脱水などにより,腎 機能低下と間質線維化へと進行すると考えられ,また,糸 球体濾過量の減少は,高Ca血症による細動脈,輸入細動脈 の収縮により,糸球体への有効血漿量の低下が原因と考え られている19).本症例では,ステロイド投与により高Ca血 症,高Ca尿症,24時間クレアチニンクリアランス,尿細管 低分子蛋白であるβ2MGなどが改善されたが,24時間クレ アチニンクリアランス,β2MGの改善がどのような病理学 的変化によるかについては,腎機能改善後の腎生検を施行 していないため不明である.しかし,高Ca血症の改善によ る腎血流量の増加が,腎機能改善に寄与している可能性が 推測される.

まとめ

 高Ca血症と腎石灰化,硬化性糸球体腎炎を伴ったサ症を 経験した.ステロイドホルモン療法により高Ca血症と腎機 能の改善を認めた.  本症例は平成13年11月30日本サルコイドーシス/肉芽腫 性疾患学会北海道地方会にて発表した.

引用文献

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Table 1.  Laboratory data on admission
Figure 2. Abdominal CT showing bilateral renal stones and  swelling of paraaortic lymph nodes.

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