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今回の制度改定において 個別機能訓練加算の扱いに変更がありました 簡単に制度変更のポイントを表 1に示します 新制度においても 他職種が共同して利用者ごとに計画を作成し 計画的な機能訓練の実施が必要なことは言うまでもありませんが 個別機能訓練加算 Ⅰ( 以下 加算 Ⅰ) と個別機能訓練加算 Ⅱ( 以

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株式会社 ジェネラス

梅田 典宏

他職種共同・個別対応が生きる

個別機能訓練 Ⅰ・Ⅱの取り組み

他職種共同・個別対応が生きる

個別機能訓練 Ⅰ・Ⅱの取り組み

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 今回の制度改定において、個別機能訓練加算の 扱いに変更がありました。簡単に制度変更のポイ ントを表1に示します。  新制度においても、他職種が共同して利用者 ごとに計画を作成し、計画的な機能訓練の実施が 必要なことは言うまでもありませんが、個別機能 訓練加算Ⅰ(以下、加算Ⅰ)と個別機能訓練加算 Ⅱ(以下、加算Ⅱ)の違いについて、まだ十分に 理解できていない方もいらっしゃるかと思いま す。まず、加算Ⅰにおいては表1に示したとお り、常勤専従の機能訓練指導員の配置が必要とな ります。その上で複数の機能訓練の項目を用意 し、利用者が主体的に選択し、活動することに よって、生活意欲の増進を図ることが目的となり ます。加算Ⅱにおいては、生活機能向上のために 利用者ごとの心身の状況を重視し、機能訓練指導 員が適した機能訓練を行っていることを条件とす るものです。  今回は、弊社デイサービスの入浴、整容、更衣 に関する個別機能訓練の取り組みを紹介します。 平成 24 年 3 月まで 平成 24 年 4 月から 内容(キーワード) 個別機能訓練Ⅰ 基本報酬に包括化 他職種共同で利用者ごとに、計画作成・実施。指導員を120分以上配置 ※新制度に配置義務は無い)(機能訓練 個別機能訓練Ⅱ 個別機能訓練Ⅰ 常勤専従の機能訓練指導員を配置。主体的選択的なグループ活動 新規 個別機能訓練Ⅱ 機能訓練指導員の「個別的」なかかわり。共通の目的を持った 5 名以下の小グループ体操 表1

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株式会社 ジェネラス

梅田 典宏

他職種共同・個別対応が生きる

個別機能訓練 Ⅰ・Ⅱの取り組み

他職種共同・個別対応が生きる

個別機能訓練 Ⅰ・Ⅱの取り組み

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 脳梗塞による左片麻痺のAさんは、現在、リフ トによる入浴を行っていますが、ご本人、ご家族 から「できたら家でもお風呂に入りたい」という 要望があります。住み慣れた自宅での入浴は、ご 本人のQOL向上につながると思われます。デイ サービスで取り組めることとして、リフト浴を一 般浴に切り替えて実施することで、ご自宅での入 浴に一歩近づくことが可能と考えました。そのた め、「一般浴での入浴ができる」ことをAさんの 目標にしました。  Aさんの一般浴における入浴動作の課題とし て、以下の4点が挙げられます。 浴槽をまたぐときに、左下肢(麻痺側)の支 持が不十分で介助量が大きい 装具を外すと、足関節の底屈緊張のため歩 行が不安定になる。 入浴動作の手順が覚えられない。  個別機能訓練Ⅰの算定対象は基本的には利用者 全員ですが、施設規模に制限はありません。個別 に機能訓練指導員が毎日かかわることは、利用者 数の増大に伴い困難になりますので、いかに自主 トレーニングとグループトレーニングを効果的に 組むかがポイントになります。 シャワーチェアに座っている際、仙骨座り になり、洗髪・洗体介助が行いにくい  これらの課題点を加味して、介助があれば一般 浴での入浴が可能であり、在宅においても奥様か ホームヘルパーの介助があれば可能になると考え ました。  このように、はじめはリフトを使用して入浴し ていた方でも“こうなりたい”という希望に合わ せて評価を行い、出てきた課題に対してデイサー ビスで何を行うか、どうすれば希望を実現できる かといった検討が可能です。これらを実行してい くためには、相談員がご本人から「自宅でも入浴 をしたい」という情報を収集し、機能訓練指導員 が身体機能評価を行い、実際に入浴介助に入って いるケアスタッフからも情報を収集し、共同して 計画を立てることが重要です。各スタッフが利用 者に対してどのようにかかわっていくかという共 通目標を理解していることは、入浴サービス以外 でも非常に大切です。 〜自主トレーニング〜  弊社デイサービスでは、自主トレーニングの立 案は機能訓練指導員が行いますが、マシンの利用 を促しているのは運動指導員やケアスタッフで す。また、Aさんは訓練に意欲的であるため、自 宅のベッド上でできる自主トレーニングも行って もらっています。

個別機能訓練Ⅰの取り組み

課題点① 浴槽をまたぐときに、左下肢 ( 麻痺側 ) の支持が不十分で介助量が大きい

→ 自主トレーニングとグループトレーニング、生活リハを行う

ケース 1 ① ② ③ ④ 〈Aさん〉女性 脳梗塞左片麻痺 課題

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 Aさんは普段、杖を使用し、麻痺側下肢に装具 をつけて歩行していますが、入浴時には装具を外 す必要があるため、浴槽への出入り、浴槽内での 立ち座りの際に転倒のリスクが高まります。  恐怖心から、筋緊張がより高まることもあるの で、装具なしの状態に慣れていただくために、装具  Aさんは注意障害があり、集中力が続かない場 面もみられます。そこで、机上課題で塗り絵や計 〜グループトレーニング〜  自主トレーニングだけでは、目標に向けた訓 練はなかなか長続きしませんが、グループトレー ニングで他の利用者と競ったり、楽しんだり、励 まし合ったりすることが継続の秘訣となります。 個々のトレーニングをストイックに行ったほうが 効果は高いかもしれませんが、楽しくなくては継 続できません。Aさんは、グループトレーニング に参加し、数人の利用者と一緒に平行棒での立位 を外した状態で平行棒内の歩行や立ち上がり動作 を練習しています。実際の入浴場面で様子を把握す るため、定期的にAさん、入浴スタッフ、機能訓練 指導員の3人で動作確認を行っています。普段の状 況は、その日の終了時にカンファレンスで入浴ス タッフと共有することが重要です。 算問題、パズルなどを行ってもらっています。こ のときの工夫点は、あまり難しくなく、集中が続 課題点② 装具を外すと、足関節の底屈緊張のため歩行が不安定になる 課題点③ 入浴動作の手順が覚えられない

→ 装具を外しての動作練習

→ 高次脳機能障害(注意障害)に対するアプローチと入浴手順統一の徹底

平行棒でのグループトレーニング 一番身近なケアスタッフが 立ち上がり動作を介助 〜生活リハビリ〜  デイサービス内の生活では、ケアスタッフが一 番身近に利用者に接しています。そのため、日常 の動作の中で筋力トレーニングの効果が出るよう に、「椅子から立ち上がる動作では麻痺側下肢に も体重をかけてもらう」などの情報をケアスタッ フとも共有して取り組んでいます。  薬の量や種類が変わることによる筋緊張異常の 変化もあるため、ご本人やご家族から聞くこと、 の運動などを行い、集団での楽しみを持ちながら 継続しています。 医師、ケアマネジャーから情報を収集することも 重要です。

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 入浴時、洗体・先髪のためにシャワーチェアに 座る必要があります。Aさんは、座位姿勢が仙骨 座りになりやすく、右に傾いていることが多いた めシャワーチェアから落ちてしまう心配がありま す。普段の食事姿勢や机上課題を行う際に、座布 団を背もたれと背中の間に入れることや、足を載 せる台を使用し、両足底をしっかり台に着いても らい、良姿勢を保つように促しています。また、 仙骨座りの改善のため、運動指導員が行う15人程 度のグループトレーニングで、座位のスリングエ  訓練Ⅰでのかかわり方としては、機能訓練 指導員が直接行うことだけではなく、各生活 場面でそれぞれのスタッフがどのようにかか わるのか、情報を共有し計画を作成すること が重要です。また、自主トレーニングやグ ループ活動においては、「やらされている」 クササイズに参加してもらい、座位で重心移動 を行ったり、骨盤の前・後傾運動をすることで 骨盤周囲の筋力強化に努めています。  当デイサービスでは、連絡帳を用いてご家族 と情報交換を行っていますが、連絡帳以外にも、 電話や担当者会議で生活相談員や看護師からご家 族に自宅での姿勢に気を付けてもらうよう伝えて います。このとき、文章での説明より写真を1枚 撮ってお見せしたほうが伝わりやすいので、写真 でお伝えするようにしています。 「してもらっている」ではなく、その活動の 目的・効果などを利用者に理解してもらい、 「自分で選択して行っている」ということ が、その活動の継続を促し、効果を増大させ る要因となります。 課題点④ シャワーチェアに座っている際、仙骨座りになり、洗髪・洗体介助が行いにくい

→ 座位姿勢へのアプローチ

くくらいの難易度の課題をこなしていただくこと です。同程度の課題を何分でこなしているのかを 記録することで、集中の程度を把握できますし、 ご本人にフィードバックすることでモチベーショ ンを上げることもできます。  また、かかわるスタッフによって手順が異な れば動作が定着しにくいため、入浴動作の手順 表を作り、入浴スタッフで統一できるようにし ています。 入浴動作の手順表

個別機能訓練Ⅰのポイント

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 今回の加算Ⅱは、機能訓練指導員の「個別的な かかわり」を評価するものとして新設されまし た。昨年度までの個別機能訓練加算においては、 計画加算の要素が大きく、機能訓練指導員が機能 訓練を行っても、行わなくても、同じ加算点数  整容動作とは、FIM(Functional Independent Measure:機能的自立度評価)の評価項目による と、洗顔、歯磨き、整髪、手洗い、化粧・髭ひげ剃そりの 5項目です。この中でも今回は、手洗い、整髪の  整容動作において、片手でも道具をうまく利用 することで完結できることは多いですが、両手を 使う習慣を身に付けることで、麻痺側の廃用を防 ぎ、痛みの改善・予防を図り、さまざまな日常生 右手を他動的に動かすときに痛みを訴える 痛みを伴うことから、日常生活のあらゆる場面で右手 の参加がなく、使わないことで筋力低下を起こし、肩 に痛みが出てしまうこともあります。 右手を動かすように促すと動くが、日常的な使用場面 は少なく、左手のみで完結している 右手の運動性の麻痺の程度は軽いものの、感覚に問題 があります。 言葉かけの動作指示に対して、動作を実施することが 困難である 失語症により、言葉の理解が不十分なため、動作指示 をする際は単語程度の口頭指示か、実際にスタッフが 動作をすることで理解していただく必要があります。 だったものが、今回、より個別的なかかわりを実 施した際に算定できる実施加算が加算Ⅱとして新 しく創設された形です。以下に、個別的なかかわ りの具体的な取り組みを紹介します。 自立を目指したBさんの取り組みをご紹介します。  Bさんは、デイサービス利用中に以下のことが 観察されます。 活動作の場面においても両手での活動につなげる ことができます。その第一ステップとして、整容 動作のうち、両手での動作が必要な手洗い、整髪 の自立を目指しました。

個別機能訓練Ⅱの取り組み

ケース 2 〈B さん〉 60 歳代 女性 脳梗塞右片麻痺 失語症あり(理解・表出ともに中等度) 1. 2. ➡ ➡ ➡ 3. 日常では左手を使われていました

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 Bさんの様子を見ていると、痛みのため麻痺側 上肢を使わないようにしている様子が見受けられ ました。使わないでいることで、肩周辺の筋力の 低下や筋肉の短縮により、さらに動作時に痛みを 出してしまうという悪循環に陥っていました。他 動的な可動域運動よりも、痛みの無い範囲での自 動運動を促すことで、筋力をつけながら柔軟性を 保つことができます。Bさんは、肩の痛みがある 方や軽度の麻痺のある方など、5名程度を対象と したボール体操に参加し、ポイントの助言を受け ながら、麻痺側の手でボールを転がしたり、両手 で持ち上げるなどの訓練を行いました。これによ り、非麻痺側の軽い介助がある中での自動運動を 実施することができます。  両手を使わないとやりにくい作業活動を提供 し、麻痺側の手の参加を促すことにしました。意 識的に手を参加させる動作は、そのときは使おう  こうした体操を実施することで、Bさんは右手 に意識を向けるようになり、普段も右手を意識的 に動かそうという気持ちになり、デイルームで肩 を回したりする姿が見られるようになりました。

1. ボールを使ったグループ体操で麻痺側上肢の痛みを緩和する

2. アクティビティの中で、麻痺側の手を活動に参加させる

グループでのボール体操に参加し、自動運動を実施  最初は、麻痺側の手は紙を押さえる程度の参加 とし、角を合わせたり、折り目をつけるのは非麻 痺側で行えるように動作の練習をしました。動作 指示が必要ですが、やることがパターン化する と、自然に麻痺側と非麻痺側の役割分担ができて きます。無意識に麻痺側を使うようになったら、 今度は麻痺側で折り目をつけるように指示をし、 麻痺側の分担範囲を広げました。 ① 広告でのゴミ箱作り とするものの、普段の生活場面では結局使わない ということになりかねないので、無意識に参加し てしまう難易度が一番有効です。

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 Bさんは失語症があることから、こちらの口頭 での指示がなかなかうまく伝わらず、どういった 動きをしたら痛みが出るのかなどを詳細に聴き取 ることも難しいです。実際の場面でそのときの表 情などから痛みの程度を伺い、微調整を行ってい く必要がありました。  手洗い動作は、両手で行うという意味ではうっ てつけで、水(温水)や石けんを使うことで、感 覚入力をすることができ、視覚、触覚、温冷覚に よるフィードバックができるため、麻痺側への意 識付けをより効果的に行えます。手洗い動作は、 肩からの挙上動 作があまり無い ため、肩に痛み を出すことなく 取り組むことが できます。  整髪動作の目標の一つを、「ご自身でドライ ヤーを使って、髪を乾かしブラシで整える」こと としています。まず、両手を使うことを習慣付け てもらうため、麻痺側で手鏡を持ち、非麻痺側で 髪の毛をとく練習をしています。動作の難度とし ては簡単ですが、普段の生活の中で、いかに麻痺 側も使っていくかを重視しています。

3. 実際の生活場面での動作練習

① 手洗い動作 ② 整髪動作  難易度を上げた作業活動として、折り鶴に挑戦 します。折り方の後半の細かいところは難度が高 いため、まずは、前半の比較的簡単なところをB さんに担当してもらい、仕上げを他の利用者にお 願いしました(余談ですが、失語症の方は、言葉 でのコミュニケーションにストレスを感じること が多いので、作業活動を通じて、他者とコミュニ ケーションを取れる場所を提供するのもデイサー ビスの重要なかかわりです)。この時点で、ゴミ 箱作りのときの麻痺側で押さえる、折り目をつけ る(一部)といった役割が、指示をしなくてもで きているかを確認します。できていないようであ ればゴミ箱作りに戻るか、その場でやり方を指示 してみます。これらの繰り返しから、日常的に右 手を参加させることを習慣づけていきます。 ② 折り鶴

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 Bさんの場合、運動性の麻痺が少ないものの、 日常的に麻痺側上肢があまり使えていないという 点が一番の問題と考えていました。使いにくいこ とで使用頻度が減り、廃用性の機能低下を起こし てしまっている状態でした。Bさんに対しての個 別機能訓練計画において、特に気をつけたのは、 無理なく無意識のうちに麻痺側を使っていくとい う点でした。そのためには、肩に力が入っていな いか、姿勢が悪くなっていないかなどの動作観察 を行い、無理があるようであれば、動作の難易度 を下げるという対応をする必要があります。  Bさんの整容における最終目標は、「ご自分で 化粧をする」ということを考えています。女性 にとっては日常であるお化粧の行為を取り戻す ことで、BさんのQOLは大きく改善すると考えて います。

4. B さんの目標設定

目 標 プログラム 期    間 1 ヶ月 2 ヶ月 3 ヶ月 4 ヶ月 5 ヶ月 6 ヶ月 STEP1 両手を使って手洗いができる ●広告でのゴミ箱作り ●ボール体操 ●手洗い動作練習 STEP2 両手を使って髪をとかす鶴を折る手鏡を持ち、髪をとかす STEP3 ドライヤーを使って髪を乾かすスリング体操で肩を動かす自分で髪を乾かす STEP4 化粧をすることに意欲的になる スタッフやボランティアによる化粧の実施 STEP5 自分で化粧をする 表2 今(平成 24 年 5 月)の段階  必ずしも、マンツーマンで動作練習をする ことが加算Ⅱの対象ではありません。グルー プ活動やポイントを絞ったかかわりなどもう まく組み合わせた計画を立て、実施していく ことが重要です。

個別機能訓練Ⅱのポイント

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 他のケアスタッフに自主トレーニングの様子を 見守ってもらい、継続して実施してもらえるよう に促していきます。写真などを利用し、注意点を 書き込んだ自主トレーニング表の用意をしておく と、他スタッフも状態の確認がしやすく、リスク が少なくて、より効果的なトレーニングが可能と なるでしょう。 ● 自主トレーニング実施状況のチェック  機能訓練指導員によって、肩関節のストレッチ を行います。個別対応によって問題を明確にで き、ご本人に適したトレーニングの提案が可能に なり、スピーディーな問題解決を図れます。ま た、効果を持続させるため、自主トレーニング表 を作成するとよいでしょう。 ● 肩の状態の評価および関節可動域練習、   自主トレーニングの助言  加算ⅠとⅡの両方を算定する場合の内容の分け 方について、更衣動作に関する具体的な事例を紹 介します。  更衣動作に必要なことは、一体何でしょうか? 「手が上がり、肩がよく動くこと」が真っ先に思 い浮かぶかもしれませんが、ほかにも、衣服を着 脱する手順を正しく行えること、また自分の身体 や周りの物に注意を払う能力も必要です。そのた め、更衣動作においては、多角的に利用者を見る 視点が重要です。  脳梗塞後遺症(左片麻痺・高次脳機能障害あ り)を持つCさんは『更衣動作の自立』という目 標を立てた際、右記のような課題が挙げられま した。 左側の麻痺により自分の意思で手が上が らない。肩の拘縮もある 衣服の裏表や上下・左右をうまく理解で きず混乱する場面がある 左にある物に気付かない、ドアを通りぬ けるとき左側にぶつかってしまう  これらに対するプログラム例を紹介します。更 衣という課題を克服するには、機能訓練指導員に よる専門的なアプローチが欠かせないのですが、 一方で、更衣はデイや家で毎日実施する生活動作 であり、これを日常の習慣(自立して行う)とし て取り入れるためには、利用者とスタッフ(関係 事業所を含む)、家族との連携が不可欠です。

個別機能訓練ⅠとⅡの両方の算定

ケース 3 加算Ⅱ 加算Ⅰ 課題点① 麻痺により自分の意思で手が上がらない

→ 肩関節の可動域を拡大する

課題 ① ② ③

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 座位で行うストレッチを中心としたスリング体 操に参加していただいています。対象者は、肩に 痛みのある方や片麻痺の方、パーキンソン病の方 などで、体操では、肩を前後・左右にゆっくり、 大きく動かしていきます。肩の重さがかからず手 軽に行えるので、筋群の過度な緊張を抑え、自発 的な運動を促せます。両手を使う運動を取り入れ ることで、麻痺側にもしっかり刺激を入れること ができます。 ● 小集団スリング体操に参加  機能訓練指導員と着脱の手順を確認し、反復練 習を行います。参考書で正しい更衣方法を勉強で きますが個人差もあるため、正しい手順をただ押 し付けるだけにならないよう留意する必要があり ます。また、動作の中で得意・不得意があります が、不得意なことについては、初めはスタッフと 一緒に行いながら練習をしていくことで、ご本人 のモチベーションを保つことができます。Cさん の場合は、先に麻痺側の手に袖を通せば、その 後、時間はかかるものの着衣が可能になりまし た。同様に脱衣では、右手を抜く介助を行えば、 後は助言で可能になりました。  少しのヒントで、できる範囲を自分で行う習慣 づけをしていくことを優先課題としました。上着 を着脱する際は、最初だけ手伝うことを共通ルー ルとし、スタッフ間で共有できるように更衣方法 の手順表を作成しました。 ● 正しい更衣方法の確立 加算Ⅱ 加算Ⅰ スリング体操で麻痺側上肢をしっかり伸ばし ます 課題点② 衣服の裏表などが理解できず混乱する場面がある

→ 更衣の手順を理解する

C さんは衣服の裏表や左右の袖の区別に苦労 していたため、目印を伝えつつポイントを確 認しました  更衣のような身の回りの動作で手順の理解が難 しい場合、反復練習が有効で、いろいろな場面で 更衣動作練習を取り入れることが大切です。デイ サービスの利用時間内には、トイレ動作、入浴、 来所・帰りの際の着替えなどの場面で、練習に取 り組めるチャンスが豊富にあります。  このときの更衣方法、目的を各スタッフが共有 し、同等の方法・介助量で対応することが大切で す。これにより、同じ介助でも「本人の能力を生 ● 各場面において更衣練習を実施 加算Ⅰ

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 集中力が切れやすい方の場合は、ときに個別対 応が必要になります。注意散漫な状態になってし まうと、課題に集中できず、満足できる結果に繋 がらないことがあります。Cさんに関しては、あ る課題を実施する際に、最初は個室で最初から最 後まで集中して取り組む練習を行い、慣れてきた ところで小集団グループへの参加を促しました。  塗り絵や貼り絵といった作業活動や計算問題、 書字といった課題を提供します。原則、簡単な内 容のものから始め、作業時間中に完結できる活動 ● 個別の注意課題トレーニング ● 作業活動グループに参加 加算Ⅱ 加算Ⅰ 課題点③ 左側の注意が難しい

→ 左側や身体に対する注意を促す

が望ましく、完成した作品をご本人と一緒に確認 する作業が大切です。作業中には必要に応じて助 言を行い、失敗をさせないよう留意する必要があ ります。慣れや上達に応じて難易度を上げたり、 ある作業が完成するまでの時間を測ったりするな ど、集中して取り組める環境をつくっていきま しょう。 表を用いてご本人とスタッフで更衣方法を統一し、練習しています かした質の高い介助」が可能となります。質の高 い介助は、利用者の能力を最大限に引き出し、次 のステップへの足掛かりとなります。デイサービ スのように他職種・多人数でかかわる場合には、 介助の質により利用者の能力や予後が大きく変化 することを強調したいと思います。

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 プログラム実施において、個別対応ももちろん 重要ですが、他職種共同での視点とその対応も欠 かせません。個別(1対1)でかかわれる時間は ある程度限られていますが、グループでの活動で あれば時間を長く取ることができ、目標達成に向 けた取り組みをしっかりと行うことができます。 また、複数のスタッフでかかわることで、さまざ まな視点から利用者を評価することが可能にな り、可能性や目標について、きめ細かく対応する ことができます。そのためには、日常からミー とが大切なポイントです。  個別対応が生きる加算Ⅱや他職種共同が生きる 加算Ⅰの両者で利用者をバランスよく支えてい けると、より効果的な機能訓練が可能となるで しょう。  最後に、当たり前にやっていた更衣動作などで 失敗する・なかなか着られない思いを味わうこと は、自己の障がいの存在を痛烈に感じさせること だと思います。無理に押し付けず、こだわらず、 利用者の反応や状態をしっかり見ながら取り組ん でいただきたいと思います。  上記の加算Ⅰ・Ⅱの取り組みを整理すると、以下のようになります。 より効果的な機能訓練にむけて 個別機能訓練加算Ⅰ 個別機能訓練加算Ⅱ 肩関節の可動域を拡大する ●自主トレーニング実施状況のチェック小集団スリング体操に参加 ●肩の状態評価 ●関節可動域運動 ●自主トレーニング表の作成 更衣の手順を理解する 各場面において更衣練習を実施 正しい更衣方法の評価、実施 左側や身体に対する注意を促す 作業活動グループに参加 個別の注意課題トレーニング 個別機能訓練Ⅰ・Ⅱの取り組みで活用している評価表と計画書 書類の紹介

参照

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