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在宅生活ハンドブックNo.9 終了後の関節可動域訓練

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「 在 宅 生 活 ハ ン ド ブ ッ ク No.9」

終了後の

関節可動域訓練

別 府 重 度 障 害 者 セ ン タ ー ( 理 学 療 法 部 門 2014)

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も く じ は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 Ⅰ 関 節 可 動 域 の 基 礎 知 識 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 . 関 節 可 動 域 ( 1 ) 関 節 可 動 域 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ( 2 ) 姿 勢 や 動 作 に 必 要 な 関 節 可 動 域 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 ①関 節 可 動 域 制 限 があると困 難 となる姿 勢 や動 作 ②基 本 姿 勢 における関 節 可 動 域 2 . 関 節 拘 こ う 縮 しゅく の 基 礎 知 識 ( 1 ) 関 節 拘 縮 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 Ⅱ 関 節 可 動 域 訓 練 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 1 . 関 節 可 動 域 訓 練 と 訓 練 の ポ イ ン ト ( 1 ) 関 節 可 動 域 訓 練 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 ( 2 ) ス ト レ ッ チ の ポ イ ン ト ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 ( 3 ) 関 節 可 動 域 訓 練 の 具 体 例 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 ① 車 い す に 乗 っ た ま ま で き る ス ト レ ッ チ ② ベ ッ ド や マ ッ ト で で き る ス ト レ ッ チ ③ 道 具 を 使 っ て で き る ス ト レ ッ チ * 用 語 の 解 説 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 9

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1 はじめに 私たちの関節は、日常の運動によって柔軟性が維持されています。寝たきりで長時 間関節を動かさない状態が続いたり、麻痺などによって日常の運動が制限されてしま うと、関節が硬くなってしまいます。関節が硬くなると、動きが悪くなり動かせる範囲が 狭くなります。これを関節か ん せ つ可動域か ど う い き制限せ い げ んといいます。また、痙け い性せ い(*1)などで筋の緊張が 強くなることで、身体の動きが限られてくることも関節が硬くなる原因のひとつです。 当センターでは、理学療法士及び作業療法士によるストレッチなどの関節か ん せ つ可動域か ど う い き 訓練く ん れ ん(関節の動かせる範囲を広げる訓練)を行っており、関節可動域制限をつくらな いようにしています。利用者の方はセンターを終了後、それぞれの地域の病院や施 設で関節可動域訓練を継続していく方もいますが、運動量が減ったことなどから関節 可動域制限をつくってしまうこともあります。そうなると各種動作が困難となり、日常生 活動作(以下、ADL と言う。)に支障をきたしてしまうことになります。 ここでは、可動域制限をつくらないためにも、ADLに関連した関節可動域について の知識を深めていただくとともに、自分でできるストレッチを紹介します。 Ⅰ 関節可動域の基礎知識 1.関節可動域 (1)関節可動域とは 関節可動域とは、身体の各関節が正常で本来の機能を発揮できる範囲 (角度)のことです。関節の運動範囲(可動域)は、関節の周りの靭帯じ ん た い、腱、筋 肉および関節包(*2)がどの程度強固に関節を取り巻いているかによって決 まります。関節の構造がよりゆるく、柔軟であるほど、より大きく動かすことが できます。 しかし麻痺や筋力低下により、各関節を最大範囲まで動かせなくなる場合 があります。皆さんも麻痺等により各関節を自身で動かせなくなったことから 可動域が減少しADLに支障が生じた方もいらっしゃると思います。各関節が 構造上どの方向にどの程度動くのかという知識と合わせて、ご自身の各関 節をどの方向にどの程度動かすことができるのかを把握することも重要であ るといえます。

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2 (2)姿勢や動作に必要な関節可動域 関節可動域制限があると、車いす座位や長座位(*3)といった生活場 面で必要な姿勢をとることができなくなる場合があります。さらに関節 可動域制限がある状態で車いすに乗車すると、姿勢が崩れやすくなり、 姿勢の崩れによって起きるズレや摩擦、局所的な圧迫によって褥じょく瘡そ う(床と こず れ)の発生リスクが高まります。 頸髄損傷者は、ベッド上や高床の環境でADLを行うとき、長座位姿 勢をとって動作をすることが多くあります。その際には、長座位保持の ための関節可動域だけでなく、残存筋力による力が身体にうまく伝えら れる姿勢をとるための充分な関節可動域が必要となります。 ①関節可動域制限があると困難となる姿勢や動作 関節可動域制限があると困難な姿勢や動作を、関節可動域制限がな い場合と比較したものを表にします。どの部位の関節可動域制限がどの ような姿勢や動作に関係してくるかの参考にして下さい。 関節の基本構造

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3 関節可動域制限あり 関節可動域制限なし 体幹 体幹の柔軟性が高いと、長座位でバランスをとることができるため、両上肢を自 由に動かすことが可能となります。 肩 肩関節伸展は80度程度あると、起き上がり動作が行いやすくなります。 肘 ・ 手 肘関節伸展・手関節背屈制限がみられると、座位で床に手をついて荷重をしっか りと支持できなくなります。肘を伸ばす(肘伸展)動作に関わる上腕三等筋が機能 しないレベルではプッシュアップや移動が困難となります。 体幹と腕の間隔が狭い 上肢を自由に動かすことができる 体幹が曲がる 腕が後方へ出せない 手や肘を体のよ り後方につける 体幹と腕の間隔が広い 肩の力が床に伝わり臀部の移動ができる 肘が伸びている 手の平全体が床についている 手の平が床につかなかったり、肩の力が外 側へ逃げて体などを支えることが難しい。 肘が曲がったま ま伸ばせない 手の平が床につかない 体幹のバランスがうまくとれず、上肢が床から離せない 体幹が曲がらない

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4 関節可動域制限あり 関節可動域制限なし 股 股関節外旋制限がみられると、靴の着脱や移乗動作時の下肢を組むことが困難 となります。 股 ・ 膝 股関節屈曲、膝関節伸展の制限がみられると、長座位がとりにくく、前方に移動 することが困難となります。膝を伸ばした状態で股関節の屈曲を90度程度にとど めておくことで座位バランス、前屈位からの起き上がりなどの動作に便利なことも あります。 膝 ・ 足 膝関節屈曲、足関節背屈制限がみられると、車いすのフットサポートへの足のせ が困難となります。 股関節がかたく足が組めない 足が組めて、靴の着脱等に役立つ 膝が開いてくる 曲がらない 膝が曲がらない 足 首 が 上 に 上がらない 足が投げ出された状態になり、フッ トサポートに足がのらない 膝が開いてこない

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5 ②基本姿勢における関節可動域 ア.車いす乗車姿勢 関節可動域制限があることで車いすに姿勢よく乗車することがで きないことがあります。姿勢よく車いすに乗車できないと、姿勢が 崩れやすいことや、それによって起きる臀部のズレや摩擦で褥じょく瘡そ う発 生の危険もあります。車いすに姿勢よく座るために必要な可動域を 下に図にして説明します。参考にしてください。 よい姿勢 体幹 自然な円背姿勢 良好なバランがとれ、上肢 を使いやすくするため必要 足 背屈 必要 足が背屈方向に向くことで、車いすのフッ トサポートから足が落ちないため必要 膝 屈曲 90 度程度 必要 膝を曲げて足を車いすのフットサ ポート(足置き)に乗せるため必要 股 屈曲 90 度以上 必要 股関節が曲がることで、しっかり座面 の奥まで座ることができるため必要

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6 関節可動域制限があると・・・ 股 屈曲制限 股関節が曲がらずに、しっかり座面の 奥にすわることができず、臀部が前方 へずれてしまう 体幹 可動域制限 背中が曲がっていると座位のバラ ンスをとりにくくなり、頸にも負担 がかかりやすい 膝 屈曲制限 膝が曲がらないと足を投げ出した状態 になり、フットサポート(足置き)に足が 乗らない 足 背屈制限 足が背屈方向に曲がらない と、車いすのフットサポート に足が置くことができない

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7 イ.長座位姿勢とプッシュアップ動作 頸髄損傷者のADL動作では長座位姿勢とその姿勢からのプッシュ アップ動作は大変重要です。長座位姿勢やプッシュアップ動作に必要 な関節可動域を下表にまとめました。長座位姿勢が取りづらくなった り、プッシュアップ動作が行いづらくなった場合、原因は限定できま せんが、これらの関節可動域に制限が出てきている可能性も考えられ ます。姿勢や動作に必要な関節可動域を把握して、日頃から関節可動 域制限をつくらないように心がけましょう。 長座位姿勢 プッシュアップ動作 ① 頭頸部 頭や首を動かすことで座位 のバランスをとるため、色々 な方向に円滑に動かせるこ とが必要 バランスをとりながら動作するた め、色々な方向に動かせることが 必要。特に頭や首を曲げることで より臀部が高く上がることに役立 つため屈曲方向は重要 ② 体幹部 自然な円背姿勢 良好な座位バランスに必要 自然な円背姿勢 動作時のバランスをとり、効率よく 上肢に荷重をかけるために必要 ③ 肩・肩け ん甲帯こ う た い 肩や肩甲骨を動かすことで 座位のバランスをとるため、 色々な方向に円滑に動かせ ることが必要 肩、肩甲帯の力で床面を押すた め、色々な方向に力強く動かせる ことが必要 ④ 伸展制限なし 上肢の支持で姿勢を保持す るために必要 伸展制限なし 長座位より大きく上肢にかかる荷 重を支えるため必要 ⑤ ① ② ④ ⑥ ⑦ ⑤ ③ ① ② ③ ④ ⑥ ⑦ 長座位姿勢 プッシュアップ動作

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8 床を押す肩の力を逃がすことなく 床面に伝えるために必要 ⑤ 手首 背屈 90°程度必要 手の平を床面につき、姿勢 を保持するために必要 背屈 長座位姿勢より体幹が前傾してく るため、さらに背屈角度が必要 ⑥ 屈曲 90°以上 股関節が 90 度以上曲がらな いと足を伸ばした状態で座る ことは困難になってしまうた め必要 屈曲 90°以上 長座位姿勢より体幹が前傾してく るため、さらに屈曲角度が必要 ⑦ 伸展制限なし 膝が曲がってくると、足が開 いてきてしまい座位のバラン スが悪くなるため、膝が伸び ていることが望ましい 伸展制限なし プッシュアップ時に膝が曲がってく ると体が前に倒れやすくなってし まう。また足が曲がって、横に広 がってしまうと、手掌が体の近くの 床につけなくなり、プッシュアップ が行いづらいため、膝が伸びてい ることが望ましい

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9 8~16 週 強直の 発生 2、3日 3~4週 関 節 の 固 定 拘 縮 の 始まり 拘縮の 完成 2.関節拘縮の基礎知識 (1)関節拘縮とは 関節可動域制限の原因のひとつとして、関節拘縮があります。関節拘縮 とは関節が動かない状態が続くことにより、関節の周りの靭帯、腱、筋肉 などの軟部組織が短縮したり、癒着ゆ ち ゃ く(*4)・瘢痕は ん こ ん(*5)化したりすること で、関節の動きが制限されたことをいいます。 関節が何らかの理由で固定され、その期間が長くなるほど重度化し、最 も重い強直の状態となると、外科的手術が必要となります。強直とは関節 周囲の軟部組織ではなく、軟骨や関節包の変化によって起こる関節可動域 制限のことです。このような関節拘縮が起こらないようにできる範囲で関 節を動かして予防することが大切です。 血液循環障害、栄養障害 関節が動かない状態によって血流が低 下し、必要な栄養分の補給ができなくな り、筋肉等の軟部組織が変化しはじめる 軟部組織の短縮、癒着、瘢痕化 関節の周りにある皮膚や靭帯、筋肉など が短くなり、硬くなることで関節が動かし にくくなる 関節自体(関節包、軟骨)に変化が 起こる 関節軟骨が硬く、薄くなり、骨と骨との隙 間が狭くなることで関節が動かなくなる 固定した関節の変化

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10 Ⅱ 関節可動域訓練について 1.関節可動域訓練と訓練のポイント (1)関節可動域訓練とは 関節可動域訓練とは、関節を動かし、関節拘縮を予防する訓練のことです。 動作獲得のために必要な可動域の確保と維持のために行います。関節可動域 訓練は、他者に行ってもらう方法(他動的関節可動域訓練)と、自分自身で行う 方法(自動的関節可動域訓練)とがあります。関節可動域制限をつくってしまう 原因は様々あり、その違いによって訓練にもいくつかの種類(ストレッチ、関節モ ビライゼーション(*6)、リラクゼーションなど)がありますが、自身でも簡単に行 えるものは、ストレッチ(筋肉を伸ばすことで関節拘縮を予防できる)です。 (2)ストレッチのポイント 以下のポイントを覚えておくと、より効果的なストレッチをすることができます。 参考にしてください。 ①体を温めてから行う 体が温まった状態は筋肉の柔軟性が高い状態であるため、ストレッチの効 果はより高くなります。入浴後の体の温まった状態や、車いすをゆっくり漕ぐ などの軽い運動の後が効果的です。 ②反動をつけない 筋肉をのばすとき、反動をつけると筋肉が緊張して筋肉や腱をいためてし まう危険があります。静かにゆっくりと伸ばしていきましょう。また、過剰な力で 行うと筋肉をいためてしまう以外にも骨折や関節の脱臼を引き起こしてしまう ことがあるので要注意です。 ③少しずつ伸ばす 筋肉を一気に伸ばしてしまうと筋肉をいためてしまうため要注意です。関節 のひとつの動きを5~10 段階に分けるような気持ちで徐々に伸ばしていくよう にします。 ④ゆっくり、大きく伸ばす 「痛みの出ない範囲、痛みを感じる手前」まで伸ばすことがポイントです。 その地点まで伸ばしたら、その状態をまずは5秒間維持しましょう。だんだん と維持する時間を長くしていき、最終的には30秒程度を目標にしましょう。

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11 ⑤呼吸を止めない 息をとめて筋肉を伸ばそうとすると、筋肉が緊張して伸びにくくなります。ゆ っくりとした呼吸でリラックスしながら行いましょう。 ⑥意識して筋肉を伸ばす 伸ばす筋肉を意識してストレッチを行いましょう。意識をすることで脳と筋肉 の活動が盛んになり、効果的です。 ⑦継続して行う ストレッチは1日に何回してもよいのですが、1日1回でも継続して行うこと が大切です。自分でできる範囲のストレッチを無理なく長期間継続して行って いくことが重要です。 (3)関節可動域訓練の具体例 自身でできる関節可動域訓練としてストレッチを紹介します。車いすに乗車 したままできるものとベッドやマットの上で行うものを紹介しますので、無理の ない姿勢で行えるものを選択して行うようにして下さい。効果的なストレッチ を行うためには、ゆっくりと大きく伸ばし、最低でも5秒間はその状態を維持し ます。各部位をまんべんなくストレッチすることも大事ですが、関節可動域制 限のできやすい関節や方向は個人によって異なります。どのストレッチを重 点的に行ったほうがよいのかは専門家にご相談ください。

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12 ① 車いす上でできるストレッチ (ア)体幹・頸部 頸部 屈曲 頭を前に倒し、頸を下に曲げ ます。できる方は自分の手で 軽く押さえてストレッチをかけ ます。 頸部 伸展 首を後ろに動かします。 頸部 側屈 首を横に曲げます。左右行 います。 頸部 回旋 鼻先を真横に向けるような方 向に首を回します。左右行い ます。 体幹 側屈 片方の手をアームレストや後 ろのグリップに引っ掛けて支 えをつくり、逆方向に体を倒 します。左右行います。 体幹 回旋 片方の手を後方のグリップに 引っ掛けて、同じ方向に体を 回します。左右行います。 体幹 前屈、肩甲骨 肩を後方に動かし、後ろのグ リップや背もたれに引っ掛け て背中を背もたれから離すよ うにします ゆっくり痛みのない範囲でのばしていき、各ストレッ チの最終姿勢を5秒以上維持します。 車椅子に座った姿勢が左右非対称であったり、ゆ がみがあったりする場合は、体幹、頸部の側屈、回 旋のストレッチを左右両方行ってしまうと、姿勢の崩 れを助長してしまうこともあります。左右片方のみ行 ったほうがよいストレッチがある場合もありますの で、わからないときは専門家にご相談ください。

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13 (イ)上肢 肩 水平内転 手の平を下に向けた腕を肘 の部分を押さえて胸に引きつ けるようにします。 肘 伸展 台や膝の上に手を置き、手 の平に体重をかけるようにし て肘を伸ばします。 肩 外転 肘屈曲 側方から腕をあげていき、反 対側の手で肘部分を押さえて 肘を曲げます。肘の上を押さ え脇を伸ばすようにします。 手 伸展(背屈) 手の平を下に向けて車いす のフレーム部分に置き、手の 平に体重をかけるようにして 手首を手の甲側に曲げてい きます。 フレームに手を置くことが難し い場合は反対側の手で手の 平上側を押さえて手の甲側に 曲げていきます。 手 屈曲(掌屈) 手の甲を上に向けて車いす のフレーム部分に置き、体重 をかけるようにして手首を手 の平側に曲げていきます。 フレームに手を置くことが難 しい場合は反対側の手で手 の甲を押さえて手の平側に 曲げていきます。 指 屈曲、伸展 指をしっかりと曲げ伸ばしして いきます。1指ずつ曲げ伸ば ししていき、指のひとつひとつ の関節すべてを曲げ伸ばしす るように行います。

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14 (ウ)下肢 股・膝 屈曲 片足ずつ膝下に手を入れ、足 を挙げた状態から足を体に引 き付けるようにして曲げ込ん でいきます。 股 外旋 片足ずつ股関節、膝関節を 曲げて反対の足に組むように 乗せて膝を下に推しつけるよ うにします。 股 内旋 片足ずつ膝を立てて膝を内側 へ、足首を外側へ曲げるよう にします。 足 背屈 足 底屈 片足ずつ股関節、膝関節を曲げて反対の足に組むように乗せ て足が固定できる位置まで引き寄せます。一方の手で足首を しっかり固定して曲げ伸ばしします。背屈は足の裏、底屈は足 の甲を固定します。

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15 ②ベッドやマットでできるストレッチ (ア)体幹 体幹 伸展、股 伸展 腹ばいになり、肘をついて体を反らすように上体を支えます。 可能であれば上肢の力を使って肘を伸ばし腕立て伏せのよう な状態で上体を支え、体を反らします。なるべく1日に1回はこ の姿勢がとれるとよいでしょう。 体幹 回旋 長座位から片手は体の後ろ、 片手は同側の膝の横辺りに 手をつき、体を捻ひ ねるようにしま す。 体幹 屈曲、股 外旋、肩 伸展 あぐらをかいた状態で体を前に曲げ込みます。両手を後ろで 組むことができれば、組んだ手を上に上げます。 体幹 屈曲、膝 伸展 膝にベルトを巻き足が広がら ないようにして、胸が膝につく ように体を曲げ込みます。 (イ)上肢 肩 屈曲 片方の上肢を前方から上げ ていき反対の手でさらに頭の 後ろの方へ押しあげます。 肩 外転 片方の上肢を横から上げて 反対の手で肘付近を持ち耳 に腕をくっつけるようにして押 し上げます。 肩 水平内転 手の平を下に向けた腕を肘 の部分を押さえて胸に引きつ けるようにします。

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16 (ウ)下肢 股、膝 屈曲 足 背屈 片足を立膝とします。足を体 のほうに寄せるようにして足 底に体重をのせます。 股 屈曲 片足ずつ両手で膝を抱え、胸 につけるように動かします。 股 外旋 両足を前方に組んであぐらを かくようにして、膝部分を床方 向に押し付けます。 股 外転 体幹 屈曲 できるだけ足を広げて膝を伸ばします。肘をつかって外側に広 げていきます。両足の間で体を前に曲げてリラックスした状態 にします。 ③道具を使ってできるストレッチ 自分自身で関節可動域訓練を行うときに活用できる環境や道具を紹介しま す。道具を使うことで自分では動かせない箇所や範囲の可動域訓練が可能と なります。 (ア)ベッド、ベッド柵 体幹 伸展 ベッド上で就寝時と逆に臥位になり、足のギャッジ機能を使用し、体幹を反らせます。上がったマ ットレスとベッドフレームの間に頭が滑り落ち、はさまないように注意が必要です。

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17 股 屈曲・膝 伸展 足 背屈 足底板などに足を固定して、 膝を伸ばしたまま体幹を前屈 させます。膝が開くようなら膝 ベルトを使用して、前屈したと きの足の開脚を防ぎます。 肩 伸展・肘 伸展 手の平をベッドの上に置き、ベッドから遠い方の車いすのタイ ヤを後方に引き、体を反転させます。 体幹 屈曲・肩 屈曲 ベッド上に伏せるようにしてリ ラックスした状態で上体を伸ば します。自分が起きあがれる 高さや、体幹がよく伸びる高さ に、ベッドの高さを調整しましょ う。 肩 伸展・肘 伸展 ベッドの昇降機能を使い、ベッ ドを高くします。ベッド柵に手首 を引っ掛け固定し、柵から遠い 方の車いすのタイヤを後方に 引き、体を反転させるようにし て肩の前側と肘をしっかり伸 ばします。 肩 外転 ベッドの昇降機能を使い、ベッ ドを高くします。ベッド柵に対し て車いすを水平に位置させ、 手をベッド柵上端へ置きます。 手首部分で固定し、下方向へ ベッド柵を押し付けて肩の横 面と肘をしっかり伸ばします。

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18 センターでよく使用するスト レッチポールのサイズです。 参考にして下さい。 (イ)ストレッチポール ストレッチポールはスポーツ用品店等で市販されている種類も多く、様々な長さ、 太さ、硬さのものがあります。使用感で選ぶことをおすすめしますが、長時間身体の 下に敷いておくことは褥瘡のリスクも高まるため、皮膚のチェックを行いながら使用 しましょう。 また、週刊誌や電話帳とバスタオルを2、3枚やタオルケット等をかために巻い て荷物紐で縛るなどして、自作のポールをつくることも可能です。硬さや太さなど自 身にあったものが作製可能です。 体幹 伸展、肩 外旋 臥位の姿勢でポールを腰部分に横方向に 入れ込みます。手を広げた状態で肘を軸 に上方向へ向けると肩のストレッチにもな ります。 体幹 伸展 肩甲骨 内転 臥位の姿勢で体の中心にポールを縦方向 に入れ込みます。手を広げた状態で肘を軸 に上方向へ向けると肩や肩甲帯のストレッ チにもなります。 雑誌や電話張 バスタオル 直径 10cm 程度 全長 60cm 程度

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19 用語の解説 用語 解説 *1 痙性 (けいせい) 脳、脊髄の障害のために、自身の意思とは無関係に筋肉が動いて しまう症状です。手足が突っ張るようになり、手足を曲げられない、 関節が屈曲・伸展してしまい思うように動かせないなどのことが起こ ることがあります。 *2 関節包 (かんせつほう) 骨と骨を連結させるための袋状のものです。関節包の中には関節 がスムーズに動かせるように潤滑油のような働きをする滑液で満た されています。 *3 長座位 (ちょうざい) マットやベッドの上などで足を伸ばした状態で座る姿勢 *4 癒着 (ゆちゃく) 炎症によって、本来離れているべき組織同士がくっついてしまうことで す。関節の動きを制限するものは、靭帯、腱、筋肉の組織の癒着が主 です。 *5 瘢痕 (はんこん) 外傷や手術の後など、一度組織が壊れたあとに見られる傷跡のことで す。瘢痕部分は弾力性がなくなり、以前と比較して硬い組織になってし まいます。 * 6 関 節 モ ビ ラ イ ゼーション 関節可動域訓練の方法のひとつで、関節を緩やかな力でゆっくりと動 かしていく方法です。 参考文献 ・頸髄損傷者のための自己管理支援ハンドブック 国立別府重度障害者センター頸髄損傷者自己管理支援委員会編集 中央法規 ・脊髄損傷理学療法マニュアル 岩崎洋 編集 文光堂

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国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局

別 府 重 度 障 害 者 セ ン タ ー

(支援マニュアル作成委員会編) 〒874-0904 大分県別府市南荘園町2組 電話:0977-21-0181 HP:http://www.rehab.go.jp/beppu/ 初版 平成26年11月発行

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