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歯科用アマルガム(に含まれる水銀)に関する Q & A 集
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 アマルガム使用に関する検討委員会 Q1.歯科の治療で使うアマルガムとはどのようなものなのですか? アマルガムは、一般的に“銀歯”などと言われ、ムシ歯によって歯にできた“穴”などに直接詰める 歯科用の材料です。詰める時には軟らかく、その穴に確実に密着して穴の部分を封鎖できます。いった ん詰め終わると非常に硬くなり強い噛み合わせにも耐えるものです。歯科の治療では 150 年ほどの歴史 をもって使用されてきました。金属(銀、銅、錫などの)の粉末と水銀を歯科医がそのつど混ぜ合わせ て(現在は密封した環境下で)使用します。 Q2.歯科のアマルガムは、日本も含め世界ではどの程度使用されているのですか? アマルガムの使用は、全世界的には相当減っているものと考えられています。一部の国では水銀を使 用するということから環境に配慮し、使用を認めていません。しかしこれまでの実績や費用などのこと から欧米諸国の一部では依然としてかなりの量が使用されています。日本では、30 年ほど前から、使 用は徐々に減ってきて、現在はごく一部を除いてほとんど使われていません。また日本の歯学教育の場 では“詰める”という実技実習はされていません。 Q3.歯科のアマルガムの使用の状況はどうなのですか? アマルガムの欠点は、1)金属色をしている、2)歯には接着しない、3)水銀が使用されることで す。最近、歯の色をし、歯に接着し、水銀を使用しないプラスチックやセメントなど優秀な材料が、し かも改良を重ねて幅広く使用されています。したがって、当然ながらアマルガムの使用は、全世界的に 減ってきているのが実情です。 Q4.報道などで知り、また歯医者さんからも聞きましたが、日本では歯医者さんでアマルガムを使わな いようにするそうですね。アマルガムが危険だから、あるいは毒だからですか? アマルガム(銀歯)の廃絶に向けて取り組むというのが、日本歯科医師会を含む日本の歯科界の基本 的な姿勢で、この考えを社会に示したことは事実です。しかしアマルガムそのものが危険である、人体 に有害であるということではありません。アマルガムという詰め物に水銀が使用されるため、水銀その ものを地球規模で廃絶しようという考え方に賛同し、また水銀による様々なリスクを歯科界から失くそ2 うという考えから廃絶に取り組もうとしています。現実には、日本において、新しくアマルガムの詰め 物をすることはほとんど行なわれてはいません。 Q5.何故一部の国でアマルガムが使用されているのですか? 一つは、アマルガムは歯科の治療(修復治療:歯の形や機能を回復する治療)に使用される材料とし て長い歴史をもち、耐久性、操作性に富み、もっとも信頼される材料の一つであることがあげられます。 したがって欧米の歯学教育では基本的な修復材料として採用されています。また安価で比較的容易に使 用できることから、発展途上国や国費による健康保険制度が充実していない国でも採用され続けていま す。さらに発展途上国やこれらの国に僻地では近代的な歯科治療機器がなく、これらの機器が備わって いないような劣悪な環境下でもアマルガムは比較的容易に使用することができ、採用されているようで す。 Q6.水俣病で問題になっている水銀と歯科のアマルガムとの関係は? 水俣病で原因となった水銀は、工場廃水に含まれた有機水銀(メチル水銀)です。これを、魚介類を 介して住民が摂取し、住民の多くに水銀中毒による障害が生じるという痛ましい事件が生じました。ア マルガムで使用されている(合金粉末と混ざっている)水銀は無機(金属)としての水銀であり、とく に他の金属と混ざり合った状態ではきわめて安定したものです。しかし混ぜ合わせる前(保管中も)、 混ぜ合わせる操作中、アマルガムを削る(除去する)とき、除去後のアマルガムの保管中には水銀その ものあるいはガス化した水銀が環境を汚染することがあり、歯科界ではかねてから(古くから)慎重に 対応しています。 Q7.私の体内に蓄積した水銀の量を調べることが出来ますか? 毛髪検査によって簡単に、正確に調べることが出来ると言われています。水銀は一般的に魚介類にも 含まれているものなので、日本での毛髪水銀濃度は1-5PPM で、この範囲であればまったく問題あり ません。(ただし検査を希望する場合は、保健所などに問い合わせ下さい) Q8.歯科のアマルガム(銀歯)には、水銀が使用されていると聞きましたが大丈夫なのですか? 歯の詰め物のアマルガムをつくるためには水銀と金属の粉末が必要です。しかしこの水銀と金属は、 いったん混ぜ合わせると化学的にはきわめて安定したものになり水銀が溶け出すなどということはあ りません。お口の中でも大丈夫であることは多くの研究結果で示されています。 Q9.歯に詰めてある銀歯に水銀が入っているからはずしたほうが良いと聞きましたが本当ですか?
3 銀歯(アマルガム)をそれだけ(水銀が入っているという表現も正確ではありません)の理由で除去 する必要はまったくありません。詰め物の周囲に新しくムシ歯ができた、詰め物が外れた、詰め物の一 部が欠けた、歯の色と違うなどの理由があって除去することはありますが、これらの理由なしではずす ことは考えないほうが良いでしょう。口の中で化学的に安定しているアマルガムを削って除去する(は ずす)際に水銀が蒸気化し、これを吸い込むリスクが生じることを考えるべきです。 Q10.口の中に入っているアマルガムはすべて外した方が安全ですか? 現在、何の支障もなく使用されているのであれば、除去することのほうが、リスクが大きいといえま す。つまり、削ってはずす際にはアマルガムから水銀が蒸発し、これを吸い込むことがあり得るからで す。安全な除去をするには、まず特殊なゴムでアマルガムが詰められている歯を被い、口の中の他の部 分を隔離し(ラバーダムという方法です)、さらにできる限りアマルガムを削らないように一塊にして 取り出します。この際どうしても健康な歯を一部削ることになりますから、この点でも何ら問題のない 歯のアマルガムをはずすことは、かえって健康を害するリスクとなる可能性があるといえるでしょう。 Q11.ネットでいくつかの歯科医院のホームページがアマルガムの危険性を示唆しています。実際はどう なのでしょうか? アマルガムは、耐久性及び操作性に優れた歯科材料として古くから世界的に使用されているもので あり,これまでの研究成果からアマルガムは安全であると報告されています。 Q12.見た目の汚さを指摘され、女の子にこれはかわいそうだと言われました。やり直すことはできます か? 見た目を改善する目的で,アマルガムをやり直すことは,少なくありません。 Q13.妊婦です。アマルガムは胎児に影響を及ぼしますか? 詰め物となったアマルガムは化学的に非常に安定しています。したがって、胎児に影響を及ぼすとい う報告はありません。それより削ってはずす際には水銀が蒸気化してかえってリスクになる可能性があ ります。出産や授乳が終わるまで不要な除去はさけるほうが無難です。 Q14.確か、相当以前に歯医者さんで詰めてもらった銀歯?アマルガム?の詰め物が歯からなくなりまし た。きっと飲み込んでしまったと思いますが、健康上問題がありますか? 心配はありません。詰め物となったアマルガムは化学的に安定しています。ほとんどの場合、便と共 に自然排泄されます。またその間水銀などが分解されて体内で影響を及ぼすことは考えられません。食
4 道ではなく、気管に誤って入ったということであれば(この場合咳き込んだりします)直ちに、あるい はかなり大型の詰め物でどうしても気になるということであればかかりつけの歯科医師や医師にみて もらって下さい。 Q15.アマルガムの除去時に医療従事者や患者が防護マスクをしているというHPを見つけました。そん なに危険なのですか? 通常,歯科医院ではアマルガムの除去時には専用の口腔内吸引器を用い,必要に応じて口の外からも 吸引する装置を用います。したがって歯科医師が正しい知識と技術をもってアマルガムを除去すれば、 一部でいわれているような特殊な防御マスクなどは不要です。 Q16.詰める時に「銀歯」と説明されましたが、銀色だったのははじめの時だけで、いまでは黒っぽくな っています。本当に銀であり、また大丈夫なのでしょうか? アマルガムは純銀ではありませんが、合金の主成分が銀であるため、通常は「銀歯」などとして説明 しています。時間の経過と共に変色して行きますが、これは金属の酸化によるもので問題ありません。 Q17.アマルガムの周囲の歯が黒くなってきています。ムシ歯ができたり、悪い成分が溶け出したりして きているのですか? アマルガムが長期に亘り詰めてある場合、アマルガムの成分によってアマルガム周囲の歯が黒くなる ことはあります。このこと自体はムシ歯でもなく、またとくに悪い成分が溶け出しているものでもあり ません。しかし周囲がムシ歯になっていることもありますから気になるようでしたら一度歯科医師に相 談してみて下さい。 Q18 アマルガム(銀歯)と他の金属の詰め物(メタルインレー)の区別は素人目に見てもすぐ分かるで しょうか? 判断がつく場合とそうでないときがあります。やはり,専門家である歯科医師に診てもらうべきでし ょう。 (別の回答例)確かに、口の中の銀色の詰め物はアマルガムのこともありますが、他の合金(金属)の 場合もあります。とくに日本では、保険で銀色をした合金の“はめ込み“(型を取ってセメントでくっ つける)場合も多いので区別し難いかも知れません。しかし歯科医師であれば、どちらなのか判断する ことができます。 Q19.私はアトピー患者です。アマルガムを除去するときに破片を飲んでしまったりしてアレルギーを起
5 こす心配はあるのでしょうか? アマルガムを除去する際には,歯科医師が適切な技術によって,注水しながら短時間で切削し、口腔 内吸引器で吸引するので,患者が水銀を摂取する可能性は極めて低いです。したがって,これがアレル ギーにつながることはほとんどありません。 Q20.私は金属アレルギーをもっています。アマルガムが原因なのでしょうか? その可能性は否定できません。ただしアマルガムであるからということではなく、 “被せもの(冠)”、 “はめ込み”“入れ歯”など歯科で使用される金属のいずれもが金属アレルギーの原因になる可能性が あります。もちろん歯科の治療だけではなくピアス、ネックレスなど装飾品の金属にもアレルギーがで ることもあります。いちど病院の皮膚科、アレルギー科(外来)、歯科金属アレルギー科などの専門家 に診てもらっては如何でしょうか? Q21.アマルガムは全身の疲れやだるさの原因になるというのは本当ですか? これまで,アマルガム修復物が全身の疲れなどに影響を及ぼすということは確認されていません。 Q22.家族がうつ病で悩んでいます。水銀は精神障害にも有害と聞きましたが、本人がかつて歯医者さん で入れてもらった銀歯(アマルガム)が原因でしょうか? それは大変ご心配ですね。でもアマルガムと精神障害との科学的な因果関係は報告されていません。 まったく無関係と言っても良いでしょう。 Q23.アマルガムをしている歯医者に通っていますが大丈夫ですか? 日本では、アマルガムを使用している歯医者さんはかなり少なくなってきています。しかしお通いの 歯医者さんで実際に使用しているのであれば、新しい詰め物をする場合、もしアマルガムについて心配 されるなら、金属の色をしたものではなく、歯の色をしたものにするよう希望して下さい。これらの詰 め物の多くの場合は、保険の適用もされるはずです。ただ、アマルガムという詰め物自体は安全なもの ですのですから不安になることはありません。