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私法的法律関係と権利義務 利用統計を見る

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私法的法律関係と権利義務

著者

三野 陽治

著者別名

Y. Mino

雑誌名

東洋法学

33

2

ページ

1-34

発行年

1990-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00003536/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

私法的法律関係と権利義務

三 野 陽 治

一 二 三 四 五

目次

序 論 講求権と抗弁権 消滅時効と抗弁権 同時履行の抗弁権と留置権 契約関係と形成権 序 論  契約の成立により個人間に法律関係が形成される。法律行為により個人は他人に対する法律関係を形成する、法律        ︵1︶ 行為は民法の基本的前提である私的自治を実現する手段である。法律関係をその中に存在する権利と義務の相対性に     ︵2︶ より分けることがでぎる。このような見方によると相対的な法律関係は帰属点と考えられる主体の一方が、常に義務

    東洋法学      一

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    私法的法律関係と権利義務      二       ︵3︶ を負うが、しかしこの義務には他方の帰属点と考えられる主体の権利がこれに応じて対立するものである。また二重 の相対性の法律関係は一方の主体が他方に対して権利をもち、その他方はこの権利を実現する義務を負担する、しか       ︵4︶ しこの他方も同時に、関連して一方の者に権利をもち、一方の者はこの権利に従う義務を負うという特徴をもつ。こ の場合は一方では権利主体と義務主体が、他方では義務主体と権利主体が対立する。この関係の関連性が二重の相対 性の特徴である。これにより二重の相対性は相対的法律関係と区分される。二重の相対性の法律関係の例はすべての 種類の双方的債務負担的法律行為である。例えば売買の目的物を譲渡する義務と、この譲渡されたものを保持するこ れに対立する権利並びに関連してこれに結合し、さらに相応ずる権利が対立する代金支払の義務が伴う売買契約であ ︵5︶ る。また非相対的法律関係はその帰属点である主体にある義務が課せられるが、他方の帰属点である主体の権利がこ        ︵6︶ れに対応しないものであるとされる。  債務関係は一人の人の他の人に対する一つの債務負担または数個のこの如き債務負担を内容とする法律関係である ︵多くの場合二つの相対立する︶。それは極めて種々の生活関係から生じうる。 一つにはこの場合、契約すなわち双 方的法律行為が重要であり、それにより関係者は双方の一致により当事者に法的に拘束力ある規制をなす。この場合       ︵7︶ 一方または双方が他方に対して債務を負担するときは、債務関係が問題となる。  債務関係の本質的要素をー履行義務と行為義務、履行への権利としての債権と法的手段への実現性並びに債務に通        ︵8︶ 常結合する債務者の一般的財産責任  個々にみた後に、その後に全体としての債務関係に注目すべきであるとされ る。この場合債務関係を法がそれぞれ取扱うように︵卦解コ鰻法︶、個々の履行関係︵債権と履行義務︶としてのみでな

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く、一定の要件により︵例えば売買関係、賃貸借関係、労働関係︶基礎づけられ、茅、して関係者のもとに法的特別関        ︵9︶ 係である総体的法律関係として理解すべきであると考えられる。この意味の債務関係は履行義務とその他の行為義務 の総体、さらにこれを超越して相互のための形成権︵例えば解約告知権または選択権︶とその他の法的状態︵告知の 受領の権限︶を包含しうる。それ故にそれは意識的に知覚しうる外的世界の事実または経過の包括全体ではなく、具 体的法的効果の包括または全体である。この法的効果は効力があるといい、そこでそれは当事者にとり基準であり、 当事者はそれに従って行為すべきであり、行為がでぎる︵規範的効力︶と考える。このような効力は法の、法規範並 びにそれに表わされる法律関係のそしてそのすべての要素である個々の法的効果の存在方法である。この場合、この 要素は1従って種々の権利、義務、債務関係の関係者の権限−相互に無関係ではなく、全く相互に関係している。 その関係は一方ではこの債務関係により満足させられるべき︵または債権者等の︶特別の履行利益に基づく。さらに 履行の特別の種類そして双務契約の場合には交換目的に基づく。その故に債務関係は種々の法的効果の総体のみでは       ︵麺︶ なく、複合の意味構成であるとされる。       ︵難︶      ︵並︶  債務の構成として本来の給付義務と付随義務が認められる。契約の場合には本来の給付が契約の目的である。そし て付随義務にあっては、その履行が直接に契約の目的実現にいたるものではないが、その不履行は、契約目的実現を       ︵13︶ おびやかし、あるいは契約の目的不実現という不利益とは異なる不利益を相手方に与えることになるとされる。  さらに売買としての債務関係を表わす本来の請求権とその処理を保障する︵正確にいうとその侵害を財産的に補償 する︶第二次的請求権と並んで、債務にいわゆる形成権が基礎づけられる。それは取消権、解約告知権、解除権とし

    東洋法学       

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    私法的法律関係と権利義務       四 て権利者に、以前の債務が全く解消され、そして新しい債務により補償される︵例えば取消により生ずる無効の効果 としての不当利得調整︶意味であろうと、さらになお本来の拘束関係と考えられる清算関係が従来の義務の範囲を継 続する意味であろうと、一方的な受領を要する意思表示により、債務関係を変更する権限を保障する。基本的には譲 渡されうる債務関係から分離されうる個々の債権に対して、いわゆる︵独立でない︶形成権は全体の債務から独立し て主張されえない。それは債務関係と運命を共にし、他人が自己の名でそれを主張するように委される方法では、原       ︵盤︶ 則的には分離されえない。そこですべての債権者債務者のすべての地位の譲渡の場合のみそれは引受人に移転する。  ドイッ民法二四一条は債権者は債務者に債務関係により履行を請求しうると規定し、同二四二条は債務者は信義誠 実と取引慣行に従って履行する義務を負うと規定する。このような規定から生ずるように、債務の債権者へ方向づけ られた構成は債務者の利害関係を考慮しない。それは債務者のがわで債務者に対して主張される履行請求権を拒否す る可能性をもたなければならない。これは当該の債権の発生をすべて事実上の理由から否定する防禦に関してのみ妥 当するものではない︵例えば、被告が一定の契約を一般に締結したことまたは事故に関係したことを争う︶。むしろ 主張された請求権を失効させるか乃至はその実現を阻止する正当な理由も存在する。この請求権の地位の消極的役割 は術語的には国降類Φ&毒αqと田資亀oの概念を以って示される。この場合国ぼ名Φ賎護は債務を初めから発生せし めないか、それを事後に無効なら生めるような要件によりなされるが、聾糞&のは債務関係の実現に一時的または継       ︵15︶ 続的に対立する一定の障碍に関係にする。国糞aΦは相手方の権利が存在する場合に、その行使をさまたげる権利を        ︵蛤︶ いい、田β名①&琶αQは相手方の権利の不存在を主張して、その行使をさまたげる権利である。禦謹&。の概念はドイ

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      ︵17︶ ツ民法の︾霧℃摸魯概念に関係する。そして請求権に対する反対権と解する。この反対権の構想︵誇求権の消滅また は法律上生ずる制限に代って︶は、法が、抗弁要件に拘わらず、請求権を履行し、それが成立する場合でさえ、判決        ︵蛤︶ を認めるか、反対権により与えられる可能性を利用するか否かを抗弁権者の意思に委ねる意味をもつ、  このような請求権、形成権、抗弁権はそれを伴う目的設定と期待可能性を以って債務関係の内部に於いてのみ効力 を発展させる。それは先ずそれに関与する者従って債権者と債務者にのみ関係し、そこで内部的相対的であるにすぎ ない。それを以って表わされる債務関係乃至それより生ずる債権の相対性はこのような自明のことを先ず第一に考え る、すなわち履行は相当の債務法上の権限︵法律行為的約束、法律の規定︶に基づきうる者によってのみ請求されう るし、このような要件によって履行をなすべき義務を負う者に対してのみ請求しうる。当該法律行為により特に利益 をえていない、または譲渡により債権者の地位に入っていない、関係していない者は債権者ではありえず、相当の債 務引受なぎ局外者は義務者とされることはできない。従って債務は第一には一定の者の間にのみ成立する関係体系で ︵19︶ あるとされる。  民法六〇五条では、不動産ノ賃貸借ハ之ヲ登記シタルトキハ爾後其不動産二付キ物権ヲ取得シタル者二対シテモ其 効力ヲ生スと規定する。従って不動産賃貸借の登記後その不動産の売買があったときは、賃貸人たる地位が瞬所有者か ら新所有者に移転し、従来旧所有者と賃貸人との問にあった賃貸借関係が爾後新所有者と賃借人との間に存続し賃借       ︵20︶      ︵21︶ 人は賃借権を以って新所有者に対抗し得るし、他方新所有者の方でも賃借人に対し賃料請求権を有することになる。  この場合に、 ﹁被上告人は本件宅地につき所有権移転登記を経由したうえではじめて、上告人に対し本件宅地の所     東洋法学       五

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    私法的法律関係と権利義務      六 有権者であることを対抗でき、また、本件宅地の賃貸人たる地位を主張し得ることとなるわけである。したがって、 それ以前には、被上告人は右賃貸人として上告人に対し賃料不払を理由にして賃貸借契約を解除し、上告人の有する        ︵22︶ 賃借権を消滅させる権利を有しないことになる﹂とする判例がある。  債権者の履行利益とは債務関係自体により法的に是認された履行の受領についての利益のみであり、常に欠くこと のないそれ以上の経済上または個人的利益ではないと解すべぎである。従って買主の履行利益はこの売買の目的とさ れた物︵種類売買の場合にはその種類の物︶の占有と所有権を取得することについての利益であり、これをこえる、 この物により一定の欲望を達成し、それを有利に譲渡または贈与する利益ではない。この如き利益の受領についての 利益をこえるそれ以上の債権者の利益はー債務者がその到達を保証しないか、またはそれが例外的に行為基礎にな らないならばー債務者には何ら関係がない。債権者が自己に帰属する給付︵本来の給付または補充的補償給付︶を        ︵23︶ 受領したときは、債務関係︵個々の給付の意味に於ける︶は目的を達して消滅する︵欝刈コ鰻法﹀とされる。  私的自治により形成された私法的法律関係の要素をなす請求権抗弁権と形成権について考察する。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ 国畦一い錠o壽”︾一一αQo響Φぎ段↓臥一審のUΦ急跨聲膨鉢お①葺&窪幻09仲即お零。ω。Φ o餐 乞o旨。旨︾o貰段ぴoお”9①幻。鋳誘○注壼お鉱。 。沁①魯欝く亀色鐵駐o巳雲謬αR︸嵩G 。顛o o●謡 20号①旨>o鐸巽びの茜”費勢。○‘ω。誤 20旨①旨︾o獣o魯oお”鉾勲○‘ω●誤 20筈o旨︾o鐸Φ魯oお”勲鋤●○●︸ω●蕊 Zo瀞Φほ︾。算o昏o茜”顛。勲・ρ︸ψ謡

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o●卜oO 国錠一霊器欝︸鉾鉾○こo o。號 北川善太郎 債務不履行 注釈民法㈹ 三二四頁 北川善太郎前掲 三二四頁 北川善太郎 前掲 三二五頁 膨ωωRω9鷺一無︸ω&鉱砕ooぴ許ω鮮ど這o o腿”ω●お 国。 。の霞ω9鼠登ω。誉匡おoび詳螢。鋤●○‘ω●お許 山田晟ドイツ法概論五七一頁 渓毘い弩窪辞︾凝⑩導㊦汐興↓亀留のU①暮の3窪曽お&一9窪凝。ゲ黄おOoo︸幹謡O ζ急ピ霞窪潮鉾勲○こω●きo昭語 国ωのRω。ご昆登伽●鋤。○‘ω8お捨 来栖三郎契約法 三三八頁 来栖三郎 前掲 三三八頁 最高判 昭和四九年三月一九日、民集二八巻二号三二七頁 鋭錠一ピ鍵o欝”鉾鶉・○こψ鱒o o   二 請求権と抗弁権       ︵1︶ 請求権とは特定の人に作為または不作為を要求する権利である︵ゴ剛刃鰻法︶とされる。また請求権は特定の人のため

   東洋法学       七

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    私法的法律関係と権利義務       八       ︵2︶ の履行または不作為の法の命令にすぎないとする見方がある。そして催告も訴えうることも請求権を力としてあらわ しえない。催告はたしかに債権者の一つの力であるが、更にすでに債務者に対する請求権、催告とは関係のない履行 義務を前提とする。請求権の相手方を訴によって履行を強制する力はすでに成立している請求権なしには無意味とな       ︵3︶ り、また請求権の相手方が請求権に応じた履行をしないとぎのみ現実の意味をもつとする。そして前述の請求権の定 義について、請求権にそして殊に債権に存する力の性質についてであり、これは、多く場合に言われるように、履行 を要求し、国家の救助を以って強制することを債権者に許すことにのみ存するのではない。むしろこの要求権と強制       ︵4︶ 権は補助的な権利にすぎないとする見方がある。そして債務者の債務と︵その裏面︶債権者に債務者が履行をなすべ       ︵5︶ き債務を負う︵多くの場合特別の要求がなくとも︶ということに存する債権者の力が根本であるとする。またさらに       ︵6︶ 請求権は義務規範にすぎないとされる。請求権が義務規範であるならば、しかも規範により保護される者からみる と、何時規範が個人を保護するかを明確にすべきである。何故なら規範は第一に社会を保護しうる。しかしすべての       ︵7︶ 義務規範は少なくとも問接には常に個人を保護する。国家の組織規範は、すべての関係者に注意義務を義務づける が、これは個人の請求権としての段階を設けることなしに、平和と法の保護の前提としてすべての個々の市民を保 護する。このような法的反射は、保護規範は個人のために請求権を与えるのではないということにより特徴づけら  ︵8︶ れる。負担︵評嘱捌課鰭以下︶の場合には、法は負担の利益を受ける者の負担実現の請求権を認めず、他方、第三者のため にする契約の場合には、請求権、履行を要求しうる権利を、第三者に関して疑しい場合には契約の事情と目的のすべ          ︵9︶ ての評価に係らしめる︵墾一魂八︶とされる。

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 法自身が義務規範の中で、一定の履行を提供すべき者を表示し、この履行の利益を受くべき者は請求権をもつこと を認める。︵個別的法律関係︶。ドイッ民法は主としてこのような立法技術を示す。そして買主は売主に合意の売買代 金を支払う義務がある︵野ヨ3鰻識︶。または賃借人は賃貸人に賃料の支払の︵塑盃条︶、消費借主は消費貸主に返還の︵綱〇 七条︶、利得者は損失者に受領物の返還の︵燗⋮条︶、不法行為者は被害者に損害賠償の︵銅三条︶義務があると規定す る。このような技術には、私法に於いては殊に個人相互の関係の規制により多くの場合人的に制限された法律関係の 中に履行義務が包含されており、そして原則は、このような法律関係に履行受領者として関係する者に権利または請 求権を与えるということが当然認められる︵更に法は、権利を有す、することができる。請求することができると規 定する︶。特定の人の間の法律関係の侵害または妨害によってはじめて具体化する法律関係の場合、例えぽ所有権の       ︵10︶ ような場合にも、このような技術がとられるとされる。  また売買は  それによって直ちに目的物が移転する必要のない!売主と買主とに対価的な債務を負担させるだ        ︵n︶ けの契約︵諾成契約︶であることが現代の典型的な姿であるといわれる。民法は売買ハ当事者ノ一方が或財産権ヲ相 手方二移転スルコトヲ約シ相手方力之二其代金ヲ払フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ズ︵盟箏と規定する。これは       ︵鴛︶ 売買は、当事者の一方が財産権を移転する債務を負い、他方が代金を支払う債務を負うだけで成立することである。        ︵捻︶ これは債務を負担するだけで売買が成立し得るという意味である。そして債権的な効果を生ずる法律行為と所有権移       ︵1 4ノ 転の効果を生ずる法律行為とを切り離すべきかどうかは、立法政策の問題とすべきであるとされる。  賃貸借について民法は賃貸借ハ当事者ノ一方力相手方二或物ヲ使用及ビ収益ヲ為サシムルコトヲ約シ相手方力之二     東洋法学      九

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    私法的法律関係と権利義務       一〇 其賃金ヲ払ウコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ズ︵六〇一条︶と規定する。        ︵欝︶  賃貸借契約により賃貸人は契約によって定められた一定の使用収益をさせる債務を負担する。賃貸物の使用収益に       ︵16︶ 占有を必要とするときは賃借人に賃貸物を引渡し、賃借人が使用収益するのを妨害しない義務がある。そして賃貸人       ︵茸︶ の債務の裏として、賃借人は、賃貸人に対して、使用収益をさせることを請求する債権を有すると考えられる。また        ︵18︶ 右の賃貸人の賃貸物を使用収益させる義務に対し、賃借人は借賃支払の義務を負う。  一般的な説によると抗弁権は請求権義務者に、抗弁要件の存在の場合に一方的意思表示により請求権の法的保護を 排除する方法により債務である履行を拒絶できる可能性を与える。たしかに主張される抗弁権に拘わらず、履行への 法的命令は存続するが、しかし請求権の強制的実現は停止される。従って抗弁権は規範に関するしかも補充的または 実現の規範に関して力を与える。請求権の不履行に与えられる強制を除去するから、それは同時に他人の権利の価値      ︵19︶ を著しく減ずる。ドイッ民法二二二条の消滅時効の効力については、誇求権者の講求権が消滅時効にかxっていると 抗弁権者が主張するときには、抗弁権者は自己に対する執行名義を阻止し従って強制執行を阻止し、そこで抗弁権者        ︵20︶ が任意に履行するであろうという漢然とした期待のみが請求権者に存することになるとされる。  さらにこの結果として経済的にみると抗弁権により請求権の価値が非常に減少される。このため規範とそれにより        ︵飢︶ 他人の権利に関するこの力に於いて取消権と抗弁権の類似性が闘らかになるとされる。しかしこの類似性はさらに広 い.請求権に付着する強制規範の離脱により、抗弁権者は自己の権利を確実にする。彼は自己に属する利益を第三者 に渡す必要がなく、その利益の存続が確実にされている。抗弁権は取消権と同様に一つの権利保護の地位を保障し、

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それは取消権と同様に、他人の権利に対して否定的に進むために、個々の法的規定を必要とする。抗弁権も保護され        ︵22︶ る権利との関係で権利保護の地位として補助的なものであり、独立の権利と関係するとされる。  抗弁権の請求権に及ぽす効果については、先ず抗弁権者はその効力を生ぜしめるために抗弁権を援用しなければな        ︵器︶ らない。そしてさらに抗弁権の効力は請求権の存立に対してではなく、その実現にのみ向けられる。また単なる抗弁        ︵滋︶ 状態も行使された抗弁権も債権者と債務者の問のすべての法律関係に如何なる効力を生ぜしめるかを研究すべきであ        ︵2 5︶ る。同時に履行の抗弁権を有する債務者は履行期を徒過したというようなことだけでは履行遅滞とならないとされて いる。この点も反対説がある。  抗弁権理論は、抗弁権の多くの現象形態に拘わらず、ドイッ民法の総則のテーマとして構成される。統一的抗弁権 概念の結合点は行使された抗弁権の場合は︵請求権の︶阻止であり、それは一方では完全な効力ある請求権に対する 弱化となり、他方ではその消滅までには至らないのである。抗弁権の効力は多面にわたる。一面では完全な効力のあ る請求権に関係し、この場合に最も弱い抗弁権は単に請求権による強制執行の時間的な制限である。他面では最も強        ︵26︶ い抗弁権作用は広くなりうる。そしてそれは請求権の消滅ではなくその中止ということのみであるとされる。ドイツ 民法の抗弁権の作用についての見方である。最も弱い抗弁権にはドイッ民法二〇一四条の三ケ月の抗弁権と同二〇一 五条の公示催告の抗弁権が数えられる。この拡弁権が附着している請求権が訴えられると、被告がこの抗弁権を提示 するときでも訴は有効である。その主張は同民訴法三〇五条により単に制限責任の留保の下の相続人の敗訴判決の効 果となるにすぎない。給付を命ずる判決による強制執行も原告には禁じられない。被告は同民訴法七八五条、七六七     東洋法学       二

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    私法的法律関係と権利義務      二一 条による請求に関する異議の訴の方法で単に強制執行は同二〇一四条、二〇一五条に定められた期間中、仮差押の実        ︵27︶ 現に正当な処分に制限されると主張することができるにすぎない。  この二〇一四条、二〇一五条の抗弁権より同二七三条、三二〇条の請求権制限の抗弁権は請求権に対する効力が強 い。たしかにこの抗弁権も同二〇二四条、二〇一五条と同様に理由なしとして訴の棄却に至るものではない。むしろ 同二七四条二項、三二二条一項により単に引換給付判決と従って主張される請求権の制限が問題である。同二七三 条、三二〇条は強制執行権との密接な関係を示すことで同二〇一四条、二〇一五条と比較しうる。同民訴法七五六条 によりこの引換給付の抗弁権の提出は、強制執行の開始がそこで詳しく定められた条件に関係することになる。更 に、強制執行は被告の財産に無制限に認められる。同二〇一四条、二〇一五条の場合と同様に、請求権機能が強制執       ︵28︶ 行可能性に関する限りでのみ、請求権阻止といわれる。  永久的抗弁権は一時的抗弁権と請求権制限的抗弁権より強く作用する。永久的抗弁権の中にも同二二二条一項の消 滅時効の抗弁権と同一九七三条、一九九四条の制限相続責任の抗弁権とともに、その成立と行使が個々の請求権機能 のみを阻害する比較的弱い抗弁権もある。消滅時効にかかった請求権に基づいて給付されたときは、同八二二条によ り給付物の返還請求はなしえない。債権者も同二二三条一項二項により請求権の消滅時効に拘わらず一定の物的担保 を実現しうる。同一九七三条、一九九四条の抗弁権は消滅時効の抗弁権よりもなお弱い。それは訴の棄却にも至らず       ︵29︶ 強制執行の排除もせず、単にそれを制限するにすぎないからである。民法に於いても限定承認の効力は責任の範囲を 限定するものであり、判例は﹁其ノ執行力ヲ制限スルガ為メ之二対シ相続財産ノ存スル限度二於テ之ヲ執行シ得ベキ

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       ︵30︶ 旨ヲ表示スル留保ヲ附スルコトヲ相当トス﹂

       ハ   ハ

20 19 i8 17 16 15 14 13 12 工1 10  9  8  7  6  5  4  3  2  1 ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) ) )

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東洋法学

債権各論 前掲 前掲 前掲 前掲 契約法 前掲 前掲   。餌。   。鈴9

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中巻一 鱒駅‘ ○こω。障O O‘ω。禽O にQ o 器︷ 鱒群 鵠群 さo 無  二四〇頁 二四五頁 二四七頁 二四七頁 四一五頁  三〇四頁 四一六頁 三二七頁  O﹂ψo oO  O‘の●Q oo o 一三

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く、単にその実現が阻止されるであろう。従って抗弁権は私的自治を実現する債務者︵被告︶の法律上の救済として        ︵1︶ 特徴をあらわされ、それは請求権に対する効果では消滅に至らないと一般的に解されている。  法は請求権の相手方がそれによって請求権の実現を永久に阻止しうる永久的抗弁権が請求権に対立するときでさ え、請求権はなお存続するとみる。従ってこの請求権は依然として自由意思により弁済されることができる。反対権 の行使を抗弁権者がしないときは請求権は裁判上も実現されうる。何故なら反対権がすでに訴訟以前に主張されそし てこの事実が訴訟に於いて陳述されるか、抗弁権者が抗弁権を訴訟に於いて行使するときのみ、裁判所は反対権を顧          ︵2︶ 慮すればよいからであるとされる。  実体法上の抗弁権はさらに当該請求権を永久的に阻止する否定的︵永久的︶抗弁権とその阻止が一時的にのみ作用 する延期的︵一時的︶抗弁権に分けられる。多くの説は否定的抗弁権と延期的抗弁権とさらに講求権制限的抗弁権を 区分する、それは請求権の裁判上の実現を永久的にも一時的にも阻止するのではなく、抗弁権者に成立する履行の受       ︵3︶ 領者に対する引換え給付判決︵び劉ッ課描鴎鮎︶または有限責任の留保のもとの判決︵騨劉ッ識墜語卿︶のみに至るにすぎない とされる。       ︵4︶  ドイッ民法は永久的抗弁権のもとに消滅時効抗弁権を詳細に規定する。ドイッ民法一ご一二条により債務者は消滅時 効の完成後は履行を拒絶することができる。これは技術的意味の抗弁である。すなわち債務者が単なる時間の経過を 主張するかまたは別の方法で防禦するか否かは債務者に委すべぎである。消滅時効の抗弁により消滅時効にかかった        ︵5︶ 請求権の主張は永久に排除される。抗弁権者が講求権者の講求権は消滅時効にかかっていることを援用するときは、

    東洋法学      一五

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    私法的法律関係と権利義務       一六 彼は自己に対する執行権とそれによる強制執行を阻止するから、抗弁権者は任意に弁済するであろうという漠然とし        ︵6︶ た期待のみが請求権者に存することになるのである。消滅時効抗弁に拘わらず履行されたものはドイッ民法八コニ条       ︵7︶ 一項によりその返還請求が問題となる。しかしこれにはドイッ民法二二二条二項、同八二二条一、二項が対立する。 債権自体は存続するから、債権者が弁済したときは、弁済は有効となる。消滅時効は消滅原因ではなくて、債務者に        ︵8︶ 抗弁権のみを与えるとされる。  消滅時効の抗弁権は法的救済の請求権的要素を目的とする抗弁権の典型的場合であり、他方法的地位は保持されて いる︵卿溶コ識蝕墾い一蝶葬︶。従って少なくともこのような抗弁権は防禦的法的救済として規定することができる。消滅時 効の抗弁権にとっては、法的救済の否定を以ってもなお法的地位自身の運命は機械的には決定されないということが 明瞭である。古典的な形成権の効力例えば取消権の場合と異なって、法的地位は必然的に保護手段と運命を共にする ものではない。その他の永久的抗弁権にとっては中間の型態が可能か、従って法的保護の消滅を以って法的地位に属       ︵9︶ するすべてのまたは個々の要素も消滅するかを探究すべきであるとされる。このような見方は、法的救済には裁判上 と裁判外の個々の権限が属する。裁判上の権限としては訴権と強制執行権があげられる。裁判外の法的救済としては 債権者の単なる要求権限すなわち請求可能性並びに自力救済権すなわちドイッ民法二二九条等の自力救済と三八七条        ︵10︶ 等の取消権に分れる請求権の自力の実現への権限があげられるとする。また法的地位には抗弁権理論との関係で最も 重要な権限として受領した履行の保持許容の権限が属する。更に譲渡、質権設定並びに免除の可能性を含む処分権が     ︵且︶ あげられるとする。また法的地位は差押の対象にもなりうる。特にそれは消滅時効にかかった債権にとって重要であ

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る。更にー消滅時効のためドイッ民法二二三条が示すように1純粋の法的地位は、法的救済を必要とすることな しに、法的地位から生ずる権利のための担保の評価の基礎にもなりうる。結局法的救済を保障するすべての権限の消 滅後も権利者には法的地位は抗弁権の基礎として帰する。そこで消滅時効にかかった請求権の法的地位から債務者に ドイッ民法四七八条、八二一条、八五三条、同破産法四一条二項の抗弁権が成立する。多くの説によると消滅時効に        ︵12︶ かかった請求権は同三二二条または二七三条の抗弁権の十分な基礎になりうるとする。  民法では、時効ハ当事者力之ヲ援用スルニ非サレハ裁判所之二依リテ裁判ヲ為スコトヲ得ス︵整類︶と規定する。こ の規定より、わが民法上、単に期間の経過その他の要件をみたすだけでは、時効は完全には効力を生ぜず、援用が必    ︵13︶ 要とされることになる。そして前述のドイッ民法の消滅時効の効力と比較してみると、ドイッ民法は、取得時効につ き援用を必要としないが、消滅時効を請求権消滅による履行拒絶の抗弁権と構成する︵二紅︶ので、実質的には援用を要        ︵M︶       ︵15︶ するとの立場に近いと考えられる。そして民法に於いても消滅時効の主たる内容は訴権ないし請求権の時効だとする 見方がある。そして消滅時効制度の主な目的は、長期間の権利不行使の結果、義務者が訴訟上自己を防禦するために        ︵16︶ 必要な証拠を保持することが困難となることを考慮し、権利消滅の法定証拠を義務者に与えることにあるとする。そ して民法一四五条の意味は、当事者訴訟主義の下において、時効によって生ずる法定証拠も、当事者の援用なくして        ︵η︶ は裁判の資料とすることはできない、という趣旨を表明したものとする。そして、時効の援用、すなわち請求権消滅 の法定証拠の提出により、裁判所は講求権の消減の裁判をしなければならなくなるから、時効の援用は請求権に対す          ︵綿︶ る抗弁権として機能するとする。民法一四五条の消滅時効を援用する者について、 ﹁抵当権が設定され、かつての登     東洋法学       一七

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    私法的法律関係と権利義務       一八 記の存する不動産の譲渡を受けた第三者は、当該抵当権の被担保債権が消滅すれば抵当権の消滅を主張しうる関係に       ︵想︶ あるから、抵当権の消滅により直接利益を受ける者にあたる﹂とする判例がある。  時効の存在理由という角度から時効による権利の得喪に着目して実体法説訴訟法説という区別をなし、実体法説を       ︵⑳︶ さらに確定効果説と不確定効果説とに二分し、法定証拠提出説を訴訟法説と称するのが通常である。この二説の対立 について、時効制度ないし援用を訴訟法的制度と理解するか実体法的制度と理解するか、という理解のしかたの一点        ︵盟︶ にしぼられてくる。そして採証上の困難があるとき、法が実体法的に権利の得喪を定め、しかもその効果の発生を当        ︵22︶ 事者の援用に委ねるという法技術をとることは可能である。実体法説が権利の得喪という形式的側面に焦点をあわせ        ︵23︶ た考察をしている点ですぐれているとする見方がある。また現代法における実体法と手続法との分化を前提するかぎ り、請求権は実体法的に理解されなければならず、債権の消滅時効も、実体法的に債権そのものの消滅として捉えら         ︵璽︶       ︵2 5︶ れなければならない。そして民法は、消滅時効の効果に関しては、債権そのものが消滅すると規定するとする見方が ある。 ︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶ ︵5︶ ︵6︶ 類Rぴ。旨幻o葺9Φ田段&Φ8。 。窪αq9一象撃勾①。げ量お。 。・。︸ω﹂ 適鉱富お壽︸≧蒔o導①ぎ巽↓亀留のUo暮ω魯窪ω爵αQ①婆魯魯勾o。窯ω︸お①ざ9鱒竃許 寓Rび①旨菊9ダ鉾鋤●Oこω●o o講‘ 頃角ぴ①旨囲9F勲鉾○←ω.鳶 U目。望簿R鷺o島8。 。”>瓢αQφβのぎR↓臨一山霧劇○炉おoo鱒ω●OO 津磐N閃霧も9U器象蕊o犀瓜<①幻o魯マ⑦のαQは験獣一身謎鄭&ω&窪葺謬αqの営o簿げoF一8ドω・o oO

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四宮和夫 四宮和夫

川井健

川井健

川井 健

川井健

最高判、 川島武宜 川島武宜 川島武宜 川島武宜 川井 健

川井健

類RぴΦ旨閃oけダ斜 頃醇ぽ旨菊o夢噂餌・ 国①誉①誹力gダ簿・ 国R冨旨男o葺欝 い毘い鍵o欝︸鉾効●ρ” ご絆9gR鋸①島。墓鷺餌

時効の効用、 前掲 民法総則 前掲 前掲 前掲   ω●曽。許 鋤融○こω●& 勲○‘ω.臨許 餌●○こω.ぷ 鉾○‘ω.㌫    注釈民法㈲ 三七頁   四五〇頁 四四七頁 四四七頁 四四七頁   ●鉾○こω。奨 三七頁 昭和四八年一二月一四日、民集二七集二七巻二号 一五八七頁 前掲 三八頁 前掲四三頁 前掲 四三頁 前掲四三頁 民法総則 三版 前掲 三三頁 三〇三頁

東洋法学

一九

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私法的法律関係と権利義務 二〇 四 同時履行の抗弁権と留置権  請求権制限の抗弁権は、それがiー一時的ではないとしても1請求権自身の裁判上の実現を阻止するのではな く、抗弁権者の受領しうる履行の受領に対し引換給付の判決へ、例えばドイッ民法三二〇条、三二二条、二七三条の 如く、または制限責任の留保の下の給付判決へ、例えば同二〇一四条、二〇一五条、民事訴訟法三〇五条の如く、至 るにすぎない点で、延期的抗弁権と区別される。勿論このような区別点は何ら対立を示すものではない。そこで請求 権制限の抗弁権は延期的抗弁権でもある。現実的に最も重要な、この場合法理論的、法政策的に同様に争われている 請求権制限の抗弁権は同時履行の抗弁権である。ドイッ民法三二〇条は同二〇二条一項二項に於いてそれにより債務 者が一時的に履行を拒絶しうる抗弁権として規定されている。一般的な説は三二〇条を双務的債務の関連を生ぜしめ        ︵王︶ る実体法上の地位をもつ抗弁権とみる。  また双務契約と同時履行の抗弁権の関係としての見方がある。債権者の権利は最初から、債権者は自己の提供すべ き履行に対する引換給付のみを請求しうるように制限されているか、または債権者は単なる履行に係わるが、しかし 債務者は事後に自己に成立する抗弁権の主張により、このような方法に於いてそれを制限する可能性をもつかであ る。後者の場合には債権者の債権は事後に制限されうる。これに対する方法が債務者による抗弁権の主張である。法       ︵2︶ はこれを履行拒絶権とあらわす。実際はそれは債務となっている履行を受領者への引換給付に制限する権利であると する。そして双務契約の場合にはすべての当事者は相手方の反対給付のためにのみ自己の履行の義務を負うから、通

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常はー先履行の義務を負わない場合はー彼が同時に反対給付を保持する限りでのみ、自己の履行を認めようとす ︵3︶ る。従って双方の利益状態とー他に合意がない限りー現実の又は推定される双方の意思は一方の債務は通常は単       ︵4︶ 純な履行ではなく反対給付の受領に対する引換給付に係わることを要求する。双務関係に於いて成立する債権はすべ ての当事者は自己の受領すべぎ給付を単純にではなく自己のなすべき給付に対する引換給付のみを請求しうるという        ︵5︶ 方法で、最初より制限されているとする。更にこの双務契約の基本思想にのみ正しい構想に対して、法は三二〇条一 項本文、三二二条一項に於いて反対給付の実現まで履行を拒絶できる権利、従って単なる抗弁権とのみいう。これは すべての当事者は訴訟に於いて相手方がその制限を援用、抗弁権の主張をされない限り、それに内在する制限に関係 なく自己の請求権を主張しうるという結果になる。彼がそうするときには、被告は先履行の義務があることを原告が 立証しないときは、原告の請求権は引換給付の要求に制限されるということを裁判所は考慮しなければならない。こ れに対して被告が抗弁権を主張しないときには、勿論裁判官は法律の規定に従って、たとえ原告の側で履行もせず、 例外的に先履行を請求する権利もないことが明らかであっても、単純に履行を命ずる判決をしなけれぽならない。立 法者により求められ明言されている法的効果には拘束されるが、しかしそれによる︵請求権変更的︶抗弁権の構成に       ︵6︶ は拘束されないとする。またこのような見方は、抗弁権の提出の中にそれなしには引換給付判決をすることができな い訴訟上の前提要件のみをみる。三二〇条の抗弁権が被告により訴訟に於いて提出されないときは、裁判所は訴訟法 上の理由から実体上の法律状態に従って判決することを阻止される、すなわち被告は制限なしに履行を命ずる判決が        ︵7︶ なされるということになるとされる。その故に抗弁権の主たる効力にとっては区別される理論的な意味は重要ではな

    東洋法学      

二一

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    私法的法律関係と権利義務      二二 い。抗弁権者が抗弁権をも提出したとぎのみ、引換給付判決が問題となる。しかし、この問題は履行遅滞、判決の既        ︵8︶ 判力と法律に規定されない幾つかの他の問題にとって意味があるとされる。  わが民法は、隻務契約当事者ノ一方ハ相手方力債務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ履行ヲ拒ムコトヲ得︵五       ︵9︶ 三三条︶と規定する。この規定によって認められる履行拒絶権を同時履行の抗弁権という。同時履行の抗弁権は履行 を拒否する権能を与えられる者の債務とその者の有する債権とが一個の隻務契約から生ずることを要件として、債務       ︵10︶ に伴う単なる権能として構成されている。そして両債務を関連的に履行させることが公平に適する場合には、一個の 讐務契約から生ずるという形式に重きを置かずに、両債務が一個の法律要件から生ずるときにこのような関係の認め        ︵葺︶ られる場合には広く適用すべぎであるとされている。抵当債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続が同時履行の 関係にあるかについて﹁債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消手続とは、前者が後者に       ︵12︶ 対し先履行の関係にあるものであって、同時履行の関係に立つものではない﹂と解すべきであるとする判例がある。  ドイッ民法二七三条一項によると、債務者は、自己の債務の基因する同じ法的関係から自己の債権者に対して弁済 期の到来せる請求権を有するときは、自己の受くべき履行の実現がなされるまで、債務の内容たる履行を拒絶するこ とができる。訴訟に於いて留置権が主張されると他の点では理由ある訴の棄却ではなく、同三二二条の場合と同様        ︵13︶ に、債務者に自己の受くべき履行の受領と引換えに履行をなすべき判決がなされるにすぎない︵醐知七︶とされる。  そして従って二七三条の留置権は同時履行的双務的契約の抗弁権と非常によく似ているようにみえる。しかし法に        ︵錘︶ より使用される用語の同一性は両方の場合の法的状態の問に存する根本的な差異を看過すことはできない。その理

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由として、双務契約の場合は、履行と反対履行は契約の意義により、一方で先履行の義務を負うのでない限り、当事 者双方は反対履行の受領に対しのみ履行の義務があるという密接な関係に於いて最初より存在する。訴訟に於ける請 求権の引換履行への制限の考慮は、単に訴訟技術上の理由からのみ被告がこれを援用するということに係らしめられ るにすぎない。これに対して留置権の場合は、双方の請求権の間にはこのような最初からの関係性は存在しない。た       ︵妬︶ とえそれが同一の法的関係に基づくとしても、一方は他方のために設定されたものではない。さらに双方の当事者は 自己の請求権の履行を、自己の側でもすべて履行の準備をすることを最初から思慮する必要なく、請求することがで ぎる。しかし双方の当事者は他方も履行するまで、他方の請求に対して自己の履行を拒絶しうる。履行の拒絶によっ てのみそれ以後は請求権の実現は、双務契約の場合には、先履行の義務のないときは、最初からそうであるように制 限される。しかし履行を拒絶する権利を未だ行使しない限り、債務者は制限なく履行しなければならないし、従って この場合も、双務契約の場合と異なり、債権者の単なる催告により、その履行の準備を問題とすることなしに、遅滞   ︵駕︶ となる。従って、同時履行の抗弁権に対して留置権の抗弁権は真のしかも請求権変更の抗弁権である、すなわち無制 限に成立した債務であるに拘わらず、自己に対して主張された請求権の実現を引換給付に制限する法により廣務者に 与えられた権限である。それ故に債務者は債務となっている履行を命ずる判決を免れるために履行の拒絶権を行使す るのみでなく、同時履行の抗弁権の場合と異なり、彼が訴訟に於いてこの抗弁権を主張するとぎは、その成立の要件        ︵η︶ を主張し立証しなければならないとする見方がある。また同二七三条の抗弁権の行使によってはじめて相互的、関係 のあるそして弁済期の到来せる請求権の実体法上の結合が生ずる、それは二つの請求権の第一に成立せる独立性が引

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二三

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    私法的法律関係と権利義務      二四 換給付のために排除されるからである。関係なき独立の請求権の結合の中に留置権の抗弁権の法形成的効力︵結合機        ︵鰺︶ 能︶が存する。これに対して双務契約上の請求権は実体法的に法律上当然に引換給付に制限されるとされる。  我が民法では、他人ノ物ノ占有者力其物二関シテ生シタル籏権ヲ有スルトキハ其債権ノ弁済ヲ受クルマテ其物ヲ留 置スルコトヲ得︵二九五︶と規定する。これは留置権の規定である。留置権は物権として構成されている。留置権も 同時履行の抗弁権も法律の認めた一種の履行拒絶権であるが、留置権は、独立の物権として目的物を支配し、その拒       ︵扮︶ 絶権能はこの物権の作用としてこれから流出するものである。  わが民法は留置権について、物に関して生じた債権の弁済あるまでこの物の占有を継続しうる機能となし、これに        ︵20︶ 独立の権利たる性質を付与しているものである。そしてドイッ民法では留置権を、あくまで同一債権関係から生ずる 二つの債権の間の拒絶機能として、債権編の中に規定する。従って学者はこれを債権的拒絶権能として、同時履行の        ︵21︶ 抗弁権を包含する広い概念と解するとされる。さらにわが国では、留置権はドイッにおける一般的留置権などとは異 なって、ともかくも物権として構成されている。だから、機能的な近似性共通性は一般に承認されているところであ       ︵22︶ るけれども、法律的構成における抗弁権との差異は明らかであるとされる。また留置権は物に関する債権を有する者       ︵23︶ が、その物の返還義務の履行を拒否しうる作用を営むものであり、その性質は他人の物の占有者が、その物に関して       ︵鍛︶ 生じた債権の弁済を受けるまで、これを留置することを内容とする担保物権であるということになる。そして債権の 弁済を受けるまでは何人に対しても、その物を留置できる。ひとり、債務者のみならず、譲受人、競落人などにも対       ︵2 5︶ 抗しうる。すなわち、留置権者は物の占有を継続することを何人にも対抗しうる。その物権たるゆえんここに存する

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ことになる。  債務者以外の第三者にも留置権を対抗しうることについて、清算金の支払のないまま仮登記担保権者Aから目的不 動産の所有権を取得した第三者Xが債務者Yに目的不動産の明渡を請求した場合に、本件土地建物の明渡請求は、所 有権に基づく物権的請求権によるものであるところ、上告人YらのAに対する清算金支払請求権は、Aによる本件土 地建物の所有権の取得とともに同一の物である右土地建物に関する本件代物弁済予約から生じた債権であるから、民 法二九五条の規定により、上告人Yらは、Aに対してはもとより、同人から本件土地建物を譲り受けた被上告人に対 しても、Aから清算金の支払を受けるまで、本件土地建物につき留置権を行使してその明渡しを拒絶することができ        ︵2 6︶ る関係にあるといわなければならないとする判例がある。また家屋の賃貸借終了の際の賃借人の家屋明渡債務と賃貸 人の敷金返還債務との関係について判例は家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解 するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除︵解約︶による場合であっても異なるところはないと解 すべきである。そして、このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解す べき場合にあっては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないという    ︵27︶ べきであるとする。  ︵1︶ 麟RぴR齢勾9ぎ9の田糞08傷霧ω錦おΦ象魯魯勾①o窪即おo oo o︾ω。嵩箪こ  ︵2︶図毘欝捲冒ゼ。冴ぎ魯伽$ω。欝芽。。げ葺毘﹂レo 。︾魯”ω﹂。 。①  ︵3︶図鐘ζ目窪Nも。艶ρ︸ω﹂G 。。  ︵4V欝乙罫奉賞ρ斜ρ︸ω﹂o 。。

    東洋法学       二五

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私法的法律関係と権利義務 沢貰囲冨器欝”斜勲ρ”o り●一8 閤勢ユζお欝”鉾節。○‘o o●一8 譲R訂誉園9ダg・効●○こω。一き 訟霞び①旨男o夢℃餌●帥●O‘ψ一ざ 広中俊雄 債権各論講義五版 一五頁 我妻 栄 債権各論上巻 八九頁

我妻栄前掲八九頁

最高判 昭和五七年一月一九日 判例時報一〇三二号 五六頁 譲銭一ζ冨欝”い①ぼ露号留。 。G o号鼠象09葺ω拝どμも o諺鼠鯉︾ψお① ※霞一U鶏①農”鉾勉。○こo り6一3 魏舘一募お農︸勲ρOこo o●おO 国霞一ピ震窪㌍僧鋳○こω。一零 図舞一ピ畦○欝︾勲勲○‘ω。一零 薫Rびo慧幻9ぴ伽。勉●○‘ω6一〇 〇q o出ご

我妻栄担保物権法二〇頁

我妻栄前掲一二頁

我妻栄前掲二一頁

薬師寺志光 留置権、総合判例研究叢業民法︵19︶ 二頁 薬師寺志光 前掲 六頁 薬師寺志光 前掲 六頁 薬師寺志光前掲六頁 二六

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︵26︶ 最高判、 ︵27︶ 最高判、 昭和五八年三月一三β 民集三七巻二号 昭和四九年九月二日、民集二八巻六号 一 一五八頁 一五餌頁 五 契約関係と形成権  双務的債務負担の法律行為の場合に、債務者によりその責任ある理由から対象的に履行されえない履行の債権者は 不履行による損害賠償を請求するか、契約を解除するかの選択権を有する︵び耀淵幌滋=砒郷︶。債権者が損害賠償を請求 するときには、自己に債務となっている履行に関して契約に拘束されている。彼が解除を選択するとぎには、不履行       ︵1︶ による損害賠償請求権は排除される。  解除権行使の場合には契約関係はドイッ民法三二五条、三二七条、三四六条等により遡及的に法定の返還債務関係 に変更される。これはドイッ民法八二一条等による不当利得補償に対して特殊性をもっている。すなわち債権者の解 除に責任のある債務者は自己の受領した履行の返還に関して重い責任を負い、他方では債権者の責任はその返還すべ        ︵2︶ き財産的価値に関しては不当利得返還の原理にのみ従う。これはドイッ民法三二七条二項の意味であるとする見方が ある。また取消の場合と異なり、解除により債務関係はその法的原因が消滅しその結果既に交換された給付は不当利 得返還の原則︵解イコ蕪法︶により返還されるべきであるという方法で廃止されるのではない。むしろ解除は契約により        ︵3︶ 定められた履行義務の修正を生ぜしめるにすぎない。そこで本来の履行計画の実現を停止させるのであるとする見方 がある。さらに解除は籏務を現状回復の目的をもつ清算段階に移す。これに対して既に履行した給付は解除のときに

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    私法的法律関係と権利義務       二八 なお存する限りで、基本的には給付の対象または金銭評価の形式に於いてしかも引換給付により補償すべきである。        ︵4︶ 解除には二つの目的が結びつく。すなわち一つはすべての契約履行義務の終了とさらにそれのないときの状態の回復 とする。そして、債務は依然として成立している。それが返還関係に変更されるにすぎない。その限りで、返還関係        ︵5︶ は以前の契約的拘束とは別の法的債務関係でもないとされる。  債権者の解除権は、法の認めた法律上の履行障害の第二の種類を形成する履行遅滞の場合に特に重要である。債務 者は、その債務となっている履行を履行期に、その責任ある事情のもとに提供しないときに遅滞に陥る︵び層⑳鰻法︶。  一方的または双方的債務負担の法律行為の場合に債務者は債権者に遅滞により生じた損害を金銭補償の方法により ︵履行の対象による実現とともに︶補償しなければならない。履行の対象による実現について債権者が利益を欠くと きは不履行による損害賠償を請求しうる。その結果実際は事後の履行不能と同一に取扱われる。双方的債務負担的法 律行為の場合には債権者は、遅滞にある債務者に期間の経過後は受領を拒絶するという催告のもとに、履行をなすべ き相当の期問を定め債務者が徒過したときは︵欝コ淵鰻磁項︶、遅滞のため履行についての利益を欠くことを立証すること       ︵6︶ なく、不履行による損害賠償を請求するか契約を解除することがでぎるとされる。  我が民法には、当事者ノ一方力其解除権ヲ行使シタルトキハ各当事者ハ其相手方ヲ原状二復セシムル義務ヲ負ウ但 第三者ノ権利ヲ害スルコトヲ得スと規定する。民法の解釈として解除された契約自体から生じた法律効果は⋮債権        ︵7︶ と債務だけでなく、処分的効果も1解除によって遡及的に消滅すると解されている。この規定の損害賠償の性質       ︵8︶ は、債務不履行による損害賠償請求権であって、解除の遡及効にもかかわらず存続すべきであるとされる。また解除

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の効果は契約の遡及的消滅とするいわゆる直接説によると解除とともに履行利益の賠償請求︵債務不履行に基く損害       ︵9︶ 賠償責任の存続︶を認める解釈と両立しがたいと考えられる。そこで解除はー債務不履行に基く損害賠償責任を存 続させたまま︵紅鯛雍︶ 履行ずみの給付について新たに返還責任!原状回復義務︵五四五条一項本文なお二項︶1        ︵10︶ を生じさせ未履行債務を将来にむかって消滅させると考えるのが妥当であるとする見方がある。  さらに本規定の第三者の保護については、第三者の登場が解除前であると解除後であるとにかかわらず、対抗要件       ︵n︶ の問題としての処理によって図られることが妥当であるとされる。売買契約の合意解除の場合に関して不動産の売買 の遡及的合意解除の場合においても、法定解除の場合と同様、第三者の権利を害することができないが、右第三者に ついても民法一七七条の適用があるから、右不動産の所有権の取得について対抗要件としての登記を経由していない       ︵12︶ 者は、たとえ仮登記を経由したとしても、右第三者として保護されないものと解するのが相当であるとする判例があ る。  継続的法律関係は通常、契約締結のときにすでに一致した意思表示によりされるか︵この場合は時の経過による終 了︶または継続的法律関係の発展の間に一方的に表示されるか︵解約告知︶もしくは双方で合意されうる︵解約契 約︶終了への意思行為を必要とする。解約告知は一方的意思表示により継続的法律関係の終了を可能ならしめるか ら、特別な注意に値する。有効な普通の解約告知の前提は、そのとぎどきの個々の法律関係のために特別の形成をな        ︵B︶ す約定のまたは法定の告知権である。解約告知は法律関係を権利否定的に形成するから、法律行為であるとされる。  一時的な契約の場合には、聴。欝鶏&器宅き留の原則は固有の契約正義の原理によってのみ一定の制限をうける。     東洋法学      二九

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    私法的法律関係と権利義務      三〇 継続的契約関係の場合にはそれは継続的契約拘束に制限をおく契約的自律の原則である。すなわち契約的自律は契約 成立の自由のみならず契約終了の自由をもいう。後者の自由は特別の解約告知の制度により保障される。それ故に法 規は継続的法律関係の場合に継続の要素により生ずる高い自由への関係の強さに対し特別の解約告知の可能性による 自由の保障を対立させる。法は継続的法律関係の比較的強くない拘束力を規定するがしかし個々の場合に不確定の法 概念に係らしめ、それにより契約終了の自由のために法的安定と取引の安定の減少を受忍する。従って継続的法律関       ︵M︶ 係の維持への信頼は、一時的交換関係の実現への信頼のようには保護されないとされる。  継続的法律関係の場合の拘束力は個々の場合に減少されうるし、この可能性は法により一般的に規定されるという 普通の法的思想は幾つかの特別な規定にあらわされ、その中で特別の解約告知︵重要な理由から︶が法的に規定され る︵例えば、賃貸契約ドイッ民法五四二条、五四四条、五五三条t五五四条、雇傭契約同六二六条、委任契約同六七 一条二項三項、組合契約同六二三条一項︶。今日の通説によると特別の告知権はすべての継続的法律関係に無条件に    ︵15︶ 成立するとされる。さらにドイッ民法六二六条一項の特別の告知権のための重要な理由の法律的定義がすべての継続 的法律関係に転用される、すなわち個々の場合のすべての事情の考慮の下でそして両契約当事者の利益の思慮のもと で告知期間の経過までまたは合意的終了まで︵雇傭契約︶法律関係の存続が告知者に期待できないという事情がある       ︵焔︶ ときには、継続的法律関係は重要な理由により告知期間の留保なしに各契約当事者により解約されうるとされる。  賃貸借契約についての訴訟上の和解の場合について、賃貸借については、それが当事者間の信頼関係を基礎とする 継続的債権関係であることにともなう別個の配慮を要するものがあると考えられる。すなわち、家屋の賃借人が賃料

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の支払を一か月分でも怠ったときは、賃貸借契約は当然解除となり、賃借人は賃貸人に対し直ちに右家屋を明け渡す 旨を定めた訴訟上の和解条項は、和解成立に至るまでの経緯を考慮にいれても、いまだ右信頼関係が賃借人の賃料の 支払遅滞を理由に解除の意思表示を要することなく契約が当然に解除されたものとみなすのを相当とする程度にまで 破壊されたとはいえず、したがって、契約の当然解除の効力を認めることが合理的とはいえないような特別の事情が ある場合についてまで、右賃料の支払遅滞による契約の当然解除の効力を認めた趣旨の合意ではないと解するのが相   ︵葺︶ 当であるとする判例がある。この場合は、賃貸借の趣旨からして契約を継続することができない事由の発生を信頼関      ︵18︶ 係に求めたものと解される。  行為基礎の脱落の法的効果は今βの通説によると第一に契約の適合である。行為基礎の脱落により生ずる状態の適        ︵扮︶ 合によって正当とされえないときのみ、契約の解消が問題となるとされる。臼的不到達の場合にはまづ契約の解消が        ︵20︶ ある。これには通常は不利益当事者の意思表示︵解除または解約告知︶が必要である。また契約は解消されるのでは なく、新しい状態に応じて変更される。たとえば変更された内容を以っても、契約の存続が両契約当事者の正しく理 解された利益であるならば、特に重大な等価関係の変動の場合がそうであるが、適合が必要である。この場合は当事       ︵21︶ 者が基礎とした価値基礎から出発すべきであるとする。通常人の予想を絶した事情の変更を生ずると事情変更の原則          ︵22︶ によって解除権が生ずる。そしてある契約の基礎となる事情が一般の予想を超えて激変し、契約当事者にその契約の 履行を要求することが苛酷であると認められるに至った場合には、信義誠実の原則に照らして、契約当事者に当該契        ︵23︶ 約を解除する権利があるものと解するのが相当であるとする判例がある。

    東洋法学       三一

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    私法的法律関係と権利義務       三二  行為基礎論と継続的法律関係の特別の解約告知との関係について、次のような見方がある。行為基礎の脱落と特別 の解約告知との関係は、行為基礎の脱落は法律関係の場合の一般的な問題性を理解、特別の解約告知は時間の関係を 特に考慮する継続的法律関係の特別の問題点を理解すると確定される。このことから形式上は特別の解約告知という       ︵雛︶ 特別の制度に対して行為基礎の脱落の制度の補充性ということが推論される。このように確定される行為基礎の脱落 と特別な法律制度の関係により、継続的法律関係の場合には、特別の制度としての特別な解約告知は個々の場合に期       ︵25︶ 待しうる方法で期待不可能性を除去する状態にないときのみ行為基礎の脱落が適用されるとする。さらに契約終了の 可能性は継続的法律関係の場合に時間の要因により制限される自由であり、そこで契約的自律のあらわれである。す なわち継続的拘束性の場合にあっては、短o寅鶏纂ωΦ籍露鼠の原則は契約自由の一つの特性により軽減される。 短。鑓豊旨。 。露くき母の原則も契約自由の制度であり、特別の解約告知の法律制度の場合には契約自由の二つの特性が 対立する、この場合その時により必要な考慮の下に一つの特性が優越する、例外的にのみ契約終了の自由がそうであ       ︵26︶ る。契約終了の自由は私的自治の手段を以って問接に契約正義をも造るとする。さらにこのような理由により行為基 礎脱落の制度は実体上の価値評価からも特別な解約告知に対して補充的なものとみるべきである。そこで行為基礎の 脱落は特別の解約告知またはこれに機能的に等しい制度が個々の場合に期待不可能性を除去しうる法的状態を示さな        ︵27︶ いとぎのみ意味をもつとする。

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