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ISSN

2185-4076

大阪府立公衆衛生研究所

研究報告

平成27年

BULLETIN

OF

OSAKA PREFECTURAL INSTITUTE OF PUBLIC HEALTH

No.53

(2015)

(2)

―研究報告― 大阪府におけるウエストナイルウイルスに対するサーベイラ ンス調査(2014年度) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 弓 指 孝 博 青 山 幾 子

1

柳 本 有 里 松 本 治 子 福 村 和 美 大 船 己 穂 田 邊 雅 章 平 田 武 志 辻 野 悦 次 加 瀬 哲 男 高 橋 和 郎 大阪府におけるエンテロウイルス感染症の流行状況と分子疫学 的解析(2014年度) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中 田 恵 子 山 崎 謙 治

7

左 近 直 美 駒 野 淳 加 瀬 哲 男 上 林 大 起 左 近 直 美

15

入 谷 展 弘 三 好 龍 也 改 田 厚 阿 部 仁 一 郎 山 元 誠 司 久 保 英 幸 平 井 有 紀 内 野 清 子 吉 田 永 祥 岡 山 文 香 芝 田 有 理 塚 田 和 宏 駒 野 淳 弓 指 孝 博 西 尾 孝 之 加 瀬 哲 男 田 中 智 之 高 橋 和 郎 の開発  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 野 村 千 枝 梶 村 計 志

22

トウモロコシの遺伝子組換え食品検査における試料由来DNA 清 田 恭 平 吉 光 真 人

26

阿 久 津 和 彦 梶 村 計 志 国産・輸入魚介類中の総水銀実態調査 柿 本 幸 子 吉 光 真 人

31

野 村 千 枝 粟 津 薫 山 口 瑞 香 清 田 恭 平 阿 久 津 和 彦 高 取 聡 梶 村 計 志 尾 花 裕 孝 LC-MS/MSによる食品中合成抗菌剤・駆虫剤一斉分析法の 内 田 耕 太 郎 起 橋 雅 浩

36

柿 本 健 作 山 口 貴 弘 永 吉 晴 奈 小 西 良 昌 梶 村 計 志

大阪府立公衆衛生研究所 研究報告

目      次

マイクロチップ電気泳動法を用いた特定原材料の確認検査法 断片化の影響  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 大阪府内におけるノロウイルスの流行状況(2010-2013) ・・・ (平成20年〜平成26年) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 妥当性評価  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(3)

山 口 瑞 香 梶 村 計 志

46

山 口 瑞 香 粟 津 薫

49

野 村 千 枝 柿 本 葉 梶 村 計 志 化粧品中の防腐剤の検査結果(平成24-26年度)及び 青 山 愛 倫 田 上 貴 臣

52

皐 月 由 香 川 口 正 美 沢 辺 善 之 水中モノクロラミンの自動分析  ・・・・・・・・・・・・・ 田 中 榮 次 安 達 史 恵

56

枝 川 亜 希 子 高 木 総 吉 枝 川 亜 希 子 中 野 仁

64

東 恵 美 子 奥 村 早 代 子 安 達 史 恵 松 島 加 代 足 立 伸 一 大阪府における環境および食品中放射能調査 東 恵 美 子 肥 塚 利 江

69

足 立 伸 一 小型浄化槽の運転状況と処理水質の実態調査(第1報) ・・・・ 奥 村 早 代 子 東 恵 美 子

76

肥 塚 利 江 浅 野 和 仁 ―抄録― プロフルトリン曝露における生物学的モニタリング指標: ラットにおけるプロフルトリン代謝物の尿中排泄の 吉 田 俊 明

81

含フッ素ピレスロイド剤メトフルトリン曝露ラットにおける 生物学的モニタリング指標としての尿中4-メトキシメチル-吉 田 俊 明

81

病因物質不明食中毒事例より分離されたウェルシュ菌が 産生する新型エンテロトキシンBECの同定 (BEC: Binary

余 野 木 伸 哉 松 田 重 輝

82

河 合 高 生 依 田 知 子 原 田 哲 也 久 米 田 裕 子 後 藤 和 義 日 吉 大 貴 中 村 昇 太 児 玉 年 夫 飯 田 哲 也 二枚貝の麻痺性貝毒による毒化をモニタリングするための 迅速、簡便な酵素免疫測定法の開発(英文)  ・・・・・・・ 川 津 健 太 郎 神 吉 政 史

82

原 田 哲 也 久 米 田 裕 子 大阪府内の特定建築物内水景施設におけるレジオネラ調査 ・・ (平成26年度報告)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール (英文)  ・・・・

Enterotoxin of Clostridium perfringens )(英文) ・・・・・・・・・・ 動力学的解析 (英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 清涼飲料水中のヒ素、鉛、スズ分析法妥当性評価  ・・・・・

一斉分析法の改良  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ LC-MSによる食品中の保存料8種類の分析  ・・・・・・・・・

(4)

保育園児におけるインフルエンザワクチン有効性評価: RSV感染症が同時流行したシーズンにおける 中 田 恵 子 藤 枝 恵

83

三 木 仁 志 福 島 若 葉 大 藤 さ と こ 前 田 章 子 加 瀬 哲 男 廣 田 良 夫 エンテロウイルス感染症疑い患者からのパレコウイルス検出 の増加―大阪府―  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中 田 恵 子 山 崎 謙 治

83

駒 野 淳 加 瀬 哲 男 10年間のウイルス性胃腸炎長期サーベイランスに基づく 遺伝子型の遷移(英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・・ 左 近 直 美 山 崎 謙 治

84

中 田 恵 子 上 林 大 起 依 田 知 子 萬 谷 雅 宣 加 瀬 哲 男 高 橋 和 郎 駒 野 淳 森 川 佐 依 子 廣 井 聡

84

加 瀬 哲 男 過去の分離株がヒトアデノウイルス57型(HAdV57)と 森 川 佐 依 子 廣 井 聡

85

加 瀬 哲 男 花 岡 希 小 長 谷 昌 未 大 石 和 徳 藤 本 嗣 人 2010/11および2011/12シーズンインフルエンザワクチンによる H3N2流行株に対する抗体応答(英文)  ・・・・・・・・・・ 廣 井 聡 森 川 佐 依 子

85

中 田 恵 子 前 田 章 子 菅 野 恒 治 入 江 伸 大 藤 さ と こ 廣 田 良 夫 加 瀬 哲 男 ワクチン関連麻疹のサーベイランスシステム 倉 田 貴 子 上 林 大 起

86

駒 野 淳 加 瀬 哲 男 高 橋 和 郎 乳児における呼吸器感染ウイルスの混合感染と臨床症状の 倉 田 貴 子 三 崎 貴 子

86

末 廣 豊 駒 野 淳 加 瀬 哲 男 高 橋 和 郎 山 口 瑞 香 梶 村 計 志

87

強力なヒトアリルハイドロカーボン受容体リガンドである 永 吉 晴 奈 柿 本 健 作

87

高 木 総 吉 小 西 良 昌 梶 村 計 志 松 田 知 成 ノロウイルス遺伝子型特異抗体の存在と 評価方法の検討(英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・・ 判明した1例-大阪府  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ LC-MSを用いた食品中の着色料検出法   ・・・・・・・・・・ 健康小児うがい液からの呼吸器ウイルスの検出(英文) ・・・ の危険性(英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 有無に関する長期的研究(英文)  ・・・・・・・・・・・・ ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(英文)  ・・・・・・

(5)

東アジア諸国における大気中塩素化多環芳香族 柿 本 健 作 永 吉 晴 奈

88

小 西 良 昌 梶 村 計 志 大 浦 健 早 川 和 一 鳥 羽 陽 北東アジア諸国都市大気粉塵におけるデクロラン・プラス及び 柿 本 健 作 永 吉 晴 奈

88

阿 久 津 和 彦 小 西 良 昌 梶 村 計 志 早 川 和 一 鳥 羽 陽 LC-MS/MSを用いた迅速かつ簡便な食肉中の残留抗菌薬 山 口 貴 弘 起 橋 雅 浩

89

原 田 和 生 内 田 耕 太 郎 小 西 良 昌 梶 村 計 志 平 田 收 正 山 本 容 正 ベトナムにおける豚肉、鶏肉および牛肉中の 山 口 貴 弘 起 橋 雅 浩

89

原 田 和 生 小 西 良 昌 内 田 耕 太 郎 M. H. N. DO H. D. T. BUI T. D. NGUYEN P. D. NGUYEN V. V. CHAU K. T. V. DAO H. T. N. NGUYEN 梶 村 計 志 久 米 田 裕 子 C. T. BUI M. Q. VIEN N. H. LE 平 田 收 正 山 本 容 正 小 西 良 昌 柿 本 健 作

90

永 吉 晴 奈 中 野 武 小 西 良 昌

90

乳成分が非意図的に混入した学校給食パンによる乳アレルギー発症 清 田 恭 平 藤 原 有 佳

91

足 立 和 人 亀 田 誠 阿 久 津 和 彦 梶 村 計 志 橋 本 博 行 吉 光 真 人

91

清 田 恭 平 高速液体クロマトグラフィーによる化粧品中の 青 山 愛 倫 土 井 崇 広

92

田 上 貴 臣 梶 村 計 志 皐 月 由 香 中 多 陽 子

92

木 村 貴 友 井 理 恵 子 沢 辺 善 之 山 崎 勝 弘 給食用食器の卵アレルゲンの残留性比較  ・・・・・・・・・ 防腐剤11成分の一斉分析(英文)  ・・・・・・・・・・・・ 抗菌薬残留実態調査(2012年 —2013年)(英文)  ・・・・・・ アロプリノール外用剤の品質に関する検討  ・・・・・・・・ 炭化水素類(英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ポリ臭素化ジフェニルエーテル(英文)  ・・・・・・・・・・ 一斉分析法の 開発(英文)  ・・・・・・・・・・・・・・・ 母乳中PCBのエナンチオマー分離分析(英文)  ・・・・・・・・ 水銀による環境汚染と水銀条約  ・・・・・・・・・・・・・ 事例における混入経路の検証  ・・・・・・・・・・・・・・

(6)

田 口 修 三 人口減少時代における持続性と災害対応力を備えた 小 川 浩 細 井 由 彦

93

城 戸 由 能 奥 村 早 代 子 ラット肺胞マクロファージからのスーパーオキサイド放出における 大 山 正 幸 舘 秀 樹

93

峰 島 知 芳 亀 田 貴 之 ラット肺胞マクロファージからのスーパーオキサイド産生能に 大 山 正 幸 舘 秀 樹

94

峰 島 知 芳 亀 田 貴 之 生活排水処理施設の構築に関する研究  ・・・・・・・・・・ 鉱物繊維形状とシリカ粒子サイズの役割の比較(英文) ・・・ 対するシリカ粒子と加熱シリカ粒子の比較(英文)  ・・・・

(7)

―研究報告― 大 阪 府 立 公 衛 研 所 報 第 53 号 平 成 27 年 ( 2015 年 ) -1-

大阪府におけるウエストナイルウイルスに対するサーベイランス調査

(2014 年度)

弓指孝博*1 青山幾子 *1 小川有理*2 松本治子*3 福村和美*4 大船己穂*5 田邊雅章*3 平田武志*6 辻野悦次*7 加瀬哲男*8 高橋和郎*9 大阪府ではウエストナイルウイルス(WNV)の侵入を監視する目的で、2003 年度より媒介蚊のサーベイ ランス事業を実施している。また、死亡原因の不明なカラス死骸が 2 頭以上同一地点で見られた場合、 それについても WNV に対する検査を実施している。 2014 年度は 6 月末から 10 月初めにかけて府内 20 カ所で蚊の捕集を行い、雌の蚊について WNV 遺伝 子の検出を試みた。捕集された蚊は 9 種 5831 匹で、そのうちヒトスジシマカ(52.2%)とアカイエカ群 (43.9%)が大部分を占め、次いでコガタアカイエカ(3.2%)が多く採集された。その他にはシナハマダラカ、 カラツイエカ、トウゴウヤブカ、キンパラナガハシカ、トラフカクイカ、オオクロヤブカが捕集された。 定点別、種類別に 393 プールの蚊について WNV の遺伝子検査を実施したが、すべての検体において WNV は検出されなかった。また、2014 年度中に当所へ搬入され、検査可能であった死亡カラスはなかった。 キーワード:ウエストナイルウイルス、媒介蚊、サーベイランス、RT-PCR、カラス Key words : West Nile Virus, vector mosquitoes, surveillance, RT-PCR, crow

ウエストナイルウイルス(WNV)は、フラビウイル ス科フラビウイルス属に属し、日本脳炎ウイルスやデ ングウイルスなどと近縁なウイルスである。このウイ ルスは、自然界では鳥類と蚊の間で感染環が保たれて いるが、人がウイルスを持った蚊に刺されて発症した 場合、多くは熱性疾患(ウエストナイル熱)にとどまる が、高齢者などではしばしば脳炎(ウエストナイル脳 炎)を引き起こして、死亡あるいは重い後遺症の原因と *1大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 *2大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 (現大阪府茨木保健所環境衛生課) *3大阪府健康医療部医療対策課 *4大阪府健康医療部医療対策課 (現大阪府池田保健所地域保健課) *5大阪府健康医療部医療対策課 (現大阪府藤井寺保健所検査課) *6大阪府健康医療部環境衛生課 *7大阪府健康医療部環境衛生課 なる。 WNV は 1937 年にウガンダのウエストナイル地方で 人から最初に分離されたウイルスであるが1)、その後 アフリカ、ヨーロッパ、西アジア、中東などでウエス トナイル熱あるいはウエストナイル脳炎の散発的な流 行の原因となってきた2)。1999 年には、それまで流行 のなかった米国で患者の発生が相次ぎ、それ以後北米 全体に流行が広がって現在まで患者の発生が続いてい (現大阪府政策企画部危機管理室災害対策課) *8大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 (現大阪府立公衆衛生研究所感染症部) *9大阪府立公衆衛生研究所感染症部 (現国際医療福祉大学病院検査部)

West Nile Virus Surveillance in Osaka Prefecture (Fiscal 2014 Report)

by Takahiro YUMISASHI, Ikuko AOYAMA, Yuri OGAWA, Haruko MATSUMOTO, Kazumi FUKUMURA, Miho OFUNE, Masaaki TA NABE, Takeshi HIRATA, Etsuji TSUJINO, Tetsuo KASE, and Kaz uo TAKAHASHI

(8)

- 2 - る。わが国では 2005 年に米国に渡航した邦人がウエス トナイル熱に罹患した症例が初めて確認された3) WNV を媒介することのできる蚊の種類はわが国に も普通に分布しているため、国内への侵入、流行を監 視する必要があり、国のガイドラインにおいて地方自 治体における媒介蚊の調査体制が求められている4) 大阪府では 2003 年度より蚊のサーベイランス調査を 開始し、WNV に対する継続的な監視を実施している 5,6)。また、厚生労働省の通知に従い 7)、死亡原因の不 明なカラスの死骸が同地点で 2 羽以上見られた場合、 それらについても WNV 検査を実施している。本稿で は 2014 年度の調査結果について報告する。

調 査 方 法

1.捕集定点および調査実施期間 大阪府管内、東大阪市、高槻市、豊中市及び枚方市 の市街地域に、図1に示した計 20 カ所の定点を設定し、 2014 年 6 月第 4 週から 10 月第 1 週(東大阪市、高槻 市及び豊中市は 9 月第 3 週)までの期間、隔週の火曜 日から水曜日にかけてライトトラップを設置して蚊の 捕集調査を実施した。 2.蚊の捕集方法 蚊 の 捕 集 に は CDC ミ ニ ラ イ ト ト ラ ッ プ ( John W.Hock Company)を使用し、蚊の誘引のためドライア イス(1~2kg)を併用した。ライトトラップは調査実 施日の夕刻 16~17 時から翌朝 9~10 時までの約 17 時 間設置した。 3.蚊の同定 捕集した蚊は、各保健所で種類を同定した後、種類 ごとに別容器に入れて当日中に公衆衛生研究所に搬入 した。同定が困難な蚊等については公衆衛生研究所で 再度同定を行った。アカイエカとチカイエカは外見上 の区別が困難であるため、すべてアカイエカ群として 同定した。 4.蚊からのウイルス検出 各定点で捕集された蚊のうち、雌のみを検査の対象 とし、定点毎、種類毎にウイルス検査に用いた。1 定 点 1 種類あたりの検体数が 50 匹を超える場合は、複数 のプールに分割した。乳剤は 2mL のマイクロチューブ に捕集蚊と滅菌したステンレス製クラッシャーを入れ、 0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)加ハンクス液を 250μL 加えた後、多検体細胞破砕装置(シェイクマスター

(9)

- 3 - Ver1.2 システム、バイオメディカルサイエンス社)で 1 分間振とうして作製した。破砕後のマイクロチュー ブ は 軽 く 遠 心 し て か ら ク ラ ッ シ ャ ー を 除 去 し 、 0.2%BSA 加ハンクス液を 500〜750μL 追加して攪拌し た。それを 4℃、12,000rpm で 15 分間遠心し、その上 清を 0.45μm Millex フィルター(ミリポア社)で濾過し たものを検査材料とした。検査材料のうち 150μL につ

いて E.Z.N.A. Viral RNA Kit(OMEGA bio-tek 社)を使 用して RNA を抽出した。RT-PCR は、フラビウイルス 共通プライマー(Fla-U5004/5457,YF-1/3)、および WNV 特異的検出プライマー(WNNY 514/904)を用いた8-9) また、2005 年以降インド洋周辺から東南アジアにか けても侵入が警戒されるため、病原体のチクングニア ウイルス(CHIKV)を媒介できるヒトスジシマカにつ いて、CHIKV 特異的検出プライマ-(chik10294s/ 10573c)を用いて、CHIKV の遺伝子検出を試みた10)。 5.カラスからのウイルス検出 当所に搬入された死亡カラスは解剖して採脳した後、 カラスごとに 0.2%BSA 加ハンクス液を用いて 10%乳 剤を作製し、蚊と同様に RNA 抽出後、WNV 遺伝子検 査を実施するが、今年度は対象となるカラスの検体が なかった。

結 果

1. 蚊の捕集結果について 捕集された蚊は 9 種 5831 匹であったが、そのうちヒ トスジシマカが 3046 匹(52.2%)、アカイエカ群が 2561 匹(43.9%)と大部分を占め、次いでコガタアカイエカが 189 匹(3.2%)捕集された(図 2)。その他に捕集された 蚊の種類はシナハマダラカが 8 匹、トウゴウヤブカが 7 匹、キンパラナガハシカが 13 匹、カラツイエカが 1 匹、トラフカクイカが 1 匹、オオクロヤブカが 5 匹で あった。 調査期間を通じた捕集数の推移を見ると(図 3)、アカ イエカ群は 6 月下旬に既にピークに達しているかピー

(10)

- 4 - クを過ぎており、その後捕集数は減少していったが、9 月にやや増加傾向を示した。また、ヒトスジシマカ、 コガタアカイエカでは 7 月下旬にピークを迎えた後に 減少したが、8 月下旬に再び増加し二峰性のピークを 示した。 定点別の捕集数では、各定点によって捕集数にかな りの差が見られたが、ヒトスジシマカとアカイエカ群 はすべての地点で捕集された。ヒトスジシマカは、高 槻市(定点 R)、東大阪東部(定点 T)、和泉保健所管内(定 点 L)で多く、それぞれ 730 匹、519 匹、476 匹が捕集 された。また、アカイエカ群は、東大阪東部(定点 T) だけで 1318 匹が捕集され、アカイエカ群全体の 51% を占めた。コガタアカイエカは 11 カ所で捕集されたが、 東大阪東部(定点 T)では毎回捕集され、コガタアカイエ カ全体の 84%がこの定点で捕集された。シナハマダラ カは岸和田保健所管内(定点 O)、泉佐野保健所管内(定 点 Q)の各定点で、トウゴウヤブカは守口保健所管内(定 点 E)、岸和田保健所管内(定点 N)、和泉保健所管内(定 点 L)及び東大阪東部(定点 T)で捕集された。また、キ ンパラナガハシカは和泉保健所管内(定点 L) 及び高槻 (定点 R)で、カラツイエカ、トラフカクイカは和泉保健 所管内(定点 L)で、オオクロヤブカは岸和田保健所管内 (定点 O)及び四條畷保健所管内(定点 H)でそれぞれ捕集 された(図 4)。 2.捕集蚊からのウイルス遺伝子検査結果 各定点で捕集された蚊を種類別に分け、計 393 プー ルの乳剤を作製して RT-PCR 法による遺伝子検査を実 施したが、すべての検体において WNV 及び他のフラ ビウイルスの遺伝子は検出されなかった。またチクン

(11)

- 5 - グニア熱の媒介種となるヒトスジシマカについて実施 した CHIKV の遺伝子検査についても陽性例はなかっ た。 3. 死亡カラスの回収数とウイルス遺伝子検査結果 今年度は、藤井寺保健所管内から 2 頭のカラスが搬 入されたが破損、腐食等が激しく、検査対象とならな かった。

考 察

WNV は蚊と鳥類の間で感染環を形成し、人や馬な どは終末宿主である。従って WNV の拡散を考える場 合、WNV を保持する鳥の種類と媒介する蚊の種類が重 要になるが、ウエストナイル熱が流行している米国で は非常に多種類の鳥類と蚊によって保持、媒介されて いることが明らかにされている11)。府内の定点で捕集 された蚊はほとんどがアカイエカ群とヒトスジシマカ であったがこれらの種類は WNV に対して高い感受性 を持つことが確かめられており、また、他に捕集され たコガタアカイエカ、シナハマダラカ、オオクロヤブ カも注意すべき種類とされている11)。これまでの調査 ではこれらの蚊から WNV は検出されていないが、市 街地に生息して鳥類や人を吸血する可能性のある蚊の 種類に対して調査を継続することは監視をする上で必 要不可欠であると考えられる。 1999 年に、ニューヨークで始まった米国でのウエス トナイル熱の流行は、その後全米に広がって 2002 年に は 284 人の死者を出し、2003 年の患者数は 9862 人に 達した。その後、流行は徐々に収まり 2011 年の患者数 は 712 人にまで減少したが、2012 年になって再び大き な流行となり、5674 人の患者が発生して死者の数も 286 名にのぼった12)。北米での WNV の拡散規模や有 効なワクチンが実用化されていない現状を考えると、 我が国においてもウエストナイル熱に対する警戒は必 要であると思われる。 また、近年になってウエストナイル熱以外にもチク ングニア熱、ジカ熱、ロスリバー熱、デング熱などの 蚊媒介性感染症の増加が問題になっている。チクング ニア熱は主にアフリカから東南アジアにかけて流行し ているが、カリブ海諸国でも発生するようになってお り、北米から南米にかけて 1 万人を超える患者が確定 されている13)。ジカ熱はミクロネシア、ポリネシアか ら東南アジアにかけて流行しており、ロスリバー熱は オーストラリアで流行が続いている。それに伴ってジ カ熱、ロスリバー熱に感染して帰国した邦人の症例も 報告されている14) 15)。デング熱に関しては、ここ 5 年 間、毎年 100〜250 人ほどの海外からの輸入症例が報告 されていたが、2013 年には日本国内でデング熱に感染 したと考えられるドイツ人旅行者の症例が報告された 16)。さらに 2014 年の夏の終わりには、東京都内の公園 を中心にして 70 年ぶりにデング熱の国内流行が起こ り、ヒトスジシマカを介して 162 人の患者が発生した 17) 18) 現在実施している本サーベイランス調査では、チク ングニアウイルスの検出や WNV 以外のフラビウイル スのスクリーニング的検出を同時に試みているが、今 後はデングウイルスに特異的な遺伝子検査法を導入す るなどして、多様な蚊媒介性感染症について対応して いく必要があると考えられる。

謝 辞

本調査は、大阪府立公衆衛生研究所、大阪府健康 医療部環境衛生課および各保健所の協力のもとに大 阪府健康医療部医療対策課の事業として実施された ものであり、調査に関係した多くの方々に深謝致し ます。また、データをご提供頂いた東大阪市、高槻 市、豊中市及び枚方市の関係者の方々に深くお礼申 し上げます。

文 献

1) Smithburn KC., et al. : A neurotropic virus isolated from the blood of nature of Uganda, Am. J. Trop. Med, 20, 471-492 (1940) 2) 高崎智彦:ウエストナイル熱・脳炎, ウイルス, 57(2), 199-206 (2007) 3) 小泉加奈子,中島由紀子,松﨑真和ら:本邦で初めて 確認されたウエストナイル熱の輸入症例, 感染症 誌, 80(1), 56-57 (2006)

(12)

- 6 - 4) 厚生労働省健康局結核感染症課:ウエストナイル熱 媒介蚊対策に関するガイドライン(2003) 5) 弓指孝博, 瀧幾子,齋藤浩一ら:大阪府におけるウエ ストナイル熱に関するサーベイランス(平成 15 年度 報告), 大阪府立公衛研所報,42, 65-70 (2004) 6) 弓指孝博,青山幾子,小川有理ら:大阪府におけるウ エストナイル熱に対するサーベイランス調査(2013 年度), 大阪府立公衛研所報,52, 1-6 (2014) 7) 厚生労働省健康局結核感染症課長通知:ウエストナ イル熱の流行予測のための死亡カラス情報の収集 等について(2003.12.13) 8) 弓指孝博, 青山幾子:ウエストナイル熱(脳炎), 大阪府立公衆衛生研究所感染症プロジェクト委員 会編 感染症検査マニュアル第Ⅲ集, 1-13 (2004) 9) 国立感染症研究所:ウエストナイルウイルス病原体 検査マニュアル Ver.4 (2006) http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/WNVhomepage/Labot est.htm, (参照 2015-6-22) 10) 森田公一,田中真理子,五十嵐章:PCR 法を用いたフ ラビウイルスの迅速診断法の開発に関する基礎的 研究,臨床とウイルス,18(3), 322-325. (1990) 11) 小林睦生ら:チクングニヤ熱媒介蚊対策に関するガ イドライン (2009) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansens hou18/pdf/05-08 (参照 2015-6-22)

12) CDC : West Nile virus disease cases and deaths reported to CDC by year and clinical presentation,

http//www.cdc.gov/westnile/resources/pdfs/data/1-wnv-dise ase cases-by-year_1999-2014_06042015.pdf, (参照 2015-6-22)

13) WHO/PAHO : Number of reported cases of

Chikungunya fever in the Americas, by country or territory 2015(to week noted),cumulative cases, epidemiological week/EW 23(update 12 June 2015),

http://www.paho.org/hq/index.php?itemid=40931 (参照 2015-6-22)

14) Kutsuna S., et al. : Two cases of zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014, Eurosurveillance, 19(6), 20697 (2014) 15) 石原ら:関西空港検疫所で経験したロスリバー熱

の相談事例,病原微生物検出情報(IASR), 34, 378- 380 (2013)

16) Schmidt-Chanasit J., et.al: Autochthonous dengue virus infection in Japan imported into Germany, September 2013, EuroSurveillance. 19(3), 20681 (2014)

17) 厚生労働省: デングの国内感染事例の発生状況に ついて,

http//www.mhlw.go.jp/bunya/kekkaku-kansenshou19/ dengue_fever_jirei.html (参照 2015-6-22)

16) Kutsuna S., et al. : Autochthonous dengue fever, Tokyo, Japan, 2014, Emerging Infectious Disease, 21(3), 517-520 (2015)

(13)

―研究報告― 大 阪 府 立 公 衛 研 所 報 第 53 号 平 成 27 年 ( 2015 年 ) - 7 -

大阪府におけるエンテロウイルスおよびヒトパレコウイルス感染症の流行状況

と分子疫学的解析(2014 年度)

中田恵子*1 山崎謙治*1 左近直美*1 駒野淳*2 加瀬哲男*1 感染症発生動向調査事業に基づいて、五類定点把握感染症の病原体定点から大阪府立公衆衛生研究所には検体 が搬入される。本稿では、2014 年度に搬入された無菌性髄膜炎、手足口病またはヘルパンギーナと診断された患 者から採取された検体を対象に実施したエンテロウイルスおよびヒトパレコウイルスに関する検査結果を総括す る。全 190 症例のうち、142 症例(74%)からエンテロウイルスまたはヒトパレコウイルスが検出された。142 症 例中、32 症例(23%)からヒトパレコウイルスが検出された。各疾患における主要なウイルス血清型の検出割合は 以下の通りである:無菌性髄膜炎では、Human parechovirus 3 (HPeV3) ; 40% (8/20 症例)、Coxsackievirus A9 (CVA9) ; 10% (2/20)、 Coxsackievirus B4 (CVB4) ; 10% (2/20)、Echovirus18 (E18) ; 10% (2/20)および Echovirus30 (E30) ; 10% (2/20)、手足口病では、Coxsackievirus A16 (CVA16) ; 41% (18/44)および HPeV3 ; 23%(10/44)、ヘルパンギーナでは、 Coxsackievirus A2 (CVA2) ; 27% (21/78)、Coxsackievirus A4 (CVA4) ; 25% (20/78)および HPeV3 ; 18% (14/78)。無菌性 髄膜炎患者で HPeV3 が検出された 8 症例中 7 例が生後 1 カ月齢以下の患者であった。一方で、手足口病およびヘ ルパンギーナ患者で HPeV3 が検出された患者(各 10 症例および 14 症例)の年齢の中央値はともに 1 歳 7 カ月で あった。手足口病では、6 月から 8 月には HPeV3 の検出が優位で、9 月以降は、CVA16 が主要となった。このよ うに手足口病のおける主要な原因ウイルスの入れ替わりを伴う流行パターンは、2014 年度に特徴的であった。3 疾患患者それぞれから検出され、viral protein 1 (VP1)領域が増幅できた HPeV3 に対し系統樹解析を実施したところ、 各ウイルス株は、疾患とは関係なく 2 つのクラスターに分類され、2011 年に山形県で検出された株と最も近縁で あった。HPeV3 の感染による症状は、エンテロウイルス感染症と区別が困難であり、3 疾患のそれぞれから検出 されたウイルス株においても疾患特有の遺伝的特徴は認められなかった。そのため、これら 3 疾患の原因として HPeV3 を考慮し、エンテロウイルスと同様に流行状況を把握する必要があると考えられる。

キーワード: 無菌性髄膜炎、手足口病、ヘルパンギーナ、ヒトパレコウイルス 3 型、コクサッキーウイルス A16 Key words: Aseptic meningitis, Hand, foot and mouth disease, Herpangina, Human parechovirus 3, Coxsackievirus A16

エンテロウイルス感染症は夏季に小児で流行するが、 原因ウイルスの血清型は年ごとに変動する。臨床病型 は多様性に富み、中でも無菌性髄膜炎、手足口病およ びヘルパンギーナは「感染症の予防及び感染症の患者 に対する医療に関する法律」の 5 類感染症定点把握疾 患に指定されている。 *1大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 *2国立病院機構名古屋医療センター統括診療部

Epidemic and molecular epidemiological analysis of enterovirus and human parechovirus infection

in Osaka Prefecture (Fiscal 2014 Report)

by Keiko NAKATA, Kenji YAMAZAKI, Naomi SAKON, Atsushi KOMANO and Tetsuo KASE

疾患ごとに患者から検出されるウイルス血清型に特

徴があり、血清型によって症状や重症度が異なる 1)

一方、ヒトパレコウイルスはエンテロウイルスに属し ていたが、ウイルス学的性状の違いから 1999 年にヒト パレコウイルス属として独立した。ヒトパレコウイル ス(Human prechovirus: HPeV)の中でも 3 型による感 染症は、エンテロウイルス感染症と同様に夏から秋に 流行すると言われている 2)。さらに、国内では主に呼 吸器症状や胃腸炎症状患者から検出されることもエン テロウイルス感染症と類似している。また、HPeV3 は、 呼吸器症状や胃腸炎症状患者の他、新生児感染症3,4,5) 敗血症様症状3,4,6)、乳幼児突然死症候群患者6)からも検 出されており、関連性が推測されている。従って、エ

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- 8 - ンテロウイルスの血清型のみならず、HPeV の発生動 向を継続的にモニタリングすることは流行予測および 重症化に対する注意喚起のために重要である。本稿で は、2014 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日の間に感染 症発生動向調査事業に基づいて当所に搬入された無菌 性髄膜炎、手足口病またはヘルパンギーナと診断され た患者検体からの病原体検出情報を集約し、2014 年シ ー ズ ン に 流 行 し た エ ン テ ロ ウ イ ル ス 血 清 型 お よ び HPeV の流行状況を解析するとともに、HPeV3 の分子 疫学的解析を実施したので報告する。 調 査 方 法 1.検体・情報収集および統計解析 2014 年 4 月 1 日から 2015 年 3 月 31 日の期間、大阪 府内の定点医療機関から当所に搬入された無菌性髄膜 炎、手足口病またはヘルパンギーナと診断された 190 名から採取された 216 検体を対象とした(ただし大阪 市、東大阪市および堺市除く)。検体種別の内訳は、髄 液が 39 検体、呼吸器由来検体(咽頭拭い液、うがい液、 鼻汁等)が 156 検体、消化器由来検体(糞便、腸内容 物等)が 20 検体、尿が 1 検体であった。感染症法に基 づく感染症発生動向調査事業によって得られた検体情 報(患者の年齢、性別、診断名、体温、発症日)は調 査票より収集した。また、各疾患における患者と HPeV 検出患者の年齢分布の比較には Mann-Whitney 検定を 用いた。 2.培養細胞によるウイルス分離 培養細胞によるウイルス分離には 48 ウェルプレー トに播種した RDA、VeroE6、FL、Caco-2 細胞を用い た。咽頭拭い液等の呼吸器由来拭い検体は、綿棒で咽 頭等の病巣を擦過後、検体輸送用培地に浸漬した溶液 (呼吸器検体溶液)を、髄液は無処理でそれぞれ 100μl ずつを各細胞に接種した。糞便は、緩衝液で 10%懸濁 液(糞便乳剤)を作製し、15,000rpm で 5 分間遠心分離 後、その上清を 10 倍希釈し、0.45μm ミニザルトシリ ンジフィルター(sartorius 社)でろ過した溶液から 100ul を各細胞に接種した。各細胞への検体接種後、37℃の CO2インキュベーターで 1 週間培養し、細胞変性効果

(CPE; cytopathic effect)を観察した。CPE が出現した場 合に培養上清を回収した。なお、3代盲継代を繰り返

し、CPE が出現しなかった場合を陰性と判定した。

3.検体および培養上清からのウイルス遺伝子検出 呼吸器検体溶液、髄液および糞便乳剤の遠心上清か

らそれぞれ 200μl を採取し、RNA 抽出用検体とした。

RNA 抽出は、Magtration®-MagaZorb RNA Common Kit (PSS 社)を用いて、全自動核酸抽出装置 Magtration® System 6GC および 12GC(PSS 社)で行った。エンテ ロウイルス VP4-2 領域に対する seminested RT-PCR7) 実施し、増幅産物のダイレクトシークエンスを行ない、 BLAST 相同性検索にて血清型を決定した。また同時に、 ヒトパレコウイルスに対する RT-realtimePCR 8)をスク リーニング検査として実施し、陽性検体については VP1 領域に対する RT-nestedPCR9)を実施した後、エン テロウイルスと同様に血清型を同定した。また、VP1 領域(783nt)を増幅できた HPeV については、ダイレ クトシーケンスで得られた塩基配列に対し、ClustalW を用いた系統樹解析を実施した。 また、CPE が認められた培養細胞の培養上清からは、 検体からの RNA 抽出と同法にて RNA を抽出した。 培養上清から抽出した RNA を用いてエンテロウイ ルス10)およびヒトパレコウイルスの VP1 領域に対する RT-PCR を実施した。得られた増幅産物に対し、ダイレ クトシークエンスを行ない、BLAST 解析によりウイル スを同定した。 結 果 1.患者情報およびウイルスの検出状況 検体が採取された患者のうち、無菌性髄膜炎と診断 されたのは 45 名で、年齢の中央値は 1 カ月(範囲:2 日-13 歳 5 ヶ月)、性別は男性 29 名(64%)、女性 16 名 (36%)であった。手足口病と診断された患者は 47 名 で、年齢の中央値が 2 歳 6 カ月(3 カ月-33 歳)、性別 は男性 27 名(57%)、女性 20 名(43%)、であった。8 月までに手足口病と診断され、搬入された患者の約半 数で発疹が不明瞭、掌に発疹がない等、通常の手足口 病とは異なる病型であるとの報告があった。ヘルパン ギーナと診断された患者は 98 名で、年齢の中央値は 3 歳 5 ヶ月(1 ヶ月-48 歳)、性別は男性 57 名(58%)、 女性 41 名(42%)であった。 無菌性髄膜炎、手足口病あるいはヘルパンギーナと

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- 9 - 診断された合計 190 名中、142 名(74%)の患者から エンテロウイルスまたは HPeV が検出された。検出方 法別では遺伝子検出の割合が高く、216 検体中 153 検 体 (71%)が陽性であった。一方で細胞培養による分離 で陽性であったのは、216 検体中 53 検体(25%)に留 まった(表 1~3)。各疾患で HPeV が検出された患者の 年齢の中央値は無菌性髄膜炎で 1 カ月、手足口病で 1 歳 7 カ月、ヘルパンギーナで 1 歳 7 カ月であった。 2.疾患別ウイルス検出割合および検出ウイルスタイプ 無菌性髄膜炎患者の 44%(20/45 名)からエンテロ ウイルスまたは HPeV が検出され、検出内訳は、HPeV が 40%、次いで CVA9、CVB4、E18 および E30 が 10% を占めた(図 1)。検出検体別にみると、髄液からウイ ルス遺伝子が検出された検体が 36%(14/39 検体)で、 HPeV の検出が 43%(6/14 検体)と最も多かったが、 HPeV は培養細胞では分離されなかった。手足口病で は、94%(44/47 名)の患者検体からエンテロウイルス または HPeV が検出され、そのうち CVA16 が 41%、 次いで HPeV が 23%を占めた(図 2)。同様に、ヘルパ ンギーナでは 80%(78/98 名)の患者検体からエンテ ロウイルスまたは HPeV が検出され、そのうち CVA2 が 27%、CVA4 が 25%、HPeV が 18%を占めた(図 3)。 図 1.無菌性髄膜炎患者からの血清型別検出ウイルス割 合 図 2.手足口病患者からの血清型別検出ウイルス割合 図 3.ヘルパンギーナ患者からの血清型別検出ウイルス 割合 3.疾患別月別の検出エンテロウイルス血清型および HPeV HPeV は、無菌性髄膜炎患者由来検体で 4 月から検 出され始めた(図 4)。手足口病患者からは 6 月、ヘル パンギーナ患者から 5 月より検出され始めたが、検出 のピークはそれぞれ 7 および 9 月、7 月、7 月であった。 手足口病で最も検出割合が高かった CVA16 は、8 月か ら翌年 3 月まで検出され続けた(図 5)。ヘルパンギー ナでは、検出割合が高かった CVA2 および CVA4 は、5 月から 9 月までに集中して検出され、そのピークは 6、 7 月であった(図 6)。 4.3 疾患患者から検出された HPeV の系統樹解析 患者検体から検出された株のうちウイルス抗原決定 領域である viral protein 1(VP1)領域の遺伝子解析が実 CVA5 5% CVA9 10% CVB4 10% E16 5% E18 10% E30 10% RV 10% HPeV 40% 無菌性髄膜炎(n=20) 重複検出含む CVA2 2% CVA42% CVA5 2% CVA6 12% CVA10 2% CVA16 41% EV71 2% RV 14% HPeV 23% 手足口病(n=44) 重複検出含む CVA2 27% CVA4 25% CVA5 13% CVA9 1% CVB4 1% EV71 1% RV 14% HPeV 18% ヘルパンギーナ(n=78) 重複検出含む

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- 10 - 施可能であった HPeV3、16 株について 783nt の系統樹 解析を実施した。その結果、16 株のうち 2 株を除く全 ての株が同じクラスターを形成し、同クラスターには 2011 年に山形県で検出された株も含まれた。残りの 2 株についても 2011 年に山形県で検出された株と 96% の相同性を有し、解析した株の全てが非常に近縁なウ イルスであることが明らかになった(図 7)。 考 察 無菌性髄膜炎、手足口病またはヘルパンギーナ患者 を比較した場合、手足口病患者からのウイルス検出割 合が最も高く、無菌性髄膜炎と診断された患者からの ウイルスの検出割合が最も低かった。これは、例年の 検出傾向と同様11,12,13)であるが、通常は手足口病では、 手、足、口にエンテロウイルス感染症に特徴的な発疹 が発現するのに対し、無菌性髄膜炎は症候群として診 断されることから、エンテロウイルス以外のウイルス やその他の原因で引き起こされることがあるためと考 えられる。2014 年シーズンは、HPeV3 が無菌性髄膜炎、 手足口病およびヘルパンギーナ患者のそれぞれから検 出された。手足口病では、重複して CA4 が検出された 1 検体を除き、7 月末までに搬入された 11 検体中、5 検体で HPeV3 が検出された以外はエンテロウイルス の検出はなかった。このことにより、エンテロウイル ス感染症と HPeV 感染症を明確に区別することが困難 であることが分かる。 2014 年度、大阪府では無菌性髄膜炎の患者数は前年 比で 26.7%減であり、近年大きな流行は見られていな い14)。患者数が少ない中、病原体検索結果で最も高い 検出割合であったのは HPeV3 であった。従って、HPeV3 の流行年においては無菌性髄膜炎の原因として HPeV のサーベイランスの強化が必要であると考えられる。 手足口病についても患者数は前年と比較して少なく、 流行は非常に小さかった14)。検出されたウイルスは、 夏季では HPeV3 が、冬季では CVA16 が主要という流 行パターンが認められた。これは通常はエンテロウイ ルスのみの検査を実施しているところを、HPeV の検 査を全ての検体に対し実施したことにより明らかにな ったと考えられる。一方で、ヘルパンギーナ患者は前 年より増加し、定点あたりの患者数が全国で 4 位であ った14)。5 月から 8 月に患者数がピークとなり、病原 体検出においても 6、7 月に検出数がピークとなった。 ウイルスの検出は、CVA2 および CVA4 が全体の半数 以上を占め、HPeV3 を含めて夏季に検出が集中してい た。そのため、夏季に単峰性のピークを示す比較的典 型的な流行パターンを示したと考えられる。 各疾患患者から検出された HPeV3 の系統樹解析で は、それぞれの株は疾患とは関係なく 2 つのクラスタ ーに分類された。しかし、いずれのクラスターも 2011 年に山形県で検出された株と高い相同性を有すること から、解析を実施した株の全てが非常に近縁なウイル スであることが明らかになった。このことは、遺伝的 に大きな変化がなくても HPeV3 が多様な症状を引き 起こすことを裏付けていると思われる。また、疾患ご とに HPeV3 感染者と患者全体の年齢分布を比較する と、無菌性髄膜炎では患者全体と HPeV3 感染者の年齢 中央値はともに 1 カ月であるのに対し、手足口病では 患者全体では 2 歳 6 カ月、HPeV3 感染者では 1 歳 7 カ 月、ヘルパンギーナでは各、3 歳 5 カ月と 1 歳 7 カ月 であった。無菌性髄膜炎を除き、HPeV3 感染者で年齢 が低い傾向が認められた(無菌性髄膜炎:P=0.24、手 足口病:P=0.08、ヘルパンギーナ:P<0.05)。HPeV は エンテロウイルスよりも低年齢層からの検出が多いと の報告1,6)があり、本報告の結果とも一致している。ま た、本邦で比較的よく検出される HPeV1 と比較して HPeV3 が検出された症例では中枢神経症状を伴う割合 が高いと報告されている 6)。本報告においても無菌性 髄膜炎の患者で HPeV3 の検出割合が最も高く、HPeV3 の感染で中枢神経症状を惹起する可能性が示唆された。 また、手足口病およびヘルパンギーナ患者の HPeV3 感 染 者 の 患 者 年 齢 よ り も 無 菌 性 髄 膜 炎 患 者 に お け る HPeV3 感染者の患者年齢が非常に小さくなっている(1 歳 7 カ月対 1 カ月)。また、手足口病、ヘルパンギーナ で HPeV3 が検出された患者のうち、それぞれ 60%お よび 43%の患者からエンテロウイルスまたはライノウ イルスが重複して検出されているが、無菌性髄膜炎患 者では重複検出は認められなかった(データは示して いない)。これらの結果より、HPeV3 は乳幼児では単 独感染で中枢神経症状を伴う症状を引き起こす可能性 が考えられた。 エンテロウイルス感染症を疑う疾患検体が搬入され た場合、これまで HPeV の検査を全ての検体に対し実

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表 1.無菌性髄膜炎患者由来検体における検体種別検出法別ウイルス検出結果

表 2. 手足口病患者由来検体における検体種別検出法別ウイルス検出結果

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図 4. 無菌性髄膜炎患者検体からの月別検出ウイルス血清型

図 5. 手足口病患者検体からの月別検出ウイルス血清型

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- 13 - 図 7. HPeV 系統樹(VP1 領域,783nt) 施してこなかった。しかし、エンテロウイルス感染症 と HPeV 感染症は、臨床症状だけでは区別されにくく、 低年齢層に比較的重篤な症状を引き起こす可能性があ る。そのため、エンテロウイルス感染症疑いで、エン テロイルスが検出されない患者が多数存在する場合に は HPeV を検査対象とし、エンテロウイルスと同様に流 行状況を把握する必要があると考えられる。

文 献

1) Heinz Z and Hans-Peter G. : Clinical virology manual third edition-Enteroviruses, :252-269, American society for microbiology, Wasington, D. C (2000).

2) Ito M, Yamashita T, Tsuzuki H, Kabashima Y, Hasegawa A, Nagaya S, Kawaguchi M, Kobayashi S, Fujiura A, Sakae K, Minagawa H. : Detection of human parechoviruses from clinical stool samples in Aichi, Japan. J Clin Microbiol. Aug ; 48 (8):2683-8 (2010).

3) Abed Y, Boivin G. : Human parechovirus types 1, 2 and 3 infections in Canada. Emerg Infect Dis. Jun; 12 (6):969-75 (2006).

4) Abed Y, Boivin G. : Molecular characterization of a Canadian human parechovirus (HPeV)-3 isolate and its relationship to other HPeVs. J Med Virol. Dec; 77(4):566-70 (2005).

5) Boivin G, Abed Y, Boucher FD. : Human parechovirus 3 and neonatal infections. Emerg Infect Dis. Jan;11 (1):103-5 (2005).

6) Benschop KS, Schinkel J, Minnaar RP, Pajkrt D, Spanjerberg L, Kraakman HC, Berkhout B, Zaaijer HL, Beld MG, Wolthers KC. : Human parechovirus infections in Dutch children and the association between serotype and disease severity. Clin Infect Dis. 2006 Jan 15; 42(2):204-10. Epub Dec 12 (2005).

7) 石古博昭、島田康司、輿那覇麻理、栄賢司 : 遺伝

子系統解析によるエンテロウイルスの同定,臨床とウ

イルス,17:283-93,1999.

8) Nix WA, Maher K, Johansson ES, Niklasson B, Lindberg AM, Pallansch MA, Oberste MS. : Detection of all known parechoviruses by real-time PCR. J Clin Microbiol. Aug;46(8):2519-24 (2008).

9) Nix WA1, Maher K, Pallansch MA, Oberste MS. : Parechovirus typing in clinical specimens by nested or semi-nested PCR coupled with sequencing.J Clin Virol. Jul;48(3):202-7(2010).

10) Oberste MS, Maher K, Kilpatrick DR, Pallansch MA. : 783nt HPeV3-AB084913 Taiwan2007 Germany2010 Netherlands2002 260110HPeVVP1Meningitis 260164HPeVVP1HFMD Yamagata-2011 260024HPeVVP1Meningitis 260026HPeVVP1Meningitis 260073HPeVVP1Meningitis 260150HPeVVP1Herpangina 260136HPeVVP1Meningitis 260047HPeVVP1Herpangina 260093HPeVVP1HFMD 260083HPeVVP1Herpan 260129HPeVVP1HFMD 260186HPeVVP1Meningitis 260126HPeVVP1Herpangina 261024HPeVVPHerpangina 260181HPeVVP1Herpangina 260124HPeVVP1Herpangina HPeV1VP1-L02971 0.02 大阪府検出株 大阪府検出株 1型標準株 3型標準株

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Molecular evolution of the human enteroviruses: correlation of serotype with VP1 sequence and application to picornavirus classification. J Virol 73: 1941-1948, (1990). 11)中田恵子、山崎謙治、左近直美、加瀬哲男 : 大阪 府におけるエンテロウイルスの検出状況と分子疫学的 解析(2013 年度)大阪府立公衆衛生研究所所報(平成 26 年度)P7-14. 12)中田恵子、山崎謙治、左近直美、加瀬哲男 : 大阪 13) 中田恵子、山崎謙治、左近直美、加瀬哲男 : 大阪 府におけるエンテロウイルスの検出状況と分子疫学的 解析(2012 年度)大阪府立公衆衛生研究所所報(平成 25 年度)P7-13. 14)大阪府感染症発生動向調査事業報告書 第 33 報 解析(2011 年度)大阪府立公衆衛生研究所所報(平成 24 年度)P8-13.

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‒研究報告‒                                                                                                                              大 阪 府 立 公 衛 研 所 報 第 53 号 平 成 27 年 ( 2015 年 ) 15

大阪府内におけるノロウイルスの流行状況

(2010

2013)

上林大起*1,2 左近直美*1 入谷展弘*2 三好龍也*3 改田厚*2 阿部仁一郎*2 山元誠司*1,2 久保英幸*2 平井有紀*2 内野清子*3吉田永祥*3岡山文香*3 芝田有理*3 塚田和宏*1駒野淳*1,4 弓指孝博*1 西尾孝之*2 加瀬哲男*1 田中智之*3,5 高橋和郎*1,6 2012 年度に大阪府内で発生したノロウイルス (Norovirus : NoV) に起因する胃腸炎集団感染事例数は 226 事例と、 前年度と比較し約2.2 倍増加した。NoV に起因する胃腸炎集団感染事例の中で GII.4 の占める割合を年度別に算出 すると、2011 年度 43.3% (45/104) 、2012 年度 79.2% (179/226)であった。さらに、GII.4 亜型に焦点を当て解析す ると、2011 年度は、Den_Haag_2006b (28.9%, 13/45)、New_Orieans_2009 (44.4%, 20/45)、2012 年度は Den_Haag_2006b (7.6%, 14/184) 、New_Orieans_2009 (3.3%, 6/184)、Sydney_2012 (87.0%, 160/184)が検出された。2012 年度の NoV 流 行は、Sydney_2012 の出現により引き起こされたと考えられた。

–ワ –ド : ノロウイルス、感染性胃腸炎、集団感染、変異株 Key words: Norovirus, Gastroenteritis, Outbreak, Variant

諸 言

ノロウイルス (Norovirus : NoV) は全ての年齢層に おける非細菌性急性胃腸炎の主な原因ウイルスであり、 全世界の急性胃腸炎の 20%は NoV が原因と考えられ る [1‒2]。NoV は、感染したヒトの糞便や嘔吐物、カ キなどの食品を通して感染する [3‒6]。世界各地で高 齢者施設、社会福祉施設、保育所などにおける集団感 染事例が報告されており、毎年秋から冬にかけて報告 数は増加する [7‒8]。 NoV は、カリシウイルス科に分類される(+)センス *1大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課 *2大阪市立環境科学研究所微生物保健グループ *3堺市衛生研究所ウイルス検査担当 *4国立病院機構名古屋医療センター *5国保日高総合病院 *6国際医療福祉大学

Epidemic of Norovirus in Osaka (2010–2013) by Daiki Kanbayashi, Naomi Sakon, Nobuhiro Iritani, Tatsuya Miyoshi, Atsushi Kaida, Niichiro Abe, Seiji P Yamamoto, Hideyuki Kubo, Yuki Hirai, Kiyoko Uchino, Hisayoshi Yoshida, Fumika Okayama, Yuri Shibata, Kazuhiro Tsukada, Jun Komano, Takahiro Yumisashi, Takayuki Nishio, Tetsuo Kase, Tomoyuki Tanaka and Kazuo Takahashi

の一本鎖 RNA ウイルスである。NoV のゲノムは約

7,500 塩基、3 つの ORFs (Open Reading Frames)から構 成されている [9]。NoV のゲノム塩基配列は多様性に 富んでおり、カプシドの塩基配列の相同性に基づき Genogroup I‒V の 5 つの遺伝子グループに分類される [10]。

ヒトから主に検出されるNoV は Genogroup I (GI)お よびGenogroup II (GII)であり、GI は 9、GII は 21 の遺 伝子型に細分される [10]。世界各地で主に検出されて いるのはGenogroup II genotype 4 (GII.4)である。これま でNoV GII.4 は、ヒトの抗体によって認識されるカプ シド領域に変異が入ることにより、新たな亜型を出現 させ周期的に流行を引き起こしてきた。近年では、2006 年にDen_Haag_2006b、2009 年に New_Orleans_2009 と いう新たな亜型が出現し、日本国内を含めて世界的な NoV の流行が確認された [11]。 大阪府立公衆衛生研究所、大阪市立環境科学研究所、 堺市衛生研究所では、共同研究「大阪府全域における ノロウイルス流行調査」を実施し、行政区画の枠組み を超えてNoV の流行実態を解析している。本稿では、 2010 年 12 月から 2013 年 3 月までの 28 ヶ月にわたっ て大阪府内で発生したNoV に起因する胃腸炎集団感

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16 染事例の遺伝子型別を実施し、発生時期と発生施設に ついて流行解析を行ったので報告する。

調 査 方 法

1.検 査 材 料 2010 年 12 月 1 日から 2013 年 3 月 31 日までの期間 に同一施設内において患者数 10 人以上の胃腸炎集団 感染が疑われ、大阪府立公衆衛生研究所、大阪市立環 境科学研究所、堺市衛生研究所で検査を実施した非細 菌性胃腸炎集団感染433 事例を対象とした。 2.検 体 からのウイルスの検 出 及 び遺 伝 子 型 別 糞便検体よりRNA を抽出し、リアルタイム RT‒PCR 法 [12]も し く は 市 販 の 検 出 キ ッ ト を 使 用 し た RT‒ LAMP 法により NoV 遺伝子を検出した。NoV 遺伝子

が検出された事例について、その中から2‒3 検体を選

択後、カプシド領域の塩基配列をダイレクトシークエ ンス法にて決定し、NoV の遺伝子型別を行った [13]。 遺伝子型については Kageyama らの報告に従った [14]。 GII.4 亜型の分類は、Norovirus Genotyping Tool Version 1.0 (http://www.rivm.nl/mpf/norovirus/typingtool) に 従 い 行った [15]。その他の下痢症ウイルス (A 群ロタウイ ルス、C 群ロタウイルス、サポウイルス、アストロウ イルス、腸管アデノウイルス)については ELISA、リア ルタイムRT‒PCR 法等を用いて検出した [16]。

結 果

Ⅰ .ノ ロ ウ イ ル ス の 検 出 と 遺 伝 子 型 別 分 類 2010 年 12 月から 2013 年 3 月の期間に大阪府内で発 生した胃腸炎集団感染事例から検出されたウイルスは、 ノ ロ ウ イ ル ス 94.2% (408/433)、 A 群 ロ タ ウ イ ル ス 3.5% (15/433)、サポウイルス 1.2% (5/433)、アストロウ イルス 0.5% (2/433)、C 群ロタウイルス 0.2% (1/433)、 腸管アデノウイルス 0.2% (1/433)、サポウイルスとア ストロウイルスの混合事例 0.2% (1/433)であり、NoV が原因ウイルスとして最も高い割合を示した (表 1)。 NoV に起因する胃腸炎集団感染事例数を年度別にわけ て解析すると、2011 年度は 104 事例であったのに対し て、2012 年度は 226 事例と NoV に起因する胃腸炎集 団感染事例数の増加が確認された。 検出された NoV をカプシド領域の塩基配列に基づ き 分 類 す る と 、GI が 3.4% (14/408)、GII が 94.6% (386/408)、GI と GII 混合事例が 0.98% (4/408)であった。 遺伝子型別においては、2010 年 12 月から 2013 年 3 月 の間に少なくともGI が 4 種類、GII が 8 種類検出され た。GI は、GI.3 (7.1%, 1/14)、GI.4 (21.4%, 3/14)、GI.6 (50.0%, 7/14) 、GI.14 (7.1%, 1/14)、GI Not Typed (NT) (14.3%, 2/14)、GII は GII.2 (12.4%, 48/386)、GII.3 (3.6%, 14/386)、GII.4 (66.6%, 257/386)、GII.6 (3.1%, 12/386)、 GII.7 (0.5%, 2/386)、GII.11 (0.3%, 1/386)、GII.12 (2.6%, 10/386)、GII.13 (6.0%, 23/386)、GII NT (4.9%, 19/386) に 分類される NoV が検出された。また、GII.2/GII.13、 GI.14/GII.13、GII.2/GII.3 の混合事例がそれぞれ 1 事例、 GI.6/GII.4、GII.3/GII.4 の混合事例がそれぞれ 2 事例、 GII.4/GII.6/GI.4 の混合事例も 1 事例認められた。NoV による集団感染408 事例中 GII.4 が 63.0% (257/408)を 占めていた (図 1)。

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17 2011 年度および 2012 年度における事例別遺伝子型 別状況を図2A, B に示した。GII.4 の占める割合は混合 事例を含めると 2011 年度 43.3% (45/104)、2012 年度 79.2% (179/226)と、2012 年度は GII.4 の占める割合が 急増した (図 2A, B)。 Ⅱ.新 規 ノ ロ ウ イ ル ス GII.4 亜 型 の 同 定 GII.4 亜型に焦点を当て解析すると、2011 年度は、 Den_Haag_2006b (28.9%, 13/45) 、 New_Orieans_2009 (44.4%, 20/45)、2012 年度は Den_Haag_2006b (7.6%, 14/184) 、New_Orieans_2009 (3.3%, 6/184)、Sydney_2012 (87.0%, 160/184)が検出された。亜型の推移を月毎に見 る と 、2012 年 7 月 ま で は Den_Haag_2006b や New_Orieans_2009 が流行の主体となっていたが、2012 年8 月以降、流行の主体が急速に Sydney_2012 に置き 換わり始めた(図 3)。2012 年 12 月以降、従来主流であ った Den_Haag_2006b や New_Orieans_2009 は検出さ れていない。 Ⅲ.ノ ロ ウ イ ル ス GII.4 の 施 設 別 検 出 状 況 GII.4 に起因する集団感染事例を施設別に解析する と高齢者施設 48.5% (127/262)、幼稚園/保育所 34.4% (90/262)、社会福祉施設 5.7% (15/262)、小学校/中学校 4.6% (12/262) 、医療機関 3.0% (8/262)、その他 3.8% (10/262) で 発 生 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 Sydney_2012 は、2012 年 1 月に大阪府内で発生した社 会福祉施設における集団感染事例から日本で初めて検 出された。その後、4 月に幼稚園、6 月に小学校、8 月 から9 月にかけて幼稚園における集団感染事例で検出 された。10 月以降、幼稚園や保育所を中心とした低年 齢層で感染が拡大し、高齢者へと感染が拡大していっ た (図 3, 図 4)。

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18 . 次に高齢者施設と幼稚園/保育所における遺伝子型 別のNoV 検出状況について解析した。2011 年度に遺 伝子型が決定できたものの中で、高齢者施設では1 種 類、幼稚園/保育所では 7 種類(NT は除く)の遺伝子型 の NoV が検出された(表 2)。高齢者施設においては GII.4 が 96.8% (30/31)と検出された NoV の殆どを占 めているのに対して、幼稚園/保育所では 17.4% (8/46) であった(表 2)。また、2012 年度については、幼稚園/ 保育所において、8 種類(NT は除く)の遺伝子型の NoV が検出されていたが、GII.4 が 79.0% (79/100)を占め ており、GII.4 による感染拡大が確認された(表 2)。

考 察

感染性胃腸炎は発生頻度が高く公衆衛生上重要な感 染症である。世界的にNoV に起因する集団感染事例の 発生が頻繁に報告されている [1‒2]。大阪府内におい て2010 年 12 月から 2013 年 3 月に発生した非細菌性胃 腸炎集団感染433 事例中、NoV に起因するものが 94.2% を占め、NoV による集団感染 408 事例中、GII.4 が 257 事例 (63.0%)を占めていた。2003 年以降 GII.4 の検出 が増加してきたが、当時は流行株の一部に過ぎなかっ た。しかし、2006 年の Den_Haag_2006b の出現ととも に世界各国に感染が拡大し、急速に日本に伝播し大流 行を起こした [18]。それ以降、抗原性に重要なカプシ ドタンパクの可変領域アミノ酸配列に変異が入ること により、GII.4 型 NoV は世界各地で周期的に流行を引 き起こしてきた [17]。 2012 年度についても流行する GII.4 の亜型に変化が 確認された。新しい亜型のSydney_2012 は、2011 年に 上海 [19]、イタリア [20]、バングラディッシュ [21] などで散発性胃腸炎患者から検出されはじめた。日本 国内では、2012 年 1 月に大阪府内の社会福祉施設にお ける集団感染事例で初めて検出された [22‒23]。その 後、2010 年度および 2011 年度の流行の主体となった Den_Haag_2006b や New_Orieans_2009 が Sydney_2012

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19 Sydney_2012 は、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラ リア、アジアなどの地域でも時を同じくして流行が確 認され [24]、大阪府内においても同じ現象が確認され た。今回の大阪府全域における流行解析により、低年 齢層から高齢者層へと感染が拡大したことが明らかに なった。 Sydney_2012 については、カプシドタンパクの可変 領域アミノ酸配列の変異が確認されており [17]、抗原 性の乖離により集団免疫を回避して感染が拡大した可 能性が指摘されている [25]。今回の我々の疫学データ もその可能性を強く示唆している。 左近らは大阪府内における長期間に渡る NoV 遺伝 子型の解析結果から、小児における集団感染では様々 な遺伝子型のNoV が検出されると報告している [26]。 しかし、2012 年度は Sydney_2012 が小児における集団 感染の主体となり、Den_Haag_2006b が流行した 2006 年度と同様の傾向であった [26]。NoV に対する免疫は 4-8 年持続すると報告されているが [27]、Sydney_2012 は小児の集団免疫を回避する変異を獲得した可能性が 示唆される。 NoV に起因する散発性胃腸炎や集団感染事例は依然 として多い。NoV の変異と流行の関係は完全には明ら かにされていないため、今後も適切なサーベイランス による流行状況の把握、並びに遺伝子型別による流行 株の解析を行う必要がある。今後さらに、カプシドタ ンパクのエピトープの変異と流行との関連性を明らか にし、流行抑止やワクチン開発に繋がる知見を蓄積し ていく必要があると考えられる。 謝 辞 本研究に御協力頂いた大阪府健康医療部保健 医療室医療対策課、大阪府保健所検査課、大阪市保健 所、堺市保健所の方々に深謝いたします。

文 献

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表 1.無菌性髄膜炎患者由来検体における検体種別検出法別ウイルス検出結果
図 6.  ヘルパンギーナ患者検体からの月別検出ウイルス血清型
図 1 保存料のクロマトグラム(10 µg/mL)

参照

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