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世界経済の構造変化のもとでの地域経済統合 : ラテンアメリカのケースから

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世界経済の構造変化のもとでの地域経済統合

一 ラテ ンアメ リカのケースか ら一 O rよ じ め に 現在進行 している,新 自由主義的経済秩序の もとでの地球規模での経済の統 合の深化,グ ローバ リゼーシ ョンは,当 然のことであるが,発 展途上諸国の経 済 に大 きな影響力 をもつ もの となっている。新 自由主義 による構造調整政策 を 80年代後半か ら積極的に進めて きたラテンアメリカ諸国では,外 資規制の緩オロ, 資本移動の 自由化,貿 易障壁の一方的引 き下げなどをつ うじて,急 速な世界市 場への統合が進んでる。東 アジアにおける1980年代後半か らの直接投資 に主導 された経済成長の拡散の例 にもあるように,世 界経済への統合 を進めてい くこ とは,経 済開発上大 きなプラスの作用 をもたらす可能性がある。ラテンアメリ カの場合 にも,1980年 代 の停滞か ら,1990年 代 に入 り出が りな りにもプラスの 経済成長 に転換す ることがで きたのは,開 放 されたラテンアメリカ諸国の市場 へ の資本の流入が大 きな貢献 をした結果である。 しか しなが ら,特 に金融面で の国際的市場の連関性 ・一体性の高 ま りによって,世 界経済や他の発展途上国 の経済的危機の波及効果 をも高め,各 国の経済を激 しく動揺 させる要因ともなっ ている。ラテ ンアメリカの市場が翻弄 された危機 は,主 だったものだけで も, 1994年末か らのメキシコ通貨危機 に端 を発するラテンアメリカ諸国の通貨 ・金 融市場 の動揺 (テキーラ効果),97年 のアジア通貨 ・経済危機,98年 のロシア 通貨危機がある。 この ような危機のたびごとに,各 国政府は財政支出削減,高 1)本 稿 は,平 成 10年度文部省科学研 究費 (奨励研究lA),課題番号 :097300333,研究課題 「ラテ ンアメ リカの安定化政策 と地域経済統合お よび新経済開発戦略」)に よる成果の一 部 であ る。 浩 明 倉

/Jヽ

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80 彦 根論叢 第 320号 金利政策など,実 物経済を犠牲にしながら通貨・金融市場の安定化を図らねば ならなくなつている。 このようなグローバ リゼーシヨン下の世界経済の構造的問弓)そ の推進者た る先進国の果たすべ き役割については先に論 じたことであるが,そ れに対 して 各国のレベルで採 りうる対応戦略の可能性を考察することも必要であろう。特 に,ラ テンアメリカの場合,80年 代の長期の経済停滞 とインフレーションの経 験から,世 界市場への統合プロセスを経済安定化政策 と両立的に進めなければ ならず, しかも所得分配上の問題がすでに十分深刻であるという初期条件から 開始 しなければならなからたという問題 をもっているので,市 場が強制する淘 汰や市場の悪影響については,経 済的にも政治・社会的にも,脆 弱な状態にあ

る。したがつて,このような困難な条件下で,世界経済への統合を進めながら,

いかにそのプラスの作用 を享受 してい くかが,ラ テ ンアメリカ諸国の現実的課 題 となっている。 その ような試みの一つ として,本 稿では地域経済統合 を検討 したい。1990年 代 に入 つて,ラ テ ンアメ リカ諸国は世界経済へ の統合 と同時 に,新 らたな開放 的地域経済統合の試み を進めていると いかに開放的な ものであろうと,地 域経 済統合 は,世 界経済へ の統合 プロセスを歪 出す る もの とい う性格 をもつ。 した がって,両 者が同時に進め られているのは,平 板 な世界経済への統合ではな く, 部分的に速度 ・密度 を増 した統合 を選択す ることに利点があるか らに他 な らな い。 本稿 では, 日 下のグローバ リゼーシ ヨンの特徴が,資 本移動の自由化 に偏 っ た ものであること, したがつて経済 に好影響や撹乱 をもた らす波及経路が主要 2)拙 稿 「国際資本移動 と発展途上国経済の成長・安定一 ラテンアメリカと東南アジアの経 験 の比較 に よつて」 (「彦根論叢』 第309号,1997年 10月)。また,UNCTAD,駒 溺θa句冴 Dθυθ↓opttθ%けRの Oγけゴθ冴 は,そ のPart lで資本移動 の 自由化が もた らす途上国へ の悪 影響 を論 じ,そ の国際的規制制度 の必要性 を論 じている。

3 ) E C L A C , 9 p θ物 妃匈づο物 ↓ぢs 物仇 L a けれ ム物 克C a o 物冴けんθa " 克b b θ碗 , 1 9 9 4 . , E d w a r d s , S., “Latin American Economic lntegration:A New Perspective on an Old Dream,"

質んθ Иθ克胡 ECθttOη碗グ, VOl.16 No.3, May 1993.Fuentes, K.」 .A.,“El Regionalismo Abierto y la lntegraci6n Econ6mica,"妃 θυtsけo αθ↓a CβPAL, N° 53, Agosto 1994.

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には資本の移動 にあることをまず確認す る。その上で,ラ テ ンアメリカ諸国の 経験 に照 らしなが ら,地 域経済統合がその ような資本移動に対 してお よぼす効 果 について検討す ることで,そ の利点ついて接近 してい きたい。また,地 域経 済統合 の伝統的な利益 (貿易倉J出効果 な どの経済的利益)と ともに,非 伝統的 利益 (信頼性,シ グナ リング,交 渉力,保 障,協 力関係な ど)も 考察の対象 と して,そ れが もつ経済への安定化効果 をも検討 してい きたい。 I グ 回―バ リゼーシヨンの非対称性 世界経済の統合 ということを純粋 に考 えれば,政 府による経済への介入がまっ た く存在せず,国 による規制や・制度の違い もない世界経済が実現すればよい。 そ こでは もはや国境 の意味 はな く,世 界 を舞台 に自由な経済活動が行 われる真 にグローバルな経済が実現す る。 しか し現実 に進 んでいるグローバ リゼーシ ヨ ンでは,依 然,国 家 。政府の存在 は経済的意味 を持 っている。ただ,経 済主体 ・資源の移動の自由化 によつて,国 境 を越える活動が活発化 していることが, 国際間の経済的相互依存が著 しく高め,各 国が独立 に経済政策 ・開発政策 を遂 行す ることを困難 に陥 らせているのである。世界経済全体の統合はその ような もの として進 んでいる。 しか し,そ れは一様のベースで進んだいるわけではない。モノの移動 と資金 の移動 を比較すれば,は るかに資金の移動の障害が少 な くな り,国 際間の資本 取引 は貿易 を上 回つて拡大 している。85年か ら94年の世界の貿易?成 長率は年 平均6.7%で あ つた。GDP年 平均 成長率 は3.2%で あ り,貿 易 は経済の拡大 を 上回るペースで大 きくなつて きた。けれ ども資本取引の成長率はさらに大 きい。 直接投資 のそれは14.3%,国 際的な銀行貸出のそれは12.0%に 達 している。短 期資本 の動 きはよ り激 しく増大 している。1973年に世界の為替市場での取引 き は1日150億 ドルであ つた ものが92年 には8,800億 ドル以上とな り,95年 には 13,000億ドルを超 えた。国境 を越 えての金融資産の売買は,ア メリカ, ドイ, 日本でGDPの 10%以 下であつたが,そ れぞれ1350/o,170%,80%と なつた。

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82 彦 根論叢 第 320号 まさに国際的な資本の移動 こそが,今 日の世界経済の統合 をもた らしている主 たる要因である。 これに対 して,モ ノの移動,特 に途上国がその低賃金の労働力 を生かせる繊 維製品や熱帯農産物の分野での 自由化 は,そ れほど速いペースでは進んでいる わけではない。 ウルグアイ ・ラウン ドの結果,こ れまで繊維製品の貿易 を数量 的 に制 限 して きたMFA(国 際繊維協定)や先進国の農業保護政策は解消 される ことにはなっている。 しか しあ くまで もそれは段階的にである。また,先 進国 に相対的に豊富 に賦存する資本の移動の 自由化 とは対照的に,途 上国が相対的 に豊富 に持つ,人 (労働)に ついては,出 稼 ぎや移民が強い制限下 に置かれて いることか らもわかるように,自 由に移動で きるものとはなっていない。 また,80年 代以降においては,先 進諸国と途上諸国が自由化を進める相対速 度においても非対称性がある。モノの貿易の面において,途 上諸国は急速に自 由化を進める一方,先 進諸国のそれは停滞 している。もちろん両者の80年代初 頭での自由化度は先進諸国が当然上回つていた。それ以降,途 上諸国が構造調 整のために各国独 自の (先進国の自由化の見返 りのない)自 由化を進めている ことが,そ のよう状況を生み出している。むしろ,モ ノの貿易においては,先 進諸国の保護主義が懸念 される環境にある。途上国にとって,資 本へのアクセ スの可能性の高まりの一方,先 進国市場へのアクセスには不確実性が大きくなっ ているのである。 このように今 日のグローバ リゼーションは非対称的に進行 している。そうし た秩序の形成には,先 進各国の金融自由化政策のほか,IMF・ 世界銀行の途上 5 ) 国への コンデ ィシ ョナ リテ イを通 じた構造調整要求が大 きな役割 を果た した。 累積債務危機後 の世界で,途 上国に向か う資金の唯一の源泉であった国際金融 機関 とそれに資金 を拠出する先進諸国の力が,途 上諸国の政策 を転換せ しめた 重要なひとつの要因である。そのような力関係 を繁栄 しているがゆえに,グ ロー 5 ) 債 務危機 をいかに先進国が管理 していったかについては, 」. L o x l e y , あけ針院攣初αθt t c a Dあsθ?切づιあb克切物 attα Gγο切けれ 妃ヴZθCけぢοtts ο物 けんθ POιケウca/J βcο%ο物7(プ Nθγれ―Sο切けん 妃θιaけあοtt αけけんθ賢も物 げ けんθ σθ物け切轡 , MIacmlllian, Hampshire, Engiand, 1998. pp. 2 4 - 3 9 . を多謝“。

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バ リゼーシ ョンは先進国が豊富 に有する経済資源である資本 を世界的に自由に 活動 させ るための国際経済秩序の形成 を通 じて進んでいるのである。 工 地 域経済統合のもつグー回バ リゼーシ ョン過程の歪出効果 地域経済統合の利益 については,伝 統的にはヴァイナー以来の貿易創出効果 と転換効果 についての議論があると貿易創出効果 とは地域経済統合 による域内 国間の貿易障壁低下によってその間に新 たな貿易が創出されることを言い,こ れは統合の もたらす利益 をしめす。 これに対 し,貿 易転換効果 とは域内国間と 域 内 ・域外 国間の貿易障壁 に格差が生 じることにより,統 合前の域外国から輸 入が域 内か らの輸入 に転換 されることを言い,こ れは本来 より効率的な域外国 の製品が差別 によって被害 を受けるとい う,統 合の もたらす損失 をしめす。そ して前者 と後者の比較 によって地域経済統合が利益 をもたらす ものであるかい なかが決 まるとい うのが,ヴ ァイナー以来の伝統的な議論の枠組み となって き た ものである。 したが つて,地 域統合 による貿易障壁の低下によって貿易が拡大する可能性 をよ りもつ国 (「自然 な貿易相手」)の 間での統合が,利 益 をもたらす可能性が 大 きい と考 え られている。「地域」経済統合 は,そ の地理的近接性か ら輸送費 も低 く,貿 易相手 としての可能性の大 きい国の間での統合 といえるか もしれな い。 ラテンアメリカ諸国は,輸 入代替工業化政策 を永年採用 し,貿 易障壁が高 かったので,貿 易相手 としての可能性が十分開発 されて きてお らず,地 域経済 統合が もた らす貿易創出効果が十分大 きいことが考 えられる。 他方,グ ローバ リゼーシ ョンの進展 は,地 域経済統合の もつ このような議論 における意味 を軽 くしているか もしれない。通信 ・情報 ・輸送技術の発展は, 空間的移動の コス トは低減 させている し,貿 易障壁等の政策的 ・人工的な空間 移動の コス トも低 くなっているか らである。そのような世界では,貿 易の拡大 6)Viner, J., 何んθ σttsけο物 し晩づ0%rssttθ, steavens 7)浜 口信明 「1990年代 ラテンアメリカの地域主義」 域統合』アジア経済研究所,1998年),19ページ。

and Sons, London, 1950. ( 同編 『ラテ ンアメ リカの国際化 と地

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84 彦 根論叢 第 320号 する可能性 はいずれの国において も大差 な く,地 域経済統合の もた らす歪みに よる貿易転換効果が大 きくなる可能性がある。つ ま り,貿 易創出 ・転換効果の 議論 だけか らは,地 域経済統合の効果は確実 には論 じられない。 しか し,現 実 には地域経済統合 は着実 に広がっているのである。 地域経済統合 は,貿 易 自由化の利益 を得 るための手段 としては,あ くまで も 次善の手段 に過 ぎない。む しろその特質は,ヴ アイナー流の議論の言 う貿易 自 由化の側面つ ま り貿易創出効果の面 よ りも,貿 易条件 に格差 をつけることすな わち貿易転換効果の側面 にあると考 えるのが 自然である。一般的には損失をも た らす とされる市場 に歪みをもたらす効果 こそ,地 域経済統合が本来的に持つ ものである。 この点 を論 じるためには,歪 みの もたらす利益 を考察で きる枠組 8 ) みが必要である。 ここでは,新 経済地理学の考 え方か ら接近 しよう。そ して, 今 日のグローバ リゼーシ ヨンの特徴である非対称性 , 資 本移動の 自由化の急速 な進展 とい う条件の下で,地 域経済統合 (域内貿易障壁の低下 とその結果 とし ての市場規模の拡大)が いかなる利益 をもた らしうる可能性があるのが を検討 す る。 資本移動が自由になれば,完 全競争市場では,資 本はその要素価格が均等化 するように,資 本豊富国から資本希少国へ と移動するはずである。 したがつて グローバ リゼーシヨンは途上国に対 して不足する資本の供給を増加させるとい う,先 進国と途上国間の格差縮小の方向での効果を持つはずである。 しか し, 実際には資本の移動において,途 上国は限界的な地位 を占めているに過 ぎない。 長期的な資本移動のなかで途上国向けのシェアは,債 務危機前の80年から82年 には42.8%を しめていたのが,87年 から90年には15。2%へ と低下 し,91年 から 9 ) 9 2 年で も,そ のシェアは17。2 % へ と微増 したにす ぎない。資本 は低賃金だけで は,途 上国には移動 しないのである。 先進諸 国における資本の量的な豊富 さは, 単 に資本 の蓄積が利潤率の低下 を 8 ) た とえ│ ゴ, K r u g l n a n , P . R . a n d A n t h o n y 」. V e n a b l e s , “G l o b a l i z a t i o n a n d l n e q u a l i t y o f N a t i o n s , " 9 切a t t θγιヶ乃切物a J げ どc οt t ο物あC S l 1 0 1 4 ) 1 9 9 5 , p p . 8 5 7 - 8 0 . を参照。

9)Griffithttones and Stallings, “New Global Financial Trend",」し々坊物aιげr/4けθ∽ 7ウー ca切oSけ切αあθs a物溺 予材θγι冴ム〃勧ぢγS, V01.37, No。3, Fall 1995, PP,62-63.

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もた らすだけではな く,そ の蓄積 によって利益が もた らされる要因があると考 えることで しか説明で きない。ここでは,空 間的な資本の集積が利益 をもたら す場合 を考 えてみ よう。 次の四つの力 によって産業立地が決定 されるとモデルを考 えると第一に,要 素市場 における競争である。そこでは通常の想定 どお り,資 本の集積 は相対的 にその希少性 を減 じ,賃 金 を引 き上げるとともに利潤率 を相対的に引 き下げる 効果 を持つ と考 えられる。第二 に,製 品市場 における競争がある。 ここで も資 本集積 は製品市場 における競争 を激化 させ,そ の価格 を引 き下げる効果を持つ ので,利 潤率 を引 き下げる方向に働 くものと見ることがで きる。 しか し第三に, 資本の集積 している地域では,中 間財の供給企業や熟練労働の集積 も存在 して いるもの とすれば,す なわち,産 業 レベルでの外部経済効果 を認めるならば, そ こへの立地は生産 コス トの低減 とそれによる利潤率の引 き上げ効果 を持つ と 考 え られる。第四に,製 品の需要 とい う面で も,集 積が高いほうが中間財重要 も大 きく,ま た賃金 も高い。それゆえ最終需要 も大 きいのであるから,利 潤 に 対 して好影響 をもつであろう。つ ま り,要 素市場,製 品市場の力か らは集積は 利潤率 に対 して不利,す なわちより両市場おける競争が弱い地域 を求めて集積 を分散 させ る方向に働 き,産 業の前方連関 (コス ト面)と 後方連関 (需要面) の面か らは集積 は利潤率 に対 してプラスの効果 を持ち,地 域への集積が促進 さ れる力 となるのである。ただ し,第 三,第 四の力が空間的に限 られた地域で働 くためには,地 域間に中間財 ・製品の移動の制限 (コス ト)が 存在 しなければ ならない。そ うでなければ,市 場や供給地に近接立地する必要はないのである。 このモデルでは貿易障壁が集積 に意味 をもたらしているのである。 現実 には,貿 易量 に見 られるように南北貿易 ・南南貿易の障壁が,先 進諸国 間 よ りも高い想定で きる。途上国の関税率は高 く,貿 易障壁の関税化率 も低い。 先進国の貿易障壁 は見かけ上は低いが,途 上国か らの低賃金 を利用 した製品輸 出 に対 しては,MFA(国 際繊維協定)に 象徴 されるように,さ まざまな制限 10)このモデルは,Puga,Diego and Anthony」.Venables,“Trading Arrangements and

lndustrial Development,"Tん θ ″bγια Bの物そ Jcο%ο物'C ttθυヶθ切, Vol.12, No.2, May 1 9 9 8 , p p . 2 2 1 - 4 9 , によって い る。

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彦根論叢 第 320号 措置が用意 されている。 この ような状況下では資本の立地の先進国への集積が お こ り,利 潤率 を均等化 させ るような途上国への資本移動は起 こらない。 この ような世界 において,地 域経済統合 はどのような効果 を持 ちうるのであ ろ うか。NAIttA(北 米 自由貿易協定)の ような南北間の地域経済統合の場合, 両者の間の貿易障壁の低下は,北 市場への接近の改善 と投入財価格低下が もた らされる。つ ま り資本移動 に偏 った自由化 を是正する効果 を持つ。その結果, 北 と統合 される南では,前 方 ・後方違関においては北内部 と無差別 となるため に,要 素 ・製品市場 における競争が より弱い南へ資本が拡散する効果 を期待で きるのである。メキシコの場合, 直 接投資は9 4 年の拡大後, 通 貨危機の影響 を 1 1 ) 受 け95・96年には低迷 したが,97年 以降再 び増加 に転 じている。 また,統 合 に よって国内中小企業が圧迫 されているとい う研究があるが,同 時 にそれは国内 産業の コス ト低下 をもた らしてお り1資 本 の国籍 を問わなければ,競 争力の改 善 としてブラス に評価 で きよう。 さ らに,メ キシヨ側 か らはその輸 出 に大 き なウェイ トをしめる労働集約産業 ・農産物 におけるアメ リカ市場の開放 を維持 ・進展 させるとい う意味がある。 MERCOSUR(南 米南部共同市場)の ような南南統合の場合,北 の市場や中 間財へのアクセスの改善 は起 こらない。 しか し,そ れで もなお投資 を誘引す る 効果 を持 ち うると それは,統 合 された市場の大 きさが工業 をひ きつけるに十分 11)94年 に109億 ドルであ つた ものが,95年 は95億 ドル,96年 には82億 ドル まで減少 したが, 97年 には121億 ドル と増加 に転 じている (United Nations, Иγια ttυθsけ物θ%け妃∽ Oγけ 1998.)。

12)NAFFA研 究会編著 「新生す るメキシコ産業一NAFFA効 果の検証』 日本貿易振興会, 1998年。

13)Tybout,」 ames R.,and M.Daniel Westbrook, “ Trade Liberalization and the Dimen― sions of Efficiency Change in MIexican Wianufacturing lndustries,'' 」ο切″物aι QF F/2けθγ 物筋ぢ07みaι JCοttο物づCS, 39(1-2)1995, pp.53-78. 14)ア ルゼ ンチ ンヘ の直接投資額 は,1986年 か ら1991年の年平均額,12億 ドルか ら,域 内関 税撤廃が開始 された95年には48億 ドルヘ と拡大 し,97年 には63億 ドルであ った。 またブラ ジルのそれは,13億 ドルか ら,50億 ドル,163億 ドル余 と拡大 している (United Nations, op.cうけ。)。 もっ とも,同 時期 は両 国が域外 に対 す る貿易障肇 の引 き下 げ,外 資規制の緩 和 や民営化 な ど国内経済改革 を執道 に乗せ た時期 で もあ り,そ の拡大の要因 を地域経済統 ` 合 のみ に帰す るこ とは困難ではある。

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世界経済の構造変化のもとでの地域経済統合 87 か どうかにかかっている。拡大する市場規模の もたらす製品需要が十分に大 き ければ,北 か らの輸出に障壁がある時,南 に投資することが後方違関効果が獲 得 で きるので有利 なる可能性がある。これは,コ ス トの低い北からの輸出から, 南での現地生産への転換であ り,貿 易転換効果 ともいえる。その意味で,北 か らの投資 は誘発 して も,不 利益 をもたらす結果 を招 く可能性 を否定できない。 しか し,そ の ような投資の誘発 によって,南 内での産業集積の自律的進展の基 盤が形成 されるか もしれない。投資によって,南 の中間財供給 コス トの低下, 熟練労働 の蓄積が進み,要 素 ・製品市場の好条件 とあわせて空間の競争力が改 善 し,世 界 を目指す生産地 として産業集積が累積的に展開する瑞緒 を提供する もの となることがあ りうる。 ただ し,MERCOSURに おぃては,比 較的に対域外貿易障壁が高 く,域 内貿 易への転換 とその製品についての国際的に競争力の低下が指摘 されている告統 合が単 に域内市場 目当ての投資 を呼び込むだけに終わ り国際競争力 に劣る産業 を育成するにとどまるならば,か つて失敗 した輸入代替工業化 と組み合わされ た地域統合の試み と同様の結果 を招 くであろう。それで もなお,今 日の資本移 動 の 自由化 した世界 においては, 途 上国が資本の投資先 として選ばれるため には,他 の途上国 とは違 う特別な利益 を与えうることが必要であ り,地 域経済 統合 は,対 域内外 の関税差,人 工的市場規模 によって,市 場の歪みを作ること で資本投資 を誘発する可能性 をもつ。 しか も資本の流れには,資 本の集積 によ る外部効果 も作用す るので,市 場の歪みによって資本 を招 き入れることが,よ り大 きな資本の流入 を引 き起 こす とい うことは十分 に想定で きることである。 以上の ように,地 域経済統合は非対称的に進むグローバ リゼーションの もと で,移 動が 自由化 されなが ら必ず しも低賃金 というだけでは途上国へ向かわな い資本 を,途 上国へ移動 させる引 き金 を引 く政策 としての意味 を持ちうるので ある。 さらに,構 造改革の不利益の緩和 には民営化や国内投資のためや,安 定 15)Yeats,Alexander」 ., the effects Of Regional Vol.12 No.1,January

∵Does Mercosur's Trade PerfOrlnance Raise Concerns about Trade Arrangements?," 質 んσ "ゎ句冴 』a/mたEcοttο?物ぢc ttθυづθ切, 1998, pp. 1-28.

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8 8 彦 根論叢 第 320号 化 政策維持 (為替 ア ンカー制 の維持 ・ソフ トラ ンデ ィング)の ため に も資本 の 1 6 ) 獲得は重要 な意味 を持つ。 皿 地 域経済統合の非伝統的利益 以上のような経済的ものだけでなく,地 域経済統合は他にもこれまで議論 さ れてこなかったという意味での非伝統的利益 も考えられると対外開放 ・市場重 視の経済政策に対する信頼性を高めることで,資 本の流入を促進 したり,経 済 安定化政策を支える効果をもつことは指摘 されている。同様 に,経 済政策の方 向性をより明確 に外部の投資者 ・企業に示す という効果 ももつ。これらについ て検討 してみよう。 ①時間非整合性 (time inc6nsistency) 80年代の深刻な経済停滞を前提条件 として,経 済構造調整,安 定化政策が実 施 されているラテンアメリカのような場合,政 府の経済政策に対する信頼性の 確保は,政 策の実効性を堀 くずすような国内各階級の行動を規制 し,ま た海外 からの投資の確保の面でも極めて重要となる。しかしながら,政 策実施時には, 経済の回復 ・成長を実現するために最適 として選択 された政策であつても,実 施後にはそれを撤回することを選択せざるを得なくなるという場合がある。政 策の時間非整合性の問題である。たとえば,政 府が自己の存続のために経済成 長の達成を目指 し,そ のために最適な政策として貿易自由化を選択 したとして も,そ の調整コス トの負担のあ り方によっては政治的に維持不可能な政策 とな らざるを得ないというような場合である。このような問題が予想 されるために 1 6 ) そ の他, 統 合の成長への効果 ( 要素の蓄積率変化, 成 長率, 相 対的要素賦存への統合の 効果) に ついては, B a l d w i n , R . E . a n d A n t h o n y J . V e n a b l e s , “R e g i o n a l E c o n o m i c lntegration," In Gene GrOsslnan and Kenneth Rogloff eds., P翌化ル?o冴bοοんcttFr?を筋ヶwηてみけあ 0-物a ↓βc οt t ο物あC S , V o l . 3 , A m s t e r d a m : N o r t h ―H o l l a n d , 1 9 9 5 . が興味深 いサ ーベ イを提供

している。

1 7 ) こ の議論 については, F e r n a n d e z , R a q u e l a n d 」o n a t h a n P o r t e s , “R e t u r n s t o R e g l o nalism:An Analysis of Nontraditional Gains from Regional Trade Agreements,"ち 財しθ И冴勉 βa物んどcοttο物あc ttθttθ切,Vol.12,No.2,May 1998.pp.197-220.西 島章次

「ラテ ンアメ リカにおける地域統合の基本問題」 「国民経済雑誌』176巻2号 ,1997年 8月 , 同 「NAFFAと メキシヨ経済」 (浜口編前掲書)な どに詳 しい。

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の ため に政策選択 の信頼性 が損 なわれ るこ とを避 けるため には,政 府 の裁量 に よつては変更で きない ような縛 りを政策にかけることが有効であ りうる。地域 経済統合協定 によって貿易 自由化 を拘束的ルール とするのである。 もちろん, 統合協定か らの離脱が コス トを伴 わないことであれば,そ の ような効果 を期待 で きないのであるが,統 合の利益の喪失 (相手国市場へのアクセスの喪失,資 本流入の減少)が 十分大 きければ,地 域経済統合は時間非整合性の問題 を避け, 政策への信頼性 を確保す ることに寄与する。WTOに よるマルチ ラテラルな自 由化へのコミッ トメン トでは,自 由化の逆転への報復 のコス トが大 きくはな く (フリーライ ドが よ り容易で),そ の ような目的には適 さない。 貿易 自由化 ・対外 開放政策以外の経済構造調整や安定化政策に対 しては どう であろうか。これ らの政策は,た とえば為替アンカー政策や民営化政策などの ような多様 な政策の集合 として実施 されている。NAFttAに おいては,メ キシ コにとってアメリカ市場 を失 うコス トの高 さと,ア メリカとの統合の深化がア メ リカのメキシコ経済への コミッ トメン トを高め通貨 ・金融支援 という後ろ盾 を失 うコス トによって,メ キシヨの経済改革の不可逆性 を示す ことに貢献 した といえよう。 この意味で北 との関係強化は時間非整合性 を減 じる効果 を持ちう る。 しか しなが らMERCOSURの 場合 においては,む しろ為替アンカー政策の 持続可能性 の不安定化が,為 替 レー トの変動 を通 じて,貿 易面での摩擦 を引 き 起 こ してお り,域 内貿易 自由化 プロセスです ら動揺 を余儀 な くされている。域 内 自由化です ら時間非整合 な政策 となる可能性 を排除で きない。通貨 ・金融市 場 を安定化するための相互支援余力が小 さい南南間の地域経済統合は,経 済改 革の信頼性 の確保 に貢献することは困難であるといわざるを得 ない。 けれ ども,MERCOSURの 場合,民 主主義への移行 とい う政策選択の信頼性 を高める上では貢献がある。その加盟国は80年代以降民政復帰 した諸国であ り, 経済改革の困難性が民主主義 を脅かす とい う危険性 を抱 えている。つ まり,民 主政体選択 とい う選択が時間非整合 となる可能性があるのである。実際,87年 にはパ ラグアイでは民主主義が危機 に瀕 した。 これに対 して,MERCOSUR加 盟国は一致 して警告 し,民 主体制であることをメンバーシップの必要条件 とし

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90 彦 根論叢 第 320号 たと統合の利益の喪失や地域共同体からの排除という不利益 を民政からの離脱 に課すことで,そ の選択を時間整合的なものにしようとしたのである。この試 みは成功 しているように見える。ただし,こ れは対象が地域の小国であるパラ グアイであったからこそ成功 したのであつて,ブ ラジル,ア ルゼンチンに対 し て有効であるかは疑間である。 ② シグナ リング ラテ ンアメ リカ諸国は,伝 統的に国内市場,自 国資本 を保護 ・育成する輸入 代替政策 を採用 して きた諸国であ りなが ら,累 積債務危機以来,そ れを転換す る経済構造改革政策 を幾度 とな く試み,そ して頓挫するとい う経験 を繰 り返 し て きた諸国である。 このような諸国は,対 内投資資本 を獲得するために必要な, 政策転換 に対する海外投資家の信頼 を得 ることが難 しい。い くら政府の改革ヘ の決意が堅 くとも,海 外の投資家 にはそれは十分 には伝 わ らず,彼 らの投資判 断は過去の経験 に依存す る比重が大 きくな らざるを得 ないか らである。ある種 の情報の非対称性があるといえよう。 したが って,こ の ような条件下では政府の政策改革へのス タンスの強固さを 伝 えるためのシグナルが必要 となる。 自由化の方向への政策の舵 きりを明確 に 示 し, しか も離脱 にコス トが伴 うような地域経済統合への参加は,そ の ような シグナルを送 る効果 を持つ ことが期待で きよう。 この効果 において も,北 に対 す る市場 開放であるメキシコのNAIttA参 加 と,南 間の統合であるMERCOSUR では,前 者 における効果が高い もの と予想で きるのに対 して,後 者 においては 効果 に疑間がある。なぜ な ら,そ の域外共通関税率が比較的高い ことや,ブ ラ ジル,ア ルゼ ンチ ンにおいては離脱 コス トが十分抑止の力 をもちうるとい うこ とが不確実であるか らである。 ③保険機能 メキシコ,ブ ラジル,ア ルゼ ンチ ンの ように,為 替 レー トをインフレ抑制の ためのア ンカー として利用す る政策が行 われて きた諸国では,ア メリカとの物 価上昇率格差や資本流入のために為替 レー トが過大評価化するという事態が起 18)卯 脅 ユ9θttο物ぢSけV01.341,No.7987 0ctober 12, 1996.を 参照。

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こる。それは経常収支の悪化 を招 き,早 晩為替 レー ト調整 を余儀 な くさせる。 その調整がメキシコにおけるように危機的な資本流失 を招 く可能性が高い とい う問題 は横 に置 くとして も,為 替 レー トの調整の結果,輸 出が拡大することが 輸出相手国の貿易障壁の引上げ とい う報復 を招 くか もしれない という問題があ る。 メキシコの場合,94年 末か らの危機後切 り下げられた為替 レー ト下で,輸 出, 特 に対米輸出が大 きく拡大 し,危 機後の経済回復 に大 きく貢献 した。そこでは NAttrAは ,ア メ リカの輸入障壁引上げを防 ぐとい う保険の意味で貢献 した可 能性がある。99年初頭か ら為替 アンカー政策であるレアル ・プランを放菜 した ブラジルの場合 にも,為 替切 り下げの結果,ア ルゼ ンチンとの貿易 における流 れの変化が起 こっている。ただこの場合,両 者の間の貿易上の摩擦 を免れては いない。 ここで もまた,MERCOSURに おける自由化過程の不可逆性の弱 さが 見 ることがで きる。 ④交渉力 交渉力は,非 伝統的利益 として重要なものであると考えられる。そもそも今 日のような資本移動の自由化が先行 しつつグローバ リゼーションが展開してい ることは,世 界の経済秩序がそのようなものとして形成されていることに起因 している。現状では発展途上国は,こ の秩序の形成に影響力をもっておらず, 先進諸国を軸にして形成されてい く秩序に対 して,そ の国内経済構造を一方的 に順応 させてい くことを求められているのである。ここに,経 済構造改革や安 定化政策,成 長軌道への復帰の上での困難の一つの原因がある告 統合 による経済規模の拡大は交渉力 を増大 させ うる。 もちろん,UNCTAD を場 として行われたような新国際経済秩序 (NIEO)要 求のように,多 くの途 上国が一致 とて要求 したものでも,秩 序の原則の修正はできなかったのである 2 0 ) か ら,今 日の地域経 済統合 に新 自由主義 的経 済秩序 その ものの修正 を期待 で き 19)拙 稿 「グローバ リゼーシ ョンの嵐の中の発展途上諸国」 (羽″烏敬彦編 『グローバル経済』 世界思想社,1999年 刊行予定)を 参照。 20)拙 稿 「南北問題 の変容」 (羽鳥敬彦編 「激動期 の国際経済』世界思想社,1992年 )を 参 照。

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92 彦 根論叢 第 320号 るような力がないことは言 うまで もない。けれ ども,グ ロバ リゼーシ ョンの進 む世界経済 に対 して,国 民経済 (国民経済の地域的統合体)を 接合 してい く速 度や局面 を経済開発 の 目的に合 わせ て選択 で きる余地 を獲得す ることは可能か もしれない。70年代 か ら90年代前半の東 アジアの経済的成功 は,平 板 な自由主 義の受容 によって実現 した ものではな く,輸 出産業の育成段階での保護 ・支援 を始め として,国 内外の資本の投資選択 を誘導す る市場の歪みづ くりや外資の 2 1 ) 活動規制 によって国内企業への技術 (経営資源)移 転が図 られていた。基本的 には自由貿易,市 場での競争 を重視す るとい う形で 自由主義の国際経済秩序 に 適合 していたわけであるが,そ の成功 には政府 による世界経済 との接合のあ り 方の選択 ・政策的調整が大 きな役割 を果た していた。 このことは80年代債務危 機か ら交渉力 を持 たず国際金融機関が主導す る経済構造改革 を国内経済状況 と の調整 な しで実施することを求め られたラテンアメリカ諸国が,経 済停滞か ら の脱出に苦 しんだこととは対照的である。その ような経験か らすれば,世 界経 済へ の統合 の速度や局面 を調整 しうるような交渉力 を獲得で きるならば,そ れ は地域経済統合の大 きなメリッ トとな りうる。 もちろん,北 との統合 を選択 したメキシコの場合,そ のようなメリッ トを考 えることはで きない。その対外関係 においてはアメリカが圧倒的比重 をしめて お り,影 響力 を及ぼす経路 となる域外国 との経済の相互依存関係 自体が深 くは ない。 それ に対 して, MERCOSUR諸 国は依然域外貿易 の比率が高 く,貿 易政策 の統一 によって,域 外国に対 して交渉力 を高め利益 を得 ることが可能であるか もしれない。 また,南 間の統合 において重要な市場規模の拡大 とい う要因 も交 渉力 にプラスに働 きうる。た とえば,98年 のFTAA(米 州 自由貿易圏)交 渉 に おけるアメ リカとMERCOSURと の間の路線の差 と交渉の進捗の行方は,そ の 2 1 ) 東 アジアの経済発展 における政府の役割 については, とりあえず, W o r i d B a n k , T h e

East Asian MIiracle:Ecο ttb物ウc Cγο切けん の物α 酵もbιづc Pοι'cグ, The Worid Bank, 1993. ( 白鳥正喜監訳 『東 アジアの奇跡 一経済成長 と政府 の役割] 東 洋経済新報社, 1 9 9 4 年) を 参照。 もっ とも, 世 界銀行 はその ような政府 の働 きを一応は認めた上で,市 場への適合性 をよ り重視 しているのであるが。

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ような交渉力の例示 を与えて くれるのではないか と考 えられる。

そ こでは,農 業分野,環 境 ,労働問題分野 を独立の交渉分野 とするかいなか につ いて,前 者 を独立分 野 と した くない アメ リカ と後者 をそ う した くない MERCOSUR等 が対立 し,ま た,交 渉 を一括受諾方式 (single undertaking)

とす るか,合 意可能な分野か ら実行 に移 してい くかについて も対立 していた。 MERCOSURは 前者,ア メリカは後者の立場であった。 結果 と しては,交 渉分野設定 においては, 農 業分野 は独立する一方,環 境 ・労働問題分野設定 されなかった。また,交 渉方式についても一括合意方式が とられることとな り,全 体 として南北 アメリカ大陸における資本 も含めた国際 経済活動 の 自由化 を一層促進す るとい う,新 自由主義的秩序の強化が 目指 され る中で,そ の進展の速度 ・局面 についてMERCOSUR側 の主張が一部取 り入れ 2 2 ) られるということが見 られたのである。 ⑤協調の手段 今 日の国際経済環境のもとではその変化への対応力を持つことが必要である。 このように保障機能を地域経済統合に期待することも可能な場合がある。その ような保障機能 としては,ま ず不安定資本の流れへの対応力をあげることがで きよう。メキシコが危機に際 して受けたアメリカからの支援がその好例である。 しか し,南 間の地域統合では,統 合への参加が域内国間の政策協調を生み出す 土壌 となり得たとしても,そ の金融面の力の弱さゆえに効果は疑間である。 とはいえ, そ の ような協調の基盤がで きるとい うことは, 安 全保障上はプラ ス とな りうる し, そ の コス トを引 き下げる とい う点で経済 に も貢献 で きる。 M E R C O S U R が , 地 域大国 として張 り合 って きたブラジル とアルゼ ンチ ンの間 の協調の基礎 とな りうるとい う面 も重要なその貢献 なのである。 Ⅳ 結 語 地域経済統合 を考 える上で, そ れが域外 に対 して閉鎖的になることの危険性 22)Laけ あ物 ム物θttcatt spθcをaι妃マpoヶけs, “Bullding the「 TAA:policy debate and pros―

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94 彦 根論叢 第 320号 を指摘 す る議論 は重要 であ る。貿易転換効果 は不効率 で よ り生産費 の高 い相手 か らの輸入 を意味す る ものであ り, 経 済 に とってマ イナスの効果 を持 つ ことは 否定 で きず , 域 外 に対 して閉鎖 的であれ ばあ るほ どそのマ イナス は大 き くなる か らであ る。 しか し,世 界的な自由化 とい う最善の政策の選択 に困難がある場合の次善の 政策 としてのみ地域経済統合 を評価する,つ ま り世界規模での 自由化 を先取 り す る もの として地域経済統合 を見 るだけでは不十分である。む しろ,素 直 に見 れば,そ の評価 においてはマイナスをもたらす とされる域内 と域外の差別 こそ, 地域経済統合の本来の姿 を反映す るものであるか らである。域内 と域外の間の 自由化速度の差 とい う歪みが,ど のような利益 を地域経済統合加盟国にもた ら すかが問われねばな らないのである。 資本移動 の 自由化が先行 して進 む今 日のグローバ リゼーシ ヨン過程 において は,本 稿で検討 した さまざまな可能性の中では,南 南統合 において資本移動 を 統合加盟国に有利 に歪める可能性,ま た域外国に対す る交渉力の強化 をもた ら す可能性が重要である。前者は資本の獲得,投 資先 として選択 される可能性 を 高めるものである し,後 者は流入するその資本 を発展 目的に合わせて誘導 ・規 制 してい くための政策的余地 を確保するために欠 くことがで きない。時間非整 合性の克服や シグナ リングを通 じて経済政策転換 の信頼性 を高める とい う効果 も大事 な ものであるが,NAIttAに ついてはそれが存在 している と考 えること が可能であるとはいえ,MERCOSURの 場合 は確かではない。 もちろん,そ れ らの結論 は可能性 を示 した ものであって,実 証的に確認 され た ものではない。その意味で,本 稿の検討が限界がある ものであることは否定 で きない。そのことは今後の必須課題 として残 されている。ただ,そ れ らの可 能性 を示す ことで,歪 みの もた らす効果 に着 日して地域経済統合 を評価する必 要性 を確認で きたのではないか と考 える。

参照

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