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在日コリアン高齢者への介護支援に関する研究―文献レビューより― 利用統計を見る

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(1)

在日コリアン高齢者への介護支援に関する研究―文

献レビューより―

著者

西田 知未

著者別名

NISHIDA Tomomi

雑誌名

東洋大学大学院紀要

50

ページ

241-251

発行年

2014-03-15

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006560/

(2)

在日コリアン高齢者への介護支援に関する研究

──文献レビューより──

福祉社会デザイン研究科福祉社会システム専攻修士課程修了

西田 知未

要旨

 本稿では在日コリアン高齢者の介護支援にかかわる先行研究を対象に、言語、食事、人材、 その他の文化的基盤に関する研究の 4 つのカテゴリーに分類し、考察を加えることによって、 在日コリアン高齢者への介護支援に関する研究実態を明らかにすることを目的とする。その 結果、次のような知見が得られた。第一に、在日コリアン高齢者には識字能力の低さにより、 介護保険制度の情報を理解できない人が多く、要介護認定の申請や利用が少ない現状がある。 第二に、故郷の味の家庭料理を好み、日本で長い間に慣れてきた食文化の影響で、混食(韓・ 日食)を好む者も少なくない。第三に、認知症の進行に伴って母国語(方言含む)しか話せ なくなると日本語による意思疎通が困難になる事例がみられ、日本語と韓国語のバイリンガ ルな介護職員の育成が望まれる。第四に、儒教的慣習が根強く残っており、チェサといわれ る法事が毎年催されている。しかし世代交代により、儀式の簡素化や意識変化が現われてい る、等の実情が浮き彫りになった。 キーワード:在日コリアン、高齢者、介護支援

Ⅰ はじめに

 日本の外国人コミュニティの中で、在日韓国・朝鮮人社会の高齢化率がもっとも高い。 2011 年法務省入国管理局が把握したところによると、在日韓国・朝鮮人は約 57 万人、その うち在日韓国・朝鮮人の前期高齢者(65 ~ 74 歳)は 11%で、後期高齢者(75 歳以上)は 約 8%を占めている。  地域別にみると在日コリアン1)の外国人登録者人口が 1 万人を超える都道府県としては、 多い順に大阪府(126,511 人)、東京都(112,881 人)、兵庫県(51,991 入)、愛知県(39,502 人)、 神奈川県(33,541 人)、京都府(31,550 人)、埼玉県(19,473 人)、福岡県(18,755 人)、千葉

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県(18,395 入)、広島県(10,532 人)が挙げられる。そのうち、在日コリアンの数が多い関 西では、大阪府、兵庫県、京都府で上位 3 位を占めており、全体の約 37%に当たる人が住 んでいる。一方、関東では、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県で全体の約 33%に当たる 人が住んでいる。  在日コリアン高齢者の中には、識字能力の低い人や認知症の進行に伴い日本語による意思 疎通が困難で、母国語(方言含む)が出てしまう事例があることも指摘されている。そこで 彼らの介護支援には文化や言語、生活習慣などの特殊な状況に応じた専門性が必要とされる。  社会福祉法人こころの家族の理事長である尹基(ユン・ギ)は、「かつて愛知県における 在日コリアン高齢者 2 人の弧独な死と、遺体の引き取り手もないという事件にショックを受 けて在日コリアン高齢者 1 世のために老人ホームを建設」[尹基 2001:42-52]するように なった。  2012 年現在、関西では在日コリアン高齢者のための文化や言語、食事などの生活習慣を 積極的に取り入れている特別養護老人ホーム「故郷の家」は堺、神戸、京都に 3 ヶ所開設さ れている。しかし、東京には在日コリアン高齢者が多いにもかかわらず彼らが入所できる特 別養護老人ホームがない。経済的に余裕がある人は有料老人ホームを使えるが、公的サービ ス機関である日本の特別養護老人ホームのようなところで韓国語を使って生活できるような 環境が必要であると考える。  ここで、特別養護老人ホーム「故郷の家・京都」の施設長に筆者が行ったインタビューの 一端を紹介すると、在日コリアン高齢者への介護支援に必要な条件として、①混ぜない(別々 の味を守る、そのものの味を守る、韓国語の使用の大切さ)、②福祉は文化の大切さから来 る(法人の理念に基づいて福祉と文化は相互に影響し合って発展していくと共に、在日コリ アン高齢者が故郷の香りに包まれ安心して過ごせる)、③在日コリアンを視野に入れた介護 サービスには、言語(研修生)、広報(故郷の家)、人材(留学生)、文化(文化ホール)が あり、そのうち文化と言語が最も大切であると語っている。  従来、在日韓国・朝鮮人をめぐる研究は歴史的変遷を追う研究や社会保障および人権問題 に関する研究など多岐にわたるが、在日コリアン高齢者の介護支援問題を対象とした研究業 績はきわめて少なく、その蓄積が十分とは言い難い。  本稿では在日コリアン高齢者の介護支援にかかわる先行研究を対象に、各介護支援別カテ ゴリーに分類し、考察を加えることによって、在日コリアン高齢者への介護支援に関する研 究実態を明らかにすることを目的とする。それは社会のグローバル化に伴い多文化共生社会 をめざすべき現代社会において現場でのエスニック・マイノリティが望ましい介護支援を受 けるための参考になると考える。

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Ⅱ 研究方法

 戦後日本における「在日コリアン高齢者」に関する研究業績について、朝鮮史研究会文献 目録データベース(2012 年 1 月 25 日時点)を検索すると、単行本 2 篇と論文 9 篇がヒット する。そのうち、在日コリアン高齢者への介護支援の関連研究 6 篇と在日コリアン高齢者に 関する文献のうち、介護支援の関連研究 10 篇を抽出し、分析対象とした。ここで得られたデー タの内容に基づき、介護支援の関連研究を「言語に関する研究」、「食事に関する研究」、「人 材に関する研究」、「その他の文化基盤に関する研究」の 4 つの介護支援別カテゴリーに分類 した。また、主な研究に対しては「著者」、「年度」、「対象」、「タイトル」に整理し、各カテ ゴリーについてまとめた(表 1)。 表 1 在日コリアン高齢者への介護支援に関する研究一覧 著   者 年度 対   象 タ イ ト ル ○言語に関する研究 庄谷怜子・中山徹 1997 大阪在住の韓国・朝鮮人 高齢者(982 人) 『高齢在日韓国・朝鮮人──「在日」高齢 者の社会階層と生活構造及び生活諸問題』 垣田裕介 2005 大阪市生野区在住在日高 齢者(300 人) 「介護保険制度下の在日コリアン高齢者─ ─ 2003 年大阪市生野区調査から」 崔雅絹 2005 オムニバス型 『介護老人保健施設「ハーモニー共和」に おける取り組みについて』,(NPO 神戸定 住外国人支援センター< KFC >編) 李錦純 2007 東京都A区在住の在日高 齢者民族団体会員(78 人) 『在日コリアン高齢者を対象とした介護 サービスに関する実態調査』 金春男・黒田研二 2008 特別養護老人ホーム「故 郷の家」(入居者) 「バイリンガルの認知症高齢者との母国語 による個人回想法」 文鐘聲 2009 生野区A地域(425 人) 「在日コリアン高齢者に対するソーシャル ワーク」 趙文基 2011 行政の介護情報データ ベース 「在日コリアン高齢者への介護支援──そ の歴史的展開と現在の課題」 ○食事に関する研究 魁生由美子 2005 大阪市生野区 「大阪市生野区における福祉ネットワーク の形成──在日コリアン高齢者の社会保障 と生活支援」 李錦純 2007 東京都A区在住の在日高 齢者民族団体会員(78 人) 『在日コリアン高齢者を対象とした介護 サービスに関する実態調査』 黄才栄・今井幸充 2009 東京と神奈川在住者(100 人) 「在宅介護における在日コリアン高齢者の ニーズに影響する要因の検討」* 1 趙文基 2009 泉州地域在日高齢者実態 調査(208 人) 「在日コリアン高齢者の介護問題──二つ の社会調査にもとづいて」

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趙文基 2011 行政の介護情報データ ベース 「在日コリアン高齢者への介護支援活動─ ─その歴史的展開と現在の課題」 ○人材に関する研究 金春男 2004 特別養護老人ホーム「故 郷の家」 (介護職員) 「在日コリアン痴呆性高齢者への施設にお ける介護支援に関する研究──『ケアワー カー』フォーカス・グルプインタビューを 通じて」 李錦純 2007 東京都A区在住の在日高 齢者民族団体会員(78 人) 『在日コリアン高齢者を対象とした介護 サービスに関する実態調査』 文鐘聲 2009 大阪市生野区(在日コリ アン高齢者 204 人と日本 人高齢者 221 人) 「在日コリアン高齢者に対するソーシャル ワーク」 ○その他の文化に関する研究 尹  基 2001 自 著 『風のとおる道──もうひとつのふるさと 「故郷の家」』 庄谷怜子 2005 大阪市生野区在住(2003 調査) 「エスニック・マイノリティと社会保障・ 社会福祉『意見書』──大阪・生野におけ る在日高齢者調査をふまえて」 盛清紀文 2005 オムニバス型 『在日コリアン高齢者と日本』,(NPO 神 戸定住外国人支援センター< KFC >編) 金沙智・横山俊祐 2008 大阪市生野区在所デイ サービスの 利用者と職員 「在日コリアン高齢者の地域における生活 支援に関する研究──脱制度型地域福祉の 構築に向けての大阪市生野区のケーススタ ディー」 趙文基 2009 泉州地域在日高齢者実態 調査(208 人) 「在日コリアン高齢者の介護問題──二つ の社会調査にもとづいて」 金春男 2010 特別養護老人ホーム「故 郷の家」 (介護職員) 『認知症在日コリアン高齢者の生活支援─ ─バイリンガル話者の特徴に着目して』 趙文基 2011 行政の介護情報データ ベース 「在日コリアン高齢者への介護支援活動─ ─その歴史的展開と現在の課題」 *1ここでは「介護に必要な条件に関する研究」のカテゴリー分類をしたが、介護ニーズなどの要 因が記されていたため、参考とする。

Ⅲ 結果

1 言語に関する関連研究

 庄谷怜子・中山徹は言語について、「一世は本国で生まれ、朝鮮語が話せる。50 年も日本 に住んでいるので日本語も話せるが、学校で日本語教育を受けていない人が多いので、読み 書きが困難であること、二世は親のもとで育てられて朝鮮語も話せる人も多く、民族学校で 朝鮮語を正式に習った人もあること、三世になるとほとんど朝鮮語を話せないことや日本の

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学校へ行っているので、言葉も教育内容も考え方も周りの友人も日本人である」[庄谷怜子・ 中山徹 1997:70]ことを明確に捉えている。その後、垣田裕介は識字状況について、「日 本語の文章を読める者は全体の約 4 割にとどまることや日本語の文章もハングルの文章も読 めない者が約 3 割にのぼっていること、特に、関連情報が十分に行き届いていないことによっ て介護保険の利用状況を左右している」[垣田裕介 2005:87]と指摘した。一方、崔雅絹 は在日コリアン高齢者の場合、「そのほとんどが認知症状の進行とともに日本語がほとんど 話せなくなり、韓国・朝鮮語の方言が出てしまうのが特徴であること、そのため、日本語で のコミュニケーションが取れず、意思疎通が困難、問題行動があり、施設での対応が難しい」 [崔雅絹 2005:68]と報告している。李錦純は識字能力について、「日本語による会話には 不自由しなくても、文字が読めないことや請求書が理解できないこと、役所の人に書類を書 いてもらっている」[李錦純 2007:159]と記している。一方、金春男・[黒田研二監修]は、 在日コリアン高齢者の言葉の問題については、「普段は日本語ができる在日コリアン高齢者 が興奮したり認知症が進行すると、母国語になるのでコミュニケーションができなくなるこ とや重度の認知症高齢者であっても過去の学習や経験により蓄積された母国の言語形式を使 う機能が残存能力として潜在していること、日本語の場面より母国語の場面において肯定的 感情の豊かさが観察された」[金春男 2008:28]とする。文鋒聾は、「ワーカー・専門職者 が対象者の母国語(方言も含む)を理解できるか、という問題もあるということや在日外国 人の増加に伴い、行政サービスの周知を行う際、多言語でのパンフレットなどを作成し配布 している」[文鋒聾 2009:39]ことを報告している。趙文基は、「介護認定の申請の受付が 始まる頃には、神奈川県川崎市内の介護福祉士養成校である YMCA 福祉専門学校はカリキュ ラムにハングル講座を加えた」[趙文基 2011:34]ことを明らかにしている。

2 食事に関する関連研究

 魁生由美子は、「故郷の家庭料理があって、生活習慣を共有できる人々に囲まれてこそ、 生き生きと生活できることやいくら手の込んだ高級料理であっても、口に合わない外国料理 にはほとんど手が出ないこと、やはり長年住み慣れた土地の食事を食べる」[魁生由美子   2005:162]としている。一方、李錦純は、「日本食が口に合わない」[李錦純 2007: 155]という例を挙げている。黄才栄・今井幸充は、「母国の食事において最も高かったのは 『自分が好きな韓国料理が食べられる』という項目であったことやコリアンの食べ物を食べ る頻度は、『毎日 1 度程度』、『毎日毎食』を合わせた割合は 90.4%で、おおむね韓国の食べ 物を毎日食べていた」[黄才栄・今井幸充 2009:43-44]ことを報告している。一方、趙文 基は、「在日コリアン高齢者はやはり異文化を持っているので、極端な事例では死ぬ前に『キ ムチが食べたい』と言う人がいるかも知れないことや在日コリアン高齢者の普段の食事は日 本で長いこと慣れている食文化の影響で、一番多いのは両方混食(韓・日食)が 65.9%であっ

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た」[趙文基 2009:56]と述べている。「故郷の家」では、「食事にはキムチの韓国食と梅 干しの日本食を選べられる」[趙文基 2011:48]ようにしている。

3 人材に関する関連研究

 金春男は在日コリアン高齢者の施設における要介護度・痴呆症の重度化は、「ケアワーカー たちの『介護の専門化』、『サービスの質的向上』の課題につながることや介護者の人間性お よび倫理観が厳しく問われる仕事である」[金春男 2004:57]と論じている。一方、李錦 純は、「同じ文化的背景をもつ職員やボランティア、または多言語に対応し得る人材を自治 体に配置することや異文化・多文化理解および在日外国人の老人保健問題を盛り込んだ教育 カリキュラムの開発・導入も望まれる」[李錦純 2007:179]と唱えている。文鐘馨は、「ワー カー・専門職者が対象者の母国語(方言も含む)を理解できるか、という問題もあるという ことや通訳や母国語を理解できる人々との連携・協働も必要である場合も出てくる」[文鐘 馨 2009:39]ことを報告している。

4 その他の文化基盤に関する関連研究

 尹基は文化について、「故郷に帰るに帰れない在日韓国老人たちのために、同胞同士が、 故郷の暮らしに近い環境の中で、安心して生活できることや日本で韓国老人たちがオンドル パンに寄り添い、お互いに韓国語で話し、キムチのカメが並ぶ故郷を思わせる庭で民謡を歌 い、キムチを食べ……。そんな老人ホームの建設を!」[尹基 2001:53]2)、と訴えている。 その背景には、前述のように、愛知県における在日コリアン高齢者 2 人の死がきっかけとし てある。一方、庄谷冷子は、「戦前からの朝鮮民族の儒教観が家族慣習などに深く浸透して おり、チェサといわれる法事が、毎年本家に当たる家に全親族が集まって催されていたこと や日本社会の中において在日コリアンの集中する地域では、本国よりも儒教的家族慣習が保 存、伝承されている」[庄谷怜子 2005:153]と述べている。盛清紀文は、「在日コリアン 高齢者をとりまく実態や福祉サービスを検討する上で彼らの歴史的・文化的背景を踏まえた サービスがなされる必要がある」[盛清紀文 2005:47]と唱えている。また金沙智・横山 俊祐は、「歌やチャンゴの民族文化が在日コリアン高齢者にとって一つの場を共有する手段 として機能していること、また習慣や生活実態に合わせた利用内容の柔軟性は、利用する高 齢者に安心感を与え、充実した生活にもつながる」[金沙智・横山俊祐 2008:352]ことを 報告している。一方、趙文基は、「在日コリアン高齢者が持っている異文化と、老後になっ ても差別されない自分のアイデンティティを傷つけない場所が必要である」[趙文基  2009:74]と説いている。金春男は、「在日一世の来日した歴史的経緯の理解、言葉、食事、 価値観や生活習慣の違い、個人のアイデンティティになる本名を使用することや文化を尊重 した行事企画、両文化を配慮した環境づくり、雰囲気づくりなどが大事である」[金春男 

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2010:49]と主張している。趙文基は「故郷の家」は、「民族学校の生徒の慰問先ともなり 民族間の世代間交流を進めてきていることや在日コリアン高齢者を主体にした福祉運動を通 して国境、民族、文化を越え、個々人の生活習慣を大切にしていること、施設内ではアリラ ンと日本の演歌が流れる」[趙文基 2011:48-50]ことを記している。

Ⅳ 考察

 本稿では、朝鮮史研究会文献目録データベース(2012 年 1 月 25 日時点)から抽出した文 献で、戦後日本における在日コリアン高齢者への介護支援の関連研究を「言語に関する研究」、 「食事に関する研究」、「人材に関する研究」、「その他の文化基盤に関する研究」の 4 つの介 護支援別カテゴリーに分類して考察した。それによって以下のような点が明らかになった。  第一に、在日コリアン高齢者の場合、識字能力の低さにより、介護保険制度の情報が理解 できない人が多く、要介護認定の申請や利用者が少ないのが現状である。  彼らの場合、日本語の文章を読めない人や日本語の文章もハングルの文章も読めない人が 多いことが明らかになった。その理由として、歴史的背景により在日コリアン高齢者は本国 で生まれ、韓国語が話せる。約 70 年も日本に住んでいるので日本語も話せるが、学校で日 本語教育を受けていない人が多いため、読み書きが困難であることが挙げられる。そのため、 介護保険制度の関連情報が十分に行き届かず介護保険の利用状況を左右している。  また在日コリアン高齢者の場合、認知症の進行に伴い日本語でのコミュニケーションが取 れず、韓国・朝鮮語の方言が出てしまうのが特徴で、意思疎通が困難になっている。特別養 護老人ホーム「故郷の家」の総括旋設長である田内文枝氏はインタビューで、「認知症が進 んで意思疎通が出来なくなった在日コリアン高齢者が一般病院から精神病院に移された」、 と語っていた。今後こうした問題に対応するため、ワーカー・専門職者や行政サービス機関、 ボランティアの養成などにおけるバイリンガル化が必要であろう。  第二に、在日コリアン高齢者の場合、口に合わない日本食より故郷の味の家庭料理を好ん でいる人も多いが、日本で長いこと慣れている食文化の影響で、混食(韓・日食)を好んで いる人々も少なくないことが明らかになった。しかし、入院中キムチを食べないことによっ て体重が減少した事例もある。後期高齢者になった在日コリアン高齢者に慣れた食事の提供 は一日の楽しみでもあるだろう。高齢になると「食べる」という行為そのものが一つの楽し みであり、慣れた故郷の味を提供することによって幸せを感じると思われる。例えば、日本 人が梅干しを食べないと食事をした気がしないのと同様に在日コリアン高齢者もキムチを食 べないと食事をした気がしないのである。国境、民族、歴史を超えて、在日コリアン高齢者 にとって食べ慣れた食事の提供は生きがいにも繋がるだろう。  第三に、2011 年現在、在日コリアンの社会も高齢化率が 18.5%と高くなり、高齢社会になっ ている。在日コリアン高齢者 1 世は、独り暮らしが多く、介護が必要になったとき、家族と

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縁がきれている高齢者の孤立感は、故郷を離れているだけに一層厳しいと思われる。前述の 通り,彼らのなかには認知症の進行に伴い韓国・朝鮮語(方言含む)が出てしまう事例があ る。そんな彼らに対応するためには、歴史的背景や文化的背景を理解している職員とコミュ ニケーションを取れることが重要であり、この点を考慮した人材育成を工夫するべきである。 また在日コリアン高齢者にとって、同胞同土の介護にはこころを開き、安心感を持っている ことを認識すべきである。  社会のグローバル化が進み、国際結婚等で文化や言語などの異なる外国に住む人々にとっ て、最大の問題はコミュニケーションである。そうであれば外国人高齢者の介護を行うため には、当該外国語話者とコミュニケーションできる人材の育成が必要であり、介護福祉士養 成校のカリキュラムにハングル講座などの外国語を加えることが一つの提案である。  第四に、在日コリアン高齢者 1 世には、儒教的習慣が根強く残っており、チェサといわれ る法事が毎年催されている。また彼らは、儒教思想を次世代に保存、伝承しているのが現状 である。しかし、時代とともに世代交代により日本社会の影響を受けて祖先崇拝などの儀式 の簡素化や意識変化が現われている。歴史的背景などで渡日した在日コリアン 1 世は、故郷 に帰るに帰れない人々が多かったため、高齢になった彼らには故郷の暮らしに近い環境を取 り入れたサービスが大事であるが、それを受けられる施設や機関が少ないのが現状である。 彼らに最期だけでもその人らしい生活を送らせるためには、尹基が述べたように、同胞同士 がオンドル部屋で寄り添い、お互いに韓国語で話し、キムチのカメが並ぶ故郷を思わせる庭 で民謡を歌い、キムチを食べられる老人ホームが必要である。現在、韓国の文化や言語など を積極的に取り入れている施設は関西にある「故郷の家」(堺、神戸、京都)のみである。 この「故郷の家」のように在日コリアン高齢者個人のアイデンティティを守れる環境づくり が不可欠である。  長年日本に住んでいる在日コリアン 1 世はすでに高齢期を迎えている。彼らの介護には「言 語」、「食事」、「人材」、「その他の文化基盤」への目配りが必要であり、今後、実践の場での 彼らへの望ましい介護支援を実現するために配慮しなければならない点である。つまり、在 日コリアン高齢者には日本人高齢者とは異なるニーズがある事を認識する必要がある。  2012 年現在、日本国内で「言語」、「食事」、「習慣」などの生活様式やバイリンガルな「人 材」を積極的に取り入れている特別養護老人ホームは社会福祉法人こころの家族の特別養護 老人ホーム「故郷の家」のみであり、彼らのニ一ズに配慮した特別養護老人ホームを今後さ らに増やすべきである。  社会のグローバル化が進み、何らかの事情で文化や言語などの異なる外国で住む人々に とって、最大の問題は高齢期を迎えたときである。つまり、外国人高齢者の介護を行うため には、その国の言語、食事、生活習慣などへの配慮が必要である。国際結婚などが今後ます ます増えることが予想される多文化共生社会において、特別養護老人ホーム「故郷の家」の

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介護支援は参考になると考える。  なお、在日コリアン高齢者への介護支援関連研究における課題として、系統的な実証研究 が少ないこと、研究の対象となる地域が限定されており、在日コリアン社会全体への一般化 が困難なこと等が挙げられる。

・注

*本稿は 2013 年 3 月東洋大学に受理された修士論文「特別養護老人ホーム「故郷の家・京都」に おける在日コリアン高齢者の生活実態に関する研究─異文化間介護を中心に─」の一部を改稿し たものである。 1)「在日コリアン」を以下のように規定する。日本の外国人登録上の分類である「在日韓国・朝 鮮人」(オールドカマーとしてのコリアン。すなわち、永住者、特別永住者)、「韓国人」(ニュー カマーとしての韓国籍者)あるいは「朝鮮人」(朝鮮籍者)、韓国・朝鮮籍から日本国籍に帰化し た者を含むものとする。帰化者で本人のアイデンティティが「日本人」の場合も含まれることに なる。帰化者を除く法律上の在日コリアンを指す場合は、その都度断るものとする。 2)故郷の家の建設を訴えた朝日新聞の論壇(1984 年 6 月 18 日の記事)からの抜粋である。

・引用文献

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 Second, there remain Confucian traditions strongly, so they hold the memorial services called “chesa”every year. But according to the alternation of generations, it appears the simplification of ceremonies and the change of consciousness.

 Third, there are not a few people who like home cooking with their home town’s taste and like the mix cooking(Korean-Japanese food)under the influence of the culture of food which they are familiar with in Japan for a long time.

 Fourth, growing the dementia, if they cannot speak but their own language(including the dialect), there are some cases that are hard to communicate by Japanese language, so it is desirable to bring up the care workers that are bilingual of Japanese and Korean languages, and so on. The above circumstances became clear.

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世界規模でのがん研究支援を行っている。当会は UICC 国内委員会を通じて、その研究支