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髄液中のガングリオテトラオースシリーズ・ガングリオシドの発達性変化 / 第II 満期産低出生体重児における検討

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Academic year: 2021

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原  著 〔東女医大誌 第63巻 第10号頁1236∼1241平成5年10月〕

髄液中のガングリオテトラオーズシリーズ・

ガンダリオシドの発達性変化

第II報.満期産低出生体重児における検討

東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授)        コ  イズミ       .小 泉 ひ ろ み (受付 平成5年6月22日) Developmental Changes of Cerebrospina亘Fluid Gangliotetraose・series Ganglioside$        Part II:Term Small・for・dates Neonates

       Hirom量KOIZUMI

Departmen亡of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA)      Tokyo WomenPs Medical College   We studied chronological changes in ga㎎liotetraose−series ganglioside concentrations in cerebrospinal fluid during the life span, from the neonatal period to adolescence, by measuring them with a highly sensitive thin−layer・chromatography/enzyme−immunostaining method. Appropriate−for− dates(AFD)babies born either at term or preterm showed a similar%distribution of gangliosides with the least interindividual variation among the group of babies with the same postconceptional age.   In the term smallイor・dates(SFD)neonates,however, two different groups were distinguishable in terms of the CSF ganglioside pattern. One was similar to CSF ganghosides of preterm AFD babies while the other was quite different from that of AFD babies in terms of the quantities and pattern of CSF gangliosides.   Such individual variat量ons found in term SFD babies suggested either abnormality or delayed maturity of the nervous system.          はじめに  ガンダリオシド(GS)は脳神経細胞膜に多く存 在し,その成長分化に重大な働きをし,成長変化 することが指摘されている1)2).一方,髄液中のGS は脳実質のGSと類似した分布を示すことが確認 されている3).著者らは髄液中のGSを髄液1ml以 内で測定する高感度微量定量法を確立し4),胎生 29週以降の未熟児を含む新生児から,20歳の青年 までの髄液中のGSを測定しその正常発達過程を 明らかにし,第1報にて報告した.この発達曲線 は,Tay・Sachs病をはじめとするGS蓄積症だけ でなく,年齢依存性神経疾患や,脳の成熟障害を 検討する上で役立つと思われる5)6).  今回は,満期産のSFD(small−for−dates)とし て出生した児と,AFD(appropriate−for・dates) 児との間で,髄液中のGSの濃度や分布比率を比 較検討したので,報告する.        対象および方法  1.対象  対象は,東京女子医科大学母子総合医療セン ターまたは千葉市立海浜病院新生児科に入院し, 髄液検査を施行された満期産のSFD児11例(表 1)である.髄液検査は両親の承諾のもと,中枢 神経感染症や頭蓋内出血の有無を検討するため

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149 表1 対象の満期産SFD児11例のプロフィール case mo. 性 在胎加数 w−d 出生体重 X(SD)  頭囲モ香iSD) 1

M

40−1 L450(一3.3) 30.0(一1.6) 2 F 37−0 1,666(一2.9) 32,0(一〇.5) 3

M

39−3 1,936(一1.9) 31.8(一〇.8) 4 F 41−3 2,490(一1.9) 33.0(一〇,6) 5 F 37−5 2,088(一2,0) 31.5(一〇.8) 6 F 40−3 2,216(一2.4) 31.0(一1.8) 7 F 38−6 1,950(一2.4) 31.5(一1.0) 8 F 44−0 2,350(一1.8) 32.0(一〇.7) 9

M

40−5 2,215(一1.9) 30.2(一1.8) 10

M

4r2 2,080(一2.8) 32.5(一〇.9) 11 F 39−2 2,316(一1.9) 32.0(一〇.7) 在胎口数は検査時の受胎後の週数で表示. に,生後2週間以内に施行され,髄液中の細胞数, 総蛋白,糖濃度が相当年齢群で正常のもののみを 対象とした.  対照として,同様の目的,方法で髄液検査がお こなわれた未熟児および満期産のAFD児65例の 髄液を用いた.対照は3群に分類し,それぞれ,

在胎29∼32週置出生したAFD児11例,在胎

33∼36週で出生したAFD児17例,および満期産 で出生したAFD児37例であった.  2.方法  平林らの薄層クロマトグラフィー・免疫酵素法 (T/E−Im法)7)8)にほぼ準拠し,1mlの髄液より GSを抽出し,抗GA、抗体を第一次抗体とし,ガン グリオテトラオースシリーズ・GS濃度を測定し た.  満期産SFD児と対照群AFD児の髄液中のGS 濃度の比較統計学的検討は,Tukeyの多重比較検 定を行った.また,満期産SFD児から得られた髄 液中のGSと在面々数,体重の小ささの程度,船囲 の絶対値および頭囲の小ささの程度との関連性に ついても,検討した.小ささの程度は同じ余数の 平均との差を標準偏差(SD)で表した.在胎週数 は,検査時における受胎後罪数で表示した.          結  果  対象の満期産SFD児から得られた髄液中GS のGM1, GDlaおよび総ガングリオテトラオース シリーズ・GSの濃度(平均±1SDng/mlCSF, CSF;髄液)は,それぞれ13.5±5.5,36.3±14。0, 76.1±38.2で,満期産AFD児の25.2±16.3, 56.3±31.6,117.0±45.7ng/m1CSFに比べ,下値 であった(図1).しかし,それぞれp=0.09,0.67, 0.08と大きく,有意差は得られなかった.GD、b, GTユb, GQ、bの合計は,11例中9例でAFD児に比 べ小さかったが,2例ではかなり大きな値を呈し たため,図1一③に示したように大きなぼらつきを みたが,平均±SDでみると, AFD児33.8±17.5 ng/m1CSFに対しSFD児では26.3±23.0であっ た.統計学的にはぼらつきが大きく,また対象検 体数が少ないため,統計上の有意差は得られな かった.  満期産AFD児のグループでは,各GS分画濃: 度のぼらつきは大きいが,個々の例でのGS分画 の%分布型はほぼ一致していた.即ち,GM1はGS 総和の20.9±8.1%,GDlaは49.1±11.8%, GD、b+GT、b+GQ、bは30.0±12.2%であった.未 熟児のAFD児では,満期産AFD児のパターンと 似ているが,未熟なグループにややぼらつきがみ られ,29∼32週出生AFD児は, GM、ζ22.5± 15.4%,GDla=51.8±24.0%, GD、b十GT、b十 GQlb=25.6士23.2%,33∼36週出生AFD児で は,GM1=18.2±11.1%, GDIa=53.3±15.4%, GDlb+GTlb+GQユb=28.5±12.7%であった.  一方,満期産SFD児11例におけるGS分画の% 分布型は症例間のぼらつきが認められ,未熟児 AFD児や成熟児AFD児にはみられない%分布 型を示すものもあった(図2),  これらのパターンを整理してみると,未熟児 AFD児の%分布型と類似している群と,全くパ ターンの異なった群があった.前者をさらに対照 群に合わせてさらに2つに分け,今回はなかった が満期産AFD児と同レベルのものという群を設 定して計4群とし,対象例の分類を試みた(表2).  GD、aのみ検出された例は,対照群の未熟児 AFD児で同様の例が数例認められていたので, A 群とした.C群は未熟児・成熟児のAFD児のGS とは異なる分布型で,総GS濃度は大きく,それは 主にGD、b+GT、b+GQ、bによるものであった.  次に,対象群における各GS濃度と対象群の背 景との関係の検討をした.症例の満期(37∼44週) 一1237一

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ng/皿ICSF 40 30 20 1⑪ o

①GM1

⊥ ng/皿ICSF loo 80 60 40. 20 preterm preterm term  AFD     AFD  AFD (29∼32Ws}(33∼36wS) しerm SFD o

T

ng/!且ICSF 80 60 40 ②GD1、 20 0 ③GDI、+GT恥b÷GQlb ng/m}CSF 200 160 120 80 40 preterm preter憩 term  AFD     AFD  AFD (29∼32Wsl(33四36Ws)        o preterm preterm term    ter皿      preterm preterm 竃erm  AFD     AFD.  AFD  .  SFD      AFD     AF!〕  AFD (29∼32Ws)(33∼36Ws)       (29∼32Ws)(33∼36Ws)        図1 髄液中のガングリオテトラオースシリーズ・ガンダリオシド   ①GM1,②GD1、,③GD、b、+GT、b+GQlb,④総和 ter田 SFD ④総和 term .SFD

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151 甦9/mlCSF 20G 160 120 80 40 o

翅GM、

〔]GDI、 : ::GDlb+GT蛋b+GQL、     じ お      No,  1   2   3   4   5   6   7   5   9   to   ll    preter皿 preし6rn ter皿        AFD    AFD   AFD       {29∼32Ws}〔33∼36Ws}       コントロール 図2 満期産SFD児におけるガングリオテトラオースシリーズ・ガγダリオシドの  パターン ng/盈ICSF   GM[  50r一一『一一一一一一一「 10 40 30 20 10 0 o× 0●O  。po 蒼 一ISD     −ZSD  .頭囲の小ささ GDI。 80 60 40 20 0 X   o OO o  8  ● ● × ● 一2SD 100 80 60 40 20 一ISD o GDLb+GTLb+GQIb × 0 3(b O● × ● 2GO 160 120 80 4G GD1。 一ISD 一2SD GD[b+GT【b+GQIb o ng/mlCSF GML 100 }OO 200 総和 一ISD 総和 一2SD 5G 40 30 20 tO G x    o 憲巻。 一1SD    −2SD    −3SD   体重の小ささ 80 60 4G ZG o X   x 。 o 竈・ 一ISD   −2SD   −3SD 80 60 40 2G 0 X §。。   ● 0 一ISD   −2SD   −3SD 160 120 80 40 ・A

oB

XC

▲D o 一ISD    −2SD    −3SD 図3 満期産SFD児において,各ガンダリオシド値と,頭囲,体重の小ささの程度との関係  ●表2のパターンA,○:パターンB,×:パターンC,▲:パターンD. 一1239一

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表2満期産SFD児のガソグリオテトラオースシ  リーズ・ガンダリオシドのパターン A:全体としてかなりGS濃度は薄く,未熟児出生(29∼32  週)のAFD児のGSと濃度,%分布型ともに類似して  いるもの. B:全体にGSの濃度は薄いが,%分布型としては満期産の  AFDに近く,GSの濃度,%分布型から33∼36週出生  AFD児に類似するもの. C:未熟児・満期産AFD児のGSとは濃度・%分布型とも  に異なるもの. D:満期産AFD児と同レベルのもの. case    1  2  3  4   5  6  7  8  9  10  11

パターンABABCCBAABB

GS:ガンダリオシド, AFD=appropriate−for・dates, SFD: sma11・for−dates. の丁数と,各GS濃度の値との間には特に関係は みられなかった.  四囲,体重の小ささの程度と各GS分画濃度の 値との関係をみると,C群を除いたA群とB群で は三囲,体重ともに,小ささの程度の大きいもの ほど,各GS分画濃度は低い傾向が認められた(図 3).相関係数は頭囲とGM1, GD、a, GDlb十 GT、b+GQ、bおよび総GS濃:度との間では,それぞ れ一〇.64,一〇.45,一〇.43,一〇.63であった.体重と 各GSとの間の相関係数は,それぞれ一〇.3, 0.42,一〇.61,一〇.17であった.また,A群とB群 を比較すると,A群は頭囲の小ささの程度の大き いものの中にみられる傾向があり,頭囲が一1.5 SD以上小さいものの中にB群はみられなかっ た.          考  案  満期で出生したSFD児は,母体あるいは胎児 自身,あるいはその両者の関係が原因で,子宮内 発育が充分できなかったものである.ガングリオ テトラオースシリーズ・ガンダリオシドは中枢神 経系の発育と共に変化する9}10),第1報で報告した ように新生児においても正常AFD児の場合,出 生時の在胎週数によって変化を示した.GMIは髄 液中に在胎30週頃出現し,GD、、とGTlbはGM1と1 同じ頃か,それより少し早;期に出現し,在胎の満 期頃までの間,ほぼ直線的に増加した.GQIbは在 胎満期頃に初めて出現した.  今回の観察ではSFD児における髄液中のガン グリオテトラオースシリーズ・ガンダリオシドは 濃度,%分布型に関して満期産のAFD児と同一 の症例は見られなかった.相当胎生例幣AFD児 に比し,SFD児では各GS分画濃度及び総GS濃 度は低下しており,その%分布型は早産出生の AFD児のものと類似しているものと,全く異なる 分布型を示すものがあった.  早産出生のAFD児の%分布型に類似した群 (9例)では,頭囲,体重の小さいものほど,より 未熟なAFD児のGSパターンに類似していた. 特に,頭囲が小さい症例の各GS分画濃度は平平 であり,さらに,頭囲も平均から一1.5SDより小 さいsymmetrical SFD児では,各GS分画値はよ り小さく,より未熟な児のGSパターンと類似し ていた.symmetrical SFD児は,かなり不良な胎 内環境の結果,または胎児自身に問題があって子 宮内発育不全に陥った児で頭囲の発育が悪く,子 宮内における中枢神経系の発育不全が示唆され る.臨床的予後に関しては,とくに未熟性の著し かったcase 1では,2歳半までの段階で,精神・ 運動発達遅滞が認められた.case 3,4では経過 中四肢に筋緊張充進がみられたが,1歳前に改善 した.  満期産SFD児11例中2例(表2, case 5,6) においては,未熟児・満期産AFD児にみられない 特異なパターンが認められた.すなわち,これら ではGD、b+GT、b+GQ、bが著明に増加していて, その増加は主としてGDlbの増加によることがプ レート上で確認された.GM1とGD、aは満期産の AFD児の値と同程度かやや小さかった.年長児で の検討では,b一経路のGSが優位になるパターン を示していたが,GT、bやGQlbも大きな割合を占 め,また発達変化を示していた.この特異なパター ンを示した2例のSFD児のうち1例は出生後ま もなく呼吸不全で死亡し,他の1例は出生直後お よびその後の発達過程において,特に臨床的な神 経学的異常を認めなかった.SFD児は胎内,また は出生時,種々のストレスを受けることが多いが, 何らかのストレスによってこれらのGSが,神経 細胞から髄液中への流出の増加がもたらされたの

(6)

153 であろう.  SFD児の場合,在胎期間中のいつ頃から子宮内 発育不全状態になったかが,個々の例で異なるこ とも,GSのパターンにばらつきのみられる原因 の一つではないか,と考えられた.       結  語  髄液中のガソグリオテトラオースシリーズ・ガ ンダリオシドを高感度微量定量法を用いて測定 し,その正常発達曲線を得た.今回はさらに,脳 の成熟を髄液ガンダリオシドで検討する目的で, 満期産SFD児と早産,満期産AFD児の髄液ガソ ダリオシドの濃度,%分布型の比較をした.満期産 SFD児では,対照に比し髄液ガソダリオシドは三 値を示した.また,その%分布型は対照に比し一 定せず,脳成熟度障害の多様性が示唆された.  本稿を終えるにあたり,御指導と御校閲を賜わりま した福山幸夫主任教授に深謝し,本稿を福山幸夫教授 定年記念論文として捧げます.また,終始根気よく直 接御指導くださいました泉 達郎講師(現大分医科大 学小児科助教授)に深謝いたします.  本研究は森永奉仕会研究奨励金(昭和60年,61年, 62年,平成3年,4年各年度)にて行った.  なお,本研究の要旨は,第33回日本小児神経学会総 会(1991年,大分)において発表した.       文  献  1)Fishman PH, Brady RO: Biosynthesis and   function of gangliosides. Science 194:906−915,    1976・  2)Suzuki K, Podus星。 SE, Norton WT:Gang一   liosides in the myelin fraction of developing   rats. Biochem Biophys Acta 144:375−381,1967 3)正edeen RW, Yu RK:Gangliosides of CSF   and plasma:Their relation to the nervous   system. Adv Exp Biol 19:77−93,1972 4)Izumi T, Ogawa T, Koizum田et al:No㎜al   developmental pro丘les of CSF   gang蓋iotetraose−series gangliosides in man   from the neonatal period to adolescence.   Pediatr Neurol(in press) 5)泉 達郎,小泉ひろみ,福山幸夫:West症候群患   児における髄液ガンダリオシド分布型とその成長   障害の検討.てんかん治療研究振興財団研究年報   1 :81−84, 1989 6)lzumi T, Ogawa T, Koiz㎜i H et a藍:Low   levels of CSF gangliotetraose−series gang−   1iosides in patients with West syndrome impli−   cation of brain maturation disturbance, Pediatr   Neurol(in press) 7)Yamanaka T, Hirabayashi Y, Koketsu K et   al: Highly sensitive analysis of gangliosides   in human cerebrospinal fluid with neurological   diseases. J Exp Med 57:131−135,1987 8)Hirabyashi Y, Koketsu K, Higashi H et aL   Sensitive enzyme・immunostaining and den−   sitometric deterrn三ation Gf ganglio・series gang・   liosides in cerebrospinal fluid. Biochem Bio・   phys Acta 876:178−182,1986 9)Sve皿nerho墓m L, Bostr6m K, Fredman P et a1:   Human brain gangliosides;developmental   changes from early fetal stages to advanced   age、 Biochem Biophys Acta 1005:109−117,   1989 10)Seyfried TN, Miyazawa N, Yu RK:Cellualr   董ocal三zation of gangliosides in the developing   mouse cerebellum:Analysis uslng the weaver   mutant. J Neurochem 41:49P505,1983 一1241

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