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カボチャ果実斑点細菌病の生態と防除

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は じ め に 北海道はカボチャの生産量が全国で最も多い地域であ るが,特に北部の上川地域が主要な産地となっている。 この上川地域において1997 年ころからカボチャ果実に 突起が形成される症状が認められていた。これらは収穫 時に発見されることが多く,大きなものでは高さ1 ∼ 1.5 cm を超える角状の突起が果実表面に 1 ∼数個,時には 10 個以上認められる場合もある。この原因として病害 虫,物理的要因,気象条件等が想定されたが,突起症状 からは特定の病原菌が分離されず,昆虫による被害とも 異なるため,最近まで原因不明の突起症状として認識さ れていた。一方,突起症状の果実の周囲には,葉に細菌 性と思われる斑点症状が認められ,蔓には水浸状の楕円 形の病斑あるいは,乾燥した白色の病斑が認められた。 比較的新鮮な病斑からは蛍光性のPseudomonas 属細菌 が分離され,これらが突起症状に関与している疑いが考 えられた。 一方,西洋カボチャ果実に突起状の病斑を形成する細 菌病として国内では鹿児島県の西ら(2011)が報告した Pseudomonas syringae pv. syringae による果実斑点細菌病 があるほか,ニュージーランドで発生した同細菌による カボチャ果実の斑点症状の発生報告がある(KEITH et al., 1997)。このうち,果実斑点細菌病は本症状との類似性 が高く,同一病害の可能性が考えられたが,ニュージー ランドにおける症状は収穫後の貯蔵中に発生するとされ ており,本病の発生実態とは明らかに異なると考えられた。 これらを踏まえ,本症状と既報病害との異同,北海道 における発生生態の解明および防除法の確立を目的とし て2011 ∼ 13 年まで 3 年間,道央の長沼町(中央農試) と道北の比布町(上川農試)の2 箇所の試験場および現 地圃場で行った試験の概要を報告する。 I 病徴と病原細菌および宿主範囲 1 病徴 本病は果実のほか葉,蔓にも細菌病に特徴的な水浸状 の病斑を形成する。症状は苗では子葉あるいは本葉の縁 から黄化あるいは褐色の病斑となり,灌水などで周囲の 株に感染が広がる(口絵①)。定植後に発病する場合も 最初に葉で発生が認められることが多く,降雨後の葉の 縁あるいは水のたまりやすい葉脈周辺部に小さな斑点症 状が見られ,雨が続くと病斑は増加,拡大する(口絵②)。 病斑は乾くと褐色や白色となり,破れて穴が開きやす い。葉の発病は各生育ステージで認められるが,展開間 もない葉が最も弱く,激しく発病すると萎縮し奇形とな る場合がある。蔓では最初に楕円形の水浸状の病斑が認 められ(口絵③),乾くと白色の乾燥した病斑となるが, 発病は蔓の表面にとどまり,蔓全体を侵すことはない。 果実では,最初は直径1 ∼ 2 mm 程度の小型の円形の斑 点を形成し(口絵④),やがて果実の生長とともに斑点 の周囲が隆起して突起状になる(口絵⑤)。収穫時には 円錐状で高さが5 mm を超える大型の突起や 2 ∼ 3 mm 程度の小型の突起が認められ,突起の先端には1 ∼数 mm 程度の小さなコルク状の病斑の痕跡が認められる場 合が多い(口絵⑥)。突起症状となる原因は明らかでは ないが,カボチャ果実では物理的な傷や昆虫の刺し傷の 痕が隆起するため,カボチャの生理的な要因と考えられ る。 2 病原細菌と宿主範囲 本症状の葉,蔓,果実(幼果)から分離した細菌はグ ラム陰性,好気性の桿菌でKB 培地上に蛍光性色素を産 生,LOPAT 試験で+−−−+を示し,L 酒石酸を利用 せず,ベタイン,L 乳酸を利用することなどの細菌学的 性質,16S rDNA の相同性,hrpZ 遺伝子による判別から Pseudomonas syringae pv. syringae と 同 定 さ れ,西 ら (2011)によって報告された果実斑点細菌病と同一であ ることが明らかとなった(新村,2014)。 一方,西ら(2011)の報告では鹿児島で発生した症状 は発生部位や葉の症状は同様であるが,果実の症状は比 較的大型のかさぶた状を呈しており,北海道の突起症状 とは異なる。そこで,両分離菌株を西洋カボチャへ接種

カボチャ果実斑点細菌病の生態と防除

美  濃  健  一

道総研 道南農業試験場 研究部生産環境グループ

新  村  昭  憲

道総研 上川農業試験場 研究部生産環境グループ

Epidemiology and Control of Bacterial Spot of Squash(Cucurbita

maxima)Caused by Pseudomonas syringae pv. syringae.  By

Akinori SHINMURA and Kenichi MINO

(キ ー ワ ー ド:カ ボ チ ャ,果 実 斑 点 細 菌 病,Pseudomonas syringae pv. syringae,発生生態)

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したところ苗および茎葉,幼果に対する病原性は,同様 の症状を示すものの鹿児島株が明らかに強く,特に果実 の病斑の大きさが異なった。また,日本カボチャ,ペポ カボチャおよび他のウリ科作物に対しても北海道株は弱 い病原性しか認められないが,鹿児島株は明確な病原性 を示した(表―1)。以上細菌学的性質や宿主が同一であ ることから同一の病害ではあるが,病原性がやや異なる ため病徴に違いがあると考えられた。なお,本病菌の接 種試験によって他にウメ 豊後梅 ,モモ 白鳳 ,トマト 桃太郎 ,ミニトマト 千果 ,ナス 千両二号 ,ダイズ ユ キホマレ およびイヌホウズキに病原性が認められた。 II 感  染  源 本病の葉の症状は果実肥大前から観察されることが多 いことから,葉の病斑が果実への感染源になっている可 能性が高い。一方,葉の症状が認められる時期は定植前 から開花ころまで様々であるが,特に被害の多い圃場で は育苗時に既に感染している場合や連作圃場において定 植後間もなく発生が認められている事例が多い。これら から想定される感染源として,種子伝染と前年残渣によ る感染の可能性について調査を行った。 1 種子伝染 種子伝染については多発生圃場産の果実9 果から採種 し,乾燥後,周囲からの感染がないよう底面吸水させた セルトレイに播種した。発芽後,子葉または本葉第1 葉 に黄色∼褐色の病斑が認められた株(図―1)から細菌の 分離を試みた。分離細菌のうちKB 培地上に蛍光性色素 を産生する菌株についてカボチャ幼果へ接種試験および 細 菌 学 的 性 質 の 調 査 を 行 っ た。そ の 結 果,発 芽 し た 1869 粒中 5 粒の種子が感染していることが確認され, 表−1 カボチャおよびウリ科作物への病原性 分類 植物 品種 接種部位 分離菌 果実斑点細菌病菌 「鹿児島株」 キュウリ斑点 細菌病菌 カボチャ 西洋カボチャ 味平 葉 + ++ +w 蔓 + + 果実 + ++ ほっとけ栗たん ポット苗 + + − 日本カボチャ 小菊 葉 − + 蔓 − + 果実 +w + ポット苗 + ++ +w ズッキーニ (ペポカボチャ) トスカ 葉 + ++ 蔓 − + 果実 −∼+ + ポット苗 + ++ +w ウリ科作物 キュウリ 夏元気 果実 − + ポット苗 +w ++ ++ メロン ルピアレッド 果実 − +w ポット苗 +w ++ +w スイカ 縞王 果実 − +w ポット苗 +w ++ +w ツルレイシ 太レイシ ポット苗 +w + 果実への病原性:表面に明瞭な斑点症状が認められたものを+,不明瞭なものを+w とした.また,直径 5 mm を超えるような大型の病斑となる場合を++とした. 茎葉への病原性:明確な斑点症状を+,不明瞭な病斑を+w,激しく縮葉する場合を++とした.また, 蔓への病原性は蔓に明確な水浸状の病斑を形成するものを+とした. ポット苗への病原性は葉の発病で判断し,その評価は茎葉への病原性と同様に行った.

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本病は種子によって伝染すると考えられた(表―2)。 本病の発生の多い生産者の圃場では,育苗中に感染し 本圃で多発している場合がある。そこで,種子伝染した 株の混入あるいは育苗中に苗が感染したことを想定し, 露地圃場に定植したカボチャに接種によって発病させた 苗を混入(定植苗の4%または 20%)させて発病株率の 推移を調査した。その結果,混入させた区の発病株の増 加は著しく,定植時に発病苗を除去することは被害を軽 減するために重要であると考えられた(図―2)。 2 前年の罹病残渣 生産現場では栽培後の残渣を持ち出すことは難しく, 圃場内に鋤き込む場合が多い。また,カボチャの栽培面 積が多い生産者では,圃場の一部が連作になる場合もし ばしば認められる。そこで,罹病残渣が鋤き込まれた圃 場に次年度も栽培した場合の影響を調査した。試験は中 央農試(試験1)と上川農試(試験 2)の 2 箇所で行い, 前年に発病カボチャの残渣を鋤き込んだ地点とカボチャ を栽培していない地点に無病カボチャを定植し,感染の 推移を調査した。その結果,試験1 では鋤き込み区にお いて茎葉,果実ともに発病が認められたが前年無栽培区 では発病は認められなかった(表―3)。試験 2 では定植 1 か月後程度に暴風雨があり,この時点で試験を打ち切 った。このため,試験結果は茎葉の発病調査のみである が,鋤込み区でのみ発病(発病株率87.5%)が認められ, 前年無栽培区では発病は認められなかった(データ省 表−2 種子伝染と考えられる苗の割合 果実 ロット 播種粒数 発芽数 疑似症状 蛍光性 Pseudomonas 分離数 発病苗数* 発病苗率 No.1 416 208 1 1 0 0.0% No.2 279 260 4 3 3 1.2% No.3 394 114 14 0 0 0.0% No.4 232 185 14 0 0 0.0% No.5 373 324 1 1 1 0.3% No.6 303 197 0 0 0 0.0% No.7 262 252 0 0 0 0.0% No.8 227 176 0 0 0 0.0% No.9 162 153 1 1 1 0.7% 合計 2,648 1,869 35 6 5 0.27% *発病苗数は病原性のある細菌が分離された苗の本数. 図−1  発病果実からの採種種子より発芽した子葉に認め られた病斑 0 20 40 60 80 100 5 月 25 日 6 月 9 日 6 月 24 日 7 月 9 日 7 月 24 日 健全苗区 発病苗4%混入区 発病苗20%混入区 調査月日 発病株率︵ % ︶ 図−2  発病苗の混入が発病株率の増加に及ぼす影響 定植:5 月 30 日,各区 100 株,反復なし. 混入させた発病苗の数は,健全苗区では0 株,4%区 では4 株,20%区では 20 株.

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略)。以上の結果から前年罹病残渣は感染源になり得る と考えられた。 なお,発病調査基準は以下の通りとし,以降の調査で もこの基準を用いた。 発病指数(0:発病なし,1:果実当たりの小突起 3 個 以下,2:同 4 個以上 9 個以下,3:同 10 個以上,4:果 実当たりの大突起1 個以上)から発病度を算出し,発病 度から防除価を算出した。また,発病程度は発病度が無 発生:0,少発生:1 ∼ 10,中発生:11 ∼ 25,多発生: 26 ∼ 50,甚発生:51 以上とした。 3 果実感染の感染源 本病の発生現場を観察すると,果実の突起症状の周囲 には茎葉の発病が多く認められる。また,開花前∼開花 時に降雨が続いた圃場では発生が多い傾向が認められ る。そこで,降雨による罹病果への感染増加の影響を明 らかにするため,雨よけの有無による発病への影響を調 査した。なお,試験1(ハウス栽培)では 3 箇所に発病 苗を定植することで感染を促し,試験2(露地トンネル 栽培)では着蕾前に全株に多発生を認めてからトンネル を設置した。この結果,雨よけによって茎葉および果実 の発病は減少し,茎葉がすでに多発生している条件にお いても果実への感染は減少した(表―4)。このことから, 茎葉が発病した条件で着蕾∼開花期に降雨があると茎葉 から果実に感染し,突起症状が増加すると考えられる。 III 感染時期と突起症状 本病の果実の症状の特徴は突起の形成であるが,突起 には大小様々な症状が認められている。形成する数にも よるが,これらの中で小型の突起は数がそれほど多くな ければあまり問題とはならない。しかし,大きく隆起し た突起は被害として重要である。発生現場の観察では大 型の突起は開花数日後の果実でも既に観察できること, 接種試験において開花後の果実への接種では小型の突起 しか形成しないことから,感染時期が突起の大きさに関 与している可能性が考えられた。そこで感染時期と突起 形成の関係を明らかにするため,上川農試圃場において 開花5 日前から開花 20 日後まで時期別に果実への接種 を行い,形成される突起について5 mm 以上を大型,5 mm 未満を小型の突起として調査を行った。その結果, 開花前に感染した場合には高さ5 mm 以上の大型の突起 を形成し,開花後に感染した果実には小型のイボ状の突 起のみが形成され,開花時期を境に突起の形状が変わる ことが明らかとなった(表―5)。また,開花 18 ∼ 20 日 後の接種では発病は認められず,成熟後の発病も認めら れていないことから,幼果のみが感染すると考えられ る。以上の結果から,果実の感染を直接防除するには幼 果の時期に防除する必要があり,特に大型の突起を防除 するためには開花前からの防除が必要と考えられた。 表−4 降雨が感染拡大に及ぼす影響 処理区名 試験1 試験2 調査株数 発病株率(%) 発病度(果実) 調査果数 発病果率(%) 発病度(果実) 雨よけなし 28 89.3 38.4 71 53.5 27.7 雨よけあり 28 7.1 8.8 30 3.3 0.5 試験1:雨よけ期間は 6 月 7 日(定植時)から 8 月 23 日まで.期間の降水量は 208 mm.葉の発病調 査は8 月 1 日,果実の発病調査は 8 月 23 日に実施. 試験2:雨よけ期間は全株の葉の発病度が 100 になった 7 月 17 日から 8 月 27 日まで.この期間の降 水量は210 mm.果実の調査は 8 月 27 日に実施. 表−3 前年に鋤込んだ残渣が翌年の果実の発病に及ぼす影響(試験 1) 処理区名 調査果数 発病果率(%) 発病度(果実) 発病果 小突起 大突起 残渣鋤込み 28 39.3 39.3 7.1 20.2 前年無栽培 22 0.0 0.0 0.0 0.0 前年10 月 10 日に発病させた茎葉を鋤き込んだ. 翌年6 月 7 日に残さ区に 19 株,残さ区から 2 m 離れた裸地 48 m2(6 m ×8 m,無処理区)に 16 株をそれぞれ定植.調査:8 月 23 日.

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IV 防   除 1 果実に対する薬剤防除 各種銅水和剤による薬剤防除試験を,露地圃場で7 回 実施した。供試薬剤として水酸化第二銅水和剤(顆粒) (商品名 コサイド3000),塩基性硫酸銅水和剤(商品名  Z ボルドー),硫黄・塩基性塩化銅水和剤(商品名 園芸 ボルドー)を用い,接種または自然発生で試験を行った。 薬剤散布は果実の着蕾時期かそれ以前より2 ∼ 4 回実施 し,果実の発病で評価した。また,苗での発病に対する 銅水和剤の効果も検討した。 供試薬剤の防除効果は防除価に振れがあるもののいず れの試験でも認められ(表―6),これらの薬剤を用いた 防除は有効であると考えられた。防除時期については感 染時期である着蕾時期が重要であるが,カボチャの場 表−5 果実の感染時期が突起の形状に及ぼす影響 接種時期 調査果数 発病果率(%) 突起なし 小突起 大突起 開花9 ∼ 7 日前 6 0.0 0.0 100.0 開花6 ∼ 4 日前 17 5.9 5.9 88.2 開花3 ∼ 1 日前 2 0.0 50.0 50.0 開花日∼3 日後 18 0.0 88.9 11.1 開花4 ∼ 6 日後 20 5.0 95.0 0.0 開花7 ∼ 9 日後 18 0.0 100.0 0.0 開花18 ∼ 20 日後 11 100.0 0.0 0.0 無接種 14 92.9 0.0 7.1 大突起:高さ5 mm 以上の突起症状を形成. 小突起:高さ5 mm 未満の突起症状のみを形成. 表−6 圃場試験における茎葉散布による防除効果と薬害の検討結果 供試薬剤 希釈倍率 試験事例 発生程度別区分 調査果数 防除価 薬害 塩基性硫酸銅水和剤 (銅として32.0%) 500 倍 1 多(接種) 29 43 ― 2 少(接種) 70 69 ― 3 甚(接種) 30 38 ― 4 中 79 30 ― 5 多(接種) 93 79 ― 6 中 101 50 ― 7 多 172 70 ― 硫黄・塩基性      塩化銅水和剤 500 倍 1 多(接種) (供試なし) 2 少(接種) (供試なし) 3 甚(接種) 25 46 ― 4 中 59 53 ― 5 多(接種) 20 73 ― 6 中 95 57 ― 7 多 153 77 ― 水酸化第二銅水和剤(顆粒) (銅として30.0%) 2,000 倍 1 多(接種) 33 65 ― 2 少(接種) 69 64 ― 3 甚(接種) 32 18 ― 4 中 94 47 ― 5 多(接種) 24 65 ― 6 中 105 46 ― 7 多 178 73 ― 試験は2012 ∼ 13 年に実施.試験場所:試験 1 ∼ 3 中央農試,試験 4:厚真町,試験 5:上川農試, 試験6:名寄市,試験 7:美深町.散布は 1 番果着雷期あるいは着雷前から 2 ∼ 4 回行った.果実の 発病は収穫時に調査し,防除価は果実の発病度から算出した.

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合,開花時期は株によって7 日以上の幅があること,開10 日後程度までは感染時期であることから,1 番果 の着蕾から7 日間隔で 2 ∼ 3 回防除することで防除が可 能と考えられた。 2 苗に対する防除効果 育苗時から本病の発病を認めた場合,苗の廃棄あるい は罹病葉の摘葉と苗への薬剤防除が必要と考えられる。 そこで,苗に対する薬剤防除効果と苗防除に摘葉を組合 せた効果を検討した。 苗の防除については,健全苗に罹病苗を混入し,水酸 化第二銅水和剤(顆粒)(炭酸カルシウム水和剤200 倍 混用(商品名 クレフノン))の2,000倍で防除を行った。 2 回の試験を行ったが,効果には差があったもののいず れも防除効果が認められた。苗から発病が認められた場 合には発病苗を除去あるいは罹病葉を除いた後に防除を 行うことが有効と考えられた(表―7)。 次に育苗時の防除が最終的な果実の発病に及ぼす影響 について検討した。試験は育苗時に罹病株を配置するこ とで接種を行い,処理区は定植時に罹病葉を摘葉した 区,育苗時の薬剤散布と定植時に罹病葉を摘葉した区お よび対照区(育苗時無処理)を設けた。いずれの処理区 も定植後の1 番果着雷期に 1 回茎葉散布を行った。 この結果,差は小さかったものの収穫時の茎葉の発病 および果実の発病ともに育苗時の防除と摘葉を組合せた 場合(葉の発病度38.1,発病果率 68.3)が対照区(葉の 発病度62.8,発病果率 78.0)と比較し最も効果が高く, 育苗時の薬剤防除および罹病葉の摘葉は有効と考えられ た(表―8)。 3 防除対策の実証 例年発生の認められる現地生産者の圃場において育苗 中の病葉の切除および薬剤散布,定植後の着蕾期からの 薬剤散布を実施し,その効果を検証した。なお,使用し た圃場はカボチャ栽培歴のない水田転換畑で実施したた め前年の残渣の影響はない。この結果,発生量は例年よ りも少なく少発生にとどまったが,茎葉の発病および果 実の発病ともに無処理区よりも減少しており,防除効果 表−7 育苗ポット苗での果実斑点細菌病に対する各薬剤の効果 試験番号 供試薬剤 希釈倍率 調査株数 発病株率(%)(防除価) 薬害 1 水酸化第二銅水和剤 (顆粒)(銅30%) 2,000 倍 43 2.3 (94) ― 無処理 43 41.9 2 水酸化第二銅水和剤 (顆粒)(銅30%) 2,000 倍 43 7.0 (40) ― 無処理 43 11.6 接種:試験①10 月 3 日,試験② 10 月 11 日に健全苗に感染苗が囲まれるよう 5 株配置した. 散布月日:試験①10 月 1 日(本葉 1 枚目展開),8 日(本葉 3 枚目展開)の合計 2 回 試験②10 月 10 日(本葉 1 枚目展開),17 日(本葉 2 枚目展開),24 日(本葉 3 枚目展開)の合計 3 回. 調査月日:試験①10 月 24 日,試験② 11 月 6 日. 表−8 育苗中の薬剤散布および罹病葉の摘葉が発病に及ぼす影響 処理区名 葉の調査 果実の調査 調査株数 発病度 (葉) ― 調査果数 発病果率(%) 発病果 小突起 大突起 苗薬・摘葉・茎葉薬 44 38.1 41 68.3 61.2 12.2 摘葉・茎葉薬 45 48.3 39 71.8 64.4 13.3 茎葉薬 45 62.8 41 78.0 66.7 16.7 苗薬:苗に対し水酸化第二銅水和剤(顆粒)の2,000 倍希釈液(炭酸カルシウム水和剤混用) を6 月 8 日および 15 日に散布. 摘葉:6 月 18 日(定植前日)に発病葉を摘葉. 茎葉薬:定植後の7月7日(1番果着蕾期)に水酸化第二銅水和剤(顆粒)の2,000倍希釈液(炭 酸カルシウム水和剤混用)を背負い式動力噴霧器にて100 l/10 a の割合で散布. 葉の調査は8 月 1 日,果実の調査は 8 月 27 日に実施.

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はあると考えられた(表―9)。 4 耕種的防除を含む防除対策 本病は常発地では様々な生育ステージで発生してお り,常に感染の危険性があるが,生育初期からの感染と 着雷時期の感染以外は大きな被害になることは少ない。 苗や定植直後の生育初期に感染した場合は株が萎縮し 生育自体にも影響する場合もあるとともに,早期の感染 は発病株を増加させ,それらは果実への感染源となる。 そのため,一次感染源である育苗中の発病苗を見逃さ ず,見つけた場合は速やかに病株を処分(処分が難しい 場合は病葉の除去)し,薬剤の茎葉散布を行う必要があ る。 次に最も重要な果実の感染を防ぐため,薬剤防除が必 要である。本病の果実への感染時期は着雷(開花の10 日ほど前)から開花10 日後まで,最も被害が大きい大 型の突起を形成する時期は着雷から開花までであること が明らかとなった。そのため,この時期に果実を感染か ら保護する必要がある。特に果実の発病は雨によって茎 葉から感染していると考えられるため,降雨が予想され るときは薬剤防除が重要と考えられる。 一方,感染源としてもう一つ重要なのが罹病残渣であ る。対策としては本圃では連作を避けること,前年の罹 病残渣がないよう,できる限り残渣は鋤き込まず圃場外 へ搬出することが望ましい。 以上から本病の総合的な防除対策として連作の回避, 罹病残渣の処分,発病苗の除去および苗の薬剤防除,着 蕾から2 ∼ 3 回の薬剤防除が有効と考えられた。 お わ り に 本病はこれまで作型,品種,圃場,年によって発生が 大きく異なるため,謎の突起症状として知られていた が,原因が不明で対策がなかった。本病が作型や品種で 発生程度が異なる理由として明瞭な大型突起が形成され る感染時期の期間が着蕾から開花までと比較的短いため で,この時期に茎葉の発病と降雨が重なることは一部の 作型,品種に限られる。そのため,年によって異なる品 種,作型で発生する。 各種の情報を見ると鹿児島や沖縄では北海道よりも激 しい症状の果実斑点細菌病が発生している。現在日本の 北と南で発生している病害であるが,今後他の地域でも 発生する可能性はある。この報告がそのときの情報にな れば幸いである。 引 用 文 献

1) KEITH, R. S. et al.(1997): New Zealand Journal of Crop and

Horticultural Science 25 : 203 ∼ 211. 2) 西 八束ら(2011): 日植病報 77 : 38(講要). 3) 新村昭憲(2014): 同上 80 : 57(講要). 表−9 防除対策の現地実証結果 処理区名 葉の調査 果実の調査 薬害 調査 株数 発病度 (防除価) 平均 調査果数 発病果率(%) 発病度 (防除価) 発病果 小突起 大突起 防除対策区 20 10.0 (58) 51.8 10.7 10.2 0.5 3.6 (49) ― 無処理区 20 23.8 55.5 19.2 18.3 2.2 7.1 品種: 味平 ,播種:4 月 5 日,育苗方法:ポリ鉢育苗,定植:5 月 19 日. 1,050 m2/区,250 株× 2 畦/区,反復なし. 「防除対策区」:5 月 16 日に疑似症状のある本葉を切除した.その後,水酸化第二銅水和剤(銅 30%,商品 名 コサイド3000,試験実施当時は未登録)2,000倍希釈液(炭酸カルシウム水和剤を混用し,展着剤を添加) を背負い式動力噴霧器にて100 l/10 a 散布した.6 月 22 日(1 番果着蕾期),29 日(1 番果開花期),7 月 8 日(1 番果落花)に水酸化第二銅水和剤 2,000 倍希釈液をスプレーヤにて 100 l/10 a 散布した.

参照

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