EAA アルミニウム自動車マニュアル‐接合編
6. ろう付
目次:
6. ろう付
6.0
はじめに
6.1 ろう付方法
6.1.1 ディップろう付 6.1.2 トーチろう付 6.1.3 炉内ろう付 6.1.3.1 真空ろう付 6.1.3.2 CAB(制御雰囲気ろう付) 6.1.4 アークろう付 6.1.5 レーザビームろう付 6.1.6 抵抗ろう付 6.1.7 誘導ろう付6.2
アルミニウムのろう付法の一般原理
6.2.1 ろう付用のアルミニウム合金 6.2.2 ろう付用溶加材 6.2.3 継手の設計と組立 6.2.4 ろう付前のクリーニング 6.2.5 部材の前組立 6.2.6 ろう付フラックス 6.2.7 フラックス塗布 6.2.8 ろう付サイクル6.3
はんだ付
6.3.1 はんだ合金 6.3.2 はんだ付可能なアルミニウム合金 6.3.3 はんだ付のプロセス6.0 はじめに
ろう付は溶加材を自身の融点以上で、且つ、母材金属の融点以下の温度に加熱して行う金属接 合方法である。液化した溶加材は母材金属の継手部の狭い隙間に毛管現象によって導かれる。 濡れと毛管現象が重要なことから、母材接合面の品質が極めて重要であり、さらに、接合面の 隙間は小さくなければならない(通常 0.2mm 以下)。 はんだ付はろう付に似たプロセスであるが、プロセス温度はろう付の場合よりも低い。従来よ り、アルミニウムのろう付とはんだ付は下記により区別されている。 ● はんだ付:T < 450 ℃ ● ろう付: T > 450 ℃ ろう付は特に薄板のコンパクトな部材を接合する時の優れた接合方法である。特に有効なのは、 接合スポットが密集している、あるいは、大面積の接合部を有する、あるいは、アクセスでき ない接合部を有する、そして、複雑な部品の場合である。ろう付による防水継手は油、水、冷 却液等の比較的高圧の容器を製造する場合に特に有利である。 ろう付は母材金属を溶かさないので、形状誤差と歪を抑えることができる。さらに、クリーン な継手が得られるので仕上げ作業は不要である。ろう付は強力であり、溶加材によって形成さ れるメニスカスは応力集中を緩和できる最適な形状をしており、他の殆どの溶接方法よりも疲 労強度が優れている。さらに、ろう付はアルミニウムと鋼、アルミニウムとチタン、アルミニ ウムとマグネシウム等異種金属間の接合も容易である。 但し、アルミニウム又はアルミニウム合金のろう付の場合は、ろう付温度がそれらの母材金属 の融点に近いことから慎重な温度管理が必要である。アルミニウム合金は 560-660℃の温度 で溶けるが、一方、標準的なアルミニウムに使用するろう付合金(Al-Si 及び Al-Si-Mg 系) は 520-610℃の温度で溶ける。アルミニウムのろう付温度は通常 580-620℃である。その ため、Al-Cu や Al-Zn-Mg-Cu 系の高強度アルミニウム合金(一般に液相線温度が低い)は 通常、ろう付による接合はできない。 さらに、多くの場合、高いろう付温度が母材金属の強度を大きく低下させるので、合金や添加 物を選ぶ時は軟化影響に注意しなければならない。例外として、合金含有率の小さな熱処理可 能な Al-Mg-Si 合金はろう付温度から急冷し、そして、自然又は人工的に高い降伏強度レベル に時効処理することができる。 ろう付時、ろう材は接合する母材金属間に配置する。溶加材にはワイヤ、金属粉とフラックス の混合物、又は、薄板金属製のものを使用することができる。溶融した溶加材は毛管現象によ って接合部材間の隙間に入り込む。溶融した溶加材は接合部材間の固体の接触面に沿って流れ るので、ブラインドになっている継手にも適用可能である。 殆どの場合、アルミニウム製品のろう付には多層シート材料が使用される。アルミニウムろう 付シートは強度と耐久性を担うコア合金、及び、溶加材からなる複雑な多層化合物である。コ ア合金と溶加材の間には拡散バリアとして機能する別の合金層が挿入される場合がある。場合 によっては、ろう材の片面にクラッド層を重ね、その反対の側の防食性を向上させる場合があ る。溶加材はアルミニウムのコアの片面又は両面のいずれにも張ることができる(製造方法: 圧延クラッディング又は多層鋳造圧延鋼片(Novelis Fusion™等)を使用した方法)。 ろう付時、溶解した溶加材は適当な方法で大気から保護しなければならない。ろう付用のフラ ックスは通常、ろう付面の汚染物を除去し、そして、加熱時において酸化アルミニウムの皮膜 を除去する目的に使用する。フラックスはさらに、母材金属の濡れ性、及び、溶融した溶加材 の流動性を向上する。ろう付を真空の炉内で行う場合に限り、フラックスは不要である。フラックス(化合物)はろう付前に接合面に供給する。従来より、アルミニウムのろう付には 塩化物のフラックスが使用されてきた。最近ではフッ化物系のフラックスが一般的に使用され ている。フラックスは粉末又はペースト状のものを使用できる他、アルミニウム基板又は溶加 材にフラックスをプレコートしたものや、フラックスを含んだ溶加棒を使用することも可能で ある。いずれの場合も、フラックスは加熱されて接合部に流れ込み、その後、溶加材にとって 代わられる。余分なフラックスは通常、サイクル終了時点で除去しなければならない。これは アルミニウムのフラックス(特に塩化物)が腐食の原因になるからである。非腐食性のフラッ クスの場合はろう付後のクリーニング作業は不要である。 自動車産業におけるアルミニウムのろう付の最大の用途は熱交換器のコンポーネントの製造 である。1970 年代初頭以降、機械式組立法によるアルミニウム製熱交換器がそれまでの銅製 や黄銅製のラジエタにとって代わり始めた。そして 1970 年の半ばになると、フラックスを 使用しない真空ろう付法による量産が始まる。そして、1980 年代の初めにはフラックスを使 用する大気圧下でのろう付技術が出現し、ろう付によるアルミニウム製熱交換器の製造が始ま った。現在、アルミニウム熱交換器の最新の製造技術は非腐食性のフラックスを使用して大気 圧下で行うろう付技術であり(具体的には NOCOLOK®フラックスろう付)、そして、これま での銅製や黄銅製の熱交換器は事実上、アルミニウム製にとって代わられている。 ろう付プロセスの利点の一つは自動化が容易であるということである。ろう付作業の最大の難 点は接合部の非破壊検査による品質管理が難しいことである。 ろう付により製造したアルミニウム製ラジエタ-プラスチックタンク付 (出典:Sapa)
6.1 ろう付方法
アルミニウムの場合の最重要ろう付法は炉内ろう付法である(特に熱交換器の場合)。しかし、 ディップ(フラックス)ろう付や手動トーチろう付等の従来のろう付技術も用途によっては依 然として有効である。手動トーチろう付とは対照的に、ディップろう付や炉内ろう付等の工業 用ろう付技術の場合は投資コストが大きく、そして、複雑な生産管理システムが必要である。 さらに、別の熱入力方法も適用可能である。工業用のろう付方法には TIG(GTA とも言う) 及び MIG(GMA とも言う)ろう付、プラズマろう付及びレーザビームろう付がある。これら の方法は特に少量生産の場合や、異種金属とのアルミニウムの接合プロセスに適している。さ らに、誘導ろう付や抵抗ろう付は、特に、鋼とアルミニウムの接合に適している。6.1.1 ディップろう付 ディップろう付は長年にわたり広く使用されてきている。特に複雑な組立品の製造に適してい る。短時間で一様な加熱が得られ、寸法誤差を小さく抑えることができる。但し、ろう付後、 残ったフラックスを除去するためのクリーニング作業が必要で、さらに、製品内部に空気を閉 じ込めないようにするための工夫が必要である。 溶融フラックス槽に浸漬する前に、母材を約 540℃に予熱する。フラックスは Na、K 及び Li の塩化物に Na、Al 及び Mg のフッ化物を加えた溶融物である。フラックスはこれらの塩化 物とフッ化物を定期的に追加して濃度を調整しながら使用する。フラックス槽温度は±3 ℃の 範囲内で調整し、アルミニウム部品を浸漬した時に 6℃を超える温度低下がないようにする。 浸漬時間はろう付される材料の大きさと重量に応じて 30 秒~30 分の範囲である。母材金属 の腐食を防止するため、ろう付後は残ったフラックスを除去しなければならない。 ディップろう付のもう一つの難点は環境への影響が大きいことである。具体的には、腐食性の 蒸気と大量の廃液が発生することである。そのため、 ディップろう付は減りつつある。 ディップろう付 6.1.2 トーチろう付 アルミニウムのトーチろう付は局部加熱によるろう付法である。使用する火炎は弱還元性の酸 素アセチレン炎、酸素水素炎又は酸素天然ガス炎である。酸素天然ガス炎は廉価で制御が簡単 なことからアルミニウムのトーチろう付には好まれて使用されている。注意すべき点は均一な 熱分布が得られるようにすることである。他のアルミニウムろう付の場合と同様、精密な温度 制御が必要である。トーチろう付は自動制御の方が簡単で、手動制御は温度変化を示すアルミ ニウムの色の変化がないために難しい。温度指示のため、ある温度に達した時にアルミニウム の色の変化(及び液化)が起こるようにフラックスを調合する場合がある。
トーチろう付-溶加棒(左)とクラッド材料(右) 重要なプロセスパラメータとしてはフラックスと溶加材の種類の他、各コンポーネントのクリ ーンリネスとアラインメント精度がある。溶加材は最初からセットしておく場合と、ろう付作 業中にろう付棒を使用して供給する場合の両方の方法が可能である。ろう付後は残ったフラッ クス(塩化物)を除去するためのクリーニング作業が必要である。 トーチろう付に使用する機器は比較的シンプルであるが、製造する母材金属もシンプルなもの に限られる。手動によるトーチろう付は主に修理の時に使用される。トーチろう付は溶加材と フラックスの種類を変えることにより、アルミニウムと銅のろう付にも使用することができる。 6.1.3 炉内ろう付 炉内ろう付は複数の継手部を有する複雑な製品に適用できる半自動のプロセスである。炉内ろ う付法は炉の設計(バッチ/連続炉)を含め、様々なバリエーションがある。炉内ろう付は様々 な種類の金属の接合に使用することができる。材料の種類によって加熱/接合雰囲気の種類が 異なる。雰囲気の種類としては空気の他に真空、保護(イナート)ガス又は反応性ガス雰囲気 も使用する。 アルミニウムは空気の雰囲気中でフラックスを使用して炉内ろう付することができる。ろう付 のプロセスは前述の標準手順による。材料表面をクリーニング後、フラックスを塗布し、そし て、溶加材をセットして炉に入れる。ディップろう付との比較によるデメリットとしては熱伝 達速度が遅いことである。低速で長時間の加熱により母材金属が溶けたり、あるいは、重大な 拡散影響がでることがある。さらに、加熱不足によってろう付が不足することもある。空気中 炉内ろう付はアルミニウムには殆ど使われていない。 アルミニウムの場合、真空及び制御雰囲気中での炉内ろう付法が一番良く使用されている。炉 内ろう付は開放形炉内ろう付や塩浴ろう付と較べて環境への影響が少ないとされている。フラ ックスを使用しない真空ろう付法及びフラックスを使用する CAB(制御雰囲気ろう付)法は、 その方法を変えることによって酸化アルミニウム層の貫通問題を解消でき、ろう付プロセスの プレコンディショニングを不要にすることができる。現在、CAB プロセスはコストメリット (生産歩留まりの向上、炉のメインテナンスコスト削減、プロセス安定性の向上)が大きいこ とから好まれて使用されている。フラックスを使用しない CAB ろう付法も開発されつつある。 6.1.3.1 真空ろう付 真空ろう付では、母材金属をクリーニングして、溶加材を塗布し、そして、炉に入れる。フラ ックスは不要である。炉内を真空にした後、材料全体をろう付温度まで加熱する。真空とする ことで、ろう材が溶けて接合部に流れ込む時の酸化と汚染のリスクがなくなる。
バッチ真空ろう付炉 (出典: Ipsen) 真空ろう付は極めて強い継手が得られ、さらに、腐食性のフラックスが残らない、ハイエンド なジョイニング技術である。一般的にアルミニウム用真空ろう付炉には、シングルチャンバ(バ ッチタイプ)とマルチチャンバ(半連続)がある。バッチ炉は通常、水平投入式とするが、垂 直投入式も可能である。半連続炉は水平投入式であり、材料搬送装置とコンベヤを使用した自 動化システムとされる場合が多い。この場合、通常、加熱・脱脂用のプレチャンバが装備され る。アルミニウムの真空ろう付はプロセス時間を短くすること(炉の高速での真空化と加熱)、 及び、一様な浸漬温度を確保することがポイントである。 高真空下でのフラックスを使用しないろう付法のメカニズムは次の通りである。 ● アルミニウム合金を加熱すると、ろう付合金が流れ始める前に温度膨張係数の差によ って酸化層が割れる(アルミニウムの温度膨張係数は酸化アルミニウムのおよそ 3 倍 である)。 ● 液体のろう付合金は割れの隙間に入り込んで母材金属まで達する可能性があるが、それが 許されるのは割れの部分のアルミニウムの酸化を防止できる場合である。そのため、炉内 は酸素を完全に排除した雰囲気としなければならない。 最低要件として真空(10-4 mbar 以上)を立てる他、ゲッタ材を使用して炉内の酸素を完全に 除去しなければならない。1960 年代後半、Mg の蒸発がこの役割を果たす(ゲッタ材として 使用できる)ことが発見された。現在、アルミニウムの真空ろう付の重要要素の一つは溶加材 の添加材として使用する、あるいは、母材金属に含有するマグネシウムである。 ● マグネシウムは約 570℃で蒸発し始める時に酸素と水蒸気のゲッタ材として機能する ので、これによって真空雰囲気の純度が上がり、そして、酸化が防止される。 ● マグネシウムの蒸発によって酸化層の一部が剥離する。マグネシウムはさらにアルミ ニウム表面の酸化アルミニウムを減らし、溶加材の流れを促進し、そして、接合部表 面の一様な濡れをより短時間で達成することに資する。 真空ろう付においては、溶加材又はアルミニウム合金中の十分な量のマグネシウムが母材金属 に供給される。炉内温度に達すると、マグネシウムは表面に拡散して、そして、10-5mbar の 低圧の故に 570℃で蒸発し始める。マグネシウムの蒸気は酸化物層を破壊して溶加材の流れ を可能にする。但し、マグネシウム粉末を単独で炉に供給する場合は、Mg を含まない溶加材 を使用する真空ろう付とすることも可能である。 真空でマグネシウムが蒸発すると短期間に大量のガスが発生する。このガスを処理しなければ ならないので、真空ポンプは所期の真空を維持できるほどに十分に容量が大きくなければなら ない。 さらに、精密な温度制御を行うこと、そして、一様な温度分布を確保することが重要である。 ろう付時の温度のばらつきは通常、+/- 3~5℃の範囲でなければならない。そのため、母材金 属の全体がほぼ同時に所定の温度に達するように溶加材の固相線温度よりも僅かに低い温度
で均熱処理を行う必要がある。さらに、ろう付温度までの加熱が始まると、溶加材が溶解し始 め、毛管現象によって接合部に濡れが生じる。ろう付温度を保持する時間はできるだけ短くな ければならない。ろう付温度への浸漬終了後、すぐに真空冷却を始めて溶加材を接合部で固化 させる。 アルミニウムの真空ろう付時の温度と一様な温度分布の制御は接合部に設定した加熱ゾーン 毎の分散制御により精密に行う必要がある。加熱エレメントの表面温度はできるだけ材料温度 と同じに維持すること。加熱エレメントと材料の温度差が大きいと、材料表面が過熱して材料 の固相線温度よりも高くなる可能性がある。 真空ろう付は設備の初期投資が大きく、さらに、ろう付合金や母材合金の種類によっては適さ ない場合もあるが、量産メーカにはかなり普及している。真空ろう付は自動化が可能で、正し く使用すればフラックスを使用しないろう付プロセスのコスト面と耐食面の両方のメリット が得られる。真空炉内ろう付の難点はチャンバと高温域の内部に酸化マグネシウムが堆積する ことである。酸化マグネシウムの堆積物は水蒸気を蓄える傾向があり、それが炉の真空化を妨 害する要因となることから除去する必要がある。酸化マグネシウムを除去する方法としては定 期的に行う機械クリーニングが一般的である。 6.1.3.2 CAB(制御雰囲気ろう付) CAB(制御雰囲気ろう付)では炉内を非酸化雰囲気とするために不活性ガスが使用される。一 番よく使用される不活性ガスは窒素であるが、アルミニウムをステンレス鋼にろう付する場合 は窒素/水素混合ガスも使用される。 各種の CAB プロセスが熱交換器の製造に広く採用されている。通常の CAB プロセスの場合、 溶加合金を溶解する前の酸化層を破壊するプロセスは機械的手段によらず、非腐食性で非吸湿 性のフッ化塩フラックス(通常はカリ氷晶石)を使用して行う。但し、フラックスを使用しな い CAB プロセスもある。これは特に、フラックスの塗布が困難な熱交換器内部のろう付に使 用される。 CAB プロセスは沢山のメリットがある。 − 開放形の炉を使用するろう付の場合と比較して、フラックスの使用量は極端に少なく て済むか、又は、不要である。 − 炉内に設置する覆いはステンレス製とすることができ、非常に長寿命である。 − コンポーネント上に残留する塩の量は非常に僅かである。 − 最新のアルミニウム CAB プロセスでは非腐食性のフラックスが使用されるため、ろう 付後の洗浄及びその他の処理作業は不要である。 a) 従来の CAB プロセス 1980 年代初頭以降、非腐食性のフラックスを使用した CAB プロセスは自動車用アルミ製熱 交換器の製造には主流となっている。開放式の炉による炉内ろう付や塩浴ろう付の場合と比較 して、CAB プロセスは費用対効果に優れ、さらに環境影響も少ない。主流の NOCOLOK®は 溶融状態でも固体の状態でもアルミニウムと反応しない非腐食性で非吸湿性のカリ氷晶石フ ラックスを使用している。この場合、ろう付後のフラックスの残留物は水溶性が非常に低いの が特徴である。 NOCOLOK®プロセスの問題点はフラックスのコストが高いこと、そして、フラックスシステ ムと一体のシステムとしなければならないことである。そのため、フラックスの供給とハンド リングの問題、及び、フラックスに起因する炉の損傷が問題となっている。フラックスについ ては、内部継手等、塗布が難しい場合もある他、炉の腐食や製品のクリーンリネスの問題もあ る。さらに、フラックスはマグネシウムに晒されるとその機能が失われることが分かっている。 溶融クラッド内の Mg 成分が 0.3%を超えると、溶解性の高い K-Mg-F 化合物が形成されて フラックスの性能が低下する。これらの化合物は溶加材の粘度を下げ、ろう付の品質低下を招 く。そのため、CAB プロセスはマグネシウムを含むアルミニウム合金のろう付には適さない。
ろう付の実際のシーケンスはコンポーネントの設計、クリーニング方法及びフラックスの塗布 方法によって異なる。自動車の熱交換器の製造工程での一番一般的なシーケンスは以下の通り。 コア組立 ↓ 固定 ↓ 脱脂 ↓ フラックスがけ ↓ 乾燥 ↓ ろう付 本シーケンスは、特に、フラックス塗布済のコンポーネントを使用できることもあって、個々 の熱交換器のコンポーネントのハンドリングが一番少なくて済む。そのため、塗布したフラッ クスが流れ落ちるリスクは最小である。 CAB ラインは水洗装置又は加熱式脱脂装置、フラックス塗布装置、乾燥用オーブン及び CAB 炉を含むフル装備のシステムとすることができる。 連続運転 CAB 炉-5 つの予熱ゾーンと 7 つのろう付ゾーンからなる (出典: Seco-Warwick) 仮組立の熱交換器がオーブンコンベヤに載せられる。 ろう付前のアルミニウム製ラジエタ (出典: Seco-Warwick)
加熱式脱脂オーブンは準備作業として熱交換器に付着している潤滑油を除去する。動作温度は 250~300℃である。軽い油が使用れている場合は、その油の蒸気は燃焼チャンバ内で酸化す る。一方、重い潤滑油が使用されている場合は、オーブンの出口に焼却装置を備える必要があ る。製品はフラックスがけの前に周囲温度にまで冷却しなければならない。 加熱式脱脂装置(オーブン) (出典: Seco-Warwick) 脱脂後、コンポーネントにフラックス懸濁液を噴霧する。余分な懸濁液をブローオフした後、 コンポーネントを連続オーブンで乾燥する。これ以外のフラックス塗布方法も使用可能である。 フラックス塗布ステーション(左)と乾燥オーブン(右) (出典: Seco-Warwick) 実際のろう付は不活性ガス炉内でのフラックスの塗布作業が終了した後におこなわれる。ろう 付炉は外気から遮断されており、そのため炉内への空気の侵入を防止しながら連続でコンポー ネントを搬出入することが可能である。水蒸気の濃度は低く抑えなければならず(露点–40℃ 以下)、そして、不活性ガス中の酸素濃度は 100ppm 未満でなければならない。ろう付する 材料の表面温度は 600 +/- 5℃が理想的である。炉からの排気ガスの処理装置(スクラバ)が 必要である。コンポーネントは炉を出た後、仕上げ処理を経て、コンベヤベルトから降ろされ る。それ以上の処理は不要である。
CAB(制御雰囲気ろう付)炉 (出典: Seco-Warwick) b) フラックスを使用しない CAB プロセス CAB プロセスにおいて、フラックスの使用に関連して起こるトラブルを避けるため、フラッ クスを使用せずに不活性ガス雰囲気中でろう付を行える多層ろう付シートの開発が行われて いる。開発は未だ途中であるが、ここでは 2 つの有望なアプローチを簡単に紹介する。 一つはアルミニウムのコア合金の片面又は両面に 0.1~5%の Mg と 0.01~0.5%の Bi を含有 する Al-Si ろう付合金を中間層として張り、さらに、その上に薄い Al-Si 合金層を重ねたろう 付シートである。ろう付時、中間層のろう付材料は温度の上昇と共に溶けるが、固体の状態が 維持されている薄いカバー層で覆われているために酸化は起こらない。さらに温度が上がると、 溶融したろう付金属に近い部分のカバー層が局部的に溶ける。これは偏析効果によってその部 分の溶融温度が下がるためである。ろう付材料はその後、膨張により薄いカバー層の上に拡散 し始める。不活性雰囲気中なので新たな酸化は起こらない。 もう一つの方法はろう付する部分をコバルト、鉄、ニッケル(推奨)などのろう付を促進する 金属で覆うことである。ニッケルは下層の Al-Si 合金と発熱反応を起こし、おそらくアルミニ ウムの酸化層を破壊し、そして、下層の金属と一緒に流れて接合を完成する。 6.1.4 アークろう付 アークろう付はガスメタルアークろう付とガスタングステンアークろう付に分類できる。ろう 付合金を溶加ワイヤとして使用するこれらのプロセスは原理的にはほぼ同じである。 ろう付 ガス放電ろう付 アークろう付 ガスメタルアーク ろう付 ガスタングステン アークろう付
MAG ろう付 MIG ろう付 TIG ろう付
(タングステン)-プラズマろう付
MIG(GMA とも言う)ろう付は 1990 年代に始まった。MIG 溶接とよく似ているが、最大の 違いは MIG ろう付の場合、母材金属が溶融してはならないため、非常に融点の低い溶加材を使 用することである。 MIG ろう付は低いアークパワーを使用するので、電源に特別な注意が必要である。一般に、パ ルスアークはショートアークの場合と較べてよりフラットなシームが得られる。シールドガス としてはアルゴンがよく使用される。さらに、生産性及びその他の物性値の改善のために、そ の他のガスを少量添加することが可能である。 MIG ろう付は比較的低熱入力のため、特に自動車工業での亜鉛塗装板の溶接に適している。亜 鉛層は低熱入力のために損傷することがなく、熱による歪も生じない。MIG ろう付は自動車の 修理にも一般に使用されている。 MIG ろう付図解 (出典: MIG WELD GmbH) アルミニウム材料の場合、MIG ろう付は現時点では工業用としては採用されていない。但し、 BIAS(Bremer Institut für angewandte Strahltechnik)は新開発の溶加ワイヤを使用し た MIG ろう付について、実験レベルで良好な結果を収めている。溶加材は溶融温度が低く、ア ルミニウムに対する濡れ性がよく、機械的物性値に優れ、そして、良好な耐食性を示すものを 使用しなければならない。溶加ワイヤ(AlZn13Si10Cu4 と AlSi10Cu8Mg2Sn1)は溶射 成形および後の成形プロセス(押出成形とロータリスエージング)によって作られた。これら の溶加ワイヤはアルミニウムのレーザろう付にも有効であった。 使用機器と手順を適宜調整することにより、TIG(GTA とも言う)とプラズマ法はろう付にも 使用できる。特にプラズマろう付は MIG ろう付と比較して幾つかの点で優っている(スパッタ が少ない、シームがきれい、亜鉛の蒸発が少ない)。しかし、これらの技術は現時点では鋼の 接合用にとどまっており、アルミニウムへの適用は未だない。 6.1.5 レーザビームろう付 レーザビームろう付は低温のろう付ワイヤをレーザビームで溶かして接合する技術である。ろ う付ワイヤはワイヤ供給装置によってシーム位置に供給される。溶融ワイヤ材料はシームに流 れ込んでろう付継手を形成する。ろう付ワイヤを使用する代わりにアルミシートに適当な層を クラッドした材料を使用することも可能である。Anticorodal®-200RW(Novelis FusionTM
alloy 8840)等の多層アルミシートも費用対効果の高い手段である。 1.被接合品 2.ろう付シーム 3.ワイヤ供給装置 4.ワイヤスプール 5.ガスノズル 6.コンタクトチップ 7.シールドガス 8.アーク
レーザビームろう付図解 レーザビームろう付法は自動車産業においては、例えば、亜鉛めっきされたコンポーネントや 車体部品の接合に使用されている。比較的低温のプロセスであり、母材金属は溶解せず、その ため、継手に隣接する亜鉛層は損傷せずにそのまま残る。継手の種類としてはフランジ突合せ 継手や隅肉継手に適用できる。特徴は数 m/分という高速での接合が可能なこと、そして、熱 入力が小さいことである。そのため、接合部の歪は小さい。一般に、レーザろう付法で得られ る継手は非常に滑らかで、そのため、車体の可視部分(“クラス A 継手”)であっても仕上げ 加工は不要である。例えば、レーザろう付法は車体の屋根とサイドパネルを取り付けるための ディッチジョイント(溝継手)に使用されている。レーザ溶接やスポット溶接と比較して、レ ーザろう付法は継手の外観を改善できるので、ディッチ部分のモールディングは不要である。 レーザろう付用の Nd:YAG レーザは既に実用化されている。最近、ダイオードレーザが増え ている。代表的なレーザビームろう付法の要目はレーザパワー2~4kW、スポットサイズ 1.5 ~3mm、照射距離 150~250mm である。これらの仕様のレーザビームろう付法には固体レ ーザと ダイオードレーザのいずれも対応可能である。 レーザろう付法はアークろう付法よりも高速で行うことができ、ろう付光学系とロボットの組 合せにより容易に自動化することができる。プロセス速度をさらに上げた場合は、溶加ワイヤ の電流を上げることによってレーザホットワイヤろう付法を実現することができる。熱の入力 場所を精密に制御することによって熱入力量を減らすことができ、材料の歪も抑えることがで きる。有力なオプションとして、フラックスの成分を変更することによってアルミニウムの吸 収特性を改善することができる。フラックスの成分は接合要件に応じて調整することができる。 実際、レーザろう付法はアルミニウムと異種金属、特にアルミニウムと鋼材料の接合に使用さ れている。アルミニウムと亜鉛メッキ鋼のレーザろう付は費用対効果の高い、信頼性の高い接 合法であることが分かっている(セクション 11.2.2.1 参照)。 6.1.6 抵抗ろう付 抵抗ろう付では、接合部が電気回路に組み込まれ、電気抵抗によって局部的に加熱されて、そ の結果、溶加材が溶けて接合が起こる。抵抗ろう付法は高速での局部加熱が必要な用途、及び、 電気接点の接触を確保するための圧力を電極が発生できる場合に適している。材料の寸法と抵 抗に応じて被接合品又は電極、又は、その両方の内部に熱が発生する。 集束光学系 レーザビーム ガスノズル ワイヤ供給システム ろう付方向 シールドガス
電気抵抗加熱方法には下記の 2 種類がある。 - 伝導率の高い材料をろう付する場合、低伝導性(黒鉛等)の電極内に発生する熱は 伝導によって母材金属から継手に伝達される。 - 母材金属が低伝導性の場合は、高伝導性の電極を使用して電極と被接合品の界面を 加熱する。 一般に使用されている電極と被接合品の配置構成は下記の 2 種類である。 抵抗ろう付のコンセプト (出典: Johnson Matthey) 直接加熱は電極を加熱する場合と界面を加熱する場合の両方に適用できる。一方、間接加熱は 電極を加熱する場合にのみ適用可能である。 抵抗ろう付法は小形の温度に弱い電子部品や電気機械コンポーネント等、小形コンポーネント の接合に最適である。本方法はろう付合金のみならず、多くの低温はんだ合金との相性もよい。 本方法は設備構成や生産要件に応じて手動モードと、そして、様々なレベルの自動モードでの 使用が可能である。 6.1.7 誘導ろう付 誘導ろう付は、複数の材料を、母材金属よりも融点が低い溶加材を使った誘導加熱によって加 熱して接合する技術である。通常、鉄材料は誘導コイルからの交流電流によって発生する電磁 場内で急速に加熱される。 そのため、アルミニウムの場合は、誘導ろう付法はアルミニウムを鋼等の他の材料に接合する 場合のみ使用される。
6.2 アルミニウムのろう付法の一般原理
特に自動車の熱交換器等の製造に重要な技術であることから、CAB 炉内ろう付プロセスにつ いては下記の点に留意しなければならない。但し、これらの留意点は他のろう付方法(真空炉、 ディップ、トーチ等)にもそのまま当てはまるものである。 電極 母材金属 ろう付合金 電極 小形コンポーネント ろう付合金 大形コンポーネント 電極 直接加熱 間接加熱6.2.1 ろう付用のアルミニウム合金 a) 適用可能な合金 殆どの熱処理不可のアルミニウム合金と、そして、多くの熱処理可能なアルミニウム合金がろ う付可能である。アルミニウムのろう付温度のレンジが 580 – 620℃であることを考慮すれ ば、合金元素の最大許容含有量は Cu - 1.0%、Mg - 2.0%、Mn - 3.0%、Si - 2.0%、Zn - 6.0%である。熱処理不可の合金の内でろう付の頻度が最も高いのは 1xxx、3xxx 及び低マグ ネシウム(< 2.5% Mg)5xxx 合金グループに含まれている合金である。熱処理可能な合金の 内でろう付の頻度が最も高いのは EN AW- 6061、6063、6101、6151、6951、7004 及び 7005 である。 低融点の合金、つまり、ろう付温度を溶加材の融点よりも低くしなければならないような合金 はろう付には適さない。例えば、Al-Cu や Al-Zn-Mg-Cu 系等の高強度アルミニウム合金(EN AW-2011、2014、2017、2024 及び 7075)である。 上記の他、マグネシウムの含有量が 2.5%を超える 5xxx シリーズのアルミニウム合金もフラ ックスろう付プロセスへの使用を避けるべきである。これは、これらの合金の場合、母材金属 の濡れ性が悪く、さらに、低融点のために溶込みと拡散が過大になるためである。高強度 EN AW-6xxx 合金についても同様のことが言える。ろう付プロセスにおいて、マグネシウムが表 面に拡散して酸化物と反応する。それによってできる酸化物(MgO 及び MgO:Al2O3(尖晶石 s))は溶融フラックス中への溶解性が低い。さらに、Mg と MgO はフラックス成形化合物と 反応して、その結果、フラックスの効果が著しく低下する。 アルミニウム鋳造合金もろう付が可能である(母材合金の固相線温度が十分に高い場合)。但 し、表面の仕上げが悪い場合、又は、金属が有孔性の場合は、ろう付が難しい場合がある。一 番難しいのはダイカストである。これは、ダイカストの場合、溶加材の濡れ性が悪いためであ る。さらに、閉じ込められたガスやその他の汚染物がろう付工程中のブリスタの原因となる。 熱交換器の CAB(制御雰囲気ろう付)の場合、コアには一般に EN AW-3003 合金のバリア ントが使用される。但し、特別な場合には EN AW-1070 合金も使用される。真空ろう付の 場合、Mg の含有率が高い EN AW-3005 が一般に使用される。但し、実用的には、アルミニ ウムろう付材料はその用途と、そして、ろう付プロセスの仕様に応じて個別に開発される。コ ア材料は様々な種類のものが市販されている。 従来より使用されている Al-Mn 合金は粒界腐食を起こしやすい。粒界腐食はろう付中、クラ ッド合金中のケイ素が粒界沿いに拡散することによって加速的に進行していく。この対策とし て、より耐食性に優れた材料("長寿命合金")の開発が進んだ。開発されたのはろう付後に特 異な、長い結晶粒組織を呈する EN AW-3xxx 合金の改良形である。さらに、ろう付中、クラ ッド合金中のケイ素が拡散し、それによって高濃度の AlMnSi 粒子がクラッドとコア合金間の 界面上に析出する。この高濃度の析出物は自身を犠牲にしてコア合金を保護し、腐食を析出物 の層内にとどめ、粒界腐食を予防する。“長寿命”ろう付合金は現在、熱交換器の様々なコン ポーネントとして広く使用されている。 ろう付後に高い強度が要求される場合は、熱処理可能な EN AW-6060、6063 又は 6951 合金もコア材料として使用可能である。ろう付中、Mg2Si 粒子が溶解し、そして、元素は急冷 により固溶体の形に保持される。その後、室温又はそれよりも僅かに高い温度で形成される小 形粒子の析出によって材料強度が増す。但し、CAB では、AlMgSi 合金は Mg 成分が災いして 使用が制限される。 溶体化処理がろう付温度で起こる材料である EN AW-7020 熱交換器用コア合金(AMAG TopClad® UHS 7020)を使用すれば、さらに高い接合強度が得られる。但し、この場合は、 拡散防止用のバリア層を追加しなければならない。
b) 組立プロセス 熱交換器用のアルミニウムろう付材料は熱交換器の強度と耐久性を担うコア合金と、そして、 溶加材のクラッド層からなる複雑な多層化合物である。市販されているのは 3 層又は 5 層の 化合物であり、後者の場合はコアと溶加材の層の間に拡散防止層を有している。さらに、水と 接する側の面に防食層を追加することも可能である。コア部とクラッド層の合金の種類はろう 付プロセスの種類による他、熱交換器の設計と要求機能に応じて選ばなければならない。 現在、工業用の基本的クラッディング技術としてはロールボンディングとキャストクラッディ ングの 2 種類がある。ロールボンディングは固体溶接であり、同種又は異種のアルミニウム合 金どうしの接合に使用される。クラッド層をコアスラブに局部的に溶接し、そして、その組立 品を熱間圧延することによって平面的冶金学的結合が得られる。キャストクラッディングは複 数の溶融金属ストリームから 1 個の多層圧延インゴットを鋳造する改良形 DC 鋳造法をベース としている(Novelis Fusion™法等)。 ろう付時、クラッドろう付合金だけが溶けて、コア合金は固体のままである。熱交換器の設計 と使用材料はろう付後の機械強度と耐食性の面から最適なろう付が可能なように調整しなけ ればならない。但し、ろう付プロセスにおいて、コア合金と溶加材合金の元素が拡散して接合 品の物性値が変化する可能性がある。上記の通り、拡散によってクラッド/コアの界面位置に 犠牲層が形成され、その結果、組立品の耐食性が向上する。但し、マイナスの影響もある。溶 融した溶加材のケイ素が結晶粒界沿いに拡散してコア金属中に移動することがある。その結果、 ケイ素の濃度が上がって影響部の融点が下がり、そして、コア金属が局部的に溶解する。 コア合金の溶解は最小限に抑えなければならない。これは、コアが薄くなると製品の強度と耐 食性が低下するからである。さらに、コア合金に孔ができることもある。コア溶解を助長する 要因は以下の通り。 − クラッド中のケイ素含有量が多い。 − ろう付時間が推奨時間を超えている。 − ろう付ピーク温度が異常に高い。 − クラッド層が厚すぎる。 − ろう付金属の溶融池ができる設計となっている。 コアの異常な溶解を引きおこす最大の要因はプロセス条件の不備である。ろう付温度が許容ピ ーク値を超えること、及び、ろう付温度の保持時間が長すぎることが最大の原因である。 溶融した溶加材からのケイ素の拡散によるコア合金の局部的溶解 コア合金の厚さ減少 粒内溶解
6.2.2 ろう付用溶加材 アルミニウムのろう付用の市販の溶加材は全て、共晶点が 12.6 wt% Si の Al-Si 共晶材料で ある。Al-Si 合金は電解腐食のリスクを最小限に抑えることができる、アルミニウムのろう付 に使用する材料である。 Al-Si 溶加材の固相線温度又は溶解開始温度は全て 577℃である。但し、非共晶成分について は、溶解温度はある範囲内にばらつく。溶加材は固相線温度と液相線温度の間の領域で部分的 に溶解し、固体と液体が共存する状態となる。溶加材が流れ出す時には 60%以上が溶けてい なければならない。そのため、溶加金属の種類別に最低(しきい)温度が決まっている。 工業用途には様々な種類の溶加材(金属)が使用されている。代表的な市販の溶加材は Si の含 有率が 6.8%~13%である。 • EN AW-4343 (6.8~8.2% Si) 本合金(融点: 577~605℃)は Si 含有量が最低で、そのため、凝固温度範囲が最大 である。本合金は溶加材の中で流動性が最低で、そして、コア合金を一番溶解しにく い溶加材である。 • EN AW-4045 (9.0~11.0% Si) 本合金(融点: 577~590℃)は一番ポピュラーな溶加材である。物性値は EN AW-4343 と EN AW-4047 の中間である。 • EN AW-4047 (11.0~13.0% Si) 本合金(融点: 577~580℃)は融点レンジが非常に狭く(共晶成分)、そのために 流動性が最高である。EN AW-4047 は溶解後、急激に流れだすという、コア合金の 溶解に一番強力な溶加材である。そのため、本合金はクラッディング合金としては使 用されず、トーチろう付又は誘導ろう付用の溶加材(ワイヤ)の材料として適してい る。
CAB 用の代表的な溶加材は EN AW-4045 と EN AW-4343 である。真空ろう付の場合、 最大で 0.5% Mg までの範囲の修正を加えた材料(EN AW-4046 や EN AW-4747)が使 用される。 溶加材の一般な使用方法はアルミニウムのコアに低融点の溶加材をクラッドしたシート材を 使用する方法である。クラッド層はコアの片面と両面のいずれにも張り付けることができる。 クラッド層の厚さは通常、コアを合わせた合計厚さの 5%~10%である。ろう付工程では、溶 加材が溶けて流れ、そして、冷却によりコンポーネント間の金属結合が得られる。但し、溶加 材は粉末、ペースト、ワイヤ及び薄片シムストックのいずれの形態でも供給でき、さらに、差 しろう付とする場合と、接合部に事前に供給しておく場合のいずれも可能である。これらの形 態の溶加材の場合、濡れと流れの現象はシート材の場合と全く異なる可能性がある。以下に、 シート材の場合について説明する。 溶加材とクラッド合金に Ti と Cu を添加すると、ろう付特性はそのまま、継手の総合性能を向 上することができる。Ti はろう付合金の耐食性を向上する。一方、Cu(及び Mn)は電食を 予防し、さらに継手強度を増す。さらに、Zn、Sn、In 等の元素を特定の範囲に限定して添加 して、それを犠牲アノードとすることができる。 Zn 又は Zn 合金を添加した場所を中心とする領域、及び、同金属の添加経路の周辺の領域は 耐食性が改善される。フラックスを使用しない不活性ガス雰囲気中でのろう付(520℃)用と して Cu と Ni(及び Zn)を含む合金が開発されている。 最近、溶加材の流動性とフローパターンの制御に関する研究開発が行われた。微量の合金元素 (Na や Li)を加えることで、ろう付特性を改善することができる。これらの効果は表面張力 が減少することと関係があるようである。 ろう付技術の一つとして、溶加材を含有するコーティング層を塗布したアルミシート又は押出 成形材料を使用する方法が幾つか提案されている(“クラッドレスろう付”)。その内の一つ はケイ素の粉末を含有するフラックス混合物を使用する NOCOLOK® Sil フラックスプロセス である。ろう付温度では、ケイ素がアルミニウムと反応して共晶反応を起こして溶ける。Sil フラックスはバインダと一緒に押出成形管等のコンポーネントに塗布することができる。この
場合、溶加材は管から供給でき、クラッド張シートは不要である。コンポジットデポジット (CD)法では、継手の成形の溶加材に、カリ氷昌石フラックスと Al-Si 合金の化合物である コンポジットパウダー由来のものが使用される。CD 粉末は組立・ろう付前に熱交換器のコン ポーネントの表面に選択的に堆積する。 6.2.3 継手の設計と組立 効果的な毛管現象を確保するため、母材金属間の隙間の大きさは最適な値としなければならな い。つまり、殆どの場合、コンポーネントと仮組立品のいずれについても幾何学的誤差を小さ く抑えなければならないということである。 ろう付継手は基本的に突合せ継手とラップ継手の 2 種類である。上記以外の継手は全て、これ らの基本継手の変形バージョンである。ラップ継手はろう付により面積と厚さが増すことで継 手強度を増すことができる。ろう付継手は施工が簡単で、そして、ろう付前に材料を固定する 作業が最小で済む、あるいは、不要である。突合せ継手はラップ継手ほど強くない。設計上、 ろう付による突合せ継手は母材金属よりも強度が低いということを前提としなければならな い。突合せ継手の一種である"スカーフ"継手(両方の部材にテーパを付けて重ね継ぐ)は強度 が増すが、準備と固定の作業が煩雑である。突合せ継手とラップ継手の両方の長所を組み合わ せた“突合せラップ”継手がある。 突合せ継手を行う場合、先ず両方の部材端どうしを突き合わせる。次に、ろう付溶加材(BFM) をセットする。この場合、部材をセットする前に接合部となる場所に事前にセットするか、又 は、部材を並べてから接合部の上に載せる。ろう付工程が始まると、BFM が溶けて毛管現象 によって継手部に流れ込む。 突合せ継手は通常、強度が重要ではない部分や、ラップ継手が困難な場所(厚さの制約がある 等)に使用する。突合せ継手の弱点はろう付面積が 2 つの接合部材の内の薄い方の部材の断面 積に限定されるために大きくできないことである。そのため、接合面は真っ直ぐ、平行に並べ ることが非常に重要である。端部が丸まっていると有効ろう付面積が極端に小さくなる。 ろう付接合設計 ラップ継手では、接合部材を単純に重ねて置き、その間に毛管現象が期待できる隙間を確保す る。ろう付ラップ継手の強度はオーバーラップ部分の長さと、そして、ろう付継手自体の厚さ によって決まる。オーバーラップ長さは接合部材のいずれか薄い方の厚さの約 3 倍とすればよ い。オーバーラップ長さをこれ以上大きくしても継手の強度は大きくならない。オーバーラッ プ長さが短すぎると母材金属部分ではなくてろう付継手部分が破損する可能性がある。継手強 度を確保するためには、部材の継手接合面が近接していて、平行で、そして、ずれがないこと。 アルミニウム合金をろう付する時は、部材のアラインメントが重要であり、特に、隙間の大き さが重要である。接合部材間には溶融フラックスを流し込むための隙間が必要である。この隙 間はさらに酸化物の除去と溶解、及び、自由で一様な溶加材の流入を可能するものでなければ ならない。隙間の大きさによって毛管現象による引込力が決まる。隙間が大きいと毛管現象が 良い例 突合せ継手 ラップ継手 BF M BF M 矩形コーナ 丸味を付け た、又は、面 取りしたコー ナ部 ギャップが平行でないと、継手内部 の BFM の流れが不完全となる。 悪い例
弱くなり、一方、隙間が小さすぎると溶加材の流れが制限されて不連続な継手が形成される危 険がある。トーチろう付によりオーバーラップが 6mm 以上のラップ継手を作る場合、隙間は 目安として 0.25mm 以上とするのがよい。オーバーラップがこれよりも短い場合は、隙間は 0.05~0.2mm とするのがよい。ディップろう付及び真空ろう付の場合は、隙間は 0.05~ 0.1mm とするのが普通である。CAB(制御雰囲気ろう付)を非クラッドコンポーネントに適 用する場合、隙間は 0.10mm~0.15mm とするのがよい。非クラッドコンポーネントの場合、 摩擦フィットは避けること。クラッドコンポーネントの場合、隙間はクラッド層の厚さ分の隙 間となる。そこで、隙間は小さい方がよい(< 0.05 mm)。 6.2.4 ろう付前のクリーニング 大半のろう付製品の場合、組立ての後、最初にクリーニングを行ってからフラックスの塗布作 業を行う。但し、内面にフラックスを塗布しなければならない場合は、フラックスを塗布する 方法とタイミングを別途検討しなければならない。 ろう付では毛管現象を利用して溶加材を接合部材間に流し込む。毛管現象が正常に働くために は金属面が清浄でなければならない。クリーニングの目的は工作油や潤滑剤やその他の汚染物 (埃、ゴミ、水分等)を除去することである。クリーニングにより、フラックスを留めながら、 ろう付に適した表面を作ることができなければならない。クリーニングの効果次第でろう付の 品質、製品外観及び防食性能が大きく左右される。 油とグリースの除去方法としては 2 種類の方法がある。 a) 水洗 水又は水溶液によるクリーニングは有効であるが、洗浄液が付着して残るのが難点である。ク リーニング液としては通常、表面活性剤、洗浄剤、及び、pH 値を上げるための炭酸塩等のア ルカリ成分の混合物が使用される。クリーニング溶液は 50℃~80℃の温度で洗浄効果が最大 となる。クリーニングは高温のクリーニング液への浸漬又は噴霧、続いて、温水と冷水による リンスを組み合せて行うのが普通である。 弱アルカリ性のクリーニング液はアルミニウムの表面を僅かにエッチングする効果があり、こ れによってアルミニウム表面の濡れ性が向上する。そのため、フラックスは湿潤剤を使用しな くても部材表面に一様に付着することができる。 b) 加熱脱脂 加熱脱脂は部材の温度を上げて表面に付着している油脂を蒸発させることによる。但し、加熱 脱脂が有効なのは蒸発性のオイルと消えるオイルだけである。これらの潤滑油は 150~ 250 ℃の温度で蒸発する。加熱脱脂できない油には使用しないこと。これらの潤滑油は熱分 解性の物質や炭化残渣を生じるこがある。これらの物質が多くなるとろう付に支障が出る、製 品(継手)の外観が低下する、腐食が進行するなどの弊害がでる。 但し、加熱脱脂はアルミニウム材料の表面の濡れ性を奪うため、フラックスには表面活性剤(湿 潤剤)を加えて水の表面張力を下げ、これによってフラックスが一様に分布できるようにしな ければならない。 6.2.5 部材の前組立 個々の部品のクリーニングと組立が終わったら、それらをろう付装置にセット(固定)する。 アルミニウム合金の降伏強度は温度の上昇とともに急激に低下するので、そのため、コンポー ネントは支持しなければならない場合が多い。支持が不適切、あるいは、支持がない場合は、 温度をろう付温度まで上げた時にコンポーネントが自重で歪む恐れがある。ろう付装置(固定 具)は部材の隙間とアラインメント、溶融金属の流路のアラインメント、及び、組立品の総合 寸法精度を確保するため、部材どうしを一緒に保持・固定し、そして、ろう付工程中における 部材のアラインメントを保持できなければならない。固定具は入口/出口チューブ等のアタッ チメントの支持にも使用できる。 固定具に使用する材料は膨張係数の違いを考慮して慎重に選ぶこと。低熱容量の固定具を使用 した場合は、ろう付のサイクルタイムが短縮する。さらに、一様な加熱を確保するためには固 定具への熱移動を最小に抑えなければならない。固定具は被接合部材への依存性が非常に高く、
さらに、製造プロセスと一体の部分である。 6.2.6 ろう付フラックス 一番重要な機能は酸化層への貫通と除去である。アルミニウムの表面には 2~10nm の薄い、 高密度の安定した酸化層ができている。この表面の酸化層は溶加材による濡れ(ろう付される アルミニウム部への付着)を妨げる要因である。そこで、この酸化層はろう付前に除去又は破 壊しなければならない。酸素が存在していると、酸化層は除去してもすぐに再生する。そのた め、できるだけ再生が起こらないようにしなければならない。 アルミニウムのろう付の場合、フラックスを使用しない不活性ガスろう付と真空ろう付の場合 を除き、全て、フラックスを使用したプロセスとしなければならない。溶融したフラックスは 金属表面の一部の酸化層を溶解・除去する。金属表面がクリーニングされ、溶加材による接合 が理想的に行える状態となる。フラックスは被接合面をコーティングして再酸化を予防する効 果も発揮する。さらに、表面張力を下げることによって、アルミニウム母材金属の濡れ性を改 善して溶加材を付着しやすくする。 フラックスの成分はろう付方法に合ったものを選ばなければならない。フラックスは融点が溶 加材のそれよりも 20~50℃低いものを使用すること。フラックスは最高ろう付温度から 20 ~50℃高い温度までの範囲で安定でなければならない。フラックスはアルミニウム材料の表 面での反応とガスの発生量が最少でなければならず、非腐食性でなければならず、そして、ろ う付後の除去が容易でなければならない。アルミニウム材料のろう付に使用するフラックスは 通常、アルカリ、アルカリ土類金属塩化物及びフッ化物の様々な成分比の混合物である。フッ 化物は反応性が一番強い物質であるが、同時にフラックスの融点を上げる効果がある。そこで Sb、Cd、Cr、Co、Cu、Pb、Mn、Sn、Zn 等の塩化物を加えて融点と活性を調整ことが多 い。但し、塩化物を含むフラックスは吸湿性で腐食性の皮膜を部材金属上に残すので、ろう付 後はそれを完全に除去しなければならない。ろう付後に行う最初のクリーニング作業は接合品 を沸騰水に浸けることである。塩化物を含んだフラックスは水に溶けやすく、そのため、フラ ックスは水に浸けるだけで殆ど除去される。水洗後は薬品によるクリーニングを行う。最後に 冷水又は温水でリンスする。 現在、塩化物を含まない K-Al-F を主成分とするフッ素系のフラックスが好まれて使用されて いる。塩化物を含まないフラックスの代表的なものは Nocolok®である。フッ素系のフラック スの場合、電離環境に晒されていなければ、そのフラックスの残留物は腐食性を示さず、従っ て、ろう付後の除去作業は不要である。一方、フッ素系のフラックスの場合、ろう付行程中は 不活性ガス(窒息)による保護が必要である。塩化物を含まないフッ素系のフラックスの場合、 ろう付後の除去作業は不要である。実際、熱交換器の表面にフラックスが残っていると耐食性 が増すことが一般に知られている。 6.2.7 フラックス塗布 ろう付を成功させるために重要なことは、継手部を含め、部材の全面にフラックスを一様に分 溶加材 粘度 毛管現象 濡れ性 被接合アルミ部材 酸化層の除去
布させることである。フラックスはペースト、液体、粉末、溶加材の粉末と混ぜて作ったペー スト状のもの等、様々なものがある。さらに、フラックスをコーティングしたろう付棒や、コ アがフラックスでできたろう付棒等も使用可能である。 継手部及びその周辺部に刷毛塗りによってペーストの薄膜を作る方法も有効である。この他、 片方又は両方の部品をフラックス容器に入れて(浸漬によって)塗布することも可能である。 これはペーストの薄い皮膜を作るにはベストの方法である。 大規模な量産に一般に使用されているフラックス塗布技術は下記の 2 つである。 a) 液体フラックス塗布 CAB(制御雰囲気ろう付)の場合、フラックスの塗布方法としては懸濁液の噴霧による塗布方 法が最も一般的である。アルミニウムの表面全体にフラックスのスラリー(懸濁液)をコーテ ィングして一様なフラックス層を形成する。余分に付着したフラックスは大量の空気を吹き付 けて除去する。除去したフラックスは回収して再使用する。 液体フラックス塗布(概要) (出典: Solvay) 固体成分濃度が 10~35%のフラックスのスラリーを常時撹拌しながら、タンクからフラック ス塗布ブースにポンプでくみ上げる。比較的平らなヘッダーはスラリー状のフラックスの保持 量が少ない。そこで、殆どのフラックス塗布ステーションは 2 種類の濃度のスラリーを使用で きるようになっている。これは、濃度が 10~15%高いスラリーを使用することによってヘッ ダーの付着量を維持するのが狙いである。 ユニット全体で毛管現象があるため、これによって一様なフラックスの塗布状態が得られない 可能性がある。フラックスのスラリーはフィンやチューブの継手部やフィンのルーバ部等に溜 まる傾向がある。スラリーはさらに、衝突捕集できない(ブローオフ用の空気が直接当たらな い)これらの部分の底部に溜まる。これらの底部及び側部に溜まった余分なフラックス(スラ リー)は別のオーバーヘッドブローオフシステム、又は、液滴用のエアナイフを使用して除去 することができる。 実用的には、フラックスの推奨塗布量は 5g/m2である。フラックスはろう付面の全体に一様 に分布するように塗布する。フラックスが少なすぎると溶加材の流れが悪くなり、継手の品質 が低下し、不良品率が上がり、そして、安定したろう付ができなくなる。フラックスが多すぎ る場合は、それによるろう付への影響はない。但し、余分なフラックスは無駄になり、その分 だけコストアップとなる。さらに、システムの汚染と最終製品の質の低下にもつながる。 ろう付炉に入れる前に、部材はクリーニング液やフラックス(スラリー)に含まれていた水を 完全の乾かしておくこと。組立コンポーネントはろう付オーブンに入れる前にフラックスの水 分を乾かしておかなければならない。但し、クラッドの流動性に影響を及ぼす高温酸化物の生 成を防止するため、乾燥時の部材の表面温度は 250℃を超えないこと。高温(約 300 ℃)で は、酸化層の厚さが温度の上昇と共に急激に厚くなる。これは、特に、水分が存在する場合に 顕著である。 b) 静電フラックス塗布 静電フラックス塗布(ドライフラックス塗布とも言う)は新たな塗布方法として普及し始めて リザーバタンク ブローオフ スプレー
いる。この場合、静電気を荷電されたフラックスが接地されている部材に塗布される。静電気 の吸着力を利用してフラックスを部材に塗布する方法である。一般的な静電フラックス塗布シ ステムは粉末供給装置、静電スプレーガン、ガン制御装置、被接合部材(接地)及びフラック ス回収装置からなる。 従来の湿式のフラックス塗布方法に対してメリットがあることは明らかである。先ず、フラッ クスのスラリーを作る必要がなく、そして、廃水が発生しない。さらに、炉に脱水設備が不要 である。但し、フラックスの密着性は湿式の場合よりも劣る。フラックスはコンポーネントの 先端部に溜まる傾向があり、そして、隠れた部分(コーナ部や管内等)へのコーティングが難 しい。 ドライフラックス塗布法は加熱脱脂と組み合わせて行う場合に一番有力な塗布方法である。こ の場合、水の使用量がゼロになるか、又は、極端に減らすことができる。 フラックスの塗布方法としては、この他に下記の方法も有望である。 - フラックスペイント フラックスペイント(フラックス+キャリア+バインダ)は熱交換器の一部のコンポーネントに 適用する。内部コンポーネントにフラックスを塗布する場合等に特に有効である。この他、熱 交換器の全てのコンポーネントにフラックスの塗布するためのシステムや、一部のコンポーネ ントだけに適用し、フィン等は従来の塗布方法による場合の塗布システム等、様々なものが実 用化されている。 バインダを用いるフラックス塗布方法は特定の範囲の塗布量を正確に制御できる方法である。 本方法はさらに組立作業中のフラックスのたれ量を減らすことができる。バインダはろう付性 能を害することなく、そして、表面に汚染物を残すことなく、蒸発できなければならない。 - フラックス塗布済ろう付シート フラックス塗布済ろう付シートは非常に有望なオプションである。これはフラックスの塗布工 程がなくなるため、熱交換器の製造方法に大きな変化をもたらす可能性のあるフラックスシス テムであると言える。最大の課題はコンポーネントの成形工程を通じてのフラックスの金属面 への密着性である。フラックスは一様に分布していることと、そして、密着強度がともに重要 である。 6.2.8 ろう付サイクル ろう付プロセスのメインステップはろう付サイクルである。温度と時間のサイクルは最終製品 の品質に直接の影響があることから、慎重に決めなければならない。さらに、温度プロファイ ル、温度の一様性、大気条件等、炉の運転条件も同じく重要である。 ろう付時間-温度サイクル(概要) 重要なことは部材の全体で一様なろう付の温度分布を得ることである。ろう付の一様な温度分 布を得るには低速で加熱することが重要である。一方で、低速で加熱した場合は拡散が進み、 温度 時間 制御対象外の冷却時間 冷却時間 加熱時間 浸漬 時間 保持時間 T trace
フラックスが乾燥する要因にもなり、フラックスの効果が減じるリスクがある。溶加材が融点 に達する時には、十分な量の溶融フラックスが存在していなければならない。一般に、加熱サ イクルは可能な限り短時間で安定した温度分布を得ることができなければならない。工業レベ ルでは、500℃までの範囲では、45℃/分の加熱速度は一般的である。 加熱中、組立品内部の温度は場所によってかなりばらつきが大きいことが考えられる。但し、 最高ろう付温度に近づくにつれて、温度分布は一様になっていかなければならないのであるが、 加熱速度が早いほどそれが難しくなる。ろう付温度に達した時点では、温度のばらつきは± 5℃の範囲に収まっていることが望ましい。製品内部の質量分布が一様でないような大型の部 品の場合は、一様温度を得るのが特に難しい。 ろう付後の製品の温度については、最高ろう付温度を 3~5 分以上保持しないこと。これは、 溶加材が溶けるとすぐに溶加材の侵食が始まるので、それを防止するためである。溶加材が溶 けている時間が長いほど、侵食の程度が大きくなる。コア金属が溶解するもう一つの原因はろ う付のピーク温度が高すぎることである。そこで、ろう付後の製品も積極的に冷却しなければ ならない。 アルミニウムラジエタのろう付の良品と不良品
6.3 はんだ付
はんだ付は融点が 450℃以下の溶加材を使用して行うろう付である。冷却後、2 つの母材金 属間の冶金学的接合が起こる。継手の機械的特性は比較的良く、そのため、はんだ付は構造部 品の修理等に用いられる。 アルミニウムのはんだ付は難しくないが、その工程は精密制御を要する部分が多い。アルミニ ウムの酸化物の層は強くて堅いため、通常の方法によるはんだ付では殆ど役に立たない。さら に、アルミニウムとはんだ金属の電気化学ポテンシャルに大きな差があることから電解腐食が 起こりやすく、そのため、合金元素の選択に注意を払わなければならない。使用しているアル ミニウム合金の種類、ゲージ、あるいは、合金添加剤の種類によっては、はんだ付の結果に大 きな差がでる。はんだ付工程の加熱手順は慎重に、そして、個々に最適な手順を決めなければ ならない。 良品 低質品 欠陥品はんだ付によるアルミニウム管の穴の修理 6.3.1 はんだ合金 アルミニウムコンポーネントのはんだ付は軟質はんだ(低融点の錫ベースの合金)と硬質はん だ(高融点の亜鉛ベースの合金)のいずれを使用しても行える。但し、フラックスは適用する はんだ付温度に合ったものを使用しなければならない。過去においては鉛やカドミウムのはん だ合金も使用されていた。しかし、鉛は環境上の理由により世界的にその使用が禁止され、殆 どの業界は既に鉛フリーのはんだ合金に切り替えている。カドミウム入りのはんだ合金は作業 者の健康上の理由により、その使用が禁止されている。これにより、これまで使用してきた高 延性/高温軟質はんだ合金が一部使用できなくなった。さらに、錫を含むはんだ金属はガルバ ニー電位があるゆえに電気化学的腐食の原因となる可能性がある。 共融(晶)ははんだ付の時に有利である。これは、塑性相がないからであり、融点が最低だか らである。融点が最低ということははんだ付時の熱応力が最小になるということであり、そし て、塑性相がないということは、はんだが加熱した時により早く濡れ性を獲得できるというこ とであり、従って、はんだが冷却した時により早く凝固するということである。非共融(晶) 性のはんだ合金は液相線及び固相線を超えて温度が下がっていく時に、動かないように固定し ておかなければならない。塑性相の期間中に移動が起こると亀裂が発生して、質の悪い継手が できてしまう。残念ながら鉛フリーのはんだ合金は非共融(晶)性であり、そのため、品質の よい継手を作るには不利である。 アルミニウムとアルミニウム又はアルミニウムと銅のはんだ付用として、強度と耐食性に富む 継手を作るために特別に開発された錫亜鉛はんだ合金: • 91%Sn/9%Zn(KappAloy9™):融点 199℃の共融(晶)性合金 • 85%Sn/15%Zn(KappAloy15™):融点 199~260℃ 共融(晶)性はんだ合金は炉内はんだ付やその他の自動はんだ付システムに広く使用されている。 共融(晶)性はんだ合金は溶解と凝固を 199℃の均一温度で短時間で行うことができるので、接 合部材への入熱量が最小で済む。手作業によるはんだ付の場合、はんだ合金としてはフレキシビリ ティが大きい KappAloy15™が有利である。融点温度に幅があるため、冷却時、はんだ合金が完 全に凝固する前に部材を操作する余裕を持てる。その他のはんだ合金は以下の通り。 • 80%Sn/20%Zn:融点 199~288℃ • 70%Sn/30%Zn:融点 199~316℃ • 60%Sn/40%Zn:融点 199~343℃ Zn 濃度が高いと濡れ性が改善されるが、一方で、液相線温度が急激に上がる。