九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
旧法期土地区画整理事業に関する計画史的研究
池添, 昌幸
九州大学人間環境学研究科空間システム専攻
https://doi.org/10.11501/3172377
出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(人間環境学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
の
旧法期土地区画整理事業に関する計画史的研究
平成12年
池添 昌幸
目次
第1章 研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1.
1
研究目的・・1. 2 研究方法....... .... ...• . . ... .... .... .•.. . • ... . 3
1. 3 論文構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第2章 近代住宅地計画の理念と方法.
. . . .11
2.
1
序・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 2. 2 我が国の原単位重視型住宅地計画の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2.2.1 佐野利器の 「規格統一」 理念・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 2.2.2 雑誌記事からみた郊外住宅地の計画理念と提案の特徴・・・・・・・・17 2. 3 欧米の集合単位重視型住宅地計画の特徴... ,222.3.1 アンウインの住宅地計画手法... ,22
2.3.2 我が国への受容と 変容...23
2. 4
まとめ... ,26
第3章 旧法期土地区画整理の計画理論の成立過程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 3.
1
序.. . . . . • • . . . . • • . . . . • • . • . . . . . . . . . •.
•.
. . . . • . . • . . • . . . •.
. . . . . •. . . 31
3. 2 旧法期土地医画整理事業の歴史的展開...
,32
3.2.1 旧法成立以前...32
3.2.2
旧法成立以後... .333.2.3 郊外地開発型
土地区画整理事業と宅地供給... ,343. 3 土地区画整理研究における街区及び画地に対する論考・・・・・・・・・・・・・・37 3.3.1 研究雑誌における計画理論の展開...,37
3.3.2
伊部貞吉の標準画地論.. . . . . . . . . . . . . . . •.
. . . . . . •. . . ,41
3.3.3
中村納のロット割研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
3. 4 全国標準における街区標準及び画地標準の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 3.4.1 形状的特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 3.4.2 配列的 特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50 3.4.3 全国標準の初原-震災復興区画整理方針 -
. .•. .•.. ... .... ,513. 5 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 第4章 福岡県の史的位置と土地区画整理行政の組織体制・・・・・・・・・・・・・・58 4.
1 序... .58
4. 2 近代期における福岡県の市街化の状況・・・・ 4. 3 事業実績からみた福岡県の史的位置...62
4.3.1
立地的特徴...624.3.2 経年的特徴...65
4. 4 上地lえ画整理事業の推進体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・...66 4.4.1 都市計画行政の組織体制J . • • • • • • . . • • • • • • • • • • . • • • • . • • . • • • • • .66
4.4. 2 上地区阿整理行政の組織体制J .
. • • • • . • • • • . • . • • • • . . • • • • • •. . . .70
4. 5
新聞記事からみた計両の立案及び決定の主体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74
4. 6
土地区画整理技術者の計画理論形成の根拠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76 4.6.1
全国大会の討議内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・764.6.2 福岡県技術者の事業研究の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
4. 7
まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・81
第5章 事業実施過程における理想的計画像と計画実態・・・・・・・・・・・・・・・・85
5.
1 序...
• ••••• •• • ••• •••• ••• ••.• •• • •••...85
5. 2 組合標準の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88 5.2.1 街区標準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88 5.2.2 画地標準.• • • • . . . . . . . . . . . . . . • . . . . . • . . . .91 5.2.3 全国標準との比較分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94
5. 3 街区の標準化の意図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94 5.3.1 換地処分時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94 5.3.2 組合設立時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101
5. 4 画地の標準化の意図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 5.4.
1
換地処分時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 5.4.2 組合設立時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1085. 5 計画変更過程の特徴とその要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109
5.5.1 戦後の土地利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109 5.5.2 街区の計画変更と市街地形成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110 5.5.3 農地の残存による計画変更と換地設計の影響・・・・・・・・・・・・・・・112
5. 6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
17
第6章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 謝辞・・・・・・・・...124第1章 研究目的
1. 1 研究目的
1919年の都市計画法によって初めて制度化された土地区両整理事業は、
最も重要な都市計画の事業手法として広く認識されている。 上地区画整理事業は未市街地の基盤整備及び不良市街 地の再基盤整備を目的として実施され、 1997年までの土地区画整理事業の実績をみるとその施 行面積は368,989haに達し、 人口集中地区面積の25.7%を占めている1)。 このように土地区間整 理事業は我が国の市街地整備に大きな役割を果たしており、 研究的には都市計画学の対象とし て考えられてきた。 しかし、 一方で土地区画整理によって、 敷地レベルの土地区画である画地 についても整理されることから、 住宅地の計画という性格を併せもつ事業であるといえる。 従 って、 土地区画整理の計画及びその効果を評価するためには、 都市計画的視点に加えて、 街区 及び画地に対する住宅地計画的視点からの評価が重要であると考えられる。
特に、 土地区画整理事業の確立期である1919年都市計画法(以下、 旧法)期においては、 郊 外地における宅地開発を目的とした土地区画整理が中心であり、 住宅地計画としての性格が強 い事業であったといえる2 )。 この意味で旧法期土地区画整理事業は、 我が国の住宅地計画の歴
史的展開を明らかにする上できわめて重要な研究対象であると考えられる。
一方、 戦前において住宅地計画の理念の一つは規格統一(スタンダーデイゼイション)であ ったといえる3)。 すなわち、 保安衛生上過度の密集を避けるため敷地の形状及び規模は一定の 規格に統一するのが最も有効な宅地割であるという考え方である。 こうした考え方がこれまで 続けられてきた我が国の均質で画一的な住宅地計画を形成する大きな要因であったと考えられ る。 そして、 近年、 このような同形質の敷地が並ぶ均質で、画一的な宅地割りに対する見直しが 認識され、 ごく限られた先進的な住宅地計画において千鳥型宅地割や有機的街区配置といった 脱画一化による新しい住宅地計画の試みが行われるようになった。 このような計画理論の転換 に対する要求は、 イギリスにおける画一的な開発規制条例住宅地から、 田園郊外住宅地へと計 画理論、 技術的転換が行われた20世紀初頭の認識ときわめて類似している九
また、 近年、 アメリカ合衆国では新しい都市理念としてNew Urbanismが大きなムーブメン トと な っ て い る5)。 そ の具体的 な 計画論 と し て 、 TND (Traditional Neighb oorh ood Development :伝統的近隣住区開発)と呼ばれる、 新しい住宅地計画の取り組みがなされてい る。
TND
は「ヨーロツパの歴史ある都市に倣い、 アメリカの風土の中で社会経済的環境に順応して育てられた町」吋である17世紀のリゾート都市などの歴史的、
計|画的開発の理念や原則を
基礎とし、 内然環境と社会環境の共生、 持続可能なコミュニテイ等の現代的課題を融合させた 新しい計画理論である。TNDの最初の開発は1981年のフロリダのシーサイドであり、 その計
画は有機性や個性が重視された住宅地構成であると同時に、 住宅のデザインコードを設定し、住宅地全体が調和したデザインを実現している。
裁が国において新しい住宅地の計画理論を構築するためには、 市街地住宅や外部空間等の物 的環境要素の計画と街区や画地といった土地区画の計画という2つの計画論が必要であり、 か っ、 それらの計画論は両者の連携を考慮したものでなけらばならない。 このような新しい住宅 地計画の理論的構築には、 まず、 土地区画整理の計画実態を歴史的に整理するとともに、 住宅 地計画の視点から考察する必要性がある。 すなわち、 我が国の住宅地計画におけるスタンダー デイゼイションの歴史的背景と経緯を明らかにしなければならない。
以上を踏まえた上で、 本研究は、 郊外地の住宅地開発を目的とした旧法期の土地区画整理事 業を対象として、 街区、 画地の形状及び規模、 配列方法をスタンダーデイゼイション(規格統
)の視点から分析し、 その計画理論及び計画実態を明らかにすることを目的とする。
本論文では、 この円的のために2つの研究課題を設定する。 まず、 ひとつは計画理論の成、
過程の考察である。 いわゆる土地区画整理設計6 )に関する最初の論考は1924年の震災復興 地区画整理事業に遡る。 これを契機に区画整理技術が進歩し、 多くの技術者が養成された7)o
その後、 1930年代になると土地区画整理の研究はさらに盛んになり、 土地区画整理専門の学術 雑誌も創刊される。 その研究テーマは、 法的解釈や換地処分などの実務的な技術研究が中心で あったが、 街区や画地の設計に関する計画論的な論考も確認できる。 また、 1933年には内務省 通牒として「土地区画整理設計標準」が提案され、 全国的に統ーされた公的な土地区画整理設 計標準が存在していた。 このような計画論研究において基盤となっている考え方が規格統ーで あるといえ、 公的標準や雑誌の研究記事では街区と画地の形状や規模に関する提案が行われて いる。 そこで、 第一の研究課題として、 当時の学術雑誌において街区及び画地が計画論的にど のように位置づけられていたか、 また、 学術雑誌の論考や公的設計標準においてどのような街 区、 画地が理想とされたのかを明らかにする。
第二の研究課題は、 街区及び画地の計画理論が実際の土地区画整理事業においてどのように 実現されたかを明らかにすることである。 土地区画整理事業では換地という独自の手法を用い て画地の面積と位置が決定される。 この点で一般的な住宅地計画と大きく異なっており、 計画 者は、 理想とする計画に対して現実的な換地との調整が必要であった。 そこで、 計画主体がど
-2-
のような計|削的意図をもち、 またそれがどのように実際の計!叫に適応されているかをJ�体的な 事業事例の分析によって明らかにする。 この計画実態分析では組合設立時と換地設計の実施さ れた換地処分時の2つの計阿案を対象としている。
以上の分析にあたり、 本研究では地域性と行政組織の2つの随伴的な条件を考慮する。 まず、
地域性については、 当時の6大都市8 )と地点都市における事業実績の時期的な相違に注1 jし、
中央の提案する公的設計標準が福岡県の事業事例においてどのように影響しているかを明らか にする。 次に、 行政組織については、 福岡県独自の土地区阿整理行政の組織体制である駐在制 度に注目し、 計画作成の主体と計画決定のプロセスを明らかにする。 行政組織体制の構造を考 察する仁で、 旧法体制の特徴の一つである都市計阿委員会制度が重要な要件となっている。
1. 2 研究方法
まず、 本研究における「計画史的研究Jの概念について述べる。 計画史的研究とは「ある事 象に対して実行される計画行為の結果である具象及び実在について、 相互の因果関係及びその 要因を時経的に明らかにすることを目的とした研究Jとする。 すなわち、 計画史的研究では、
物理的に存在する建築物や社会的な存在である土地区画に加えて、 その計画段階において計l面 主体が考えるあるべき姿(像) として具現化された計画案についても研究対象とする。 土地区 画整理の場合、 計画設計行為のプロセスをみると3つの段階に区分することができる(図1 . 1 )。
まず第lに、 このような土地区|酉とすべきであるという計画理念が認識される。 その根拠と なる情報は学術雑誌等の研究成果や先行事例の評価である。 この段階は、 まだ、 抽象的であり、
考慮されるべき様々な要素が分散的に計両主体の思考上にある状態で、 文書による断片的な方 針という形式で表現される。 第2に、 複数の要素の関係が整理され、 具体的にイメージされた メ画整理像となる。 この段階は、 すでに個人の考えではなく、 ある集団が共有する考えであり、
また、 図化することができる。 例えば、 街区や画地の形状や規模、 配列方式を記した公的設計 標準が該当する
。
第3段階では、 計画の像を実現するた めに考慮される個別的な要件を満たし た計画案が作成される。 この段階は、 考慮する個別的要件が小さい理想的な計画の像に近い案 から複雑な要件を満たした現実に近い案へと変更されていく。 本研究の対象とする組合設立時 の計画案は前者であり、 換地処分時の計画案は後者の最終的な案である。 本研究では2つの計 画案を比較することによって街区、 画地の理想像と計画変更の要因を分離することを口指して いる。次に、本研究の具体的な分析方法について述べる。本研究の主要な分析は以下の3点である。
-3-
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事業実務(換地設計) 図1. 1 土地区画整理の計画設計プロセスと分析の視点
準 画
念
椋 区 計 浬
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「||ト||し 態な
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画の
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( 1 )裁が同における仁地区If可整理について街区及び岡地の計画理論の成立過程を捉える。
( 2 )福岡県が上地区|同整珂事業の先進地域であることを実証し、 これを可能とした要因を考 察するとともに、 具体的な計画の立案及び決定を行った主体を明らかにする。
( 3
)換地処分時及び組合設立時の計両実態として街区、 画地の形状及び配列方法を分析し、計画理論との関係を明らかにする。
以下に、 研究資料及び分析方法を示す(表1 .1 )。
( 1 ) 街区及び画地の計画理論の成立過程について2つの分析資料をもとに考察を行う。 まず 第1に、 当時の学術雑誌である「都市公論J *7と「区画整理」切に発表された土地区画整理研 究の中で、 街区と画地に関する論考を対象として、 理想、とする区画整理像や街区と画地に対す る考え方及び具体的な提案について整理する。 特に、 標準画地論を提唱した伊部貞吉と名古屋 市の技術者であった中村納のロット割研究に注目する。 また、 基礎的考察として近代期の住宅 地計画の理念と方法を「建築雑誌」刊「建築と社会J *10の2つ雑誌記事から考察する。 特に、
田園都市や田園郊外といった住宅地の情報が我が国にどのように伝えられ、 また、 我が医iの住 宅地計画にどのような影響を与 えたのか、 そ の受容と変容を明らかにする。 第2に、 公 的機関 によって提案された設計標準(以下、 全国標準)である「土地区画整理設計標準J (1933年)、
-4-
調査名称
1.技術者ヒアリング調査
2.第1回計画実態把握調査
3.第2回計画実態把握調査
4.換地設計調査
5.新聞調査
6公文書調査
7.第1回学術雑誌調査
8.第2回学術雑誌調査
調査期間
1994.10
1994.10� 11 (福岡I打) 1994.10�
1995.1 (北九州市)
1996.9�10 (北九州市)
1995.9
1994.10 � 11
1994.10
1997.1 �2
表1. 1 本研究の調査概要一覧
調査方法
当時の都市計画福岡地万委員会技師 (1931 � 1941在職)竹重貞蔵氏の東京 の向邸において、 約2時間のヒアリング。
換地処分時の計画図のトレース。
(福岡市5組合、 北九州市18組合) -組合設立認可申請書、 設計変更認可 申請書の土地区岡整理設計書の転記。
(福岡市7組合、 北九州市7組合) 組合設立時の計両図のトレース。
(北九州市18組合)
組合設立認可申請書、 設計変更認可 巾請書中土地区画整理設計主の転記。
(北九州市6組合)
換地処分に関する資料の転記 (福岡)
福岡県立図書館保管の福岡日日新聞 (1921�1936)記事の複写。
東京市政調査会図書館保管の区画整 理に関する学術雑誌記事の複写。
国立公文書館保管の公文雑纂(福岡 県都市計画課、 都市計画福岡地方委員 会職員録)の複写。
-雑誌、f区画整理j r都市公論j記事 の調査。
.、当時、 竹重氏がおこなっていた業務内容は調査内容 どのようなものであったか。
- 土地区両整理専任技師は誰であったか 吋時の学術雑誌及び公的設計標準をd知し ていた。
計画図のトレースにより換地処分時の街民 割及び画地割の計阿実態を把握する
土地区両整理設計書の転記により、 街[ベ標 準及び両地標準を把揮する。
計画図のトレースにより組合設立時の街区 割及び画地割の計画実態を把握する。
- 土地区画整理設計書の転記により、 街区標 準及び画地標準を把握する。
従前、 従後の画地面積、 画地評価を把握す る。
画地の地目及び20画地以上の所有者を把 握する。
都市計画及び土地区画整理に関する記事に より、 土地区画整理の計画過程と計画主体の 関係を把握する。
街区割・画地割に関する技術研究記事によ り土地区画整理技術の展開を把握する。
職員録(1923� 1943)により当時の福岡 県の都市計画行政の構造を把握する。
街区割・画地割に関する技術研究記事、
地区画整理講習会及び事業者大会記事により 当時の土地区画整理技術の展開と福岡県への 影響を把握する。
雑誌f建築雑誌j r都市公論J r建 ・住宅地計画理論を把握する。
1998.6九9 築と社会j中の住宅地計画に関する記 田園都市、 田園郊外等の海外事例の受容と変 事の抽出と内容の把握 容を明らかにする。
「土地区画整理審査標準J (1927年)、「土地区画整理私案J (1924年)、「震災復興土地区画整理 設計方針J (1923年) の4つの案について街区及び画地の形態と配列方法を相互に比較する9)。
これらの案は「都市公論」に掲載されており、 全国の土地区画整理技術者に認識されていたと 考えられる。
(
2 )福岡県の上地区画整理事業の推進体制を行政組織的側面と人的側面の2つの側面から考 察する。 行政組織については、 基礎資料として「福岡県職員録J *12、 国立公文書館保存の 「職 員録J *13及び当時の 技術者のヒアリング調査をもとに考察する。 また、土地区両整理に従事し た行政職員とその活動内符については、 先の職員録に加えて、 技術者の回想録10)と「都市公 論J r区画整理Jに掲載された福岡県関係の記事をもとに考察する。 さらに、 具体的な計画の 瓦案、 決定を行っていた主体とプロセスを福岡日日新記事をもとに考察する11)。
( 3
)計画実態の分析は①組合設立時の計画案、②
換地処分時の計画案の2つの計
画案を対象として、 街区長辺、 短辺の長さと岡地間口の長さの測定 、 街医形状と両地割の分類を行う。 こ
-5-
の分析は組合が独自に 設定する街区標準、
l同地標準の設
定方法に基づいている。 また、 両案を 比較し、 主に街医レベルの計阿変更の特徴を明らかにする。 さらに、 計州変更の要附を「市街 地対応型Jと「農地残存型」の2つの計画変更タイプに医分した上で典Z目的な組合を州HJrし、計画変更街区の土地利用と所有状況を考察する。 尚、 分析資料及び詳細な分析方法については、
第5章で説明する。
震後に、 土地区画整理事業に関する既往研究についてみると、 その多くは事業手法上の問題 点や区画整理技術の解明を目的としている。 これらの研究は、 土地r5{画整理事業を基盤未整備 地区の改変と位置づけ、 事業の展開過程や既施行地区の市街化変容を分析している。 すなわち、
既往研究において土地区画整理事業は都市計画学研究の対象であったといえる。 代表的な研究 例をみると、 まず、 石田頼房氏の「おくれJ Iずれ」に関する一連の研究(2) を始めとする士 地区画整理事業の市街化過程に関する研究では、 市街化速度とピルドアップの様態を明らかに しており、 その成果は二段階区画整理や利用目的別換地制度等の区画整理技術の提案へと結実 している。 また、 土地所有や土地利用の側面から市街化過程を分析する研究では、 両者の連関 構造を解明し、 事業制度的手法としてコントロールすることを目的としている(3)。 これらの研 究は、 土地区画整理施行地区の実態を捉え、 その問題点を事業制度的に解決しようとする問題 抽出-解決型の研究であるといえる。 これに対して本研究は街区及び画地の計画を現代的視…
から評価し、 新たな住宅地計画を理論化し、 具体的な計画方式として応用しようとする計画評 価-創造型研究として位置づけられる。
次に、 旧法期土地区画整理事業に関する史的研究についてみると、 鶴田佳子氏と佐藤圭二氏 による一連の研究(4)を始めとして6大都市を中心に貴重な成果がみられる。 鶴田佳子氏らは、
名古屋市における耕地整理事業、 土地区画整理事業を対象として事業の展開過程を詳細に分析 している。 しかし、 具体的な計画実態については、 街区レベルの分析に止まっている。 その他 には震災復興土地区画整理事業について事業の展開過程が詳細に考察されているが、 画地レベ ルの計画に対する分析は全く行われていないO これは、 土地区画整理事業を住宅地計画として 位置づけるのではなく、 現在の密集市街地の形成要因の解明という都市計画的な問題意識に基 づいており、 近代都市計画史研究として位置づけられる。 一方、 制度史的側面からは石田頼房 氏らが近代的土地区画整理制度 ・ 建築線制度に関する研究(5)において両制度の成立過程を詳 細に考察しているが、 具体的な事業事例については検討されていない。 この他にも事業史及び 制度史的研究は多数みられるが、 その多くが事業及び制度の実態と事業実施後の市街地形成過
-6-
程の解明を目的とした都市計両史的研究の対象であったといえる。
また、 福岡県の事例を対象とした研究は、 唯一、 高見倣志氏の研究*23においてIr 1) í畑市の1-_
地医画整理事業の計画実態が分析されている。 その他には、 地方自治体による市史、 県史の111 で士地区画整理行政とその経緯が断片的に記述されているのみである。 福岡県の仁地|玄削教用
業については、 断片的知見は得られているものの、百十|函の実態やその背景を体系的に実証し た研究は全くみられない。 以上、 既往研究において、 本研究のごとく同 a県の複数の都市にわ たる事業を対象として、 規格統ーという視点から、 街区、 画地の計画実態を分析した研究は特 にみられない。
尚、 旧都市計画法期の行政組織体制については渡辺俊一氏*23、 中郁章氏本24、 福岡峻治氏*25の
研究によって実証されおり、 本研究の都市計画行政の組織体制に関する考察はこれらの研究の 知見が基礎となっている。
1. 3 論文構成
本論文は、 6章より構成されている。 第l章は序論であり、 研究の背景、 目的と方法、 既往 の研究との関連について述べている。
第2章では土地区両整理の計画理論を考察する背景として、 近代期の住宅地計画の理念と方 法について概括する。 本研究では、 我が国の理念の一つを規格統一(スタンダーデイゼイシヨ ン)として分析の基本的視点としている。 この規格統一の考え方について佐野利器の論考を中 心に考察する。 一方、 近代期の欧米では画一的な住宅地から田園都市や田園郊外といった新し い計画理念が実践されている。 これらは我が国の規格統一とは全く正反対の考え方に基づく住 宅地計画であるといえる。 そこで、 欧米の住宅地計画を集合単位重視型と位置づけ、 その計画 手法を整理するとともに、 我が国の研究者や技術者が欧米住宅地計画をどのようなに認識して いたかについて雑誌記事を基に考察する。
第3章では、 我が国の旧法期土地区画整理の計画理論が誰によってどのように成立したかを 明らかにする。 具体的には、 研究者や技術者による個人的な論考と内務省等によって提案され た全国標準の2つの側面から考察する。 まず、 個人的論考については、 計画理論に関する雑誌 記事を対象とし、 当時の計画理論研究が一部の研究者や技術者によって行われていたことを明 らかする。 さらに、 そのキーパーソンとして伊部貞吉と中村a納に注目し、 提案の内容と根拠を 考察する。 また、 全国標準は公表されている4つの案を対象として、 その内容を比較し、 最終 的な設計標準である1933年の「土地区画整理設計標準」の成立過程を考察する。
-7-
第4章では、 まず、 福岡県が|日法期士地区画整理事業の先進地域であったことを事業実績及 び行政組織体制の側面から実証する。 特に、 福岡県独向の士地以画整瑚行政組織体制である駐 伝制度に注目し、 計画及び事業実施過程における行政組織体制の構造を捉え、 具体的な計l珂の 止案、 決定を行っていた組織と人物を明らかにする。 さらに、 これらの計l珂主体がどのような 情報を基に瑚想像を形成したかについて考察する。
第5章では、 福岡県の組合施行士地区画整理事業を対象に街区、 両地の計画実態を形状及び 規模、 配列方法を分析する。 分析の視点は次の2つである。 第lに、 各組合が独自に作成して
一第3章
理想的計画像と計画実態「
5. 3
4三一 一一
5. 4
図1. 2 計画設計プロセスと論文構成
いる標準(以下、 組合標準)と具体的な計画との関係を明らかにする。 第2に組合設立から換 地処分までの街区、 画地の計画変更とその要因について考察を行う。
最後に、 第6章では、 各章の考察をまとめ、 結論としている。
本論文の構成は、 基本的に1.2節で論述した土地区間整理における計画設計行為のプロセス に基づいて展開しており、 両者の関係を図1.2に示す。
-8-
<補注>
1 )上地区画整理施行面積及び010面積は1998年の「都市計画ハンドブック」によった。 1997年引j1日現伝の実績であ り、 010面積は1436,100haで、ある口
2 )参考文献*3において石田頼房氏は、 旧法で制度化された上地区画整理ほ基本的に 郊外の住吉地の開発を口的 とし た土地区画整理を想定したものであったことを実証しており、 本研究もこの認識に基づいている。 参考文献*3 p.49
3 )佐野利器は1919年日本建築学会シンポジウム「都市と住宅jの中で郊外住居地における規格統 ーの必要性を述べ ている。 本論文 の2.2. 1参照。参考文献4)pp.45�46
4 )参考文献行 pp.24�45 、 本論文 の2.3.1参照。
5) NEW URBANISM はアメリカ合衆国において1980年代初頭に確立された都市回帰の理念である。参考文献*2 pp.iv
�xlii 、 同*6 p.27
6 )土地区画整理事業では、 計画 という用語 は用いず、 企画から設計までの過程を ま とめて、 土地区画整理設計とい う用語が用いられる。 本論文では、 微地形や組合員 の構成といった各組合固有 の 設計条件は随伴的条件として排 除し、 福岡県あるいは市の共通の計画的 特徴を解明することを主眼としている ので、 土地区画整理設計の内、 計
画行為の部分のみを抽出する。 以上より、 本論文において組合が作成する街区割及び 画地割が示される図面は
「土地区画整理設計案jとは呼ばず、「組合設立時の 計画案」と規定する。
7)参考文献η pp.53�57
8 )戦前の6大都市とは、 東京、 横浜、 名古屋、 京都、 大阪、 神戸の6つの市を 示す。
9) r土地区画整理私案Jは、 参考文献灯 第7巻7号(1924.7)、「土地区画整理審査標準Jは、 同 第10巻5号( 1927.5)、
「土地区画整理設計標準」は 同 区画整理特集号 第 16巻6号( 1933.6)、「震災復興土地区画整理設計方針Jは、 参 考文献* 1 1に掲載されている。
10)回想録 として次の記事を参照したo
竹重貞蔵 都市計画地報委員会時代 を想う 参考文献*1 4 pp.43 � 5 1 同 :断想、 参考文献*15 pp.445 ----449
佐田市内:地 方編 第5節 福岡県 参考文献*15 pp.259 � 288 小石勝三郎:戸畑の区画整理の思い出 参考文献* 15 pp.463 ----465 小峰一二:想い出 参考文献* 15 pp.466�468
11 )福岡日日新聞(参考文献*16) は、 192 1年から福岡県職員録が入手できた1936年までの記事を調査した。表1.1参照 12)石田頼房氏他による参考文献* 17の他、 京都大学巽研究室や日本建築学会東海支部等が「おくれJrずれ」の実態
を調査している。 これらの 研究はいずれも1970年代に行われ、 当時の重要な課題であった。
13 ) 参考文献*18では、 都市的土地利用と農地的 土地利用の関係を 施行方式や土地所有より捉えようとしており、 街|ヌ や画地の形状や規模との関係は考慮されていない。
14)参考文献*19�21 の他、 京都市や横浜市を対象として研究を行っている。
15)参考文献*22 を最初に1983年まで継続的に 研究され、 その成果は総合都市研究誌上(その 1 ----8)で発表されている。
<参考文献>
* 1 都市計画調査会: 都市計画ハンドブック 1998
* 2 Peter Katz : The New Urbanism McGraw-Hil1.1nc. 1992
*3 石田頼房:日本における土地区画整理制度史概説1870----1980 総合都市研究第28号 pp.45�77 東京都立大学都 市研究センター 1986.9
*4 佐野利器: 規格統一 建築雑誌第33輯 第390号pp.45 ----48
*5 西山康雄: アンウインの 住宅地 計画 を読む 彰国社 1992年
-9-
* 6 戸谷英世、 成瀬大治:アメリカの住宅地開発 学芸出版社 1999
*7 都市研究会:都市公論1917.1�1945.2 (復刻版 全64巻補巻l 別冊l 不一出版 1989----1992)
*8 灰両整理研究会:医画整理 1935.1O� 1945.6 (復興版 柏書房 全16巻 1991 )
* 9 (社)建築学会:建築雑誌 1902.1 � 1935.12
*10 日本建築協会:建築と社会 1917.4� 1935.12
*11 東京市役所編:帝都復興 事業誌 1932.3
*12 福岡県人事課保管:福岡燃職員録 1924� 1936 叶3 国立公文書館保管:職員録 1924� 1941
*14 都市計画協会:新都市 1985.5
*15 全国土地区画整理連合会編集発行:土地区画整理組合誌 1969.3
*16 福岡日日新聞社:福岡日日新聞 1921.1.1 �1936.仁2.31
什7 石田頼房他:郊外地土地区画整理事業における「おくれJ及び「ずれJについて 日本建築学会論文報告集 第 313号 1983
*18 波多野憲男:土地区画整理事業施行地区における土地利用転換過程の特徴 総合都市研究 第4号 pp.121 �142 1978.9
*19 鶴田佳子、 佐藤圭二:宅地開発型耕地整理事業の設計水準の発展過程に関する研究 一名古屋市 の場合一 1992 年度第27回日本都市計画学会学術研究論文集 pp.43�48
*20 裏山益郎他2名:戦前名古屋の組合施行土地区画整理事業の展開過程に関する研究 1992年度 第27回日本都市計 画学会学術研究論文集 pp.49---- 54
*21 鶴田佳子、 佐藤圭二:近代都市計画初期における1919年都市計画法第12条認可土地区画整理による市街地開発に 関する研究 一東京,大阪,名古屋,神戸の比較を通して一 日本建築学会計画系論文報告集 第470号 pp.149� 159 1995.4
*22 石田頼房、 池田孝行:建築線制度に関する研究その1 総合都市研究第6号 pp.33 �72 東京都立大学都市研究
センター 1979
*23 高見倣志:住環境整備のための街区 ・敷地計画に関する研究 学位論文 1989
*24 渡辺俊一: I都市計画 の誕生」 国際比較からみた日本近代都市計画 柏書房 1993.9
*25 中郁章:大正八年・都市計画法再考 政経論叢第49巻l号 明治大学 pp.59� 99 1980.5
*26 福岡俊治:東京の復興計画 都市再開発行政の構造 日本評論社 1991. 7
ハU・22A
第2章 近代住宅地計画の理念と方法
2. 1 序
戦前期における我が国の住宅及び都市問題は、 農村から都市への人1 ]集中に伴う低所得者
への住宅供給、 あるいは、 郊外への急速なスプロールであった1)。 このような問題は、 者IS rh、
建築に携わる研究者や技術者にとっても重要な課題として認識され、 計両的な住宅、 住宅地に 関する多くの論考が発表され、 また実際に、 東京、 大阪を1�1心に多くの郊外住宅地が計l阿され た。 第2章では、 このような住宅地に関する論考や事例記事を対象として、 技が|玉|の住宅地計 画の理念と具体的な計画手法を整理する。 この知見はヒ地[ズ画整理の計|酉理論及び実態分析の 視座として位置づけられる。 特に、 街区及び岡地の計両を規格統一の計両理念に基づく原単位
重視担住宅地計画と位置づけ、 その考え方と具体的な提案の特徴を分析する。
ところで、 我が国で住宅問題が深刻化し、 都市計画法や市街地建築物法など新しい法体系が
確立する20世紀初頭は、 イギリスにおいて田園都市や田園郊外といった新しい住宅地が建設さ れる時期でもある。 その設計の中心的人
物であるレイモンド ・ アンウインは均質
で阿一的な開発条例住宅地に対する問題 建築雑誌
意識から村落をイメージ源とした小集同 構成による新しい住宅地計闘の手法を確 vし、 実践している。 この規格統一とは ふく異なる計画珂論を集令単位重視型住 宅地計画と位置づけ、 その計画手法を整 理するとともに、 我が国において田園都 市、 田園郊外の情報がどのように伝えら れ、 評価されていたのかを考察する。
分析対象は、 当時の主要な学術雑誌で あった「建築雑誌J I建築と社会」の2つ の雑誌において戦前に掲載された住宅地 に関する論考や事例記事とする(表2.1 )。
我が国の住宅地計画理念や田園都市、 回
表2. 1 分析対象雑誌の概要
刊行年 1886年~ l発行 日本建築学会
辰野金吾が中心となって設立された日本建築学会(当時、 造家学会) の機関誌
団体の性格 役員は学者が中心で、 アカデミック色が強く、 建築研究 や教育による社会的普及に力点を置く。
記事内容
それまでは建築構造・設備といった技術的記事が主流で 大正期 あったが、 大正期の近代建築運動や震災によって理論・
研究記事が多くなる。 ジャーナリズムとしては中立の立 場をとる。
会員の論文寄稿が多くなり、 学会色が強くなる。 また、
昭和初期 海外の建築事情の要求カf強く、 海外の文献妙録や建築の 紹介がみられる
資料) r明治・大正・昭和に見る建築・都市・住宅関係緩誌の変遷j建策総誌92号
『儲会誌「建築と社会J ・織関誌「建築士jのあゆみJ建築緩誌 1968.8 山形政明 r r建築と社会J誌にみる関西建祭の波頭j 不二出版復刻版 1992
4EEA --aA
園知外の影響を考察するには、 ①主張や評価を体系化的に位置づける観念レベルの分析と、 ② 具体的な実例を分析する実践レベルの分析の2つの側面があるが2 )、 本章では、 雑誌記事を分 析対象とすることによって観念レベルの分析を行う。 尚、 我が匝|の郊外住宅地の計IJ同事例やア ンウインの計画手法については多くの研究がなされており、 新たな成果を見出すのは附難であ る。 そこで、 2.1.2では雑誌記事というこ次的な資料を基礎として整理することを原則とし、 既 往研究は考察の参照とする。 また、 2.2.1では、 既往研究の成果から特に敷地と街医の計両につ いて、 その理念を再整理し、 2.2.2において田園都市と田園郊外の我が国での評価を雑誌記事を 基に考察する。 雑誌記事を対象とすることは、 計商事例に対する注目点や客観的意見、 評価が 考察できる点に特徴があり、 このような研究は特にみられない。
2. 2
我が国の原単位重視型住宅地計画の特徴2. 2. 1 佐野利器の「規格統一j理念
旧法の制定や震災復興において主導的役割を果たし、 また、 後藤新平のブレーンとして当時 の日本建築界の大家であった佐野利器は、 住宅問題においても先駆的な役割を果たし、 1920年 に大和郷住宅地を設計し、 また、 1925年には「住宅論」つを著している。 この際、 住宅、 住宅 地の計画の基本的理念となったのが規格統一(スタンダーデイゼイション)である。 規格統 という語句は、
1919年に開催された日本建築学会主催の「都市と住宅」講演会の中で佐野自身
の講演題目となっており、 講演の内容は建築雑誌に掲載されている。 ここでは、「建築雑誌」及び「都市公論」における佐野利器の住宅問題に関する記事の内、 街区及び画地に関する記述 を対象として、 その考え方と具体的な提案を考察する。 尚、
表2.2の中で、「庶民住宅の技術的
研究」は日本建築学会住宅問題委員会によってまとめられているが、 委員長が佐野利器である ため考察対象とした。「規格統一」の中で佐野は、 都市の規格統一の必要性を述べ、 自らが考案した中流以下の住
表2. 2 分析対象とした佐野利器の論考
題目 掲載年 掲載雑誌
講演I都市計画J - r開会の辞」 1918年 建築雑誌378号
「都市の建築問題」 1918年 都市公論第l巻6号 講演f都市と住居J - í規格統一J 1919年 建築雑誌390号
「都市の住宅政策要領」 1919年 都市公論第2巻9号
「都市の観念と其の建築物」 1920年 都市公論第3巻7号
「住宅問題の解決」 1921年 都市公論第4巻11号
「都市と耐震耐火建築J 1923年 都市公論第6巻11号
住宅論 1925年 著書
「復興建築会社に就いて」 1926年 建築雑誌487号
「庶民住宅の技術的研究J 1941年 建築雑誌671号
-12-
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出典)佐野利器:規格統一 建築雑誌第33輯390号1919年p.47
図2. 1 r規格統一」における街区及び敷地割の提案
宅の計画案を説明している。 まず、 規格統一の概念と根拠についてみると規格統ーとは|物の 大きさ形等に一定のスタンダードを作りまして之を以て成る可く多数のものを統ーすることj
3 )であり、 ①街区割及び宅地割、 ②住宅の2つの規格が必要であるとしている。 具体的な規
格の条件と計画案(図2.1)の特徴を以下に整理する。
( 1 )街区及び敷地割:必要条件として、 ①住宅敷地として適当な奥行きと幅を単位とする、 ② 数宅地を併合した際に大規模な建築が可能となる自由度をもっ、 ③将来の建築物の向上と 地の発展があった場合にも支障なく利用できるように街区割、 宅地割は自由度を有す る、 以上の3つを挙げている。 この条件を満たす計画案として、 幅50尺(約15m)、 奥行 45尺(約14m)を宅地の基本的単位としてその半分をl戸当たりの敷地とし、 背割二列に よって配置している。 一方、 街区は長辺600尺(約182m)、 短辺90尺(約28m)を単位と し、 将来の土地の発展に対しては南北の2つの街区を統合することを想定している。 以上 から、 街区及び宅地割の規格は2つの単位に基づき決定されていると考えられる。 第1に、
関口と奥行を規格化した宅地を単位とする、 第2に、 600尺X200尺という大規模な街1><
を前提的な単位として、 小規模な住宅に対応した街区を決定するという2つである。 さら に、 宅地割については2つの単位が過不足なく配置される背割二列型としている。 特に、
中流以下の住宅に対応した小規模な宅地として計画するのではなく、 将来的に大規模な宅 地へと変更することを考え、 背割二列型が選択されたと考えられる。
(2)住宅:必要条件は、 ①間取りはどのような職業の人に対しても便利であること、 ②全ての 敷地が日照通風を充分に満たすこと、 ③構造が単純で大量生産に適することの3つとし、
図2.2に示す3つの住宅形式を提案している。 この3つの住宅は間口が同じ長さであり、
-13-
階ム平面
引用文献:規格統一 建築雑誌 33輯第390号pp.52
「規格統一jにおける住宅の提案 2
図2.
結果として宅地形状と規模も全く同質のものとなっている。
以上より、 敷地及び街区の単位は、 小規模な住宅に対応した規模及び形状とするという意図 のある区画形質とすることが重視されている。 従つ よりも将来への変更を考慮した「融通性J
て、 住宅形式と敷地の計画的連関は小さいといえる。
次に、 佐野が規格統一の必要性を主張した根拠について考察すると、 大きく2つの側面が考 これは直接的な要因であり、
、M時の郊外住宅地に対する問題意識である。
えられる。 第lに、
の中に記述がみられる4)。 その要旨は、 大小の宅地が混在する結果 、 零細宅地で
「規格統一J
は衛生保安上の問題が、 大規模な宅地では無用の空地や分筆による裏宅地が発生しており、 特 田畑割をそのまま活用しているためその状況が著しいというものである。 第2は、
に郊外では、
当時の工業規格化との関係という間接的な問題意識である。 そも そも規格統ーという語句は、
佐野自身が考案したものではなく、 当時の日本標準規格の制定に伴う工業品規格統一に大きな 日本標準規格の制定経緯及び建築学会との関係については、
影響を受けていると考えられる。
これによると大正8年6月に度量衡及工業 片野博(1995) *4によって詳細に解明されている。
人が参加 品規格統一調査会が国家機関として設置され、 建築学会からは同年10月に佐野利器
ここでも佐野が委員として参 調査会へと引き継がれるが、
工業品規格統 している。 その後、
加している。 調査会での規格の対象は、 煉瓦や木材、 金属部品や製図用品といった 業製品に
地区画まで発展させたと考えられる。
限られているが、 佐野はこの考え方を住宅、 さらには
Jにおける住宅の3つめの条件である構造が単純で大量生産に適するという の講演は大 また、「規格統
工業製品としての住宅を意識していることが分かる。
事実、「規格統
、 張は、
ー14-
'・ーーー・』
Iiう8年4刀であり、 工業品規格統一調査会への参加時期!と符合している。
さらに、 規格統 ーを主張する背景として関京大震災の復興があげられる。 佐野は、イ]:'-8及び k地医師の規格統一の成果を震災復興を日的とした「復興建築助成株式会社」によって結実し ようとしていた。「復興建築助成株式会社」は関東大震災の復興地区の内、 耐火構造が強制さ れる防火地区における住宅建設の資金貸付を主な業務とし、 佐野の「余りの熱心さJ 5)によ って設立された。 ここで注目されるのが、 単に資金的補助だけでなく、 会社内身が住吉の設計 と工事を請け負うという点である。 佐野は、 学会内での「復興建築助成株式会社」の設立説明 会じおいて{会社が取扱う建物の性質です、 前に防火地区の内外、 而も耐震耐火構造というこ とを申して置きましたが、 其他尚一定の規格に依ることと致して居りますoJいと述べてお句、
この他にも規格という言葉を頻繁に使っている。 すなわち、 区画整理によって土地の規格が統 され、 さらに「復興建築助成株式会社」によって住宅の規格化を実現しようとしている。 尚、
「復興建築助成株式会社」は、 資金的問題と補助対象として過小宅地を除外したため、 需要は 少なく、 成功しなかったと考えられる7)o
最後に、 計1I町案 レベルの最終的な成果であると考えられる住宅問題委員会の提案について考
察する。 敷地に関する提案は5章に記述されており、 その構成を表2.3に、 計画案を図2.3,2.4 に示す。 これをみると敷地割に関する規定は全くみられず、 敷地の規模と庭や菜園などの各要 系の規模と形状がポされている。 街区形状は道路面積との関係から利用率が根拠として示され るだけで、 背割二列型及び グ1J型による画地割を前提としている。 すなわち、 敷地の形状及び
規模は住宅形式及び規模と日照条件によって決定され、 街区は道路率によって決定されており、
敷地割に関する論考はなされていない。 このような敷地と街区を単位としてその形状と規模を 統一するという考え方は佐野の「規格統 一Jでの提案と同様であるといえる。
表2. 3 I庶民住宅の技術的研究」の構成
第l章
|
規模について第2章平面計画について
第3章構造、 材料、 施行計画について 第4章設備計画の内水洗便所について 第5章敷地計画について
11.基本事項 2)各住区の説明
日建物間隔 イ)隣組住区
|
1)南北間隔 口)警防住区2)東西間隔 ハ)購買住区
川.敷地 二)近隣住区
IV街廓及道路 VI.居住密度 V.近隣住区の構成 VII.設計霊
1)概説 VIII.結 資料)建築雑誌第55輯671号1941.2 p.1�29
-15-
霊
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A. 1戸当延床面積60m2
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平屋建
1戸建 2戸建 4戸建
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古開 同雪 |ペ綴判例|
1戸建 2戸建 4戸建
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2戸建 4戸建
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1戸当延床面積60m2 1戸当証床面積80m2
出典)建築雑誌第55輯671号1941.2 p.22
図2. 3 「庶民住宅の技術的研究」における敷地形状の提案
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出典)建築雑誌第55輯671号1941.2 p.23
図2. 4 r庶民住宅の技術的研究Jにおける街区形状の提案
-16-