東京外国語大学 『日本研究教育年報17』 (2013.3)
く実践報告)
初級 日本語クラスにおける無声 C M 活用の実践報告
臼 井 直 也
1 .
は じめに言語教育の現場では映画、 ドラマ、アニメ、CMな どの生の映像素材 が用い られ ることが 多 く、 日本語教育の教育現場 において も日本の映画やアニメな どが用い られ ることが多い。
これ らの映像素材 が持つ教材的価値は先行研究で多 く論 じられてお り、池 田 (2002)では、
学習者 に情報 を具体的な形で提示できる点や 、時間の流れ、場の状況、非常 に大 きかった り小 さかった りす るものについての情報 を提示す ることができる点、学習者 の理解や記憶 を助 けることができる点、学習者 の興味や 関心、感動 の よ うな情意面 に も教 育効果 を与 え ることができる点 といった教材的価値 を挙げてい る。
この よ うな教材的価値 の一方で、初級 の学習者 に とってはコン トロール され ていない 日 本語 の聴解 は困難 であるとい う理 由か ら映画、 ドラマ、アニメな どの生素材 の活用 は困難 であると考 え られ てきた。 しか し、中上級 の学習者 が映像 を用い楽 しみなが ら勉強 したい と思 うよ うに、教科書 を中心に学習 してい る初級学習者 の中にも生の映像素材 を見て楽 し く勉強 したい とい う希望はあると考えられ る。
上述 の初級 における言語能力の問題 を解決す るために、台詞 のない無声映像 に焦点 を当 て教室で活用 した実践活動が鵜生川 (2011)、臼井 (2012)で報告 されてい る。鵜生川 (2011) は
EF L
授業で用い、無声映像の特性 として談話 レベル の作文練習が可能である点、台詞が な く想像 を働 かせ 自由に書 くことができる点、登場人物 に 自分 を重ねあわせ て考 える機会 を与える点の三点 を挙 げてい る。 臼井 (2012)は 日本語 の初 中級、中上級 クラスにおいて 用いた報告であ り、初 中級 を対象 とした活動か らは 「動詞 の 『動 く絵 カー ド』 としての活 用」、 「学習者の レベル を問わない活用」、 「誤 りの可視化 を用いた ピア ・レスポ ンスでの活 用」とい う教材的価値 、中上級 の作文授業での実践か ら 「誤 りの可視化 を用いた内容指導」、「作文評価 の統一」、 「動作や変化 の描写の豊富 さ」、 「作文量の多 さ」とい う教材 的価値 を 挙げた。 また、実践報告ではないが山田 ・久保 田 (2007)では国際交流基金作成 の海外 向 け教材 『日本語教育用TV コマーシャル集』の特徴 が述べ られ てお り、セ リフの少 な く初級 で も活用可能なCMが教材 に含まれてい ると報告 してい る。
しか し、鵜生川 (2011)は 日本語授業での活用ではな く、臼井 (2012)は初 中級及び中 上級での活用報告であ り、また 山田 ・久保 田 (2007)では制作 した教材 の使用実態調査 に おいて初級 レベルでの活用が多かった とあるが、具体的 な活用方法な どは報告 され ていな い。 よって初級学習者 に対す る無声映像 の活用 は未 だ報告 され てお らずその効果 も明 らか になっていない といえる。
か らの実践研究 フォー ラム」の予稿集 に掲載 された文章に修正 ・加筆 を加 えた ものである。
2.活動概要 2.1使用CM作品
活動で用いたCMはTOSHIBAのLED電球のCM 「も うひ とつの10年 カ レンダー篇」
である。 このCMの選定理 由は以下の二点である。 まず、CMに台詞がほ とん ど含 まれて お らず 日本語 レベルの制限がない点である。2分のCMに含 まれ る台詞 は「10年3653日、
同 じ明か りの下で幸せ な 日々が続 いてい く。寿命10年、LEDは東芝」のみである。次に、
第15回アジア太平洋広告祭 においてフイルム部 門 家庭用品カテ ゴリー金賞 を受賞、第41 回 フジサ ンケイ グループ広告大賞を受賞す るな ど評価が高 く、鑑賞に値す るとい う点であ る。一人の男性 が10年間を通 して女性 と出会い、結婚 し、子 どもが産まれ、単身赴任 にな り、帰 って くるとい う一連の人生の様子 を影絵のよ うに描いたCMであ り、表現の特殊性、
そ して 日本人の生活、 日本の文化が表現 されている内容が学生の関心を引 くと考 え選定 し た。 なお、活動ではTOSHIBAの ウェブサイ トにアクセス し、サイ トにあるCM映像 の視 聴 を行 なった。
2.2対象者
活動 の対象者 は筆者 の所属 していた大学の 日本語学科の1年生25名である。大学での 日 本語 の授業は精読、会話、聴解 な どあわせて遇に90分の授業が7コマあ り、学生の活動開 始時の 日本語学習歴 は約5ケ月 (総学習時間約150時間)、 日本語の レベルは初級で、動詞 のテ形 を学習 し終 えたばか りである。
2.3活動内容
活動 は会話の授業の中で全12回行 なった。活動では映像 に含まれ る語嚢や文型 な どの学 習が中心であったので本来は文法な どを学習す る 「基礎 日本語」の授業での活用 を意図 し ていたが、筆者 の担 当科 目の制限か ら会話の授業での活用 となった。授業では教科書 を用 いた会話の学習 とは別 に10分前後の時間をとりCM を用いた活動 を行 なった。初回では CMを通 して視聴 し、二回 目か らは作品を10秒前後視聴 し学習活動 を行 なった。
活動 内容は大 きく以下の二点である。一つ 目はCM の映像 に関す る簡単な質疑応答であ る。一回の授業につ き作品の10秒前後 を視聴 し、シー ンの内容について学生に質問を行 な った。質問内容 は 「男の人は何 を していますか」な どの映像描写 を基礎 とし、シー ンによ っては 「女の人 は どうして怒 ってい るのですか」な どの学生が想像 して答 える質問 も含 め た。二つ 目は 日記 を書 く作文活動である。CMの主人公 である男性の 日記 とい う形 を とり、
初級 日本語 クラスにお ける無声
c M
活用の実践報告28のシー ンか らなるCMの前半1分 を書 くことを宿題 とした。他 にもシーンに台詞 をつ け るアフレコ活動な どを行 なったが以上の二点が主要活動であった。
全 12回の活動終了後、授業内容 に関 して中国語 によるアンケー ト (資料) を行なった。
なお、ア ンケー トは 2人か らは回収できず回答者は 23人であった。
3 .
作文活動の結果本活動の主要活動である作文活動について、学生の作文例 を挙げる。先述の通 りCMの 前半1分を描写す る活動であるが学生によって作文量、作文 内容 に差が見 られた。
作文量に関 して独身の主人公 がカ ップラーメンを食べてい るワンシー ンを見た学生 の作 文例 を二つ挙 げる。
カ ップラーメンを食べま した。 (学生A)
料理はあま り上手ではあ りません。それに、時間もあ りませんoだから、一人でインスタン トラーメンを食べました。でも、よく食べるのは体に悪いです。 (学生B)
2,3秒のシー ンに対 し、一文のみであったAのよ うな学生が多かったが、中にはシー ン ごとの作文スペースをいっぱいに使 った学生Bの よ うな作文 もあった。作文量に大 きな差 が見 られたのは作文を一週間の宿題 とした ことによると考 え られ る。学生によっては28の シー ンを一週間で書 くことを負担 に感 じた よ うであるが、文法授業で行 うよ うな形式重視 のア ウ トプ ッ トではな く、既習の 日本語知識 を用いた内容重視 のア ウ トプ ッ トが行 えた と い う点においては学習効果があった と考えてよいだろ う。
また、作文内容に関 して も学生によって差が見 られた。LED電球 を交換す る最初 のシー ンの作文例 を二つ挙げる。
電球を交換 しました。 (学生C)
今晩は遅 く外から家に帰った.家に人はなかったO電気をかけたO寂 しかったです。 (学 生 D)
作文内容 には大 きく分 けて学生Cの よ うな客観 的なシー ン描写のみのもの と、前述の学 生Bの 「料理はあま り上手ではあ りません」や学生 Dの 「今晩は遅 く外か ら家 に帰 った」
とい う映像 を見て 自由に設定 した内容や、学生 D の 「寂 しかったです」 とい う登場人物 に な りきった心情描写を加 えた 「シー ン描写+ α」の ものが見 られた。活動説 明の際 には登 場人物 にな りきって 自由に書 くよ う指示 を出 したが、作文量 を負担 に感 じた学生は内容 も シー ン描写のみ になった よ うである。 内容重視 のア ウ トプ ッ ト活動 を初級か ら行 うこ とは
4 .
ア ンケー ト結 果及 び分析アンケー ト結果 を通 して授業の分析 を行 い、初級での無声映像活用について考察す る。
活動 に関す る質問(1)か ら(4)の結果 を表 1に示す。表か らも分かるよ うに、全体 を通 して多 くの学生はCMや活動に良い評価 を した ことが見て取れ る。
<表1> 質問(1)〜(4)の結果
質問 とても良い 良い 普通 悪い とても悪い
(1)CMの感想を教えてください 8人 15人 0人 0人 0人 (35%) (65%) (0%) (0%) (0%) (2)CMを使った勉強はどうで したか 6人 13人 2人 2人 0人
(26%) (56%) (9%) (9%) (0%) (3)日記を書く活動はどうでしたか 10人 11人 2人 0人 0人
(43%) (48%) (9%) (0%) (0%) (4)未習の単語や文法の勉強は ど うで 11人 9人 3人 0人 0人
次に、質問(1)か ら(4)に対す る記述回答 を挙げ、それぞれの考察 を行 う。質問(1)について は、以下のよ うな回答 が得 られた。
(1)cMの感想 を教 えて くだ さい プラス評価
○創意に富み斬新 で面 白い
○アイデ ィアが新 しい
○生活感 があ り筋が豊かで面 白い
○台詞 はないがメ ッセージが伝 わる
○温か さがあ り感動的だ マイナス評価
○長 くてつま らない
○ 日本語の台詞があればよ り良い
多 くの学生が作品 自体 を高 く評価 してい るが、学生 によっては 2分の映像 は長す ぎると 感 じていた よ うである。 また、 日本語の学習のためには 日本語 の台詞 があった方が良い と 考 える学生 もいたoこれ らの点については質問(2)でも同様の回答が得 られたo質問(2)では、
初級 日本語 クラスにおける無声
c M
活用の実践報告以下の よ うな回答 となった。
( 2 ) cM
を使 った勉強は どうで したか プ ラス評価○ 日常的な 日本語 が勉強できる
○授業が面 白くなる
○語嚢や 日本文化 を勉強できる
○教科書 よ り興味 を持 ち覚 え易い マイナス評価
○同 じ
CM
を使 うのは少 しつま らない○復習 しない と身につかない OCMが速す ぎる
○あま り得 るものがない
○勉強 に商業性 は望まない OCMが短 く得た ものが少 ない
〇一回の視聴 が短 く進度が遅い
○文字がな く分か りに くい
質問(2)では
CM
とい う普段の授業では用い られない素材 を用いた こ とによ り学生が興味 を持 った ことが窺 えるが、多 くのマイナス評価 が挙 げ られた。 まず はCM の種類について だが、質問(1)の回答 での 「作品時間が長す ぎる」とい う問題 、また、質 問(2)の回答での「CM が一種類 でつま らない」 とい う問題 が挙 げ られ る。本活動 では一つ の作 品に絞 りス トー リ ー を追いなが ら少 しずつ学習 を行 うために2分のCM
を一つ選 んだが、一部 の学生は12回 同 じCM を見 るのは退屈であった よ うである。 この点 は筆者 の意図 と学生の反応が大 き く 異 なった点である。 この問題‑の解決案 としては、「10年カ レンダー」 の. CM
は東芝の ウ ェブサイ トには 1分版 もあ り、1分版 を用いれ ば学生が抱いた冗長感 は和 らげ られ る。また、CMの種類 については活動開始時は動詞学習直後 の 日本語 レベルであ り活用可能なCMが 限 られたが、初級後半に入 ると既習文型、既習語嚢 ともに増 え活用可能 な CM も増 える と 考 え られ る。 よって 「10年 カ レンダー」の後 に無声 に限 らず ほかの
CM
を用い るとい う方 法 を とって もよいだ ろ う。 また、「CMが速す ぎる」、 「勉強 に商業性 は求 めない」 とい う意 見に対 してはCM作品の選定によって解消できる と思われ る。例 えば公共広告のCMであ れ ば商業性 がな くメ ッセージ性 も強い ものが多 く、また台詞 の少 ない もの も多いので学生 のCM‑の好悪 も解 消が可能である。次に、質問(3)への回答 を以下に挙 げ る。
(3)日記 を書 く活動 は どうで したか
○添削で間違いが分かった
○書 くと単語や文法を覚 え られ る
○ 自由な作文が楽 しい
○ 日記活動で
CM
の理解が深 まった○ 自分の不足点が分か る マイナス評価
〇一度に多 くの 日記 を書 くのは大変だ
○映像 を見て も何 を書いた らいいか分か らない
○活動は良いがあま り効果がなかった
○ 日本語の知識がな く日記 を書 くのは大変だ
日記の活動については、普段作文の機会がない学生に とって一定の効果が得 られた こと が窺 える。福州大学では 日本語の作文授業が 2年生の後期か ら始ま り、それ までは 日本語 を書 く機会が極 めて少 ないので、短文であって もシー ンを描写 し登場人物の気持 ちになっ て想像 して書 くとい う内容重視 のア ウ トプ ッ ト活動 は学生に とって有意義であった よ うで ある。 しか し、一方で先述 の とお り1分間の28のシーンを一度 に書 く労力は学生には負担 で あった よ うである。今回の活動 は計画性 に欠 けていたため一度 に多 くの作文 を行 うこと になったが、活動の各回で数 シー ンずつ記述 させ る方法が負担が少 な く効果 も得 られ ると 思われ る。
次 に、質問(4)‑の 自由回答 を挙げる。質問(4)では以下の回答が得 られた。
(4)未習の文法や単語 を勉強 しま したが どうで したか プ ラス評
○教科書以外の単語が学習できる
○ これか ら授業で出て くるものを予習できる
○ 日本語の本や ドラマ を見 るのに役立っ
○未習の ものを勉強す るのは好 きだ
○ 日常的な単語が勉強できる
○早 く勉強す ると聴解や読解 で役 に立つ マイナス評価
○使 わない単語や文法は忘れやすい
○文法の詳 しい説 明がな くて効果がない
初級 日本語 クラスにお ける無声
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活用の実践報告質問(4)の未 習 の文法 、単語 の学習 については筆者 の予想 よ りプ ラス評価 が多 く、学生 か らは予習 がで きた とい う高評価 が得 られ た。 本 活動 で は例 えば母親 が子 どもに食事 を与 え てい るシー ンで 「食 べ させ る」とい う未習 の使役 文型 を提示 した。使役 形 は 2年 生 になっ てか らの学習項 目で あ り学生の評価 が気 になったが、 「予習 で きて良い」 とい う回答 が多か ったO また、単語 に関 して も 「電球」 「カ ップ ラー メ ン」 「掃 除機」な どの 日常 的 な言葉 か ら、 「夏祭 り」 「浴衣」な どの文化 に関わ る単語 まで多 くの未習 単語 を扱 い、学生 も 「教科 書以外 の単語 が学習 で き る」 な どの評価 を していた。 しか し、一方 で 「未 習 の ものは忘れ 易 い」、 「文法 の説 明が ない」 とい う意見 も挙 げ られ た。 これ は本活動 では単語 や文型 の導 入後 に定着 に結 びつ くよ うな作業 を行 わなか った こ とが一因で あ るので 、映像 の良 さを活 か した導入 の後 どの よ うに定着 させ るか とい う点 は今後 の改善点 で あ る。 未 習文型や未習 語嚢 の学習 には量や扱 う文型 ・語嚢 の選 定 に注意 が必要で あ る ものの、映像 とともに新 出 の文法や語嚢 を提示す るこ とに よ り学習者 の記憶 に残 りやす く、今後 の学習 に良い効果 を もた らす可能性 が ある と考 え られ る。
次 に、学生 の映像素材 、生素材活用‑ の意識 に関す るア ンケー ト結果 を表 2に示す。質 問(5)‑の回答 か ら分 か るよ うに、文法 の授 業 で は 「映像 を使 いたい」 とい う学生 が半数 以 上 を 占めてい るものの、一方 で 「使 いた くない」 とい う学生 も3人 いたo
<表2> 質問(5)の結果
質問 とてもしたい したい 普通 あま りした くない した くない
(の授 業 で も映5)基礎 日本語 7人 8人 5人 2人 1人
また、(5)の記述 回答 では以 下の よ うに評価 が大 き く分 かれ た。
(5)基礎 日本語 の授 業 で も映像 を使 いたいです か プ ラス評
○授 業 が面 白くな る
○語嚢や 日本 文化 を勉強で きる
○教科書 よ り興 味 を持 てる マイナス評
○ 日本語字幕 のあ るものな らいい
○映像 だ と学ぶ ものが少 ない
○映像 を見 るのは時間の無駄 にな る。授 業外 で 自分 で見た ほ うがいい
OC M
は分 か りに くい○文法学習の時間がな くなる
質問(5)の文法の授業 での映像使用の希望だが、学生によって回答 に大きな差が見 られたO 半数以上の学生 は授 業 で映像 を用い る希望を持 ち、 「教科書 よ り興味 を持て る
」
「授業 が活 性化 して良い」 な どの意見 を挙 げていたが、 「教科書に よる体系的な学習だけでいい」 「映 像 は使 う必要がない」 とい うマイナ ス評価 もあった。 これ には個人の好みだけでな く中国 の大学 における 日本語教育 の現状 が深 く関わってい る と思われ る。 中国の大学 では教科書 を中心 として単語や文法 を学ぶ とい う授業形式が多 く、学生 もこの よ うな授 業 に慣れ てい る。 この よ うな学生 に とっては映像 を見 ることは 「遊び」の よ うなイメー ジがある。 また 映画、 ドラマや アニメな どは趣 味の範 囲で見 るとい う意識 を持 ってい る学生 も多い こ とから、 「非効率的で授業 には適 さない」 とい う意見が多かった と推測 され るa
これ らの回答 か らは映像素材 の活用 についての大 きな示唆が得 られ る。先行研究、先行 実践報告ではこれ まで 「映像素材 は学習者 の興味を喚起 し効果 的である」とい う論があ り、
現場 の教師 も 日本 の ドラマや アニメの人気 か ら映像素材の効果 を盲 目的 に信 じている と考 え られ るが、上述 の よ うな 「映像 を使 いた くない」学生の存在 を考 えるとその活用 は慎重 に行 うべ きであると言 えるだろ う。
次 に、質問(6)、質問(7)の 自由回答 を示す。質問(6)は 「基礎 日本語」の授業で用いたい映 像素材 、質問(7)は 日本語の授業で用いたい生素材 についての質問である。
(6)(5)で 「とて も したい」 「したい」 を選んだ人 は どの よ うな映像 を使 いたいですか (複数 回答可)
映画 アニ メ
ドラマ CM
人人人人07331
(7)日本語の授業で どん な生素材 を使 いたいですか (複数回答可)
映画 5人
生活感のあるもの 5人
ニュース 4人
アニメ 3人
小説 2人
ノ日本文化の映像 1人
初級 日本語 クラスにお ける無声
c M
活用の実践報告人人人111
質問(6)の回答では映画、 ドラマ、アニメ、CMの活用 を希望 していた。質問(5)‑の 自由 回答で挙げ られ た 「文法学習の時間がな くなる」 な ど、限 られた授 業時間を考慮 に入れ る と、短時間であるCMを 目的に応 じて複数活用す ることが実現可能性 が高い と考え られ る。
質問(7)で学生が用いたい生素材 を質問 した ところ、映画や ニュースな ど日本語の学習以外 に 日本人の生活感や文化が感 じられ る素材 を希望 していることが分かった。
5 .
考察作文活動の結果及びアンケー ト結果 をふ まえ活動全体 についての考察 を行 う。本活動で は生の無声映像素材が初級で も活用でき学習効果があるかその実践 を行 なったが、CMの種 類 に対す る学習者 の好悪が見 られた ものの作品の理解 な どに問題 はな く、学生は楽 しみな が ら学習 を行 なってお り活用の可能性 は十分 にあることが分かった。 また、文法知識 の学 習が中心 となる初級 の前半において既習 の文法知識 を活用 した内容重視 のア ウ トプ ッ トが 豊富に行われ てお り、学習効果 も高い と言 える。
しか し、一方で活動の方法 については多 くの課題 が残 った0本活動 では単語や文型 の学 習、シー ン描写での作文活動 を中心に行 なったが、活動 の種類が少 な く学生が活動 に飽 き て しまった恐れ がある。
また、 「台詞 があった方がいい」 とい う意見が挙げ られたことは活動 が不完全だった こと を裏付 けるものである。本活動では初級前半 とい う日本語 が制限 された中での生素材活用 を 目指 し無声CMを用いたが、活動 自体は台詞 がある作品で も行 なえるものであ り、「無声」
とい う特徴 を活か した活動 を行 うことができなかった。 臼井 (2012)では無声映像 の教材 的価値 として 「台詞がない ことによ り動作や変化 の描写が増 える」 とい う点 を挙げたが、
例 えばこれ らに焦点を当てた活動な ど、無声映像特有の活動 を積極的に行 うべ きであった。
6.おわ りに
本活動 を通 して、無声 CM の活用 特初級 レベルで も可能であ り一定の効果が得 られ るこ とがわかったが、その活用 については素材選定及び活用方法での課題が残 った。
素材選定に関 しては初級で も活用可能な CM の調査及び教師間の共有の場の設置が今後の 大 きな課題 である。CMとい うメデ ィアの性質上普段か ら意識的にチェックをす ることは容 易ではな く、また個人のCM のチェ ックには限界があるだろ う。 そ して、も し授業 に適 し たCM があった として も教師間で情報の共有 を行 うよ うな場所 がないのが現状 である。 よ って今後は授業で活用できるCM 素材 の収集 とともに、情報 を共有できるウェブサイ トな どの場の設置 を行 なっていきたい。
謝辞 :本稿の執筆 にあた り、アンケー トの翻訳 を手伝 って くだ さった福州大学外国語学院 日語系卒業生の 黄越 さんに心 よ り感謝 申 し上げます。
《参考文献》
池 田伸子 (2002)「第5章 映像 と日本語教育」城生栢太郎編 『映像 の言語学 日本語教育 シ リーズ<第6 巻 >』お うふ う
臼井直也 (2012)「日本語教育にお ける無声アニメーシ ョンの教材 的価値一初 中級お よび 中上級 クラスでの 実践 か ら‑」『東京外国語大学 日本研 究教育年報』16、21‑30、東京外国語大学 日本課程
鵜生川恵美子 (2011)「無声アニメー シ ョン映画(DV功を使用 した ライテ ィング指導 について」『群馬県立 県民健康科学大学紀要』6、85‑91、群馬県立県民健康科学大学
山田 しげみ ・久保 田美子 (2007) 「海外 向け ビデオ教材 『日本語教育用TV コマーシャル集』 一教材製作 とその評価‑」 『国際交流基金 日本語教育紀要』3、81‑94、独 立行政法人 国際交流基金
《参考URL》
TOSHIBA「も うひ とつの 10年 カ レンダー」篇 ウェブサイ トhttp://www.toShiba・adSCOPejp/?p=4477 (2012/09/20)
《資料》
1.東芝のCM 「10年カ レンダー」の感想 を教 えて くだ さい。
(1)とて も良かった (2)良かった (3)普通 (4)悪かった (5)とて も悪かった 2.授業の中でのCMを使 った勉強 は ど うで したか。
(1)とて も良かった (2)良かった (3)普通 (4)悪かった (5)とて も悪 かった 3.日記 を書 く活動 は ど うで したか。
(1)とて も良かった (2)良かった (3)普通 (4)悪かった (5)とて も悪かった 4,まだ勉強 していない単語や文法 (使役形) を勉強 しま したが ど うで したかD (1)とて も良かった (2)良かった (3)普通 (4)悪かった (5)とて も悪 かった 5.基礎 日語 の授業で このよ うなCMな どの映像 を使 って授業 を したいですか。
(1)とて も したい (2)したい (3)普通 (4)あま りした くない (5)した くない
6. 「5」で 「とて もしたい」 「したい」 を選んだ人 は、映画、 ドラマ、アニメ、CM な どの中で どんな 映像 の種類 を使いたいですか。
7.日本語 の授業で どんな生素材 を使 いたいですか。