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〈論 説〉
金 融 政 策 ル ー ル の現 実 的側 面:
学 説 の 展 望 と 日本 銀 行 の 情 報 優 位?
地 主 敏 樹
序
近 年,金 融 政 策 ル ー ル の 分 析 が 盛 ん で あ る 。Taylorが 始 め た こ の ア プ ロ0チ は,一 方 で シ ミ ュL一 シ ョ ン分 析 を通 して 最 適 ル ー ル を探 る方 向 に,他 方 で そ の 現 実 妥 当 性 を探 る 方 向 へ と, そ れ ぞ れ に 発 展 し て き た 。
最 適 ル ー ル の 探 求 は,ミ ク ロ 的 基 礎 に 裏 付 け ら れ た マ ク ロ モ デ ル1に お い て,様 々 な 金 融 ・財 政 政 策 ル ー ル の パ フ ォ ー マ ン ス を比 較 す る と い う手 法 を 通 し て,試 み られ て い る。 モ デ ル の 特 長 は,各 経 済 主 体 の 行 動 が 将 来 の 経 済 状 態 を 考 慮 に 入 れ たforward‑lookingな も の で あ る 点 に あ る 。 金 融 政 策 が 長 期 的 中 立 性 を満 た す モ デ ル が 多 い の で,そ の パ フ ォ0マ ンス 評 価 は,、生 産 や イ ン フ レ率 の(水 準 ではな く)変 動 性 に 基 づ く もの に な る。 効 用 関 数 や 生 産 関 数 と政 策 ル ー ル の パ ラ メ ー タ ー に よ っ て,達 成 可 能 な 変 動 性 の 組 み 合 わ せ の 集 合 が 規 定 さ れ る 。 政 策 当 局 は ,自 らの 目 的 関 数 の パ ラ メ ー ター に 応 じた 最 適 な 組 み 合 わ せ を 選 び,対 応 す る 政 策 ル ー ル を 実 施 す れ ば よい
とい うの で あ る。
こ の シ ミュ レー シ ョ ン分 析 に は マ ク ロ経 済 学 の 新 た な 地 平 を 切 り開 く可 能 性 が あ る が ,現 段 階 で は 未 だ 萌 芽 期 に あ る と 言 わ ざ る を 得 な い 。 き わ め て シ ン プ ル な モ デ ル が 多 い し,forward‑
lookingな 家 計 や 企 業 が シ ョ ッ ク に 対 応 して 長 期 均 衡 へ の 収 束 経 路 を 毎 期 計 算 し直 す と い う極 端 な 合 理 性 を 設 定 して い る 。 現 実 か らほ ど遠 い こ と は,明 瞭 で あ ろ う。
本 稿 で は,も う一 方 の 研 究 方 向 で あ る,金 融 政 策 ル ー ル の 現 実 へ の 適 用 と い う こ と を テ ー マ と して,関 連 す る 諸 研 究 の 整 理 を試 み る2。 な お,関 連 文 献 が 膨 大 な の で ,網 羅 的 で は な い こ と を 予 め 断 っ て お き た い 。
次 節 と2節 で 自 然 率 及 び リア ル タ イ ム ・デ ー タ に 起 因 す る 不 確 実 性 に 触 れ ,3節 で は そ の結 果 と し て の 金 利 ス ム ー ジ ン グ に 関 す る 研 究 を み る 。 中 央 銀 行 の 収 集 して い る 情 報 に つ い て
,4・5 節 で 米 国FRBに 関 す る 研 究 を み て,6節 で は 日本 銀 行 に つ い て 検 討 す る 。 最 後 の7節 で,経 済 構 造 を 学 習 しな が ら の 金 融 政 策 運 営 に 関 す る研 究 を論 じる 。
1テ イ ラ ー ・ル ー ル の 適 用?
金 融 政 策 ル ー ル の 代 表 と して 有 名 に な っ た テ イ ラ ー ・ル ー ル は,当 初 に お い て は,名 目GDP 目標 に基 づ い た 金 融 政 策 運 営 ル ー ル と して イ ン フ レ率 と生 産 と に等 しい 反 応 係 数 を もつ よ う に, か つ 現 実 の 政 策 運 営 を か な り フ ォ ロ ー で き る よ う に,設 計 さ れ た か に推 測 さ れ る。 テ イ ラ ー ・
ル ー ル は,き わ め て シ ン プ ル な 次 式 で 表 さ れ る 。
実 質 短 期 金 利(%)=自 然 利 子 率(%)+0.5×(イ ン フ レ率(%)一 目標 値) +0.5×(実 質GDP÷ 自然 率 水 準 値 一1)×100
右 辺 第1項 の 自 然 利 子 率 は,理 論 上,経 済 の 総 需 要 を 自 然 率 水 準 の 生 産 と等 し く させ る と い う 意 味 で の 均 衡 利 子 率 で あ る が,観 察 不 可能 な 変 数 で あ り,実 証 分 析 に お い て は,実 質 短 期 金 利 の 長 期 平 均 値 が 用 い られ る こ とが 多 い 。
右 辺 第2項 は,現 実 の イ ン フ レ率 の 目標 値 か ら の 乖 離(%ポ イ ン ト)に 応 じ て そ の 半 分 だ け 実 質 金 利 を 引 き 上 げ る こ と を 意 味 して い る 。 実 際 に観 察 可 能 な 名 目金 利 で 考 え る と,イ ン フ レ率 の 目標 値 か ら の 乖 離 の!.5倍 分(%ポ イ ン ト)だ け,名 目金 利 を 引 き上 げ る こ と に な る 。 こ の 「名 目 金 利 で 考 え た 場 合 にrイ ン フ レ率 へ の 反 応 係 数 が1を 超 え て い る こ と」 は,イ ン フ レ率 上 昇 に 対 応 して 実 質 金 利 引 き 上 げ と い う 引 き締 め 行 動 を とる こ と に な る 。 こ の 政 策 行 動 パ ター ン は,当 該 政 策 ル ー ル が 経 済 を 安 定 化 させ る た め に 必 要 で あ り3,テ イ ラ ー 原 則(principle)と も 呼 ば れ る
よ うに な っ た 。
この ポ イ ン トは,ア メ リ カ の 連 邦 準 備 制 度 の 政 策 行 動 の 検 証 に お い て も,注 目 さ れ た 。 「イ ン フ レ沈 静 化 を 成 功 さ せ たVolker以 降 の 政 策 行 動 は こ の テ イ ラー 原 則 を満 た して い る の にrそ れ 以 前 の 高 イ ン フ レ期 の 政 策 行 動 は 満 た して い な か っ た 」 とい うの で あ る。 こ の 金 融 政 策 ル ー ル の 違 い で,70年 代 の 高 イ ン フ レ と そ の 後 の 低 イ ン フ レ とが 説 明 で き る と い う解 釈 に も,一 定 の 支 持 が 集 ま っ て い る 。
右 辺 第3項 は,GDPギ ャ ッ プ(実 質GDP現 実 値の 自然率 水準 値 か らの 乖離(%))に 対 応 し て,や は りそ の 半 分 だ け実 質 金 利 を 変 化 させ る こ と を 意 味 して い る。 こ の 反 応 の 大 き さ に つ い て は,そ の 後 の 諸 シ ミュ レー シ ョ ン分 析 に お い て,よ り大 き な 反 応 係 数(例 えば1.o)の 方 が 高 い パ フ ォー マ ン ス を 得 られ る とい う結 果 が,多 く報 告 さ れ て い る 。
自 然 率 水 準 の 実 質GDPは,自 然 率 水 準 の 失 業 率 に 対 応 す る 生 産 水 準 で あ り,や は り均 衡 水 準 を示 して い る 。 自然 率 水 準 の 失 業 率 は,理 論 上,労 働 市 場 に お い て 就 職 数 と離 職 数 とが バ ラ ン ス す る よ う な均 鰍 業 率 で あ り,そ の 結 果 と して(胴 需給 か ら飴 へ の」昇 ド降肋 が ない ので)イ
ン フ レ率 の 安 定 と も整 舗 とな る.し か し,こ の 燃 率 水 勤 失 業 率 や 類GDPも 観 察 不 可 能 な変 数 で あ り,実 証 分 析 に お い て は 長 期 ト レ ン ドな ど様 々な 手 法 で 推 定 さ れ て き た4。
以Lか ら推 測 で き る よ う に,テ イ ラー ・ル ー ル は き わ め て シ ン プ ル な 数 式 で 表 さ れ る も の の, 現 実 に馴 す る 場 合 に 臆 外 に轍 力・多 い.自 然 利 子 靴 自然 率 水 準GDPと い う 二 つ の 礁 不
金融政策 ルール の現 実的側面:学 説 の展望 と日本銀 行の情報優 位?73 可 能 な均 衡 値 が 用 い られ て い る こ とが,問 題 を 発 生 させ て い る の で あ る 。
2リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ に よ る検 討5
テ イ ラ ー ・ル ー ル を 実 際 の 政 策 運 営 に 適 用 し よ う と す る と,自 然 率 水 準 の2変 数(利 子 率 と実 質GDP)以 外 の 問 題 点 も 明 ら か に な っ て く る 。 そ れ は,政 策 決 定 時 点 に お い て 利 用 可 能 な デ ー タ,つ ま り リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ6が か な り不 完 全 で あ る と い う 点 で あ る7。 金 融 政 策 の 運 営 に 関 す る 意 思 決 定 は,し ば し ば,戦 場 に お け る 意 思 決 定 と 類 似 し て い る と 指 摘 さ れ て き た 。 戦 場 で も 敵 味 方 の 状 況 を 完 全 に 把 握 で き な い ま ま に,意 思 決 定 を 迫 ら れ る か ら で あ る 。
こ の 点 の 重 要 性 を 示 し た の は,Orphanidesの 一・連 の 研 究 で あ っ た 。Olphanidesの 研 究 は,リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ を 用 い る と,テ イ ラ ー ・ル ー ル に か か わ る 実 証 研 究 の 結 果 が 変 わ る こ と を 示 し た 。 基 本 的 に は,リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ に オ リ ジ ナ ル の テ イ ラ ー ・ル ー ル を 適 用 す る と, Volker以 前 の 金 融 政 策 を ほ ぼ 忠 実 に 復 元 す る 形 に な る(図1)8。 オ リ ジ ナ ル の テ イ ラ ー ・ル ー ル の イ ン フ レ 反 応 係 数 は1.5だ か ら,当 時 の 政 策 運 営 も テ イ ラ ー 原 則 を 満 た し て い た の だ ろ う と 言 う の で あ る 。 係 数 推 定 値 も こ の 推 論 を 裏 付 け た(表1)。 二 つ の 時 期 に お け る 政 策 運 営 の 相 違 は, イ ン フ レ 反 応 係 数 の 大 き さ で は な く,GDPギ ャ ッ プ の 反 応 係 数 がVolker以 後 に 小 さ く な っ た こ
と で あ ろ う と,Orphanidesは 示 唆 し て い る9。
Smets(1g98)やRudebush(f・rthc・ming)は,シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 通 し て,デ ー タ の 不 確 実 性 が 存 在 す る 下 で は 最 適 な 政 策 ル ー ル の 反 応 係 数 が 小 さ く な る こ と を,示 し た 。 テ イ ラ ー ・ル ー ル に お い て デ ー タ の 不 完 全 性 が 特 に 顕 著 な の はGDPギ ャ ッ プ で あ り,そ の 反 応 係 数 が 小 さ く な る べ き な の で あ る 。
図1テ イ ラ ー ・ル ー ル=リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ と 事 後 デ ー タ(Currentdata) Persent
161514131211109876543210
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1969 197019711972 1973 1974 197519761977 19781979 出 処:Orphanides(2000)Figure2.
表1政 策 ル ー ル の 推 定 結 果 推 定 式:
、FF金 利t=pFF利f‑1+(1一 ρ)(a+β ゴ 四 半 期 後 半 ま で の 予 想 イ ン フ レ 率t+γ.
リ ア ル タ イ ムGDPギ ャ ッ プt)+誤 差 項
a Q Y P SEE π2
i=1
1966:1‑1979:2
1979:3‑199:4
1.531.64 (1.3])(0.38)
1.311.80 (1.84)(0.48)
0.570.70 (0.12)(0.07)
0.270.79 (0.30)(O.‑‑)
0.$1
1.19
0.86
0.9Q
i=2
1966二1‑1979:2
1979:3‑1995:4
2.121.61 (1.39)XO.36}
1.071.85 (1.83)(0.50)
0.600.67 (0.13)(0,08)
0.240.78 (0.23)(0.09)
!'1
x.18
0.87
o.so
i=3
1966:1‑1979:2
1979:3‑1995:4
2./31.65 (1.80)(0.42)
0.801.89 (!.56)(0.43)
o.s20.s9 (0.15)(0.08)
0.!90.76 (0.19)(0.07)
0.88
1.17
0.85
1・1
2=4
1966:1‑!979:2
1979:3‑1995:4
3.531.44 (1.85)(0.41)
0.541.95 (1.41)(0.38)
0.610.72 (0.21)(0.10)
0.170.74 (0.15)XO.05)
0.95
1.ユ4
0.84
0.90
出 処:Orphanides(2001)Table1..
Aoki(]998)は,最 適 政 策 の 理 論 分 析 で 明 快 に そ の 理 由 を示 し た 。Brainard(1967)が 古 典 的 研 究 で 示 し た 教 訓 は,「 モ デ ル の 係 数 な どの パ ラ メ ー タ ー に か か わ る 不 確 実 性=「 乗 法 的 不 確 実 性 」 は 最 適 な 政 策 行 動 の 規 模 を 小 さ くす る が,単 な る デ ー タの 不 確 実 性=「 加 法 的 不 確 実 性 」 は リ ス ク 中 立 的 な 政 策 当 局 の 政 策 行 動 に 影 響 し な い 」 とい う も の で あ っ た 。 こ の 教 訓 は 広 く受 け 入 れ ら れ て きた が,「 政 策 行 動 の う ち で,デ ー タ の 誤 差 部 分 に 対 す る 反 応 部 分 は 不 要 な も の で あ り,不 要 な 政 策 行 動 の 結 果 と して マ ク ロ経 済 の 変 動 を 高 め て し ま う 」 の で あ る 。 不 要 部 分 の 影 響 は,GDPや イ ン フ レ率 の 平 均 的 水 準 に 関 して は,長 期 的 に は 均 さ れ て 消 え て し ま う。 しか し, 政 策 ル ー ル の 評 価 基 準 は イ ン フ レ率 やGDPギ ャ ップ の 安 定 性 で あ る 。 不 完 全 な デ ー タへ の 反 応 は そ れ ら の 安 定 性 を低 下 させ る こ と に な る の で,好 ま し くな い と評 価 され る 。 した が っ て,最 適 な 政 策 反 応 係 数 の 規 模 は,該 当 す る変 数 の 不 確 実 性 の 度 合 い が 高 ま る につ れ て,小 さ くな る の で あ る 。
Sack(2000)は さ ら に,ア メ リ カ経 済 に 関 して,乗 法 的 ・加 法 的 双 方 の 不 確 実 性 を 導 入 し て, そ れ ぞ れ の 政 策 行 動 へ の 影 響 を 調 べ て い る。 彼 の 問 題 意 識 の 焦 点 は.現 実 の 政 策 行 動 に お い て 見 受 け られ て い る 部 分 纏 的 な 行 動 の 原 因 に あ っ た.搬 な 繍 は ・ この 二 つ の 不 確 難 の 存 在 に
金融 政策 ルールの現実 的側面:学 説 の展望 と日本銀 行の情報優 位?75 よ っ て 最 適 政 策 が 慎 重 に な り,現 実 の 政 策 運 営 を ほ ぼ 説 明 で き る と言 う もの で あ る 。 現 実 の 慎 重 な 政 策 行 動 を 説 明 す る の に,生 産 や 物 価 と言 う基 本 目標 以 外 に,利 子 率 ス ム ー ジ ン グ と い う特 別 な 目標 を 連 邦 準 備 が 追 求 して い る と考 え な く て も い い と言 う の で あ る 。
3金 利 スムージ ング=慎 重 な政策行 動?
政 策 行 動 を検 証 す る場 合 に 用 い ら れ て き た の が,政 策 反 応 関 数 の 推 定 で あ る 。 基 本 的 に は,政 策 手 段 変 数 を 被 説 明 変 数 と し て,政 策 目標 あ る い は 政 策 指 標 の 諸 変 数 を説 明 変 数 と した 回 帰 式 を 推 定 す る の で あ る 。 金 融 政 策 の 文 脈 で は,次 式 の よ う な形 に な る。
手 段 変 数(短 期金利 か貨幣量)t
eβ1目 標(指 標)変 数1t+β2目 標(指 標)変 数2t+…
問 題 意 識 に応 じて 定 式 化 に は様 々 なバ リエ ー シ ョ ンが あ る が,最 近 で は,テ イ ラ ー ・ル ー ル に 近 い 形 を採 用 す る こ とが 多 い 。
実 際 の 推 定 に お い て は,ほ とん どの 定 式 化 に お い て,被 説 明 変 数 で あ る 手 段 変 数 の1期 ラ グ値 を 説 明 変 数 に加 え て い る 。1期 ラ グ値 の 係 数 推 定 値(慣 性値)は 有 意 性 も高 く,1に か な り近 い 値 を と る こ とが 多 い 。
この よ う に1期 ラ グ 値 の 影 響 が 強 い こ と は,政 策 行 動 が 漸 進 的 で あ る こ と を示 して い る 。 この 観 察 に対 して は,様 々 な解 釈 が 提 示 さ れ て き た 。 意 図 的 な 利 子 率 の ス ム ー ジ ン グ が 行 わ れ て い る の か ど うか が,一 つ の 焦 点 で あ る 。 金 利 ス ム ー ジ ン グ を正 当 化 す る議 論 と して ,金 融 市 場へ の撹 乱 的 影 響 の 防 止 が 挙 げ られ よ う。 金 融 機 関 は,諸 金 融 資 産 につ い て ロ ン グ と シ ョー ト両 ポ ジ シ ョ
ン を大 き く と っ て い る 。 大 幅 な 金 利 変 動 が 引 き起 こ す 資 産 価 格 変 動 に よ っ て 大 き な 損 失 を 被 る 金 融 機 関 が 出 現 す る と,金 融 市 場 へ 撹 乱 的 効 果 が 及 ぶ 危 険 性 が あ る と い う の で あ る 。 金 融 政 策 行 動 が 原 因 で は な い が,1998年 の ロ シ ア 危 機 とLTCM破 綻 が 好 例 で あ ろ う。 近 年 ,様 々 な リ ス ク ヘ ッ ジ手 段 が 活 用 で き る よ う に な っ た とは い え ,問 題 は発 生 して い るので あ る。
Goodhart(1998)は,前 述 のSackの 研 究 を利 用 し英 国 に 適 用 しつ つ ,最 適 政 策 か らの乖 離 を 検 討 し た 。 最 適 政 策 が 毎 期 達 成 さ れ て お れ ば 次 の 政 策 行 動 は 予 想 で き な い は ず で あ る と し て ,諸 国 に お い て 政 策 行 動 の 方 向 転 換 が 少 な く同 じ方 向 の 政 策 行 動 の 連 続 が 多 い こ と を,最 適性 か らの 乖 離 か も しれ な い と重 視 し て い る(表2)。BeanはGoodhart論 文 へ の コ メ ン トの 中 で ,漸 進 的 な 政 策 行 動 に 関 係 して,次 の よ う な4分 類 を示 した 。
① 慎 重 性(cauti・us)不 確 実 性 に 直 面 して 政 策 行 動 を 小 さ くす る こ と。
② 保 守 性(c・nservatism)小 さ い 政 策 行 動 を よ り早 く実 施(pre‑emptive)す る こ と で
,高 い 効 果 を 狙 う こ と。
③ 漸 進 性(gradualism)大 き な 政 策 行 動 が 必 要 な の に,数 回 連 続 の 小 さ な 行 動 に 分 割 す る こ と
。
④ 遅 行 性(delay)政 策 実 施 時 期 が 遅 れ る こ と。
Beanは,④ の 遅 行 性 を正 当 化 す る こ と は 難 し い と して
,そ れ が 方 向 転 換 の 少 な さ に 反 映 さ れ て
表2政 策 金 利 の 調 整
Sequenceofadjustment
Numberofchanges Averageduration/a} Averagechange(b)
十 十 率 一 一 十 十 十 十 一 一 十 十 十 十 一 一 十
UnitedStates Germany France Italy UnitedKingdom Canada Spain Australia Netherlands Belgium Sweden Austria
6589804259講5ρ0ワ臼‑五FD1111 1156715/7711))‑り乙 2166824ユ882玉ハ﹂‑Lワ臼 276441378248208282310824ユー 1272626367604242325411171 84229723502202786571ーユ341⊥141 147193742260237240663845311﹂ウ﹂111 9413315750043工3822361113
0.460.250.250.28 0.25a.790.lzo.15 0.5ユ0.400.830.21 1.310.880.9GO.73 0.940.500.770.37 0.430.250.250.̀L5 0.420.240.350.38 1.000.500.750.79 0.420.530.400.21 0.450.240.340.14 0.120.250.270.18 0.380.500.250.16
注 二++=2回 連 続 の 利 上 げ,+一=利Lげ 後 の 利 一ドげ
一+=利 下 げ 後 の 利 上 げ,一 一=2回 連 続 の 利 下 げ 出 処:GOodhan(1999)TableF,
い る 可 能 性 を示 唆 し て い る 。
も う一…人 の コ メ ン ター で あ っ たCanada銀 行 副 総 裁 のFreedmanは,政 策 運 営 側 の 立 場 か ら 様 々 な コ メ ン トを して い る が,第3の 不 確 実 性 と して モ デ ル 不 確 実 性 を 強 調 して い る。 政 策 効 果 の 検 討 に 複 数 の モ デ ル を用 い る こ と が,現 実 的 な 対 応 で あ る10。 一 部 の モ デ ル に対 して の み 高 パ フ ォ ー マ ンス を 示 す 政 策 ル ー ル は,現 実 に 適 用 す る に は 危 険 す ぎる こ と に な る。 広 範 な モ デ ル に 対 して,一 貫 して 良 好 な パ フ ォー マ ンス を 示 す とい う意 味 で,ロ バ ス トな政 策 ル ー ルが 望 ま しい の で あ る。
Freedmanは,「 政 策 行 動 の 方 向 逆 転 が 少 な い こ と を 最 適 政 策 か ら の 乖 離 とみ な す 」 こ と に 対 し,経 済 変 動 の 短 期 的 な方 向 性 は 明 確 で も そ の 持 続 性 が 不 明 な こ とが 多 い こ と を 指 摘 して,留 保 を表 明 して い る 。 過 去 の 経 験 か ら 平 均 的 な 持 続 性 が 判 っ て い て も,そ れ を根 拠 に 政 策 行 動 を外 部 に対 して 正 当 化 す る こ と は 難 しい と も述 べ て い る 。
理 論 面 で は,金 利 ス ム ー ジ ン グ を正 当 化 す る 新 しい 議 論 が,Woodford(lggg)に よ っ て 提 示 さ れ て い る 。 金 融 政 策 ル ー ル に 高 い 慣 性 を 設 定 す る と,小 さ な 政 策 行 動 で も,経 済 に大 き な影 響 を 与 え 得 る とい う の で あ る 。 民 問 主 体 は 将 来 を 考 慮 に 入 れ て 行 動 す る 。 小 さ な 政 策 行 動 が 連 続 す る と予 想 す る と,将 来 の 予 想 金 利 経 路 も 大 き く変 化 す る 拷 え る ・ これ は,長 期 斜1」の 変 化 に 反 映 さ れ て,鯉 価 格 や 民 聯 覇 そ〕・動 に影 響 す る こ と に な る ・ 民 町 三体 がf・㎜a・d‑1・・kingに 愚思 決 定 を行 う ほ ど,政 策 ル ー ル が 信 頼 され る ほ ど,こ の 効 果 も高 ま っ て い く。
金 利 ス ム ー ジ ング に対 す る 反 論 も数 多 い 。 実 証 面 で の 反 論 は,観 察 さ れ た金 利 ス ム ー ジ ン グが そ れ 自 身 を 意 図 した もの で は な い,と 三i張す る.Rud・bu・h(2・ ・2)は 淀 型 的 な 利 子 率 ス ム ー ジ
金融政 策 ルー ルの現実 的側 面:学 説の展 望 と日本銀行 の情報優 位?77
ン グ は 市 場 に 予 測 され る の で 金 利 の 期 間 別 構 造 に 反 映 さ れ る は ず な の に ,そ うな って い ない こ と を 示 した 。 そ して,単 純 な 政 策 ル ー ル の 説 明 変 数 か ら排 除 さ れ て い る 様 々 な 変 数 が,誤 差 項 に 系 列 相 関 を発 生 させ て い る の だ と論 じ た11。Englishetal(2002)は,誤 差 項 の 系 列 相 関 がAR(1)の 場 合 に はRudebushの 議 論 へ の 反 証 が 得 ら れ る こ と,し た が っ て 部 分 調 整 メ カ ニ ズ ム が 有 意 で あ
る こ と を示 した 。 彼 ら は,部 分 調 整 メ カニ ズ ム と誤 差 項 の 系 列 相 関 の 両 方 が 影 響 して い る の で は な い か と,示 唆 して い る。
理 論 面 で の 反 論 は,最 悪 の ケ ー ス を 一 番 ま しな もの に す る と い う(マ キ シ ・ミン)の ア プ ロ ー チ を と る もの で,そ の 意 味 で 頑 健(robust)な 政 策 で あ る と称 して い る 。OnatskiandStock(2000) な どが あ り,金 利 ス ム ー ジ ン グ と は逆 に,デ フ レ ー シ ョ ンの よ う な 悪 い 状 況 の 懸 念 に 対 応 して , 通 常 以 上 に 増 幅 さ れ た 過 剰 な 政 策 行 動 を 採 るべ き で あ る と して い る 。 当 然 の こ と に 「手 段 不 安 定 性(instrumentinstability)を 発 生 させ る の で は な い か 」 と批 判 され て お り,Aokiの 議 論 で み た よ う
に 政 策 行 動 そ の も の が 不 要 な 経 済 変 動 の 源 と な っ て し ま う危 険 性 が 明 ら か で あ る 。 し か し,「 戦 力 の 逐 次 投 入 は兵 家 の 忌 」 と い う格 言 を想 起 させ る 考 え 方 で あ り,適 用 す べ き状 況 の 見 極 め が 重 要 な の か も しれ な い 。
4中 央銀行 の も ってい る情報?
確 か に 第2節 で 見 たOrphanidesの 研 究 は 興 味 深 い も の で あ る が,大 き な 欠 点 が あ る12。 中 央 銀 行 に利 用 可 能 な 情 報 の 質 と 量 を,不 当 に低 く制 限 して い る との 印 象 は 否 み が た い 。 中 央 銀 行 は ・ 実 質GDPギ ャ ッ プ に つ い て も,(Philadelphia連 銀 が 公表 して い る よ う な)単 純 な リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ を超 え る,様 々 な 関 連 情 報 を もっ て い る は ず で あ る。 ビ ジ ネ ス ・エ コ ノ ミス トの 経 験 が 長 いGreenspan現 議 長 が 賞 賛 さ れ て い る の も,米 国 経 済 デ ー タ に 対 す る 彪 大 な 知 識 に 基 づ い て,詳 細 に現 状 確 認 を行 っ て い る 点 で あ ろ う。 テ イ ラ ー ・ル ー ル に リ ア ル タ イ ム のGDPギ ャ ッ プ値 を代 入 す る こ とは,確 定 値 デ ー タ を代 入 す る こ と と は逆 方 向 に 非 現 実 的 な 思 考 実 験 で あ る と 評 価 で き る の で は な い だ ろ うか 。
こ の 考 え 方 を 裏 付 け る よ う な 研 究 も存 在 し て い る 。BernankeandBoivin(2000)は,Stockand Watson(1999)が 工 夫 した 多 数 の 系 列 の デ ー タ を 用 い て 主 要 マ ク ロ 系 列 を 予 想 す る 方 法 を
,金 融 政 策 運 営 の 検 討 に 適 用 して い る 。GDPと そ の 構 成 要 素 ,CPI・PPIと そ の 構 成 要 素,金 融 市 場 の 諸 価 格,労 働 時 間,機 械 受 注,小 売 売 上 ,住 宅 建 設 な ど,連 邦 準 備 銀行 が モ ニ ター して い る広 範 な 諸 変 数 を利 用 し て,そ れ ら に 共 通 す る主 因 子 を 通 じて
,主 要 マ ク ロ変 数 を予 測 す る の で あ る 。 最 終 的 に は,政 策 運 営 の ベ ンチ マ ー クへ の 利 用 を検 討 して い る 。
彼 ら は,生 産 指 数 や 失 業 率 とCPI指 数 に つ い て ,
①St・ck‑W・t・・nの 方 法 が 単 純 な 舐 や 隙 よ り も 良 い 予 測 パ フ ォー マ ン ス を も た ら し得 る こ と。
② 使 用 す る デ ー タが リア ル タ イ ム 値 か 最 終 確 定 値 か の 違 い は
,予 測 精 度 に あ ま り影 響 しな い こ
と 。
③ 使 用 す る デ ー タ 系 列 の 豊 富 さ が,予 測 精 度 に 対 し て,よ り 大 き な 影 響 を も た ら す こ と 。
④FRBス タ ッ フ の 作 成 す るGreenbookの 予 測 精 度 は,Stock‑Watsonの 方 法 よ り も,僅 か な が ら も9よ り 高 い 予 測 精 度 を も っ て い る こ と。
を 報 告 して い る 。
FRB等 の 中 央 銀 行 ス タ ッ フ は,継 続 的 に 大 量 の デ ー タ を 収 集 し て,「 複 数 の 大 型 計 量 モ デ ル, 複 数 の(VARの よ う な)小 型 統 計 モ デ ル,発 見 的 で あ っ た り 主 観 的 判 断 を 要 し た り す る 分 析,多 様 な 情 報 源 か ら 得 ら れ た 諸 情 報 の イ ン フ ォ ー マ ル な ウ ェ イ ト付 け を 混 合 判 し て,経 済 の 現 状 分
析 ・予 測 作 成 を 行 っ て お り,そ の 予 測 精 度 は 高 い の で あ る 。 こ の 研 究 結 果 か ら も,中 央 銀 行 が も っ て い る 大 量 の デ ー タ を 無 視 し た リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ と い う も の の 非 現 実 性 が 明 ら か で あ ろ う 。
た だ し,BernankeandBoivinの 研 究 に は,リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ と し て78系 列 し か 利 用 で き て い な い と い う 欠 点 が あ る 。 比 較 の 条 件 を コ ン ト ロ ー ル す る た め に 彼 ら は,2段 階 ア プ ロ ー チ を 取 っ て い る 。 ま ず,同 じ78系 列 の み を 含 ん だ 確 定 値 デ ー タ セ ッ ト を 作 成 し て,予 測 比 較 を し て ② の 結 果 を 得 た 。 こ の78系 列 し か 用 い な い 予 測 の 精 度 は,単 純 なARやVARに 比 べ て,僅 か し か 改 善 し て い な い 。 次 い で,215系 列 を 含 ん だ 確 定 値 デ ー タ の フ ル セ ッ ト と 比 較 し て,③ の 結 果 を 得 た の で あ る 。 フ ル セ ッ ト を 用 い る と,予 測 制 度 の 改 善 はRMSE(平 均2乗 誤 差 の 平 方 根)で 測 っ て20〜30%と 顕 著 な の で あ る ・
こ の2段 階 ア プ ロ ー チ も 一 定 の 対 応 で は あ る が,や は り現 実 か ら は 乖 離 し て い る と い わ ざ る を 得 な い 。 現 実 に お い て は,リ ア ル タ イ ム で も215系 列 が 利 用 可 能 で あ る が,そ の 多 く の 系 列 に つ い て は か な り 遅 れ た 情 報 し か 利 用 で き な い は ず で あ る 。 こ の 点 を き ち ん と 入 れ た 分 析 を 行 わ な い と,リ ア ル タ イ ム で の 多 数 系 列 利 用 が,自 動 操 縦 的 な ベ ン チ マ ー ク に 利 用 で き る か ど う か は 判 ら な い 。
5中 央銀 行の も っている情 報の対 民間優 劣
前 節 で,中 央 銀 行 が 大 量 の デ ー タ を集 め て,経 済 の 不 確 実 性 に対 処 し よ う と して い る こ と,そ の 予 測 精 度 が か な り高 い こ と を 見 た.本 節 で は,そ の 予 測 鞭 を ・ イ也の 謝 翻 の 作 成 した 予 測 と 比 較 し た 一 連 の 研 究 を 見 て み よ う 。
RomerandRomer(2000>は 夫 婦 で 金 融 政 策 につ い て の 一一連 の 研 究 を 行 っ て きた 。 ナ ラ テ ィ ブ.ア ブ 。̲チ に 基 づ い た 研 究 は 良 く矢目られ て い る11。彼 ら は,FRBの 予 測 を 民 間 の 諸 予 測 と・
ス トレ ー トに 比 較 し た 。 現 実 の イ ン フ レ率 の 予 測 値 と して の 優 劣 を,次 の 回 帰 式 で 調 べ て い る。
イ ン フ レ率t=δ+YC民 間 予 測 値t+YFFRB予 測 値t+誤 差 項t
表3に 示 さ れ て い る よ う に,3案 重鋤 民 間 予 測 の ど れ と組 み 合 わ せ て も・ 肥 予 測 の 騰 値 が1 に 近 くbな の に,賄 予 測 の 係 数 は 小 さ く非 龍 で しか な い の で ・FBの 予 測 の 精 度 の 方 が
金 融 政 策 ル ー ル の現 実 的 側 面:学 説 の 展 望 と 日本 銀 行 の 情 報 優 位?79 表3..と 民 間 の イ ン フ レ予 測 比 較
イ ン フ レ率'=δ+鉾 民 間予 測 値t+抄 月 〜B予 測 値c+誤 差 項t 予 測 期 間Forecasthorizon
(四 半 期)(Quarters)
s フケ Rz
BlueChip a 1 2 3 4 5 6 オ(0‑4)
1' 0 1 2 3 4 5 6 7
オ(0‑4)
囲01234S
,u(0‑4)
000000■⊥
06{0 49{0 56(0 22(0 18(0 64(1 30(0
40) 52) 45) 60) 68) 17) 77) 0.50(0.36)
00000001
一一﹁一一}
17(0 10(0 27(0 16(0 51(0 67(0 81(1 51(1
34) 43) 50) 57) 65) 85) 05) 49)
一 〇.15(0.41)
∩)Ol下⊥0
00(0 46(0 55(0 27(0 72(0
38) 47) 77) 83) 81) 1.09(0.53)
(UO(∪000∩U
一一一一一
35(0 35(0 30(0 34(0 31(0 23(0 55(0
23) 27) 25) 32) 32) 41) 18) a.2s(o.21>
00000000
一一一一一一一
3s(a O3(a is{a 24{0 65(0 72(0 33(0 3a(o
16) 21) 20) 30) 38) 49) 43) 38)
一 〇.53(0.36)
00000
一一一皿
15(0 47(0 78(0 83(0 93(0
19) 21) 44) 33) 3s)
一1 .08(0.38}
01⊥‑⊥11⊥00
一
64(0 21(0 12(0 23(0 19(0 93(0 20(0
18) 20) 22) 25) 37) 49) 18) 1.1(0.21)
66(00 04(01 18(01 32(01 :1i1 87(01 45(01 42(01
18) 23) 18) 29) 41) 53}
55) 66) 1.57{0.38)
88(00 45(01 57(01 70(01
"11 18) 21) 38) 32) 34) 1.93(0.35)
つ﹂‑上01⊥47﹂7fOOO◎7置7σ5り09島
(UAUAUOOOO
0.9!
029861548644444500000000
0.74
ハ04Q﹂ρ0007■ハ04﹂44
00000
0.75
7578ツ87窟り00﹂80﹂O﹂∩ンO﹂0ゾρ090
93
170 170 168 161 146 105 so 38 146
QVQソ06り047747ワ♂£U
64
注:デ ー タ の 期 間 はBlueChip1980:1‑1991:11,DRI1970:7‑1991:11,SPF1968:11‑1991:11。
出 処:RomerandRomer(2000).
高 い と 結 論 し て い る 。
Fausteta1(2002)は,RomerandRomerと は 逆 に,連 邦 準 備 に は 特 別 な 情 報 優 位 が な い と い う 結 果 を 提 示 し て い る 。RomerandRomerと は 異 な り,彼 ら の 研 究 は き わ め て 厳 し い コ ン ト ロ ー ル を 施 し た も の で,超 短 期 に お け る 情 報 優 位 の 検 定 で あ る 。 し た が っ て
,異 な る 結 果 が 得 ら れ た か ら と い っ て,両 者 が 互 い に 矛 盾 し た 内 容 で あ る と は 限 ら な い 。Fausteta1は ,金 融 政 策 行 動 が 起 き た 後,そ の 前 月 の デ ー タ が 公 表 さ れ る ま で の 問 の 対 応 す る 民 間 予 想 値 の 変 化 を 見 た の で あ る 。 前 月 の 値 な の で 政 策 行 動 の 影 響 を 受 け る こ と は な い が ,政 策 行 動 が 特 別 な 内 部 情 報 に基 づ い た も の で あ れ ば,公 表 ま で の 問 の 超 短 期 に お い て は,公 表 値 を 予 想 す る 民 間 主 体 に と っ て 有 益 な は ず で あ る 。 予 想 さ れ な か っ た 政 策 行 動 の 中 に,民 間 主 体 が シ ス テ マ テ ィ ッ ク に 利 用 で き る よ う な 情 報 が 含 ま れ て い な い と い う の が,Fauseteta1の 結 論 で あ る 。 唯 一 の 例 外 は,FRB自 体 が 作 成 し て い る デ ー タ で あ る 生 産 指 数 で あ っ た15。
GavinandMandal(2002)。 よ,FOMCメ ン バ ー の 経 済 見 通 し の 予 測 精 度 を 調 べ て い る
。 こ の 見
表4FOMCと 民 間(BlueChip)と の 予 測 精 度 比 較
予 測 生産平均 イ ンフ レ率RMSERMSE
平 均
191to2001next‑vear FOMC‑July BlueChiPrJuly ナ イ ー ブ(Mayseries) 19HOto2001current‑year
FOMC‑Feb BlueChip‑Feb ナ イ ー ブ(Febseries)
1979/1980to2000current‑year
FOMC‑July BlueChip‑July ナ イ ー ブ(Mayseries)
0.057
‑0 .156 0.061
0.142 0.054
‐aa31
n.ono O.004 0.253
1.6ユ4 1.922 2.753
1.352 1.479 2.225
1.2fi8 1.297 2.304
‐o .s71
‑1 .013
‑0 .670
一 〇.559
‑0 .563
‑‑0 .326
一 〇.272
‑0 .386
‑0 .295
ユ.II2 1.359 1.758
0.951 0.914 1.087
0.498 0.574 1.130 注:RMSEは 平 均 二 乗 誤 差 の 平 方 根 。
ナ イ ー ブ 予 測 は 静 学 的 予 想 。 出 処:GavinandMandal(2002).
通 し は,年2回,2月 と7月 に 公 表 さ れ る 。2月 に は そ の 年 の 年 末 値 を,7月 に は そ の 年 と 翌 年 の 夫 々 の 年 末 値 を 予 測 し て い る 。 個 別 メ ン バ ー の 予 測 値 は 公 表 さ れ ず,全 体 の 上 限 と 下 限 の み が 公 表 さ れ て い る 。 や や 長 い ス パ ン の 予 想 で あ り,そ の 間 の 「適 切 な 政 策 行 動 」 を 考 慮 に 入 れ る こ と と な っ て い る1fi,,民 間 のBluechipコ ン セ ン サ ス 予 測 と 比 べ る と,(2月 発 表 の イ ン フ レ予 測 を除 く と)生 産 と イ ン フ レ 両 方 の 予 測 に お い て,FOMCの 予 測 誤 差 の 方 が 小 さ い 俵4)。 さ ら に ・ ス タ ッ フ の 作 成 す るGreenbook予 測 と 比 べ て も 遜 色 が な い と い う 結 果 が 示 さ れ て い る 。
本 節 で 紹 介 し た3分 析 は,異 な る デ ー タ を 異 な る 予 測 期 間 で 検 討 し て い る の で,結 果 が ま ち ま ち で あ る こ と も 頷 け る 。FRBの 情 報 に 関 す る 対 民 間 優 位 性 は 判 然 と し て い な い の で あ る 。
6日 本銀行政策 委 員会 の経済見通 しlr
日銀 も,FRBと 同 様 に,ス タ ッ フ の 作 成 した 予 想 値 は 発 表 し て い な い 。 イ ン フ レ 目標 を採 用 して い る 諸 国 の ほ と ん どが 発 表 し て い る の と は,対 照 的 で あ る 。 し か し,や は り,FRBと 同 様 に,MPCメ ン バ ー の 予 想 を 年2回 発 表 して い る。
日銀 政 策 委 員 会 に よ る こ の 見 通 しの 公 表 は2000年10月 に始 ま っ た ば か りで あ る 。 『経 済 ・物 価 の 将 来 展 望 と リ ス ク 評 価 』 と い う 文 書 に,表 と し て ま と め て 記 載 さ れ て い る 。 そ の 内 容 は FRBに 倣 っ た も の で,個 別 委 員 の 見 通 しで は な く,個 別 の 意 見 の 上 限 と下 限 と を ・(上 下 の極 端 な 値 を排 除 した)大 勢 見 通 し と全 員 見 通 し との2種 類 提 示 し て い る 。 予 測 の 対 象 は3項 目で ・ 実 質 GDP・ 国 内WPI・(生 鮮 食 、冒,を除 い た)CPIの 対 前 年 度 比 で あ る 。 公 表 ス ケ ジ ュ ー ル は,毎 年4月
に 当 該 年 度 の 見 通 し を,次 い で10月 に 当 該 年 度 と翌 年 度 の 見 通 し を,そ れ ぞ れ 公 表 す る こ と に な っ て い る。
FRBと の 相 違 は,金 融 政 策 に 関 す る想 定 で あ り,FRBは 適 切 な 政 策 が 実 施 さ れ る こ と を 考 慮
金融政 策 ルールの現実 的側面:学 説の展望 と 日本銀行 の情 報優位?81
に 入 れ た 予 想 値 で あ る の に 対 し,日 銀 は 現 行 の 金 融 政 策 が 継 続 され た もの と想 定 した 予 想 値 で あ る 。 予 想 値 と して は 前 者 の 方 の 適 合 率 が 高 い で あ ろ う し,金 融 政 策 の 運 営 上 は 後 者 を 明 確 に す る
こ と が 適 切 で あ ろ う。
サ ン プ ル 数 は 非 常 に 少 な い が,こ の 日銀 政 策 委 員 会 の 見 通 し に つ い て,民 間 諸 機 関 の 予 測 と比 表5BOJと 民 間の予 測値
予 測対 象年度 2000 2001 2001 2002 Zao2
予 測作成 時点 2000.10(09) 2001.04{03) 2001.10(09) 2001.10(09) 2002.04{03)
GDP 現 実値(発 表直後) 1'1 一1 .30 一1 .30 na na
BOJ大 勢 2.10 0.55 一1 .05 一 〇.50 ‐o .20
上 限 2.3a 1:1 1'1 0.10 o.to
下 限 1.90 0.30 ‐i .Zo 一1
.10 ‐o
.50
BOJ全 員 1.90 0.45 一1 .1a 一 〇.75 一 〇
.15
上 限 2.30 1.00 一 〇.60 o.20 o.20
下 限 1.50 ‐a .to 一1 .60 一1 .70 一 〇
.50
民 間平 均 2.15 1 一 〇.92 一 〇.06 一 〇
.53
民 間中間値 2.25 1'1 ‐o .70 0.20 一 〇.50
上 限 3.00 1.80 o.Zo x.70 1.00
下 限 1.50 一 〇.20 一1
.60 一1 .30 一2
.00
標準偏 差 0.35 0.49 0.45 a.70 0.55
調査機 関数 30 37 37 37 36
WPI 現実値(発 表直後) 111 一1 .10 一1
.10 na na
BOJ大 勢 0.05 一 〇.75 一1 .10 1.10 一 〇.75
上 限 0.10 一 〇.60 一1
.00 1'1 一 〇.50
下限 o.00 一 〇.90 一1
.20 一1
.30 一1
.00
BOJ全 員 o.to 一1 .00 一1 .20 一1 .20 一 〇.65
上限 o.Zo 一 〇.50 1'1 一 〇.50 一 〇
.30
下限 111 一1 .50 一1 .50 一1 .90 一1 .00
民 間平均 0.26 一 〇.48 一 〇.86 1 一1 .01
民 間中間値 0.20 一 〇.55 一 〇.55 一1 .10 一1 .40
上 限 0.60 0.30 0.60 0.40 0.10
下 限 ‐o .20 一1 .40 一1
.70 一2
.60 一2
.70
標準 偏差 na 0.40 0.37 0.52 0.46
調査機 関数 na 33 35 35 34
CPI 現実値(発 表 直後) 一 〇.40 !:1 1:1 na na
BOJ大 勢 一 〇.30 一 〇.60 一1 .05 一1 .10 1'1
上 限 ‐o .20 一 〇
.40 一1
.00 1'1 1:!
下 限 一 〇.40 1:1 一1 .1a 一1 .30 一1 .00
BOJ全 員 一 〇.30 ‐a .s5 一1 .10 一1 .10 1:1
上限 ‐o .to 0.30 1'1 一 〇.50 一 〇
.50
下限 一 〇.50 ‐1
.00 一1
.30 一1
.70 一1
.10
民 間平均 ‐a .42 一 〇.37 一 〇
.84 0.70 一 〇.89
民 問 中間値 一 〇.40 一 〇
.40 ‐a
.75 1:1 一 〇.95
上 限 ‐o .to 1!1 一 〇.30 ‐o .Zo 一 〇
.60
下限 ‐o .70 1:1 一1 .20 一1 .40 一1
.30
標 準偏 差 na 0.20 1 i 0.21
調査 機関数 na 36 36 36 34
較 して み よ う。 民 間 諸 機 関 の 予 測 は,『 経 済 統 計 月 報 』(東 洋経済新 報社)が 多 数 の調 査 機 関 の 予 測 値 を ま とめ て,4半 期 毎 に 定 期 的 に 発 表 して い る,日 銀 の 見 通 し公 表 時 点 に 近 い 比 較 対 象 と し
て,3月 と9月 と を用 い る こ とに し よ う。 残 念 な が ら完 全 に フ ェ ア な 比 較 で は な く,日 銀 の 方 が 民 間 側 の 予 測 結 果 を 一・覧 し た 一Lで1ヶ 月 分 の 情 報 を 余 分 に 利 用 で き る 点 に,留 意 して ほ し い18。
「月 報 』 に は,各 調 査 機 関 毎 の 発 表 日付 が 掲 載 さ れ て お り,月 の 半 ば 過 ぎ以 降 が 多 い 。
表5に 基 本 的 な デ ー タ を ま と め た 。 実 質GDPと 国 内WPIお よ び(生 鮮 食 品を除 いた)CPIに つ い て,各 デ ー タ の 公 表 直 後 の 値(後 に改定 される19),日 銀 政 策 委 員 会 の 大 勢 ・全 員 見 通 しの 値(公 表範 囲の 中間値)と 夫 々の 上 限 ・ ド限,民 間 調 査 機 関 予 測 値 の 平 均 値 お よ び上 限 ・下 限 とそ の 中 間 値,民 間 調 査 機 関 予 測 値 の 標 準 偏 差 お よ び 調 査 機 関 数 で あ る。
日銀 予 測 と民 間 調 査 機 関 予 測 の 相 対 的 な 精 度 を比 較 して み よ う 。 日銀 が 公 表 し た 見 通 しは,全 て で5通 り し か な いhに,そ の 内 の2002年 度 は 現 在 進 行 中 で あ る 。 精 度 比 較 に 使 え る の
は,2000年10月 公 表 の2000年 度 予 測 値,2001年4月 公 表 の2001年 度 予 測 値,2001年10月 公 表 の2001年 度 予 測 値 の み で あ り,統 計 的 な 評 価 は 下 しが た い 。 表6に 全 て の ケ ー ス の 予 測 誤 差
を 記 載 した 。
予 測 誤 差 の 絶 対 値 の み を 見 る と,GDPとWPIに つ い て は,日 銀 が 完 勝 し て い る20。CPIに つ い て は,2001年4月 公 表 の2001年 度 予 測 値 を 除 い て,民 間 の 方 が 優 れ て い る。 こ の 相 対 的 な優i 劣 の 規 模 を 見 る た め に,民 間 平 均 値 を 基 準 と し て,他 の 予 測 誤 差 の 基 準 か ら の乖 離 を 民 間 平 均 値 の 標 準 偏 差 眠 間 予測値 の標準 偏差 を調査機 関数 の平方 根 で割 った1商)で 割 っ て 規 準 化 し て み たZl。 そ
表6BOJと 民 間 の 予 測 精 度
一一}一 …}}r F
﹂ L 懸
P一D一G
予測 対象年 度 予測 作成時 点
下
z…
200.10(09)
2001 2001.04(03)
2001 2001.10(09)
1
L..
WT'1
BOJ大 勢 BOJ全 員 1民 間 平均
1
民 間 中 間 値
標 準 偏 差/SQRT(機 関 数) iBOJ大 勢
BOJ全 員
1
儲 糊値
}隼 偏 差/SQRT(機 関数>
OJ大 勢i iBOJ全 員
1民 間 平均 演
問中間値
;
上一̲̲
1.20 1.00 1.25 1.35
相違率 τ 違率
誤差 相違 率̲o .78
‑3 .88
1.55
「 一一 一一EC .PI
l l
ll⊥ 盤 壁
/SQ即 機関数)
注:枳 違 率=(各 予測 値 一民 問 平 均)/(標 準 偏 差/SQRT(調 査 機 関 数))
1.851‑3.72 /.751‑4.96 2.15 2.101‑0.62
0.251‑x.75 0.201‑2.42 0.38 0.6012.96
1
灘Lキ ーo・06
10・051nal O.10na O.26nal
(機 関 数 口o'20nana
na ina
na1
0.08
i
0.35‑3.88 0,101‑7.47 0.62
■'55‑1:0107
モ
0.?0 0,151‑8.60 0.43 0,401‑0.92土 」0・03t
o.an
‑0 .10 0.24 0.55
1 一
o.07
‑3 .83
‑5 .43
4.95 0.os 一「
0.10 0.10
‑0 .02
̲い00趨
一7 .060.25
‑0 .30
‑0 .04
0.05
一7 .03
‑8 .71
3.01 0.03一
金融政 策 ルールの現 実的側面:学 説 の展 望 と日本銀行 の情報優 位?83 の 計 算 値 が 「相 違 率 」 と い う 項 目 に 記 載 さ れ て い る 。 厳 密 な も の で は な い が,日 銀 の 優 位 性 は, WPIに つ い て は 大 き く,GDPに つ い て は 僅 か で,CPIに つ い て は(ヶ 一スバ イヶ一 スで あ って)全 くな い と い う評 価 に な ろ う。WPIは 日銀 が 作 成 して い る デ ー タ な の で,WPIに 関 す る 日銀 の 優 位 性 は,前 述 の 生 産 指 数 に 関 す るFRBの 優 位 性 に 似 て い る 。 ミ ク ロ デ ー タ の 収 集 と加 工 を 行 っ て い る こ とが,予 測 ヘ プ ラ ス の 効 果 を もた らす の で あ ろ うか 。 日銀 側 に1か 月 分 の 情 報 優 位 が あ る こ と に留 意 す る 必 要 が あ る が,良 好 なパ フ ォ ー マ ン ス で あ る と言 え る の で は な い だ ろ う か22。
7経 済の構造変化
Orphanides(1g97,2002)は,リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ と確 定 値 デ ー タ とで,テ イ ラ ー ・ル ー ル の 計 算 値 が 大 き く異 な っ た理 由 を分 析 し,(GDPギ ャップの計算値 の元 とな ってい る)潜 在GDP成 長 率 と 自然 失 業 率 の リ ア ル タ イ ム で の 誤 想 定 の 影 響 が 大 きい こ と を示 し て い る 。50〜60年 代 の 高 成 長 と,「 自 然 失 業 率=4%」 と い う 一 般 通 念 と に よ っ て,潜 在GDPを 大 き く 見 積 も りす ぎ て い た とい うの で あ る(図2)。 人 口 構 造 の 変 化(ベ ビー ブーマ ーの労 働市 場参 入 な ど)に よ っ て 自然 失 業 率 が 高 ま っ て い た の に,そ の 認 識 が 遅 れ た 政 府 が 拡 張 的 政 策 を継 続 し て し ま っ た と い う点 は,こ れ ま で に も指 摘 され て きた 点 で あ る23。
こ の 考 え 方 を推 し進 め る と,経 済構 造 の 変 化 を 政 策 当 局 が 「学 習 」 しな が ら,金 融 政 策 を運 営 す る とい う ス トー リ ー が で き あ が る 。 こ う した 手 法 を用 い て,ア メ リ カ の マ ク ロ経 済 状 勢 の 変 遷 を 説 明 し よ う と す る 分 析 が 現 れ て き た(Lansing(2002b)な ど)。70年 代 の 高 イ ン フ レ は,そ の 初 頭 に 生 じて い た 自然 率 生 産 低 下 を 循 環 的 現 象 と誤 認 して 金 融 緩 和 を 継 続 した 結 果 で あ り,90年 代 半 ば 以 降 の 経 済 情 勢(好 況+低 イ ンフ レ)も 同 じこ と で,持 続 的 な 自然 率 生 産 上 昇 を徐 々 に し か
図2失 業 率 の 予 測 値 と現 実 値 お よ び リ ア ル タ イ ム と事 後 の 自然 失 業 率(U*) Persent
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Orphanides(2002).
認 識 で き な か っ た 結 果 で あ る と い う の で あ る 。
Sargentq998)は,「 適 応 的 学 習 」 の 枠 組 み を用 い て,第2次 大 戦 後 の ア メ リ カ の イ ン フ レ・体 験 を 説 明 し よ う と し た 本 格 的 な 研 究 の 嗜 矢 で あ ろ う。1960年 頃 のSamuelson‑Solowに よ る 安 定 的 な フ ィ リ ッ プ ス 曲 線 の 利 用 提 唱,60年 代 末 頃 のPhelps‑Friedmanの 自 然 失 業 率 仮 説 の 提 示,70年 代 初 頭 のLucasに よ る そ の 洗 練 と 合 理 的 期 待 仮 説 と い う学 説 の 変 遷 と,イ ン フ レ お よ
び 政 策 の 変 遷 とが,結 び 合 わ さ れ て い る。 そ こ で は,FRBが 自然 失 業 率 仮 説 を 学 ん で 政 策 を 改 め た と い う仮 説 と,FRBが 適 合 的 学 習 に よ っ て フ ィ リ ッ プ ス 曲 線 の シ フ トを 認 識 し て 政 策 を 改 め た と い う仮 説 と を 対 比 して,後 者 の 方 が 現 実 的 で あ る と 示 唆 して い る 。
OrphanidesandWilliams(2002)は,民 問 サ イ ドの 知 識 の 不 完 全 性 を取 り扱 っ て い る 。 経 済 構 造 を 政 策 当 局 は 知 っ て い る が,民 間 サ イ ドは 知 ら な くて 適 応 的 学 習 に よ っ て イ ン フ レ の プ ロ セ ス を 推 定 し て い る も の と 想 定 し て い る 。 こ の 場 合,政 策 ル ー ル の イ ン フ レ 反 応 係 数 を 高 め て, GDPギ ャ ッ プ 反 応 係 数 を低 め る こ とが 望 ま し い と い う結 果 が 示 さ れ た 。 イ ン フ レ反 応 係 数 が 小
さい と イ ン フ レの 慣 性 が 高 ま り,イ ン フ レ ・シ ョ ッ クの 影 響 が 持 続 す る の で,民 間 サ イ ドは イ ン フ レ 目標 も 高 ま っ た もの と誤 認 して し ま う。 予 想 イ ンフ レ率 が 高 ま っ て イ ン フ レの 高 止 ま り を支 え る の で,イ ン フ レ抑 制 策 の 持 続 が 必 要 と な り,1970年 代 の ア メ リ カ の よ う な ス タ グ フ1/一一
シ ョ ンが もた ら さ れ る と言 うの で あ る 。
日本 経 済 に こ の 分 析 を 適 用 す る と どの よ う な 結 果 が 得 ら れ る で あ ろ う か 。90年 代 初 め に 自 然 率 生 産 を低 下 させ る よ う な シ ョ ッ クが 発 生 した と想 定 す る の が 自然 で あ ろ う。 ア メ リ カ の 経 験 を ス トレ ー トに 適 用 す る と,金 融 緩 和 が 実 施 さ れ て,イ ン フ レが 発 生 して,ス タ グ フ レー シ ョ ンへ と進 ん で い くは ず で あ る。 しか し,日 本 で は,持 続 的 経 済 停 滞 は生 じて い る が,デ フ レー シ ョ ン も 生 じ て い る。70年 代 の ア メ リ カ と は 異 な る要 因 を 導 入 し な い と,説 明 で き な い の で あ る 。 こ の 枠 組 み で 解 釈 す れ ば,有 利 な 供 給 シ ョ ッ ク の 存 在,政 策 当 局 の 選 好 の 変 化(物 価安 定 の ウェ イ ト
1堺)な どが,そ う し た 要 因 と して 提 案 され て きた わ け で あ る。
ア メ リ カ の 経 験 を ヒ ン トに し て,よ り普 遍 的 な 分 析 へ と進 む の は 自 然 な 発 展 で あ る 。 経 済 状 勢 や 構 造 変 化 に対 応 す る 政 策 当 局 の 学 習24を 導 入 した シ ミ ュ レー シ ョ ン分 析 が,盛 ん に な っ て き
た。 こ う した 環 境 下 で の 最 適 な 政 策 ル ー ル を探 ろ う とい うの で あ る。
結 び
本 稿 で は,シ ンプ ル な テ イ ラ ー ・ル ー ル の 現 実 適 用 が 意 外 に 厄 介 で あ る こ と,し か しFRBや 日本 銀 行 な ど中 央 銀 行 の 収 集 情 報 の 質 ・量 は優 れ て い る し,そ の こ と を 反 映 した 分析 一 経 済 状 勢 や 構 造 を 学 習 しな が らの 政 策 実 施 の 検 討 一 が 進 み 始 め て い る こ と を 見 た 。 日 本 に 関 して は,バ ブ ル 崩 壊 の 総 需 要 シ ョ ッ ク とIT革 命 等 の 技 術 革 新 シ ョ ッ ク と が 引 き続 い て 発 生 し た 中 で,構 造 変 化 を 学 習 し な が らの 金 融 政 策 が 実 施 さ れ て き た と,考 え られ よ う。 ま た 、 デ フ レ か ら の 脱 出 策 の 工 夫 に お い て も、 「適 応 的 学 習 」 と 「金 融 政 策 ル ー ル 」 の 分 析 枠 組 み は 、 試 れ るべ き で あ ろ っ。
金融政 策ルー ルの現実的側 面 学 説の展 望 と日本 銀行 の情 報優位?85
注
1Lucas批 判 に 対 応 す る た め に 必 要 で あ る 。
2最 適 ル ー ル と の 関 連 で,透 明 性 や ク レ デ ィ ビ リ テ ィ等 を 中 心 と し た 問 題 や 制 度 デ ザ イ ン を 考 慮 す る 群 の 研 究 も あ る 。 地 主(2002)参 照 。
3Clarida,Gali,andGertler(1999).
4日 本 政 府 関 係 諸 機i関 は,マ ク ロ 生 産 関 数 を 用 い て 生 産 能 力 の 限 界 と し て の 潜 在GDPを 用 い る こ と が 多 い 。 設 備 投 資 を 資 本 ス ト ッ ク に 追 加 し て い く の で,ブ ー ム 期 に は 潜 在GDPも 大 き く な る 。
5よ り広 範 な 分 析 例 は,Philadelphia連 銀HPでConferenceontheReal‑TimeDataAnalysis(October , 2001)を 参 照 の こ と 。
6主 要 変 数 に 関 す る リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ は,Philadelphia連 銀 が そ のHPに 掲 載 し て お り ,誰 で も容 易 に 利 用 で き る 。
7日 本 に 関 す る 研 究 は,小 巻 ・竹 田 ・椿(2002)が 嚇 矢 で あ ろ う 。 80rphanides{2000)0
90rphanides(2001)。 先 述 し た よ う に,完 全 な デ ー タ の 利 用 可 能 性 を 前 提 と し た モ デ ル に お け る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で は,GDPギ ャ ッ プ の 係 数 を 高 め た ほ う が い い と 結 果 の 得 ら れ る こ と が 多 い 。 現 実 と は 矛 盾 し て い る の か も し れ な い 。 後 述 のOrphanidesandWilliams(2002)も 参 照 。
10Taylor(1998)も,金 融 政 策 ル ー ル の コ ン フ ァ レ ン ス の ま と め と し て ,個 々 の 参 加 者 が 推 奨 して い る 政 策 ル ー ル の パ フ ォ ー マ ン ス を,参 加 者 全 員 の 様 々 な モ デ ル を 用 い て 確 か め て い る 。
11後 述 す る 「適 合 的 学 習 」 を 適 用 し て,Lansing(2002)は,潜 在GDPを 知 ら な いFRBが 生 産 ト レ ン ド 値 を 回 帰 分 析 に よ っ て 推 定 す る モ デ ル を 構 築 し た 。 意 図 的 な 部 分 調 整 は な く て も,事 後 デ ー タ に よ る 政 策 反 応 関 数 の 推 定 で は,1期 ラ グ 値 が ト レ ン ドの 推 測 誤 差 の 系 列 相 関 を 拾 う こ と が 示 さ れ た 。
12「 リ ア ル タ イ ム ・デ ー タ を 用 い る と,Volker以 前 に テ イ ラ ー 原 則 が 満 た さ れ て い た 」 と す るOrphanides の 結 論 も 確 定 し た わ け で は な い 。Mehra(2001)は 異 な る リ ア ル タ イ ムGDPギ ャ ッ プ の 系 列 を 用 い て
, 逆 の 結 果 を 示 し て い る 。
13BernankeandBoivin(2000),page2.
14RomerandRomer(1989)。 対 応 す る 日本 の 研 究 は ,黒 木(1999)。
15民 間 に は ア ク セ ス 不 能 な の に,多 く の 中 央 銀 行 が 保 有 し て い る 情 報 と し て は,個 別 金 融 機 関 の 経 営 内 容 に 関 す る 詳 細 な 情 報 が 挙 げ ら れ よ う 。 「最 後 の 貸 し 手 」 機 能 の 遂 行 と 関 連 し て 直 接 検 査 を し て い る 中 央 銀 行 で な く て も,金 融 機 関 監 督 当 局 と の 情 報 共 有 が 可 能 で あ ろ う 。 こ の 情 報 の 金 融 政 策 運 営 に と っ て の 重 要 性 を 指 摘 し た の は,Peek,RosengrenandTootell(1999)で あ る 。
16各 メ ン バ ー の 想 定 は 当 然 に 異 な る だ ろ う し ,公 表 も され て い な い。
17本 節 で 用 い て い る,民 間 調 査 機 関 の 経 済 予 測 デ ー タ に つ い て は,萩 原 泰 治 教 授(神 戸 大 学)か ら,教 示 を 受 け た 。 記 し て 謝 意 を 表 し た い 。 な お 、 日 本 政 府 の 経 済 予 測 の 対 民 間 比 較 は、Ashiya(2002)参 照 の こ
と 。
18な お,CPIに 関 して は,東 洋 経 済 が 全 国 総 合 指 数,日 銀 が 生 鮮 食 品 を 除 外 し た 指 数 を 用 い て い る の で, 少 し ず れ る 。 し か し,こ こ で 考 え て い る よ う な1年 や 半 年 と い う 期 間 の 予 測 に お い て は
,例 外 的 に 大 き な 変 動 が な い 限 り,生 鮮 食 品 の 影 響 は 捨 象 す る の が 通 常 で あ ろ う と 考 え ら れ る。 し た が っ て,同 じ 指 数(生 鮮 食 品 を 除 く)と し て 扱 う こ と に な る 。
19数 回 の 改 定 が 重 ね ら れ た 後 の 確 定 値 よ り も ,注 目が 集 ま る 。
202000年 度 と2001年 度(4月 公 表 分)のGDPの 場 合 の よ う に,ど ち ら の 予 想 値 も 大 き く外 れ て し ま っ て,日 銀 と 民 間 の 予 測 値 間 の 差 異 が 相 対 的 に 僅 か で し か な い ケ ー ス も あ る。
21WPIとCPIに つ い て は,2000年9月 公 表 分 の 詳 細 表 が 入 手 で き な か っ た の で
,個 別 デ ー タ が 得 ら れ ず,標 準 偏 差 も 計 算 で き て い な い 。
22日 銀 の 予 測 値 は,公 表 範 囲 の 中 間 値 で あ っ て 平 均 値 で は な い 点 と
,金 融 政 策 の 維 持 を 想 定 し て い る 点 に も 注 意 す べ き で あ ろ う ・ た だ ・ 今 回 に 関 し て は ,そ の 影 響 が 刀・さか っ た と欄 さ れ る.民 間 側 で み る と,
平 均 値 と 中 間値 との 予 測 値 と して の パ フ ォー マ ンス は ほ ぼ等 しい 。 検 討 対 象 期 間 を通 して 金 融 政 策 は ゼ ロ 金 利 とそ の 近 傍 に 維 持 され お り,予 想 さ れ て い な か っ た か も しれ な い ゼ ロ金 利 解 除 と量 的緩 和 導 入 に よ る 金 利 の 僅 か な 上 昇 ・下 降 も,そ の 経 済 全 体 へ の 影 響 は 極 小 で あ った と推 測 さ れ る 。
23例 え ば,Stein(1994)。
24適 合 的 学 習(adaptivelearning)と 呼 ば れ て い る。 こ の シ ミュ レー シ ョ ンの 申 で は,時 問 経 過 と と も に 新 しい デ ー タが 発 生 す るの に応 じて,金 融 政 策 当 局 が 潜 在GDPを 回 帰 分 析 に よ っ て 推 定 し続 け る 。 構 造 T変化 が 持 続 的 な もの で あ れ ば
,潜 在GDPの 推 定 値 は真 の 値 に収 束 して い く。
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