論文種別 研究論文
タイトル 小児看護教員から学生への絵本の読み聞かせの教育効果
Title Educational Effect of Reading Illustrated Books to Nursing Students by Pediatric Nursing Instructor
著者
白井 薫 児玉 ゆう子 佐藤 智彦
Author(s)
SHIRAI, Kaoru KODAMA, Yuko SATO, Tomohiko 誌名 星槎大学大学院紀要
Citation Seisa University Research Studies in Education
巻 Vol.2
号 No.1
ページ pp.37-57
発行日 URL
Dec-14-2020
http://id.nii.ac.jp/1486/00000193/
研 究論 文
小児看護教員から学生への絵本の読み聞かせの教育効果
白 井 薫 1,a・ 児 玉 ゆ う 子 2,b・佐 藤 智 彦 2,3,c
(1星 槎 大 学 ・2星 槎 大 学 大学 院 教 育 学研 究 科 ・3東 京 慈 恵 会医 科 大 学 附 属病 院 )
要 旨
〈 背景 〉X 専 門 学校 (3年 制 ) の 小児 看 護 学 概 論で は 、 学 生の 子 ど も 理解 を 促 す ため に 、 2012年か ら「 子 ども は 小 さな 大 人 で はな い 」を キー ワ ー ド に「 教 員 に よる 絵 本 の 読み 聞 か せ 」を 行 っ て きた 。〈目 的〉「 教 員に よ る 絵 本の 読 み聞 か せ 」 が 看 護 学 生 の子 ど も 理 解に 及 ぼ す教 育 効 果 を検 証 し た。〈 方 法 〉全学 年 対 象(120名 )の 無 記名 式 ア ンケ ー ト を 量的・質 的 に分 析 し た (n=94、 回 収 率 78.3%)。〈 結 果 〉9割 以 上 が絵 本 に 肯 定 的で 、93名 が 大人 と の「 絵 本 の とら え 方 の 違 い」を 理 解し て い た 。学 生 は 、子ど も の【未 熟 さ】【経 験 の 少 なさ 】
【 独自 性 】【 尊 厳】【 大 人 らし さ 】 そ して 【 子 ど もへ の 敬 意 】を 重 要 視 して 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い 」こと を イメ ー ジ し てい た 。臨 地実 習 後 の 3年 生 は 、特 に【 未熟 さ 】【 独自 性 】を 重 要 視 して い た。〈 結論 〉 小 児 看護 学 概 論 での 「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」 は 、 学 生の 子 ど も 理解 を 促 す ため の 支 え とな る 有 効 な教 授 手 段 であ る こ と が示 唆 さ れ た。
キ ーワ ー ド: 看護 基 礎 教 育、 小 児 看 護学 概 論 、 子ど も 理 解 、絵 本 の 読 み聞 か せ 学 生に よ る 授 業評 価
1 .序 論
1 )社 会 的 背 景
1990年 代 以 降 の社 会 構 造の 大 き な 変化 に 伴 い 、核 家 族 化 、都 市 化 、少子 高 齢 化 が急 激 に 進 み( 野 村 ら (2007))、 それ を 遠 因 とし て 、 看 護学 生 が 地 域・ 家 庭 な どの 日 常 生 活の 中 で 子 ども と 関 わ る機 会 が 減 少し て い る こと が 指 摘 され て い る (石 原 ら (2003))。 そ のた め 、 子 ども の 理 解 が困 難 で 、 臨地 実 習 で も子 ど も と どう 関 わ れ ばよ い の か 戸惑 う 学 生 も少 な く な いと 言 わ れ てい る ( 野 村ら (2007))。 看 護 学 生が 子 ど も と関 わ る こ とに 躊 躇 す る要 因 と
2020 年 10 月 14 日 受 理 . 著 者 連 絡 先 : 佐 藤 智 彦 ,[email protected]
a 星 槎 大 学 ・ 客 員 研 究 員
b 星 槎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 教 授
c 東 京 慈 恵 会 医 科 大 学 附 属 病 院 ・ 准 教 授 , 星 槎 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 ・ 特 任 教 授
し て、【親 の 存 在 によ る 心 理的 負 担】、【 苦 手 と 感 じた こ ど も の姿 】、【 否 定さ れ た と 感じ る こ ど もの 反 応】、【 不 安 の先 取 り】、【 萎縮 し て し まう 状 況】な どが 示 さ れ てい る( 小 代 ら(2010))。
そ の一 方 で 、 子ど も へ の 関心 や 子 ど もの 世 話 へ の関 心 が 高 い学 生 ほ ど 、子 ど も に 対し て 肯 定 的な イ メ ー ジを 持 っ て いる こ と も 明ら か に さ れて い る ( 末永 ら (2012))。 つま り 、 子 ど も との 関 わ り が少 な い 看 護学 生 に 対 して は 、 小 児看 護 学 の 中で 、 子 ど もへ の 関 心 や子 ど も の 世話 へ の 関 心を 育 む こ とが 求 め ら れて い る 状 況に あ る ( 末永 ら (2012))。
2 )学 術 的 背 景
( 1) 小 児 看 護学 で 学 生 が「 子 ど も は小 さ な 大 人で は な い 」と い う 概 念を 学 ぶ 意 義 小 児看 護 学 概 論は 、 子 ど もの 成 長 ・ 発達 な ど を 学び 、 小 児 看護 の 対 象 であ る 子 ど もの 理 解 を深 め る こ とを そ の 到 達目 標 と す る基 礎 科 目 であ る 。X 看 護専 門 学 校(3年 制、 以 下 X 校 )の「 小児 看 護 学 概 論」( 第 一 著 者 が 2009年 から 担 当 )に お ける キ ーワ ー ド は、「 子 ど も は 小さ な 大 人 では な い :Children are not small adults」こ と で あ る。 こ れ は、 哲 学 者 ルソ ー が18世 紀に 教 育 論『 エ ミ ール 』の 中 で 述べ た 言 葉で あ る(Rousseau(1962,1963,1964))。
そ れま で 子 ど もは 精 神 的 ・肉 体 的 に 大人 と 同 じ で、 た だ 体 が小 さ い だ けの 存 在 で ある と 考 え られ て い た のに 対 し て 、子 ど も は 小さ な 大 人 では な く 、 子ど も に は 子ど も 時 代 とい う 固 有 の世 界 が あ り、 子 ど も の成 長 過 程 に合 わ せ た 教育 を す べ きだ と ル ソ ーは 主 張 し たと 言 わ れ てい る ( 山 口(2018))。 子 ど もの 自 然 性 の発 現 を尊 重 す る 、こ の 「 子 ども は 小 さ な大 人 で はな い 」とい う 概 念 は、現 代 の 幼児 教 育・保 育 の基 礎 と な って い る が、内 科 と は異 な る 、 子 ども を 守 る ため の 固 有 の世 界 と し ての 小 児 医 療の 重 要 性 を示 す 根 拠 とし て も 広 く用 い ら れ てい る (World Health Organization(2008);Larcher(2017))。ま た 国 内で は 、 小 児看 護 の 臨床 現 場 で 子ど も の 成 長・ 発 達 の 特徴 と も 言 える 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 こ と を 踏ま え た 看 護展 開 が 重 要で あ る と 指摘 さ れ て いる( 奈 良間(2015))。こ こ ま で を見 る と 、 看 護基 礎 教 育 (小 児 看 護 学) に お い て学 生 が 「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」 と いう 概 念 を 学ぶ こ と は 、成 人 と は 異な る 、 子 ども 特 有 の 認知 面 や 機 能面 で の 発 達を と ら え てい く た め の基 礎 を 学 ぶこ と に 相 当す る と 言 える 。
( 2) 保 育 者 養成 に お け る「 絵 本 の 読み 聞 か せ 」
絵 本は 、 子 ど もた ち の イ メー ジ や 夢 を広 げ る と とも に 、 身 につ け て ほ しい 大 切 な 物を 子 ど もの 心 の 中 に育 ん で く れる も の で ある 。 そ し て、 子 ど も に対 し て 絵 本を 音 読 し て聞 か せ る 行為 で あ る 「絵 本 の 読 み聞 か せ 」 は、 絵 本 を 仲立 ち に し て、 読 み 手 の保 育 者 と 読ん で も ら う子 ど も の 心の 通 い 合 いに 相 当 す るコ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン を大 切 に す る、 保 育 者 と子 ど も の 心の 架 け 橋 に相 当 す る もの ( 曽 和 (2017)) と 言わ れ る 。 子ど も に 「 本を 読 み 聞 かせ る 」 と いう 言 い 方 は以 前 か ら 使わ れ て き てい た が 、 現在 用 い ら れて い る 「 読み 聞 か せ 」と い う 言 葉の 成 り 立 ちに 関 す る 確定 的 な 情 報は な い( 張江 ら(2013))。た だ し、1970 年 前 後の 子
ど もの 読 書 の 推進 運 動 の 一環 と し て 、新 し い 児 童文 学 を 広 める と と も に本 を 読 ん で聞 か せ る 活動 が 広 ま る中 で 、「 読 み聞 か せ 」 とい う 造 語 がで き た と する 説 も あ る( 櫻 井 (2005))。
「絵 本 の 読 み聞 か せ 」 は、 読 み 手 との 温 か い 関わ り に よ って 、 子 ど もは 心 が 安 定し 、 物 語 の世 界 に 浸 るこ と が で き、 現 実 の 世界 を 離 れ 、喜 ん だ り 悲し ん だ り 、ワ ク ワ ク した り と 様 々な 感 情 を 抱き 、読 み 終え た 後 、満 足 感 や 充 実感 を 味 わ うこ と が で きる も の で もあ る( 山 田 (2017))。 保育 の 現 場 では 、 創 作 活動 や 音 楽 表現 、 体 育 遊び 等 、 保 育の 主 活 動 の導 入 部 分 や、 昼 食 前 やお や つ の 準備 待 ち 、 お昼 寝 や お 帰り の 前 の お楽 し み 、 延長 保 育 の お迎 え を 待 つ間 な ど に 「絵 本 の 読 み聞 か せ 」 は利 用 さ れ てい る 。 そ のた め 、 保 育者 養 成 に おい て も
「 絵本 の 読 み 聞か せ 」 の 習 得 の 重 要 性が 指 摘 さ れて い る ( 秀(2018))。 そ し て、 保 育 学 生 が 幼児 役 に な り、 絵 本 を 読み 聞 か せ ても ら う 立 場と な る 体 験を す る こ とに よ り 、 聞く 側 に 聞 きや す く 絵 本を 見 や す くす る た め の工 夫 が 生 まれ 、 学 生 の読 み 聞 か せの 技 術 が 効率 的 に 習 得さ れ る と の報 告 も あ る( 西 川 (2002))。 さ らに 、 保 育 学生 が 「 絵 本の 読 み 聞 かせ 」 を 保 育の 中 で 効 果的 に 実 践 して い く た めに は 、 絵 本の 面 白 さ やそ の 魅 力 を学 生 自 身 が味 わ う と いう 「 絵 本 の魅 力 を 深 く味 わ う 体 験」、 絵本 の ジャ ン ル を 知る 「 絵 本 の知 識 」、 子 ど も の 立 場に 立 っ て 、見 や す い 見せ 方 を 工 夫す る な ど の「 読 み 聞 かせ の 技 術」、 子 ども に 共 感 し、
絵 本の 世 界 を 広げ 、 楽 し みな が ら 子 ども と 共 に 活動 で き る 「子 ど も た ちと 絵 本 を 楽し む 感 性 」 の4点 が 重要 で あ る と言 わ れ て いる ( 山 田 (2017))。
( 3) 小 児 看 護学 に お け る「 絵 本 の 読み 聞 か せ 」と 「 子 ど も理 解 」
小児 看 護 学 は、 保 育 と 同様 に 「 子 ども 」 を 対 象と し て お り、 小 児 看 護学 実 習 に 保育 所 実 習 を取 り 入 れ てい る 学 校 も少 な く な い。看 護 学 生 35名の 保 育 所 実習(5日 間 )が対 象 の 報 告(網 野 ら(2018))で は 、初 日 に オ リエ ン テ ー ショ ン と 絵 本の 読 み 聞 かせ ロ ー ル プレ イ( 学 生 1名 が 読 み 手、 学 生4~6 名が 聞 き 手 )を 行 い (事 前 準 備)、 最 終日 に 学生 に よ る 受け 持 ち クラ ス の 子 ども た ち へ の「 絵 本 の 読み 聞 か せ 」を 行 っ た 。読 み 聞 か せ後 に 学 生 が作 成 し た 「絵 本 の 読 み聞 か せ 記 録」 の 質 的 分析 か ら 、 保育 所 実 習 での 「 絵 本 の読 み 聞 か せ」 を 通 し て、 学 生 が 子ど も と の 関わ り 方 を 学び 、 子 ど も理 解 を 深 めら れ た こ とが 示 さ れ てい る 。 こ の報 告 の 大 きな 意 義 は 、学 生 に よ る子 ど も へ の「 絵 本 の 読み 聞 か せ 」と い う 行 為が 学 生 の 子ど も 理 解 の深 化 に 寄 与す る こ と を示 し た 点 にあ る 。 そ の一 方 で 、 この 「 絵 本 の読 み 聞 か せ 」は 、山 田 の 示 す「 読 み 聞か せ の 技 術」「 子 ども た ち と 絵本 を 楽 し む感 性 」を 習 得 する に とど ま っ て いる 。学 生 が子 ど も に 対す る「 絵 本の 読 み 聞 かせ 」を 効 果的 に 実 践 する に は、
「 絵本 の 魅 力 を味 わ う 体 験」、そ し て「 絵本 を 知 る」こ と を実 習 前 に 習 得す る 機 会 を持 つ こ と も重 要 な プ ロセ ス で あ ると 考 え ら れる 。 ま た 、学 内 の 小 児看 護 技 術 演習 で の 学 生同 士 の 絵 本の 読 み 聞 かせ は 、学 生の 子 ど も 理解 に 有 効 であ り 、小児 看 護 学 と「 絵 本 の 読み 聞 か せ 」 を 結び 付 け た 「技 術 演 習 」を 行 う こ とが 重 要 で ある と も 報 告さ れ て い る( 大 澤 (2005))。
基 礎科 目 で あ る小 児 看 護 学概 論 に 関 する 過 去 の 看護 教 育 研 究の テ ー マ を概 観 す る と、 小
論 文の テ ー マ の分 析 ( 舟 越ら (2004))、 学 生 の 小児 に 対 す るイ メ ー ジ (黒 坂 (1993))、 倫 理 事例 を 用 い たグ ル ー プ 討議( 難 波(2016))と いっ た も の が該 当 す る 。特 に 、小 児 看 護 学 概 論の 授 業 開 始前 後 で 学 生が 持 つ 小 児の イ メ ー ジを 比 較・分 析 し た 黒 坂は 、「『 成長・発達 』 を 表し て い る もの に お い ては 、前 にお い て『 小 さい 』『幼 い 』とい う と らえ 方 を し てい た が 後 にお い て は『 可 能 性 が ある 』『 幅 が広 い 』等 、少 し とら え 方 の 拡が り がで き て い る 。しか し 、小 児 看 護 の特 徴 的 な 成長 ・ 発 達 とい う こ と には 、 ま だ まだ 目 を 向 けて い な い こと も 考 え られ る 」 と 考察 し て い る。 そ の 一 方で 、 小 児 看護 学 概 論 での 「 絵 本 の読 み 聞 か せ」 に 関 す る国 内 か ら の報 告 は こ れま で に な い。
「 教員 に よ る 絵本 の 読 み 聞か せ 」 が 子ど も 理 解 につ な が る 可能 性 に 言 及し た 報 告 とし て は 、長 期 間 か つ継 続 的 に 絵本 の 読 み 聞か せ を 教 員が 行 う こ とで 不 登 校 など の 問 題 を抱 え る 中 学生 が 幼 少 時と 現 在 の 絵本 の 理 解 の仕 方 を 比 較す る よ う にな っ た と する も の( 森(2018))、
教 育学 部 生 に 対す る 外 部 講師 に よ る 絵本 の 読 み 聞か せ が 【 心を 惹 き つ ける 絵 本 の 読み 聞 か せ 体験 】に な った と す る もの( 金(2019))が あ る。し か し 、こう し た「教 員 に よ る絵 本 の 読 み聞 か せ 」 が看 護 学 生 の子 ど も 理 解に 与 え る 影響 を 検 証 した 報 告 は ない 。
( 4) X 校 小児 看 護 学 概 論で の 「 教 員に よ る 絵 本の 読 み 聞 かせ 」 の 実 践
X 校 では 、2012年 か ら 小 児看 護 学 概 論の 授 業 で「 教 員 によ る 絵 本 の 読 み聞 か せ」を 行 っ て おり 、 学 生 の子 ど も 理 解に 関 す る この 実 践 の 教育 効 果 を 実感 し て き た。 そ こ で 、1年 次 に この 読 み 聞 かせ を 受 け た学 生 が 、絵 本 に ど の よう な イ メ ージ を 持 ち、「 子ど も は 小 さな 大 人 では な い 」 とい う 概 念 をど の よ う にと ら え て いる か を 調 査す る こ と とし た 。
2 .研 究 目 的
本 研究 で は 、 小児 看 護 学 概論 で の 「 教員 に よ る 絵本 の 読 み 聞か せ 」 が 看護 学 生 の 子ど も 理 解に 及 ぼ す 教育 効 果 を 検証 す る こ とを 目 的 と した 。
3 .研 究 方 法
1 )研 究 デ ザ イン
量 的記 述 的 研 究お よ び 質 的記 述 的 研 究
2 )用 語 の 定 義
( 1) 子 ど も 理解: 環 境 との 相 互 作 用に お い て 子ど も が 示 す行 動 ・ 反 応の 意 味 と 、子 ど も の 特性 を 看 護 学的 視 点 か ら解 釈 し て とら え る こ とを 指 す ( 西原 ら (2012))。
( 2) 絵 本 の 読み 聞 か せ:絵 本 を 音 読し て 聞 か せる 行 為 を 指す 。
3 )研 究 期 間
2016年 10月 ~2017年 4月
4 )研 究 対 象 者
X 校 の 2016年 度 1 年 生・2 年 生・3年 生( 各 定 員40名 )の う ち 、本 研 究 の 趣 旨 に 同 意 ・ 協 力が 得 ら れ た者 を 対 象 とし た 。
5 )ア ン ケ ー ト調 査 の 前 提と し て の 教育 的 ア プ ロー チ の 方 法
X 校 の小 児 看 護 学概 論 で は、学 生の 子 ど も 理 解 を促 す た め に、2012年 から「 教員 に よ る 絵 本の 読 み 聞 かせ 」 を 授 業に 取 り 入 れて い る 。 同校 の 小 児 看護 学 概 論 の概 略 と と もに 、 こ の 実践 に つ い て説 明 し て いく 。
( 1) X 校 の小 児 看 護 学 概論
① 小 児 看 護 学概 論 を 受 講す る 学 生 のレ デ ィ ネ ス
X 校 で の 小児 看 護 学の 履 修 科 目は 、 概 論 Ⅰ・ Ⅱ (1年 後 期)、 方 法論 Ⅰ (2年 前 期 )、
方 法論 Ⅱ (2年 後 期)、 小 児科 実 習 ・ 幼稚 園 実 習 (3年 前 ・後 期 ) で あ る。 学 生 は 、小 児 看護 学 概 論 の受 講 に 先 立ち 、1年前 期 に 基 礎 科目 の 人 間 と生 活 ・ 社 会の 理 解 、 専門 基 礎分 野 の 人 体の 構 造 と 機能 、 専 門 分野 Ⅰ の 基 礎看 護 学 の 一部 を 履 修 して い る 。
② 小 児 看 護 学概 論 の 位 置づ け
学 生は 、 小 児 看護 学 概 論 Ⅰ・ Ⅱ を 1年生 後 期 に 、2年 生 前期 に 小 児 看 護学 方 法 論 Ⅰ を 、後 期 に 小 児看 護 学 方 法論 Ⅱ を 、3 年 生 前 期 ・後 期 に 小 児看 護 学 実 習・ 幼 稚 園 実習 を 履修 す る 。 小児 看 護 学 概論 Ⅰ で は 、小 児 看 護 の変 遷 や 理 念、 小 児 の 特徴 、 小 児 保健 の 現状 な ど 小 児看 護 学 の 基礎 と な る 理論 や 知 識 ・考 え 方 に つい て 、 小 児看 護 学 概 論 Ⅱ
( 今回 の 研 究 対象 科 目 ) では 、 子 ど もの 発 達 や 成長 、 そ れ に 応 じ た 日 常生 活 の 援 助な ど を学 生 は 学 ぶ。
③ 小 児 看 護 学概 論 Ⅱ ( 1 単 位 30 時間 ) の 授 業計 画 こ の科 目 の 学 習目 標 は 以 下 の 3つ で ある 。
a) 小 児 各期 に お け る小 児 の成 長 発 達 につ い て 理 解で き る 。
b) 小 児 の成 長 発 達 に応 じ た日 常 生 活 の援 助 の 必 要性 と 方 法 を理 解 で き る。
c) 健 康 問題 を 抱 え た小 児 と家 族 に つ いて 理 解 で きる 。
こ の科 目 は 、 各 回 90分 、 計15回の 授 業 で 構成 さ れる 。 表 1に示 し た シ ラバ ス の 通 り、
全15回 のう ち 、第 10回 目の 授 業 の 後 半 45分 間 で「 教 員 によ る 絵 本 の 読み 聞 か せ」が 行 わ れ る。
表 1 小 児 看 護学 概 論 Ⅱ シラ バ ス
( 2) 読 み 聞 かせ に 用 い る絵 本 『 お おき な 木 』 の特 徴
こ こで は 、絵 本『お お き な木 』(Silverstein(1976))を 用い る 。こ の 絵 本で は 、い つ も 一 緒 に遊 ん だ り お昼 寝 し た りす る 仲 良 しの 一 本 の リン ゴ の 木 と一 人 の 少 年が 登 場 す る。 少 年 は 成長 と と も に望 む も の が変 わ り 、 木は そ の 望 みに 合 わ せ て自 分 の 果 実や 枝 、 幹 を少 年 に 捧 げて い き 、 少年 が 老 人 にな る と 、 切り 株 に な った 自 身 を 捧げ た と い う物 語 で あ る。
こ の絵 本 の 読 み聞 か せ を 受け た 後 の 物語 の 解 釈 の仕 方 が 聞 き手 の 年 代 によ り 大 き く異 な る こと が す で に示 さ れ て いる ( 表 2; 守 屋 (1994))。7~8歳 の 子 ど も は、 こ の 物 語を 現 実 世 界の 出 来 事 とし て と ら える た め 、 その 感 想 の 主体 は 、「 木 は ど うし て しゃ べ る の 」な ど 、 物 語を 現 実 世 界と し て と らえ た 質 問 であ る 。9~12歳の 子 ど も は、 現 実 と非 現 実 の 違い が 分 かる よ う に なる た め、「木 が し ゃ べれ る は ず が ない 」な ど現 実 と 物 語 との 違 い を その 感 想 の 中で 指 摘 す る。13~14歳 の 子 ど もは 、 経 験 不 足な た め 作 者の 意 図 が 理解 で き ず、「 な に を 言い た い の かわ か ら な い」 な ど の 感想 を 持 つ 。大 人 (16歳 以上 ) に なる と 、「 こ こ に 描 か れて い る こ とは 世 間 に はよ く あ る こと だ 」 と いう よ う に 、物 語 世 界 を現 実 世 界 のコ ピ ー と して と ら え た感 想 を 持 つよ う に な る。
ま た 、こ の 表 2( 守 屋(1994))に 含ま れ て いな い 幼児(3歳以 上 )は、「 絵 本や 物 語 に親 し み、興 味を 持 っ て 聞 き、想 像 する 楽 し さ を 味 わう 」とさ れ て い る(厚 生 労 働省(2018))。
絵 本の 読 み 聞 かせ を 受 け た幼 児 と 大 人の 物 語 受 容の 在 り 方 を比 較 し た 報告( 佐々 木(2012))
で は、 幼 児 (3~5歳 児 ) は、「 物語 世 界 に 入り 込 み、 物 語 の 〈当 事 者 〉 とし て 登 場 人物 と 交 渉を 持 ち 、 相手 の 言 葉 に感 動 を ゆ り動 か さ れ なが ら 物 語 を受 容 し て いる 」 一 方 で、 大 人
( 大学 生 )は、「〈 当 事 者 〉と し て 物 語の 中 に 入 り込 む の で なく 、〈傍 観 者〉と し て、物 語 を 外 側か ら 眺 め てい る 」こ とが 示 さ れ てい る 。こ うし た「〈 当事 者 〉と し ての 幼 児・〈傍 観 者〉
と して の 大 人」( 佐 々木(2012))と い う 違い と 、7歳 以 降 の年 代 別 の 違 い( 表 2)を 合 わ せ る と、 物 語 世 界を 現 実 と みな し 、 物 語世 界 に す める の は 幼 児期 か ら 7~8歳ま で と 言 える 。
こ のよ う に 、 聞き 手 の 年 代に よ り 物 語の 解 釈 に 違い を 生 む こと が で き る『 お お き な木 』 は、「子 ど も は 小さ な 大 人 では な い」と い う 概 念 を説 明 す る 好事 例 だ と 考え ら れ た ため 、X 校 での 読 み 聞 かせ の 題 材 とし て 選 ば れた 。
回 項 目 授 業 内 容
1~8 健康増進と成長発達を 促す看護
新生児乳児期の子どもの形態的・機能的・心理社会的発達、幼児期の子どもの 特徴及び基本的・社会的生活習慣への支援、学童期の身体的成長・生理的特 徴・心理社会的発達、思春期の身体的成長・生理的特徴・心理社会的発達 9~11 日常生活の援助技術 授乳、離乳、子どもと物語(絵本の読み聞かせ)、遊び
12~14 健康問題を抱えた小児
を取り巻く社会 出生前診断、障害のある小児が地域で暮らすことの意味、NICUの小児と家族 15 終講試験
表 2 子 ど も と大 人 の 物 語の と ら え 方の 違 い
守 屋 (1994) よ り 引 用
( 3) 教 員 に よる 絵 本 の 読み 聞 か せ の実 践
こ の絵 本 『 お おき な 木 』 を用 い た 「 教員 に よ る 読み 聞 か せ 」の 進 め 方 を 表 3に 示 した 。 ま ず、 こ の 授 業の 中 で 教 員が 「 絵 本 の読 み 聞 か せ」 を 行 い 、学 生 が そ れを 受 け て 感想 を 書 い ても ら う こ とを 説 明 し 、記 入 用 紙 を配 布 す る ( 導 入 :5分 )。 次 に 、 絵 本 『 お お き な 木 』 を 書画 カ メ ラ によ り 拡 大 して ホ ワ イ トス ク リ ー ンに 映 写 し なが ら 、 教 員に よ る 読 み聞 か せ を 行う 。読 み 聞か せ 終 了 後、学 生 に 感想 を 記 入 して も ら う(展 開 1:10分)。そ の 後 、教員 に 指名 さ れ た 男 女3 人 ず つか ら 感 想 を発 表 し て もら い 、 各 学生 の 感 想 が作 者 の 意 図を 理 解 し よう と す る 「大 人 の 感 想」 の 特 徴 を含 ん で い るこ と を 教 員が 説 明 す る。 さ ら に 、感 想 は 経 験と 置 か れ た状 況 に よ って 同 じ 人 でも 変 化 す るこ と を 説 明す る ( 展 開 2:10分)。 次 に、
幼 児期 か ら 7~8歳 、9~12歳、13~14歳 、大 人 (16歳 以 上 ) の感 想 の 具体 例 と 各 年代 の 物 語の 解 釈 の 仕方 の 特 徴 ( 表 2) を、 プ リ ン ト を用 い て 説 明す る 。 加 えて 、 大 人 の感 想 の 具 体例 と し て 教員 の 感 想 や前 年 度 の 受講 学 生 の 感想 な ど も 示す ( 展 開 3:10分)。 最 後 に、
大 人は そ の 物 語を 外 側 か ら眺 め 、幼 児 か ら 7~8歳 ま で の 子ど も は 物 語 世界 に す め るこ と を 説 明し な が ら 授業 を 振 り 返り 、 学 生 の感 想 文 を 回収 す る ( まと め :10分 )。
( 4) 教 員 に よる 絵 本 の 読み 聞 か せ を受 け た 学 生の 反 応
こ の「 教 員 に よる 絵 本 の 読み 聞 か せ 」を 受 け た 学生 か ら は、「 絵 本が こ んな に 奥 深 いも の だ と思 わ な か った 」、「 絵 本は 子 ど も だけ の も の と思 っ て い たが 大 人 も 楽し め る も のだ と 分 か った 」、「 子 ども と 大 人 でこ ん な に 物語 の と ら え方 が 違 う こと に 驚 い た」、「 自 分 には 年 齢 の 離れ た 兄 弟 がい る が 、 同じ テ レ ビ 番組 を 見 て も感 想 が 違 うの は 、 年 齢に よ る と らえ 方 の 違 いだ と 分 か った 」 な ど の感 想 が 寄 せら れ た 。 こう し た 感 想の 中 心 は 、授 業 の 中 で学 ん だ
「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」 こ との 具 体 例 を振 り 返 っ た も の 、 そ の学 び を 身 近な 物 事 に 当て は め た もの な ど で あり 、座 学を 中 心 に 展 開さ れ る 小 児看 護 学 概 論の 授 業 の 中で 、「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」 が 学 生 に子 ど も 理 解を 深 め て もら う た め の有 効 な 手 法で あ る こ とが 推 測 さ れた 。
物 語 の 解 釈 の 仕 方 頻 出 年 齢 感 想 の 代 表 例 物語世界を現実とみなしている
物語世界の中にすむことができる 7~8歳 「木はどうしてしゃべるの」
「あんな木どこにあるの」
現実と非現実の世界の違いが分かる
ようになる 9~12歳 「木がしゃべれるはずがない」
「あんな枝で家が作れるはずがない」
作者の意図が理解できない 13~14歳 「なにを言いたいのかわからない」
「こんな幼稚な話…僕たちはもう大人だ」
物語世界を眺めている
物語世界を現実世界のコピーとして とらえている
大人(16歳以上) 「ここに描かれていることは世間にはよくあることだ」
「これが人間というものだ」
表 3 授 業 で の絵 本 の 読 み聞 か せ の 進行 ( 第 10回 目授 業 の 後 半 45分 )
6 )デ ー タ 収 集方 法
( 1) ア ン ケ ート 調 査 の 内容
全 学年 を 対 象 にし た 無 記 名式 ア ン ケ ート の 質 問 項目 は 、① 属性( 性 別・年 齢 )、② 絵 本の イ メー ジ ;9つ の イ メ ー ジ( お も し ろさ が あ る 、親 し み を 感じ る 、 感 受性 が あ る 、ユ ー モ ア があ る 、魅力 が あ る 、価 値 が あ る、意 味 が あ る、好 き であ る 、必 要 であ る )を 5件 法(5:
と ても あ て は まる ~1:全 くあ て は ま らな い )で 問う も の 、③ 絵 本 の と らえ 方 に 年 齢の 違 い や 子ど も と 大 人に 違 い が ある か ( 選 択: あ る 、 なし )、 ④ 「 子 ど もは 小 さな 大 人 で はな い 」 こ とに 対 す る 立場( 選 択:賛成 、反 対 、ど ち ら で もな い )と そ の理 由( 自 由記 載 )、と し た 。
3年 生 を 対 象に し た 無 記 名式 ア ン ケ ート に は 、 上記 ① ~ ④ のほ か に 、 ⑤卒 業 後 に 絵本 の 読 み聞 か せ は 役に 立 つ か( 選 択式:思 う 、思 わ ない 、ど ち ら で もな い)、⑥ 小 児 看護 学 実 習 で 「子 ど も は 小さ な 大 人 では な い 」 と感 じ た 場 面( 自 由 記 載)、 を含 め た。
( 2) ア ン ケ ート 調 査 の 実施 時 期
各 学年 へ の 調 査時 期 を 図 1に 示 し た 。1 年 生 対 象の 調 査 は 、絵 本 の 読 み聞 か せ を 受け た 小 児看 護 学 概 論Ⅱ の 10回 目授 業 終 了 後に 行 っ た (2016年 11月)。2年 生対 象 の 調 査は 、1 年 次(2015年)に 絵 本の 読 み聞 か せ の 説明 を 受 け てか ら 1年 が経 過 し た 時点 で 行 っ た(2016 年11 月)。3年 生 対 象 の 調査 は 、1年 次 (2014年 ) に 絵 本の 読 み 聞 か せの 説 明 を 受け て か ら 2年 が 経 過 し、か つ 全 臨地 実 習 と 看護 師 国 家 試験 を 終 え た時 点 で 行 った(2017年 3月 )。
( 3) ア ン ケ ート 内 容 の 信頼 性 と 妥 当性 の 確 保
こ のア ン ケ ー トは 、 授 業 内容 や 読 み 聞か せ の 実 践内 容 を も とに 独 自 に 作成 し た も ので あ る 。事 前 に 著 者ら で 議 論 を重 ね 、 調 査内 容 の 信 頼性 と 妥 当 性の 確 保 に 努め た 。
流 れ 時 間 指 導 内 容 指 導 内 容 の 詳 細
導入 5分 本日の授業の進め方を説明する。学生に感想の記入用紙を配布する。
絵本『おおきな木』の 読み聞かせ
『おおきな木』を書画カメラでホワイトスクリーンに拡大して、教員による絵 本の読み聞かせを行う。
感想の記入 学生に感想を記入してもらう。
感想の発表 記入した感想を学生に発表してもらう(男女3人ずつ)。
大人の感想の特徴の説明
この読み聞かせを受けた時に、大人は自分の過去の経験に照らして作者の意図 を理解しようとすることを説明する。さらに、経験には個人差・経時的変化が あるので、この絵本に対する各人の感想も置かれた状況や経験の積み重ねによ り変化することを説明する。
展開3 10分 子どもと大人の物語の とらえ方の違いの説明
この絵本に対する、幼児から7~8歳、9~12歳、13~14歳、大人(16歳以上)
の感想の具体例と各年代の特徴を説明したプリントを配布する。幼児から7~8 歳までは、現実と非現実の境目がなく物語世界にすむことができることを説明 する。9~12歳は物語が非現実であることを確認し、現実と非現実の違いの枠 組みができることを説明する。13~14歳は経験不足のため、作者の意図が理解 できないことを説明する。大人(16歳以上)は非現実世界を現実世界のコピー として理解することができることを説明する。
まとめ 10分 振り返りと感想文の回収
同じ物語でも、大人はその物語を外側から眺め、幼児から7~8歳までの子ども は物語世界にすめることを説明し、大人と子どもの物語のとらえ方の違いを振 り返る。最後に学生の感想文を回収する。
展開2 10分 展開1 10分
図 1 小 児 看 護学 履 修 ス ケジ ュ ー ル とア ン ケ ー ト調 査 の 実 施時 期
( 4) ア ン ケ ート の 回 収
1年 生 に は 第 10回 目 の 授業 の 「 ま とめ 」 の 時 間( 表 3)に 、2年生 と3年 生 に は X 校 学 校 長の 許 可 を 得て 授 業 時 間外 に 、 口 頭で ア ン ケ ート 調 査 の 説明 を 行 っ たの ち に 用 紙を 配 布 し た( 回 答 時 間: 約 30分)。 回 答終 了 後 は 、学 生 にア ン ケ ー ト用 紙 を 裏 返し て も ら い、 教 室 内で 教 員 が 回収 し た 。 回収 に あ た り、 各 学 生 のア ン ケ ー トへ の 参 加 ・不 参 加 が 教員 に も 学 生に も わ か らな い よ う に配 慮 し た 。
7 )デ ー タ 分 析方 法
( 1) 量 的 デ ータ の 分 析 方法
ア ンケ ー ト 内 の数 的 デ ー タの 分 析 に は Excel 2016( マ イク ロ ソ フ ト社 ) を用 い た 。 絵本 の イメ ー ジ に 関す る 回 答 結果 (5件法 ) に つ い て、 対 応 の な い t検 定 によ り 学 年 間の 比 較 を 行い 、 そ の 有意 確 率 は 0.05と した 。
( 2) 質 的 デ ータ の 分 析 方法
ア ンケ ー ト 内 の「 子 ど も は小 さ な 大 人で は な い 」こ と に 対 する 立 場 に 関す る テ キ スト デ ー タ( 自 由 記 載) か ら は 、各 立 場 ( 賛成 ・ 反 対 ・ど ち ら で もな い ) を 取る 理 由 が 示さ れ た 部 分を 抜 き 出 しコ ー ド と した 。 実 習 で「 子 ど も は小 さ な 大 人で は な い 」と 感 じ た 場面 に 関 す るテ キ ス ト デー タ ( 自 由記 載 ) か らは 、 実 習 で感 じ た 「 子ど も の 特 徴」 が 示 さ れた 部 分 を 抜き 出 し コ ード と し た 。類 似 す る 意味 内 容 の コー ド か ら 、サ ブ カ テ ゴリ ー を 生 成し 、 共 通 する 内 容 を 含む サ ブ カ テゴ リ ー か らカ テ ゴ リ ーを 生 成 し た。 そ の 後 、回 答 用 紙 の記 述 内 容 を再 確 認 し なが ら 、各 カ テゴ リ ー を まと め 直 す 過程 を 繰 り 返し 、分析 の 精緻 化 を 図 った 。 著 者ら で 原 資 料に 基 づ く 議論 を 重 ね 、分 析 結 果 の信 頼 性 と 妥当 性 の 確 保に 努 め た 。
8 )倫 理 的 配 慮
本 研究 は 、星 槎 大学 研 究 倫理 審 査 委 員会 の 承 認( 承認 番 号:1624)お よ び X 看 護 専 門 学 校 学校 長 の 同 意を 得 て 実 施し た 。 無 記名 式 ア ン ケー ト 調 査 への 参 加 は 自由 意 志 で 、回 答 に 関 して 不 利 益 を受 け な い こと 、 研 究 過程 で 得 た 情報 は 研 究 目的 以 外 で は使 用 し な いこ と を
口 頭で 説 明 し 同意 を 得 た 。無 記 名 式 アン ケ ー ト につ き 、 回 答用 紙 の 提 出に よ り 本 研究 へ の 同 意と し た 。 また 、 テ キ スト デ ー タ の分 析 に あ たり 、 固 有 名詞 は 匿 名 化し 、 個 人 が特 定 で き る内 容 は 抽 象化 も し く は削 除 し た 。
4 .結 果
1 )全 学 年 対 象の ア ン ケ ート 調 査
1年 生 38名 、2年 生 38名 、3年 生 18名 、計 94名 が 回 答 した( 回 収 率 は それ ぞ れ 95.0%、
95.0%、45.0% 、78.3% )。
( 1) 絵 本 の イメ ー ジ
絵 本の イ メ ー ジに 関 す る9項 目 の 評価 は 、全 て の 学年 で い ず れも 平 均 4.0以 上で あ っ た 。 ま た、各 項目 で4 も し く は 5の 評 価 をし た 人 数 は平 均 86.8名(92.3%)で あ った 。そし て 、 2年 生 の イ メー ジ は 1年 生よ り 全 項 目で 高 く 、3年 生 で は、「 ユー モ ア 」を 除 く 全 ての 項 目 の イメ ー ジ が 1年 生 よ り も高 か っ た( 各 項目:p < 0.05)。9項 目の う ち、「 親 し み」「 魅 力」
「 意味 」「 好 き」「 必 要」の 5項 目 で2年生 の 点 数 が 3年 生 よ り高 か っ た( 各 項 目:p < 0.05;
表4)。
( 2) 子 ど も と大 人 の 絵 本の と ら え 方の 違 い の 認識 と 「 子 ども は 小 さ な大 人 で は ない 」 こ とに 対 す る 立場
子ど も と 大 人の 絵 本 の とら え 方 の 違い に つ い て、1年 生 38名、2 年 生 37名、3 年 生 18 名 、 計93名 (98.9%) が 「あ り 」 と 答え た 。
表 4 学 生 の 絵本 の イ メ ージ ( 平 均 )
5段 階 評 価 (5: 最 も 肯 定 的 ~1: 最 も 否 定 的 )
ap < 0.05( 対 応 の な い t検 定 :1年 生 対 2年 生 )
b p < 0.05( 対 応 の な い t検 定 :1年 生 対 3年 生 )
cp < 0.05( 対 応 の な い t検 定 :2年 生 対 3年 生 ) 絵 本 の
イ メ ー ジ
1 年 生 ( n = 3 8 )
2 年 生 ( n = 3 8 )
3 年 生 ( n = 1 8 )
計 ( n = 9 4 ) おもしろさa,b 4.1 4.5 4.5 4.3
親しみa,b,c 4.2 4.6 4.4 4.4
感受性a,b 4.3 4.6 4.6 4.5
ユーモアa 4.3 4.5 4.2 4.4
魅力a,b,c 4.4 4.7 4.5 4.5
価値a,b 4.4 4.7 4.7 4.6
意味a,b,c 4.4 4.8 4.4 4.6
好きa,b,c 4.4 4.6 4.5 4.5
必要a,b,c 4.5 4.9 4.7 4.7
表 5 子 ど も と大 人 の 絵 本の と ら え 方の 違 い と キー ワ ー ド に対 す る 立 場
単 位 : 名 ( % )
「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」こ と に 対す る 立場 と し て 、1年 生 33名(86.8% )、2年 生20名 (52.6%)、3年 生 で は 11名 (61.1% ) が 「 賛 成 」 と 回 答 し た 。「 ど ち ら で も な い 」 と 答え た 割 合 は 、2 年 生(15名 、39.5% )で 一 番高 く 、次 い で 3年 生(5名 、27.8% )で あ っ た( 表 5)。
( 3)「 子ど も は 小 さな 大 人で は な い 」こ と に 賛 成ま た は 反 対す る 理 由
1年 生 31名 、2年 生 28名 、3年 生 15名 の回 答 ( 自由 記 載 ) より (【カ テ ゴリ ー 】〈 サ ブ カ テゴ リ ー〉[ 学 生 の意 見 ]と し て 示 す)、 学生 が 「子 ど も は 小さ な 大 人 では な い 」 こと に 対 して そ れ ぞ れの 立 場 を とる 理 由 は、【 子ど も の 未熟 さ 】【 子 ど もの 経 験 の少 な さ】【 子 ども の 独自 性 】【 子 ど もの 尊 厳】【 子 ども の 中 の大 人 ら しさ 】【子 ど も への 敬 意 】の 6 つ のカ テ ゴ リ ーに 分 け ら れた ( 表 6)。
① 【子 ど も の 未熟 さ 】
こ のカ テ ゴ リ ーは 、〈漠 然 とし た 未 熟 さ〉〈 認知 の 未熟 さ 〉〈 社 会 性 の未 熟 さ〉〈 情緒 の 未熟 さ 〉 の 4つ の サ ブ カテ ゴ リ ー から 構 成 さ れた 。〈漠 然 と し た未 熟 さ〉 と 〈 認 知 の 未熟 さ 〉 は、「 賛 成」 の1、2 年生 か ら 指 摘さ れ た。〈 社会 性 の 未 熟さ 〉 は「 賛 成 」 の2、3年生 か ら、〈 情 緒 の未 熟 さ 〉 は「 賛 成 」 の 3年 生 か ら指 摘 さ れ た。
② 【子 ど も の 経験 の 少 な さ】
こ れは 、1つの サ ブ カ テ ゴリ ー 〈 経 験の 少 な さ 〉か ら 構 成 され た 。 こ の〈 経 験 の 少 な さ〉 は 、 各 学年 の 「 賛 成」 の 立 場 の者 か ら 指 摘さ れ た 。
③ 【子 ど も の 独自 性 】
こ れは 、〈子 ど も の 純粋 さ〉〈 子 ども の 発 想 力〉 の 2つ の サ ブ カテ ゴ リ ー から 構 成 さ れ た。〈 子ど も の 純 粋さ 〉 は、「 賛成 」 の 1、2年 生か ら 、〈 子 ど も の発 想 力〉 は 、「 賛 成 」 の1、2、3年 生 か ら 指摘 さ れ た 。
質 問 回 答 1 年 生
( n = 3 8 )
2 年 生 ( n = 3 8 )
3 年 生 ( n = 1 8 )
計 ( n = 9 4 ) あり 38(100.0) 37(97.4) 18(100.0) 93(98.9)
なし 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)
不明 0(0.0) 1(2.6) 0(0.0) 1(1.1)
賛成 33(86.8) 20(52.6) 11(61.1) 64(68.1)
どちらでもない 5(13.2) 15(39.5) 5(27.8) 25(26.6)
反対 0(0.0) 2(11.1) 2(11.1) 4(4.3)
不明 0(0.0) 1(2.6) 0(0.0) 1(1.1)
子どもと大人の 絵本のとらえ方
の違い
「子どもは小さな 大人ではない」
に対する立場
表 6 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 こ と に 賛成 ま た は 反対 す る 理 由
灰 色 : 各 サ ブ カ テ ゴ リ ー に 該 当 す る 回 答 を し た 学 生 数 ( 名 )
④ 【子 ど も の 尊厳 】
こ れは 、1つの サ ブ カ テ ゴリ ー 〈 子 ども の 尊 厳 〉か ら 構 成 され た 。 こ のサ ブ カ テ ゴ リ ー は 、 各 学 年 の 「 反 対 」 も し く は 「 ど ち ら で も な い 」 の 立 場 の 者 か ら 指 摘 さ れ た 。
⑤ 【子 ど も の 中の 大 人 ら しさ 】
こ れは 、〈 大 人 っ ぽさ 〉〈 大人 へ の 準備 〉の 2つ のサ ブ カ テ ゴリ ー で 構 成さ れ た。〈 大 人 っぽ さ 〉と〈 大 人 へ の 準備 〉は 、「 どち ら で も ない 」立 場 の 2年 生 か ら指 摘 さ れ た。
⑥ 【子 ど も へ の敬 意 】
こ れは 、1つの サ ブ カ テ ゴリ ー 〈 子 ども か ら の 学び 〉 で 構 成さ れ た 。 この 〈 子 ど も か らの 学 び 〉 は、「 どち ら でも な い 」 の立 場 の 3年 生 か ら 指摘 さ れ た 。
2 )3 年 生 の み対 象 の ア ンケ ー ト 調 査
( 1) 卒 業 後 に絵 本 の 読 み聞 か せ は 役に 立 つ と 思う か
17名(94.4% )が 役 立 つと 、1名(5.6% )が どち ら で も ない と 回 答 した 。役 立 た ない と 回 答し た 者 は いな か っ た 。
( 2)「 子ど も は 小 さな 大 人で は な い 」と 感 じ た 場面
3年 生 15名 か ら の「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」と 感 じ た小 児 看 護 学実 習 中 の 具体 的 な 場面 ( 自 由 記載 ) の 特 徴は 、【子 ど も の 未熟 さ】【 子 ども の 独 自 性】 の 2つ の カ テ ゴリ ー に 分類 さ れ た ( 表7)。
① 【子 ど も の 未熟 さ 】
こ れは 、〈 情 緒 の 未熟 さ 〉〈 認 知の 未 熟 さ〉〈 社 会 性の 未 熟 さ〉の 3つ の サブ カ テ ゴ リ ー から 構 成 さ れた 。 い ず れの サ ブ カ テゴ リ ー も 「賛 成 」 ま たは 「 ど ち らで も な い 」の 立 場の 者 か ら 指摘 さ れ た が、〈 社会 性 の 未 熟さ 〉 は「 反 対 」 の立 場 の 者 から も 指 摘 さ れ た。
漠然とした未熟さ できないことがたくさんある 5 0 0 1 0 0 0 0 0
認知の未熟さ 物事の知識があまりない 17 0 0 7 0 0 0 0 0
社会性の未熟さ 自立した行動をとることが難しい 0 0 0 1 0 0 3 0 0
情緒の未熟さ 大人と感情の持ち方が違う 0 0 0 0 0 0 2 0 0
子どもの経験の少なさ 経験の少なさ 子どもはまだ経験が少ない 5 0 0 2 0 0 2 0 0
子どもの純粋さ 大人よりもピュア 2 0 0 1 0 0 0 0 0
子どもの発想力 大人が考えつかないような考え 1 0 0 4 0 0 3 0 0
子どもの尊厳 子どもの尊厳 子ども個人の尊厳はある 0 1 0 0 4 1 0 2 1
大人っぽさ 大人な子どももいる 0 0 0 0 3 1 0 0 0
大人への準備 大人になるための準備段階 0 0 0 0 3 0 0 0 0
子どもへの敬意 子どもからの学び 子どもから学ぶことも多い 0 0 0 0 0 0 0 2 0
1年生 (n=31) 2年生 (n=28)
子どもの未熟さ
子どもの独自性
子どもの中の大人らしさ
3年生 (n=15) 賛成 でもないどちら 反対 賛成 でもないどちら 反対 賛成 でもないどちら 反対 カ テ ゴ リ ー サ ブ カ テ ゴ リ ー 代 表 的 な 意 見
表 7 小 児 看 護学 実 習 で 「子 ど も は 小さ な 大 人 では な い 」 と感 じ た 場 面( 3 年 生、 n=15)
灰 色 : 各 サ ブ カ テ ゴ リ ー に 該 当 す る 回 答 を し た 学 生 数 ( 名 )
② 【子 ど も の 独自 性 】
こ れは 、〈子 ど も の 純粋 さ〉〈 子 ども の 自 由 さ〉〈 子ど も の 素 直さ 〉〈子 ど もの 成 長 〉 の4つ の サ ブ カテ ゴ リ ー から 構 成 さ れた 。 い ず れの サ ブ カ テゴ リ ー も 「賛 成 」 の 立場 の 者か ら 指 摘 され た が、〈 子ど も の 素 直さ 〉 は 「 どち ら で も ない 」 立 場 の者 か ら の 指 摘 もあ っ た 。 その 一 方 で、「 反 対」 の 立 場 の者 か ら は こ れ ら 4つ の サ ブ カテ ゴ リ ー の い ずれ も 指 摘 され な か っ た。
5 .考 察
本 研究 で は 、 小児 看 護 学 概論 で の 「 教員 に よ る 絵本 の 読 み 聞か せ 」 が 看護 学 生 の 子ど も 理 解に 及 ぼ す 効果 を 、 受 講直 後 の 1 年生 、 そ れ ぞ れ 1、2年 前 に 受講 し た 2、3年 生 に ア ン ケ ート 調 査 を 行う こ と で 検証 し た 。 その 結 果 、 多く の 学 生 が絵 本 に 肯 定的 イ メ ー ジを 持 っ て おり 、 子 ど もと 大 人 の 「絵 本 の と らえ 方 の 違 い」 を 理 解 して い る こ とが 明 ら か にな っ た
( 表 4)。ま た 、学生 は 、子ど も の【 未熟 さ 】【 経 験の 少 な さ】【 独 自性 】【 尊 厳】【 大 人ら し さ 】そ し て 【 子ど も へ の 敬意 】 を 重 要視 し て 「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」 こ とを イ メ ー ジし て い た 。中 で も 、 臨地 実 習 を 終え た 3年 生は 、【未 熟 さ】【 独 自 性】 を 重 要 視し て い た( 表6、7)。こ こか ら 、1年 生 は 授業 で の 学 びを 振 り 返 りな が ら 、2年 生 は そ の後 の 学 内 で の様 々 な 専 門領 域 の 学 習・ 演 習 で 積み 重 ね た 知識 や 経 験 に基 づ い て 再考 し な が ら、3年 生 は子 ど も 理 解を 深 め ら れた 実 習 体 験を 加 味 し て再 考 し な がら 、「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 こ と に 対す る 立 場 を表 明 し て いた と 考 え られ た ( 図 2)。そ し て、「 教 員に よ る 絵 本 の 読み 聞 か せ 」が 、 こ う した 学 生 の 子ど も 理 解 に関 す る 思 考を 深 め る ため の き っ かけ に な る 可能 性 も 考 えら れ た 。 以下 、 子 ど も理 解 の 観 点か ら 、 小 児看 護 学 概 論で 「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」 を 学 生 が体 験 す る 意義 を 中 心 に考 察 す る 。
賛成 でもないどちら 反対
情緒の未熟さ 子どもは自分の気持ちを優先させる 1 1 0
認知の未熟さ 知識をつけていく段階なので好奇心のまま危険なことを行う 0 1 0 社会性の未熟さ 大人の手をかり、一緒に行ったり、覚えたりと手助けが必要 1 1 2 子どもの純粋さ 子どもは皆同じ友達という考えのもと平等に接していた 2 0 0 子どもの自由さ 子どもは自由で何かにとらわれることがない 1 0 0
子どもの素直さ 大人の言うことを信じて疑わなかった 1 2 0
子どもの成長 実習の期間の中でも体験を通して成長していく姿がみられた 2 0 0 子どもの独自性
カテゴリー サブカテゴリー 代表的な意見
立場
子どもの未熟さ
1 )絵 本 の イ メー ジ と キ ーワ ー ド 理 解
全 学年 対 象 の アン ケ ー ト 調査 で は、「 絵 本 のイ メ ージ 」9項目 の 評 価 は いず れ も 平 均 4.0 以 上で あ り 、 ほと ん ど の 学生 が 「 子 ども と 大 人 の絵 本 の と らえ 方 の 違 い」 が あ る こと を 認 識 して い た こ とが 明 ら か にな っ た ( 表 4)。 特 に 、小 児 看 護 学概 論 の 授 業を 終 え た 直後 の 1 年 生で も 、1 年 前 に この 授 業を 受 け た 2年 生 で も、2 年 前に こ の 授 業を 受 け小 児 看 護 学実 習 を 終え た 3年 生で も 、 絵 本の 「 必 要 性」 の 評 価 が最 も 高 く 、今 回 の 授 業実 践 が 「 絵本 を 通 し た子 ど も 理 解」 の 重 要 性を 学 生 に 印象 づ け た 可能 性 が 考 えら れ た 。
「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」こ とに 対 す る 立場 と そ の 理由 を 見 る と、「 賛成 」し た 1 年 生で は 【 子 ども の 未 熟 さ】 を 理 由 に 挙 げ る 者 が最 も 多 か った ( 表 6)。1年 生 への ア ン ケ ー ト調 査 の 実 施時 期 が、「絵 本 の 読 み聞 か せ 」と とも に「 子ど も と 大 人 の物 語 の と らえ 方 の 違 い」を 説 明し た 授 業 の 直後 で あ っ たこ と が こ の結 果 に 影 響し た と 考 えら れ た。「 賛 成」し た 2年 生 16名 の う ち 9名 が【 子 ど もの 未 熟 さ 】を そ の 理 由と し て 挙 げ てお り 、さら に そ の う ち の1名 が 〈社 会 性 の 未熟 さ 〉 を 指摘 し て い た。 こ れ は 1年 生 で は 見ら れ な か った も の で、2年生 に な る と子 ど も の社 会 性 に 目を 向 け る 者が 出 て く るこ と が 推 測さ れ た。ま た、「 ど ち らで も な い 」9 名、「 反 対」2名 は 、そ の 理 由 に【 子 ど も の尊 厳 】【 大 人ら し さ 】を 挙 げ て い た。【 大 人 らし さ 】も 1年 生 に は 見ら れ な か っ た理 由 で 、2年生 が〈 社 会性 の 未 熟 さ〉〈 大 人 っぽ さ 〉〈 大 人 への 準 備〉と い う 新た な 子 ど も 理解 の 視 点 を持 ち 始 め てい る こ と がう か が え た。 こ う し た 2年 生 の 反応 に は 、 授業 を 受 け てか ら の 1年間 に 様 々 な専 門 領 域 の学 習 ・ 演 習で 積 み 重 ねた 知 識 や 経験 に 基 づ いて 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 と い う 概念 を 再 考 した こ と が 反映 さ れ て いる と 考 え られ た ( 図 2)。
「 賛成 」し た 3年 生 10名 のう ち 、7名 は【 子 ど もの 未 熟 さ 】と【 子 ど もの 独 自 性 】を そ の 理由 と し て 挙げ て い た 。ま た 2名 が挙 げ た 〈 情緒 の 未 熟 さ〉 と い う 理由 は 、1年 生 や2 年 生に は 見 ら れな い も の であ り 、3年 生 に な る と子 ど も の 情緒 面 に 目 を向 け る 者 が出 て く る こと が う か がえ た 。 ま た、「 どち ら で も ない 」4名 、「 反 対 」1名 は 【 子ど も の 個 性】【 子 ど もへ の 敬 意 】を そ の 理 由に 挙 げ て いた 。 特 に 【子 ど も へ の敬 意 】 は 、3年 生 のみ に 見 ら れ た理 由 で あ った 。 こ れ は、3年 生は 実 習 を 経 験す る こ と によ り さ ら に子 ど も 理 解が 深 ま
図 2 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 こ と へ の立 場 の 考 え方
り 、1、2 年 生 で は見 ら れ なか っ た「 多角 的 な 子 ども 理 解 」がで き る よ うに な っ た こと が 影 響 した と 考 え られ た ( 図 2)。
な お、 今 回 の 調査 で 学 生 が「 子 ど も は小 さ な 大 人で は な い 」こ と に 反 対あ る い は どち ら で もな い と い う立 場 を 見 せた と し て も、 そ れ は 、そ の 学 生 の概 念 理 解 を否 定 す る もの で は な く、各 学生 の 受 け 止め 方 の違 い を 反 映し た 結 果 だと 考 え ら れる 。「 賛 成」を 表 明し た 者 は 、 1年 生 で 最 も多 か っ た 一 方で 、演 習を 経 験 し た 2年 生 や 、実 習 な ど で 子ど も と 接 して い る 3 年 生で は 相 対 的に 少 な か った が( 表 5)、2、3年 生は 、そ れ ぞれ が 積 み 重ね た 知 識 や経 験 を も とに 、「 子 ど も は小 さ な 大人 で は な い」こ と が 当て は ま る 場面 も 当 て はま ら な い 場面 も そ れ ぞれ 想 起 し てい た こ と がう か が え た( 表 6、7)。 つ ま り 、小 児 看 護 の概 略 を 理 解す る 小 児 看護 学 概 論 で、 子 ど も 理解 を 深 め るた め に 重 要な 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 と い う 概念 を 学 ぶ 具体 例 と し ての 「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」 を 受 け るこ と は 、 たと え 一 度 だけ の 体 験 だと し て も 、学 生 が 「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」 こ とを 再 考 す る上 で 重 要 な役 割 を 果 たし て い る こと が 推 測 され た 。
2 )絵 本 の 読 み聞 か せ の 今後 の 活 用
3年 生 対 象 のア ン ケ ー ト 調査 か ら は、「 絵 本の 読 み聞 か せ 」が卒 業 後 も 役に 立 つ と ほと ん ど の学 生 が 考 えて い る こ とが 明 ら か にな っ た 。 そし て 、3年 生 が 実 習 で「 子 ど も は小 さ な 大 人で は な い 」と 感 じ た 根底 に は、【 子 ど もの 未 熟さ 】【子 ど も の 独自 性 】 の 2 つ の 要素 が あ るこ と も 示 され た ( 表 7)。
「 賛成 」の 立場 を 示 し た 3年 生 は、[ 友 達と ケ ン カを し て も 次の 日 に は 仲良 し に な って い た]、[ 実 習 の 中で も い ろ いろ な 発 見 をし た り 、 体験 を し て 成長 す る 姿 がみ ら れ た ]と い っ た 場面 を 、「 ど ち ら でも な い」 あ る い は「 反 対 」 の立 場 を 示 した 学 生 も、[ 子 ども は 常 に 自 分 の気 持 ち を 優先 さ せ る ため 、 周 囲 のこ と を 考 えず に 行 動 する 場 面 が 見ら れ た]、[劇 を し て いて 素 直 な 返事 が 返 っ てき た ] と いっ た 具 体 的な 場 面 を それ ぞ れ 記 載し た 。 こ こか ら 、 小 児看 護 学 概 論の 授 業 で 学生 に 理 解 して も ら い たい 「 子 ど もは 小 さ な 大人 で は な い」 と い う 概念 が 、 小 児看 護 学 実 習の 体 験 を 振り 返 る 上 でも 役 に 立 つこ と が 示 唆さ れ た 。
3 )学 生 の 子 ども 理 解
今 回の 調 査 を 通し て 、3学 年 と も 総じ て 絵 本 に 肯定 的 な イ メー ジ を 持 って い た こ とが 明 ら かに な っ た( 表 4)。こ こか ら は 、小児 看 護 学 概論 で 教 員 が絵 本 の 読 み聞 か せ を 行う こ と は 、学 生 が 絵 本に 対 し て 肯定 的 な イ メー ジ を 卒 業ま で 持 ち 続け る こ と に影 響 す る 可能 性 が 考 えら れ た 。 また 、 授 業 のキ ー ワ ー ドで あ る 「 子ど も は 小 さな 大 人 で はな い 」 こ とに 、 学 生 が賛 成 ま た は反 対 す る 理由 を 分 析 する こ と で 、学 生 が 進 級と と も に 、自 身 の 積 みあ げ た 知 識や 経 験 を 活用 し て 、 この キ ー ワ ード を 再 考 して い る こ とが 推 測 さ れた ( 図 2)。
「子 ど も と 大人 で 物 語 のと ら え 方 に違 い が あ るか 」 と い う問 い に 、 ほぼ 全 員 が 「あ る 」 と 回答 し て い た( 表 5)こと か ら 、今回 用 い た 絵本『 お お きな 木 』は、「 子 ども と 大 人 の物 語 のと ら え 方 の違 い 」 を 学生 が 理 解 する 上 で 役 立つ ツ ー ル であ る こ と があ ら た め て確 認 さ れ た 。そし て 、3年生 は「 絵 本 の読 み 聞 か せ 」が 卒業 後 も 役 に立 つ と 考 えて い た 。こ れ ら 2 つ の結 果 か ら 、今 回 の よ うな 「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」 は 、 小 児看 護 学 概 論の 課 題 と され て い る 、小 児 の 特 徴的 な 成 長 ・発 達 に 学 生が 目 を 向 ける た め の アプ ロ ー チ (黒 坂
(1993)) の 1つ と して 有 用で あ る と 考え ら れ た 。
小児 看 護 学 実習 に お け る学 生 の 子 ども に 対 す るイ メ ー ジ の変 化 を 縦 断的 に 調 査 した 報 告 で は、「 保育 園 実 習 前、 後 、病 棟 実 習 前後 と も に イメ ー ジ に 差が み ら れ た項 目 は、『 か わ い い』『 正 直』『敏 感 』な ど の他 に 、『 気 分 が 変わ り やす い 』『 年 齢 に よっ て 全く 違 う』『 遊 び が 大 好き 』 な ど であ り 、 学 生が 子 ど も と接 す る こ とに よ り 、 より 具 体 的 にイ メ ー ジ しや す く な るも の と 思 われ る 」 と 、学 生 の 子 ども の イ メ ージ が 実 習 の前 後 で 変 化す る こ と が示 さ れ て いる ( 内 田 ら(1993))。 ま た 、看 護 学 生 の子 ど もに 対 す る イメ ー ジ の 変化 を 小 児 看護 学 講 義前 と 保 育 所実 習 後 、病 棟 実 習 後に 縦 断 的 に 調査 し た 報 告で は 、「 小 児看 護 学 講 義前 に 比 べ 、保 育 所 実 習後 は 否 定 的表 現 が 少 なく な り 、 子ど も 個 人 がも っ て い る個 性 や 成 長・ 発 達 を 示す イ メ ー ジを 持 っ た こと は 保 育 所実 習 に よ り子 ど も は 日々 成 長 し てい く 過 程 を知 り 、 内 田ら の 因 子 分析 の 結 果 と同 じ よ う に肯 定 的 表 現が 多 く な った 」こと が 指摘 さ れ て いる( 上 山 (1999))。 これ ら の 先 行研 究 は 、 いず れ も 小 児看 護 学 実 習を 経 て 、 学生 の 子 ど もイ メ ー ジ が具 体 的 か つ肯 定 的 に 変化 す る こ とを 明 ら か にし た 点 で 、小 児 看 護 教育 領 域 で 重要 な 意 義 を持 つ も の であ る 。本 研究 で も 、3年 生 は、[ 友達 と ケ ン カを し て も 次の 日 に は 仲良 し に な って い た]、[ 実 習 の中 で もい ろ い ろ な発 見 を し たり 、体験 を し て 成長 す る姿 が み ら れた ]、
[ 本を 見 て 楽 しそ う に し てい る 姿 は 知ら な い こ とへ の ま っ すぐ な 素 直 な思 い を 感 じた ] な ど、実 習 中 の具 体 的 な 場 面を 回 想 し なが ら 、「 子 ども は 小 さ な大 人 で は ない 」こ とを よ り 具 体 的に イ メ ー ジし て い た 。
また 、小 児看 護 学 講 義 での 学 生 の 子ど も に 対 する イ メ ー ジに つ い て、「 講義 前 は 興 味的 表 現 が多 い が 、 実習 が 進 む につ れ て 活 動的 表 現 、 子ど も を 取 り巻 く 環 境 など 多 岐 に 渡っ て 表 現 して い る 。 つま り 学 生 の子 ど も イ メー ジ は 、 実習 を 通 し て広 が っ て いく 」 こ と が指 摘 さ れ てい る ( 上 山(1999))。 本 研 究で も 、3年 生 だ けが 【 子 ど もへ の 敬 意 】を 重 要 視 して い た こと ( 表 6) は 、 学 生 の中 で の 子 ども イ メ ー ジの 広 が り を示 す も の であ り 、 こ の上 山 に よ る指 摘 に 合 致す る 結 果 と言 え た 。
前出 の 内 田 と上 山 の 研 究は 、「 子 ど も のイ メ ー ジ」と い う大 き な 枠 組 みを 学 生 に 問う も の で あっ た 。その 一 方 で 本 研究 は 、「 子 ど もは 小 さ な大 人 で は ない 」と い うキ ー ワ ー ドを 学 生 に 投げ か け て その 反 応 を 分析 し た 点 で、 こ れ ら の研 究 と 一 線を 画 す も ので あ る 。 本研 究 の よ うに 、 同 じ スタ イ ル の 授業 を 受 け た学 生 を 対 象と し た 学 年横 断 的 研 究は 、 学 生 の進 級 に
伴 う「 子 ど も 理解 」 の 広 がり を 追 求 する 点 で 有 用な 方 法 と 考え ら れ た 。
新生 児 ・ 乳 児モ デ ル を 使用 し た 小 児看 護 学 演 習の 授 業 に 関す る 学 生 の感 想 の 質 的分 析 を 行 った 報 告 で は、「対 象 理 解の 導 入 と して 、小 児 看護 演 習 に モデ ル を 使 用す る こ と は、子 ど も の早 期 イ メ ージ 化 を は かる 学 習 目 的と し て 有 効な 教 授 手 段で あ る 」 と結 論 付 け られ て い る (糠 塚 ら (2004))。 本 研究 で の 教 員に よ る 「 絵本 の 読 み 聞か せ 」 は 、演 習 と し て行 っ た も ので は な い が、「 子ど も と大 人 の 物 語の と ら え 方の 違 い 」 を学 生 が 知 り、「 目の 前 に い な い 子ど も を イ メー ジ 化 で きる 」 と い う点 で 、 糠 塚ら の 言 う 「モ デ ル 教 材」 と な っ てい た と 言 える 。
4)「 絵 本の 読 み 聞 かせ 」 を小 児 看 護 学概 論 で 行 う意 義
図 1に 示 し た通 り 、 小 児看 護 学 概 論は 小 児 看 護学 の 中 で 最初 に 学 ぶ 科目 で あ る 。そ の 学 習 目標 に は 各 期に お け る 小児 の 成 長 発達 に つ い ての 理 解 が 含ま れ て い る。 今 回 の 調査 を 通 し て、こ の 時期 に 、「 教 員 によ る 絵 本 の読 み 聞 か せ」を す る こと は 、そ の後 の 小 児 看護 学 方 法 論で の 学 習 や小 児 看 護 学実 習 に つ なが る 、 子 ども 理 解 の 大切 な 基 盤 を学 生 が 作 るた め の サ ポー ト に な りう る と 考 えら れ た 。
保育 学 生 の 絵本 の 読 み 聞か せ 体 験 に関 す る 実 態調 査 の 報 告で は 、 実 習前 に 学 生 が絵 本 と 出 会う こ と に つい て 、「 絵 本に は 、深い 意 味 や 味 わい が あ る もの が 多 く ある 」、「 それ は 知 識 と して の 理 解 では な く 、 絵本 を 通 じ た心 を 揺 さ ぶら れ る 体 験を 通 し て 感じ て も ら いた い 。 そ のよ う な 体 験が 出 来 る よう 、 養 成 校の 教 員 は 学内 実 習 の 中で 指 導 法 を工 夫 す る こと が 重 要 であ る 」 と 指摘 さ れ て いる ( 山 田 (2017))。 実際 に 、 第 一著 者 に よ る読 み 聞 か せの 後 に は 、学 生 か ら 「絵 本 が こ んな に 奥 深 いモ ノ だ と は思 わ な か った 」、「 大 人に な っ て から 読 み 聞 かせ を し て もら う こ と で子 ど も の 頃と は 違 っ た面 白 さ が あっ た 」等 の 感想 が 寄 せ られ た 。
「 子ど も 理 解 」に 重 き を 置く 小 児 看 護学 概 論 に おい て 、 担 当教 員 が 絵 本の 読 み 聞 かせ を 行 う 大き な 意 義 は、 絵 本 を 通じ て 心 が 揺さ ぶ ら れ る体 験 を 学 生に 与 え る こと で あ り 、実 習 に 向 けた 練 習 と して 演 習 の 科目 で 「 絵 本の 読 み 聞 かせ 」 を 学 生に 行 っ て もら う こ と とは 大 き く 異な る と 言 える 。
5 )学 生 ア ン ケー ト に よ る授 業 評 価 の意 義 と 今 後の 展 望
今 回の 結 果 か ら、「教 員 に よる 絵 本 の 読み 聞 か せ」が 小 児 看護 学 を 学 ぶ 学生 に 有 用 であ る こ とが 示 さ れ たが 、 今 後 もこ の 読 み 聞か せ を 取 り入 れ た 授 業実 践 を 継 続し て い く 上で 、 本 研 究の 限 界 も 考え て お く 必要 が あ る 。
ま ずは 調 査 時 期で あ る 。 特 に 3年 生 の参 加 が 少 なか っ た が 、国 家 試 験 を終 え た 3年生 に 自 宅学 習 日 が 多か っ た こ とが 影 響 し たと 考 え ら れた 。3年生 は 実 習 終 了直 後 に 調 査す る な ど の工 夫 も 必 要で あ る と 考え ら れ た。そ し て、各 学年 の 調 査 が 1回 に と どま っ た 点 であ る 。