九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
末梢味覚器における味情報の伝達メカニズムについ ての研究
安尾, 敏明
Faculty of Dental Science, Kyushu University
https://doi.org/10.15017/19945
出版情報:Kyushu University, 2010, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
末梢味覚器における
味情報の伝達メカニズムについての研究
安尾 敏明
九州大学大学院歯学府歯学専攻 口腔常態制御学講座口腔機能解析学分野
指導:二ノ宮 裕三 教授 九州大学大学院歯学研究院
口腔常態制御学講座口腔機能解析学分野
目次
発表論文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第1章
味細胞におけるATPの放出
緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
第2章
味細胞におけるGABAの役割
緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 材料と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・66 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
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発表論文
対象論文
Action potential-enhanced ATP release from taste cells through hemichannels
Yoshihiro Murata, Toshiaki Yasuo, Ryusuke Yoshida, Kunihiko Obata, Yuchio Yanagawa, Robert F. Margolskee and Yuzo Ninomiya
J Neurophysiol Aug; 104(2): 896-901. (2010)
本研究の一部は下記の論文に報告した。
村田 芳博、安尾 敏明、吉田 竜介、二ノ宮 裕三 マウス茸状乳頭味細胞のATP放出
日本味と匂学会誌,14(3): 391-394. (2007)
村田 芳博、吉田 竜介、安尾 敏明、柳川 右千夫、小幡 邦彦、植野 洋司、
Robert F. Margolskee、二ノ宮 裕三
マウスⅡ型味細胞の発火頻度依存性ATP放出 日本味と匂学会誌,15(3): 381-384. (2008)
安尾 敏明、吉田 竜介、堀尾 奈央、重村 憲徳、二ノ宮 裕三 マウス味細胞におけるGABAの機能解析
日本味と匂学会誌 16(3): 323-326. (2009)
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安尾 敏明、吉田 竜介、柳川 右千夫、Robert F. Margolskee、二ノ宮 裕三 マウス味細胞の味応答時におけるGABAの作用
日本味と匂学会誌 17(3): 227-230. (2010)
また、本文の内容の一部は下記の学会において発表した。
日本味と匂学会第41回大会、東京、2007年7月 第49回歯科基礎医学会、北海道、2007年8月 第58回西日本生理学会、福岡、2007年10月
The 5th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception (YR Umami Forum 2007), Fukuoka, November, 2007.
第45回日本生物物理学会年会、横浜、2007年12月
The 85th Annual Meeting of the Physiological Society of Japan, Tokyo, March, 2008.
The 7th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception (YR Umami Forum 2009), Fukuoka, December, 2009.
日本味と匂学会第43回大会、北海道、2009年9月 第60回西日本生理学会、福岡、2009年11月
第1回味覚健康科学シンポジウム遺伝子から行動まで、大分、2010年3月 Association for Chemoreception Sciences 32st Annual Meeting, St.pete Florida, April, 2010
第87回日本生理学会大会、岩手、2010年5月 第33回日本神経科学大会、兵庫、2010年9月 日本味と匂学会第44回大会、福岡、2010年9月 第52回歯科基礎医学会学術大会、東京、2010年9月
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The 8th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception (YR Umami Forum 2010), Fukuoka, November 2010.
その他の発表論文
Toshiaki Yasuo, Yoko Kusuhara, Keiko Yasumatsu, and Yuzo Ninomiya Multiple receptor systems for glutamate in the taste organ
BIOLOGICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN Oct; 31(10): 1833-1837. (2008)
Ryusuke Yoshida, Tadahiro Ohkuri, Masafumi Jyotaki, Toshiaki Yasuo, Nao Horio, Keiko Yasumatsu, Keisuke Sanematsu, Noriatsu Shigemura, Takashi Yamamoto, Robert F. Margolskee, Yuzo Ninomiya
Endocannabinoids selectively enhance sweet taste
Proc Natl Acad Sci USA Jan 12; 107(2): 935-939. (2009)
Ryusuke Yoshida, Aya Miyauchi, Toshiaki Yasuo, Masafumi Jyotaki, Yoshihiro Murata, KeikoYasumatsu, Noriatsu Shigemura, Yuchio Yanagawa, Kunihiko Obata, Hiroshi Ueno, Robert F. Margolskee, Yuzo Ninomiya
Discrimination of taste qualities among mouse fungiform taste bud cells.
J Physiol Sep 15; 587(18): 4425-4439. (2009)
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Noriatsu Shigemura, Kazuko Nakao, Toshiaki Yasuo, Yoshihiro Murata, Keiko Yasumatsu, Akihiko Nakashima, Hideo Katsukawa, Noritaka Sako, Yuzo Ninomiya
Gurmarin sensitivity of sweet taste responses is associated with co-expression patterns of T1r2, T1r3, and gustducin
Biochemical and Biophysical Research Communications Mar 7; 367(2): 356-363. (2008)
吉田 竜介、安尾 敏明、村田 芳博、上瀧 将史、二ノ宮 裕三 単一細胞応答の観点からみたマウス茸状乳頭味蕾の応答性 日本味と匂学会誌, 14(3): 395-398. (2007)
吉田 竜介、村田 芳博、安尾 敏明、上瀧 将史、柳川 右千夫、小幡 邦彦、
植野 洋司、Robert F. Margolskee、二ノ宮 裕三 味細胞の細胞型と応答特性
日本味と匂学会誌, 15(3): 285-288. (2008)
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要旨
食物の味の情報は味細胞で受容され、味神経を経て、脳へと伝えられる。しか し、その味情報が味細胞から味神経へどのようなメカニズムで伝達されているの かについては、まだ多くが不明である。味細胞は形態学的にⅠ、Ⅱ、Ⅲ型および 基底細胞(Ⅳ型)に分類される。これらのうち、Ⅱ型細胞は甘味、うま味、苦味 の受容体およびその下流の情報伝達に関与する分子群を発現し、Ⅲ型細胞は酸味 受容体候補遺伝子を発現することから、これらの細胞が甘味、うま味、苦味、酸 味の受容に関与すると考えられる。しかし、味細胞から味神経線維へ情報を伝え るため必要であると考えられるシナプス構造はⅢ型細胞には見られるが、Ⅱ型細 胞には見られない。よって、甘味、うま味、苦味の受容細胞と考えられるⅡ型細 胞がどのように味神経へ情報を伝えているのかは大きな謎であった。近年、アデ ノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)が味細胞-味神経間の主要な神経伝 達物質として注目され、ATP はⅡ型細胞からヘミチャネル(connexin43 および pannexin1)を介して放出される可能性が示唆されている。そこで本研究では、味 応答により生じる味細胞からのATP放出のメカニズムについて解析した。その結 果、Ⅱ型細胞では甘味、苦味、うま味刺激に対する応答とそれに伴う ATP放出が 検出されたが、Ⅲ型細胞では酸味、塩味刺激に対する応答が見られたにもかかわ らず、ATPは検出されなかった。Ⅱ型細胞からのATP放出は発火頻度に依存して 増大し、pannexin1の阻害剤カルベノキソロン(carbenoxolone:CBX)で抑制され たが、connexin43阻害剤 GAP26 とGAP27 を投与しても変化は見られなかった。
また、テトロドトキシン(tetrodotoxin:TTX)投与により活動電位を抑制すると
Ⅱ型細胞からのATP放出量が約3分の1に減尐した。これらの結果から、味刺激 により生じた活動電位によりⅡ型細胞からの ATP 放出は増強され、放出された ATP はⅡ型細胞から味神経線維への情報伝達物質として機能する可能性が考えら
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れる。
一方、Ⅲ型細胞はγ-アミノ酪酸(Gamma-aminobutyric acid:GABA)の合成酵素 であるグルタミン酸脱炭酸酵素67(glutamate decarboxylase:GAD67またはGAD1)
を持ち、味蕾内にはGABAやそのトランスポーターや受容体の発現が見られるが、
その生理機能は明らかとなっていない。本研究では、GABA の味蕾内での作用メ カニズムの解明を試みた。その結果、有郭乳頭及び茸状乳頭味細胞においての発 現が検出された。また、基底外側膜側へのGABAの投与により、自発発火頻度が 増加する細胞や減尐する細胞、甘味応答が増加する細胞や、苦味応答が減尐する 細胞が存在することを発見した。さらに、GABAA、GABAB受容体サブユニット、
および GABA応答を制御する 2種類のCl-トランスポーターの K+-Cl-cotransporter
(KCC2)、Na+-K+-2Cl-cotransporter(NKCC1)の発現が認められた。これらの結果 から、GABAが味細胞の興奮性に影響を与え、味蕾内での味覚情報の修飾に関与 する可能性が示唆された。
以上の結果から、ATP はⅡ型細胞から放出され、味神経への情報伝達に関与す る可能性が、また、GABAはⅡ型及びⅢ型細胞において味覚修飾に関与する可能 性が示唆された。
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序論
味覚の受容・情報伝達機構を明らかにするには、味物質を認識する受容体の機 能と構造、その下流で細胞を興奮に導く細胞内情報伝達機構とそれに関与する分 子の同定、さらには味細胞から味神経への情報伝達メカニズムの解明が必要であ る。近年、分子遺伝学的手法の導入により、味覚受容に特異的な受容体[甘味:
T1R2/T1R3へテロ2量体(Nelson et al., 2001)、うま味:metabotropic glutamate GPCR
(mGluRs)(Chaudhari et al., 1996, 2000; Damak et al., 2003; San Gabriel et al., 2007;
Toyono et al., 2002, 2003)、T1R1/T1R3ヘテロ2量体(Nelson et al., 2002; Li et al., 2002)、苦味:T2Rs(Matsunami et al., 2000; Chandrashekar et al., 2000)]やイオンチ ャネル[塩味:epithelial sodium channel(ENaC)(Kretz et al., 1999; Lin et al., 1999)、 酸味:polycystic kidney disease 1L3 and 2L1(PKD1L/2L1)(Huang et al., 2006; Ishimaru et al., 2006)、hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated potassium channel
(HCNs)(Stevens et al., 2001)、acid-sensitive ion channel(ASICs)(Ugawa et al., 1998, 2003)、NPPB-sensitive Cl- channels(Miyamoto et al., 1998)、two-pore domain K+channels(K2Ps)(Lin et al., 2004; Richter et al., 2004)]、細胞内情報伝達に関与す るG-蛋白質[GαiクラスのGαi2やGαi3(Kusakabe et al., 2000; McLaughlin et al., 1992, 1994)、甘味、苦味、うま味に関与するGgustducin(Ggust)(McLaughlin et al., 1992;
Wong et al., 1996; He et al., 2004)、GαqクラスのGα15や甘味やうま味に関与する Gα14(Kusakabe et al., 1998; Shindo et al., 2008)、Gβ3(Rossler et al., 2000)、Gγ13
(Huang et al., 1999)]、ホスホリパーゼCβ2(phospholipase Cβ2:PLCβ2)(Rossler et al., 1998)、イノシトール三リン酸受容体チャネル(inositol-1,4,5-triophosphate receptor type 3:IP3R3)(Hisatsune et al., 2007; Clapp et al., 2001; Miyoshi et al., 2001)、 容量依存性カチオンチャネル(transient receptor potential channel M5:TRPM5)
(Zhang et al., 2003, 2007; Perez et al., 2002)などが次々と明らかとなり、急速な進
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展を見ている。しかし、味細胞から味神経への情報伝達機構に関しては、まだ謎 が多い。味細胞は上皮細胞由来で約10日の寿命でターンオーバーすることが知ら れている(Beidler and Smallman, 1965)。したがって、味神経は新生してくる味細 胞と絶えず新たなシナプスをつくりながら情報伝達を行っている。このような動 的変化の中で一定の味覚情報を中枢に伝えるための味細胞の受容体及びその関連 分子の発現や、その味細胞-味神経間のシナプス形成が、どのようなメカニズムで 制御されているかはまだ明らかとなっていない。マウスの味神経線維では様々な 基本味刺激に対し特異的に応答するタイプ(specialist)と広範な刺激種に応答す るタイプ(generalist)の両方が存在する。マウスの味細胞も同様で、両タイプが 存在し、味細胞と味神経線維の全体的な応答パターンを比較すると両者は非常に 近似することから、味細胞と味神経線維との間で特異性が維持されている可能性 が推察できる。マウスNaCl応答にはアミロライド感受性と非感受性のものが存在 する(Ninomiya, 1996; Yoshida et al., 2009)。舌前方を支配する鼓索神経にはアミロ ライド感受性、非感受性神経線維がおよそ1:1の割合で存在し、舌後方を支配す る舌咽神経にはアミロライド感受性神経線維がほとんど存在しない。鼓索・舌咽 神経を繋ぎ換えた場合でも、舌後方に繋ぎ換えられた鼓索神経にはアミロライド 感受性、非感受性線維が1:1の割合で存在し、舌前方に繋ぎ換えられた舌咽神経 にはアミロライド感受性線維が存在しなかった(Ninomiya, 1998)。これは、各神 経線維が特異的にアミロライド感受性または非感受性味細胞と結合することを示 唆する。また、鼓索神経挫滅後の再生過程を追う実験では、アミロライド非感受 性線維は神経挫滅後 3 週から回復し、アミロライド感受性線維は4週から回復す る。その回復過程で両者の中間的な性質を持つ線維は現れず、これらはアミロラ イド感受性、非感受性線維が独立して再形成されることを示す(Yasumatsu et al.,
2003)。同様の実験は甘味感受性線維を用いても行われ、マウスの甘味を抑制する
タンパク質であるグルマリンに感受性のある甘味応答線維と非感受性の線維とは
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独立して再形成されることが示されている(Yasumatsu et al., 2007)。このように、
味細胞と味神経線維との結合は同様の応答特性を持つものの間で特異的に形成さ れると考えられるが、この特異的結合を保証する分子機構については未だ不明で ある。
味細胞は形態学的にⅠ~Ⅲ型及び基底細胞に分類される(Delay et al., 1986;
Farbman, 1965;Murray, 1971, 1973)。これらのうち、Ⅱ型細胞は甘味、うま味、苦 味の受容体およびその下流の情報伝達に関与する分子群を発現し、Ⅲ型細胞は酸 味受容体候補遺伝子を発現することから、これらの細胞が味覚を受容し、味神経 線維へ情報を伝達していると考えられる。しかし、味細胞と味神経との間のシナ プスはⅢ型細胞には見られる(Murray et al., 1986)が、Ⅱ型細胞には見られない
(Royer et al., 1988)。すなわち、Ⅱ型細胞は典型的なシナプスを介さずに情報を 伝達している可能性が考えられる。Fingerら(Finger et al., 2005)によって、末梢 での味覚の情報伝達においてアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)
が重要な役割を果たしている可能性が示され、Ⅱ型細胞が味応答し、脱分極ある いは細胞 内 Ca2+濃 度が上昇 した後 に ATP が放出さ れるこ とが報 告された
(Romanov et al., 2007; Huang et al., 2007)。
一方、Ⅲ型細胞は古典的シナプスを介して味神経線維に情報を伝達すると考え られる。Ⅲ型細胞にシナプス小胞が存在し(Takeda, 1976)、開口分泌が行われて いること(Vandenbeuch et al., 2010)、セロトニンやノルアドレナリンが放出される ことが示されている(Huang et al., 2005, 2008a)。また、Ⅲ型細胞においてGAD67 が発現(DeFazio et al., 2006)し、GABAA受容体、GABAB受容体やトランスポー ターである細胞膜GABAトランスポーター(GATs)が発現すること(中村ら 2008;
Starostik et al., 2010)が報告され、GABAもまた情報伝達物質の候補として挙げら
れている。しかしながら、その生理機能については未だ明らかとなっていない。
そこで本研究は、味細胞からのATP放出機序(第1章)と味蕾におけるGABA
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の生理学的な機能(第 2 章)の解明を目的として、主に、電気生理学的手法を用 いて検討した。
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第1 章
味細胞における ATP の放出
1.緒言
味蕾に存在する味細胞は口腔内の化学物質を感知し、その情報を味覚求心性神 経へと伝達する。味蕾細胞はその形態学的特徴からⅠ~Ⅲ型及び基底細胞の4つ のカテゴリーに分類される。これらのうち、各種味覚受容体を発現するⅡ型細胞 及びⅢ型細胞が実際の味受容細胞であると考えられる。Ⅲ型細胞は味覚神経とシ ナプスを形成し(Murray, 1971; Murray et al., 1986; Royer and Kinnamon, 1991; Seta and Toyoshima, 1995; Takeda and Hoshino, 1975)、加えて、neural cell adhesion molecule(NCAM)(Nelson and Finger, 1993)や synaptosomal-associated protein (SNAP25)(Yang et al., 2000)、セロトニン(Kim and Roper, 1995; Yee et al., 2001)、 aromatic L-amino acid decarboxylase (AADC)、DOPA decarboxylase(Seta et al., 2007)、 GAD67(DeFazio et al., 2006; 中村ら 2006)やsynapsinⅡ(Defazio et al., 2006)な どのシナプス関連蛋白質、電位依存性Ca2+チャネル(Defazio et al., 2006)を発現 している。一方、Ⅱ型細胞は甘味、苦味、うま味の受容体、およびその下流で機 能する分子群を発現するが(Yoshida and Ninomiya., 2010)、明確なシナプス構造を 持たず、神経線維との近接部位にsubsurface cisternaeと呼ばれる構造が存在してい る(Royer et al., 1988)。Ⅲ型細胞はシナプスを介し味神経へ情報を伝達すると考 えられるが、Ⅱ型細胞は神経へどのようにして情報を伝達するのかは不明である。
これまでの報告で、グルタミン酸、セロトニン、アセチルコリン、ニューロペ プチドYやATPが味細胞から味神経線維へ情報を伝達するトランスミッターの候 補として挙げられている(Roper et al., 2006)。Fingerら(Finger et al., 2005)はATP 受容体である P2X2/X3のダブルノックアウトマウスにおいて味刺激による神経応
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答が大幅に消失し、野生型マウスの味蕾から味刺激により ATPが放出されること を発見した。また、近年、ATP バイオセンサーを用い、Ⅱ型細胞から味刺激また は脱分極刺激により ATP が放出されること、およびヘミチャネル阻害剤により ATP放出が阻害されることが示された(Romanov et al., 2007; Huang et al., 2007)。 これらのことから、Ⅱ型細胞からはヘミチャネルを介して ATPが放出され、近傍 に存在する味神経の P2X2/X3を活性化することで情報が伝達される可能性が示唆 される。
味 細 胞 に お い て 、 活 動 電 位 が 発 生 す る こ と が 最 初 に 両 生 類 で 示 さ れ
(Kashiwayanagi et al., 1983; Roper, 1983)、後に哺乳類においても味刺激によって 活動電位を発生させる細胞が存在することが示された[Avenet and Lindemann, 1991
(塩味);Béhé et al., 1990; Cummings et al., 1993(甘味); Furue and Yoshii, 1997(苦 味); Gilbertson et al., 1992(酸味)]。味細胞の活動電位はテトロドトキシン(TTX) によって阻害され(Kashiwayanagi et al., 1983; Roper, 1983; Avenet and Lindemann, 1987; Béhé et al., 1990; Yoshida et al., 2005)、Ⅱ型及びⅢ型細胞に発生する活動電位 は電位依存性ナトリウムチャネル(SCN2A、SCN3A、SCN9A)を発現する(Gao et al., 2009)ことから、これらのチャネルを介し味細胞は活動電位を発生することが 示唆されている。Yoshidaら(Yoshida et al., 2006a, b)は活動電位を発生する味細 胞とそれらを支配する味神経線維の応答特性が近似することを示し、活動電位を 発生する味細胞が味覚情報の起始点となる可能性を示唆した。よって、味細胞か らは活動電位に依存し神経伝達物質が放出される可能性が考えられた。
本研究では味細胞からのATP放出の機構を明らかとするため、味細胞の細胞型 を同定できる遺伝子改変マウスを用い、同定細胞における味刺激に対する応答と それにより放出されるATPを測定する新たな手法を開発した。その結果、味刺激 に応じⅡ型細胞からヘミチャネルを通じATPが放出され、その放出は活動電位に より増強されることを発見した。
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2.材料と方法
・実験動物
実験には、Gutducin(Gust)プロモーター領域制御下に緑色蛍光蛋白質(green fluorescent protein:GFP)を発現するGust-GFPマウス (Huang et al., 1999)、GAD67
(GAD1)のプロモーター領域制御下に GFP を発現する GAD67-GFP マウス (Tamamaki et al., 2003)を用いた(8-16週齢、体重20-32g)。マウスの取り扱いや実 験は、九州大学歯学部動物実験委員会の承認を得て、日本動物保護協会のガイド ラインに従って行った。
・舌上皮の摘出
動物をジエチルエーテル麻酔後、頚椎脱臼により絶命させ舌を摘出した。舌上 皮下に0.2-1 mgエラスターゼ/ml Tyrode(140mM NaCl、5mM KCl、1mM CaCl2、 1mM MgCl2、10mM glucose、10mM HEPES、10mM sodium pyruvate、PH=7.4)を 注入し、室温で 10-15 分間インキュベートした。その後ピンセットを用いて素早 く舌上皮を剥ぎ取り、シリコンコートした培養皿にピン止めし、Tyrode 溶液で数 回洗浄後、冷蔵庫(4℃)にて保存した。
・ルーズパッチ記録法
剥離した舌上皮より味蕾を含む個々の茸状乳頭を摘出し、味孔周辺を味刺激用 ピペットにて吸引保持した。味刺激用ピペット内は常にTyrode溶液で灌流し、刺 激側のみ味刺激前後30~60秒は蒸留水を与えた。基底外側膜側もTyrode溶液で灌 流し、記録開始直前に灌流を停止した。記録電極にはTyrode溶液を10μl充填した。
味刺激時間は 30 秒とした。Ⅱ型、Ⅲ型細胞を同定するために、Gust-GFP マウス
またはGAD67-GFPマウスをそれぞれ用いた。共焦点レーザー顕微鏡にてGFPの
蛍光を確認し、蛍光を有する味細胞に基底外側膜側より記録電極を当て、味細胞 が発生する活動電位を記録した。この実験はすべて室温(23~26℃)で行った。
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・ATPの定量化
味細胞から放出されたATP量を測定するため、ATPルシフェラーゼアッセイを 用いた。30 秒の味刺激の後、1 分以内に速やかに電極内液を全量回収し、氷上に 置いた 96連結プレートに回収し、Tropix TR717TMマイクロプレートルミノメー ター(Applied Biosystems)に設置した。室温で自動的にそれぞれのウェルに25μl のルシフェラーゼ・ルシフェリン混合溶液(ATP 生物発光活性測定キット HSⅡ
(Roche)が注入され、発光強度が測定される。それぞれのウェルは 1 秒間に 10 回ずつ10秒間測定し、WinGlow(Applied Biosystems)とMicrosoft Excel 2007を 用いて相対的に発光強度(relative light units:RLUs)の平均値を計算する。予備実 験として電極内液と同量の10μlのATP標準液のRLUを計測し、検出されたATP 濃度が40pM以上の場合そのATP濃度を対数スケールにて2次元プロットした。
また、10μlの ATP標準溶液の平均 RLU から得たカーブを基準とした。データは Microsoft Excel2007を用いて、t-検定またはANOVAにて分析した。
・データ解析
味細胞応答の解析は以前の報告(Yoshida et al., 2006a, 2009)に従って行った。
活動電位の波形解析は正頂から負頂までの時間幅、正頂と負頂の大きさおよびそ れらの比を考慮し、シングルユニットとして分離した。ユニットの自発放電のイ ンパルス平均は各味刺激前の蒸留水を味孔側に流している時の 10 秒間のスパイ ク数の平均から計算した。応答発生の最終的な基準は以下の通りである。
1)2回の試行にて味刺激時のスパイク数が自発放電スパイク数の平均+2SDより 大きいこと
2)味刺激により3スパイク以上発生すること。
味刺激の大きさは刺激開始から30秒間のインパルス数の合計を数え、そこから自 発放電を減ずることで得た。
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3. 結果
・ATPの定量
① 味細胞からのATP放出の測定
味孔側からの味刺激により味細胞の基底外側膜からATPが放出され、電極内液 に拡散すると考えられる。そのため、電極内液のATP量を測定することで、味細 胞からのATP放出を定量化できると考えた。甘味、苦味、うま味のトランスダク ションに関与するG蛋白質GustはⅡ型細胞で発現するが、他の細胞型を示す味細 胞には見られない(Boughter Jr et al., 1997; Yang et al., 2000)。本研究では、Gust発 現細胞(Ⅱ型細胞)を特定するため Gust プロモーター制御下に GFP を発現する
Gust-GFP遺伝子改変マウスを用い、共焦点レーザー顕微鏡観察によGFP発現細胞
を特定し(Fig.1 A)、味細胞応答を記録した(Yoshida et al., 2009)。応答記録後、
電極内液の ATP濃度をルシフェラーゼアッセイにて測定した。Fig.1 CはGFP発 現細胞とGFP非発現細胞からの応答記録例を示す。人工甘味料サッカリンの刺激 により GFP 発現細胞の発火頻度は増加し、153pM/10μlの ATP が検出された。一 方、GFP非発現細胞ではサッカリンの刺激による発火頻度の増加は見られず、ATP も検出閾値以下であった(n=9, Table.1)。
16 Fig.1
Gust–GFP発現細胞からのATP放出量測定例
A:茸状乳頭味蕾のGFP発現細胞の応答時の様子。緑の細胞はGFPを発現する味細胞で
ある。
B:GFP発現細胞からの応答記録例。上から300mM NaCl、20mM サッカリン(Sac)、10mM HCl、500μM シクロヘキサマイド(Chx)、300mM グルタミン酸ナトリウム(MSG)刺 激時の記録を示す。矢頭は味刺激開始を示す。
この味細胞はサッカリン刺激により発火頻度の増大が生じた。
C:20mM Sac 刺激時のGFP 発現細胞(a)及び GFP非発現細胞(b)からの応答記録と ATP 測定例。左:味細胞の活動電位の記録。矢頭はバス溶液の停止及び味刺激開始を示 す。
右:ルシフェラーゼアッセイによる記録電極内液のATP濃度測定(N.D.,検出不可;検出 閾値、40pM)
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Table.1 茸状乳頭味細胞における味質応答性
GFP
要因 発現細胞(n=33) 非発現細胞(n=9) 味応答性 甘味 苦味 うま味 応答なし
細胞数 13 16 4 9
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発火頻度とATP放出の関係
次に甘味物質であるサッカリンで刺激したときのⅡ型細胞からのATP放出と発火 頻度の関係について調べた。回帰分析により記録電極内の ATP濃度と味細胞の発 火頻度との間に有意な正の相関がみられた(r=0.67, Fig.2 A)。また、苦味物質の キニーネやシクロヘキサマイドに応答するⅡ型細胞でも同様に正の相関がみられ た(r=0.76, Fig.2 B)。
19 Fig.2
Ⅱ型細胞における味刺激による発火頻度の増加とATP放出量との関係
甘味物質であるサッカリン(A)または苦味物質であるキニーネやシクロヘキシミド(B)
に応答したⅡ型細胞の発火頻度に対する電極内液の ATP 濃度をプロットした。回帰直線 はATPが検出されたサンプルから得た。
20
さらに、一部のⅡ型細胞はグルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate:MSG)
に応答し、検出閾値以上の ATP放出が観察された(Fig.3 A)。甘味、苦味及びう ま味感受性のⅡ型細胞の間で1スパイクあたりのATP放出量に有意な差はなかっ た[one-way ANOVA, F(2,30)=0.98, P=0.39; Fig.3 B]。以上の結果から、甘味、苦味及 びうま味に応答するⅡ型細胞からATPは放出され、その放出量は発火頻度に依存 することが示唆された。
次にⅢ型細胞からも味刺激によりATPは放出されるかについて検討した。Ⅲ型 細胞の一部はGAD67を発現する(DeFazio et al., 2006; 中村ら 2006)。そこでⅢ型 細胞を識別するために GAD67プロモーター制御下に GFPを発現する遺伝子改変 マウスを利用した。以前の研究でGAD67発現細胞は酸味や複数の味質に応答する ことが報告されている(Tomchik et al., 2007; Yoshida et al., 2009)。これらと一致し て、多くのGAD67-GFP発現細胞(Ⅲ型細胞)でHClやNaCl刺激により発火頻度 の増加が見られたが、すべての細胞において ATPは検出閾値以下であった(n=6,
Fig.3 A)。これはⅢ型細胞からは味刺激により ATP放出が生じないか、放出量が
非常に尐ないことを示唆する。
さらにⅡ型細胞における活動電位とATP放出との関連を明らかにするため、自 発発火頻度とATP放出量との関係を調べた。その結果、30秒間で尐なくとも5ス パイク以上の自発発火頻度のⅡ型細胞において ATP放出が検出され(Fig.3 C)、 自発発火頻度とATP放出量との間には高い相関がみられた(r=0.71)。これらの結 果からⅡ型細胞の活動電位はATPの放出に重要な役割を果たすことが示唆された。
21 Fig.3
Ⅱ型細胞とⅢ型細胞を同定したATP放出量の測定
A:うま味物質(MSG、300mM)に応答したGust-GFP発現味細胞(Ⅱ型)及び酸味(HCl、
10mM)に応答したGAD67-GFP発現味細胞(Ⅲ型)の記録電極内液のATP濃度。“taste res”
の下の+、-は味物質への応答の有無を示す。N.D.は検出不可を示す(検出閾値、40pM)。
B:甘味、苦味、うま味に応答したⅡ型細胞から放出された1スパイクあたりのATP放出
量
C:Ⅱ型細胞における自発発火頻度とATP放出量との関係。○はATP検出、×は検出不可
を示す(検出閾値、40pM)。ATPが検出されなかった細胞数は括弧内に示す。回帰直線は ATPが検出されたサンプルから得た。
22
・ATP放出におけるヘミチャネルブロッカーの効果
以前の報告でⅡ型細胞はヘミチャネルを介してATPを放出することが示されて いる(Huang et al., 2007; Romanov et al., 2007, 2008)。そこで、Ⅱ型細胞からのATP 放出におけるヘミチャネル阻害剤の効果について調べた。pannexin1の阻害剤カル ベノキソロン(carbenoxolone:CBX)(e.g., Bruzzone et al., 2005)をバス溶液と記 録電極内液の両方に5μM以上の濃度で加えると、シクロヘキサマイドに応答した
Ⅱ型細胞で記録電極内液の ATP 濃度は検出閾値以下となった(Fig.4)。しかし、
connexin の擬態ペプチド阻害剤である GAP26 とGAP27 の同時投与はⅡ型細胞か
らのATP放出に影響を与えなかった(Fig.4 B)。これらの結果はpannexin1がⅡ型 細胞からのATP放出メカニズムに関与する可能性を強く示唆する。
23 Fig.4
Ⅱ型細胞からのATP放出に対するヘミチャネル阻害剤の効果
A:左図はシクロヘキサマイド(500μM Chx)に応答したⅡ型細胞からの記録例を示す。矢 頭はバス溶液還流停止と味刺激開始を示す。この記録では10μM CBXをバス溶液と記録 電極内液に投与した。右図は電極内液の ATP 放出濃度測定の結果を示す。10μMCBX に より電極内のATP濃度は検出閾値以下となった(N.D.;検出限界は40pM)。
B:苦味物質Chx(500μM)に応答したⅡ型細胞からのATP放出はバス溶液と電極内液へ
のCBX の投与によって阻害される。CBXの濃度が低いほど ATP放出への影響は尐ない
(0.01μM、P=0.41;0.1μM、P=0.33;1μM、P=0.087;vs.阻害剤無し、t検定)。GAP26+GAP27
(各々500μM)の混液をバス溶液と電極内液へ投与した場合では、ATP放出に影響を及ぼ さなかった(P=0.74;t検定)。
24
・ATP放出に対する活動電位の役割
ヘミチャネルを介してⅡ型細胞からATPが放出されるときの活動電位の役割を 明らかにするために、電位依存性ナトリウムチャネル阻害剤であるTTXを用い活 動電位の発生を阻害した。Fig5 Aは苦味物質シクロヘキサマイドに応答したⅡ型 細胞における2連の測定結果を示している。Gust-GFP発現細胞に記録用電極を当 てシクロヘキサマイドの応答を記録後、電極内液を回収し、ルシフェラーゼアッ セイにてその ATP 濃度を測定した。その後、さらに新たな記録電極を同一の
Gust-GFP発現細胞に当て、再び、シクロヘキサマイドに応答したときの電極内液
の ATP濃度を測定した。このように 2 連の実験においてGust-GFP 発現細胞から 検出された ATP放出量は1回目の測定と 2回目の測定で有意差は無かった(1回 目、259±44pM;2回目、230±40pM、平均 ± SE, n=4, P=0.39, paired t-検定、Fig.5 B)。
25 Fig.5
Ⅱ型細胞から味刺激により放出されるATP量の連続測定
A:Gust-GFP 発現細胞から苦味物質シクロヘキサマイド(Chx,1mM)により放出される
ATP 量を連続測定した典型例。上は1回目、下は2回目の活動電位記録とATP測定結果 を示す。この Gust-GFP 発現細胞は事前に他の基本味であるサッカリン(20mM)、NaCl
(300mM)、MSG(300mM)、HCl(10mM)には応答しないことを確認している。
B:Chxに応答したGust-GFP発現細胞における1回目と2回目のATP濃度の測定結果。1 回目と2回目のATP検出レベルに有意な差は無かった(P=0.39、paired t検定)。値は±SEM
(n=4)を示す。
26
この手順で、シクロヘキサマイドに応答し ATP放出を確認できたGust発現細胞に TTXを投与したときのATP放出量を調べた。バス溶液と電極内液に50nM TTXを 投与すると、活動電位の発生は抑制され、投与前と比べて ATP放出量は有意に減
尐した(Fig.6)。これらの結果から、Ⅱ型細胞において活動電位はヘミチャネルを
介したATP放出を増強させる可能性が示唆された。
27 Fig.6
Ⅱ型細胞からのATP放出に対するTTXの効果
A:Gust-GFP発現細胞からのATP 放出に対するTTX の効果を示す典型例。Gust-GFP発
現細胞を1mM Chxで刺激したときの活動電位記録とATP測定結果を示す。上はコントロ
ール、下は50nMのTTXを投与した場合。TTX処理により活動電位の発生が抑制される と共にATP放出量が減尐した。
B:Gust-GFP発現細胞からのATP放出における50nM TTXの効果。TTX(-)、n=7;TTX(+)、
n=5;**p<0.01。ATP放出はTTXによって有意に抑制された(P=0.002、t検定)。
28
4. 考察
味細胞からのATP放出メカニズムを解明するために、従来の味細胞応答記録法 を一部改変し、味細胞の味刺激に対する活動電位応答を観測し、それにより生じ るATP放出を測定する新たな手法を開発した。この手法を用い、甘味、苦味、う ま味刺激によりⅡ型細胞から放出される ATP を定量化することが可能となった。
本研究ではGustをⅡ型細胞のマーカーとし(Huang et al., 1999)、Gust発現細胞が GFPを発現する遺伝子改変マウスを用い、共焦点レーザー顕微鏡下でGFP発現細 胞を同定し、それらの細胞から味応答記録および ATP 濃度測定を行った。この
Gust-GFP遺伝子改変マウスにおいて、GFP発現細胞では味刺激(甘味、苦味、う
ま味)に対する応答と、その後回収した電極内液のATP濃度を測定できたが、GFP を発現しない味細胞からは味応答および電極内液のATPともに検出されなかった
(Fig.1)。これは電極内液から検出されるATPはGFPを発現するⅡ型細胞の味刺 激に対する応答に由来することを示している。味細胞のカルシウムイメージング とバイオセンサーを用いた研究において、甘味/苦味の混合刺激によりⅡ型細胞か らATPが放出されることが報告されており(Huang et al., 2007)、本研究の結果は これと一致する。さらに、Gust-GFP発現細胞は甘味、うま味、苦味物質それぞれ の単独刺激に応答し、ATP を放出することが本研究で用いた実験手法により新た に明らかとなった(Figs.2, 3)。これは単一の味刺激がATP放出のきっかけとなる ことを示している。
以前の研究で、Ⅱ型細胞からのATP放出に活動電位の発火が関係する可能性が 示されている(Romanov et al., 2007; Huang et al., 2007)。本研究ではⅡ型細胞の発 火頻度と電極内液から検出されるATP濃度に正の相関があることを示した(Fig.2)。 発火頻度と電極内液のATP濃度との関係を調べると、回帰直線の傾き(回帰係数)
は甘味感受性Ⅱ型細胞と苦味感受性Ⅱ型細胞との間に違いは無かった(Fig.2)。ま
29
た、甘味、苦味、うま味に応答するそれぞれの味細胞の 1スパイクあたりの ATP 放出量の平均値の間に有意な差は無かった(Fig.3 B)。これらの結果は、Ⅱ型細胞 からのATP放出は活動電位依存的である可能性を示唆する。しかし注目すべきこ とに、苦味に応答したⅡ型細胞からの ATP 放出は TTX 投与によって完全に阻止 されなかったこと(Fig.6)から、ATP 放出には活動電位非依存性の成分が存在す る可能性が考えられる。甘味、苦味、うま味のトランスダクションにおいて、味 覚受容体の活性化により細胞内 Ca2+濃度が上昇し、細胞内 Ca2+依存性の TRPM5 を介して味細胞は脱分極し、活動電位を発生させると考えられる(Yoshida and Ninomiya., 2010)。Huangらは味刺激によってⅡ型細胞の細胞内Ca2+が上昇しATP が放出されること(Huang et al., 2007)、およびTRPM5を介する細胞の脱分極によ ってATP通過性ヘミチャネルが開くことが報告された(Huang and Roper 2010)。 本研究の結果は、Ⅱ型細胞において細胞内Ca2+濃度が上昇し、TRPM5によって膜 が脱分極し、それによって生じる活動電位が ATP放出を増強しているという考え を支持する。
Ⅱ型細胞からの神経伝達物質の放出は、開口分泌に依存せず、ヘミチャネルと 関連する。Ⅱ細胞からのATPの放出は低濃度のCBX(10μM; e.g., Bruzzone et al.,
2005)によって阻害されたことから、 ATPの放出にはpannexin1が関与すると考
えられる。pannexin1ヘミチャネルは脱分極だけでなく、細胞内Ca2+濃度の増加に よっても活性化される(i.e., Bruzzone et al., 2003)。Ⅱ型細胞の活動電位はpannexin1 を含むヘミチャネルの開口をより増大させるのかもしれない。本研究の結果は、
電気刺激を用いた実験結果(Romanov et al., 2007,2008)とは一致せず、味刺激を 用いた実験結果と一致している(Dando and Roper, 2009; Huang et al., 2007)。Ⅱ型 細胞への刺激が異なると、ATP 放出におけるヘミチャネル阻害剤の効果に違いが 生じるという可能性が考えられるが、そのメカニズムについてはまだ明らかでは ない。
30
本研究では、活動電位を発生させる味細胞から味神経への情報伝達において ATPが重要な役割を果たすことを明確にした。Yoshidaら(Yoshida et al., 2006a, b) はマウス茸状乳頭味蕾内の活動電位を発生する味細胞とその求心性支配神経の味 応答特性は近似することを報告している。これは活動電位を発生させる味細胞が 味神経への味覚情報伝達の重要な構成要素であることを示している。さらに ATP の受容体であるP2X2とP2X3が味神経に発現すること(Bo et al., 1999)や、この ATP 受容体が欠損すると味物質に対する味神経の応答が大幅に消失すること
(Finger et al., 2005)が示されている。本研究において活動電位を発生させるⅡ型
細胞は単独の味物質刺激でATPを放出させ、その放出量は活動電位の頻度依存的 に増大することを示した(Fig.2)。このように末梢における甘味、苦味及びうま味 の情報伝達には ATPが情報伝達物質として機能すると考えられる。しかし、Gust 発現細胞以外で甘味、うま味及び苦味物質に応答する味細胞の ATP放出について は不明である。
近年、Ⅱ型細胞から放出されたATPが味蕾内においてオートクラインまたはパ ラクラインとして機能するという仮説が報告されているが、本研究の結果はこの 仮説を支持する。Hayatoら(Hayato et al., 2007)はⅡ型細胞にP2X7とP2Y1が発 現し、Ⅲ型細胞には P2X2、P2X7と P2Y1が発現することを発見している。また、
基底外側膜側へのATPの投与により一部の味細胞で細胞内Ca2+濃度の上昇、脱分 極(および活動電位)あるいは過分極が見られることを示している。Huang ら
(Huang et al., 2009)は、一部の味細胞でATPやその分解生成物であるアデノシ ン二リン酸(adenosine diphosphate:ADP)がP2Y1を介してオートクラインとして 作用し、正のフィードバックが行われていると主張している。さらに、Huang ら
(Huang et al., 2005)はATPによりⅢ型細胞の細胞内Ca2+濃度が増加し、セロト ニンが放出されることを示している。よって、Ⅱ型細胞が受け取った味情報の一 部はⅢ型細胞を経由して中枢神経系へと伝えられるのかもしれない。実際一部の
31
Ⅲ型細胞は甘味、苦味やうま味物質に応答し、細胞内 Ca2+を上昇させている
(Tomchik et al., 2007)。
Ⅲ型細胞は酸味刺激により細胞内Ca2+濃度を増加させ(Huang et al., 2008b)、酸 味及び多種の味刺激により発火頻度を増加させる(Tomchik et al., 2007; Yoshida et
al., 2009)。本研究では活動電位を発生させ、酸味や塩味に応答するⅢ型細胞から
のATP放出を検出することはできなかった。ATPバイオセンサーを用いた実験で も、単離したⅢ型細胞からのATP放出は検出されず(Huang et al., 2007; Romanov et
al., 2008)、これは本研究の結果と一致する。しかし、P2X2/P2X3-ダブルノックア
ウトマウスではすべての味刺激に対する神経応答が大幅に消失することから、酸 味や塩味の情報伝達にも ATPが関与している可能性が示されており(Finger et al.,
2005)、本研究の結果と矛盾する。その理由として、一つはⅢ型細胞から放出され
るATP濃度が検出閾値(40pM)以下であった可能性が考えられる。別の理由とし て、Ⅲ型細胞では他の神経伝達物質が主要な働きを持つ可能性が考えられる。バ イオセンサーを用いた研究では、Ⅲ型細胞からセロトニンやノルアドレナリンが 放出されることが示されている(Huang et al., 2005, 2008a)。このように味情報伝 達に関与する神経伝達物質は味細胞の細胞型に依存するかもしれない。しかし、
候補に挙がっているセロトニンを含む他の神経伝達物質の求心性の味情報伝達に おける機能はまだ明らかではない。近年、Glucagon-like peptide-1(GLP-1)やその 合成酵素が味細胞で発現し、その受容体が求心性の味神経に発現すること、また、
GLP-1 受容体欠損マウスを用いた行動学的実験の結果、欠損マウスは野生型マウ
スに比べ、甘味の嗜好性が有意に減尐することが明らかとなった(Shin et al., 2008)。 このことはGLP-1が甘味特異的に修飾する情報伝達物質であり、甘味特異的な神 経伝達物質として機能する可能性を示しており、今後のさらなる研究が必要であ る。塩味に関してはⅢ型細胞以外の細胞が受容を担う経路が存在すると考えられ る。塩味受容細胞は上皮性Na+チャネル(ENaC)の阻害剤であるアミロライドに
32
感受性のある細胞とない細胞の尐なくとも2種類が存在する(Chandrashekar et al., 2010; Yoshida et al., 2009)。アミロライド感受性細胞はNa+に対して特異的な応答 を示すが、このような味細胞はGust-GFP発現細胞やGAD67-GFP発現細胞の中に は見られない(Yoshida et al., 2009)。よって、アミロライド感受性塩味応答細胞は Gust を発現しないⅡ型細胞や GAD67 を発現しないⅢ型細胞、もしくはアミロラ イド感受性のNa+電流を持つⅠ型細胞(Vandenbeuch et al., 2008)である可能性が 考えられる。今後、各味細胞の味応答プロファイルを明らかにし、その味細胞か ら放出される神経伝達物質とその機能的役割を明らかにすることが、味細胞から 味神経への情報伝達メカニズムを解明するうえで必要である。
近年、味細胞が持つ情報伝達物質の中で、γ-アミノ酪酸(Gamma-aminobutyric
acid:GABA)が注目を集めつつある。Ⅲ型細胞に発現するGAD67はGABA合成
酵素であり、Ⅲ型細胞はGABAを持つと考えられる。GABAの味蕾内での機能を 解明するために、第2章の実験を行った。
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第2 章
味細胞における GABA の役割
1. 緒言
第1章で示したように、味細胞から味神経への情報伝達を担う物質として考えら れるATPはⅡ型細胞からは放出されるが、Ⅲ型細胞からは放出されないか、放出 されても極めて微量である。Ⅲ型細胞では、セロトニン(Kaya et al., 2004; Huang et al., 2005)、ノルアドレナリン(Zhang et al., 2010; Herness et al., 2002; Dvoryanchikov et al., 2007)といった神経伝達物質が存在し、味刺激により放出されることも示さ れている(Huang et al., 2005, 2008a)。これらの伝達物質は味神経への情報伝達に 関与するか、または味蕾内での細胞間コミュニケーションに関与する可能性が示 唆されている(Huang et al., 2009)が、その機能的意義はまだ明らかではない。
近年これらに加えてⅢ型細胞が GABAの合成酵素である GAD67を発現するこ とが示されている(DeFazio et al., 2006)。GABAは中枢では抑制性の情報伝達物 質として知られているが、幼若期には興奮性の情報伝達物質としても機能するこ とが報告されている(Ben-Ari et al., 2007)。このような機能変化は細胞内Cl-濃度 に依存することが知られており、その調節にはCl-トランスポーターであるKCC2 とNKCC1が関与する(Payne et al., 2003; Rivera et al., 1999)。味蕾にはGABAの トランスポーター(Obata et al., 1997)やGABA受容体(Cao et al., 2009)を発現 する細胞が存在することから、GABA が味蕾内で何らかの情報伝達に関与すると 考えられる。また味細胞は約10日の早いターンオーバーの周期を持つ(Beidler and Smallman, 1965)ことから、味蕾内にはいわゆる幼若型の細胞が存在し、それらの 細胞ではGABAが興奮性の情報伝達を担う可能性も考えられる。しかし、その生 理機能は明らかとされていない。そこで、第 2章の研究では、GABAの味蕾内で の作用メカニズムを明らかにするため、RT-PCR法や免疫組織化学染色法を用いて、
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味細胞におけるGABA関連分子の発現様式を調べた。また、ルーズパッチ法を用 いて味細胞の活動電位を記録し、GABA投与後の変化を解析した。
35
2.材料と方法
・実験動物
実験動物としてC57BL/6マウス、GAD67-GFPマウス、Gust-GFPマウス、TRPM5 プロモーター領域制御下にGFPを発現するTRPM5-GFP マウス(Bezencon et al., 2007)、T1R3プロモーター領域制御下にGFPを発現するT1R3-GFPマウス(Damak et al., 2008)を用いた。
・舌上皮の摘出
第1章同様の方法にて動物の舌上皮を剥ぎ取り、冷蔵庫(4℃)にて保存した。
・ルーズパッチ記録法
剥離した舌上皮より味蕾を含む個々の茸状乳頭を摘出し、味孔周辺を味刺激用 ピペットにて吸引保持した。味刺激用ピペット内は常にTyrode溶液で灌流し、刺 激側のみ味刺激前後30~60秒は蒸留水を与えた。基底外側膜側は常にTyrode溶液 で灌流した。共焦点レーザー顕微鏡にてGFPの蛍光を確認し、蛍光を有する味細 胞に基底外側膜側より記録電極を当て、味細胞が発生する活動電位を記録した。
各薬剤は味蕾の基底外側膜側から投与した。実験はすべて室温(23~26℃)で行っ た。
・RT-PCR法
剥離した舌上皮をCa2+-Mg2+free-tyrode液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM EDTA、
10mM HEPES、10mM glucose、10mM sodium pyruvate、pH7.4)で15-30分間、室 温で処理し、舌上皮から分離した茸状乳頭ならびに有郭乳頭の味蕾をガラスピペ ットにてチューブに回収した。その後、RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN、Ratingen、
Germany)を用いてRNA精製を行った。OneStep RT-PCR kit(QIAGEN、Ratingen、
Germany)および遺伝子特異的プライマー(Table.2)を用いて RT-PCR を行った。
(RT:50℃30分、PCR:94℃30秒、52℃60秒、72℃90秒を30サイクル)。さら
36
に nested-PCR により遺伝子特異的配列を増幅した(94℃30 秒、58℃30 秒、72℃
60秒を40サイクル)。その後、2%アガロースゲルを用いて30秒間電気泳動を行 い、DNAを検出した。
・Single cell RT-PCR法
剥離した舌上皮をCa2+-Mg2+free-tyrode液で15-30分間、室温で処理し、茸状乳 頭ならびに有郭乳頭の味蕾をガラスピペットにて採取した。この中に含まれる GFP 発現味細胞を共焦点レーザー顕微鏡観察下にて微小ガラスピペット(径:
1~3μm)を用いてPCRチューブに回収し、OneStep RT-PCR kit(QIAGEN、Ratingen、
Germany)および遺伝子特異的プライマー(Table.2)を用いて RT-PCR を行った。
(RT:50℃30分、PCR:94℃30秒、52℃60秒、72℃90秒を30サイクル)。さらに
nested-PCR により遺伝子特異的配列を増幅した(94℃30 秒、58℃30 秒、72℃60
秒を40サイクル)。その後、2%アガロースゲルを用いて30秒間電気泳動を行い、
DNAを検出した。
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Table.2 RT-PCRに用いたプラーマーの塩基配列
Outside primer Inside primer
GAD67 Forward 5'-CATTCTGGTCAAGGAAAAGG-3' Reverse 5'-CAGCTCTAGCAGGGAGGTAG-3'
Forward 5'-AGATAGCCCTGAGCGACGAG-3' Reverse 5'-ATGGCCGATGATTCTGGTTC-3' GABAA
α1
Forward 5'-CTATGAGTGGACCAGAGAGC-3' Reverse 5'-CCTGGCTAAGTTAGGGGTAT-3'
Forward 5'-GTAGCAGAAGATGGGTCACG-3' Reverse 5'-AACCAGTCCATAGCTGTTGC-3' GABAA
α2 Forward 5'-ATGCTTCTGACTCCGTTCAG-3' Reverse 5'-CCAAACAGAACTGGGAACAC-3'
Forward 5'-CCAAGTGTCATTCTGGCTGA-3' Reverse 5'-CGCATAGGCGTTGTTCTGTA-3' GABAA
α3
Forward 5'-GCTCACGCCTGAATCAGTAT-3' Reverse 5'-CTTGGTCTCAGCAGGACTGT-3'
Forward 5'-TCTCACCATGACCACCTTGA-3' Reverse 5'-AAGTAGCCTTGGGTGAAGCA-3' GABAA
α4
Forward 5'-AAAGGCCCTGAGAAGTCAGT-3' Reverse 5'-TCAGAAGACTCCTGGACAGC-3'
Forward 5'-ACCACCCTAAGCATCAGTGC-3' Reverse 5'-TTTCCCACCTCAGTTCTGCT-3' GABAA
α5
Forward 5'-TATCCAGTCACTTTGGCTTT-3' Reverse 5'-ATGAGGTGGTACTGGTTGAG-3'
Forward 5'-CGAGACCAATGACAACATCA-3' Reverse 5'-TGTGTGCAATGGACTTCTTG-3' GABAA
α6 Forward 5'-CCACTCAAGTTTGGGAGCTA-3' Reverse 5'-CCTCAGAAGATGGAACGATG-3'
Forward 5'-AGGAGTCAGTCCCAGCAAGA-3' Reverse 5'-GATGGGCAAAGTCAGAGAGC-3' GABAA
β1
Forward 5'-GACCGACTGCTCAAAGGATA-3' Reverse 5'-GTGTGGAAGGCATGTAGGTC-3'
Forward 5'-TTTCCAGCAGTCTTGGAAGG-3' Reverse 5'-ACTGCTCCCTCTCCTCCATT-3' GABAA
β2 Forward 5'-TTCGTCTGAGACCAGATTTT-3' Reverse 5'- TTCGTCTGAGACCAGATTTT-3'
Forward 5'-GCCAGCATTGATATGGTTTC-3' Reverse 5'-GCCATAGCTTTCAATCTCCA-3' GABAA
β3
Forward 5'-CATGATGGACCTCAGAAGAT-3' Reverse 5'-GGACCTCTTCCAAAGAAAAT-3'
Forward 5'-ATACCCACTGGATGAGCAAA-3' Reverse 5'-CAGCAGATGCATCGTAATTG-3' GABAA
γ1
Forward 5'-ATATAGGCGTGAGACCCACA-3' Reverse 5'-AAGACACCCAGGAAAGAACC-3'
Forward 5'-ACAGCATTGGACCTGTGGAT-3' Reverse 5'-CAGAGGGCTTTTTCCACTTG-3' GABAA
γ2
Forward 5'-CCTGCTGGAAGGGTATGAC-3' Reverse 5'-GTCTGGATGGTGAAGTAGCC-3'
Forward 5'-CTGACATCGGAGTGAAACCA-3' Reverse 5'-GGCAGGAGTGTTCATCCATT-3' GABAA
γ3 Forward 5'-TGGTCCAGGAGGGTAGAAGAA-3' Reverse 5'-TCACCTGCAGATGTTGTCAC-3'
Forward 5'-TGAAGACTCCCCATCAAACC-3' Reverse 5'-GTGAGCCTCCGCTGTTTTAG-3' GABAA
δ
Forward 5'-CCAAGTACCCACTGGATGAG-3' Reverse 5'-TAGCCAACTCCTGACTGACC-3'
Forward 5'-GCATGCTGGACCTAGAGAGC-3' Reverse 5'-GCACAGTGGTGATGCCTAGA-3' GABAA
ε
Forward 5'-CCAGACCTGGTATGATGAGC-3' Reverse 5'-CAAAGCCGTGAGATAGGAGA-3'
Forward 5'-GATGCAAGATGCTCACTCCA-3' Reverse 5'-AGAAGGAGACCCAGGAGAGC-3' GABAA
π
Forward 5'-GGTGATTCCTCCTTCAACCT-3' Reverse 5'-GGAGAACTCCACATCATTGC-3'
Forward 5'-ATCGCCAGCATCTCTAGCAT-3' Reverse 5'-CAGCTTGCAGGTCTGTGTGT-3' GABAA
θ
Forward 5'- CCTAAACCTGACCCTGGATT-3' Reverse 5'-CGAGGTACTTGGCTGAAGAA-3'
Forward 5'-GGGCTGCATATCCCTCAGTA-3' Reverse 5'-CAGCAGTGACAGGAAAACGA-3' GABAB
R1
Forward 5'-GCAGACTACCGAGGTCTTCA-3' Reverse 5'-CCTCAAAGGAGGAGGAGTTC-3'
Forward 5'-CAGATCCAGCTGTGCCTGT-3' Reverse 5'-CCTCAGGGTGTCTTTTCAGC-3' GABAB
R2
Forward 5'-GTCTGTCCGTCTGTCACCTC-3' Reverse 5'-CTGTGGAGTCTTCCCTGAGA-3'
Forward 5'-GGTTCTGTACGGGGAAGACA-3' Reverse 5'-TCCACTCCGATGTAGCCTTC-3' NKCC1 Forward 5'-AGATTGGTTACAAGCCGATA-3'
Reverse 5'-GTTGATATCTCCAAGGACCA-3'
Forward 5'-CCTCCAAGGTCAGGAAGAAT-3' Reverse 5'-ATCATCAAAAAGCCACCAGA-3' KCC2 Forward 5'-GTGTGGACCAGGATCAGAAC-3'
Reverse 5'-GGTACAGAAACGTGGTCAGG-3'
Forward 5'-CGGGCAGAGGAGTCTATCAG-3' Reverse 5'-TTTCCTCCAGACCTTGTGGT-3' β-actin Forward 5'-CCTGAAGTACCCCATTGAAC-3'
Reverse 5'-GTAACAGTCCGCCTAGAAGC-3'
Forward 5'-GGTTCCGATGCCCTGAGGCTC-3' Reverse 5'-ACTTGCGGTGCACGATGGAG-3' TRPM5 Forward 5'-TTCCTGTTCATTGTGGGAGT -3'
Reverse 5'-GACTCCTGCAACCACAGTTC -3'
Forward 5'-CTGATCGCCATGTTCAGCTA-3' Reverse 5'-ACTCTGTGTGCCGTTTTCCT-3' T1R3 Forward 5'-TGCCTGAATTTTCCCATTAT -3'
Reverse 5'-AGGACACTGAGGCAGAAGAG -3'
Forward 5'-CTACCCTGGCAGCTCCTGGA-3' Reverse 5'-CAGGTGAAGTCATCTGGATGCTT-3' T1R2 Forward 5'-TGAACATCACCGAGTCCTTT -3'
Reverse 5'-GTGGTAACGCATCCAGAAAC -3'
Forward 5'-CAAAGCATCGCCTCCTACTC-3' Reverse 5'-AGAATGGCCAGCGTACTGAT-3' T1R1 Forward 5'-AGGGGGACCCTCTAGGTTAT -3'
Reverse 5'- ATGATGACCAGTTGGAAGGA-3'
Forward 5'-GGTTCTGCCTCACTGTCTCC-3' Reverse 5'-GCAGCAGCAATAGCGTGTTA-3' Gust Forward 5'-ACGAGATGCAAGAACTGTGA -3'
Reverse 5'-TATCTGTCACGGCATCAAAC -3'
Forward 5'-TGCTTTGAAGGAGTGACGTG-3' Reverse 5'-GTAGCGCAGGTCATGTGAGA-3'
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・免疫組織化学染色法
シリコンコートした培養皿にピン止めした舌上皮を 4%パラフォルムアルデヒ ドが入った生理的トリス緩衝液 (Tris buffered saline:TBS)で固定し(1時間、4℃、
暗所)、TNT バッファー[50mM Tris/HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.05%Tween20]
にて 5分間 3回洗浄した。その後、舌上皮をチューブに回収し、一連のメタノー ル溶液(30%、50%、80%、100%)に10分4℃で順次浸した。内因性ペルオキシ ダーゼ除去のため、0.3%の H2O2メタノール溶液で 30 分間 4℃にて反応させ、一 連のメタノール溶液(100%、80%、50%、30%)に10分4℃で順次浸した。次に、
Blocking溶液[Blocking One(NACALAI TESQUE,INC.JAPAN)]に浸し、1時間、4℃、
暗室にてインキュベートした。さらに、ヒツジポリクローナル抗NKCC1IgG抗体
(1:100, SantaCruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA, U.S.A)、ウサギポリクロー ナル抗KCC2IgG抗体(1:200, MILLIPORE Corporation, e.g., Blaesse et al., 2006;
Allain et al., 2006)を一次抗体として4℃一晩免疫反応させた。、TNT バッファー
にて5分間7回洗浄した後、2次抗体としてAP-conjugated goat anti-rabbit IgG(1: 500, Jackson Immuno Research LABORATORIES )、 horseradish peroxidase (HRP)-conjugated donkey anti-goat IgG ( 1: 500, Jackson Immuno Research LABORATORIES)、AP-conjugated donkey anti-goat IgG(1:500, Jackson Immuno
Research LABORATORIES)を、各1時間、室温にて反応させた。
陰性対照として、一次抗体処理を省略した実験を同時に行った。また、NKCC1分 子に対する抗体の特異性は、ブロッキングペプチド(NKCC1抗体をNKCC1ブロ ッキングペプチド(Santa Cruz Biotechnology)にて5倍希釈し2時間室温にてイン キュベートしたもの)を用いて確認した。TNT バッファーにて5分間7回洗浄し た後、APバッファー[100mM Tris/HCl(pH9.5)、150mM NaCl、50mM MgCl2]に5 分浸した。シグナルはHNPP/Fast Red alkaline-phosphatase substrate(Roche)と反応 させ発色を行った。TNT バッファーにて5分間5回洗浄した後、Streptavidin-Alexa
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488(1:200、Molecular Probes)にて30分4℃暗室にて反応させ、TNT バッファ
ーにて 5分間 5回洗浄した。スライドガラスに上皮を載せ作業用バッファー(グ リセロールを TBE 溶液にて 6 倍希釈したもの)を滴下し、カバーガラスを被せ、
共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡(FV1000、オリンパス)を用いて観察した。40 倍の対物レンズを用い、茸状乳頭味蕾は基底外側膜側より画像記録を行った。
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3.結果
・味細胞におけるGABA受容体サブユニットの発現解析
GABA の受容体にはイオンチャネル型受容体の GABAA と代謝型受容体の GABABが存在する。GABAA受容体はヘテロ5量体を形成し(Sieghart et al., 1999)、 サブユニットにはα1~6、β1~3、γ1~3、δ、ε、π、θの16種類が報告されている
(Sieghart and Sperk, 2002; Sieghart et al., 1995; Barnard et al., 1998)。GABAB受容体 はR1、R2の2種類が報告されている(Bettler et al., 2004)。これらのGABA受容 体サブユニットが味蕾内で発現するか RT-PCR 法により検索した。その結果、茸 状乳頭味蕾からGABAA受容体サブユニットα1、α2、α5、β2、β3、γ3、δ、π及び GABAB受容体サブユニット R1、R2 が検出され、有郭乳頭味蕾では GABAA受容 体サブユニット α1、α5、β2、β3、γ2、γ3、δ、π及びGABAB受容体サブユニット R1、R2が検出された。しかし、GABAA受容体サブユニットα3、α4、α6、β1、γ1、
ε、θは検出されなかった(Fig.7)。