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―仲裁を中心として―

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〔要約〕日本政府は,1990 年台に入って,知 的財産権保護の強化という政策を打ち出し,

そのなかで,知的財産関係訴訟の充実・迅速 化とともに,ADRの活性化を目標に掲げて いる。確かに,前者は一定の効果をあげたと 評価できるが,後者については,今なお十分 な成果はもたらされていない。知的財産関係 紛争を扱うADR機関はいくつか存在するが,

特許庁の判定制度を除けば利用度は低く,と くに仲裁は,未だ一般的な認知を得られてい ない。仲裁の利点として通常指摘される専門 性や迅速性・廉価性は,裁判所の知的財産専 門部の拡充とも相まって,この分野では十分 にアピールしないものになっている。

仲裁の利用活性化を阻む一つの潜在的要素 となっていたのは,特許庁による無効審判制 度との関係で,仲裁廷が侵害判断の前提とし て特許の有効性を判断できるかが不透明だっ たことである。しかし,特許侵害訴訟で生じ る同様の問題につき,キルビー事件最高裁判 決(2000 年)で肯定的解答が下され,これ を受けた 2004 年の特許法改正がこの趣旨を 明記したことから,仲裁の平面でも,同様の 解釈が定着することが見込まれる。今後の課 題は,知的財産仲裁にいかなる独自的意義を 盛り込めるかにあるといえよう。

―目次―

Ⅰ 知的財産権紛争とADRをめぐる状況

Ⅱ 知的財産権紛争を扱うADR機関

1 仲裁機関 2 あっせん機関 3 その他

Ⅲ 知的財産権紛争における仲裁の利点 1 専門性

2 非公開性

3 迅速性・低廉性・柔軟性

4 中立性・執行可能性・当事者間の関係 継続の容易性

Ⅳ 知的財産権紛争の仲裁可能性 1 侵害訴訟と無効審判の関係

2 特許権の有効性に関する付与国の専属 的国際裁判管轄 

3 特許権の有効性問題の仲裁可能性 4 特許権の有効性に関する仲裁廷の判断

の効力

5 無効審判の申立てを行わない旨の合意

Ⅰ 知的財産権紛争とADRをめぐる状況

日本においては,1980 年代後半,IBM対 富士通のソフトウェア著作権紛争がAAAに よる仲裁で解決されたことが契機となって,

ADRによる知的財産権紛争の解決が注目を 集めた。その後,1990 年台後半から,「知的 財産権立国」をめざす国家政策が明確に打ち 出され,平成 13 年(2001 年)に司法制度改 革審議会が公表した意見書1は,「知的財産権 関係事件への総合的な対応強化」という標題 のもと,知的財産権関係訴訟の充実・迅速化,

裁判官の専門性強化や裁判所調査官の集中的 投入の必要性とともに,「日本知的財産仲裁

知的財産権紛争とADR

―仲裁を中心として―

中野俊一郎

* 神戸大学大学院法学研究科教授

(2)

センターや特許庁(判定制度)等のADRを 拡充・活性化し,訴訟との連携を図るべきで ある」,との提言を行っている2。さらに平成 16 年(2004 年)末に成立した「裁判外紛争 解決手続の利用の促進に関する法律」2aは,

ADR機関の認証や時効中断等について規定 をおくことにより,わが国におけるADRの 利用活性化を図っている。ただ,現実には,

これまでのところ,知的財産権紛争の解決手 段として,ADRが社会的認知を受け,十分 な役割を果たしているとは言いがたい。

他方,裁判所の側では,東京地裁と大阪地 裁に知的財産専門部を設け,裁判官の専門性 を高めるとともに,特許庁から調査官を迎え て技術的・専門的知見を補うという取り組み を行ってきた。従来は,特許権,実用新案権 等につき,両地裁に競合管轄が認められるの みであったが,平成 15 年(2003 年)の民訴 法 6 条改正では,管轄集中による一層の専門 的処理体制の向上を目指し,その専属管轄化 が図られるとともに,控訴審レベルでも,東 京高等裁判所の専属管轄が定められた。これ に加えて,平成 16 年(2004 年)の通常国会 においては,事実審レベルでの管轄集中によ る判断の統一性・予見可能性の確保,国家政 策として知的財産権を重視することのアナウ ンスメント効果をねらって,東京高等裁判所 に「知的財産高等裁判所」を設置する法案が 可決された3。同時に,民訴法 92 条の 8 が新 設され,当事者に対する釈明や証人に対する 発問権など,知的財産事件における裁判所調 査官の権限の拡大・明確化が図られている4

そこで,本報告においては,今後の検討の ための基礎材料を提供することを目的として,

仲裁を中心に,知的財産権紛争解決手段とし てADRを活用する可能性と問題点について 考えてみたい。

Ⅱ 知的財産権紛争を扱うADR機関 1 仲裁機関

知的財産権紛争を扱う国際的仲裁機関とし ては,1995 年にWIPO(世界知的所有権機構)

が設立したWIPO仲裁センターが著名であ る5。わが国では,知的財産権紛争の調停・

仲裁や相談業務を行う機関として,1998 年 に「工業所有権仲裁センター」が設立され,

2001 年に「日本知的財産仲裁センター」6と改 称して今日に至っている。ここでは,WIPO 仲裁センターと同じく,対象となる紛争は知 的財産権紛争に限られていない。また,本セ ンターは,2000 年より,日本ネットワーク インフォメーションセンター(JPNIC)と協 定を締結し,JPNICが登録しているJPドメ イン名に関する認定紛争の裁定手続7をも 行っており,かなりの実績を上げている。但 し,これは,手続の開始前,係属中または終 結後のいずれの段階においても,当該ドメイ ン名の登録に関して裁判所に出訴することを 許すものであり,裁定後 10 日以内に提訴さ れれば裁定内容は実施されないため,仲裁と は異なった性質をもつ。

このほか,日本商事仲裁協会8,各地の弁 護士会仲裁センター9においても知的財産権 紛争の調停・仲裁が可能であるが,実績は少 ないようである。

2 あっせん機関

文化庁は,著作権紛争の簡易,迅速な解決 を図るため,著作権法に基づき,独自のあっ せん制度を設けている10。これによると,文 化庁長官は,当事者双方から申請があったと き,又は当事者の一方から申請があり他の当 事者がこれに同意したときに,あっせん委員 によるあっせんに付す。文化庁長官は,学識 経験者の中から3人(通常は大学教員,弁護 士,著作権実務専門家から1名ずつ)のあっ せん委員を委嘱する。1971 年の創設から現 在までの受理件数は 30 件,うち相手方が手 続開始に同意し,実際審理を行ったのは6件,

解決したのは4件である。

3 その他

特許法 71 条1項は,特許発明の技術的範

(3)

囲や侵害の有無に関する争いについて,特許 庁に「判定」を求めることができるとしてい る。これは,必ずしも請求の相手方を必要と するものではないが,特許紛争においては,

これらの事実上の争点について公正な鑑定が 得られれば,当事者間で妥協に達しやすくな るという特徴があるうえ,平成 11 年の特許 法改正に伴う運用改善により,従来2年程度 かかっていた手続が 6 カ月に短縮されたと い っ た こ と も あ っ て , 判 定 制 度 は 有 効 な ADRとして実業界からも一定の評価を得て いる11

Ⅲ 知的財産権紛争における仲裁の利点

1 専門性 

争点となっている技術の専門家を仲裁人に できることは,特に知的財産権紛争において は重要性をもつ。もっとも,裁判所において も,知的財産専門部を設けて裁判官の専門性 を高めるとともに,調査官の活用によりそれ を補充する努力を払っていることは前述した。

また,日本の場合,職業的仲裁人が未だ存在 せず,弁護士がいわば片手間に仲裁を行うこ とが多いため,必ずしも専門性において十分 でないうえ,選択の幅が狭く,多忙のゆえに 合議のスケジュールを合わせるのが容易でな い,といった消極面も指摘されている12

2 非公開性

営業秘密や紛争の存在自体を一般に知られ たくない企業にとって,仲裁のメリットは大 きい。もっとも,非公開を原則とすることの マイナス面として,類似の侵害行為の再発防 止や,判断例の蓄積による結果の予測可能性 の高まりや理論的深化が期待できないことも 指摘されている13

他方,2004 年の特許法改正14により,裁判 所は,特許権や専用実施権の侵害訴訟におい て,当事者等に対する秘密保持の命令(105 条の4),記録閲覧の制限(105 条の6)に 加えて,営業秘密が問題となる場合の公開停

止(105 条の7)を命じうることとなった。

3 迅速性・低廉性・柔軟性

一般に,単審性をとる仲裁は訴訟より迅速 であるといわれるが,複雑な事件では長期に 及ぶこともある。他方,裁判所においても,

計画審理の導入等の取組みにより,審理期間 の短縮が実現されている。また,仲裁人報酬 が高額に達することもあるから,必ずしも仲 裁が訴訟より安くつくとも断言できない。と りわけ,東京地裁,大阪地裁の知的財産専門 部での現在の実務と比較すれば,判断の質,

スピード,可能な救済や主張立証方法の範囲,

弁護士費用など「いずれの点においてもˇˇ仲 裁手続が優れているということは難しい」と いう厳しい声も聞かれる15

もっとも,仲裁手続の柔軟性を活用して,

当事者間の事前協議で判断を要する争点を限 定し,主張・立証の提出期限を合意すると いった方策がとられれば,迅速な解決が期待 できるという指摘がある16。また,判断内容 についても柔軟性をもたせることができるこ とや,渉外事件の場合には,使用言語が日本 語に限られない(仲裁法 30 条),といった利 点も無視できない。

4 中立性・執行可能性・当事者間の関係 継続の容易性

一般的にいわれることであるが,仲裁では,

第三国を仲裁地にすることにより,当事者双 方にとって中立的で,いずれか一方の有利に 偏らないフォーラムを確保しうる。また,

ニューヨーク条約による国際的な執行の容易 さや,紛争解決後の取引関係維持の容易さも 指摘されている。

Ⅳ 知的財産権紛争の仲裁可能性

1 侵害訴訟と無効審判の関係

知的財産侵害紛争や,ライセンス契約をめ ぐる紛争は,通常の不法行為や契約と異なる ところがないから,基本的には仲裁によって 解決することが可能と考えられる。但し,知

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的財産権のうち,特許権をはじめとする工業 所有権については,それが行政庁の審査に基 づいて付与され,属地的・対世的な効力をも つ権利であることから,その有効性をめぐる 争いが「和解をすることができる民事上の紛 争」(仲裁法 13 条1項)として仲裁可能性を もつかどうかが問題となる。とくに日本では,

特許庁による特許無効審判手続と裁判所によ る侵害訴訟手続が二元的・排他的な関係に立 ち,特許の無効は審判手続で確定されなけれ ばならず(特許法 123 条),審決が確定する まで裁判所は手続を中止しうるものとされて いることから(同 168 条)17,特許の有効性は およそ審判手続でしか争えないと見る余地が ありうる。

この問題は,特許権侵害訴訟で特許無効の 抗弁が出された場合の扱いとパラレルな関係 に立つ。これについて,平成 12 年の富士通 半導体訴訟(キルビー事件)最高裁判決18は,

「特許の無効審判が確定する以前であっても,

特許権侵害訴訟を審理する裁判所は,特許に 無効理由が存在することが明らかであるか否 かについて判断することができ」,「審理の結 果,当該特許に無効理由が存在することが明 らかであるときは,その特許権に基づく差止 め,損害賠償等の請求は,特段の事情がない 限り,権利の濫用に当たり許されない」とし た19

この判決は,無効理由の存在が「明らか」

であれば「権利濫用」の抗弁が可能になる,

という構成をとっていたが,この「明らか」

要件を不要化し,紛争の一回的解決を図るこ とを目的として,2004 年の法改正で新設さ れた特許法 104 条の3は,次のように定めた。

「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟 において,当該特許が特許無効審判により無 効にされるべきものと認められるときは,特 許権者又は専用実施権者は,相手方に対しそ の権利を行使することができない。」

2 特許権の有効性に関する付与国の専属 的国際裁判管轄 

国際裁判管轄の決定という局面では,特許 など,登録を要する知的財産権の有効性判断 について,付与国の専属管轄を認める考え方 が世界的に根強い。ブリュッセル条約 16 条 4 項,ブリュッセルⅠ規則 22 条4項がその代 表例であり,2003 年 12 月 20 日段階のハーグ 国際裁判管轄・判決承認執行条約草案1条3 項ijも,「特許,商標,保護されている意 匠及び集積回路の回路配置の有効性」[及び その他の知的財産権で登録を要するもの]を 条約の適用範囲から除いている。但し,特許 付与国以外での侵害訴訟において,特許の有 効性が前提問題として判断されることは一般 に否定されないようであり,1999 年段階で のハーグ国際裁判管轄・判決条約草案 12 条 は , 基 本 的 に こ の 考 え 方 に 立 っ て い た20。 2004 年4月段階の草案でも,この考え方は 踏襲されている(2条2項K)20a

3 特許権の有効性問題の仲裁可能性 わが国においては,無効審判制度の独立性

(上述1)を重視する見地から,特許権の有 効無効について,そもそも仲裁人は判断する ことができないという見方もないわけではな い21。しかし,キルビー事件最高裁判決及び 2004 年の特許法改正で確認された,侵害訴 訟の裁判所が特許無効を前提問題として判断 できるという考え方を,仲裁の平面に移し替 えると,仲裁手続で特許権侵害が争われる場 合にも,仲裁廷が当該特許権の有効性につい て判断することは妨げられない,ということ になりえよう。国際裁判管轄の決定において,

前提問題としての特許権の有効性判断につき 専属性を緩める国際的傾向(上述2)も,こ の考え方に沿う。また,解釈論としても,両 当事者が特許権の有効性について同じ見解を とり,それを基に和解することもできるとす れば,当事者は特許権の有効性につき和解可 能性(仲裁法 13 条1項)をもつと見ること が可能になる。従って,侵害訴訟の前提問題

(5)

として問題となる特許権の有効性については,

仲裁可能性を認めてよいと思われる22。 さらに,より直裁に,当事者が仲裁判断に おいて特許権の有効性確認を求めるような場 合,これを許す見解もないではない23。確か に,仲裁廷に前提問題としての有効性判断を 許す以上,このような考え方をとる余地は理 論的に十分ありうるが,次に述べるように,

この場合の仲裁判断の効力は極めて制限的な ものにとどまるため24,その実際的必要性に ついては疑問も残る。そのため,学説の多く はこれに否定的であるといえよう25

4 特許権の有効性に関する仲裁廷の判断 の効力

特許権の有効性に関する仲裁廷の判断は,

当事者間でのみ相対的効力をもつにすぎず,

対世的効果を伴う判断を得るためには無効審 決によらなければならない。そうすると,仲 裁廷が特許権の有効性を前提に仲裁判断を下 したが,後に当該特許の無効審決が下される という事態も想定されうる。かつての公示催 告仲裁法 801 条1項6号は,「判決の基礎と なった民事若しくは刑事の判決その他の裁判 又は行政処分が後の裁判又は行政処分により 変更されたこと」(民訴法 338 条1項8号)

を取消事由としていたから,このような場合 には直裁に仲裁判断の取消しが可能であった。

新仲裁法 44 条は,モデル法にならい,これ に相当する規定をおかないが,公序(同1項 8号)に反するものとして取り消す余地があ りえようか。

特許無効の審判と侵害訴訟との間でそごを 生じる危険に対処するため,特許法 168 条は,

従来より,裁判所と特許庁の間で,侵害訴訟 の提起や当該特許権に関する審判請求の有無 といった情報の相互提供を定めていた。2004 年改正で新設された同条5項6項は,審判請 求があった旨の通知を受けた裁判所は,特許 無効の抗弁(104 条の3:上述1)が出され たことを特許庁側に通知すべきものとし,そ の場合,特許庁側は,必要な訴訟記録の写し

の送付を裁判所に求めうることとした。仲裁 の場合には,このような無効審判との連携関 係を確保する仕組みがないことが,一つの問 題と思われる。

5 無効審判の申立てを行わない旨の合意 仲裁手続で特許権の有効性が争われる場合 でも,当事者が別途,無効審判の申立てを行 うことができるとすると,仲裁による紛争の 一回的解決は図れない。そのため,当事者間 で,無効審判の申立てを行わない旨の合意

(不争合意)ができるかどうかが問題になる。

「特許・ノウハウライセンス契約に関する 独占禁止法上の指針」26第4の3»½は,「特 許ライセンス契約において,ライセンサーが ライセンシーに対して,ライセンスされた特 許権の有効性について争わない義務を課すこ とは,本来特許を受けられない技術について 特許権が存続し続けることにより,市場にお ける競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがある 場合には,不公正な取引方法に該当し,違法 となる」という。この考え方を一般化するな らば,無効審判で不争合意を抗弁として主張 できないということになりえよう。しかしな がら,紛争発生後の合意であれば独占禁止法 上の問題を生じないこと,一定の場合,当事 者は無効審判の申立権を失いうること,不争 合意の当事者以外の者は無効審判を申し立て うるから公益上の問題はないこと,当事者は 仲裁手続で有効性を争えるから手続保障を欠 くわけではないことなどを理由に,不争合意 の効力を認める見解も主張されている27

不争合意の効力を認め,仲裁による紛争の 一回的解決を図ることは,米国のように28, 知的財産権紛争について,広い範囲で仲裁付 託を認める考え方に接近する。もっとも,独 占禁止法上の問題をクリアできたとしても,

対世効をもって特許無効を争う可能性を放棄 することを許すべきかについては,なお問題 の残るところであろうし,仲裁の利用自体が 低迷しているわが国の現状においては,いた ずらに仲裁可能性の拡大を急ぐよりも,いか

(6)

にして知的財産権仲裁に独自の意義を盛り込 むかを考えてゆくのが先決であろう。

1 「司法制度改革審議会意見書― 21世紀の 日本を支える司法制度」(http://www.kantei.

go.jp/jp/sihouseido/report/ikensyo/index.htm l#mokuji)Ⅱ第1の3。

2 2002年7月3日に知的財産戦略会議が公表 した「知的財産戦略大綱」(http://www.kan- tei.go.jp/jp/singi/titeki/kettei/020703taikou.

html)も,「第3章 具体的行動計画2知的 財産の保護の強化¹実質的な『特許裁判所』

機能の創出④裁判外紛争処理の充実等」とい う標題のもと,「知的財産に係る紛争処理手 段の選択肢を幅広く提供する観点から,裁判 外紛争処理(ADR)機関の機能強化・活性 化等につき,2005年度までに日本弁護士連合 会,日本弁理士会等の関係者間で検討を行い,

所要の措置を講ずるように要請する」として いる。

2a 本法につき,内掘宏達「裁判外紛争解決 手続の利用の促進に関する法律の概要」民事 法情報 221号(2005年)17頁,小林徹「裁判 外紛争解決手段の利用促進に関する法律」

ジュリスト1285号(2005年)26頁など。

3 中山信弘ほか「シンポジウム・知的財産保 護と司法の役割」ジュリスト 1270号(2004 年)80頁以下(大渕哲也),84頁(阿部一正)。

「知的財産高等裁判所設置法」(平成 16年法 律第 119号)については,司法制度改革推進 本部のHP(http://www.kantei.go.jp/jp/singi /sihou/hourei/04index.html)を参照。

4 「裁判所法等の一部を改正する法律」(平成 16 年 法 律 第 120 号 :http://www.kantei.go.

jp/jp/singi/sihou/hourei/04index.html)。 5 セ ン タ ー のHP(http://arbiter.wipo.int/

center/)を参照。そこでは調停,仲裁,簡

易仲裁,仲裁併用調停の4種類の紛争解決方 法が提供されている。対象は,必ずしも知的 財産紛争に限定されていない。簡易仲裁では,

単独仲裁人により,開始後3ヶ月で手続が終 結し,その後1ヶ月で判断が下される(簡易 仲裁規則 56条)。同センターの概要につき北 川善太郎「WIPO仲裁センターの設立とその 意義」日本国際経済法学会年報4号『多国籍 企業の法的規整』(1995年)116頁以下,同

「WIPO仲裁センターとチューリッヒ会議」

『知的財産研究所 5周年記念論文集・知的財 産の潮流』(知的財産研究所,1995年)138

頁以下。

6 花水征一「日本知的財産仲裁センター」自 由と正義 52巻9号(2001年)76頁以下,さ ら に セ ン タ ー の H P (http://www.ip-adr.

gr.jp/)を参照。1998〜 2001年度の調停・仲 裁申立事件の一覧は,木村耕太郎「〔知的財 産権紛争と仲裁②〕わが国の知的財産権紛争 に お け る 仲 裁 の 利 用 の 現 状 と 問 題 点 」 NBL756号(2003年)47頁に掲げられている。

7 紛争の対象となっているJPドメイン名に ついて,登録の移転や取消の請求があった場 合,中立公正な1名または3名から構成され るパネルにその裁定を委ねるもの。パネルは,

指名を受けた日から 14営業日以内に裁定を 下す。移転または取消の裁定が下った場合,

そのドメイン名登録者がこれを不服として裁 定の通知後 10営業日以内に管轄裁判所に出 訴した場合を除いて,その裁定結果に基づい て,申立人への登録の移転又は登録取消が行 われる。申立ての理由がないとの裁定が下っ た場合には,その登録が維持される。なお,

ドメイン名紛争の裁定はWIPO仲裁センター でも行われている(http://arbiter.wipo.int/

domains/index.htmlを参照)。

8 http://www.jcaa.or.jp/index.htmlを参照。

9 http://www.nichibenren.or.jp/jp/hp/

houritu/houritu7.htmを参照。

10 著作権法 105条ないし 111条。手続の概要 に つ きhttp://www.bunka.go.jp/1tyosaku/

frame.asp{0fl=list&id=1000002923&clc=10000 00081{9.htmlを参照。

11 能登香里「知的財産紛争における裁判外紛 争処理の実現に向けて」JCA48巻6号(2001 年)11頁。同論文は,今後の方向性として,

知的財産仲裁センターをはじめとする民間 ADR機関と判定制度との棲み分けを図ると ともに,仲裁における判定の活用など,両者 の連携を模索する必要があるという。他方に おいて,特許庁の行うサービスとしての判定 制度の必要性を疑う声もあることにつき,木 村・前掲49頁。

12 木村・前掲50頁以下。

13 菊池武「弁護士から見たこれからの日本に おける工業所有権紛争処理」法律のひろば 2000年7月号 28頁,浅井孝夫「〔知的財産権 紛 争 と 仲 裁 ① 〕 仲 裁 手 続 利 用 の 得 失 」 NBL755号(2003年)41頁。外国では,ICC が極めて詳細な仲裁判断例集を出しているが,

日本海運集会所も仲裁判断例集を精力的に公 刊している。日本知的財産仲裁センター仲裁 規則4条は,一般的に仲裁手続やその結果の

(7)

非公開を定めるが,「本センターが研究目的 などのために,当事者名,係争物の具体的内 容などを特定しない形で研究活動などにおい てこれを開示する場合,もしくは当事者から 開示することに同意を得た場合は,この限り ではない」としている。そこでの仲裁事例の いくつかは,滝井朋子「知的財産と仲裁制度」

法律のひろば 2004年4月号前掲 37頁以下に 紹介されている。また,ドメイン名紛争の裁 定については,HP上で一部の事例が公開さ れている。

14 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/

hourei/saibansyo.htmlを参照。

15 城山康文「〔知的財産権紛争と仲裁③〕知 的財産権仲裁活性化のための方向性−米国を 参考にして」NBL757号(2003年)50頁。同 論文は,これに加えて,巨額な事件では一審 限りという仲裁の特質がネックになること,

先例に関する公開情報が少なく,予測可能性 に欠けることを問題点として指摘する。

16 丹羽一彦「〔知的財産権紛争と仲裁④・完〕

知 的 財 産 紛 争 と 仲 裁 − 特 に 今 後 の 展 望 」 NBL759号(2003年)51頁以下。同じく,直 接交渉での争点絞り込みの重要性を強調する ものとして,滝井・前掲38頁。

17 但し,実際にこの規定による中止がされる ケースはまれであるという。『知的財産を巡 る国際的な紛争に関する調査研究報告書』

(2001年)3頁(小泉直樹)。なお,実用新案 法 37条・ 40条,意匠法 48条・ 52条,商標法 46条・ 56条にも特許法と同様の規定がおか れている。

18 最判平成 12年4月 11日民集 54巻4号 1368 頁。

19 本判決の理解につき小泉・前掲4頁。

20 但し,侵害訴訟についても専属管轄化を主 張する英国提案があり,これが括弧書きで残 されていた。道垣内正人「『民事及び商事に 関する裁判管轄権及び外国判決に関する条約 準備草案』を採択した 1999年 10月のヘーグ 国際私法会議特別委員会の概要º」国際商事 法務28巻4号(2000年)468頁を参照。

20a 道垣内正人「ハーグ国際私法会議『専属 的管轄合意に関する条約案』」国際商事法務 32巻9号(2004年)1169頁参照。

21 松本重敏「知的財産権と仲裁」ジュリスト 924号(1988年)57頁。

22 熊倉禎男「知的所有権と仲裁º」JCA36巻 8号(1989年)7頁,斎藤秀夫=小室直人=

西村宏一=林屋礼二編著・注解民事訴訟法

〔 第 2 版 〕Â( 第 一 法 規 , 1996 年 ) 409 頁

(河野正憲),松浦馨=青山善充編・現代仲裁 法の論点(有斐閣,1998年)113頁(上野泰 男 ), 高 田 薫 「 行 政 事 件 の 仲 裁 適 格 性¹」 JCA46巻 12号(1999年)2頁,谷口安平「ラ イセンス契約と仲裁条項」山上和則先生還暦 記念『判例ライセンス法』(発明協会,2000 年)546頁,浅井・前掲 44頁,城山・前掲 53 頁。

23 熊倉・前掲7頁。高田・前掲2頁も,前提 問題としての特許無効につき仲裁可能性を肯 定するとともに,「特許無効自体を初めから 仲裁に附することが当事者間の紛争解決に最 適であるなら,それも,同じ論理で,仲裁可 能というべきであろう」という。

24 熊倉・前掲8頁は,直裁に特許の無効を確 認するような仲裁判断は,当事者を拘束はす るが,裁判所による承認・執行を求めうるも のではない,という。

25 松本・前掲 57 頁,上野・前掲 114 頁,谷 口・前掲 545頁。河野・前掲 409頁,小島武 司・仲裁法(青林書院,2000年)98頁も同 旨か。

26 公 正 取 引 委 員 会 , 平 成 11 年 7 月 30 日

(http://hrsk.jftc.go.jp/dk/View_HTML.asp)。 27 浅井・前掲46頁。

28 米国特許法 294条は,特許の有効性や侵害 をめぐる紛争につき,広範囲に仲裁可能性を 認めている。仲裁人による裁定は,特許商標 庁長官に通知されることによって効力を生じ,

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米国法の展開過程につき澤井啓「アメリカ仲 裁協会の歴史−知的所有権紛争の仲裁を巡っ て」『小野昌延先生古希記念論文集 知的財 産法の系譜』(青林書院,2002年)1049頁以 下。

参照

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