論
公
説害 紛 争 の 司 法 的 解 決 と 公 害 紛 争 処 理 制 度 に よ る 解 決
淡 路 剛 久
第 一 章 序
説 第 二 章 公 害 紛 争の 権 利 を基 礎 と し ない 解 決 と権 利 を 基礎 と す る解 決 第 三 章 公 害 紛 争と 公 害 紛争 処 理 制 度 第 四 章 結
語
第 一 章 序
説
⑴ わ が国 に は
︑ 公 害紛 争 を 解 決
・ 処 理 す る 機 関 と し て
︑ 裁 判 制 度 と は 別 に
︑ 公 害 紛 争 処 理 制 度︵ 中 央 に 公 害 等 調 整 委員 会
︑ 地 方に 都 道 府県 公 害 審 査 会︶ が あ る
︒ こ の 制 度 は
︑ 近 年
︑ 公 害 事 件 の み な ら ず
︑ 交 通 事 故 事 件
︑ 製 造 物 責 任 事 件
︑契 約 に 起 因 する 消 費 者 被害 事 件 な ど 多く の 領1
域 にお い て そ の 役割 が 期 待 され て い る 裁 判外 紛 争 処 理制 度
︵ AD R
︑AlternativeDisputeResolution
の︶ 一 つ で あ2
り︑ そ の 中 でも も っ と も 重要 な も の の一 つ と い え よう
︒ も っ と も︑ A D R と いう と
︑ き わめ て 新 し い 現代 的 な 制 度の よ う に も 聞こ え る が
︑公 害 紛 争 の 裁判 外 解 決 の歴 史
は 古 い
︒ 公害 紛 争 処 理 制度 が 設 け られ た の は 一 九七
〇 年 で あり
︑ そ こ で 用い ら れ て いる 紛 争 解 決 方式 の 一 つ とし て の あ っ せ ん︵ 制 度 の発 足 時 には
﹁ 和 解 の 仲 介﹂ と 呼 ば れ た が
︑ そ の 後
︑ あ っ せ ん
﹂に 代 わ っ た
︶ や 調 停 な ど は
︑ さ ら に 遡 れ ば
︑ 実は
︑ わ が 国 にお い て 伝 統的 に 用 い ら れ︑ 日 本 的 紛 争 解 決 方 式 な ど と も 呼 ば れ た
︵川
島3
説
︶ い わ ゆ る 調 停 的 解 決 方 式︵ あ ら かじ め 存 在 す る 形 式 的・ 合 理 的 基 準 に 従 っ た 裁 判 に 対 置 さ れ た
︑ 裁 定 者 の 被 裁 定 者 に 対 す る あ る 種 の 権 威 と 若干 の 恩 恵 の付 与 お よび 被 裁 定者 の そ れに 対 す る 恭 順 に よ る 裁 判
︶ と 歴 史 的 に 深 い 関 係 が あ4
る︒ し た が っ て︑ 公 害 紛 争 処 理 制度 に よ る 紛 争解 決 方 式 の現 代 的 機 能 を検 討 す る 場合 に は
︑ 伝 統的 紛 争 解 決方 式 と の 関 係を 一 つ の 視点 と し て 据 え てお く 必 要 が ある
︒ 他 方
︑ 裁判 と の 関 係 を︑ も う 一 つの 視 点 と し ても っ て お く必 要 が あ る
︒公 害 紛 争 処理 法 に よ る 紛争 処 理 制 度の 設 置 後 も
︑ 公害 紛 争 は 裁 判に な る こ とが 少 な く な かっ た の で あり
︑ と り わ け︑ 四 大 公 害事 件 や そ の 後の 大 型 の 大気 汚 染 訴 訟 な ど重 大 な 公 害 事件 は ほ と んど が 裁 判 と なっ た
︒ も っと も
︑ 裁 判 とな っ た 場 合で も
︑ 判 決 によ っ て 必 ずし も 最 終 的 な 解決 と な っ た わけ で は な く︑ 裁 判 所 の 関与 に よ る 和解 や
︑ 判 決 後の 当 事 者 交渉 に よ る 和 解に よ っ て 最終 的 な 解 決 と なる こ と も 少 なく な か っ た︒ ま た
︑ 同 一の 事 件 が 公害 等 調 整 委 員会 に 係 属 した 場 合 も 多 い︒ こ れ ら の事 情 を え る と︑ 裁 判 に よ る解 決
︑ 裁 判所 の 関 与 に よる 和 解
︑ さら に 当 事 者 交渉 に よ る 和解 と
︑ 公 害 紛争 処 理 制 度に よ る 解 決 と の比 較 検 討 の 視点 が 必 要 だと
え ら れ る︒
⑵ 公 害紛 争 処 理 制 度に は
︑ 中 央に 設 置 さ れ て い る 公 害 等 調 整 委 員 会
︵重 大 事 件
︑ 広 域 処 理 事 件 お よ び 県 際 事 件 を 管 轄 する
︒ 公 害 紛争 処 理 法| 処 理 法| 三 条
︑二 四 条 一項
︶ と 都 道府 県 に 設 置 さ れ て い る 都 道 府 県 公 害 審 査 会︵ 公 害 等 調 整 委 員会 が 管 轄 する 紛 争 以外 の 紛 争事 件 を 管轄 す る
︒処 理 法 一三 条 か ら一 九 条
︑二 四 条 二 項︶ お よ び 都 道 府 県 連 合 公 害 審 査 会
︵ 処理 法 二
〇条 か ら 二三 条
︑ 二七 条 四 項︶ が あ る が
︑本 稿 で 公 害 紛 争 処 理 制 度 と し て 取 り 上 げ る の は 公 害 等 調 整 委 員 会 に よる 公 害 紛 争 の解 決 で あ る︒ 公 害 紛 争 の処 理 に と って
︑ 都 道 府 県公 害 審 査 会も ま た 重 要 な役 割 を 果 たし て
い る こ と はい う ま で も ない が
︑ そ の検 討 に は
︑ 多く の 関 係 資料 の 収 集 と 分析 が 必 要 であ る
︒ 小 論 にと ど ま る 本稿 で は
︑ そ こ まで の 作 業 を なし 得 て い ない
︒ ま た
︑ 公害 紛 争 処 理 法に よ り 制 度化 さ れ て い るも う 一 つ の制 度 と し て 公害 苦 情 処 理制 度 が あ る
︒こ れ は
︑ ここ 一
〇 年 間 ほ どの 申 立 て 件 数を み て も
︑毎 年 七 万 件 から 九 万 件 を超 え る 公 害 苦情 を 扱 っ てお り
︑ 日 常 的あ る い は 軽微 な 公 害 が 紛 争と な る の を 抑止 す る か
︑あ る い は 紛 争と な っ た もの の 解 決 に 役立 っ て い ると
え ら れ るが
︑ こ の 点に つ い て の 検 討も 本 稿 の 作 業能 力 を 超 えて い る
︒ こ こで は た だ
︑こ の 制 度 の 検討 の 重 要 性だ け を 指 摘 する に と ど めて お き た い
︒
⑶ 以 下︑ 本 稿 で は
︑ま ず
︑ 法 的な 権 利 義 務 を基 礎 と し ない 示 談
・ 和 解に よ る 解 決︑ 権 利 を 基 礎と す る 裁 判に よ る 解 決
︑ 判決 を 前 提 と する 和 解 に よる 解 決 に つ いて 述 べ
︑ つい で
︑ 公 害 紛争 処 理 法 によ る 紛 争 処 理制 度 の 察を 行 い た い と 思う
︒
1 各領 域 の裁 判外 紛 争処 理 機関 につ い ては
︑ 特 集 裁判 外 紛争 処 理機 関の 現 状 と 展 望﹂ 判 例 タ イ ムズ 七 二 八 号
︑小 島 武 司= 伊 藤 眞 編
﹃裁 判 外 紛 争処 理 法﹄ 有 斐閣
︑ 一九 九 八年
︑ 特 集 A DR の現 状 と理 論
﹂ジ ュリ ス ト一 二
〇 七号 な ど
︒裁 判 外 紛 争 処 理 の 一 般理 論 に つ い て は︑ 六 本 佳 平﹃ 法 社会 学﹄ 有 斐 閣︑ 初 版一 九八 六 年︶ 二 三三 頁以 下
︑同
﹃ 日本 の法 シ ステ ム
﹄ 放送 大学 教 育振 興 会︑ 二
〇〇
〇年
︶ 一〇 一 頁以 下︑ 和 田 仁 孝﹃ 民 事紛 争処 理 論﹄ 信 山 社︑ 一九 九 四年
︶ 一二 七頁 以 下な ど 多数 の文 献 があ る
︒ 2 柳井 貴 晴﹁ 公害 紛 争処 理 制度 の現 状 と課 題
﹂ジ ュ リス ト八 六 六号 二 九頁 以 下︑ 前 掲 注︵ 1
︶ 裁判 外 紛 争 処 理 機 関 の 現状 と 展 望
﹂判 例 タ イ ム ズ 七二 八 号三 四頁 以 下︑ 高 橋裕
﹃現 代 日本 に おけ る 調停 制度 の 機能
特 に公 害 等調 整 委 員 会 によ る 調 停 を 対 象 と し て
﹄ 東京 大 学 都 市 行 政 研究 会 研究 叢書 九
︑東 京 大学 都市 行 政研 究 会一 九 九四 年
︑小 島= 伊藤 編
・ 前掲 注
︵
︶1
﹃裁 判 外 紛 争 処 理法
﹄ 八 三 頁以 下
︵ 小池 勝 雅 筆
︑ 南 博 方= 西 村淑 子﹁ 公 害紛 争 処理 法の 現 状と 課 題﹂ ジ ュリ スト 増 刊﹃ 環 境問 題の 行 方﹄ 一 二四 頁以 下
︑六 車 明﹁ 環 境基 本法 の 下に お ける 裁判 外 紛 争 解決 手 続の 在り 方 環 境破 壊の 事 前防 止 の観 点 から の検 証
﹂ 法曹 時報 五 二巻 一 二号 一頁 以 下な ど 参照
︒ 3 この 点 に関 する 川 島武 宜 博士 の著 述 は多 数 ある
︒ たと えば
︑ 現 代日 本に お け る 紛 争 解 決﹂
﹃川 島 武 宜 著 作 集 第 三 巻﹄ 岩 波 書 店
︑一 九 八 二 年
︶五 一 頁以 下︑ 日 本 人の 法 意識
﹂﹃ 川島 武 宜著 作 集 第四 巻
﹄ 岩波 書店
︑ 一九 八 二年
︶ 二二 六頁 以 下な ど
︒
4 この 点 につ いて は
︑か つ て︑ 川島 理 論に 学 びつ つ
︑公 害紛 争 の実 態 調査 を踏 ま え︑ 実 証的 に検 討 した こ とが あ る︒ 淡路 剛 久﹁ 公 害紛 争の 解 決 方 式と 実 態﹂
﹃ 註 釈公 害 法大 系 第四 巻・ 紛 争処 理
・被 害者 救 済法
﹄ 日 本評 論社
︑ 一九 七 三年
︶一 頁 以下
︒ そこ で は︑ 一九 七
〇年 代 前半 頃ま で の 公 害紛 争 の実 態か ら
︑ 当事 者 間の 任意 的 解決
・ その 一 直接 陳 情 型
︑ 非 公 式 的 行 政 的 解 決
︑ 公 式 的 行 政 的 解 決
︑ 司 法的 解 決
︑ 当 事 者 間の 任 意的 解決
・ その 二 直接 権 利追 求 型﹂ と いっ た紛 争 解決 の タイ プを 析 出し
︑ また
︑被 害 者の 要 求の 正 当化 の仕 方 を法 的 基準 を中 心 に し て︑ 非 法型
︑ 合 法 型﹂ ま たは 依 法型
︑ 超 法 型﹂ に区 別 して
︑ 公害 紛争 の 解決 の 実態 を論 じ た︒
第 二 章 公 害 紛 争 の 権 利 を 基 礎 と し な い 解 決 と 権 利 を 基 礎 と す る 解 決
一 公 害紛 争 と 権 利 を基 礎 と し ない 示 談・ 和 解に よ る 解 決
⑴ 公 害に よ る 被 害 は︑ 明 治 時 代の 日 本 の 近 代化 に よ る 工業 化
・ 産 業 化に と も な って 発 生 し 始 めた
︒ 鉱 山 鉱害 が そ の 中 心 であ っ た が
︑ 被害 を 防 止 する た め の 効 果的 な 法 規 制は 存 在 し な かっ た
︒ し か し
︑被 害 は 確 実 に発 生 し
︑ 紛争 が 各 地 で 発生 し た が
︑裁 判 に よ る 権利 と 義 務 の関 係 と し て 解決 さ れ る こと は ま れ で あ り︑ 被 害 が 発 生す る と
︑ 加害 企 業 へ の 陳情 や 行 政 の介 入 に よ る 示談 な ど に より 被 害 者 に 対し て わ ず かの 金 銭 が 支 払 われ る か
︑ あ るい は
︑ 被 害者 が 実 力 行 使を し た 場 合に は
︑ 警 察 力の 介 入 と 被害 者 の 逮 捕 など に よ り 被害 者 の 権 利 が 抑圧 さ れ た ま ま︑ 紛 争 が 終息 さ せ ら れ るこ と が 多 かっ た
︒
⑵ 戦 前の 典 型 的 な 例は 足 尾 鉱 毒事 件 で あ5
る
︒こ の 事 件 は︑ 直 接 的 な 紛争 と し て は一 八 八
〇 年 前後 頃 か ら 一九 一 四 年 頃 ま で続 い た が
︑ 被害 者 農 民 の鉱 害 防 止 と 補償 支 払 の 要求 は 受 け 入 れら れ る こ とな く
︑ 各 被 害地 域 の 地 方行 政 が 仲 裁 者 とし て 間 に 入 って 成 立 し た被 害 者 に 対 する 若 干 の 金銭 の 支 払 い を内 容 と す る示 談
︑ 直 接 請願 行 動 を して 官 権 と 衝 突 した 被 害 者 に 対す る 刑 事 訴 追 事 件
︑ そ う し て
︑ 松 木 村
︵ 足 尾 の 上 流 の 谷 に あ っ た 村 と︶ 谷 中 村︵ 足 尾 か ら 下 の 渡 良瀬 川 の 下 流に あ っ た村
︶ と い う二 つ の 村 の消 滅 と い う 犠牲 を 払 っ て解 決 さ せ ら れた が
︑ 公 害 は終 わ ら な い ま ま
戦 後 に 至 った
︒ ま た
︑ 戦後 の 例 は 一 九七
〇 年 頃 まで の 水 俣 病 事件 で あ っ6
た︒ 水 俣 病 事 件で は
︑ 一 九五
〇 年 代 の 後半 に 被 害 が顕 在 化 し
︑ 漁 民や 水 俣 病 被 害者 と 原 因 者チ ッ ソ と の 紛争 が 始 ま った が
︑ 一 九 五九 年 に 施 行さ れ た 水 質 二法 は 水 俣 湾に 適 用 さ れ る こと な く
︑ 一 九五 九 年 に
︑熊 本 県 知 事 が水 俣 病 被 害者 ら の 救 済 の訴 え に よ り不 知 火 海 漁 業紛 争 調 停 委員 会 を 通 し て 調停 に 乗 り 出 して 見 舞 金 契約 が 結 ば れ た︒ し か し
︑そ の 内 容 は 後に 裁 判 所 によ っ て
︑ 民 法九
〇 条 の 公序 良 俗 に 反 し て無 効 と 判 断 され る よ う な一 方 的 に 加 害者 に 有 利 なも の で あ っ た︒ ま た
︑ 一九 七
〇 年 に は水 俣 病 補 償処 理 委 員 会
︵当 時 の 厚生 大 臣 によ っ て 設 置さ れ た アド
・ ホ ック な 紛 争 処 理 機 関︶ に よ る あ っ せ ん に よ り 補 償 が 行 わ れ7
た が
︑ そ れ は 被 害者 の 権 利 を 基礎 と し な い低 額 補 償
後 に 判 決 によ っ て 認 め られ た 賠 償 額の お お よ そ 三分 の 一
で あ り
︑ 結 局 紛争 は そ の 後 の裁 判 に よ る決 着 を 待 た なけ れ ば な らな か っ た
︒
⑶ 以 上の よ う な 被 害者 の 法 的 な権 利 を 前 提 とし な い 紛 争解 決
︵ 非 法 型﹂ の 解 決
︶ の 状 況 は
︑ 裁 判 と な っ た 少 数 の 公 害 紛 争︵ そ の 代表 的 な 例 が 明 治 期 か ら 大 正 の 中 頃 ま で 訴 訟 で 争 わ れ た 大 阪 ア ル カ リ 事 件 で あ る
︒ こ の 事 件 は︑ 大 阪 控 訴 院 で 原 告
・ 農 民 側 が 勝 訴 し
︑企 業 側 が 大 審 院 に 上 告 し︑ 大 審 院 大 正 五 年 一 二 月 二 二 日 判8
決 に よ っ て 破 棄
︑ 差 し 戻 さ れ た が
︑ 大阪 控 訴 院 で再 び 原 告・ 農 民 側が 勝 訴 して 終 了 した
︒ 当 時︑ 公 害 問題 が こ のよ う な 権利 に 基 づ く 集 団 訴 訟 と し て︑ し か も 長 期間 か け て 争わ れ た 例は 珍 し9
い︶ を 除 く と︑ 戦 前 か ら 戦後 の 一 九 六〇 年 代 か ら 一 九 七
〇 年 代 の 始 め 頃 ま で︑ 基 本 的 に 続 い たと い え10
る
︒
5 足尾 鉱 毒事 件に つ いて は
︑多 数の 文 献が あ るが
︑ 内水 護編
﹃ 資料 足 尾鉱 毒 事 件﹄ 亜 紀 書 房︑ 一 九 七 一 年︶ が
︑紛 争 と 示 談 等 に関 わ る 多 数 の 資 料を 掲 載し てい る
︒ 6 水俣 病 事件 につ い ても
︑ 文献 は多 数 ある が
︑水 俣 病被 害者
・ 弁護 団 全国 連絡 会 議編= 清水 誠・ 宮 本憲 一
・淡 路 剛久 監修
﹃ 水俣 病 裁判 全史
﹄ 第 一 巻| 第 五巻
︵日 本 評論 社
︑一 九九 八 年| 二
〇〇 一 年︶ が膨 大 な関 係 資料 を整 理
︑収 録 して いる
︒
7 かつ て
︑淡 路﹁ 水 俣病 補 償問 題の 一 視点
﹂ ジュ リ スト 四五 三 号七 三 頁以 下に お いて
︑ この 補償 処 理委 員 会方 式 の特 徴と 問 題点 を 指摘 した
︒ 8 民録 二 二輯 二四 七 四頁
︒ 9 わた く しは
︑か つ て︑ 注
︵4
︶文 献 の中 で
︑公 害 問題 が訴 訟 にな る プロ セス と して
︑ 第一 に︑ 被 害者 が 公害 問 題の 解決 を 地域 の 支配 構造 に の っ た形 で 有力 な第 三 者に 預 け︑ この 第 三者 が 裁判 へ のチ ャン ネ ルを 有 して いる な どし て 訴訟 にな る 場合
︑ 第二 に
︑第 一と は 逆に
︑ 被害 者が 自 己 の 要求 が 加害 者に よ って 認 めら れな い 場合 に
︑そ の 要求 を追 求 する 最 も中 心的 方 法と し て裁 判を え︑ こ れに 訴 える 場合
︵ ここ で は要 求は 権 利 と して 意 識さ れ︑ 裁 判は 自 己の 権利 を 追求 す る第 一 次的 な場 と して 位 置づ けら れ る
︑ 第三 に
︑ 第一 か ら 第 二 へ の 移 行 過程 と も 見 ら れ る︵ 近 代 的 な権 利 意識 の学 習 過程 と もい える
︶ もの で
︑自 己 の要 求を 満 たさ れ るべ き他 の 手段
・ 方法 を失 っ た被 害 者が 最 後の より 所 とし て 裁判 に訴 え る 場 合︑ の 三つ があ る とし
︑ 大阪 アル カ リ事 件 は︑ 近 江の 豪商 外 村与 左 衛門 が営 む
﹁外 与
﹂の 土地 部 から 土 地を 賃 借し てい た 小作 人 が大 阪ア ル カ リ 会社 の 亜硫 酸ガ ス によ っ て壊 滅的 な 被害 を 受け
︑ 地主 の外 村 与左 衛 門が これ ら 小作 人 を全 面的 に 助け て 訴訟 に 持ち 込ん だ もの だ とし て︑ 第 一 の タイ プ であ ると 述 べた
︒ 本事 件に つ いて は
︑川 井 健﹃ 民法 判 例と 時 代思 潮﹄ 日 本 評 論 社
︑一 九 八 一 年︶ 一 九 三 頁 以 下が
︑ 判 決と そ の 時 代 思 潮 を詳 細 に記 述し て いる が
︑訴 訟と な った き っか と けと して
︑ 外村 氏 の働 きか け の可 能 性の ほか
︑ 小作 人 の働 き かけ によ る 訴訟 と いう こと も え られ な くは ない
︑ とさ れ てい る︵ 同 書二 三 七頁
︒ 10 公害 紛 争の 実態 調 査に も とづ き︑ 淡 路・ 前 掲注
︵
︶4 文献 で 述べ た
︒な お︑ こ の研 究 につ いて は
︑六 本 佳平
﹃ 法社 会学 入 門 テュ トリ ア ル 一 八講
﹄ 有斐 閣
︑一 九 九一 年
︶一 四五 頁 以下 参 照︒
二 権 利を 基 礎 と す る公 害 裁 判
⑴ 一 九六
〇 年 代 以 降︑ 公 害 紛 争は 法 律 的 な 権利 と 義 務 の 争 い の 問 題 と し て 裁 判 上 解 決
︵ 合 法 型
﹂ あ る い は﹁ 依 法 型
﹂の 解 決
︶ され る こ と が 多く な っ た
︒そ の よ う な き っ か け を つ く り
︑ 日 本 の 公 害 の 歴 史 を 大 き く 転 換 さ せ る こ と に な っ たの は 四 大 公 害訴 訟 で あ る︒ 四 大 公 害 訴訟 の 経 緯 につ い て は
︑ かつ て 述 べ たこ と が あ11
る が︑ は じ め に︑ 新 潟 水 俣 病 被害 者 が 弁 護 士の 献 身 的 な努 力 に よ り 損害 賠 償 訴 訟を 提 起 す る こと を 決 意 し︑ つ い で
︑ 新潟 水 俣 病 の被 害 者
・ 弁 護 団と 交 流 し た 四日 市 公 害 の被 害 者 が 訴 訟を 提 起 し
︑さ ら に イ タ イイ タ イ 病 被害 者
︑ そ う して 最 後 に 熊本 水 俣 病 の 被 害者 が
︑ 損 害 賠 償 を 求 め て 訴 訟 を 提 起 し た
︒ こ れ ら の 訴 訟 は
︑ い ず れ も 被 害 者 の 勝 訴︵ 認 容 額 か ら は 一 部 勝 訴
︶ に終 わ っ た
︒ すな わ ち
︑ イタ イ イ タ イ 病事 件 の 一 審と し て 富 山 地裁 昭 和 四 六 年 六 月 二
〇 日 判12
決
︑ 二 審 と し て
名 古 屋 高 判金 沢 支 部 昭 和四 七 年 八 月九 日 判13
決
︑ 新潟 水 俣 病 事件 と し て 新 潟地 裁 昭 和 四六 年 九 月 二 九日
判14
決
︑ 四日 市 公 害 事 件 につ き 津 地 裁 四日 市 支 部 昭和 四 七 年 七 月二 四 日 判15
決︑ 熊 本 水 俣 病事 件 に つ き熊 本 地 裁 昭 和四 八 年 三 月二
〇 日 判16
決 が いず れ も
︑ 企 業の 責 任 を 認め た
︒ 法 理 論 とし て は
︑ 疫 学的 因 果 関 係や 立 証 責 任 の 一 部 転 換
︵ 間 接 反 証 論
︶な ど に よ る 因 果 関 係 論
︑ 研 究 調 査 義 務 を 前 提 と す る高 度 な 予 見 義務 と 結 果 回避 義 務 に よ って 構 成 さ れる 過 失 論
︑ 複数 の 企 業 に連 帯 責 任 を 課す 共 同 不 法行 為 論
︵ 強 い関 連 共 同性 と 弱 い関 連 共 同性
︶ が
︑ 裁判 所 に よ っ て認 め ら れ17
た︒
⑵ 一 九七
〇 年 代 の 前半 に 判 決 に至 っ た 四 大 公害 訴 訟 は
︑被 害 者 側 か らい え ば 不 十分 で あ っ た かも 知 れ な いが
︑ と も か く 被害 者 側 の 明 白な 勝 訴 判 決に よ っ て 終 了し た
︒ そ うし て
︑ こ の 頃か ら
︑ 公 害事 件 に つ い ては
︑ 損 害 賠償 請 求 に つ い ても
︑ 差 止 請 求に つ い て も︑ 紛 争 が 裁 判所 に 持 ち 込ま れ る こ と はま れ で な くな
っ18
た
︒ 大 型 の 公害 訴 訟 と し て︑ た と え ば公 共 性 を 問 う訴 訟 と し て︑ 大 阪 国 際 空港 公 害 事 件︑ 新 幹 線 公 害事 件 が 訴 訟と な り
︑ そ の 後 も
︑ 各 地 で 公 共 事 業 に 関 わ る 訴 訟 が 提 起 さ れ た
︒ ま た
︑ 四 日 市 公 害 判 決 後
︑ 千 葉
︑ 西 淀 川︑ 川 崎︑ 倉 敷
︑ 尼 崎
︑名 古 屋 南 部
︑東 京 な ど 各地 の 大 気 汚 染地 域 で
︑ 公害 訴 訟 が 提 起さ れ た
︒ さら に
︑ 熊 本 水俣 病
︑ 新 潟水 俣 病 事 件 の 被害 者 は︑ 熊 本
︵ 二 次
︑三 次 訴 訟
︑新 潟︵ 二 次 訴 訟
︶ の ほ か
︑ 東 京︑ 京 都
︑ 大 阪
︵関 西 訴 訟 と 呼 ば れ る︶ で 訴 訟 を 提 起し た
︒ こ う し て︑ 四 大 公 害 訴訟 後
︑ お おむ ね 一 九 八
〇年 代 か ら 九〇 年 代 に か けて 大 型 の 公害 訴 訟 が 争 われ
︑ 二
〇 世紀 末 ま で に そ のほ と ん ど が 判決 を 言 い 渡さ れ
︑ そ の 後和 解 を し て終 了 し た
︒ 大型 の 公 害 訴訟 で
︑ 現 在 なお 争 わ れ てい る の は
︑ 水 俣病 裁 判 と し ては 関 西 訴 訟︵ 最 高 裁判 決 待 ち
︑ 大 気汚 染 裁 判 とし て は 東 京 裁判
︵ 道 路 管 理 者 の ほ か に︑ 自 動 車 メ ー カ ー を 訴 え て い る
︶ が あ り
︑ 東 京 裁 判 は
︑ 国 と 自 動 車 メ ー カ ー に 対 す る 請 求 の 部 分 が
︑ 現 在 高 裁 に 継 続 中 で あ る
︒
11 淡路
﹁ 公害
・環 境 問題 と 弁護 士の 活 動﹂ 法 学セ ミ ナー 増刊
﹃ 現代 の 弁護 士 司法 編
﹄一 一二 頁 以下
︑ 淡路
・ 前掲 注︵ 4
︶二 九 頁以 下︒ 12 判時 六 三五 号一 七 頁︒ 13 判時 六 七四 号二 五 頁︒ 14 判時 六 四二 号九 六 頁︒ 15 判時 六 七二 号三
〇 頁︒ 16 判時 六 九六 号一 五 頁︒ 17 四大 公 害訴 訟に お ける 損 害賠 償理 論 につ い ては
︑ 淡路
﹃公 害 賠償 の 理論
︹増 補 版︺
﹄ 有斐 閣︑ 一 九七 八 年
︒ 18 その 主 要な もの に つい て
︑淡 路﹁ 公 害環 境 訴訟 の 課題
﹂淡 路= 寺 西 編﹃ 公害 環 境 法 理 論 の新 た な 展 開
﹄ 日本 評 論 社
︑一 九 九 七 年
︶五 三 頁 以 下 で検 討 した
︒
三 公 害判 決 後 の 和 解
⑴ 公 害訴 訟 の 提 起 が珍 し い こ とで な く
︑ い わば ふ つ う のこ と に な っ た一 九 八
〇 年代 以 降
︑ 大 型の 公 害 訴 訟が
︑ 裁 判 所 に よっ て 判 決 が 言い 渡 さ れ た後 に 和 解 に よっ て 終 了 する 例 が き わ めて 多 く み られ る よ う に な っ19
た
︒ こ の点 に つ い て は かつ て 述 べ た こと が あ る20
が︑ 得 ら れ た 判決 と 比 較 した 場 合 の そ のタ イ プ に は︑ つ ぎ の 四 つが あ る よ うに 思 わ れ る
︒ すな わ ち
︑ 第 一 は
︑和 解 前 の 判 決で 実 質 的 に原 告 の 請 求 が認 め ら れ なか っ た た め に︑ 原 告 が 上訴 し
︑ 訴 訟 を続 け な が ら和 解 を 申 し 出 て︑ 実 質 的 に 請求 の 内 容 が原 告 の 請 求 との 比 較 に おい て 不 満 足 にし か 認 め られ な か っ た 場合 で あ る
︒ 第 二 は
︑和 解 前 の 判 決で 実 質 的 に原 告 の 請 求 が認 め ら れ なか っ た た め に︑ 原 告 が 上訴 あ る い は 訴訟 を 続 け なが ら 和 解 を 申 し出 て
︑ 実 質 的に 請 求 の 内容 を 実 現 し た場 合 で あ る︒ 第 三 は
︑判 決 で 原 告 の請 求 が 実 質的 に 一 応 認 めら れ た が 上訴 し
︑ あ る いは 相 手 方 から 上 訴 さ れ
︑結 局 和 解 して 判 決 内 容 を おお む ね 確 定 させ た 場 合 であ る
︒
第 四 は
︑判 決 に よ り 原告 の 請 求 が実 質 的 に 認 めら れ た が
︑判 決 後 に 和 解し て 判 決 内容 よ り も 有 利に 原 告 の 請求 を 認 め さ せ た場 合 で あ る
︒ な ぜ
︑ 判決 に よ っ て 事件 が 最 終 的に 終 了 せ ず
︑和 解 に よ って 終 了 し た のだ ろ う か
︒一 般 的 に 言 えば
︑ 現 代 の法 化 社 会 の 状 況の 中 で は
︑ 訴訟 と な っ た紛 争 は 判 決 によ っ て 終 了す る こ と も あれ ば 和 解 によ っ て 終 了 する こ と も ある の だ か21
ら
︑ 最近 の 大 型 の 公害 訴 訟 が 和解 に よ っ て 最終 的 に 終 了し た こ と は
︑当 事 者 の 合理 的 行 動 が 和解 に よ る 解決 を 選 択 し た 結果 だ と い え よう
︒ た だ
︑そ れ な ら ば
︑そ れ ぞ れ の場 合 に
︑ 当 事者 を し て 和解 で 終 了 さ せた 合 理 的 選択 の 要 因 が 何 であ っ た か が 問わ れ て よ いで あ ろ う
︒ お そ ら く︑ 大 型 の 公 害事 件 で は
︑訴 訟 の 長 期 化と 原 告 の 高齢 化 が
︑ 原 告側 で 和 解 によ る 解 決 を 選ば せ た 共 通の 要 因 と な っ てい る と 思 わ れ22
る が
︑ さ らに 加 え て
︑ 個別 的 要 因 を指 摘 す る こ とが で き よ う︒ 以 下
︑ 若 干の 例 を 試 論的 に 提 示 し て おこ う
︒
⑵ 第 一ま た は 第 二 のタ イ プ の 例と し て
︑ 土 呂久 公 害 訴 訟を あ げ る こ とが で き る
︒こ の 事 件 は
︑一 審 判 決
|宮 崎 地 裁 延 岡 支部 昭 和 五 九 年三 月 二 八 日 判23
決 が 認 容 した 賠 償 額 を︑ 二 審 判 決
|福 岡 高 裁 宮崎 支 部 昭 和 六三 年 九 月 三〇 日 判24
決 が 大 幅に 減 額 し た のに 対 し
︑ 最高 裁 に お い て こ れ を 是 正 さ せ る︵ 破 棄 さ せ る
︶ こ と な く
︑ 和 解 に よ っ て 終 了 し た こ と や
︑操 業 す る こ との な か っ た鉱 業 権 者 が 過去 の 損 害 につ い て 責 任 を負 う か ど うか が 争 わ れ
︑一 審 判 決
︑二 審 判 決 が こ れを 肯 定 し た のに 対 し て
︑そ の よ う な 法理 論 を 最 高裁 で 確 定 さ せる こ と な く︑ 和 解 に よ って 終 了 し た点 を と ら え れ ば
︑第 一 の タ イ プ と み る こ と が で き る︒ し か し
︑ 一 審 判 決 後
︑ 原 告 は 認 容 賠 償 額 に つ き 仮 執 行 を し て お り
︑ 二 審 判決 が 賠 償 額 を減 額 し た のを
︑ 上 告 中 の最 高 裁 で 和解 し
︑ 仮 執 行に よ る 返 還額 を 見 舞 金 とし て 返 還 しな い よ う に し た点 で は
︑ 第 二の タ イ プ とみ る こ と も でき よ う
︒ 本 件 訴 訟が 和 解 に よ り終 了 し た 理 由 の 最 大 の 要 因 は
︑ 訴 訟 の 長 期 化
︵ 提 訴 か ら 和 解 に よ る 解 決 ま で に 一 五 年 か か っ
て い る︶ と 被 害 者・ 原 告 の 死 亡︵ 原 告 患 者 四 一 人 の う ち 二 三 人 が 死 亡
︶ あ る い は 老 齢 化 で あ25
る︒ し か し
︑ 法 律 的 論 点 に つ い て
︑最 高 裁 に お ける 勝 訴 の 可能 性 の 程 度 が 慮 さ れ たか も し れ な い︒ 難 し い 論点 を 含 ん で いた か ら で あ26
る
︒ 第 二 の タイ プ の 和 解 の例 と し て は︑ た と え ば
︑大 阪 国 際 空港 公 害 事 件 に関 す る 最 高裁 判 決 後 の 和解 を あ げ るこ と が で き る
︒こ の 訴 訟 は
︑損 害 賠 償 請求 に つ い て は︑ 原 審 判 決| 大 阪 高 裁 昭和 五
〇 年 一一 月 二 七 日 判27
決 の 主 要 な部 分 が 最 高 裁 判決
| 最 判 昭 和五 六 年 一 二月 一 六28
日 に よっ て 維 持 され た が
︑ 差 止請 求
︵ 夜九 時 以 降の 夜 間 飛 行 の 禁 止︶ に つ い て は
︑ 請求 が 却 下 さ れて お り
︑ 和解 に よ る 解 決は 法 的 な 権利 に 基 づ く 解決 の 面 か らは 難 し い 状 況が あ っ た よう に 思 わ れ る
︒し か し
︑ 訴 訟外 の 運 動 を含 め た 広 範 な空 港 騒 音 に対 す る 反 公 害運 動 に よ り︑ す で に そ れ以 前 に 夜 間飛 行 の 禁 止 が 実施 さ れ て お り︵ 国 内線 に つ い ては 一 九 七五 年 一 二月 か ら
︑国 際 線 につ い て は 一 九 七 六 年 七 月
︑ 和 解 が こ の よ う な 措 置 を維 持 さ せ る こと が で き れば
︑ 訴 訟 と して の 紛 争 は終 了 す る 要 素が あ っ た とい え る
︒ 実 際に
︑ 夜 間 飛行 の 禁 止 は す でに 社 会 的 に 定着 し て お り︑ 空 港 の 運 営も そ の 前 提で 実 施 さ れ てい た か ら
︑最 高 裁 判 決 を契 機 に そ れを 覆 す こ と は 困難 で あ っ た と え ら れ るし
︑ さ ら に いえ ば
︑ こ の点 に つ い て 空港 管 理 者 が抱 え て い た 問題 は
︑ 関 西新 国 際 空 港 の 開港 と 大 阪 国 際空 港 の 存 続で あ っ た で あろ う か ら
︑夜 間 飛 行 の 禁止 は す で に許 容 範 囲 の 中に あ っ た と え ら れ る
︒ 第 三 の タイ プ の 和 解 の例 と し て は︑ 千 葉 川 鉄 訴訟 一 審 判 決| 千 葉 地 裁 昭和 六 三 年 一一 月 一 七 日 判29
決
| 後 の 和解 を あ げ る こ とが で き る
︒ 同訴 訟 は
︑ 一審 判 決 後
︑ 和解 を 望 む 原告 側 に 対 し て︑ 被 告 企 業が こ れ に 同 意し た こ と によ り 終 了 し た が︑ 被 告 企 業 側が 和 解 に 同意 し た の は
︑地 球 環 境 保全 の 時 代 に 訴訟 を 続 け て企 業 イ メ ー ジを 悪 く す るよ り は
︑ 和 解 によ り 訴 訟 を 早期 に 終 了 させ た 方 が よ い︑ と の 企 業側 の 方 針 の 転換 が あ っ たも の と 推 測 され る
︒
⑶ と ころ で
︑ 第 二
︑第 三
︑ 第 四の タ イ プ の 和解 は
︑ 多 かれ 少 な か れ 原告 の 請 求 を満 た す も の とな っ て い るが
︑ そ の 中 で︑ 第 四 の タ イ プ の 和 解 は︑ 既 存 の 法 の 枠 を 超 え る 解 決
︵ 超 法 型
﹂ の 解 決︶ と し て
︑注 目 す べ き 特 徴 が あ
る
︒ こ の 種 の超 法 型 の 解 決は 四 大 公 害訴 訟 直 後 の 時代 に も み られ た
︒ た と えば
︑ 水 俣 病第 一 次 判 決 後の 協 定
︑ イタ イ イ タ イ 病 判決 後 の 協 定 がそ れ で あ る︒ 水 俣 病 判 決後 の 協 定 では
︑ 訴 訟 に 加わ ら な か った 被 害 者 が 公害 健 康 被 害補 償 法 上 の 患 者認 定 を さ れ た場 合 に は
︑判 決 並 の 一 時金 の 賠 償 が支 払 わ れ る こと な ど が 協定 上 明 記 さ れた
︒ イ タ イイ タ イ 病 判 決 後 の 協 定 で は
︑ 住 民 側 に 立 ち 入 り 調 査 が 約 束 さ れ
︑ 公 害 対 策 を 進 め る 上 で 大 き な 役 割 を 果 た し て き て い る
︒ 大 気 汚 染公 害 訴 訟 に おい て も
︑ 既存 の 法 の 枠 を超 え る 解 決を し た 和 解 事例 が み ら れる
︒ 一 九 七 二年 の 四 日 市判 決 後
︑ 一 九 八〇 年 代 か ら 九〇 年 代 に かけ て
︑ 千 葉
︑西 淀 川
︑ 川崎
︑ 倉 敷
︑ 尼崎
︑ 名 古 屋南 部
︑ 東 京 の各 地 の 大 気汚 染 地 域 で
︑ 大気 汚 染 源 の 差止 と 損 害 賠償 と を 求 め る大 型 の 大 気汚 染 公 害 訴 訟が 続 き
︑ 一九 八
〇 年 代 後半 に
︑ 千 葉川 鉄 公 害 訴 訟 が一 審 の 判 決 を迎 え
︑ 一 九九
〇 年 代 に 入っ て
︑ 西 淀川 公 害 訴30
訟
︑川 崎 公 害 訴31
訟
︑ 倉 敷 公 害 訴32
訟
︑ 尼 崎公 害 訴33
訟
︑ 名 古屋 南 部 公 害 訴34
訟 が
︑ 相 次い で 一 審 の 判決 を 迎 え
︑損 害 賠 償 請 求に つ い て は︑ い お う 酸 化物 を 中 心 とし た 過 去 の 大 気汚 染 に よ る 健康 被 害 が 認定 さ れ
︑ い ずれ も 原 告 患者 側 が 勝 訴 した
︒ こ れ らの う ち
︑ 尼 崎訴 訟 は
︑ 被告 企 業 に 対 し ては 判 決 に 至 るこ と な く
︑和 解 に よ り 解決 し た が
︑内 容 は 勝 訴 判決 と 同 じ であ っ た
︒ と こ ろ で︑ こ れ ら の 大気 汚 染 訴 訟事 件 で は
︑ 原告 の 勝 訴 判決 を 踏 ま え て︑ 原 告 と 被告 企 業 と の 間で 和 解 が 成立 し た が
︑ 注 目さ れ る の は
︑西 淀 川 公 害訴 訟 以 後 の 大型 の 公 害 訴訟 後 の 和 解 にお い て は
︑患 者 原 告 に 対し て 損 害 賠償 が 支 払 わ れ たほ か
︑ 公 害 によ っ て 環 境が 破 壊 さ れ
︑あ る い は 悪化 し た 地 域 の環 境 再 生 をめ ざ し て 和 解金 が 支 払 われ て い る こ と で あ35
る
︒ 原 告 の請 求 が 判 決以 上 に 認 め られ た 点 で 原告 に 有 利 な 和解 で あ り
︑そ の 内 容 が 既存 の 法 の 枠組 み を 前 提 に して は 得 に く いも の で あ る点 で
﹁ 超 法 型﹂ の 解 決 であ り
︑ 環 境 の回 復
・ 再 生を め ざ す も ので あ る 点 で社 会 的 に 大 き な意 義 の あ る 和解 で あ っ た︒ こ れ に 対 して
︑ 道 路 管理 者 と の 和36
解に つ い て は︑ 評 価 が 分 かれ よ う
︒ とい う