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法政大学多摩キャンパス気象観測年報 2014年

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法政大学多摩キャンパス気象観測年報 2014年

著者 鞠子 茂

出版者 法政大学多摩研究報告編集委員会

雑誌名 法政大学多摩研究報告

巻 30

ページ 23‑28

発行年 2015‑05‑30

URL http://doi.org/10.15002/00012138

(2)

Ⅰ はじめに

 法政大学多摩キャンパスでは、2013 年 12 月 9 日に 簡易気象観測システム 2 基を設置して気象観測を開始 している。設置場所は社会学部棟と現代福祉学部棟 との間にある芝地と野球場の西側にある芝地である。

気象観測システムは一時間おきに 7 つの気象要素を観 測し、ロガーに記録するようになっている。社会学 部棟観測点のシステムに関しては一部欠測があるも のの、ほぼ一年余りにわたってデータを記録し続け ている。本報告では、観測された気象データと機器 の性能について簡単にチェックした結果を報告する。

Ⅱ 気象観測システムのスペックと設置場所の 選定

 設置した気象観測システムはWeather Hawk社製の WeatherHawk 232 Direct Connect Weather Stationである。

これを 2 基購入し、多摩キャンパス内の 2 か所に設 置した(写真 1)。このシステムはDC12V電源で駆動 するが、組み込まれた太陽電池パネルと蓄電池により 電力が供給されている(蓄電池は 4 日間分の電力を蓄 電)。使用温度環境は-25 ~+50℃であり、落雷から観 測機器を守るためにアースが取り付けられている。

 観測システムの構成は本体部と電源部(太陽パネル

+蓄電池)からなり、それらは三脚に取り付けられ ている(写真 2)。本体部には気象観測センサーとデー タロガーが組み込まれている。センサー類のスペッ クは表 1 に示されている。データロガーが記録でき るデータ点数は 32,000 である。温度、相対湿度、気圧、

風速、風向、雨量、日射量の計 7 項目の気象要素を 1 時間ごとに観測し、データロガーに記録している。

データロガーからのデータの回収にはマルチステー ション対応ソフトウエアPC200W(フリーソフト)を 使用する。

法政大学多摩キャンパス気象観測年報 2014 年

鞠子 茂

1)

Meteorological observations at Hosei University’s Tama campus Annual report 2014

Shigeru MARIKO

1)法政大学社会学部

写真 1 多摩キャンパス内に設置された気象観測シス テム

左:社会学部棟観測点     右:野球場観測点

(3)

鞠子 茂 24

 気象観測システムを設置する場所の選定に当たっ ては次の 4 点について留意した。

 1)芝生が張られていること

 2 )東西に細長い多摩キャンパスの特性を考慮して 東端と西端に近い位置であること

 3)できる限り平坦で開けた場所であること  4 )周辺の建造物や樹木の高さの 10 倍程度の距離

が保てること

 残念ながら、3)と 4)を十分に満たす場所は見当 たらず、利用上の制限もあったため、最終的には次 の 2 か所に設置することを決定した。

 ● 社会学部棟と現代福祉学部棟との間にある芝地

(社会学部棟観測点)

 ●野球場の西側にある芝地(野球場観測点)

 気象観測システムの設置は 2013 年 12 月 9 日に納入 業者によって行われたのち、2015 年 5 月現在まで気 象観測を継続中である。ただし、社会学部棟観測点 では、2014 年 2 月 25 日 4:00:01 より同年 3 月 6 日 17:00:00 までの約 10 日間は機器の不具合で観測が なされなかった。     

写真2 気象観測システムの構成

上部の三角形をしたものが本体部であり,ここにすべての センサー類とロガーが組み込まれているが,温度・湿度セ ンサー,気圧センサーは見えていない

表 1 気象観測センサーの種類とスペック

センサー 測定範囲 測定誤差 応答性・感度 使用環境

温度センサー

(サーミスタ)

湿度センサー

(バルク高分子)

気圧センサー

(圧電トランスデューサ)

3 杯式風速センサー

矢羽型風向センサー

雨量センサー

(転倒ます式)

日射センサー

(シリコン製)

-40 ~ 65℃

10 ~ 90%

(相対湿度)

150 ~ 1150 hPa

0.78 ~ 50 m s-1

0 ~ 360℃(353

~ 360 open)

0 ~ 2000 W m-2

±0.5℃

±3%(気温 25℃、相対 湿度 10 ~ 90%時)

±5%(気温 25℃、相対 湿度 90 ~ 100%時)

読み値の 1.5%(気温 0

~ 85℃時)

1 転倒当たり 1 mm(分 解能)

±2.5%

2 分

0.1 mSec

0.78 m s-1

(起動風速)

1 m s-1

(感度)

開口部 50 cm2

300 ~ 1100 nm

(スペクトル感度)

0 ~ 100%

(相対湿度)

0 ~ 50℃

-40 ~ 125℃

-55 ~ 60℃

-55 ~ 60℃

-40 ~ 55℃

(4)

Ⅲ 観測結果

各気象要素の季節変化

 図 1 は、1 時間ごとに記録された 7 つの気象要素の うち風向を除いた気象要素について、1 日単位で平均 もしくは積算した値をプロットして季節変化を示し たものである。一年間の季節変化は観測点間で同じ パターンを示していたが、後述するように、細かく 見ていくと観測点間で若干の差異のあることが明ら かとなった。

 日積算日射量は 4 月から 8 月までの長い期間にか

けてなだらかなピークが見られたのに対して、日平 均気温のピークは日射量のピークの後半の 7 月後半 から~ 8 月前半に見られた。日平均気圧は 5 ~ 9 月 の間に低く、10 月から翌年の 4 月まで高い傾向があっ た。これらの気象要素に比べると日積算降水量、日 平均相対湿度、日平均風速の季節変化はそれほど明 瞭ではなかった。ただ、日積算降水量が多い日は 6 月と 10 月に集中し、日平均相対湿度は夏に高く、冬 に低い傾向が見られた。日平均風速は観測点によっ て異なるが、野球場観測点では 3 ~ 5 月の春に高い 日平均風速が観察された。     

0 100 200 300 -10 0 10 20 30 40

0 20 40 60 80 100

960 990 1020 0 2000 4000 6000 8000

0 2000 4000 6000 8000

0 100 200 300 -10 0 10 20 30 40

0 20 40 60 80 100

960 990 1020 0 1 2 3

0 1 2 3

社会学部棟観測点 野球場観測点

日積算日射量(Wm−2 日積算日射量(Wm−2

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

日平均気温(℃) 日平均気温(℃)

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

日降水量(mm) 日降水量(mm)

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

日平均相対温度(%) 日平均相対温度(%)

12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

日平均風速(ms−1 日平均風速(ms−1

12月 1月 2月 3月 4月4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

日平均気圧(hPa) 日平均気圧(hPa)

12月 1月 2月 3月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月

図1 2014 年(前後1カ月を含む)における日積算日射量,日積算降水量,日平均気温,日平均相対湿度,日平均 風速,日平均気圧の季節変化

左の列:社会学部棟観測点       右の列:野球場観測点

(5)

鞠子 茂 26

八王子アメダスとの比較

 図 1 に示したデータから、日射量、降水量、気温、

相対湿度、風速、気圧について年積算値または平均値、

極大値、極小値をまとめたのが表 2 である。社会学 部棟観測点と野球場観測点で平均した場合の年平均 気温は 13.8℃、年平均湿度は 72.9%、年積算日射量 は 1,076,725 W m-2、年降水量は 2,092 mm、年平均風 速は 0.25 m s-1、年平均気圧は 993 hPaであった。多 摩キャンパスより標高が 100 mほど低い八王子のア メダス観測点では、年平均気温が 14.5℃、年降水量 が 1,798 mm、年平均風速は 2.7 m s-1となっている(気 象庁HP)。

 標高差による気温暖熱減率を考慮すれば、多摩キャ ンパスと八王子の年平均気温の差はおおよそ説明で きる。なお、社会学部棟観測点では欠測期間があるも のの 10 日程度の短い期間であること、野球場観測点 のデータで多少は補われていることを考え合わせる とこれが年間の平均値に与える影響は小さいと考え られる。鞠子ら(2013)が指摘しているように、多摩 キャンパスでは森林による気象緩和作用が機能して いる可能性がある(前崎 1976;川島 1986)。八王子 で観測された年最高気温は 37.7℃であるが、多摩キャ ンパスではそれよりも 2.5℃低い 35.1℃(1 時間ごと の平均値)であった。これより、多摩キャンパスは森 林の蒸発散作用により最高気温が市街地よりも低く

抑えられていることが明らかとなった。しかし、年 最低気温には顕著な差異はなかった。年降水量は 300 mmほど八王子より多くなっており、多摩キャンパス は雨の多い地域に属すると考えられる。これは八王 子市街よりも山間部に近いということに起因するも のと考えられる。

 多摩キャンパスで観測された年平均風速は八王子 よりも極端に低いものだった。これも森林の気象緩 和作用が働いているためと見ることもできるが、そ の他の原因についても検討すべきかもしれない。著 者は多摩キャンパスに設置した風速センサーが気象 庁の風速センサーよりも性能面で劣っていることも 原因の一つではないかとみており、そのための解析 を今後進めていくつもりである。たとえば、強風時 のデータのみで比較検討したり、熱線風速計を用い た観測を並列的に行って比較検討したりするべきだ と考えている。仮に、センサーの性能面での問題が 大きいとなれば、何らかの補正を考えなければなら ないであろう。

 年平均気圧は 993 hPaであった。これは海面気圧が 1013.25 hPa、多摩キャンパスの標高が 200 mとして 気圧の計算を行うと約 989 hPaであり、実測値に極め て近い。したがって、少なくとも気圧に関しては問 題なく観測が行われていると考えている。

 図 2 は一時間ごとの平均風向について頻度分布を表 表2 2014 年に多摩キャンパスで観測された日積算日射量、日積算降水量、日平均気温、日平均相対湿度、

日平均風速、日平均気圧における年積算値または平均値、極大値、極小値

観測点 統計値 日射量(Wm-2) 降水量

(mm)

気温

(℃)

相対湿度(%) 風速

(m s-1

気圧(hPa)

社会学部 年積算値 1,097,924 2,035 - - - -

年平均値 - - 14.2 67.8 0.19 993

極大値 6,857

(166)

247

(157)

30.1

(228)

100.0

(-)

1.31

(336)

1,007

(353)

極小値 14

(63)

0

(-)

-1.8

(34)

25.3

(350)

0.00

(-)

974

(190)

野球場 年積算値 1,055,527 2,149 - - - -

年平均値 - - 13.3 78.0 0.31 993

極大値 5,777

(138)

253

(157)

29.7

(217)

100.0

(-)

2.20

(222)

1,007

(353)

極小値 145

(43)

0

(-)

-2.3

(34)

35.1

(335)

0

(-)

974

(190)

注 1 )気象要素の性質によって統計値の表し方を適切に変えている.日射量と降水量は年積算値で,気温,相対湿度,風速,

気圧は年平均値で示している.

注 2 )極大値と極小値におけるカッコ内の数字は,それぞれの値が出現した日付を,1 月 1 日を“1”として数えた時の日数(12 月 31 日は “365” で表す)で表したものである.

(6)

したものである。多摩キャンパスには夏季に南から 西寄りの風が、冬期に北北東から北東よりの風が吹 いていた。これはモンスーン気候帯に属す地域では 特徴的な風向と言えるが、互いに周囲の建造物、樹木、

地形による影響を少なからず受けていることを示し ている。     

観測点間の比較による観測環境差とセンサー性 能差の検討

 2 か所に設置した気象観測システムが観測した気象 データをそれぞれx軸とy軸にプロットして相関関係 を調べることにより、センサーにおける測定精度の 差や設置場所の環境影響(環境差)の有無について

0 10 20 30 40

風向 B)野球場

0 10 20 30 40

風向 A)社会学部棟

相対頻度(%) 相対頻度(%)

N NNE NE ENE E ESE SE SSE S SSW SW WSW w WNW NW NNW N NNE NE ENE E ESE SE SSE S SSW SW WSW w WNW NW NNW

図 2 2014 年における風向の相対頻度

A) 社会学部棟観測点      B)野球場観測点

0 2000 4000 6000 8000

0 2000 4000 6000 8000

-2 A)

0 100 200 300

0 100 200 300 社会学部棟観測点の日積算降水量(mm)

B)

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40 社会学部棟観測点の日平均気温(℃)

C)

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100 社会学部棟観測点の日平均相対湿度(%)

D)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 社会学部棟観測点の日平均風速(m s-1

E)

960 990 1020

960 990 1020

社会学部棟観測点の日平均気圧(hPa)

F) 社会学部棟観測点の日積算日射量(W m

野球場観測点の日積算日射量W m-2野球場観測点の日平均気温 野球場観測点の日平均相対湿度

野球場観測点の日平均風速m s-1 野球場観測点の日平均の気圧hPa野球場観測点の日積算降水量mm

図32014 年に観測された気象データにおける観測地点間の関係 斜めに引かれた実線は 1:1 ラインを示す

       A) 日積算日射量    B)日積算降水量   C)日平均気温        D)日平均相対湿度   E)日平均風速    F)日平均気圧

(7)

鞠子 茂 28

ある程度検討することができる。一日単位でまとめ た気象データから相関関係を見たのが図 3 である(風 向については除いてある)。降水量、気温、気圧に関 しては 1:1 ラインからずれた点はほとんど見られな かった。これらの気象要素は観測点の環境による影 響を受けにくいと考えられるので、2 観測点に設置さ れたセンサー間の性能差もほとんどないと結論した。

 1:1 ラインに乗らなかったのは日射量、相対湿度、

風速であった。本気象観測システムは運用を開始し たばかりであるので、雨量センサー、温度センサー、

気圧センサーと同様に、日射センサー、湿度センサー、

風速センサーにおいても 2 観測点間で性能差がある と考えにくい。そのため、日射量、相対湿度、風速 に関しては観測点間の環境差が大きく影響している と考えられた。日積算日射量の相関をみると、比較的 低い値の時は社会学部観測点と野球場観測点でほぼ 同じ値を記録するが、1 日に 4000 W m-2以上の日射 量があると社会学部でより多くの日射が観測される ようである。日射量は太陽高度に依存するので、夏 至のころの観測が最も高い日射量を示す。おそらく、

夏至の前後 2 か月位の日射量データが両観測点間の 違いをもたらしていると推測される。実際、図 1 の 季節変化パターンはこの推測を裏付けているように 思われる。以上より、野球場観測点では春から夏に かけての時期(太陽高度が高いとき)に周囲の遮蔽 物などの影響により日射がさえぎられ、本来よりも 低い日射量を測定してしまうと結論される。湿度セ ンサーと風速センサーに見られた相関関係は、野球 場観測点でより湿度が高く、強い風が吹くという設 置場所の環境の影響を強く受けることを示している。

 以上より、2013 年の年末から開始した気象観測は 多くの気象要素で順調にモニタリングしていると考

えている。しかし、今後の継続観測に向けて検討す べき課題も見つかっている。今後、次のような課題 を克服していく必要があると考えている。

 ● 観測点間に環境差がある可能性が強いので、デー タの補正を踏まえた検討が必要である。

 ● 今後、センサー類の劣化が順次進んでいくが、そ れを踏まえた今後の維持管理について検討して いく必要がある。

 ● 気象データが有効活用されるように、生データ を無料でネット配信したり、積極的な活用法に ついてのアイデアを考える必要がある。

Ⅳ 謝辞

 多摩キャンパスに設置された気象観測システムは 法政大学教育研究用機器備品として購入されたもの である。気象観測システムの購入に際して、ご尽力 をいただいた多摩総務課の関口直樹(現:比較経済 研究所)および研究実験棟事務員の太田洋子・加藤 美代子・南亜希子の各氏に深く感謝申し上げる。

引用文献

川島茂人(1986):航空機MSSデータによる地表面 熱収支分布の評価、天気 33、333 ~ 344.

気象庁HP(2015):http://www.jma.go.jp/jma/index.html.

前崎武人(1976)森林の社会的機能とその評価、光 珠内季報 29、1-7.

鞠子 茂・小宅 駿・糸賀一平・鞠子典子(2014)法 政大学多摩キャンパスの森林における森林の気 象緩和作用~最暖月と最寒月の気温特性からの 検討~、多摩研究報告 29:1-8.

図 2 2014 年における風向の相対頻度 A) 社会学部棟観測点              B) 野球場観測点 02000400060008000 0 2000 4000 6000 8000 -2 )A) 0 100200300 0 100 200 300 社会学部棟観測点の日積算降水量(mm)B) 010203040 0 10 20 30 40 社会学部棟観測点の日平均気温(℃)C) 020406080 100 0 20 40 60 80 100 社会学部棟観測点の日平均相対湿度(%)D) 0.00.5

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