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学力再考 一学生の英語力の現状 と関連 させての一考察 一

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学力再考

一学生の英語力の現状 と関連 させての一考察 一

手 和 行

はじめに

昨今 、 「ゆ と り教 育」 とい うこ とばは子供 ‑ の詰 め込み教育 を止 めて学ぶ力 、生 きる力 を授 け よ うとす る教育 を指す よ りも学力 を衰退 させ た元凶であるかの ごとく取 り扱われ るよ うになっ た よ うであ る。 現 に安倍 前 内閣に設置 され てい た教育再生会議 の第 二次報告 (平成19年6月1

日) において 「ゆ と り教育」 の見直 しの具体策 が提言 され てい る。 そ の背景 と して 日本 の子供 達 の学力低 下‑ の危機 感 が存在 してい るこ とは 間違 いない とい え よ う。 一方 、学力低 下‑ の懸 念 に も関わ らず少子化や 大学入試 の多様化等 の 影響 もあってか大学教 育‑の進学率 が上昇 して きてい る。 大学教育 を受 け るに足 る十分 な学力 を備 えていない学生 を入学 させ た結果 、大学 の 授 業 についてい けない学生が増加 してい る こ と は現場 の教員 の多 くが実感 してい るよ うだ。 そ こでその対策 と して 「リメデ ィアル教育」とい う学生 の基礎 学力 を向上 させ るための再教育 を 実施す る大学 が増加 しつつ あ る状況 とな ってい る。 「ゆ と り教 育

と 「リメデ ィアル教 育

は あたか も原 因 ・結果 の 関係 と捉 え られ るか も し れ ない。す なわ ち 「ゆ と り教育」が学力低 下 を 招 いた結果 、大学教 育 で 「リメデ ィアル教育」 とい う再教育 を施 さね ばな らない とい う図式 で あ る。 もちろん 「ゆ と り教育だけに学力低 下 問題 を押 しつ け られ るは どこの問題 は単純 では ない し、実際 に学力低 下が起 こってい るのか と い うことで さえ様 々な議論が交錯 してきてい る。

しか し 「ゆ と り教育」 と 「リメデ ィアル教育」

の よ うな負 の連鎖 とも呼べ るか も しれ ない関係

は今 の大学教育 に とって非常 に大 きな問題 を呈 してい る と言 えるのではなか ろ うか。

学力低 下の問題 が最 も表面化 したのは理数教 育に関わ る識者 か らの指摘 である と考 え られ る。

岡部恒治 ・戸瀬信 之 ・西村和雄編 著 『分数 がで きない大学 生』 (東洋経 済新 報社 ,1999年 ) や

『小 数 が で きな い大 学 生』 (東 洋 経 済新 報 社 , 2000年) の よ うな非常 に衝撃的 な表題 の著作 は 社会的 に大 きな反響 を生んだ。 しか も表題 は決 して誇 張ではな く、実証研 究 の結果 に基づ いた 論 旨の展 開 とな ってい る。 学力低 下問題 は理数 系の教科 に限 らず英語 、国語 の よ うな文系教科 に も当然該 当す る。 ところが理数 系 と比較す る と、印象 と してあま り危機感 が表 面化 していな いのではないだ ろ うか。 後述す るが、実証結果 に基づ くデー タか らは理数 系の学力低 下の方 が よ り顕著 であ るこ とが一因 と考 え られ る。 また 理数 系科 目の方 が国際的 な比較 もで きる とい う こ とも関係 があろ う。 また更 に英語 につ いて限 定す る と、先行す る実証研 究 は比較的小規模 な ものが多 く結果 の信頼性 が十分 にある と言 える サ ンプル数 か ど うかの疑 問 も出て くる。 よって 文系の学力低 下、 と りわ け英語 に関 しては何 が どのよ うに問題 なのかがなかなか浮 き彫 りになっ ていないのではないだ ろ うか。 特 に英語 は読み 書 きよ りもコ ミュニケー シ ョン重視 の方 向に舵 を取 られ るよ うになって数十年 を経 た。 そ うす る と過去 との学力比較 が容易 ではない。英語 の 語重力 は低 下 して もその代 わ りに英語 を話す力 は向上 しつつ あ る と言 えるので はないか。異 な る基準 に よる教授 か らは異 な る学力 が養 われ る と考 え られ るか らだ。 本稿 ではまず一般 的 に捉

学力再考 一学生の英語力の現状と関連させての一考察 ‑ 109

(2)

え られている学力低下問題 について取 り扱い、

そ して この問題 の根本 とも言 える学力の定義 に ついて整理 し直 し、その後に英語力 について取 り扱 うこととす る。学校 で習得 を期待 され る英 語力 とは何か とい うことを再認識 し、英語力の どの部分が向上 しどの部分が低下 したのかをサ ンプル数の多い、大規模 で実証的な先行研究を 基 に して探究 してい くこととす る。

学力低下問題 何が問題か ?

これまで数多 くの識者が この学力低下問題 を 様 々な形で提起 してきた。 また彼 らに限 らず 、 学校現場の教員、そ して生徒 を持つ保護者 、企 業 ・産業界、そ して世論 に至 るまで この憂慮す べき問題 は波及 してきた。現在、 「ゆ とり教育」

の見直 しとい うことで行政側か らもこの間題 を 重要視 し施策が講 じられ よ うとしてきている。

資源が乏 しいにも関わ らず、戦後の 日本経済 が急速 に復興 していった要因の一つ として挙げ られ るのが他の諸国よ り群 を抜いて高い識字率、

そ して高い教育水準を 日本人が有 していた こと である。 この ことは疑いの無い事実であると言 えよ う。 ところが現在、経済大国 日本の初等 ・ 高等教育は岐路 に立た されてい ると言 って も過 言では無い。遡 って1980年代は、それまでの詰 め込み教育、受験圧力等が もた らした と考 え ら れ る生徒間のい じめや校 内、家庭 内暴力の増加 に対す る反省 として 「ゆ とり教育」路線‑の舵 取 り変更が行政 か ら行われ るよ うになった時期 であった。そ して1998年改訂の学習指導要領 は この流れ を更に加速 させ るものであった。教科 の内容や時間を約三割削減 させ、新たに 「総合 的学習を導入す ることで 「活 きた学び」 を子 供達が経験できるよ うに 目指 した。来年で改訂 後10年 を迎 えることになるが、 この教育政策以 降に顕在化 してきた問題 は どの よ うな ものであ ろ うか。 ここでは今までの学力低下問題 に対す る取 り扱 い‑の経緯 を述べ るよ りも具体的に‑

110国際経営論集 No.34 2007

連の調査結果か ら確実に指摘できると考 え られ る重要な問題 について一般的に述べていきたい。

1 .

学力の質的変化

学力低下問題 を捉 える際に注意 しな くてはな らない ことは、学力評価デー タが必ず しも充実 してい るとは言 えない現状 を加 味す る必要があ るとい うことである [市川 2002]。現場の教員 か らの声 として子供達の学力低下が指摘 され る のが通常 となってい るが、サ ンプル数が多 く、

経年で実施 された学力評価デー タが不十分な中 で問題 が一人歩 き してい るよ うである。例 えば 前述の 『分数のできない大学生』で表 されたデー タに関 して も過去のデー タとの比較 に基づいて の検証はな されていない。

しか しなが ら、た とえ充実 したなデー タでな くとも学力が上がってい ることをほ とん ど示す ことな く下がってい ることを実証 したデー タが 数多 く存在す ることを無視す ることはできまい。

また特 に中 レベル にい る層 の低下が著 しく見 ら れ 「学力低下」よ りも 「学力格差」の問題 を深 刻 に受 け止 めるべ きであることも過去のデー タ か ら読み取 られている [佐藤 2006]。

一方、学力論議の際に頻繁 に引き合いに出 さ れ る国際学力比較調査のデー タは示唆 に富む も のである。国際教育到達度評価学会 (International Association f♭r the Evaluation of Educational Achievement :IEA)に よ るTIMSS (Trends in internationalMathematics and Science Study) においては小学生 と中学生の算数 ・数学 と理科 の成績 を国際的に比較す ることができる。選択 式の問題 か ら主に成 り立 ち、学校 で学習す る知 識 ・技能の習得の度合いを中心に測 る試験であ る。 また経済協力開発機構 (OECD)が実施す る 国 際 学 力 比 較 調 査pISA (Programme fわr InternationalStudentAssessment)は 「数学」、

「科学」、 「読解力

の部 門で教科 の学力 を生活 に即 した文脈 で どの よ うに生かせ るかを見 よ う とす るものである。TIMSSでは1999年、pISAで は2000年 までに行われた調査結果 を参考にす る

(3)

と 「世界の トップ レベル」 といえる成績 を依然 と して残 してい るこ とがわか った。 ところが 2003年 に行われたPISAとTIMSS双方 の結果 では 学力が低下傾 向にあることがデータで明確 に示 された。 もともとそれ以前の調査で記述式問題 や考 える力 を必要 とす る問題 を白紙 で提 出す る 傾 向が多 く見 られた とい うことも指摘 されてい た りは したが、 と りわ け2003年 のPISAで読解 力が前回8位 か ら14位 に落 ちこんで しまい、参 加 国中の平均並みになった ことは非常に衝撃的 で あった と言 え よ う。pISAの 「読解 力 リテ ラ シー」部門で測定 しよ うとす る能力 とい うのは 文章読解力だけでな く、内容 を検討 し、 自分 な りの考 えを持 ち、それ を表現す るとい う能力が 含 まれた ものである。低下傾 向は見 られて も 日 本の小 中学生の学力水準は国際的に見てまだ高 い と解釈 され得 るが、学力低下の傾 向が 「読み 書き計算」 といった低 レベルの知識や技能 よ り

も思考力、表現力 において顕著に見受 け られた こ とは憂慮すべ きで あ ろ う。 同様 の結果 は、

2001年か ら2003年 にかけて実施 された国立教育 政策研究所 による教育課程実施状況調査の結果 にも表れた [佐藤 2006]。すなわち基礎技能の 領域でな く高次の思考力や表現力にお ける低下 が見 られた とい うことである。量的な もの よ り も質的な問題 として学力問題 を捉 えてい く必要 があることを上述 した研究結果 は示唆 してい る

と言 えるだろ う。

2.大学教育の レベルの低下

少子化傾 向による18歳人 口の減少、そ して入 試 の多様化 (少数科 目入試 、推薦入試等)の影 響 もあってか大学に入 って も基礎学力が身 につ いてお らず大学の授業 について こられ ない学生 が増加 してい る。特 に記述式試験 を重視 しない 推薦入試 、 またはAO入試 を通 じて入 って くる 学生に顕著な状況 と言 え、同 じ学部、学科 に入 学す る学生間の基礎学力幅が拡大す ることで一 斉授業が成 り立ちに くくなった [小野 2006a]。 教員側か らも以前 と同 レベルの授業展開では学

生の理解 が伴わないために授業内容 を削減 した り、 レベル を下げた り、使用テ キス トを変更せ ざるを得ない状況 となっている。そ して大学の カ リキュラムにおける対応 の中で、学力別 クラ ス編成や初年次教育 として 日本語、英語、数学、

物理 な どの基礎学力支援 (リメデ ィアル教育) のよ うな再教育を実施す る大学が年 々増加 して きている。 かつては一部のエ リー トのみに許 さ れた大学教育が現在では大衆化 して しまい、基 礎か ら専門的な学びを期待す るのが難 しい現状 が生 じて しまってい る。

3.

学習意欲の低下

詰 め込み教育を止 めて、結果重視 よ りも学び のプ ロセスを重視 し活 きた学びができるよ う目 指 した 「ゆ とり教育」ではあったが、その通 り 機能 してい るか どうかは甚だ疑問である。実の 所、現場の教員に限 らず、識者 のほ とん どが子 供達の学習意欲低下については意見が一致 して いる [市川 2006]。要因 としては様 々な ものが 考 え られ るが、まず、大学入試 のための受験勉 強が今 まで通 り学習‑の動機づ け として機能 し づ らくなったことが挙げ られ よ う [浪川 2001]。 1992年 に205万人いた18歳人 口は減少 の一途 を た どり2000年は151万人にまで減 って しまった。

2010年 には120万人 を切 る と言 われ てい る。 さ らに入試 の多様化は受験科 目の減少 を招 き、今 や大学合格率は80%を超 えて しまった。 よって 偏差値の高い一部の大学を受験す る者 を除いて、

大学入試 は決 して高い壁ではな くなった。

またアンケー ト調査でも明 らかになったのは、

テ レビやゲームに費やす時間が大幅 に増 え、家 庭学習離れがはっき りと表れた ことである [志 水 2005] 。 「ゆ と り教育」 で増 えた 「ゆ と り」

が学習ではな く 「メデ ィア漬 け」傾 向に拍車を かけた ともとれ る結果である。

前述 のTIMSSの調査 では教科‑の関心 ・態度 も項 目に含 まれてお り国際的な比較 も可能であ る。95年の調査では中学生数学、理科共に41カ 国中3位 とい う成績 にも関わ らず、理科‑の関

学力再考 一学生の英語力の現状と関連させての一考察 ‑ 111

(4)

心 ・態度 を示す指標においては最下位であった。

数学 について も同様 で、 「嫌 い」 で 「生活 との つなが りがない」 と思ってい る生徒の割合が世 界的に トップクラスであった。

以上の よ うに学力低下問題 の現状 を考察 して みたが、非常に複雑 な問題 であることが再認識 された と思 う。 ここでは取 り上げなかったが、

この問題 に関わる識者間で様 々な議論 が展開 さ れてきている。市

川 [ 2 0 0 2 ]

では学力低下に関 し 「楽観派か 「憂慮」派か とい う横軸、そ し て教育改革路線 に 「賛成」派か 「反対」派か と い う縦軸 を設 けることで識者達 をそれぞれの立 場 に応 じて3つの グループに分類 している。 ま た、識者間で議論 を交わ してい く中で意見の食 い違いが生 じる原 因の一つ として学力論のあい まい さを挙げてい る。すなわち学力低下問題 の

「学力」 とは何 を意味す るのか、具体的に どの よ うな能力の ことを指すのか、そ して どの よ う に捉 え られてきたのかが各識者 によって共通 し ていないため論戦が噛み合わない と述べている。

よって以下では学力の定義 についての総合的見 解 について見てみたい。

学力低下問題の 「学力」 とはどう捉え られて きたか ?

学力 とは人間の どの よ うな能力の ことを指 し ているのだろ う 学力低下問題 を取 り上げる際 に、 この問いに答 えることは非常に大事である と考 え られ る。低 下 しているものが どのよ うな 能力なのかを特定できなければそれ を正 しく測 ることができない し、その結果の解釈 も誤 った もの とな り、 さらに有効 な対策 を立てることも できないか らだ。 また多岐に下位分化 され る学 力 を総合的に一度で測定できるテス トは存在 し ない と言 えよ う。 そ うす ると実際に行 われたテ ス トは学力の断片的な部分のみ を測定 してい る ことにな り、その結果 に対す る分析 は慎重 にな らざるを得ない ことは明 らかである。単なる点 数 の比較だけではデー タの誤 った解釈 を招いて

1 1 2

国際経営論集

No . 3 4 2 0 0 7

しま う危険があるだろ う。 まず は 「学力 とは何 か」 とい う問いはあま りに大 き く複雑であるた め、本稿 では今までの 「学力」 についての考 え 方の一部 を以下に紹介 したい。

学力 とい う漠然 とした概念 を具現化 しよ うと した場合、様 々な 「力」で表わ され るのに気づ かされる。計算力、読解力、理解力、思考力等々。

それ らを区分す る仕方 も同様 に様 々である。例 えば計算力、語重力、そ して知識力 といったペー パーテス トで測 り易い能力 と思考力、表現力、

判断力の よ うな逆にペーパーテス トでは測 りに くい能力があるとい う捉 え方が存在す る。永野 [1997]は国語や英語 の中で取 り扱 う、聞 く力、

話す力、読む力、書 く力等の教科の経験内容 に よって分 ける場合 と、理解 、知識 、思考、態度 の よ うに概念的に能力 を分 ける場合 の二通 りを 挙げてい る。前者 を経験領域 による分類、後者 を能力概念 による分類 と呼んでいる。 また多種 多様な学力観 ・学力像が戦後教育の時代か ら提 唱 されてきてお りモデル化 された もの もある。

最 も知 られた ものの一つ と言 える 「広岡モデル」

では学力 を 「要素的な知識 ・技能

「関係 的な 理解や総合的な技術

「思考 ・操作 ・感受表現 態度」の三層か ら成 り立つ もの としている [志 水

2 0 0 5

]。 なお 「学力」 を英語 に訳そ うとす る と辞書によって訳語が異なる。広義 に解釈が さ れ過 ぎるため適語 を充てづ らいか らであろ う。

大野 ・上野

[ 2 0 0

1]では この適訳語不在の原因 を、学んだ成果 としての 「学力」 と学ぶ力 とし ての 「学力」が一体 となった ものが 「学力」 と い う概念形成の元 となったため とい うことで説 明 している。

以上見 た よ うに非 常 に捉 え難 い概 念 で あ る

「学力」 を、では次 に識者 達はそれ ぞれ の論点 の中で どの よ うに捉 えてきたのかを見ていきた い。 まず文部省 の見解 か ら捉 える と、 「ゆ と り 教育が向上を 目指 した学力 とは知識偏重の学 力観か らの脱却 を 目指 した、新学力観か ら導か れ る 「自ら学び、 自ら考 える力」とい う学習意 欲 に関わる部分に重 きを置いた もの となってい る。 その文部省 の方針 に真 っ向か ら反論 し、

(5)

「学力低下」 を世 に問 うた 『分数 ができない大 学生』、『小数ができない大学生』の編者の一人 である岡部 [2001]は本 当の学力 とい う意味で は思考力 を挙げてい る。思考力 を正確 に測 るこ との困難 さを認 めた上で、計算力のよ うな測 り 易い ものか ら測定 し、そ こか らの類推 で思考力 の低下を懸念す る立場 を取っているよ うである。

や は り実際の所、規模 に関わ らずペーパーテス トを通 じて計算力等の測 り易い ものの診断が中 心であった ことは確 かだろ う。学校単位 で同 じ 問題 を経年で課す ことで学力の低下を指摘 した 例が実際に多い。特 に理数系の測定が多数 を占 める傾 向にある。一方、大野 ・上野 [2001]で 上野健爾氏は大学関係者 の懸念事項 として、大 学生の知識量不足 を憂 えるとい うよ りも学ぶ力 としての 「学力」が大幅に低下 してい ることを 指摘 してい る。

学力 を認知心理学の視点か ら捉 えてい る場合 もある。市川 [2002]は学力 を下位 区分 して ど こまでを 「学力」 と呼ぶのかを議論す るのでは 無 く、知識 、理解 、思考、学習 といった、学力 に関わる諸概念 とそれ ら同士の関係 を どの よ う に捉 えるかが 「学力 とは何か?」について重要 な点であることを説いてい る。認知心理学 を基 に した学力の認知モデルの中で 「思考」を、知 識 を新たに関連付 けるもの として位置付 けた。

そ して新 しい知識 を取 り込みなが ら既存の知識 体系 を活性化 させ るこ とを 「学習」 とし、 「学 力」 とはそ こに含 まれ る下位過程か ら成 る総体 的な力 とみな してい る。

ここで挙 げた学力 の捉 え方 の例 だ け見 て も

「学力

論 と学力低 下問題 を結び付 けて考 える ことの困難 さが浮かび上がって くるのではない だろ うか。例 えば学力 のモデルが仮説 として立 て られて も、計算力の よ うな測定可能 な下位 区 分の学力か らの類推 に依存す ることとな りモデ ル全体の実証が困難 と言 える。 また学ぶ力 と学 んだ成果 とを同時に測 ることも容易ではない。

そ うす ると実証できてい ることとそ うでない こ ととの区分 を明確 に しての議論が不可欠 となる だろ う

これまで学力低下問題 を一般的に論 じてきた。

次に英語科 目を通 じて見てい くこととす る。上 述 した よ うに実証できてい ることを中心に して 議論 を進 めていきたい。

英語の学力はどうか ?

理数科 目同様 に英語 において も学力低下の批 判は免れない よ うである。 ただ学習指導要領 に よる授業内容 ・時間の削減の影響か ら原因を捉 えるとい うや り方では英語の学力低下問題 は発 展 させづ らい。学習 目標 が変遷 を遂 げたために 過去 との単純比較が難 しくなってい るか らだ。

大きな変化 としては89年版 の学習指導要領 よ り それ までの読み ・書 き中心の授業か ら聞 く ・話 す力 を加 えた四技能 をバ ランス よく習得す るコ ミュニケー シ ョン能力重視 の指導‑ と方針転換 がな された ことである。次の98年版 の新学習指 導要領 においては更にその傾 向が強 くなってい

る。

新学習指導要領が 目標 としている英語の学力

1.コミュニケーシ ョン能力重視

もともと89年版学習指導要領か ら特 に留意す べき変化が見 られ る。まず外国語 を用いてコミュ ニケー シ ョンを積極的に図ろ うとす る態度の育 成 が明記 され 、 「聞 く」、 「話す」 が独 立 した領 域 になる音声重視の方向‑ と向かっていった。

更に98年版では 「実戦的 コ ミュニケー シ ョン能 力」の育成 に力 を入れている。具体的に どうい うものか とい うと、中学、高校それぞれの学習 指導要領解説外国語編で次のよ うに述べ られて いる。

『実践的 コ ミュニケー シ ョン』 とは、単に外 国語の文法規則や語嚢などについての知識をもっ ているとい うだけではなく、実際のコミュニケー シ ョンを 目的 として外国語 を運用す ることがで きる能力の ことである。」 (中学校学習指導要領

学力再考 一学生の英語力の現状と関連させての一考察 ‑ 113

(6)

解説)

「『実践的 コ ミュニケー シ ョン』 とは、外 国語 の音声や文字 を使 って実際にコミュニケー シ ョ ンを図ることが出来 る能力である。すなわち、

外国語 を使 って、情報や相手の意向な どを理解 した り自分の考 えな どを表現 した りして、通 じ あ うことができる能力である。」 (高等学校学習 指導要領解説)

上記 目標 を達成 させ るために、聞 く、話す、読 む 、書 くことの4技能 を有機 的 に関連付 けるコ ミュニケー シ ョン活動 を教室で行 うことを求め てい る。 また これ に合わせ て 「語学指導等 を行 う外 国 青 年 招 致 事 業」りapan Exchange and Teaching Program;JETプ ログラム)に よる 「外 国語 指 導 助 手」(Assistant Language Teacher: ALT)の有 効 的 な活 用 も重要 とな ろ う [望 月

2 0 0

1] 。

なお文部科学省 は、「『英語が使 える 日本人』

の育成 のための行動計画」

( 2 0 0 2)

の中で、 中 学卒業時には英検

3

級合格

5 0%

以上、高校卒業 時には英検準

2

級 または

2

級合格

5 0%

以上 を習得 目標 としている また大学卒業時には 「仕事で 使 える英語力」の習得 を挙げてい る。

2.文法項 目の学年別配当の廃止

文法構造 を無視 した指導 を意味す るわけでは 無 く、文法用語 の解説や用法の区別 な どの指導 が中心 とならないよう注意 し、コミュニケーショ ン活動が容易 となるよ うな文法知識 に焦点 を当 てて指導す るよ う求め られ てい る。す なわち教 室での言語運用の機会 を与 える際、副次的に文 法指導の機会 も生 じさせ ることで、コミュニケー シ ョンと文法 をバ ランスよく指導す る必要があ ると解釈 され る。そ うす ると各学校 、教師間で かな りの裁量が認 め られていることを意味す る。

3.

授業内容の削減

理数教科 とはやや異な り、授業時間の削減 と

114 国際経営論集 No.34

2 0 0 7

い うよりも内容の削減の方が 目立っ ようである。

8 9

年版 では週

4

時間まで履修 可能 にす る といっ た弾力的運用になっていた英語の授業時数が

9 8

年版 では週3時間に一律決 め られ た。 一方、教 材 で扱 われ る本文 の総量が

9 8

年版 では約3 削 減 されている。実際に今現在使われてい る教科 書をめ くって見 ると写真や 図が非常に多い こと に気付 くだろ う。

学習すべ き語重量 も減少 した

。8 9

年版か ら

9 8

年版 になると、中学校で扱 うべ き新語数が

1 , 0 0 0

語か ら

9 0 0

語‑ と

1 0 0

語減 った。 また高等学校 に おいて も新語数 が

1 , 9 0 0

語 か ら

1 , 8 0 0

語‑ と同 じ

1 0 0

語減 った。

実証研究が示す英語の学力の変化

以上学習指導要領 が 目指す英語の学力が どの よ うに捉 え られ、 目標 とされ るよ うになったか の変遷 を見てきたが、次 に実際の英語の学力の 現状 を実証研究の結果 を基 に見てい くことにす る。

まず英語 にお ける学力低下‑の懸念は理数科 目同様 に現場の教員か ら発せ られた ものである と言 えよ う。一例 として

99

年 に大手予備校 の河 合塾が高校教員 に実施 したアンケー トでは

6 5

名 中

8 9%( 5 8

名)の英語教員が担 当教科 に関す る生 徒の 「学力低下」 を感 じると答 えた。特 に語糞 力の低下を指摘す る声が多かった [河合塾/全 国進学情報セ ンター 『Guideline』編集部

2 0 0 0

]。

9 8

年版 の学習指導要領 に基づ く授業実施 は

2 0 0 2

年 に中学校

、2 0 0 3

年 に高等学校 で始 まったのだ が、それ以前の段階で現場 レベル による学力低 下の認識がかな り浸透 していた と考えられ よ う。

文法力 も例外ではな く、上記河合塾の よ うな予 備校講師か らの文法力低下を指摘す る声が多 く 聞かれた

。8 9

年版 か らの コミュニケーシ ョン能 力重視の成果が表れ、聞 く ・話す力がその代 り に向上 しているな らばまだ救いがあるが、そ う とは言 えない よ うである。斉 田

[ 2 0 0 6]

は基礎 的な文法力や語重力が不足 し、期待 した程には 聞 く ・話す力が伸びてい るとはいえない高校入

(7)

学者 が増 えて きた よ うに現場教員 が観 察 してい る と述べた。

サ ンプル数 が十分 にあ り経年 で調査 して得 ら れ た学力測定デー タが充実 してい る とは言 えな いため学力評価 が非常 に困難 であ るこ とは前述 したが、 これ は英語 も同様 で あ る。 ここか らは 大学 、高等学校等 の各 教育機 関内で実施 され た 小規模 な実証研 究でな く、比較 的サ ンプル数 の 大 きな研 究 の結果 を考察す る こ とで英語 の学力 を見てい く。

上 述 した河 合 塾 / 全 国進 学 情 報 セ ン ター

『Guideline』 編 集 部 [2000]で は河合 塾 が毎年 四月初旬 に高校 を卒業 して 当予備校 に入 って き た生徒対象 に実施す る学力 ク リニ ックテ ス トの 結果 を検証 してい る。 これ は勿論河合塾生の学 力 の変化 を把握 す るた めの もので限定的 な もの と言 えるが、共通 の問題 を経年 的 に出題 してい るた め高校 卒業者 の英語 の学力 を知 る上で示唆 に富む ものである と考 え られ る。 当デー タでは 78年度学習指導要領最後 の学年 であった95年度 河合塾入塾 の生徒 と89年度版 、いわ ゆるコ ミュ ニケー シ ョン重視 の学習指導要領 下で 中 ・高 と 学 んだ99年度入塾 の生徒 とを比較 してい る。科 目は英語 を含 めて八科 目であ り、全体的 に見て 99年度 の生徒 の方 に正答率 の低 下が見受 け られ た。 また英語 だ けを見 る と数学 ・物理等 の理数 系科 目と対照的 に正答 率 の低 下 はわず かで大 き な変化 はなか ったが、問題 の種類 に よってい く つかの傾 向が見 られ た。会話形式 の空所補 充問 題 では定形 的 な会話表 現力 を試す 問題 の正答率 が上 がってい るのに対 し、同形式 中の語棄 ・文 法 を試す問題 は下がっていた。 コミュニケー シ ョ

ン重視 の教育成果 が表れ てい る と解釈 していい か も しれ ない。 しか しあ くまで空所補 充 は多肢 選択 問題 であ るため この結果 で聞 く ・話す 力が 上が った と捉 えるのは無理 があろ う また他 の 文章 中の空所適語補 充 問題 、並べ替 え作文 問題 の よ うな語嚢 ・文法 を試す 問題 にお いては低 下 が見 られ た。最後 に、読解 問題 については大 き な変化 が読み取れ なか った と報告 され てい る。

また 中学校 にお け る学習成果 の把握 を 目的 と

して、高校一年生 を対象 と した全県 レベル の英 語統一テ ス トの結果報告 で、斉 田 [2003]は英 語力 の低 下が明 らかになったの に加 え、実施 七 年前に遡 って見ると七年間一度 も英語力が上がっ ていない こ とを示 した。 テ ス ト問題 は語嚢 ・文 法 ・リスニ ング問題等 の基礎 学力問題 を扱 った ものであった。95年度 中学入学者 で コミュニケー シ ョン重視 の授業 を経 て98年度 に高校 に入学 し た生徒 の成績低 下が極端 に大 き く見 られ た。 学 習 内容 の変更が英語 力 の低 下 に大 きな影響 を与

えた こ とがはっき りと示 され た。

同 じよ うに2002年度 以降の生徒 に も追跡 調査 が行 われ 、結果 として 「新 学習指導要領 実施 後 3年 間で約3点 (偏 差値換算)の低 下、特 に2004 年度以降の低 下が大 きい こ と、 と りわ け、新学 習指導要領 下で 中学3年 間の英語教育 をすべ て 受 けた生徒 が高校 に入学 した2005年度 の低 下が 大 きい こ と」 が 明 らか に な っ た [斉 田 2006:

29]。

小野 [2006a]で も中 ・高 ・大学 生 の英語 力 の低 下 を報告 してい る。筆者 を中心 と した研 究 チー ムが開発 したプ レース メン トテ ス ト及 び、

英語検 定協会 の英語能力判 定テ ス トを利用 して 調査 した結果 に基づいてい る。 前者 は語嚢 ・文 法力、後者 は リスニ ング ・語嚢 ・文法 ・読解 力 を測定 し、経年 的 な研 究 と言 うよ りも私立対公 立 とい った学校 間比較 を大規模 に行 った もので ある。結果 と して 中 ・高 ・大学生それ ぞれ にお いて学校 間の差 が大 き く開いてい るこ とを強調 してい る。 まず 中学 では学習指導要領 に影響 さ れ ない と考 え られ る有名 私 立 の 中学2年 生 に英 語検 定協会 の英語 能 力判 定 テ ス トを3月 に実施 した所 、9割 以 上 の生徒 が英検3級 合格 レベ ル の力 を持つ こ とがわか った。 一方 、あ る県 の公 立 中学 3年 生全員 に 9月 に同 じテス トを受験 さ せ た結果 、3級合格 レベル は約13‑ 18%であっ た。彼 らは高校入試 の約 半年前 で一番 英語力 が 備 わ ってい る と考 え られ るのに も関わ らず 、私 立の 2年 生 よ りも大幅 に英語力 が低 い こ とがわ か った。

高校 では 1年 次か ら週 8‑ 10時 間の読み 、書

学力再考 一学生の英語力の現状と関連させての一考察1 115

(8)

き、聞 く、話す学習 をバ ランスよく実施 してい る数 県 のSuper English Language high school (以下SELHi) の指 定校 と、 同 じ高校 で も英語 の時間数が標準的な一般 クラスを比較 した。前 者 は卒業時に6 か ら8 の生徒が英検準2級 以上の英語力を習得 していることがわかった。

一方後者 は一般 クラスで準 2級合格 レベルが 5

%、国立文系 クラスで も24%であった。以上の 結果で文部科学省が 目標 とす る高校卒業時に英 検 2級か準 2級 レベル に達す るよ う指導す るに はSELHi並みの授 業時間 ・内容が必要 とな るこ とが示唆 され る。

最後に大学ではプ レースメン トテス トで調査 した結果、大学生の英語力は上位 と下位 の二極 分化の傾 向が顕著 に見 られた。上位 の学生は英 語の記述式試験がある国立大学 と私立大学の英 文科の学生が多かった。英語能力判定テス トも 同時に受験 させた結果、彼 らのほ とん どは英検 準2級 レベル以上 と判定 された。逆 に考 えると 受験勉強の際に記述式試験 を課す大学 を 目指 さ なかった者は英語力が下位の部類に入 ると言 え、

受験勉強の役割 が大きい ことが窺われ る。

以上のよ うに実証結果 を基 に英語の学力 を見 てきた。学力 を測定す る実験の手法等が異なる ものの、総 じて基礎学力、特 に語嚢、文法の力 が低下傾 向にあることがはっき りと実証的に示 されているよ うである。 また学習指導要領 の下 での指導を受 けてきた公立の学校 の生徒 とそ う でない私立の生徒 との英語力の差が顕著であっ た。斉 田 [2003、2006]が示す よ うに、落 ち込 みの激 しい年度 が学習指導要領 の指導内容 の転 換時期 と合致 した ことか らも学習指導要領 によ る指導が公立学校 における基礎学力低下に大 き く影響 した ことが言 えよ う。

また89年度の学習指導要領 よ りコミュニケー シ ョン重視‑の方針転換 を図ったにも関わ らず、

学習指導要領 下での指導のおかげで聞 く ・話す 力の向上が見 られた とい う実証研究の結果が乏 しい ことにも注 目しな くてはな らない。 しか し デー タが不十分だか らと言 って も、語嚢 ・文法 力が低下 してい るにも関わ らず産出能力は向上

116 国際経営論集 No.34 2007

しているか もしれない とい う考 えは言語習得理 論の視点か ら見て考慮 しに くい と言 えよ う。′ト 野 [2004]ではバイ リンガル を 「複数 の言語 を 理解 し、運用できる人 を さす」 と定義 し、 さら に両言語能力か ら、①理想的バイ リンガル、② 現実的バイ リンガル、③ 日常会話バイ リンガル の三種類 のバイ リンガル を提唱 してい る。文部 科学省 の方針 に照 らし合わせれ ば、英語教育の 最終 目標 として大学卒業時 に 「仕事に使 える英 語力」の習得 を挙げているので②の現実的バイ リンガル を 目標 に してい る と考 え られ る。現実 的バイ リンガル とは具体的 に、 「日常会話 に不 自由せず、その上 自分の専門分野にお ける外国 語使用場面で必要な四技能 を習得 し、主に職業 分野や 自分の興味がある分野の語嚢や言語力が 身 に付 いた人 を指す」 [小野 2006b:66]。 とこ ろが 日本の よ うな、 日常生活 を通 じて外国語習 得 を期待 できない環境の中では教室内のみの コ ミュニケー シ ョン活動だけでは十分な成果が出 ると言 えるだろ うか。 ま してや98年度版学習指 導要領 によ り週3回のみの授業 となっては尚更 で あ ろ う。 小 野 [2006b]が指 摘 す る よ うに SELHiの クラス並みの十分 な授業時間を取 り、

体系立てた語嚢 ・文法指導 との両立あって こそ コ ミュニケー シ ョン活動の成果が表れ るのでは なかろ うか。

もともとリーデ ィングカ と比べてス ピーキン グカのよ うな産出能力に対 してはサ ンプル数 を 十分に備 えた実証研究の実施が困難な面がある。

その点、前述 したSELHiは文部科学省 か ら指定 され既存の学習指導要領 に とらわれ ることな く 英語教育を実践できる実験校 として位置付 け ら れたせい もあ り、授業の成果 を示すデー タが比 較的揃 っている と言 えよ う。一例 を挙げると、

熊本県内の指定校3校 は連携 してメール による オンライ ンデ ィベー ト対戦 の実施 、 ビデオ会議 システムの導入、そ してALTによる教材作成等 に取 り組 んだ結果、デ ィベー トやプ レゼ ンテー シ ョン技術 を向上 させ た こ とを報告 してい る [清水 2004]。 しか しなが ら、一般 の公立学校 で教育 を受 ける者 に対 してはまだ コミュニケ‑

(9)

シ ョン能力の向上 を示すデー タの存在はお ろか その能力 を適切 に評価 しよ うとす る試み さえも 教師側か ら十分 に行 われていない ことも指摘 さ れ てい る

[ Yo s h i d a2 00

1]。 授 業 の成果 に よ り 実践的 コミュニケー シ ョン能力の基礎が身 につ いているかを測定 ・評価 しよ うとす る視点が欠 けているとコ ミュニケー シ ョン活動 は単なるお 遊び とな りかねない。今後の研究課題 としては、

聞 く ・話す とい う口頭 によるコミュニケー シ ョ ン能力 を測定す るテス トを開発 ・発展、そ して それ を効果的に使用 した上での英語力の総合的 な評価 も議論の対象 として必要 となって くるで あろ う。

おわ りに

国家単位 の問題 として取 り上げ られ るよ うに なった学力低下問題 を全体的に、そ してその後 英語科 目に焦点を当てなが ら、調査結果 に基づ いて確実に指摘できることを中心に考察 してき た。学力低下問題 をただ憂 えるよ りも現状 は ど うなっているのかをまず知 ることか ら教育現場

‑の示唆に繋がるであろ う。

また今回は特に詳述 しなかったが、更に深刻 な問題 は学習‑の関心 ・意欲 の低下である。 こ れは コミュニケー シ ョン能力の育成 を図 る英語 においても大きな問題である。

Ma c l n t y r e 、Ba b i n

Cl e me n t[ 1 9 9 9]

は第二言語 (母語 では無 いが

日常生活 で使 う言語) において、 コミュニケー シ ョンに対す る不安が低い と、 自分の能力 に 自 信 を持つ ことで コミュニケー シ ョンに対す る意 欲 につながることを実証 してみせた。 この こと は英語 を外国語 として学習す る場合 にも当ては まると言 えよ う。実践的な コミュニケー シ ョン 能力を身 に付 けるとい う新学習指導要領 の 目標 到達にはコ ミュニケー シ ョンに対す る意欲が不 可欠 なのは明 らかで あ る。

Ma c l n t y r e

他 の研 究 は不安や 自信 といった情緒的な部分が コミュニ ケーシ ョン能力 に非常に大 きな影響 を与えるこ とを示 した。 よって実証研究で明 らかになった 語重力、文法力 にお ける基礎学力低下‑の対策

同様に、いかに して学習意欲、特にコミュニケー シ ョンに対す る意欲 を高めてい くかが今後の課 題 と考 え られ る。今特 に リメデ ィアル教育の中 で利 用 され てい る

e ‑ 1 e a r n i n g

の活 用 は一つ の有 効的な解決手段 とな り得 るか も しれない。実際 に学習動機 を高 め る上で

e ‑ 1 e a r n i n g

の貢献度 が 高い ことが実証 され て きてい る [藤枝 ・小平

2 0 0 4

]。 この分野 にお ける今後更 な る研究 も必 要 と言 えよ う。

参考文献

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「基礎英語力低 下の現状 と改善 策〈下

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学習 の検証 実験 と英語 教 育‑の提言」『英語教育

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河合塾/全国進学情報セ ンター

『 Gu i d e l i n e 』

編 集部

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118 国際経営論集 No.34 2007

参照

関連したドキュメント

あらためて英語史を外来語を中心にまとめてみると以下のようになる。

3.1 J-SHINE

ることはこちらとしても励みになるとともに,いかに英語を身につける機会や自分自身の達成感を

工学系学生に対する英語教育 井上 順一郎 <要 旨>

Jenkins(2007)を踏まえて,日本語母語話者のためのガイドラインの試案を提 案している。 6) 本件については,2.2 節参照。 7)

 公立小学校での英語活動,ひいては英語教科化の是非

 中英語から近代英語への変化の特徴は,語彙の増加であった。それに比べれば,文法的構造の変

の英語力については,中学生の英語力は「 CEFR A1 レベル(英検 3 級)以上を取得している生徒の 割合」と「 CEFR A1 レベル(英検