研究ノー ト
コンピュータ会計科 目に関す る一考察
荒 井 義 則
1 . はじめに
現代の企業では、会計業務 はコンピュータ化 されているのが普通である。小企業の会計 ソフ トか ら大企業の巨大な統合化 された会計情報 シ ステムまでその規模 は さま ざまであるが、 コン ピュータな しでは現代 の会計業務 は実行が難 し い。電子 申告 ・電子納税 、 「電子帳簿保存法」、
「e一文書法」 に よる帳簿 ・証悪書類 の電子保 存、電子マネー、株券の電子化、電子債権 な ど は会計の さらなるコンピュー タ化 ・ネ ッ トワー ク化 を推進す る要因 となっている。
このよ うな状況 にあた り、大学 ・短大の商学 系 ・経営系 ・経済系の学部 ・学科では会計教育 の コンピュー タ化がはか られ、その中心科 目の 一つ として 「コンピュー タ会計(請)」、 「会計情 報 システ ム(論)」 といった コンピュー タ会計科
目を設置 してい るところが少な くない。
大学 ・短大で開講 されている1年生用の簿記 の入門的な科 目では、その内容 は簿記一巡の簡 単な解説、期 中取引の詳細、決算、精算表 ・財 務諸表の作成 と一定の型があ り、 日商簿記検定 3級の内容 と一致 してい る場合が多い。 しか し なが ら、 「コン ピュー タ会計(論)」、 「会計情報 システム(請)」 な どの コン ピュー タ会計科 目に おいては、必ず しも定まった一定の型 とい うも のは存在 しない。 もちろん、大学 ・短大の授業 科 目は、高校 ・中学 ・小学校 とは異な り、一定 の型 な ど必要 とせず、担 当教員の研究に基づ く 独 自の授業 を展開すれ ばよいのであるが、各大 学 ・短大で実施 されているコンピュー タ会計科 目の内容 を知 ることは今後の コンピュー タ会計
教育に とって多少 な りとも貢献す るのではない か と思われ る。
本稿では、最初 にイ ンターネ ッ ト上に公開 さ れているコンピュー タ会計科 目のシラバスにつ いて、その教育内容 を調査 ・集計 し、考察を加 える。次に、 日本商工会議所 「電子会計実務検 定」 について コンピュータ会計科 目に関連 して 考察す る。電子会計実務検定は 日商簿記検定に 比べ、歴史が浅 く影響力 も少ないが、今後有力 な資格 になる可能性 を有 してお り、後述す るよ うに コンピュー タ会計科 目の授業内容 に影響 を 与え始 めている。 コンピュータ会計科 目と電子 会計実務検定 との関係 を考 えてゆくことにす る。
2. コンピュータ会計科 目の授業内容の 調査
ここでは、イ ンターネ ッ ト上に公開 されてい るコンピュー タ会計科 目29科 目 (18大学) につ いての調査結果 を集計す る。調査 した科 目名 は
「コンピュー タ会計 (「コンピュー タ会計論」 も 含む)」、 「会計情報 システム (「会計情報 システ ム論 」、 「会計情報 システム演習」 も含む)」 で ある。なお、同 じ大学で 「コンピュータ会計A」、
「コン ピュー タ会計B」 とあ り、 2科 目で コン ピュー タ会計全体 を扱 っている場合で も2科 目 と計算 してい る。 「会計情報 システム」 につい ても同様である。また、一つの大学で 「コンピュー タ会計」、 「会計情報 システム」の両科 目を開講 している場合 もあ り (この場合 も2科 目と計算 してい る)、 これ らの理 由に よ り、科 目数 と大 学数 が異なっている。
コンピュータ会計科目に関する一考察 197
(1)「コンピュータ会計」の教育内容
「コンピュー タ会計 (「コンピュータ会計論」
も含 む)」 は16科 目 (12大学) でその内容は以 下の とお りである。
(D ェクセル による販売 ・購買管理、資金計画、
給与計算 な ど 2科 目 (1大学)
② ェ クセ/レによる財務諸表作成、経営分析 な
ど 2科 目 (1大学)
③ 会計 ソフ トによる財務会計処理
7科 目 (6大学)
④ エ クセル及び会計 ソフ トによる財務会計処
理 1科 目 (1大学)
⑤ コンピュー タ会計の講義のみ (実習な し)
⑥ その他
1科 目 (1大学) 3科 目 (2大学)
その他 の3科 目は 「シラバスか らは使用 ソフ トが分か らない科 目」が2科 目 (1大学)、 「内 容的にはコンピュー タ会計 とい うよ りはパ ソコ ン演習に近い科 目」が1科 目 (1大学)である。
(2) 「会計情報 システム」の教育内容
「会計情報システム (「会計情報 システム論」、
「会計情報 システ ム演習」 も含 む)」 は13科 目 (lo大挙)でその内容 は以下の とお りである。
① エ クセル による財務諸表作成 ・経営分析 4科 目 (4大学) (勤 エ クセル による財務会計 ・管理会計 (原価 計算 を含む)演習 3科 目 (2大学)
③ 会計 ソフ トによる会計処理 0
④ エ クセル による財務会計演習 と会計 ソフ ト の現状 1科 目 (1大学)
⑤ 会計情報 システム論の講義 (実習な し) 2科 目 (1大学)
⑥ 経営会計 システムの講義 198国際経営論集 No.36 2008
1科 目 (1大学)
⑦ coBO Lによる財務会計演習
2科 目 (1大学)
( 3)
検定を考慮 した科 目「コンピュー タ会計」では 「電子会計実務検 定」、 「パ ソコン財務会計主任者試験」 を考慮 し た教育内容の科 目が16科 目中3科 目 (3大学)あ
る。
① 「電子会計実務検定初級」、 「パ ソコン財務 会計主任者試験1級、 2級」 を考慮 した教 育内容 1科 目 (1大学)
② 「電子会計実務検定初級」 を考慮 した教育
内容 2科 目 (2大学)
( 4)
考察「コンピュー タ会計 (「コンピュー タ会計論」
も含む)」が16科 目 (12大学)、 「会計情報 シス テム (「会計情報 システム論」、 「会計情報 シス テム演習」 も含む)」が13科 目 (lo大挙) と科 目名 としては2科 目ともほぼ同程度 に使われて いるが、内容的にはかな り差があることが分か る。 「コンピュー タ会計」では 7科 目 (6大学) で会計 ソフ トの演習が実施 されているのに対 し、
「会計情報 システ ム」では会計 ソフ トのみ を用 い る科 目は 0である。 一方、 「会計情報 システ ム」 ではエ クセル による会計処理が7科 目 (6 大学) で あるのに対 し、 「コンピュー タ会計」
では4科 目 (2大学) であ る。 したが って、
「コンピュー タ会計」では 「会計 ソフ トの演習」
が中心であ り、 「会計情報 システム」 では 「エ クセル による会計処理」が中心であることが分 かる。
また、 「コンピュー タ会計」 と 「会計情報 シ ステム」の合計29科 目中講義科 目は4科 目のみ で、他の25科 目はコンピュー タ実習が中心であ る。す なわち、 これ らの2科 目はコンピュー タ 実習が中心 となる科 目であることが分かる。
さらに、検定 (現在の ところ会計 ソフ トが中 心) についてみ る と、 「コン ピュー タ会計」 16 科 目 (12大学) 中3科 目 (3大学)が扱 ってお
り、会計 ソフ トを中心 とす る検定の影響が うか がえる。
以上の調査 よ り、 コンピュー タ会計教育科 目 の授業内容はエ クセル または会計 ソフ トを用い たコンピュータ実習が中心であ り、「コンピュー タ会計」 では会計 ソフ トが、 「会計情報 システ ム」ではエ クセルが主に使用 され、会計 ソフ ト の検定の影響 も受けつつあるとい う結論が得 ら れ る。
3.
電子会計実務検定の概要ここでは、 コンピュー タ会計教育に徐 々に影 響 を与 えつつある 日本商工会議所 「電子会計実 務検定」 とは どの よ うなものかを見てゆ くこと にす る。 1ト 6)
(1) 試験の 目的 ')
企業、 とくに中小企業における電子会計の実 践お よび これ に対応 できる人材 の育成 に資す る とともに、中小企業の会計指針 の普及 ・定着 を 図ることを 目的に創設 された。
( 2)
試験の方法 1)イ ンターネ ッ トを介 して試験の実施か ら採点、
合否判定までを行 う 「ネ ッ ト試験」で実施 され る。全国の商工会議所ネ ッ ト試験施行機 関 (令 地商工会議所及び各地商工会議所が認定 した試 験会場)で受験す る。
( 3)
試験の級及び対象者試験 は初級 ・中級 ・上級 の三つの レベル に分 かれてお り、対象者 は以下の とお りである。
①上級 (試験時間 :90分、問題数 :2間、出題 形式 :自由記述 問題 1間、会計 ソフ ト
とエ クセル を使用す る会計デー タ処理 問題1間)7)
電子会計情報 を活用 して経営 に携 わる者 、経 営の助言 をす る者。
② 中級 (試験時間 :60分、問題数 :21問、出題 形式 :択一式、一部数値記入) 8)
企業や公益法人な どの会計実務及び財務責任 者。
③初級 (試験時間 :40分、問題数 :20間、出題 形式 :択一式、一部数値記入) 9)
企業の経理担 当者、NPO、公益法人な どで会 計実務に携わる者、および一般社会人、学生 ・ 生徒。
( 4)
試験施行対象会計 ソフ ト (2008年度)10)①勘定奉行21Ver.Ⅳ (Ver.4.02)
②弥生会計08プ ロフェッシ ョナルVer.14.0.1 または14.1.1または14.1.2
③会計王9
④pcA会計 9システムB
(5)出題範囲1日
1)上級
①電子会計情報の活用 (利益計画、資金計 画、予算管理、部門管理、プ ロジェク ト 管理等)
②会計 ソフ トの導入 ・運用
③電子会計データの電子保存 と公開
④電子 申告 ・納税 システムの理解
⑤企業会計以外の会計 システムの理解
2)中級
コンピュータ会計科目に関する一考察 199
①関連業務等か らの業務データ等の活用
②電子会計情報の活用 (決算書、資金繰 り 表等 による収益、資金の状況の把握)
③電子会計デー タの保管、管理
3)初級
G)電子会計デー タの流れ
②電子会計情報の活用 (各種電子帳簿書類 の見方等)
4.
コ ン ピュー タ会 計 教 育 科 目 と電 子 会 計 実 務 検 定 講 座 カ リキ ュ ラム(l)初級カ リキュラム とコンピュータ会計教 育科 目
日本商工会議所では公式ガイ ドブ ックを教材 とした 「電子会計実務検定初級講座」のカ リキュ ラム (の一例) を作成 し公開 してい る012)カ リ キ ュ ラム には 「(通 常 の) カ リキ ュ ラム」 と
「速習カ リキュラム」の2種類 があ り、両カ リ キュラム とも 日商簿記検定3級程度の簿記の知 識 と基本的なパ ソコン操作能力 を前提 としてい る。「(通常の)カ リキュラム」は 「90分授業12 回」で構成 されてお り、大学の授業では 「半期
2単位 」 の授業 に相 当す る。 「速習 カ リキュラ ム」は 「90分授業5回」で構成 されてお り、大 学の授業では 「半期2単位 のほぼ半分」の授業 に相 当す る。
これ らのカ リキュラムは必ず しも大学や短大 の授業 を念頭 に置いたの もではないので、その ままでは大学や短大のコンピュー タ会計教育に 取 り入れることは難 しい と思われるが、各大学 ・ 短大の実状に合わせ て多少の変更 を加 えれ ば コ ンピュー タ会計教育に取 り入れ ることは十分可 能である。通年4単位分の授業であれば、半期 を 「(通常の) カ リキュラム」 をもとに した会 計 ソフ トの演習に使い、残 りの半期 をエ クセル による会計操作あるいは会計情報 システム論 の 講義な ど独 自の授業 に用いればよい。 また、半 200国際経営論集 No.36 2008
期2単位分の授業であれば全期間を 「(通常の) カ リキュラム」 をもとに した会計 ソフ トの演習 にあて るかあるいは5コマ分 を 「速習カ リキュ ラム」をもとに した会計 ソフ トの演習 に使 い、
残 りの期間をエ クセル による会計操作 あるいは 会計情報 システム論 の講義 な ど独 自の授業に用 いればよい。 これ以外 にも、カ リキュラムの一 部分 を取 り入れ るな どいろいろな活用法がある と思われ るが、これ らのカ リキュラムは単に受 験用 とい うだけでなく、大学や短大のコンピュー タ会計教育 を考 える上で非常に有用な役割 を果 たす可能性 を有 してい る。
( 2)
中級速習カ リキュラムの作成初級カ リキュラムは作成 ・公開 されているが、
中級カ リキュラムの作成 ・公開はまだな されて いないので、 ここでは公式ガイ ドブ ック中級 を 教材 とす る 「中級速習カ リキュラム」の一例 を 作成す る。 日商簿記検定2級程度の簿記の知識 と電子会計実務検定初級程度の会計 ソフ トの操 作能力 を前提 とす る。 「中級速習カ リキュラム」
は半期2単位 の授業でも取 り入れ ることができ るよ うに、「90分授業7回」で構成す る。
第1講
第1章 電子会計情報 の活用
1.資産 ・負債 ・純資産(資本)の状沢 の把握
①貸借対照表の構造
②貸借対照表情報の活用 2.損益の状況の把握
①損益計算書の構造
第2講
②損益計算書情報の活用 3.原価 の状況の把握
①製造原価報告書の構造
②損 益分 岐点 の活用
第3講
4.資金 の状況 の把握
① 実績資金繰 り表
②資金繰 り表情報 の活用
第4講
第2章 関連業務 か らの業務 デー タの活 用
1.現金 管理業務
①現金 管理業務 と会計処理
② 電子会計 にお け る処理 2.預金管理 業務
①預金 管理 業務 と会 計処理
②電子会計 にお け る処理 3.購 買管理 業務
①購 買管理業務 の流れ
②電子会計 にお け る処理
第5講
4.販 売管理業務
①販 売管理業務 の流れ
② 電子会計 にお け る処理 5.在 庫管理業務
①在庫管理業務 の流れ
② 電子会計 にお け る処理 第6講
6.給 与計算業務
①給 与計算業務 の流れ
②電子会計 にお け る処理
第3章 電子会計デー タの保 管 ・管理
1.電子取 引デー タの保 管 ・管理 2.原始証悪 ・出力帳簿書類 の整理 ・
保 管
第7講
第4章 模擬試 験 問題 の演習
5.
おわ りに本稿 では、イ ンターネ ッ ト上 に公 開 され てい るコン ピュー タ会計科 目の シラバ ス を調査 し、
どの よ うな授 業 内容 か を調 べ 、集 計 し考察 を加 えた。 さらに 日本 商 工会議所 「電子会計実務検 定」 につ いて大学 ・短大 にお け るコン ピュー タ 会計 教 育 の面 か ら と らえなお し、 「中級 速 習 カ リキ ュラム」 を作成 した。 ただ、 この調査 ・研 究は予備的なものに過 ぎず 、本格的なコンピュー
タ会計教 育 の調査 ・研 究 が必要 であ る。
注
1) 日本商工会議所 「子電会計実務検定」ホーム ペー ジhttp://www.kentei.ne.jp/kaikei/shokai.htm1
2)日本商工会議所編集[2008
]
『子電会計実務検定初級公式ガイ ドブ ック(弥生会計版)』 日経B P 社。
3)日本商工会議所編集[2005
]
『子電会計実務検定初級公式ガイ ドブ ック(勘定奉行版)』 日経B P 社。
4)日本商工会議所編集[2006
]
『子電会計実務検定初級公式ガイ ドブ ック(会計王版)』 日経B P社O 5) 日本商工会議所編集[2006
]
『子電会計実務検定初級公式ガイ ドブ ック(PCA会計版)』
TAC出版。
6)日本南本商工会議所編集[2006
]
『子電会計実務検定中級公式ガイ ドブ ック』 日経B P社。
7)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/jokyu.htm1 8)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/chukyu.htm1 9)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/syokyu.html 10)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/SofLhtml 11)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/han主.html 12)http://www.kentei.ne.jp/kaikei/time.html
コンピュータ会計科 目に関する一考察 201