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文書提出義務に関する判例について(二)

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文書提出義務に関する判例について(二)

その他のタイトル Die Rechtsprechung zur Vorlegungspflicht der Urkunde im Zivilpozes (2)

著者 上野 泰男

雑誌名 關西大學法學論集

巻 47

号 6

ページ 914‑977

発行年 1998‑02‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024512

(2)

1 9

事 実

1本資料の対象

2文書提出義務に関する規定の変遷

3

新民事訴訟法︵平成八年法律第一〇九号︶

4

︱一文書提出義務に関する判例の紹介とコメント

1

1 8

1

9

40

福岡地︵久留米支︶決昭五一・七・ニニ判時八四五号一 0

一 頁

X は ︑

︹資料︺

文書提出命令関係裁判例集三三三頁

Y が製造販売する接着剤を購入したが︑それに欠陥があったことを理由に︑ Y に対して損害賠償請求訴

文書提出義務に関する判例について

上 ︵ 二 ︶

五 〇

(3)

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

訟を提起した︒ところで︑ Y は︑右接着剤に関して購入者らからあったクレーム発生報告書を作成して所持して

い る

が ︑

X はこれを証拠とするため︑民訴三二︳条一号及び三号後段に基づいてその提出を求める申立てをした︒

X が本件文書が引用文書にあたるとしたのは︑ Y の従業員である A が証人尋問において︑このようなクレーム

報告書を作成所持していると証言したことによるが︑﹁ Y またはその訴訟代理人が本件口頭弁論あるいは準備書

面において右文書を引用したことはない﹂から︑引用文書に該当しない︒

ま た

X は︑法律関係文書とは﹁当該法律関係につき何らかの関係ないし関連のある事項が記載されている﹂

文書であると主張しているが︑民訴︱︱二二条︵新ニニ 0 条︶は﹁文書提出義務を⁝⁝証人義務とは異なり︑限定

された範囲でのみ認めているにすぎない﹂のであるから︑そのように﹁一般的条項﹂の意味に解することはでき

ないとした上で︑本件文書は法令上作成が義務づけられたものでも予定されたものでもない﹁所持者が専ら自己

使用のために作成した内部的文書にすぎない﹂のであって︑﹁せいぜい Y の製造販売した接着剤等を購入した不

特定または多数の者との間の法律関係につき作成された︵内部的︶文書である﹂といえるにすぎない︒したがっ

て︑多数の購入者が Y に対して製造物責任を追求しているような場合は別として︑﹁本件のように X ひとりが Y

の生産者︵製造物︶責任を問うている場合には︑挙証者たる X と文書の所持者たる Y との間の︑本件接着剤の接

着力の欠陥による損害賠償をめぐる法律関係につき作成された文書であるということはできない﹂とした︒なお︑

裁判所は︑本件報告書に記載されているクレーム程度のことは他の方法により立証可能であるとしている︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

︵ 要

旨 ︶

却下

(4)

2 0

事 実

判時八五四号六八頁︑判夕三五一︳一号二二三頁 訴えている場合と X 一人が訴えている場合とで︑どうして法律関係文書になったりならなかったりするのか疑問

︵同旨︑小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶

照︶︒本決定が証拠としての必要性についても言及しているところをみると︑このような文書が真実発見のため

に不可欠であるような事例も存在しよう︒新民訴法の下では四号文書として文書提出義務を肯定することができ

ようが︑その場合には自己使用文書の概念が問題となろう︒本決定は︑本件文書が法令上作成が義務づけられた

ものでも予定されたものでもないとして︑自己使用文書性を認めたので︑形式説に依っているものとみられ︑こ

れを支持する見解もある ︵松井秀樹﹁新民事訴訟法における文書提出命令と企業秘密②﹂

NBL

六 0 五号三二

頁︶︒しかし︑本件文書の提出により︑特に Y の利益が侵害されることはないのではないか︒

名 古

屋 高

決 昭

五 ニ

・ ニ

・ ︳

︱ ‑

高 民

集 三

0 巻一号一頁

下民集三二巻九!︱二号一︱一七頁

訟務月報二三巻七号一三四三頁

本 件 は 判 例 ︹ 1 7 ︺ の 抗 告 審 決 定 で あ る ︒ こ の 原 決 定 に 対 し ︑ X は︑本件において Y は訴訟当事者であって証人で

はないのであるから︑民訴二七二条︵新一九一条一項︶︑二八一条︵新一九七条︶ が残る 本決定を支持するものもあるが 関法第四七巻第六号

一項一号の類推適用はないこ

︵ 兼

子 一

11

松浦馨ほか・条解民事訴訟法一〇六二頁︹松浦︺︶︑多数の購入者が

︵ 九

一 六

一 五 三 頁 参

(5)

文 書 提 出 義 務 に 関 す る 判 例 に つ い て ロ した文書にあたるというべきであって︑ から︑民訴三︱二条︵新ニニ 0

条 ︶

一九六条︶︑二八一条の規定は︑次の理由で と︑さらに︑そもそも︑これら規定は真実発見の重要性を強調する民事訴訟手続においては例外的なものである

の場合に準用するとの明文規定がない以上︑類推適用は許されないこと︑仮

にこの類推適用が可能であるとしても︑引用文書については︑自ら文書の秘密保持の利益を放棄したものとみな

すべきであるから︑証言拒絶に関する右規定の類推適用がないことを理由に︑即時抗告を申立てた︒

︵ 要

旨 ︶

取消・羞戻

本件文書の隠蔽部分︹納税者の氏名又は法人名︑納税地や住所地の一部︑仕入先︑借入金の借入先︑役員及び

家族の状況︑従業員の氏名︑関係税理士の氏名︑住所等︺は︑﹁まさに相手方が当事者として訴訟において引用

︱つの文書についてその一部分の内容を準備書面等において言及してい

ないことを理由に引用文書に該当していないものということはできない﹂とし︑この点では原決定と同一の立場

にたった︒また︑証人義務と文書提出義務とは異なるとする X の主張も容れず︑﹁文書提出義務は︑限定的では

あるが︑公法上の義務︑訴訟法上の義務として証人義務と同じ性格を有する﹂ことは認めたが︑当事者の引用文

書については︑証言拒絶に関する民訴二七二条︑二八 0

条 ︵

新 法

類推適用されないとした︒すなわち︑引用文書について文書提出義務が認められるのは﹁もっぱら訴訟において

当事者は実質的に平等であらねばならないという基本的要請に基づくものであり︑当事者が訴訟においてその所

持する文書をみずから引用して自己の主張の根拠としながら︑秘密の保持を要請されているからといってその提

出を拒否するのは当該訴訟における相手方︑本件についていえば X の防御権を侵害するばかりでなく︑訴訟にお

ける信義誠実の原則に反し︑文書を引用してした相手方の主張が真実であるとの心証を一方的に形成せしめ適正

(6)

︵引用当事者が自己に不利︑不要なところを な裁判を誤らしめる危険さえ包蔵しているのでこれを X の批判にさらすことが採証法則上公正であると考えられ る﹂からであり︑秘密保持を要請されている文書を訴訟維持のために敢えて自らの主張の根拠にした当事者は

﹁該文書についての守秘義務を遵守せず︑それによって得られる秘密保持の利益を放棄したものとみなされるべ

きである﹂とした

なければならないような文書を書証として提出することは断念すべ彦であろう﹂ともいう︶︒

なお︑原決定を取り消して︑事件を原審に差戻したのは︑文書提出命令の許否の決定は訴訟指揮に関する裁判

として︑受訴裁判所に判断させるのが妥当であるとの理由に基づくものである︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

︵なお︑当事者においてあくまで秘密保持の利益を保持しようとするならば︑﹁一部を隠蔽し

1 7

︺のコメントで指摘したように︑第三者︵青色申告書提出者︶ の利益にもかかわるので︑困難な問題が生ず

る︒本決定が述べるように︑﹁一部を隠蔽しなければならないような文書を書証として提出すること﹂の適否の

記載されている数字を見れば X と類似の規模かどうかは判断できる﹂とするが︑ X と類似の規模であるかどうか

は︑やはり氏名や︑仕入先等を知らないと判断できないのではないか

五頁(‑九七頁︶も︑﹁たとえば同業者とされる者の営業場所が︑ X のそれと比し極めて有利であるような事情﹂

は住所や事務所の所在地が隠蔽されていると分からないから︑ Y による推計課税の正当性を攻撃できないであろ

うとする︶︒また︑隠蔽したところは引用していないとの理屈︵池田・前掲一五六頁以下︶が通れば︑およそ引 用文書について文書提出命令を認める理由はなくなるのではないか

︵右田﹁本件判例批評﹂判夕三六七号一九

問題として捉えることも可能であろう︒なお︑池田浩一・判評二二六号︵判時八六五号︶

一 五

五 頁

は ︑

﹁ そ

こ に

関法第四七巻第六号

五 四

︵ 九

一 八

(7)

2 1

文書提出義務に関する判例についてロ

隠蔽すると︑相手方当事者はこれに対抗する術がないことになる︶︒右田﹁本件判例批評﹂判タ︱︱︱六七号一九五 頁(‑九七頁︶も隠蔽部分は引用文書にあたるとする︒ただし︑第三者のために秘密保持の義務を負う場合には︑

文書の引用によって守秘義務の放棄があったとする点には反対で 号の類推適用を肯定するべきであるとする

︵ 一

九 八

頁 ︶

東京高決昭五――•―――・九行集二八巻三号一八九頁

下民集三二巻九!︱二号一 ︱ ニ ニ 頁

東高民時報二八巻三号五七頁

訟務月報二三巻三号五

0

0 頁

文書提出命令関係裁判例集三三五頁

︵一九七頁︶︑民訴二七二条︑二八一条一項一

X

は昭和四七年九月に旅券を持たずに上陸して日本に滞在していたが︑翌四八年八月三

0 日︑東京出入国審査

官から︑出入国管理令二四条一号に該当するとの認定を受け︑特別審査官からも右認定に誤りがない旨の判定を

受 け た の で ︑ Y

︵法務大臣︶に異議申立てをしたが︑右異議には理由がないとの裁決を受け︑東京出入国事務所 主任審査官から退去強制令書の発布を受けた︒そこで︑

X は Y

を 相

手 に

Y の右裁決︑及び︑東京出入国事務所

主任審査官の退去強制令書発付処分の取消を求める訴えを提起し︑特に︑出入国管理令二四条一号に該当する場

合 に

も ︑

Y は特別在留許可をすることができるにもかかわらず︑裁量権を逸脱した違法があることを立証するた

︵ 事

実 ︶

(8)

ぎ な

い も

の と

解 さ

れ る

︒ ﹂

め、民訴―—二ニ条(新ニニ0条)三号後段に基づき、XYに対してした異議の審査に関する稟議書及びこれに

付属する一切の文書の提出を求める申立てをした︒ Y は右文書は自己使用のために作成した行政庁の内部文書で

原決定は︑稟議書については内部文書であるとの Y の主張を認めて却下し︑その他の文書一切は文書の特定が

ないとの理由でやはり却下した︒これに対し︑ X は︑法律関係文書には当該法律関係の形成過程で作成された文

書も含まれ︑行政訴訟においては行政処分がされるまでの所定の手続の過程において作成された文書であって︑

右行政処分をするための前提資料となった文書をも包含すると解するべきこと︑稟議書以外の文書については︑

裁決委員会における議事録とそれに記載された意見と特定して︑即時抗告をした︒

︵ 要

旨 ︶

抗告棄却

0 )

Y が出入国管理令五 0 条に基づいてする特別在留許可は私人の権利を剥奪する処分ではなく﹁むしろ権利︑資

格を有しない者に対する特別の措置の性質を有する処分であって︑いわゆる自由裁量行為であると解され︑その 処分をする手続については法令上の定めはなされていない︒いわゆる裁決諮問委員なるものも担当職員が

Y を補

佐するための意見具申の方法として事実上設けられているにすぎないものと認められる︒したがって︑本件文書 は︑行政処分の適正公平を担保するために法令上その作成が予定されているような文書ではなく︑

Y が前記裁決

をするに当たり︑その適正を期するために︑行政庁内部においてもっぱら自己使用の必要上作成されたものにす

︵ コ

メ ン

ト ︶

あると主張している︒

関 法 第 四 七 巻 第 六 号

五 六

(9)

2 2

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

薬)•も(日本チバガイギー)•Yg

本件文書は法令上その作成が予定されていないにしても︑本件処分の適正を期するため作成されたものである ことは本件決定も認めているのであるから︑かつ︑これを提出することによって Y に格別の不利益も生じないと

考えられるから︑﹁法律関係の生成過程において作成された﹂法律関係文書として︑文書提出命令を肯定するこ

一 五

四 頁

︶ ︒

︵同旨︑小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九

福岡高決昭五ニ・七・ーニ判時八六九号二四頁︑判夕三五一号二四八頁

文書提出命令関係裁判例集五五頁

五 七

本件はいわゆるスモン訴訟において申立てられた提出命令の許否に関するものである︒ X

ら は

︑ Y l ( ︵

田 辺

(武田薬品)•\(国)を相手に、いわゆるスモン発症の原因はキノホルム内

服であると主張し︑これを統一診断書によって立証しようとした︒これに対し︑ Y らは︑右統一診断書の信用性

には疑問があるから第三者による鑑定の必要性があるとして︑鑑定の申出をした︒これに対し︑ X らは︑この統

一診断書は︑統一カルテによる診察と諸検査に基づいているが︑これ以外の基礎資料として︑これまでスモン患

者がスモン診断を受けてきた各病院における診断書及び投薬証明

( X

ら弁護団が一号投薬証明書とよんできた

量・期間の記載のある証明書面で︑いわゆる投薬証明書︑病状記録︑カルテの写し︑レセプトなど︶ ︵

事 実

下民集二八巻五ー八号七九六頁

二 号

とができるのではないか

)

の ほ

か ︑

X

(10)

らが保存していたメモ︑日記帳等の資料を検討した結果であるとの主張を︑第三一回口頭弁論期日において︑ Y

らの鑑定申請に対する反論として主張した︒そこで︑

Y l

! Y

は︑いわゆるスモンにつきキノホルム原因説にたっ a

ても︑特に発症前において服用したキノホルムの量及び期間は重要であるとして︑右一号投薬証明書につき︑引

用文書として︑その提出命令の申立てをした︒

原審︵福岡地決昭五ニ・六・ニ︱判時八六九号二八頁︶は︑ Y らの文書提出命令の申立てを却下した︒その理

一般に民訴一三二条一号にいう引用とは﹁当事者が口頭弁論等において︑自己の主張の助けとするために

特に文書の存在と内容とを明らかにすることを指すものと解され﹂るが︑﹁このような文書の提出義務を当事者

の一方に課するのは︑それを所持する当事者がこの文書の存在を積極的に主張して裁判所に自己の主張が真実で

あることの心証を一方的に形成させる危険を避けるためであり︑それには当該文書を提出させて相手方の批判に

さらすのが衡平であるという実質的考慮に基づくものであることも疑いのないところであ﹂り︑したがって︑

﹁この文書の存在及び内容が︑それを明示した当事者の主張との関連において枝葉末節的な位置しか占めておら

ず︑右当事者の主張の真実性を積極的に強めようとする可能性もない場合には﹂文書の存在及びその内容を明示

しても︑﹁引用﹂にはあたらないとした上で︑本件においては︑ X らは︑﹁スモン発症の原因はキノホルムの内服

であり︑服用の量及び期間はスモン発症との間の因果関係の認定においては法的意味を有せず︑これを立証する

必要はないとの立場を一貫してとってきた﹂ことからすれば︑本件﹁一号投薬証明書の存在によっていわゆる統

一診断書の証明力が増強されるという関係には︵少なくとも

x

らのこれまでの主張︑態度等を勘案する限り︶な

い の

で あ

っ て

﹂ ︑

Y らが指摘する X らの主張は︑﹁その主張当時において鑑定問題という焦眉の急に接し︑鑑定不

由 は

(11)

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

立認容の決定がされた︒ 要の論拠としていわゆる統一診断書の証拠価値に触れた際のいわば筆の走りとでもいうべきものであり︑これを とらえて﹃引用﹄であるとする Y らの主張はいささか揚げ足取りの感を免れない﹂とするものであった︒

︵ 要

旨 ︶

一 部

取 消

・ 認

容 ︑

一 部 抗 告 棄 却

x らのうち一部の者に対する文書提出命令の申立てにおいて︑文書の表示が明らかにされていないこと︑及び︑

一部の者が文書を所持していないことを理由に︑即時抗告が棄却されたほかは︑次の理由で却下決定取消し︑申

﹁民事訴訟制度の適正な運用を確保するには︑およそ真の争点の解明に役立つ資料は︑迅速な裁判の要請との

調和を図りつつ︑すべて法廷に提出されるのが理想であ﹂り︑文書提出命令の制度はこの理想実現の一方法とし

て設けられたものであるから︑引用の意義に関する一般論については︑原決定と同一の立場によるとしたが︑本

件 に

お い

て ︑

X らが一号投薬証明書の存在と内容とを明らかにしたのは︑その提出にかかる﹁いわゆる統一診断

書の精度の高さ︑すなわち︑証明力の高さを立証するもの﹂としてであり︑しかも︑ X らが﹁スモン罹患の原因

はキノホルム剤の内服であり︑服用の量及び期間はスモン罹患との間の因果関係の認定においては法的意味を有

せず︑これを立証する必要はないとの立場を一貫してとってきた﹂ことからすれば︑ X らの﹁一号投薬証明書の

存在と内容との明示が直接 x らの主張と結びつくものとはいえない﹂が︑右明示は﹁本件の最大の争点であるキ

ノホルム剤の服用とスモン罹患との間の個別的因果関係の有無の判断についての重要な証拠であると X らが指摘

する統一診断書の証明力を増強するため﹂である以上︑ X らは︑﹁キノホルム剤の服用とスモン罹患との間の個

こ の

決 定

に 対

し ︑

Y l

及 び

が Y Z

即 時

抗 告

(12)

四頁︑住吉・判夕三六七号一九九頁の研究がある︒

本 件

に は

︑ 上

村 ・

判 評

二 三

二 号

︵ 判

時 八

八 ︱

︱ ︳

号 ︶

別的因果関係の存在という自己の主張の助け﹂のために本件文書の存在と内容とを明らかにしたものということ

ができ︑﹁鑑定申請に対する反論という限定された局面でなされたものではあるけれども︑そこには本件訴訟に

つ い

て の

X らの前記基本的な考え方が開陳されており︑また︑ X らの反論︵鑑定不要論︶は︑とりもなおさず

x

らが一貫してとっている基本的な訴訟態度の反映であると目することができるのであって﹂︑単なる﹁筆の走り

︵ コ

メ ン

ト ︶

一五三頁︑遠藤・ジュリスト昭和五二年度重要判例解説一四

住吉•前掲二0二頁は、本件要旨は「いわば補助事実としての事実主張の中に文書の引用がなされたにとどま

る場合でも﹂引用文書に該当すると要約することができるが︑このような拡大は一般義務の承認の方が直裁でよ

いとする︒なお︑小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六五号︵判時九八九号︶︵一四五

頁︶も﹁かなりの限界事例であるにもかかわらず︑積極的な判断をなしている点で注目に値する﹂としている︒

上村・前掲一五七頁は︑引用文書の提出義務はフェア・プレイの要請ないし公正や信義則の要請が強く働く場合

を想定するものであるから︑﹁文理を離れてまで適用範囲を狭く限定することは︑法の趣旨にそわない﹂とし

︵ ド

イ ツ

ZPo

四二三条のように︑﹁立証のために引用する﹂という文言がないのに証拠のために引用した場合に

限るとの解釈をするのは不当であることを指す︶︑﹁およそ自己の主張の直接または間接の助けないしは裏づけと

して文書の存在を陳述した場合﹂をも含ませるのが妥当であるとし︑本件要旨に賛成する︒ と﹂いうことはできず︑引用文書に該当する︒

関法第四七巻第六号

六 〇

(13)

2 3

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

ロ も ︑

X らの前記態度から X に本件診療録の所持があると主張しているが︑民事訴訟一ニ︱二条︵新ニニ 0

条 ︶

の 所

持 者

と は

主張の通り︑﹁文書を現にその手裡に所持していなくても︑いつでも事実上これを自己の支配 Y l

二 貝

は ︶

用文書︶により X らの診療録の提出を求めた︒この診療録については︑

の申立て基づいて発された裁判所の送 Y l

付 嘱

託 に

対 し

︑ ( Y I

の 主

張 に

よ れ

ば ︶

x らが関係医療機関に対し︑集団で継続的にカルテを提出しないよう働き

かけたので︑右医療機関の意思が抑圧されて提出されなかったという事情があった︒原審決定︵判時八六九号三

一号投薬証明書が引用文書にあたらないのと同一の理由で︑本件診療録も引用文書に該当せず︑しか

2 2 ︺

事 件

と 同

一 の

事 件

に お

い て

︑ Y l

︵ 田

辺 製

薬 ︶

は ︑

2 2

︺事件における一号投薬証明書のほか︑同じ理由︵引

︵ 事

実 ︶

文書提出命令関係裁判例集一六頁 下民集三二巻九 i ︱二号一︱六七頁 文書提出義務の拡張解釈の方法の限界を示すものであるといえる︒本件においても︑ Y らとしては︑鑑定申請が

認められれば敢えて本件一号投薬証明書の提出は不要であると考えることもあり得るであろうから︑新法の下で

は︑引用文書としては︑自己の主張を直接理由づけるため積極的にその存在と内容とか明らかにされたものに

限っておき︑本件のような文書は︑四号文書に該当するとして処理するのが妥当であるとも考えられよう︒

福岡高決昭五ニ・七.︱二判時八六九号二九頁︑判夕三五一号二四八頁 同

じ ︑

一般論から出発しつつ︑原審決定と抗告審決定とで正反対の結論が出たということは︑旧法下における

︵ 九

二 五

一 号

(14)

い ﹂

と し

た ︒

に移すことのできる地位にあるものも含まれると解すぺき﹂であるが︑関係医療機関が X らの意向を十分に考慮

したため︑本件診療録不送付の判断をしたことは推認できるものの︑﹁それだけでもって診療録の提出の可能性

がもっぱら X らの意思にかかっているということはできない﹂として︑ X ら に 所 持 も な い と し て ︑

の申立てを Y I

却 下 し た ︒ そ こ で ︑

が即時抗告をしたのが本件である︒ Y l

︵ 要

旨 ︶

抗告棄却

所持者の一般論としては︑原審決定と同様︑﹁文書を現実に握持している者のみに限局して狭義に解すべきも

のではなく︑文書を他に預託した者やその共同保管者など︑社会通念上文書に対して事実的支配力を有している

と評価できる者をも包含して指称するものと解するのが相当であ﹂り︑文書提出命令が確定したにもかかわらず

これを提出しないと︑所持者に対して民訴︱︱二六条︵新ニニ四条一項︶︑三一八条︵新ニニ五条︶ のような制裁

が課されることからすれば︑﹁文書を現実に握持していないにもかかわらず︑社会通念上文書の所持者としてそ

の提出を命ぜられるのは︑当該文書をいつでも自己の支配下に移すことができ︑且つ自己の意思のみに基づいて

これを提出できる状態にある場合たることを要するものと解するべきである﹂とし︑本件診療録については︑い

ずれも︑それらを作成した関係各医療機関においてこれを所持するものというべきであって︑ X らが﹁その独自

の立場ではもちろんのこと︑関係各医療機関と共同してでも︑本件各文書を所持しているものということはで

き ﹂

ず ︑

X らが関係各医療機関に働きかけたことによってその提出を妨げたということが事実であったとしても︑

﹁直ちに︑⁝⁝本件各文書につき︑ X らに所持があるとの規範的評価を与えるぺきものと断ずることはできな

関 法 第 四 七 巻 第 六 号

(15)

2 4

文 書 提 出 義 務 に 関 す る 判 例 に つ い て ロ

︵ コ

メ ン

ト ︶

本件についても、〔22〕のコメントに掲げた判例研究がある。上村・前掲一五八頁は要旨賛成。遠藤•前掲一四

六頁も同様。住吉•前掲二0

二頁は一般論は正当であるが、「協力提出を命ずる旨の提出命令を下すのを適切と

しよう︒﹂とし︑他の場面でも︑﹁二人以上の者に連帯して特定の文書の提出を命ずる提出命令などを用いる余地 本件は︑文書の所持概念に関するものであり︑文書提出義務の範囲の問題には関係しない︒

福岡高決昭五ニ・七•一三判時八六九号三二頁、判夕三五一号二四九頁

高民集三 0 巻三号一七五頁

文書提出命令関係裁判例集︱二八頁

︵ 日 本 チ バ ガ イ ギ ー ︶ は ︑ ︹

2 3 ︺

事 件

に お

い て

Y l

︵ 田

辺 製

薬 ︶

が申立てた診療録の提出命令を︑民訴三︱二条︵新ニニ

0 条︶三号前段の利益文書に該当することを理由に申立

原審決定は︑利益文書とは﹁後日の証拠のために︑または権利義務を発生させるために作成されたものであっ て

た ︒ ︹

2 2

︺ お

よ び

2 3 ︺事件と基本事件を同一にする︒

Y Z

︵ 事

実 ︶

下民集三二巻九 i 二︳号一︱八八頁 下民集二八巻九 i 二︳号九六九頁 は少なくないと予想される﹂と︑示唆深い指摘をする︒

︵ 九 ︱ 一

七 ︶

(16)

て い

る ︶

︒ も

即 時

抗 告

て︑挙証者の地位︑権限または権利を示す文書﹂をいい︑﹁従って提出を求められている文書が右文書に該当す

るか否かを判断するに際しては︑当該文書が作成された動機︑目的が重視されるべき﹂であるとする︒そして︑

診療録については︑医師法二四条が医師にその作成を命じているのは︑﹁患者のために適正な診療を行わしめる

ための手段の一っとして︑医師にその行為の適正性を証明させるために作成させ︑行政的に取締りをなしていく

こと﹂が主たる目的であるが︑同時に﹁診療を受けた患者自身の社会的権利義務を確定ないし確認﹂すること︑

さらには﹁訴訟における重要な証拠方法となることが︑その役割として予定されている﹂と考えられるから︑訴

訟とは﹁一般に当該患者と医師との間の医事紛争に関するものが予想﹂されており︑それに限られないとしても

﹁せいぜい当該患者又は医師のいずれかが訴訟の当事者となり︑自己の主張を裏づけるために右診療録をその立

証活動に供する﹂場面までしか予定されておらず︑﹁患者と第三者もしくは医師と第三者との間の訴訟において︑

右診療に直接関連のない第三者がこれをその立証活動に利用するといったことは︑全く予測の外にあるというペ

きである﹂とし︑本件のごとき薬害紛争は﹁少なくとも現段階においては全く偶発的であり︑かかる場面におけ

る証拠確保の利益は診療行為の介在という事実があっても︑診療録作成の動機目的として予定されたものとは認

め難く﹂︑利益文書にいう利益として法的に熟したものとは評価しがたく︑それは﹁せいぜい反射的︵間接的︶

利益に止まる﹂として︑申立てを却下した︵なお︑このような薬害紛争に伴う第三者︵製薬会社︶

療録作成の動機・目的であるとの一般の認識が確立されれば︑それも利益文書にいう利益に昇華すると付言され

︵ 要

旨 ︶

取消羞戻

関法第四七巻第六号

六 四

の利益も︑診

(17)

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

原審同様︑利益文書とは﹁挙証者の権利義務を発生させるために作成されたものや︑また後日の証拠とするた

めに作成されたものであって︑挙証者の地位や権利ないしは権限を明らかにする文書﹂をいうとしたが︑その作

成目的については︑﹁それが直接挙証者のために作成されたものはもちろん︑間接に挙証者の利益を含むもので

あってもよい﹂とし︑診療録の作成目的についても原審決定と同様に解したが︑それに加えて︑それは﹁民事の

訴訟においても重要な証拠方法となることが多い等︑社会的にも重要な役割をもっているので︑それらの必要に

資するための公益上の見地からも﹂その作成が義務づけられており︑民事訴訟に関していえば︑﹁一般的には︑

先ず当該患者と医師との間の医療過誤等の医療紛争が考えられるが︑単にそれのみではなく︑当該患者が一方の

当事者となった第三者との間の訴訟︵交通事故のような場合︶︑医師と第三者との間の訴訟︑当該医療行為の過

程において関与した医師以外の医療関係者の当該医療に関して生じた紛争︑当該診療過程において処方︑投与さ

れた医薬品により生じたいわゆる﹃薬害訴訟﹄等も直接的ではないけれども︑潜在的なものとして予想されてい

る﹂とした︒そして薬害事件訴訟は︑近時とみに続発して一般化の傾向にあり︑﹁それはその性質上常に診療行

為に潜在し︑単に偶発的なものとはいえなくなっている﹂から︑本件訴訟においても︑本件診療録は﹁単に医師

及び患者である X ら利益のためのみではなく︑その記載内容自体︑右キノホルム剤の製造︑輸入︑販売した者で

あって︑本件加害者とされているもの右スモンとのかかわり合い︑すなわち︑その法的地位を明らかにするもの

として︑その目的からして︑間接的ではあるけれども極めて密着したもの利益を含む趣旨として作成されたも

の﹂ということができ︑また︑本件においては右診療録は﹁挙証者であるもが自己の法的地位を立証するための

最も重要な証拠となることが推認される﹂から︑それは利益文書に該当するとした︵提出命令を発するためには

(18)

所持者たる第三者の審尋を必要とするので原審に差戻し︶︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

0 )

一 五 ︳ ︱ ‑ 頁 ︑ 遠 藤 ・ ジ ュ リ ス ト 昭 和 五 二 年 度 重 要 判 例 解 説 一 四

住吉•前掲二0

二頁は、利益文書にいう利益とは、もともと実体的利益を意味し、したがって、その文書が証

拠となれば︑特定事項につき挙証者に有利な認定がされるものを意味したが︑本件では利益概念は全く異質のも のとして解釈され︑それは訴訟の争点に関連しているということ︑その証拠調べを当事者の一方が欲していると いうことだけを意味していることを指摘し︑これによって︑法律関係文書の拡張によって網にかかってこなかっ た第三者所持の文書も一般義務的に文書提出命令の対象とすることが可能とされたとする︒

上村・前掲一五八頁も本件要旨に基本的に賛成し︑むしろ︑本件のように作成目的を問題にする必要はなく︑

﹁具体的な争点を解明するうえで︑当該文書が少なくとも挙証者の法的地位︑権利︑権限などを明らかにするこ とに役立つのであれば︑その文書は挙証者の利益のために作成されたとみるのが合目的的で﹂あり︑作成の目的 は﹁客観的に挙証者の法的地位︑権利︑権限などを明らかにすることに役立つものであれば足りる﹂とする︒し かし︑このように広く解するとなると︑﹁当該文書の提出を求める利益と︑文書所持者たる相手方当事者や第三 者が当該文書について有する利害との調整を必要とする局面が多くなろう﹂と予想し︑﹁利益考量を通して︑真

実発見に協力すべきか否かを判断すべきであろう﹂とする︒

遠藤•前掲一四七頁は、利益概念は伸縮自在であるが、本件要旨が本件診療録を利益文書にあたるとしたのは、

四頁︑住吉・判夕三六七号一九九頁の研究がある︒ 本件には︑上村・判評二三二号︵判時八八三号︶

関 法 第 四 七 巻 第 六 号

六 六

(19)

2 5

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

︵ 事

実 ︶

下民集二八巻九!︱二号九六九頁 ﹁率直には利益文書概念の非常な拡大﹂であるとし︑この﹁拡大に対する合理的限定・歯止めを設定することが 必要と思われる﹂とする︵但し︑自己使用文書概念によるのは正当でないともする︶︒

本件では利益文書概念の拡張によって問題の解決がはかられたが︑原審決定と抗告審決定とで判断が違うこと︑

訴訟上の必要性︑拒絶権等の問題の判断をする必要があることなどを考えれば︑新民訴法の下では四号文書とし

て︑文書提出義務の存否が判断されるべきではないか︒新民事訴訟法の制定が︑従来の文書提出義務の範囲に影

響しないとすると︑解釈により︑利益文書として文書提出義務を肯定する判例と︑四号文書として肯定する判例

か)が問題となろう。この点については、中野貞一郎・解説新民事訴訟法五二頁、原強「文書提出命令①|~学

者からみた文書提出義務」三宅省三ほか編『新民事訴訟法大系ー~理論と実務』③一三一頁、山下孝之「文書提

出命令②││弁護士からみた文書提出義務﹂前掲﹃新民事訴訟法法大系﹄③一五 0

頁 な

ど 参

照 ︒

福岡高決昭五ニ・九・一七判時八六九号三五頁︑判夕三五二号一六一頁

下 民

集 一

= 二

巻 九

! ︱

二 号

︱ 二

0

一 頁

文書提出命令関係裁判例集一三三頁

24〕事件の羞戻決定を受けて、福岡地決昭五ニ・八•一0判時八六九号三六頁は、所持者である医療機関z

が出てくることになり︑理論的には︑さらに︑ 一号ないし三号と四号との関係︵併存関係か︑補完・優先関係

(20)

2 6

東京高決昭五ニ・七・一判夕三六 0 号一五二頁 当であり︑決定は正当である︒ 本件診療録は︹24︺のコメントでも指摘したように︑拡張利益文書であり︑したがって拒絶権の有無が一般に問 題となり得る︒しかし︑結論としては︑ X らが訴えを提起した以上︑ N は守秘義務を免除されたと解するのが妥

東高民時報二八巻七号一五三頁

訟務月報二三巻七号︱二四八頁

上村・前掲一五九頁、遠藤•前掲一四八頁は要旨賛成。

四頁︑住吉・判夕三六七号一九九頁の研究がある︒

本 件

に は

︑ 上

村 ・

判 評

二 三

二 号

︵ 判

時 八

八 ︱

︱ ︳

号 ︶

審尋したうえで︑文書提出命令を発した︒これに対し︑ N は︑守秘義務違反になること等を主張して即時抗告︒

︵ 要

旨 ︶

抗告棄却

医師が業務上知りえた患者の秘密を守秘する義務を負っており︑診療録の記載中︑﹁患者の病名︑症状は性質

上右の秘密に該当する﹂が︑﹁本件訴訟においては︑患者が原告となり︑損害賠償請求権の発生を基礎づける主

要事実の一部として自己の秘密である病名︑症状を開示して Y に損害賠償を求めているのであるから︑本件各診

療録に関しては N の守秘義務違反の問題は発生しないものということができる︒﹂

︵ コ

メ ン

ト ︶

関 法 第 四 七 巻 第 六 号

一五三頁︑遠藤・ジュリスト昭和五二年度重要判例解説一四

(21)

文 書 提 出 義 務 に 関 す る 判 例 に つ い て ロ 文書提出命令関係裁判例集三三七頁

︵国︶に対して︑国家公務員災害補償法及び国 X は税務署員であるが︑過重な加算機専担業務を課されたため︑頸腕症候群等の傷害を被ったことを理由に補

償を求めたところ︑国税庁は X の傷害を公務上のものと認めなかったので︑ X は人事院に対し︑審査申立てをし

た︒人事院は︑審査申立てがあると︑人事院の職員と学識経験者からなる災害補償審査委員会の審理に付し︑右

委員会は事実調査︑実地調査等を行い︑この調査結果に基づいて審理をし︑その審理の内容の概要及び委員会の

意見を記載した調書を作成して人事院に提出しなければならず︑人事院はこの調書に基づいて判定を行うことに

な っ

て い

が ︑

X の審査申立ては棄却された︒そこで︑ X

は ︑

Y

家賠償法に基づき︑財産上の損害のほか︑慰謝料の請求をし︑その発生原因の一っとして︑人事院の違法・不当

な手続によって精神的損害を被ったことをあげた︒そして︑この点の立証に必要であるとして︑審査会作成の調

書を︑民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶三号の利益文書及び法律関係文書に該当するとして︑提出命令の申立てをし

た︒原審決定はこれを法律関係文書に該当するとして︑ Y に提出命令を発したが︑ Y は本件調書は内部文書で

あって法律関係文書には該当しないこと︑また︑ Y には守秘義務があると主張して︑即時抗告を申立てた︒

︵ 要

旨 ︶

取消・却下

本件決定は︑人事院の判定は︑災害補償につき簡易迅速な解決を与えるため︑災害補償請求権についての行政

庁の見解を示すものであって︑右請求権の存否に何等影響を与えないこと︑人事院の審査判定の手続が適正なも

のでなければならないことは当然であるが︑ X には審査申立てを書面で行い︑委員会に証拠書類その他の物件を

︵ 事

実 ︶

(22)

提出することができ︑口頭で意見を述べる機会が与えられるものの︑それ以外に手続への関与は許されておらず︑

申立人は﹁判定の適正に行われることを要求しうる権利を有するものではな﹂<︑従って︑右審査手続の過程に

お い

て ︑

X と Y

との間に審査手続の適正に関する特定の法律関係が発生するものではな﹂いから︑本件調書は規

則上その作成を義務づけられたものであるが︑ X は﹁その記載内容につき実体的利害関係を有するものではなく︑

右調書はもっぱら︑右委員会の人事院に対する報告ないし意見を伝達するための手段としての内部文書であると

さらに︑国家公務員法一

0

0 条四項によると︑人事院が調査または審理を行う際︑陳述ないし証言を求められ

た場合︑守秘義務を理由にこれを拒否できないこととされており︑法廷等において陳述ないし証言を拒否できる 事項であっても︑人事院の調査または審理にあっては陳述・証言を得ることができるようになっている︒ところ で︑民訴三︱二条による文書提出義務は﹁裁判所の審理に協力すべき点において︑基本的には証人義務と同一の 性格を有するものであるから︑文書の記載内容が国家の秘密︑公共の利益あるいは職務上の秘密にわたる場合﹂︑

民訴二七二条ないし二七四条︵新一九一条︶及び二八一条︵新一九七条︶ の類推適用により︑文書提出義務は否

定されると解するべきであるとし︑本件調書には︑ X の 上 司 及 び 同 僚 か ら ︑ X の従事した業務︑処理した業務量︑

勤務状況︑執務環境︑健康状態等につき調査した供述書や︑ X を診療した医師らから診療経過︑医学的所見等に

つき証言を求め︑これを記載した供述書が含まれており︑﹁これら供述書中には︑ X の上司及び同僚や公表を望

ま な い 個 人 的 知 見 ︑ X

を診療した医師の職務上の秘密にわたる事項が含まれていることは当然予想され︑しかも

前記委員会に対する上司や同僚の供述は︑その供述内容を外部に公表しないことを条件としてえられたものであ いうべきである﹂とした︒

関法第四七巻第六号

(23)

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

否するのは︑不当であると思われる﹂とする︒ に該当せず︑文書提出命令の対象とならない﹂とした︒

一 五

頁 二

は ︑

本 件

に つ

き ︑

ることが︑記録上明らかである﹂から︑本件調書が法廷に提出されることになるとすると︑民訴法二七二条以下

︵ 新

一 九

一 条

の規定の趣旨が没却されることになり︑また︑本件審査は﹁ X の身体的精神的状況全般の検討が

必要であるから︑調査は X の個人的な秘密にも関係し︑これに対応して︑委員会の調査を受ける証人等も公表を

望まない証人等の個人的秘密ないし職務上の秘密にわたる知見につき陳述ないし証言を求められることに﹂なり︑

X

の個人的秘密は別としても︑﹁証人等の個人的秘密を守ることは当然のことであるから﹂

Y には守秘義務があ

り︑本件調書を公表する自由を有しないとし︑﹁以上を総合すると︑本件調書は民訴法︱︱二二条一二号後段の文書

︵ コ

メ ン

ト ︶

小林秀之﹁文書提出命令をめぐる最近の判例の動向﹂判評二六六号︵判時九九二号︶

本決定は上級官庁に対する不服審査制度に対する理解があまりに一面的であり﹂︑それにも準司法的手続の側面 があることを考えれば︑人事院による判定の適正さを裁判所が吟味できるためにも︑判断の基礎となった資料を ある程度開示することも肯定してよいのではないだろうかと要旨に批判的であり︵もっとも︑本件では証言拒絶 権等に準ずる不都合さがあったので︑結論には賛成している︶︑特に行政庁側がこのような不都合さを主張・疎 明しないかぎり︑﹁単に自己使用のために作成された内部的文書であることだけを理由に文書提出の申立てを拒 本件においては︑人事院における審査手続の違法不当が慰謝料請求権の発生原因の一っとされているのである

から︑右審査手続において作成された文書はまさに法律関係文書に該当すると解するべきである︒本件要旨は︑

(24)

2 7

x

ら は Y

で あ

る ︒

本件調書の性格と Y

には守秘義務が存在することを総合判断して︑法律関係文書に該当しないとしているが︑

般論としては︑少なくとも拡張解釈された法律関係文書に該当しても︑拒絶事由が存在するときは提出命令を発 することができないという理論構成がされていたのではないか︒また︑本件の場合︑果たして︑

y に守秘義務が

あるのかということも︱つの問題であろう︒なぜなら︑公表をしないことを条件としてされた証言や陳述は︑

X

に不利益なものであることが予想され︑このような証言等に基づいて判断をすること自体︑その正当性が確保さ

判時八八三号九頁︑判夕三五九号一九四頁

金商五四七号︱二三頁︑金法八五五号二八頁

判時八九四号七七頁

本件は︑いわゆる Y

第二多奈川火力発電所建設禁止及び損害賠償請求訴訟に関連した文書提出命令事件の一っ

︵ 事

実 ︶

︵ 関

西 電

力 ︶

の第一火力発電所から排出された汚染物質によってその健康を害されたことを理由とし

て 損

害 賠

償 を

Y がさらに第二火力発電所の建設を計画したのに対して︑建設禁止を求める訴えを提起し︑

Y が 文書提出命令関係裁判例集二五六頁

大阪高決昭五――-•三・六高民集――二巻一号三八頁

れないのではないかとの疑念が存在するからである︒

七二︵九三六︶

(25)

文 書 提 出 義 務 に 関 す る 判 例 に つ い て ロ

所持している二酸化いおう︑風向・風速︑降下ばいじん量等の測定記録︑第一火力の出力及びアンモニアの注入

記録等をインプットした磁気テープとこのテープから右記録を取り出すのに不可欠な資料の提出を求める申立て

をした︒原審決定は︑ Y が所持しないものを除いて X らの申立てを認容して文書提出命令を発した︒そこで︑ Y

は ︑

Y が所持していない記録の提出を命じられている部分があること︑原審決定は何らの理由も付することなく︑

磁気テープを文書と断定していること︑また︑この磁気テープを法律関係文書と解することは﹁解釈論の限界を

逸脱した民訴法の不当な拡大解釈﹂であること︑本件磁気テープは Y が常時会社において所持しておかないと︑

日常業務の遂行に重大な支障を被ることになること︑本件磁気テープには申立て対象外のデータもインプットさ

れており︑その中には Y が秘密扱いとしているものもあること︑磁気テープの棄損を完全に防止するための保護

措置を準備することが提出命令の前提たるべきこと︑申立てにかかるデータのみをインプットした磁気テープを

作成してその提出を命ずる趣旨であるとすれば︑それには多額の費用がかかること等を理由に即時抗告を申立て

︵ 要

旨 ︶

抗告棄却︵一部取消・却下︶

Y が不所持を主張した部分については︑原決定を取り消して申立てを却下したが︑その余の部分については抗

まず︑磁気テープが文書であるか否かにつき︑﹁一般的にみて磁気テープ︵電磁的記録︶自体は通常の文字に

よる文書とはいいえない﹂としたが︑﹁種々の情報ないし記録を磁気テープにインプットして保存する方法は︑

近年急速に発達した技術の所産であり﹂︑これが急速に採用されているのは︑﹁膨大な情報・記録を極度に圧縮し 告が棄却された︒ こ ︒

(26)

というべきである﹂とした︒

て収録し得る利点﹂にあると考えられ︑これを採用利用する者は﹁当初から︑インプットした情報・記録を将来

利用する必要が生じたときは︑これに要するプログラムを作成︵記録の選択︑配列︑演算等︑専門家の意思に基

づいた指定を行うこと︶し︑このプログラムを使用し︑磁気テープに適合したコンピュータ装置を用いてアウト

プットすることを当然のこととして予定﹂しているのであるから︑﹁磁気テープの内容は︑それがプリントアウ

トされれば紙面の上に可視的状態に移しかえられるのであるから︑磁気テープは︹民訴三︱二条︵新ニニ 0

条 ︶

にいう︺文書に準ずるもの﹂と解するべきであるとした︒そして︑﹁情報ないし記録を磁気テープにインプット

するのは︑将来必要となった場合にこれを見読可能なものとして紙面等に顕出することを目的としているもので

あって︑インプットした情報・記録等を見読不能の状態で保存することのみを目的としているものではない﹂か

ら︑﹁裁判所からその提出を命じられた場合には︑単に磁気テープを提出するのみでは足りず︑少なくともその

内容を紙面等にアウトプットするに必要なプログラムを作成してこれを併せて提出すべき義務を負っているもの

次に︑民訴三︱二条︱︱ー号後段にいう法律関係文書とは︑﹁両当事者間に成立する法律関係それ自体を記載した

文書だけでなく︑その法律関係の形成過程において作成された文書やその法律関係に関連のある事項を記載した

文書も含む﹂と解するべきであるとし︑本件では︑ X

ら は

Y の不法行為による Y 第二火力発電所の運転の差し

止 め

を ︑

X ら一部が Y 第一火力発電所から排出された大気汚染物質により慢性気管支炎等に罹患したとして不法

行為による損害賠償請求をするものであるから︑本件資料はいずれも︑大気汚染の有無.程度と関係を持ち︑

﹁いずれも公害による不法行為の法律関係と関係をもつもの︑いいかえると︑大気汚染とこれによる付近住民た

七四

(27)

2 8

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

判 例

に つ

い て

七五 る X らの損害発生という法律関係に関係を持つもの﹂と解することができるから︑本件磁気テープは法律関係文 そ

の 他

Y は単に抽象的に業務の遂行に支障を生ずるとの理由で当然に文書提出命令を拒否することはできな

い こ

と ︑

Y において秘密部分を特定し︑理由を明示する等して提出命令を妨げる特段の事情を立証しない限り︑

単に磁気テープの中に企業内部で秘密扱いにしているものが含まれていると主張するだけで︑当然にはその提出

を拒むことができないこと︑︵また︑秘密部分をアウトプットし得ないようなプログラムを作ることも可能であ

るとする︶︑磁気テープの保管は裁判所の訴訟指揮により Y に委ねることも可能であること︑提出に要する費用

は書証として提出するもの

( X

)

が負担するべきであること等を判示した︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

本決定は︑法律関係文書とは︑﹁両当事者間に成立する法律関係それ自体を記載した文書だけでなく︑その法

律関係の形成過程において作成された文書やその法律関係に関連のある事項を記載した文書も含む﹂と解するべ

きであるとするが︑﹁両当事者間に成立する法律関係それ自体を記載した文書﹂が固有の法律関係文書であると

すれば︑﹁その法律関係の形成過程において作成された文書やその法律関係に関連のある事項を記載した文書﹂

は︑法律関係文書の概念が拡張された文書に該当しよう︒新法の下では︑この部分を従来通り三号文書とみるか︑

四号文書とみるか︑あるいはいずれにも該当するとみるかが問題となる︒

大阪高決昭五――-•五・一七判時九0四号七二頁、判夕_―-六四号一七三頁

書に準ずる文書であるとした︒

(28)

原審決定︵神戸地決昭五ニ・︱ニ・ニ七判時九 0 四号七三頁︶は︑民訴︱︱二二条三号前段の利益文書とは︑

﹁後日の証拠のために又は権利義務を発生させるために﹂挙証者の利益に作成された文書であるが︑﹁挙証者の

みの利益のために作成されたものばかりでなく︑挙証者と所持者など他人との共同の利益のために作成されたも

の﹂や﹁疸接挙証者のために作成されたものだけでなく︑間接に挙証者の利益のために作成されたものでもよ

い﹂と解するべきであるとし︑本件診療録は︑医師や患者だけではなく﹁キノホルム剤を製造販売した Y

の ス

ンとの関係︑即ちスモン発症についての損害賠償義務の存否を証明するものとして︑間接的ではあるが Y

の 利

のためにも︑作成されたものとみることができる﹂とし︑さらに︑ N らの患者の秘密の守秘義務については︑患

者である X らがキノホルム剤を服用しスモンに罹ったとして損害賠償請求訴訟を提起している以上︑所謂プライ

︵ 新

ニ ニ

0 条︶に基づいてした︒ 本件はいわゆるスモン訴訟であり︑ X

ら は

Y

︵ 事

実 ︶

法 第 四 七 巻 第 六 号

高民集三一巻二号一八七頁

下民集三二巻九 i

︱ 二

号 一

︱ 一

七 五

文書提出命令関係裁判例集︱二 0 頁

0 )

︵田辺製薬︶が製造販売したキノホルム剤を服用したことによっ

てスモンに罹患したとして︑損害賠償請求訴訟を提起したが︑ Y は X らのキノホルム剤の服用︑及びそれとスモ

ンとの因果関係を争っており︑ X らに対するキノホルム剤投与︑時期︑期間︑量︑スモン発症状況が記載されて

いると推認される X らの診療録の提出を︑医療機関である

z

に命じる文書提出命令の申立てを︑民訴三︱二条 七六

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