転 職 媒 介 機 関 に お け る ジ ョ ブ ・ マ ッ チ ン グ
森 山 智 彦
︵社会学研究科産業関係学専攻博士課程後期︶
1はじめに
︵1︶近年の転職者数の増加に伴い︑日本でも中途採用市場における転職経路の役割に関する研究が盛んに行われている︒
これらの研究では︑人的つながりによって転職する場合︑転職後の仕事や組織に対する満足︑収入の面で他の経路を利
用するよりも望ましい結果をもたらすとされている︵渡辺︑一九九一など︶が︑一方で公共職業安定所︵以下︑職安︶
や民間の職業紹介所が持つ機能が転職結果に果たす役割に焦点を絞ったものは少ない︒そのため︑これらの機関が中途
採用市場において機能しているのか否かは︑詳しく検討されてこなかった︒
︵2︶しかし︑今後予想される雇用の更なる流動化や転職者の増加に対応するためには︑人的つながりの有効性に頼るだけ
では限界がある︒と言うのは︑転職に有効な人的つながりは労働者の誰しもが持ち合わせているわけではないためであ
る︒そのため︑労働者自らが能動的に利用できる職安や民間職業紹介所の職業紹介機能の充実が強く求められてきてい
ることは想像に難くない︒
︵3︶そこで本稿では︑﹁職安﹂︑﹁民間職業紹介所﹂︑﹁求人広告﹂の三つの媒介機関に焦点を絞り︑職安と民間職業紹介所
に対するヒアリング調査によって三者の﹁マッチング機能﹂の違いを明らかにした上で︑各機関のマッチング機能が正
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規従業員として転職する労働者の転職後の仕事満足に結びついているかについて計量分析を行う︒そして︑これらの機
関が中途採用市場において︑どのように機能しているのかを検討することを本稿の目的としている︒
論文の構成は次のとおりである︒まず二節では転職経路に関する先行研究をサーベイし︑本稿の問題意識を明らかに
する︒三節では聞き取り調査の結果をもとに︑情報・サービス面における各媒介機関の違いを比較検討する︒四節では
転職時に利用した媒介機関と転職結果の関連について︑三〇歳代の労働者に対して行った調査票調査のデータを推定
し︑結果を考察する︒最後に︑五節では今後の課題と将来的な研究の方向性を述べる︒
2先行研究
本節では︑転職経路に関する研究がどのような発展を遂げてきたのかを概観してみよう︒
先にも述べたように︑本稿で焦点を当てるのは﹁職安﹂等の転職媒介機関だが︑先行研究は︑グラノベッター︵一九
七三・一九九八︶のような﹁人的つながり﹂の有効性を検討するものが主流である︒彼は専門職︑技術職︑管理職の男
性転職者に対して調査を行い︑人的つながりによって転職した労働者が︑高収入で︑満足度が高い職業に就いているこ
とを示した︒また彼は︑普段あまり接触しないようなつながりの弱い人を通じて転職した人が︑接触頻度の高く強いつ
ながりを持つ人を通じて転職した人よりも現職に満足していることを明らかにしている︒その理由として︑強い人的つ
ながりは︑所属している集団内や社会圏内の凝集性を高める機能が高いのに対し︑弱い人的つながりは︑強い結びつき
でつながっている集団と集団を橋渡しし︑多様な人々を結びつける傾向があるため︑転職時の情報収集においては有利
︵4︶に働くということが想定されている︵﹁弱い紐帯の仮説﹂︶︒さらに︑
Lin et al.
︵1981
︶の研究では︑転職時に弱い人的つながりを活用した人ほど︑より多くの社会資源が利用できるため︑転職後に獲得するステータスが高いことを実証し 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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ている︒
日本のサンプルでグラノベッターの仮説を検証したのは︑渡辺︵一九九一・一九九二︶である︒彼は︑人的つながり
が他の転職方法よりも良質な情報を労働者に提供する傾向が高く︑転職後の年収増加や︑帰属意識︑仕事満足度の高い
企業への就業をもたらしていることを量的データにより確認している︒しかし︑﹁弱い紐帯の仮説﹂は日本のサンプル
では支持されず︑むしろ日本では︑強い人的つながりを活用することが︑収入︑帰属意識︑仕事満足度の全ての面で望
ましい転職をもたらすという結果が得られた︒これは︑社会の同質性︑集団への忠誠心といった文化的背景を持つ日本
では︑弱い紐帯が持つ﹁橋渡し機能﹂よりも強い紐帯が持つ﹁同質原理﹂がジョブ・マッチングの過程で作用している
︵5︶ためだと想定されている︒
このように人的つながりが転職時に有効に機能するのは︑そこから得られる情報の性質に拠るところが大きい︒黒澤
︵二〇〇二︶は︑一九九九年に実施された転職者︑及び転職先の中小企業に対する調査の回答者一八九五名の分析をも
とに︑転職者と企業双方に関して︑転職前に得られた事前情報の内容が転職後の仕事満足に与える影響を分析してい
る︒その結果︑転職前に人的つながりにより仕事内容や労働時間︑休日︑能力開発︑経営トップの人柄︑社風に関する
情報を得た労働者は︑転職後の仕事満足が高かった︒また︑求人企業に関して︑転職者を受け入れる前に︑人的つなが
りにより転職者の職務経験︑業績︑人柄に関する情報を得た企業は︑転職者に対する満足度が高かった︒注目すべき点
は︑仕事上の能力・スキルに関する情報だけでなく︑求職者の人柄や求人企業の経営トップの人柄︑社風など主観的で
︵6︶把握しにくい非定型的情報が︑転職後の満足度に影響を与えていることである︒これは︑グラノベッター︵一九九八︶
の主張とも整合的である︒
以上のように人的つながりが有効な転職経路だとされてきた一方で︑職安などの媒介機関は︑競争力がなく非効率的
︵7︶な経路だとされてきた︒それにも関わらず︑多くの転職者が媒介機関を利用しているのは︑グラノベッターが言うとこ
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転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
ろの﹁社会的位置︵
position
︶﹂に拠るものだとされている︒具体的な研究例として︑Chae
・守島︵二〇〇二︶が挙げられる︒彼らは︑一九九九年六〜八月に実施された労働力調査の回答者のうち︑転職経験がある一八七五名に関して︑労
働者の属性や転職理由と転職時に利用した経路との関連性︑及びそれらの変数が転職後の仕事満足︑組織満足︑賃金変
動に与える影響を分析した︒その結果︑女性や中高年者など労働市場において不利な立場に置かれている人々は︑﹁フ
︵8︶ォーマルな経路﹂を使う可能性が高いのに対し︑成年男性や仕事上の能力・スキルを身に付けている労働者など労働市
場において有利な立場に位置している人々ほど人的つながりを利用する可能性が高いことがわかった︒また︑転職理由
に関しては︑望まない出向・転籍を命じられたり︑昇進できる見込みがなかったりといった非自発的な転職者ほど失業
期間を経験する傾向が高いため︑フォーマルな経路を使う可能性が高いという結果が得られた︒このことは︑多くの
人々が転職に有効な人的つながりを持ち合わせていないために︑職安や民間職業紹介所を使わざるを得ない状況を示し
ている︒また︑属性や転職理由をコントロールすると︑転職経路は転職後の満足度や賃金変動になんら影響を与えてい
ないとしており︑人的つながりの有効性を示す先行研究とは異なる結論を導いている︒
しかし︑そのように結論づけるのは早計であろう︒というのも︑彼らは職安や民間職業紹介所︑求人広告をまとめて
︵9︶﹁フォーマルな経路﹂として扱っているが︑黒澤︵二〇〇二︶や大木︵二〇〇三︶が指摘するように︑転職結果は転職
︵
性がォーマルな経路でありならはインフォーマルな経路のフてのっ得られた情報量や特定内前容に依存し︑機関によに !︶
︵
あ右内容次第で転職結果が左さ報れる可能性があるからでの情とう多分に兼ね備えているす質れば︑個々の機関が扱を "︶
る︒また︑中村︵二〇〇二︶や西澤︵二〇〇四︶からは︑媒介機関によって︑扱う求職者数や求人企業数︑求職者の属
性︑求職者一人あたりにかけられる時間といった面で違いがあることが示唆される︒そのような違いは︑求職者に提供
︵
っを後のマッチングの成否も転左右するだろう︒したが職やを否情報やサービスに差異生すみ︑ひいては転職の成る #︶
て︑職安と民間職業紹介所︑求人広告を区別して︑それらのマッチング機能を検証するとともに︑ある程度労働者の属 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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性を絞り込んだ上で分析しなければ︑どの機関がどのような労働者の転職に有効に機能しているかは議論できない︒そ
して︑中途採用市場の環境整備を検討する上では︑労働者の能力等によって活用できる確率が異なる人的つながりでは
なく︑労働者の誰しもが能動的に利用できるこれらの媒介機関において︑人材の再配分が効率的に成されているか否か
を検証することが欠かせないのである︒
以上より︑本稿では︑各媒介機関が提供する情報やサービスが求職者の転職後の仕事満足に結びついているのか否か
を明らかにしたい︒だが︑それ以前に職安︑民間職業紹介所︑求人広告がどのような求職者・求人企業を扱い︑それら
の利用者に対してどのような情報・サービスを提供しているかについて明らかにした調査はない︒そこで本稿では︑ま
ずこれらの機関で扱われている情報の内容や求職者・求人企業の特徴を︑聞き取り調査により精査する︒
3職業紹介機能の比較分析
︵1︶聞き取り調査概要
調査期間は二〇〇四年八月後半から九月下旬までの約一ヶ月間である︒調査対象となる公共職業紹介機関は︑阪神地
区の労働局︑及びそれらの傘下にある職安とした︒また︑調査対象となる人材紹介企業は︑事業所の所在地が大阪か神
戸であり︑人材紹介事業が実際に業務として成り立っている企業の中から企業規模を考慮して最終的な調査対象企業を
選定した︒また︑ヘッドハンティング企業も︑人材紹介企業や職安との比較を行うため︑調査対象とした︒実際に調査
を実施した自治体及び企業は︑労働局と職安が各二箇所︑人材紹介企業六社︑ヘッドハンティング企業二社である︵表
一︶︒
調査で尋ねた主な点は︑﹁
漓把︑﹂かのるいてし握に求うよのどを報情の者職﹁
滷ど握把にうよのを求報情の業企人し
― 53 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
表1 聞き取り調査対象企業の概要
ヘッド ハント H社
○
○
○
○
○
*分業型は、求職者担当者と求人企業担当者が分かれている企業・職安を指し、兼務 型は、1人の従業員が求職者担当と求人企業担当を兼務している企業を指す。
G社
○
○
○
○
○ 人材紹介企業
F社
○
○
○
○
○ E社
○
○
○
○
○ D社
○
○
○
○
○ C社
○
○
○
○
○
○ B社
○
○
○
○
○ A社
○
○
○
○
○
○ 公共職業
安定所 B労 働局
○
○
○
○ A労 働局
○
○
○
○
○ 1.従業員数
9人以下
10〜49人 50〜99人 100人以上 2.登録求職者数
999人以下 1000〜4999人 5000〜9999人 10000人以上 3.登録求人企業数
99社以下 100〜999社 1000〜4999社 5000〜9999社 10000社以上
4.登録者の最も多い年齢層 20代後半〜30代前半 30代後半
40代以上
5.マッチング業務の運営方式*
分業型 兼務型
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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ているのか﹂︑﹁
澆てるあで点三の﹂かのるいっマ図にうよのどをグンチッ︒
漓︑ 滷票情るす握把で人は求や票職求︑報
と職業相談や企業との面談で把握する情報を分けて尋ね︑さらに定型的情報と非定型的情報の把握状況やその内容も尋
ねている︒
澆たチング効率を高めるめマの取り組みなどにつッ︑はマ︑マッチング方法やッ項チングにおける中心事い
て尋ねている︒
漓〜 澆業特徴︑登録求人企数そとその特徴︑職業のとの企他には︑調査対象業数の概要や登録求職者紹
介の流れ︑紹介が成立した際の報酬金額について尋ねている︒
︵2︶比較分析
ここでは︑各媒介機関に登録されている求職者・求人企業の特徴の違い︑各機関で得られる情報の量的・質的な違
い︑およびマッチング方法の違いを中心に比較分析を進めていく︒なお︑求人広告は︑媒体の特性上︑求人企業から得
︵
︒較間職業紹介所の比がと分析の中心である民安把職る情報のみしか握らできないため︑れ !︶
︵a︶登録されている求職者・求人企業の差異
職安には全国で二三〇〜二六〇万人の求職者︑一七〇〜二〇〇万の求人企業が登録されており︑就職が成立する件数
︵
が者︑一七〜一八万人の求職︑で一四〜一五万の求人企業もりあた年間で約二〇〇万件でるは︒阪神地区の一府県あ一 "︶
登録されており︑年間で一四〜一五万件の就職が成立している︒これに対し︑民間職業紹介所は︑大手の企業でさえ四
〜五万人の求職者︑七〜八万の求人企業しか登録されておらず︑年間の就職件数も一万件を少し超えるぐらいである︒
また︑職業相談担当者︵コンサルタント︶一人が一日に面談を行う求職者の人数は︑職安の二〇〜三〇人に対し︑民間
職業紹介所は一〜二人である︒つまり︑扱う求職者数︑求人企業数は︑職安のほうが圧倒的に多い︒したがって︑求職
者一人あたりにかける時間やコスト︑提供できる情報・サービスの密度といった点から︑職安は民間職業紹介所に比
︵
︒劣るあが性能可るいてっが能機グンチッマのそ︑べ #︶
登録されている求職者の年齢構成を見ると︑職安は二五〜三四歳の若年労働者が最も多いものの全年齢に満遍なく分
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転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
布しているのに対し︑民間職業安定所は若年者が中心となっており︑その傾向は企業規模が大きいほど強い︒一般に若
年労働者は中高年労働者よりも転職しやすく︑選択肢も広いため︑十分な準備期間をかければ︑自身に適した企業を比
較的選びやすい︒また︑人材紹介企業は︑求職者のターゲットを若年層に絞ることで︑紹介業務を彼らに合わせたもの
に特化することができ︑マッチング業務を効率的に行うことができる︒一方︑職安は︑その性質上︑求職者のターゲッ
︵
職求い︒また登録されている人に企業の規模に関しては︑くしめ開絞ることができないた︑ト専門的なサービスを展を !︶
安が中小企業中心であるのに対し︑民間職業紹介所は大企業の求人が中心である︒
︵b︶得られる情報の量的差異
各転職経路が人と仕事を結びつけるために収集する情報は︑量的な側面と質的な側面から比較できる︒ここでは量的
な側面からその違いを見ていこう︒
まず︑各転職経路が扱う求職票や求人票の全体的な分量に違いが見られる︒求職票や求人票には︑求職者を求人企業
に紹介する上で︑各機関が必ず押さえるべき事項であると判断した情報が記載されており︑職業相談や企業との面談も
その記載事項を中心に行われている︒つまり︑これらのシートはマッチングの鍵となるものであり︑記載量が多いほど
得られる情報量も当然多い︒求人票に関しては︑職安︑民間職業紹介所ともにA4用紙一枚程度の分量で︑両者に大き
な差はない︒しかし︑求職票に関しては︑職安で扱っているものがA4用紙一枚であるのに対し︑民間職業紹介所で扱
っているものがA4の用紙三〜四枚と分量が非常に多い︒特に︑職業経歴に関して記載する箇所が多く︑時系列で役職
や仕事内容︑成果などを細かく記載するスペースが設けられている︒
職業相談に割く時間は︑職安が一回あたり一〇〜二〇分であるのに対し︑民間職業紹介所は約一時間半かけて求職者
から情報を収集する︒同様に︑企業との面談に関しても︑職安が約二〇分であるのに対し︑民間職業紹介所は一〜二時
間かけ企業情報を収集する︒ 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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︵c︶得られる情報の質的差異
求職者︑求人企業双方から得られる情
報の質的な違いは︑定型的情報と非定型
的情報に分けて見ていく︒まず︑求職票
や職業相談から得られる求職者の定型的
情報は表二の通りである︒一見して︑職
安よりも民間職業紹介所のほうが多くの
求職者情報を収集していることがわか
る︒これは︑主に職業相談から得られる
情報内容の密度の違いによるものであ
る︒また︑民間職業紹介所が把握する項
目で特に注目すべきものは︑求職者の職
務経験と転職理由を詳細に聞いているこ
とである︒職務経験は︑特に職業相談を
通じて︑初職からのキャリアを時系列に
尋ねたり︑携わった仕事における役割や
達成した成果などを具体的な数字を交え
て把握している︒そのため︑求人企業が
求める人材に︑より適合した労働者を紹
表2 求職者から得られる定型的情報
民間職業紹介所
氏名、生年月日・年齢、性別、家族構成、
現住所・最寄り駅、マイカー通勤の可否、
学歴、勤務先、連絡先、希望連絡方法
職歴(会社名、資本金、従業員数、業種、
勤務地、所属部署、職位、期間、おもな職 務 内 容・従 事 年 数、退 職 理 由)、転 職 回 数、専 門 知 識・能 力・ス キ ル、免 許・資 格、語学力、パソコン能力、海外勤務経験 職務経験(初職からのキャリア、一番大変 だった仕事、コンピテンシー、部下の数、
成果など)、スキル、起業経験
業種、職種、職位、企業規模、資本系列、
給与、勤務地、勤務時間、具体的な職務内 容、転職時期、転居の可否、単身赴任の可 否、休日、転職理由
転職理由、条件の優先順位、キャリアプラ ン
自己PR、セールスポイント、特技・スポ
ーツ等
*援護措置適応のためであり、職業紹介に使うとは限らない 公共職業安定所
氏名、生年月日・年齢、
性別、家族構成・状況、
現 住 所・最 寄 り 駅、学 歴、身体上の注意点、連 絡先
家族状況*
職歴(期間、事業所名、
職務内容、月収、退職理 由)、公共職業訓練受講 歴、免許・資格、自動車 免許の種類
就業形態、仕事内容、勤 務地、給与、勤務時間、
休日、転居の可否 求職票の項目
職業相談から 得られる情報 求職票の項目
職業相談から 得られる情報 求職票の項目
職業相談から 得られる情報
その他
個人データ職歴・職業能力希望条件
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転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
表3 求人企業から得られる定型的情報
求人広告* 設立、代表者、
従業員数、資本 金、売上げ、事 業 内 容 、 事 業 所、就業時間、
雇用形態、関連 会社、主要取引 先、教育制度、
連絡先
勤務地、職種、
求人背景、職務 内 容 、 配 属 部 署、応募資格、
応募方法、選考 プロセス
給与、待遇・福 利厚生
*求人広告が得る情報は、西澤(2004)より抜粋
民間職業紹介所 会社名、業種、所在地・最寄 り駅、設立、資本金、資本系 列、代表者、株式公開、事業 内 容 、 売 上 げ ( 過 去2, 3 年)、従業員数、平均年齢、
就業時間・残業時間、残業手 当、休日、有給休暇、退職金 制度の有無、給与形態、定年 年齢、試用期間、求人責任者
・求人担当者(部署、職位、
氏名)、連絡先
男女比率、離職率、転勤の状 況、営業の形態、成果給の導 入状況、部署の構成、競合他 社、残業時間の状況、企業の 方向性、経営理念
勤務地、職種名、職位、募集 人 数、性 別、年 齢、雇 用 形 態、職務内容、求められる能 力・スキル、資格・免許、経 験 年 数、求 め る 人 物 像、学 歴、語学力、求人背景、勤務 地、入 社 希 望 日、転 勤 の 可 否、契約期間の有無・期間、
試用期間、試用期間中本採用 と異なる点、選考方法(面接 者、面接回数、筆記試験・適 性 試 験 の 有 無、筆 記 試 験 内 容)、提出書類
求められる能力・スキル、求 める人物像、職務内容(細か な1日の流れ)、求人背景、
経営戦略、全体の採用計画 給与、基本給、昇給、賞与、
保険、福利厚生 公共職業安定所
事業所名、事業所番号、
事業内容、特徴、所在地
・地 図・最 寄 り 駅、設 立、資 本 金、従 業 員 数
(事業所の人数、女性の 人 数 、 企 業 全 体 の 人 数)、就 業 時 間、休 日、
マイカー通勤の可否、定 年 ( 再 雇 用 、 勤 務 延 長)、退職金 制 度、労 働 組 合、求 人 担 当 者(部 署、職 位、氏 名、連 絡 先)、連絡先
勤務地、職種名、年齢、
募集人数、雇用期間、職 務内容、学歴、必要な経 験、必要な免許・資格、
選考方法(方法、日時、
携行品、採否決定までの 日数)
給 与、基 本 給、通 勤 手 当、昇給、賞与、保険、
福利厚生 求人票の
項目
面談から 得られる 情報
求人票の 項目
面談から 得られる 項目
求職票の 項目
企業概要求人要項勤務条件 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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介できると考えられる︒また︑転職理由を詳細に聞き出すことで︑求職者が転職先の企業に
求める条件が明確になり︑その人に適合する企業を紹介しやすくなる︒
表三には求人票や求人企業との面談から得られる求人企業の定型的情報を示している︒各
転職経路が把握している情報は︑民間職業紹介所︑職安︑求人広告の順に多く︑民間職業紹
介所が企業との面談から広範且つ深遠な情報を把握している様子が窺える︒特に注目すべき
点は︑民間職業紹介所が求人企業の職務内容や求められる能力・スキル︑求人背景について
詳細に収集していることである︒求人企業との面談を通じて得られた詳細な職務内容や求め
られる能力・スキルは︑求職者の職務経歴と照らし合わせることで︑より厳密なマッチング
が可能になるだろう︒また︑求人背景を詳細に尋ねることで︑自ずと採用の全体的な計画や
企業の経営戦略を聞き出すことにつながる︒つまり︑求人背景についてより深く把握するこ
とは︑企業が求めている人材をより明確にすることができるだけでなく︑求職者が最も知り
たい企業の安定性や成長性を推し量る指針を得ることができ︑求職者が働きたいと思える企
業かどうかの大きなヒントになるだろう︒
職業相談や企業との面談を通じて得られる求職者︑求人企業双方の非定型的情報は表四の
通りである︒職安が求職者の社会常識を確認することやインターネット求人広告が職場の雰
囲気を把握することもあるが︑非定型的情報を把握してマッチングに活かそうと試みている
︵
性職その内容は︑求者るの人柄︑性格︑適︒あ民で機関は︑事実上間媒職業紹介所のみ介 !︶
と︑求人企業の社風︑職場の雰囲気︑社長の人柄などである︒これらの情報は︑民間職業紹
介所の担当者の主観的な判断によるものとはいえ︑マッチングの鍵となる可能性が高く︵黒
表4 求職者・求人企業から得られる非定型的情報
求人広告
職場の 雰囲気*
*インターネット求人広告のみ
民間職業紹介所
社会常識、将来的なビジョン、コミュニケーシ ョン能力、人柄、性格、印象、適性、意欲 社風、職場の雰囲気、上司になる人の性格、社 長の人柄、経営理念
公共職業安定所 社会常識 求 職 者
求人企業
― 59 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
澤︑二〇〇二︶︑双方にとって良好なマッチングを果たすための一つの指標となるだろう︒
︵d︶マッチングの段階における差異
マッチングの段階における職安と民間職業紹介所の違いとして第一に挙げられるのは︑求職者に対する求人企業情報
の提示方法の違いである︒職安は︑施設内に設置された求人検索パソコンやインターネットを通じて求職者自身で求人
企業を探索した上で︑紹介担当者との職業相談を任意で行う︒この方法は︑データベース内にある全ての企業を検索で
きるというメリットとともに︑求職者によっては︑探索する企業が自身の主観に偏りすぎ︑現実的ではない求人案件を
選びがちになるデメリットも併せ持つ︒もし求職者が現実性に乏しい求職条件を提示している場合には︑﹁もう一度求
人企業を検索する過程に戻ってもらい︑求職者が条件を緩和することを待つ﹂ことになる︒また︑求職者に求職条件の
緩和を促すために︑紹介担当者が労働局主催のセミナーの受講や履歴書・職務経歴書の添削などを勧めることがある︒
一方︑民間職業紹介所は︑求職者担当者との職業相談を通じて︑求職者に企業情報を提示する方法が一般的である︒
この手法のメリットは︑第三者の目を通すことで求職者の能力を客観的に捉え︑現実的な求人案件を提供しやすいこと
だが︑提案される求人企業が自ずと限定されるというデメリットも併せ持つ︒職安が求職者の態度が変わることを待つ
姿勢であるのに対し︑民間職業紹介所は求職条件の緩和に積極的に介入するのである︒
マッチングの中心事項は︑双方ともに︑求職者の職務経験と求人企業の仕事内容や必要な職務経験との兼ね合いであ
る︒ただし︑先述したように民間職業紹介所が求職者・求人企業双方から得る情報量は︑職安が得る情報量よりも多
い︒また︑情報の質に関しても︑求職者の職務経験や求人企業の職務内容を中心に︑民間職業紹介所のほうが︑より詳
︵
紹がそうと試みている︒したっ活て︑職安よりも民間職業かに非グ情報を収集しており︑定細型的情報をもマッチンな !︶
介所のほうが︑厳密なマッチングが可能であると考えられる︒
また︑職安や分業型の人材紹介企業では︑情報のずれを抑制するために行われる求職者担当者と求人企業担当者のコ 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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ミュニケーションが︑厳密な
マッチングの鍵を握る︒この
点でも︑職安では必要最低限
のコミュニケーションしか図
︵
られていないのに対し︑人材 !︶
紹介企業では様々な内容の話
し合いが頻繁に行われてお
︵
り︑マッチングはより確実な "︶
ものになるだろう︒
なお求人広告は︑媒体の特
性上︑求職者の意志・本人確
認や職業相談︑斡旋等のマッ
チングを行うものではない
が︑求職者に対する一方通行
の情報提供ではなく︑双方向
の情報提供になるように設計
される︒具体的には︑広告を
設計する際︑広告のターゲッ
トや求人のセールスポイント
表5 マッチングにおける各媒介機関の差異
求人広告
―
―
―
―
―
―
―
―
― 求人に必 要な最低 限の情報 を把握
― 職場の雰 囲気*
―
―
*インターネット求人広告のみ
民間職業紹介所 5万人以下
8万以下 1万件以下
1〜2人 A 4用紙3〜4枚
A 4用紙1枚 約1時間30分
1〜2時間
・詳細且つ多くの情報を把握
・職務経験や転職理由を詳細 に把握
・詳細且つ多くの情報を把握
・職務内容や求められる能力
・スキル、求人背景を詳細に 把握
人柄、性格、適性等を把握 社風、職場の雰囲気、社長の 人柄を把握
求職者の職務経験と求人企業 の職務内容との兼ね合い 活発
公共職業安定所 17〜18万人
14〜15万 14〜15万件
20〜30人 A 4用紙1枚 A 4用紙1枚 10〜20分
約20分
・求職票の項目が中心
・個人データや職務経 験を把握
・求人票の項目が中心
・企業概要や求人要項 を把握
社会常識のみ
― 求職者の職務経験と求 人企業の職務内容との 兼ね合い
特徴的な事例を扱う時 のみ
求職者数 求人企業数 就職成立件数/年 面談する求職者数/日 求職票の分量 求人票の分量 求職者との面談時間 求人企業との面談時間 求職者から得られる定 型的情報
求人企業から得られる 定型的情報
求職者から得られる非 定型的情報
求人企業から得られる 非定型的情報 マッチングの中心事項
求職者担当と求人企業 担当のコミュニケーシ ョン
登録され ている求 職者・求 人企業の 差異 得られる 情報の量 的差異
得られる 情報の質 的差異
マッチン グの段階 における 差異
― 61 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
を設定した上で︑広告を掲載する︒また︑求人広告事業者によっては︑求人企業に対して︑﹁広告をどのように工夫す
れば応募者が増えるか﹂や﹁同業他社はどの程度の求人条件を出しているのか﹂といったアドバイスを行うこともある
︵佐野︑二〇〇二︶︒
以上︑︵a︶〜︵d︶までの分析結果をまとめたものが表五である︒
4媒介機関が転職後の満足に及ぼす影響
以上の結果は︑三つの媒介機関が扱う情報量や内容のみならず︑各機関を利用する求職者や求人企業の特徴面でも明
らかに違いが見られることを示しており︑いずれの要因も転職の成否や転職後のマッチングの成否を左右するだろう︒
したがって︑﹁どの機関がどのような労働者層の転職に有効に機能しているのか︑または機能していないのか﹂という
問いに答えるには︑三つの機関をまとめて一つの変数として扱っている先行研究では限界がある︒また︑先行研究のよ
うに様々な階層の労働者における転職時のマッチング状況を一つのモデルで示すと︑ある特定の労働者層における媒介
機関と転職結果の関連性がわかりにくい︒そのため本稿では︑三つの機関を個別の変数として扱い︑極めて限定された
ものではあるが︑学歴や年齢が既にコントロールされている量的データを用いて︑転職経路と転職結果の関連を検証す
る︒
後で詳しく述べるが︑このデータは日本の中でも比較的上位に位置する若年の高学歴者層である︒このような労働者
の転職に最も適した媒介機関は︑聞き取り調査の結果から︑民間職業紹介所であることが予想される︒というのも︑民
間職業紹介所は︑若年のホワイトカラー層を主なターゲットとし︑彼らに職安や求人広告よりも質の高い情報を豊富に
提供しているためである︒さらに︑この機関に付加されているインフォーマルな性質も︑利用者に望ましい転職結果を 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 62 ―
もたらすのに有効に機能するだろう︒
民間職業紹介所と比較すると︑職安はマッチングの際に扱う情報の量と質が劣り︑また若年高学歴者をターゲットと
したサービスを展開していないため︑彼らの望む結果をもたらしていないと考えられるが︑求人広告よりは︑扱う情報
量・質の観点から相対的に望ましい結果をもたらしていると想定される︒
本稿ではマッチングの成果指標として︑転職後の仕事満足度を用いている︒なぜな
ら︑同じ一件の職業紹介だとしても︑職安と民間職業紹介所とでは求職者に提供する
情報やサービスの量・質が異なるため︑その違いを反映させたものがマッチングを測
る指標としてふさわしいためである︒その点において︑仕事満足度は︑金銭的報酬に
加え︑労働時間や求職者が望む職務内容など非金銭的な報酬をも包括した統合的な指
︵
測労・価値観を持つ働能者の転職結果を力業二職あり︵黒澤︑〇標〇二︶︑多様なで !︶
る指標として適当である︒
以上を踏まえると︑本稿の検証仮説は︑﹁正規従業員として転職した労働者の転職
後の仕事満足度は︑
漓民間職業紹介所利用者
滷職安利用者
澆求人広告利用者の順に高
い﹂となる︒
︵1︶方法
本稿で利用するデータは︑二〇〇三年一一〜一二月に実施された﹁阪神地区公立高
等学校出身者のキャリア形成に関する調査﹂の調査票に回答した三〇歳代︵二〇〇三
年度︶の労働者である︒調査の概要は表六に示している︒分析は︑この調査票に回答
した労働者の中で︑転職経験があり︑現在正規従業員として就業している一二三名の
表6 調査概要 阪神地区公立A高等学校出身者
4629サンプル(1983年〜1992年卒業生)
郵送による自記入式調査票調査
2003年11月〜12月。12月15日を目処に回収。原 則として12月1日現在の状況で回答。
4629サンプル中、転居先不明者等が1101サンプル あったため、これらを差し引いた3528サンプルに 対して、741サンプルが回収された(回収率21%)。 調査対象
調査母数 調査方法 調査期間
回収状況
― 63 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
サンプルを対象にしている︒
このサンプルは︑大学進学率が非常に高い高等学校出身者の三〇歳代のものである︒このようにサンプルを限定した
のは︑媒介機関と転職結果の関連を若年ホワイトカラー層に絞って分析したいからである︒このサンプルを用いること
で︑高等学校を卒業するまでの教育内容をほぼコントロールできるだけでなく︑職業能力を把握することが比較的困難
でありながら︑今後ますます媒介機関の需要が高まるであろうホワイトカラー層に焦点を当てた分析を行うことができ
︵
日占学院卒者が八五%以上をめはており︑このサンプルが大くルしろう︒実際に本サンプのる特徴を見ると︑大卒もだ !︶
︵
︒にるかわがとこるいてし置位層階の位上りなかもで中の本 "︶
︵2︶各媒介機関利用者の違い
初めに︑媒介機関ごとに利用者の特徴を概観しよう︒表七は︑各機関別に︑正規従業員として転職した労働者の属性
や現職の概要︑並びに転職時に必要とした就業情報の割合を示したものである︒
人材紹介企業利用者の七三・三%は男性で︑これは求人広告利用者よりも一九・二ポイント︑職安利用者よりも三六
・九ポイント高い︒同様に︑最終学歴が大卒以上のサンプルの割合も人材紹介企業が最も高い︒次に︑現在就業してい
る企業の規模や本人の職種と利用した媒介機関との間に特筆すべき関連性は見られない︒ただし︑業種については︑人
材紹介企業利用者の三三・三%が現在製造業で働いており︑これは職安利用者より一八・一ポイント︑求人広告利用者
より一五・三ポイント高い︒また︑表には示していないが︑人材紹介企業利用者の二〇〇二年の平均年収は約五〇三万
︵
︒八利用者︵約四八万広円︶よりも高い告人︵求︑職安利用者約円四五一万円︶やで #︶
注目したいのは︑転職時に重視した情報と利用した機関との関連である︒仕事能力の発揮度合いに関する情報を重視
したサンプルの割合は︑職安や求人広告利用者よりも人材紹介企業利用者のほうが多い︒例えば︑転職時に﹁能力・専
門性が活かせる﹂ことを重視したサンプルは︑人材紹介企業利用者が四六・七%であるのに対し︑職安利用者は三六・ 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 64 ―
四%︑求人広告利用者は三四・四%で
ある︒この傾向は︑﹁自分がやりたい
仕事である﹂︑﹁これまでの業務経験が
活かせる﹂という項目にもあてはまる
が︑人材紹介企業を利用したサンプル
にとって﹁資格・免許が活かせる﹂こ
とはあまり重視されていない︒
また︑﹁転職先の成長性・安定性﹂︑
﹁転職先でのキャリアの見通し﹂とい
った求人企業に関する情報について
も︑人材紹介企業を利用したサンプル
のほうが他の二機関を利用したサンプ
ルに比べて重視している割合が高い︒
一方で︑﹁給料・福利厚生﹂︑﹁労働
時間・休日数﹂︑﹁勤務地﹂といった勤
務条件に関する情報については︑人材
紹介企業利用者や求人広告利用者より
も職安利用者のほうが若干重視してい
る︒例えば﹁労働時間・休日数﹂を重
表7 媒介機関別利用者の特徴 (%)
求人広告 54.1 86.9 17.3 44.2 18.0 13.1 11.5 16.4 6.6 49.2 34.4 34.4 24.6 11.5 21.3 13.1 23.0 32.8 41.0 公共職業安定所
36.4 78.8 6.3 53.1 15.2 15.2 18.2 15.2 9.1 45.5 33.3 36.4 21.2 12.1 15.2 6.1 27.3 42.4 51.5 人材紹介企業
73.3 93.3 14.3 50.0 33.3 13.3 13.3 20.0 6.7 46.7 40.0 46.7 33.3 6.7 26.7 20.0 13.3 40.0 46.7 男性
最終学歴(大卒以上)
大企業(従業員5000人以上)
小企業(従業員99人以下)
製造業 一般事務職
総合事務職(総務・人事・経理
・広報・企画等)
営業職
製造・組立・業務補助職 その他専門職(教育・福祉・法 律・会計・研究開発等)
自分がやりたい仕事である 能力・専門性が活かせる これまでの業務経験が活かせる 資格・免許が活かせる 転職先の成長性・安定性 転職先でのキャリアの見通し 給料・福利厚生
労働時間・休日数 勤務地
属性
現在の就業状況
仕事能力の 発揮度合い に関する情 報 求人企業に 関する情報 勤務条件に 関する情報
転職時に重視した情報
― 65 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
視しているサンプルの比率は︑職安利用者が四二・四%︑人材紹介企業利用者が四〇・〇%︑求人広告利用者が三二・
八%であり︑﹁勤務地﹂を重視しているサンプルの比率は︑同様に五一・五%︑四六・七%︑四一・〇%である︒ただ
し数値を見てわかるように︑勤務条件に関する情報を重視しているサンプルの比率に関して︑職安利用者と人材紹介企
業利用者の差はそれほどなく︑どちらの機関を利用していても同程度に重視していると言ったほうが正確だろう︒
以上をまとめると︑概ね職安や求人広告の利用者よりも人材紹介企業の利用者のほうが︑転職時に仕事能力の発揮度
合いや求人企業に関する情報を重視している︒すなわち︑能力・専門性を活かしたい人や求人企業の情報を詳細に把握
したい人が︑人材紹介企業の豊富な情報を活用するため︑この機関を選好しているものと考えられる︒
︵3︶変数の設定
漓転職経路
独立変数として用いる転職経路は︑一番最近の転職にあたって利用した経路を複数回答形式で尋ねている︒既存研究
の多くは︑現在の会社へ入社した経路を一つだけ尋ね︑それを独立変数として投入しているが︑最近は転職者の増加や
人材紹介企業の急速な拡張もあり︑複数の経路を併用して職を探すことが一般的となっている︒実際に本サンプルの転
職経験者も平均して二つの経路を転職時に利用しており︑現在就業している企業に結びついた経路のみを扱うことは︑
転職行動の現状を推定する上で不十分である︒したがって本稿では︑各転職経路が求職者に提供するサービスと現職の
満足度との関連を検証するために︑転職時に利用した経路を独立変数として投入している︒同時に︑転職時に利用した
経路数の増減による影響を抑制するために︑コントロール変数として転職経路利用数を投入している︒これにより︑た
とえある経路を利用し︑直接転職に結びつかなかったとしても︑その経路が提供するカウンセリングなどのサービスが
求職者の適職探しに与える影響を推定することができる︒
また︑転職経路における本稿の特徴を二点挙げよう︒一点目は︑既存研究ではほとんど取り上げられることがなかっ 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 66 ―
たが︑昨今注目されつつあり︑今後も特にホワイトカラー労働者に対する需要が高まるであろう﹁ヘッドハンティング
企業﹂を含んでいる点である︒もう一点は︑既存研究でよく取り上げられていた﹁直接応募﹂が含まれていない点であ
る︒この経路を変数として扱わなかったのは︑現在の一般的な転職行動を鑑みて︑何らかの媒体を介さずに求人企業に
直接応募するということは考えにくいためである︒
滷転職結果︵転職後の仕事満足度︶
従属変数として用いる転職後の仕事満足度は︑リッカートタイプの五点尺度で測られている︒最も高いスコアは﹁満
足している﹂︑最も低いスコアは﹁満足していない﹂であり︑正のパラメータは︑その変数の増加が﹁満足している﹂
になる確率を高め︑﹁満足していない﹂になる確率を低下させることを意味する︒
澆コントロール変数
コントロール要因として分析に投入している変数は︑先行研究で転職後の仕事満足度との関連が指摘されている﹁性
別﹂や﹁学歴﹂︑﹁配偶者の有無﹂︑現職の﹁企業規模﹂︑﹁業種﹂︑﹁職種﹂︑﹁年収﹂︑そして﹁離職理由﹂である︵
Chae
・守島︑二〇〇二
合二橋・中村︵二〇〇︶︑と同様に︑﹁会社都大は大な橋・中村︑二〇〇二どて︶︒離職理由に関し
;
による離職﹂︑﹁前向きな離職﹂︑﹁不満解消型離職﹂︑﹁家庭都合による離職﹂の四つに分類している︒また︑本調査は初
職と現職の状況を尋ねているため︑離職理由と現職の満足度の関連について矛盾なく推定できるのは︑転職回数一回の
転職者のみである︒
以上の変数の詳細は表八に︑各変数の転職経験者のみの記述統計量は表九に記している︒
― 67 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
表8 変数リスト
転職時に「公共職業安定所」を利用=1 転職時に「ヘッドハンティング企業」を利用=1 転職時に「ヘッドハンティング企業以外の民間職 業紹介所」を利用=1
転職時に「転職情報サイト・企業などの個別のホ ームページ」を利用=1
転職時に「求人広告(新聞・チラシ・求人票・雑 誌・求人情報誌)」を利用=1
転職時に「人的つながり(家族・親類・友人・仕 事関係者からの紹介)」を利用=1
1 満足していない 2 あまり満足していない 3 どちらともいえない 4 やや満足している 5 満足している
「男性」=1
「配偶者あり」=1
最終学歴が「大学」、もしくは「大学院」=1 単位:歳
各選択肢の中央値(単位:人)
現職の業種が「製造業」=1
現職の職種が「製造・組立・業務補助・軽作業」
=1
各選択肢の中央値(単位:万円)
離職理由が、「倒産・人員整理・解雇」、もしくは
「雇用契約が切れた」=1
離職理由が、「やりたい仕事ができなかった」、
「能力・専門性を活かす仕事ができなかった」、
「給料に不満があった」、「よりよい仕事や職場が あった(見つける)ため」、「独立・起業」=1 離 職 理 由 が、「能 力 的(体 力 的)に 無 理 を 感 じ た」、「給料以外の労働条件に不満があった」、「勤 務先の将来性に不安があった」、「理念・経営戦略 に賛同できなかった」、「人間関係がうまくいかな かった」=1
離 職 理 由 が、「結 婚」、「出 産・育 児」、「介 護」、
「引越しなどの住居の移動」=1 転職時に利用した経路を加算 公共職業安定所ダミー
ヘッドハンティング企業ダミー 民間職業紹介機関ダミー 電子媒体ダミー 求人広告ダミー 人的つながりダミー 転職後の仕事満足度
(5ランクデータ)
性別ダミー 配偶者ダミー 学歴ダミー 転職時年齢 企業規模 業種ダミー 職種ダミー 年収
転職理由(会社都合)
転職理由(前向き)
転職理由(不満解消)
転職理由(家庭事情)
転職経路利用数
転職経路︵独立変数︶ ︵従属変数︶転職結果 基本属性現在の就業状況転職に関して 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 68 ―
︵4︶転職経路と転職後の満足度
転職後の満足度の推定にあたって︑
まず留意しなければならないことは︑
分析の対象がすでに中途採用されたケ
ースを扱っており︑採用されなかった
ケースは対象外とされている点であ
る︒また︑﹁分析の対象となる労働者
は︑企業の採用プロセスを何らかの形
でクリアしているのだが︑その選考プ
ロセスに影響を及ぼす観察不可能な要
因は︑満足度の決定要因にも関連して
いると考えられる﹂︵黒澤︑二〇〇
二︶︒この問題点は︑本稿における分
析とも共通しているが︑その限界を了
承したうえで︑転職経路が転職後の仕
事満足度に与える影響を︑順序プロビ
ット分析によって推定した︒推定結果
は表十の推定一の通りである︒
まず︑コントロール変数と転職後の
表9 記述統計量(転職経験者のみ)
最大値 1 1 1 1 1 1 5 1 1 1 39 5000 1 1 1000 1 1 1 1 6 最小値
0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 21 15 0 0 0 0 0 0 0 1 標準偏差
0.46 0.20 0.33 0.38 0.50 0.49 1.11 0.46 0.46 0.41 4.16 1692.16 0.34 0.27 254.84 0.25 0.49 0.50 0.45 1.32 平均
0.31 0.04 0.12 0.18 0.53 0.42 3.59 0.31 0.70 0.78 30.08 904.07 0.14 0.80 399.56 0.68 0.58 0.51 0.29 2.03 標本数
309 309 309 309 309 309 229 311 311 311 211 177 214 226 227 310 310 310 310 308 公共職業安定所ダミー
ヘッドハンティング企業ダミー 民間職業紹介機関ダミー 電子媒体ダミー 求人広告ダミー 人的つながりダミー 転職後の仕事満足度 性別ダミー 配偶者ダミー 学歴ダミー 転職時年齢 企業規模 業種ダミー 職種ダミー 年収
転職理由(会社都合)
転職理由(前向き)
転職理由(不満解消)
転職理由(家庭事情)
転職経路利用数
― 69 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
仕事満足度の関連を見る
と︑満足度は女性のほうが
男性よりも有意に高く︑転
職時年齢が高い人ほど現職
に満足している︒また︑年
収が多い人ほど満足度が高
いのに対し︑現在製造・組
み立て・軽作業等の職に従
事している労働者の満足度
は低い︒離職理由に関して
は︑不満解消型の理由によ
り前職を辞めた人の満足度
が有意に高い︒転職時に利
用した経路が満足度に与える影響に注目すると︑転職時に人材紹介企業や転職情報サイト等の電子媒体を利用した労働
︵
もの者の満足度は低い︒以上結労果は検証仮説を支持する働たのし︑満足度が有意に高いに者対し︑求人広告を利用は !︶
のである︒
では︑どのような労働者に対して人材紹介企業は有効に機能しているのだろうか︒ここでは︑転職時に重視する情報
に注目し︑人材紹介企業を利用することとの交互作用効果を分析しよう︒具体的には︑推定一に投入した変数に加え︑
転職時に重視した情報として﹁能力・専門性が活かせる﹂ことと人材紹介企業との交差項を投入した︵推定二︶︒する
表10 転職経路と現職の満足度(順序プロビット分析)
現職の満足度1 推定2
z
−2.58**
2.19*
1.03 2.38**
0.7
−0.18
−2.77***
2.11**
0.56
−0.68 2.62***
−1.11 1.18
−0.76 0.53 2.19**
1.62
−2.67***
59 0.29
注1:*は10%、**は5%、***は1% の水準で有意な
推定値を示す
注2:リファレンスグループは「人的つながり」
推定1 z
−1.94*
1.24 0.39 1.77*
1.46
−0.56
−2.2**
2.18**
0.43
−0.29 2.23**
−1.23 1.2
−0.28 1.85*
1.95*
−2.87***
60 0.25 属性
性別ダミー 配偶者ダミー 学歴ダミー 現在の就業状況
転職時年齢 企業規模 業種ダミー 職種ダミー 年収 転職
離職理由(会社都合)
離職理由(前向き)
離職理由(不満解消)
転職経路利用数 転職経路2
公共職業安定所 ヘッドハンティング企業 人材紹介企業
人材紹介企業×転職時に「能力・
専門性が活かせる」ことを重視 電子媒体
求人広告
サ ン プ ル 数 擬似決定係数
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 70 ―
と︑推定一で見られた満足度に対する人材紹介企業の正の効果が消え︑代わりに投入した交差項が満足度に対して正の
有意な影響を与えている︒つまり︑転職時に能力・専門性が活かせることを重視し︑なおかつ人材紹介企業を利用した
サンプルは︑現在の仕事に満足している︒なお︑表には示していないが︑他の機関と転職時に﹁能力・専門性が活かせ
る﹂という項目の交差項を投入しても︑満足度に対する有意な効果は得られなかった︒これは︑高度な能力・専門性を
備え︑詳細な企業情報を求めるホワイトカラー労働者の期待に対応できるだけの情報量を人材紹介企業が持ち︑マッチ
ングに活かしているため︑もしくは︑能力・専門性を活かした転職が可能な人材が︑相対的に求人条件の良い人材紹介
︵
︒さ転職結果がもたられしていると考えられるいまた望を利用しやすいめ企に︑彼らにとって業 !︶
ただし︑これらの結果について︑以下の点に留保する必要がある︒本稿のサンプルは︑高等学校までの教育内容等が
コントロールされており︑日本全体の中でも比較的上位に位置している労働者群であるため︑現職の仕事満足度が引き
上げられている可能性は否定できない︒また︑本稿で得られたデータが転職に成功した例のみである点も満足度を引き
上げる要因となり得る︒したがって︑この推定結果から即座に人材紹介企業が転職に有効な機関であると結論付けるこ
とはできず︑更なる検証が必要となる︒
5おわりに
職安や人材紹介企業といった転職を媒介する機関で提供している情報・サービスは︑労働者の転職後の満足に結びつ
いているのだろうか︒この問いに対して︑本稿では職安と民間職業紹介所︑及び求人広告で扱われている情報の違いを
明らかにした上で︑三〇歳代の労働者に対する調査データをもとに︑三者が求職者に提供する情報・サービスが︑転職
後の仕事満足にどのような影響を与えているかを検証している︒
― 71 ―
転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
まず︑聞き取り調査の結果から︑求職者情報の把握内容︑求人企業情報の把握内容︑さらにはマッチング方法の三点
について︑三つの媒介機関で比較したところ︑
漓民間職業紹介所
滷職安 澆て質・量の報情るいれ求わ扱に順の告広人︑
そしてマッチング機能が高いことがわかった︒次に︑三〇歳代の労働者を対象に行った調査データから︑転職時に利用
した経路と転職後の仕事満足との関連を分析すると︑正規従業員に関して︑転職後の仕事満足度は︑
漓人材紹介企業利
用者︑
滷職安利用者︑
澆か能力・専門性が活せ時ることを重視し︑に職求に人広告利用者の順高転かった︒さらに︑人
材紹介企業を利用したサンプルは現職に満足していた︒このことから︑人材紹介企業のマッチング機能は︑ホワイトカ
ラー労働者の複雑な能力・専門性を求人企業に詳細に伝えることを可能にし︑彼らの転職後の仕事満足を促しているも
のと解釈される︒ただし︑本稿は意図的にサンプルを若年高学歴者に限定しており︑この結果を即座に一般化すること
を企図したものではない︒
これらの聞き取り調査︑および調査票調査の結果から導かれる重要な論点は︑労働者の属性や職業能力の違いによっ
て︑有効に利用できる制度的経路が異なるという点である︒この点において︑本稿の結果は︑労働者が置かれている立
場によって各転職経路を選択する確率が違うとする
Chae
・守島︵二〇〇二︶の主張を一部支持するものである︒ただし︑彼らが転職結果に影響を及ぼすのは︑転職経路ではなく転職者の属性や転職理由であると主張しているのに対し︑
本稿では各機関の特徴と利用者の特徴や転職に求めるものとが合えば転職後の満足につながることを主張する︒これ
は︑三〇歳代の高学歴者︑特に能力・専門性を活かした転職を意図している労働者が︑人材紹介企業を使うことで望ま
しい転職に結びついているという推定結果から支持される︒また︑従来の研究で有効な転職経路とされてきた人的つな
がりよりも人材紹介企業のほうが︑本サンプルの望ましい転職結果へと結びついている点にも注目したい︒これは︑本
︵
すて人的つながりをまだ持っい効ないため︑彼らが必要とな有代にサンプルである三〇歳の稿労働者の大半が︑転職の !︶
る就業情報が集約されている人材紹介企業を利用したほうが効率的に情報を集められるからだろう︒以上より︑本稿の 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
― 72 ―
結果は︑各媒介機関の﹁棲み分け﹂が確立されつつあり︑労働者は自身の属性や職業能力に適した媒介機関を利用する
ことで︑望ましい転職に結びつく確率が高くなることを示す一つの論拠だと考えられる︒
ただし︑どのような労働者層において職安や求人広告の利用が最も適しているかは︑サンプルを若年高学歴者に限定
した本稿の分析の範疇を超えている︒そのため︑上記の主張を更に検討するためには︑サンプル数を増やし︑ブルーカ
ラー労働者も交えた調査を行った上で︑属性や職業能力ごとの転職行動を分析しなければならない︒これが一点目の課
題である︒二点目の課題は︑属性等によって︑転職時に各媒介機関を選択する求職者の特徴が︑それぞれ異なっている
点を踏まえて︑求職者による各媒介機関の選択の内生化を考慮しなければならない︒この点について︑本稿で利用した
調査では︑データ上の制約が大きいこともあり︑現段階では有効なモデル化が達成できていない︒したがって︑今後は
大規模データ等を用いた上で︑求職者による各媒介機関の選択から転職後の仕事満足に至るまでを内生化したモデル構
築に努めたい︒三点目は︑媒介機関が提供する情報やサービスが︑求職者と求人企業にとって有益なものになっている
かを判断するためには︑求職者が転職時に利用した経路と転職の成否︑さらには転職が成立した企業のデータも交えた
統合的な分析を行わなければならない︒そのような分析を行うことで︑転職経路とそこで把握できた︑または把握でき
なかった情報との関連をダイレクトに検証することができる︒
最後に︑中途採用市場の環境を更に発展させるための議論の方向性について言及したい︒先に各媒介機関の﹁棲み分
け﹂が確立されつつあり︑それぞれの利用者に適合したサービスに特化することが︑中途採用市場全体の効率化につな
がると述べた︒そのようなサービスの展開は︑確かに個々の媒介機関における職業紹介の効率性を高めると考えられる
が︑各媒介機関に集まる求人案件の特徴︑特に求人企業の規模や求職者に提示する給与等の労働条件に着目すると︑一
つの懸念事項が生まれる︒民間職業紹介所に集まる求人案件は︑大企業のものが中心であり︑高収入の案件も少なくな
いため︑転職に至るまでのハードルは高く︑必然的に能力の高い労働者の転職が成立していく︒一方︑職安に集まる求
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転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
人案件は中小企業のものが中心であり︑民間職業紹介所の案件よりは低収入のものが多く︑転職によって収入が下がる
ケースも少なくない︒すなわち︑転職時に労働者それぞれが自身の能力︑業績に見合った媒介機関を利用する時点で︑
その媒介機関が提供し得る求人案件がある程度限定されているため︑彼らが選択できる求人企業も限られてくる可能性
が強い︒言い換えれば︑各媒介機関がそれぞれの職業紹介機能の効率性を図れば図るほど︑労働者がある企業に接触す
る機会の不平等はより固定化︑明確化されていくというジレンマに陥ることが予想され︑これは労働者の経済的不平等
の拡大にも繋がりかねない︒このように︑中途採用市場の効率性と求職者に対する機会の公平性のバランスに関して︑
多大な議論の余地が残されており︑職安民営化など今後の中途採用市場の政策を考察する上で︑大きな懸案事項となる
だろう︒
二点目として︑本サンプルのうち︑転職後の仕事満足度が低いサンプルの特徴をもとに︑個々の媒介機関︑特に職安
が展開すべきサービスの方向性について言及する︒本サンプルの転職経験者のうち︑現在正規従業員として就業してい
る労働者の約三分の一が現在の仕事に﹁満足していない﹂︑あるいは﹁満足とも不満ともいえない﹂と回答している︒
これらの労働者は︑転職時に求人広告を利用した人が五八・一%と最も多く︑次いで職安を利用した人が二三・八%を
占める︒彼らは︑現職の仕事満足度が高い労働者に比べ︑医療・福祉業や情報サービス業に従事している傾向がやや高
く︑また専門職として就業している労働者が少ない︒転職時に重視した項目は︑﹁勤務地﹂︵四五・二%︶︑﹁労働時間・
休日数﹂︵三三・三%︶︑﹁給料・福利厚生﹂︵二八・六%︶のような勤務条件を挙げる人が多く︑﹁能力・専門性が活か
せる﹂︵二三・八%︶といった仕事能力の発揮度合いに関するものを挙げる人が少ない︒また︑現職の仕事満足度が低
い労働者は︑満足度が高い労働者よりも︑転職時に﹁経営者が魅力的である﹂︵二六・八%︶﹁自分がやりたい仕事であ
る﹂︵一七・一%︶といった項目を把握できなかったとする人が多い︒つまり︑仕事満足度の低い労働者は︑決して仕
事能力の発揮度合いや求人企業に関する情報を軽視したのではないだろうが︑勤務条件を最優先したがために︑自身の 転職媒介機関におけるジョブ・マッチング
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階層や望む結果に合った機関を利用しなかった労働者だと言える︒彼らには︑求人企業の表面的な情報だけではなく︑
より濃密な情報を提供する必要があり︑また彼らの職業能力と企業の職務内容を第三者の目を介してマッチングさせる
必要があったのだろう︒
このような労働者の受け皿となるべき機関としてまず挙げられるのは︑職安である︒なぜなら︑人材紹介企業は高度
な職業能力を有している労働者に焦点を当てたサービスを展開しているので︑利用者に求められる能力の水準はかなり
高いものとなるが︑職安の利用者は︑人材紹介企業ほどの能力水準は求められず︑また地域性や勤務条件を優先した転
職が可能になるためである︒
職安には︑労働者の多様化するニーズに応えるために︑職業紹介や職業指導のみならず生活面も考慮に入れたきめ細
かいサービスが求められている︒例えば︑業務を細分化し︑ある程度独立した部署を設けることで︑労働者一人一人に
かけることができる時間やコストを増大することが有効な施策となるだろう︒このような動きは全国的に見ると未だ多
くは見受けられないが︑自治体によっては特定の労働者をターゲットにした施策や︑独立した機関を設け︑一つの職安
が扱う労働者の人数を軽減するような取り組みを行っているところもある︵玉井・松本︑二〇〇三︶︒このような動き
を全国的に広めるとともに︑各媒介機関の連携体制を深め︑労働者の職業能力や勤務条件に適合した機関の利用を促す
ことが︑中途採用市場全体の施策として望まれる︒そして︑そのための研究課題として︑各媒介機関︑特に職安が抱え
る労働市場の解明や各機関の連携体制の解明を試みたい︒
*本稿の執筆にあたり︑実に多くの方々にご協力をいただいた︒まず︑ヒアリング調査にご協力いただいた労働局︑公共職業安定
所︑人材紹介企業︑ヘッドハンティング企業の皆様には︑職業紹介業務に関する貴重なお話を聞かせていただいた︒また︑﹁阪神
地区公立高等学校出身者のキャリア形成に関する調査﹂実施にあたり︑A高等学校同窓会には︑データ面で多大なご協力をいた
だいた︒また︑尾嶋史章同志社大学教授︑八木匡同志社大学教授︑若林直樹京都大学助教授︑小野晶子独立行政法人労働政策研
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転職媒介機関におけるジョブ・マッチング