HCFC22の分解反応速度に及ぼす温度の影響
著者 成田 素子, 西海 英雄
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 44
ページ 123‑126
発行年 2004
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010753/
HCFC22の分解反応速度に及ぼす温度の影響1
成田 素子*,西海 英雄**
(平成15年10月2日受理)
The Influence Temperature
on the Dissolution Reaction Rate of HCFC22
NARITA, Motoko and NIsHIuMI, Hideo
(Received on October 2,2003)
キーワード:HCFC22, CH30CHF2,アレニウスプロット
Key words:HCFC22, CH30CHF2, Arrehenius plot1.緒 言
クロロフルオロカーボン(フロン)は,現代生活に不 可欠な物質として,洗浄溶媒,冷媒,発泡剤,断熱材,
スプレー噴射ガスなど多くの用途に大量に用いられ,ほ とんどが大気中に無造作に放出されてきた.その大部分 は,成層圏オゾン層破壊の原因となるいわゆる特定フロ ンで,フロンー11(CCI3F),フロンー12(CCI2F2),フロ ンー113(CC12FCCIF2)が主なものである.フロンは,
対流圏大気中ではきわめて安定な化学物質であるが,成 層圏に達すると,そこで紫外光により分解して塩素原子 が生じ,オゾン層を破壊する.そこでオゾン層破壊が問
題となり,CFC等の主要なオゾン層破壊物質の生産は
平成7年末をもってすでに全廃された.そこで代替フロ ンが開発された.現在,主に冷媒として用いられている代替フロンであるHCFC22はCFC12の代替物としてエ
アコンや冷凍機の冷媒などに広く使われている.しかし,その代替フロンも構造に塩素原子を含んでいるためオゾ ン層破壊の原因や温室効果等の原因となり,2020年には
全廃が地予定されている.特にHCFC22は過去に大量
に使われているため今後大量に廃棄されることが予想さ れ,その処理法の実用化が求められる.そこで,当研究室では,NaOHを含むメタノール溶液 中にHCFC22をバブリングさせ,第3世代の冷媒として
期待されるフルオロエーテルを得た.*家政学部環境情報学科環境分析研究室
**法政大学工学部物質化学科物質プロセス研究室
本研究では,HCFC22の脱塩素反応実験を行い,
HCFC22の流量と分圧, NaOHの初濃度の変化が反応 速度に与える影響について調べ,HCFC22からのエー テル合成反応メカニズムによりHCFC22分解反応速度
式の提案及び,分解反応速度に及ぼす温度の影響につい て調べることを目的とした.2.反応系
本実験系は,(1)の反応化学量論式で表される.
ただし,hは反応速度定数である.
CHCIF2十NaOH+CH30H
h
−一一一一 cレCH30CHFz十H20十NaCl
(1)
2−1HCFC22の分解反応に影響を与える因子 HCFC22の分解反応速度に影響を与える因子として
1)反応容器内のNaOH初濃度 2)混合気体におけるHCFC22の分圧
3)反応溶液温度が考えられる.本研究では1),2),3)と脱塩素反応との 関係を定量的に探求した.
3.実 験 3−1試薬
試薬:水酸化ナトリウム,メタノール,HCFC22,
2N−HNO3, フェノールフタレイン1%エタノー ル溶液,クロム酸カリウム溶液,O.025N一硝酸銀
3−2装置
NaOHを飽和溶解させたCH30Hを回分式の反応容器
成田 素子・西海 英雄
に入れる.撹搾はマグネチックスターラーを用い,完全 混合状態とした.反応容器は恒温槽で温度一定とした.
そして,HCFC−22をバブリングしながら,一定時間ご
とに反応溶液を採取し,HCFC22の脱塩素反応速度を知 るために生成物であるNaClの生成速度はMohr法を用い て測定し,NaOH濃度変化,分圧変化,温度変化の測定
より分解反応速度式を求める実験を行った.本実験で用いた脱塩素反応装置をFig.1に示す.この 装置は,液側は回分式,気側連続式となった,半バッチ
式である.
①
\③
○○ 09/⑤
○ ○ ○○
覗゜
r ㏄ 〇 十u
るし り㏄ m む R m ④t㎞ eT rn
te
コ⑨ ㎜me
㎝゜㎎圃 E血馳 ③緩⑧ 濫㎝
乱聡
即
飢図 A F
②M恥 羽囲副胎 ㏄盤愉 Chea HGMW ①⑤⑦⑩
4.実験結果 4−1流速の影響
NaOH初濃度を1.0[mol/1], HCFC22の分圧を67.5
[kPa], 反応槽5℃一定として, HCFC22の吹き込み
流速を変化させ,NaCl濃度への影響をみた.これによ
り,流速2.0[1/min]以上では流速の影響がなく反応律速 であると考えた.(Fig.2)そこで,以下の実験では流速2.0[1/min]以上で行った.
4−2NaOH濃度,e分圧の影響
CFC22の分圧が一定のとき, Fig.2からわかるように NaOHの初濃度は初期反応速度に比例する(282.15[K]).
同様にしてNaOH濃度を一定にし,分圧変化させたとき
0.10
0.08
06 0
04 0
﹇So且.886dZ
0.02
0,00
0 1 2 3 4 5 6
Time[mi11]Fig.2
Effect of flow rate on NaCl production at NaOH concentration 1.0[mo1/1]and partial
pressure67.5[kPa]
0.014
_O.012
・暑
:0.010 豊
鴛o.cns
と§α鵬
§
華α脳E
0.OO2
O.OOO
O 1
N逼OHc(ncJlmM1 Fig.3
Relationship between NaOH concentration and
initial reaction rate at flow rate 2.0[1/min]and partial pressure 101.3[kPa]and 282.15[K]
2
の初期反応速度もHCFC22の分圧に比例することがわかっ
た.
4−3 反応速度式
以上より,282.15〔K]における液中におけるHCFC22 の分解反応速度式として(2)式,反応速度定数
h=0.00298[Minml]得た.
HCFC22の分解反応速度に及ぼす温度の影響
ΩニkCHCFcnCNaoH
よって反応律速下では次式が成り立っ.
9E ?sc ・k〔P割(C°一一C−)
C。aC一1−,一くρ割 C°NaOH
PHcFc22:HCFC22の分圧[atm]
CoN。oH:NaOH初濃度[mo1/1〕
H:ヘンリー定数[kPa l/mol]
(2)
(3)
4−4 反応速度に及ぼす温度の影響
反応速度は温度の上昇に伴って急激に増大し,一般に は温度が10℃上昇すると反応速度は約2倍になるといわ れている.反応速度に及ぼす温度の影響は反応速度定数 kが温度Tの関数であるとして解釈される.
実験データから求められた各温度Tにおける反応速 度定数kはっぎに示すアレニウスの式Arrhenius
equationによって整理できることが多い.
k=Ae E/RT
ここで,
A:その反応の頻度因子frequency factor (前指数因子ともいう)
E:その反応の活性化エネルギー energy of activation[J/mol]
R:気体定数二8.314[J/mol・K]=1.987[cal/mo1・K]
T:絶対温度[K]
活性化エネルギーはいくつかの異なる温度の反応速
度の測定から実験的に求められる.上式の両辺の対数をとって
1nk=lnA−EIR(1/T)
すなわちlnh対1/Tのプロットは直線となり,その勾
配から活性化エネルギーが求まる.反応速度定数hと温度Tとの関係を表したものが
Fig.4の図である。1
響
2
老4 一
一7
α0030 0.CO31 QOO32 0.CO3×3 Q(XX34 0.(X⊃35 0,0036 (ユ0037
VilKl Fig.4 Arrehenius plot
4−5 反応速度式による理論値と実験値による比較 282.15Kにおいて求めたkの値を(3)式に代入して実験 値と比較したものがFig.5である.
0.4
3 0
0 2
㎝
ミ︻︒且.︒口8.6邸Z
1.5【molハ1 1.0【mot 11 0.51moレ11
− c◎rrelated line
0.0
0 10 20 30
Time[min]
Fig.5
Effect of NaOH concentration on production at
partial pressure 101.3[kPa]and 282.15[K]
5.結 言
lnk=−7989.8(1/T)+23.132 (4)Arrheniusの式より活性化エネルギーEを求めると,
E=66427.2[J/mo1]
(5)Methanol−NaOH溶液中でHCFC22の脱塩素反応を行
い,含フッ素工一テルCH30CHF2に転換する実験を行っ
た.その結果,HCFC22の初期反応速度はHCFC22の分
圧とNaOH初濃度に比例することが分かった.そして,成田 素子・西海 英雄
この実験結果を説明する反応速度式を提案し,その反応 速度定数hも求めた.
Ω・° ° ユ98P−(cR。・H・一(r・・Cl)
この反応速度式が成り立っということは,
CHCIF2十 CH30H十NαOH →CH30CHF2十H20+Nαα↓
という本実験の反応式が反応機構をも表していることを
意味する.
また,分解反応速度における温度依存性について調べる ことができ,これより活性化エネルギーEを求めた.
Eニ6.64×104[ノ/mol]
しかし,分解反応速度式は,初期段階においては実験 データとほぼ相関できるが,時間が経っにつれてずれが
生じる.原因としては生成するNaCl結晶が液中に拡散 すると液混合が悪くなるたあ液中におけるHCFC22のガ
ス吸収速度を減少させていることが考えられる.そのため反応律速が成り立たなくなるためと考えられ る.すなわち物質移動係数が無限に小さくなるためであ
る.
今後の課題は,物質移動係数とNaCl結晶との関係を
明らかにし,実験値と計算値とのずれの原因にっいて追 及する必要がある.謝 辞
本研究を行うにあたり,終始ご指導下さいました法政
大学工学部物質化学科西海英雄教授に敬意を表すと共
に,心から深く感謝いたします.
参考文献
1)石井 史,西薗大実著「脱フロンへの道」
plO.11.28 学陽書房
2)日本化学会編「フロンの環境化学と対策技術」
p. 3−5学会出版センター 3)環境省編「平成13年度版環境白書」
p.120−127, 149−153, 352−353
4)西海英雄城塚正共著「反応工学演習[1]基礎と応
用」p.5−6.12−14.25−26 昭晃堂
5)大竹伝雄著「化学工学概論」丸善株式会社 6)西海英雄,城塚 正共著「反応工学演習[2]基礎と
応用」昭晃堂
7)竹之内 仁「フロンーアルコール系のヘンリー定数の測
定」平成7年度修士論文
Abstract
As fluorocarbons containing chlorine atoms deplete the ozone layer, their production has been already or will be soon banned by the govemments. The object of this work is to convert these chlo血ated wastes into both harmless and usefU1 compounds. Then, fluorocarbons will be thought as one of valuable resources. At room temperature and atmospheric pressure, alcohols with sodium source were fbund to cause decomposition of fluorocarbons with chlorine atoms. The results from HCFC22 decomposition to produce CH30CHF2 indicate that reaction rate is propor−