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幼児が触れ合っているムシ(小動物)

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Academic year: 2021

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教員養成教育推進室年報 第6号

幼児が触れ合っているムシ(小動物)

―幼稚園児の保護者に対するアンケート結果から―

Insects children play with

― Study based on questionnaire results from parents of kindergarten children ―

家政学部・児童学科 佐藤 英文

はじめに

 幼児の成長にとって自然とかかわることが重要であることは、幼稚園教育要領(2008)、保育所保育指 針(2008)、幼保連携型認定こども園教育・保育要領(2014)にも示されている通りである。その中でも 昆虫を中心とした一般にムシと呼ばれる小動物群(ここではオタマジャクシやメダカなどの脊椎動物や、

カタツムリなどの軟体動物、ダンゴムシやクモ類などの節足動物などを含めてムシとして扱う)は、幼児 が触れ合う機会も多く、生き物の多様性を知り、生死を体感するうえでも極めて重要な要素といえる。こ の体験の教育的意義については、様々な研究が行われている。その一つとして、子どもとムシとの様々な 触れ合い(飼育、観察、採集、遊びなど)の重要性が指摘されている(山下ら 2005、2008、2009 など)。

これに対して、保育現場で子どもの指導に当たる保育者(あるいは保育者を目指す学生)や保護者の認識

(ムシに対する好き嫌い)や指導のあり方(飼育や観察)などの側面からの研究も多い(佐藤2014、2016、

日高2005など)。

 では、具体的に子どもたちは日常的にどのようなムシと触れ合っているのであろうか。その実態を知る ことは、保育に携わる者にとっても重要であると考える。その方法としては、子どもたちの行動を直接観 察することによって確認するのが有効であるが、多数の事例を把握するには多大な労力を必要とする。そ こで考えられるのが、日常的に子どもたちを観察している保育者や保護者を通して調査することである。

ただし、保育者を対象とした調査では幼稚園や保育園などの限られた場所に限定されてしまい、教育方針 の影響も受けやすく、観察範囲が限られたものとなってしまう。一方、保護者は保育者とは異なる視点で 子どもとムシとのより日常的な接触を観察していると推測される。

 そこで、本研究では保護者を対象に子どもが日常生活の中で触れているムシについてアンケート調査を 実施し、その傾向について考察した。

方法

①調査場所と対象:神奈川県内私立幼稚園の保護者。

②調査年月日:2012年(平成24年)6月(提出は書類受け取りの日から1か月以内)

③調査方法:子どもの行動を日ごろから観察している親が、子どもとムシとの関わりをどの程度把握して いるのかを知るために、幼稚園保護者を対象とした以下の内容についての質問用紙を配布し記入しても らった。調査内容は

1、 保護者が観察した子どもとムシとの触れあい(そのときの年齢、関わり方、ムシが死んでしまっ た体験、親としての対応)について記載していただいた。1家族で複数の通園者が存在する場合 は、それぞれ別の用紙に回答していただいた。

2、 保護者(父親、母親、その他)のムシ体験についても同様の回答をしていただいた。結果の発表

(2)

「提出は義務ではなく自由であること」を明記し了解していただいた。

    本調査でのムシとの触れあいは、ゴキブリを殺虫剤で殺す(叫んで逃げる)、血を吸っている 蚊をたたく、畑の野菜や植木鉢についたムシを除去する、スズメバチの巣を保健所で除去しても らう、といった類いの対応は除外し、あくまで遊びとして触れあった(あるいはそれに近い触れ あい)例について記載していただいた。

④分析内容:得られた結果から、子ども1人当たりの触れあったムシの種類数、用紙に記載された種と子 どもが関わった割合、を中心に男女別・年齢別に集計し考察を加えた。同様の調査を保護者(幼児期の 体験として)にも行った。

  動物名称の採用は基本的には保護者が書いた内容をできるだけ尊重することとした。たとえば、チョ ウの仲間は大部分の回答はチョウ(チョウチョ)であったが、具体的にモンシロチョウなどと種名をあ げたものもあった。種類名(~の仲間)をどのように分けるかについては、筆者が調整した(たとえば オタマジャクシとカエルを分けるなど)。今回の調査で全質問にまんべんなく回答していただいたもの を確認し、欠落が著しいものは除外した。また、男女がはっきりしないものに関しては、担任に連絡し て確認した。その結果、集計に活用できた用紙数(子どもの数)は表1に示した通りであった。全体で の男子の割合は43%、女子の割合は57%であった。

表1.年齢と男女別にみた調査人数

調査対象 男子 女子 合計

年少クラス(3歳児) 25 35 60

年中クラス(4歳児) 39 45 84

年長クラス(5歳児) 31 46 77

合計 95 126 221

結果と考察

1.子ども1人当たりの触れあった種類数

 子ども1人当たり何種類のムシと触れあっているのかを比較するために最多種類数、最少種類数、平均 種類数(標準偏差)を求め、表2に示した。最多種数をみると、男子では年少と年長が13種、年中が10 種であった。これに対して女子は年少が10種類、年中と年長が11種類であり、変動が少なかった。最少 種数は1種類または0種類であり、0種類が女子に見られたが、いずれも1例ずつである。

 これに対して平均値を比較すると、男子では年中の値がやや下がる傾向を示した。またもっとも高い値 を示したのは年少であった。逆に、女子の場合は年中で最も高い値を示したことが注目される。しかしな がら検定の結果、これらの平均値の間に有意差は認められなかった。全体として、幼稚園児は4~6種類 の範囲で触れあっているといえよう。年少、年中、年長の間に顕著な差が認められなかったことが注目さ れる。

表2.触れあったムシの男女別比較

年少男子 年少女子 年中男子 年中女子 年長男子 年長女子 男子全体 女子全体

最多 13 10 10 11 13 10 13 11

最少 1 0 1 1 1 1 1 0

平均 6.27 5.04 4.36 5.18 5.71 5.04 5.23 4.98

標準偏差 3.27 2.64 2.60 2.93 3.14 2.64 2.98 2.71

(3)

教員養成教育推進室年報 第6号

 では、個々の幼児がそれぞれどれくらいのムシと触れあっているのであろうか。その実体を把握するた めに、関わったムシの種類数と人数の関係を図1に示した。なお男女や年齢によって、母集団が異なるた め、各集団を100%としてそれに対する比で表現してある。

 3歳児男子では、5種類が最も多く 27%に達した。次いで4種類(16%)。10 種類(12%)であった。

これに対して女子は3~5種類に集中しておりそれぞれ17%を示した。また2種類と9種類の値が15%

を示した。男女ともに共通したのは、8種類あたりを境に、2つのピークがみられたことである。これは、

一般的な接し方をする幼児とムシが大好きで積極的に関わろうとしている幼児が存在することを示してい るのではないかと推測される。

図1. 園児1人当たり関わったムシの種類数と人数割合(右端の平均だけは種類数の平均値を示しており 割合ではない)

種類と種類の値が%を示した。男女ともに共通したのは、種類あたりを境に、つ のピークがみられたことである。これは、一般的な接し方をする幼児とムシが大好きで積 極的に関わろうとしている幼児が存在することを示しているのではないかと推測される。

0 5 10 15 20 25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

関わったムシの種類数 平均

割 合( 平 均 は 種 類 数

年中男女1人当たり 関わった種類数の人数割合

年中男子割合(n=39) 年中女子割合(n=44)

0 5 10 15 20 25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

関わったムシの種類数 平均

割 合( 平 均 は 種 類 数)

年長男女1人当たり関わった種類数の人数割合

年長男子割合(n=31) 年長女子割合(n=46)

年少男女1人当たり触れあった種類数の人数割合

年少男子割合(n=26)

年中男子割合(n=39)

年長男子割合(n=31)

触れあったムシの種類数

割合(平均は種類数)割合(平均は種類数)割合(平均は種類数)

触れあったムシの種類数

触れあったムシの種類数

年中男女 1 人当たり触れあった種類数の人数割合

年長男女 1 人当たり触れあった種類数の人数割合

年少女子割合(n=34)

年中女子割合(n=44)

年長女子割合(n=46)

(4)

 年中男子の結果をみると(図1中段)1人当たり2種類が最も多く 21%に達した。次いで多かったの が10種類であり19%を示した。3歳児と異なり、ピークが曖昧になる傾向を示しているが、これは触れ 合う種類などが変動している可能性を示唆している。また年少園児と同様に男女とも10種類もの触れ合 いを持つ例がみられた。

 これらの結果に対し、年長男子は2種類の割合が減少し、7種類の割合が増加していた。女子の値を見 ると4種類の割合が最も多かった。6種類の所で谷がみられるが、今回のみの結果なのか、それとも関心 を持つ者と苦手意識を持つ者とが分離しつつあるのか、興味が持たれるところである。今後、より詳細な 調査をしていきたい。

2.年齢別にみた触れ合っているムシ

 次に、それぞれの年齢でどのようなムシと触れあったかを調べ、その結果の上位20種についてグラフ を作成し図2に示した。図を見ると、いずれの年齢においても触れあった数がもっとも多かったのはダン ゴムシであり、85 ~ 94%に達した。次いでアリとの接触が多く、57 ~ 89%であった。その他の虫に関し ては男女間の差や年齢差が認められた。

 ダンゴムシとアリを除いた男子がよく触れ合う種類は、平均値が20%以上をあげると

カブトムシ(43%)>セミ(36%)>チョウ=バッタ(29%)>テントウムシ(28%)>カタツムリ

=ザリガニ(26%)>カマキリ(22%)>クワガタムシ(21%)

 の順であった。ただし、カブトムシやカマキリ、セミなどは年長者が多く触れ合う傾向にあり、逆にカ タツムリなどは。年少者ほど多い傾向を示した。男子の場合、年齢が上がるにつれ大型で力強いムシが好 まれるのかもしれない。

図2.幼稚園児がよく触れ合っている主なムシ

年中男子の結果をみると(図中段)人当たり種類が最も多く%に達した。次い で多かったのが種類であり%を示した。歳児と異なり、ピークが曖昧になる傾向を 示しているが、これは触れ合う種類などが変動している可能性を示唆している。また年少 園児と同様に男女とも種類もの触れ合いを持つ例がみられた。

これらの結果に対し、年長男子は種類の割合が減少し、種類の割合が増加していた。

女子の値を見ると種類の割合が最も多かった。種類の所で谷がみられるが、今回のみ の結果なのか、それとも関心を持つ者と苦手意識を持つ者とが分離しつつあるのか、興味 が持たれるところである。今後より詳細な調査をしていきたい。

2、年齢別にみた触れ合っているムシ

次に、それぞれの年齢でどのようなムシと関わったかを調べ、その結果の上位種につ いてグラフを作成し図に示した。図を見ると、いずれの年齢においても関わりがもっと も多かったのはダンゴムシであり、~%に達した。次いでアリとの接触が多く、~

%であった。その他の虫に関しては男女間の差や年齢差が認められた。

ダンゴムシとアリを除いた男子がよく触れ合う種類は、平均値が%以上をあげると カブトムシ(%)>セミ(%)>チョウ=バッタ(%)!テントウムシ(%)

>カタツムリ=ザリガニ(%)!カマキリ(%)>クワガタムシ(21%)

の順であった。ただし、カブトムシやカマキリ、セミなどは年長者が多く触れ合う傾向に あり、逆にカタツムリなどは。年少者ほど多い傾向を示した。男子の場合、年齢が上がる につれ大きいムシや力強いムシが好まれるのかもしれない。

図.幼稚園児がよく触れ合っている主なムシ

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教員養成教育推進室年報 第6号

 これに対して、女子の結果をみると

カタツムリ(40%)>チョウ(33%)>カブトムシ(28%)>テントウムシ(25%)>セミ(23%)

 の順であった。20%以上を示したのが男子では8種類であったのに対して女子では5種類にすぎなかっ た。また触れ合う割合が多いムシの順番も女子では男子と異なり、カタツムリやチョウなどに偏る傾向を 示した。チョウに関しては、男子は年齢とともに減少傾向を示したが、女子ではむしろ増加傾向を示した。

今回の調査では幼虫と成虫を特に区別せずに集計したため、いずれを好んだのかについては不明である。

カブトムシに関しては女子でも年齢が高いほど触れ合っているようであるが、これは年長組が教室内で飼 育した影響が出ている可能性が高い。

3.ムシの具体的な分類名

 これまで小動物をまとめてムシと呼んでみてきたが、実際に分類学的な側面からみたらどのようなもの に幼児は触れているのであろうか。今回の調査は親に回答してもらったアンケート結果である。そのた め、親の動物に対する知識が大きく影響しているものと思われる。その点を踏まえたうえで、以下に簡単 に述べてみたい。

軟体動物

 これはおもにカタツムリ類とナメクジ類である。これらの種は分類がなかなか難しく、種レベルで述べ た親はいなかった。そのため、どちらも数種類が混じっている可能性がある。調査地域では近年、カタツ ムリの数が減少しており、とくに園庭内では見つけることが困難となっている。おそらく多くは園内活動 以外の場所で触れあったものと推測される。

等脚類

 ほとんどがダンゴムシ(オカダンゴムシ)であったが、時折ワラジムシが見受けられた。佐藤(2014)

は大学生が幼時のときに触れた土壌動物について調査したが、そのときに関わった等脚類は大多数がダン ゴムシであり、ワラジムシ類も同じように幅広く生息しているにもかかわらずほとんど書いていなかった 点を指摘している。今回の調査でも、親がほとんど意識していない可能性がある。また実際に、幼児もダ ンゴムシには大きな関心を示すが、ワラジムシ類は丸まらないという理由であまり関心を示さない。その ことがワラジムシの記載が少ない理由かもしれない。ワラジムシがなぜ無視されるのかについては興味深 いが、その理由を今後調べてみたいと考えている。なお、今回の調査で1名だけであったがフナムシを書 いた例があった。

甲殻類

 大部分がザリガニ、およびカニであった。とくにアメリカザリガニは子ども達にとっても日常的な遊び 相手といってもよいであろう。食用ガエルのエサとして移入された外来種であるが、ダンゴムシやワラジ ムシと同様に子ども達の周辺に定着して不可欠な動物となっている。

クモ類

 クモ類も比較的一般的に遊ばれているようであるが、多様な種類を述べるまでには至っていない。造網 性のクモなのか、それとも徘徊性種かなど詳細は不明である。なお、本調査を実施し時は、まだセアカゴ ケグモなどが大問題になっていなかったため、保護者の過剰な反応はみうけられなかった。

多足類

 これも、おおざっぱにムカデとヤスデ、そしてゲジが主な遊び対象である。大型のムカデは噛まれると 痛いし、ヤスデの仲間は匂いがするものが多い。そのため恐れられたり嫌われたりすることが多いと思わ れるが、子ども達は比較的気軽に遊んでいるように思われる。場合によっては攻撃対象になっている可能 性もある。具体的にどのように遊んだのか興味深いところではあるが、それは今後の分析にゆだねたい。

(6)

昆虫類

 本調査で圧倒的に多かったのが昆虫類であった。記載されたものの中で全体の 80%以上は昆虫類で あった。カブトムシ、チョウ、テントウムシ、などをはじめとして様々な昆虫と触れあっていることがわ かる。男子などではカマキリやカブトムシが人気なようであった。女子はテントウムシやチョウが好まれ る傾向にあった。昆虫類は種類が多様であり、子どもたちが命と触れ合う絶好の材料といえよう。とくに アリやダンゴムシ(ほとんどが外来種であるオカダンゴムシ)などは絶滅の心配がないため、殺してしま う体験も含めて命を考えるよい教材といえる。

貧毛類

 代表的なものはミミズである。種類は多様であるが、分類は大変に難しいため、保護者はすべてまとめ てミミズとして扱っているようである。おそらくフトミミズかツリミミズの仲間であろうと思われる。

脊椎動物

 ムシ、という範中に小型の脊椎動物でも構わない旨をアンケート用紙に記したためか、メダカなどの魚 類、カメやトカゲやヤモリといった爬虫類、オタマジャクシやカエルといった両生類を書いた保護者も少 なからず見受けられた。これらも幅広い意味で子どもが接するムシの仲間と考えてもよいと思われる。

4.まとめ

 以上、親が観察した子どもとムシとの触れあいを調べた結果、これまで述べたことを整理すると以下の ような特徴が認められた。

A、年齢を問わずほとんどの子どもがムシと触れあっている B、平均で5種類程度のムシと触れあっている

C、どの年齢でもアリとダンゴムシとの触れあいが圧倒的に多い

D、チョウ、カタツムリ、セミ、カブトムシなどは男女で多少の違いが見られた E、水棲小動物との接触が少ない

 これらの結果は親が観察したものであることを考えると、子どものムシとの触れあいの範囲が親の行動 や興味の範囲と関係があると推測される。本調査では親のムシ体験も調査しているので、今後それらの結 果との関連性について考察していきたい。

5.参考文献

1)厚生労働省(2008)保育所保育指針.

2)佐藤英文(2014)子どもの頃に土壌動物を殺してしまった体験について ―保育者をめざす学生のア ンケート結果から―、鶴見大学紀要第3部保育・歯科衛生編51(第3部):11-17.

3)同上(2016)ツマグロヒョウモン幼虫を使ったムシに対する苦手意識解消の試み、別冊昆虫と自然:

68-72.

4)日高俊一郎(2005)虫嫌いの構造仮説、日本科学教育学会研究会研究報告20(4):73-78.

5)文部科学省(2008)幼稚園教育要領

6)文部科学省・厚生労働省(2014)幼保連携型認定こども園教育・保育要領

7)山下久美・首藤敏元(2005)幼稚園・保育園の動物飼育状況と飼育体験効果に関する研究展望、子ど ものムシとのかかわりに関する研究に注目して―埼玉大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 4:177-188.

参照

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