• 検索結果がありません。

1. 総括 日本経済の現状と先行 き トピック 貿易摩擦が設備投資に与える影響 図表 1 通商政策不確実性指数 (1987~215 年平均 =1)) 日本経済は力強さに欠ける動きとなっている 災害の影響収束により 生 産活動は緩やかに持ち直している 一方 海外経済の弱含みによ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1. 総括 日本経済の現状と先行 き トピック 貿易摩擦が設備投資に与える影響 図表 1 通商政策不確実性指数 (1987~215 年平均 =1)) 日本経済は力強さに欠ける動きとなっている 災害の影響収束により 生 産活動は緩やかに持ち直している 一方 海外経済の弱含みによ"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

みずほ日本経済情報

2019年1月号

◆ トピック

貿易摩擦が設備投資に与える影響

貿易摩擦を背景として、通商政策に関する不確実性は高ま

る傾向。こうした不確実性の高まりは、製造業を中心に企

業の投資マインドを下押しする可能性。

◆ 景気判断

景気は力強さに欠ける

災害の影響収束により、生産活動が緩やかに持ち直し。一

方、海外経済の弱含みにより、輸出が力強さを欠く。

(2)

1.総 括

日本経済の現状と先行 き 日本経済は力強さに欠ける動きとなっている。災害の影響収束により、生 産活動は緩やかに持ち直している。一方、海外経済の弱含みにより、輸出が 力強さを欠いている。経済の活動水準は、潜在生産量程度で推移している。 先行きの日本経済は、横ばいで推移するだろう。個人消費や設備投資、公 的需要などの内需が下支えするものの、海外経済の減速による輸出が弱含む とみられる。経済活動の水準は、潜在生産量程度で推移するだろう。 トピック 「貿易摩擦が設備投資 に与える影響」 2017 年にトランプ政権が発足して以降、米国の通商政策に関する不確実性 は急激に高まった感がある。実際、Arbatli, et al.(2017)の「通商政策不確

実性指数(Trade Policy Uncertainty Index)」を日本について見てみると、

2017 年から 2018 年にかけて、不確実性の増大傾向が確認できる(図表 1)。 こうした不確実性の高まりは、企業の投資マインドを下押しする可能性が ある。通商政策不確実性指数と法人企業統計の設備投資を用いて推計すると、 通商政策の不確実性の増大は、ラグを伴って設備投資に有意に負の影響を与 えることがわかる(図表 2)。足元の設備投資への影響度について試算すると、 2018 年以降の通商政策の不確実性ショックは設備投資の伸びを平均的に 0.9%Pt 程度(名目GDP換算で約 0.2%Pt 程度)押し下げる格好だ。 特に製造業については、例えば米中貿易摩擦で中国経済が鈍化した場合、 中国への資本財出荷が鈍化すると想定されるほか、世界的に貿易摩擦が深刻 化した場合にはサプライチェーンの見直しを余儀なくされるケースもあると みられることから、企業は設備投資に対して慎重になりやすいと考えられる。 当面の設備投資については、省人化投資ニーズの顕在化等により堅調に推 移することが見込まれるが、こうした対外要因による下振れリスクにも留意 する必要がある。米中あるいは日米間の通商交渉の動向から目が離せない。 (酒井才介) 図表 1 通商政策不確実性指数 図表 2 通商政策不確実性ショックに対する 設備投資のインパルス応答 (資料)Arbatli, et al.(2017) より、みずほ総合研究所作成 (注)1標準偏差の通商政策不確実性ショックを与えた場合の設備投 資(前期比伸び率)の変化を示している。点線は±1 標準誤差 分の信頼区間を示す。 (資料)みずほ総合研究所作成 0 100 200 300 400 500 600 19 90/3 19 91/10 1993/5 19 94/12 1996/7 1998/2 1999/9 2001/4 20 02/11 2004/6 2006/1 2007/8 2009/3 20 10/10 2012/5 20 13/12 2015/7 2017/2 2018/9 (1987~2015年平均=100)) (四半期) ▲ 1.4 ▲ 1.2 ▲ 1.0 ▲ 0.8 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 (%Pt) (四半期)

(3)

2 みずほ日本経済情報(2019 年 1 月号) 図表 3 景気判断 (注) 1.矢印の向きは景気の方向性を示している。上向きが拡大局面、横向きが横ばい局面、下向きが後退局面を意味する。 2. 矢印の色は生産の水準感を示している。白は潜在生産量を上回る、紺は潜在生産量を下回る、白紺の縦縞は潜在生産量 程度の生産量を意味する。 3. 先行き判断は、3 カ月程度先の動きに関する判断を示している。 (資料) みずほ総合研究所 図表 4 景気の全体観を示す主要統計 (注) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3 次産業は第 3 次産業活動指数の値。 2. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 3. 四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。 (資料) 内閣府「景気動向指数」、「四半期別GDP速報」、経済産業省「全産業活動指数」、「鉱工業指数」、「第 3 次産業活動指数」 1 2 月 ( 現状判断) ( 現状判断) ( 先行き判断) 経済活動の方向性 回復の兆しがみられる 力強さに欠ける 横ばいで推移する 経済活動の水準 潜在生産量程度で推移している 潜在生産量程度で推移している 潜在生産量程度で推移する 海外経済 横ばいで推移している 弱含んでいる 減速する 輸出 持ち直している 力強さを欠いている 弱含む 輸入 持ち直している 持ち直している 横ばいで推移する 生産・サービス活動 持ち直している 緩やかに持ち直している 力強さを欠く 企業収益 底堅く推移している 底堅く推移している 横ばいで推移する 企業マインド 持ち直しの兆しがみられる 横ばいで推移している 弱含む 設備投資 底堅く推移している 底堅く推移している 底堅く推移する 雇用者所得 緩やかな回復傾向にある 緩やかに回復している 緩やかに回復する 消費者マインド 下げ止まりつつある 弱含んでいる 力強さを欠く 個人消費 緩やかに回復している 緩やかに回復している 緩やかに回復する 住宅着工 持ち直しの兆しがみられる 持ち直しの兆しがみられる 回復する 公的需要 減少している 減少している 緩やかに持ち直す 国内企業物価 プラス幅が縮小している プラス幅が縮小している プラス幅が縮小する 消費者物価 プラス幅が横ばいで推移している プラス幅が縮小している プラス幅が緩やかな縮小傾向で推移する 金融政策 金融緩和を進めている 金融緩和を進めている 現行の政策を維持する 企 業 部 門 家 計 部 門 政 府 ・ 物 価 1 月 総括 対 外 部 門 FY2016 FY2017 2018Q2 2018Q3 2018Q4 2018/08 2018/09 2018/10 2018/11 2018/12 景気動向指数 CI 先行指数 前期差、Pt - - - 0.3 ▲ 0.4 0.0 ▲ 0.3 n.a. CI 一致指数 前期差、Pt - - - 0.2 ▲ 1.1 3.3 ▲ 1.9 n.a. CI 遅行指数 前期差、Pt - - - 0.6 ▲ 0.8 ▲ 0.2 0.4 n.a. DI 先行指数 % - - - 36.4 18.2 40.0 55.6 n.a. DI 一致指数 % - - - 44.4 33.3 87.5 64.3 n.a. DI 遅行指数 % - - - 33.3 55.6 50.0 62.5 n.a. 全産業活動指数 全産業 前期比、% 0.6 1.8 0.9 ▲ 0.8 1.3 0.4 ▲ 1.0 1.9 n.a. n.a. 鉱工業 前期比、% 1.0 4.1 1.2 ▲ 1.3 2.2 0.3 ▲ 0.4 2.9 ▲ 1.0 n.a. 第3次産業 前期比、% 0.4 1.1 0.8 ▲ 0.5 1.3 0.4 ▲ 1.3 2.2 ▲ 0.3 n.a. 建設業 前期比、% 2.3 3.8 0.7 ▲ 2.4 ▲ 1.5 0.4 ▲ 0.7 ▲ 1.2 n.a. n.a. 国民経済計算 実質GDP 前期比、% 0.9 1.9 0.7 ▲ 0.6 n.a. - - - - -前期比年率、% - - 2.8 ▲ 2.5 n.a. - - - - -民需 寄与度、%Pt ▲ 0.1 1.3 0.8 ▲ 0.5 n.a. - - - - -公需 寄与度、%Pt 0.2 0.1 0.0 ▲ 0.1 n.a. - - - - -外需 寄与度、%Pt 0.8 0.4 ▲ 0.1 ▲ 0.1 n.a. - - - - -名目GDP 年率、兆円 536.8 547.4 550.5 546.7 n.a. - - - - -前期比、% 0.7 2.0 0.5 ▲ 0.7 n.a. - - - - -GDPデフレーター 前年比、% ▲ 0.2 0.2 0.0 ▲ 0.3 n.a. - - - - -内需デフレーター 前年比、% ▲ 0.5 0.7 0.5 0.6 n.a. - - - -

(4)

-2.対外部門

海外経済 海外経済は弱含んでいる。2018 年 12 月の製造業景況感指数は、米国が 54.1 (11 月 59.3)と大幅に低下した。ユーロ圏と中国も低下し、特に中国は 49.4 と、景況感の良し悪しの判断目安となる 50 を 2 年 6 か月ぶりに下回った(図 表 1)。中国では 12 月の輸出、輸入がともに前年比マイナス割れと急速に鈍化 しており、貿易摩擦の影響が出てきた可能性がある(図表 2)。 今後の海外経済は減速する見込みである。米国経済は個人消費を中心に堅 調を維持するだろう。ただし、通商政策の先行き不透明感から設備投資が下 振れる可能性がある。ユーロ圏経済は、域外受注の停滞などを受けて減速傾 向で推移するだろう。中国経済は当面緩やかな減速が続く見通しだ。3 月 2 日に予定されている米国の対中関税引き上げ次第では、輸出を中心に中国経 済の減速ペースが速まるリスクに注意が必要だ。 輸出 (※)みずほ総研による季節調整値 輸出は力強さを欠いている。11 月の輸出数量指数(※)は前月比▲2.2%と、 自然災害からの復旧により上昇した前月から再び低下した。米欧中全ての地 域でマイナスとなったほか、財別でも電気機械や一般機械を中心に多くの財 で低下した。10・11 月を 7~9 月期比でみると、+0.9%と持ち直しているも のの、4~6 月期対比では▲2.3%と依然低水準だ。 先行きは、弱含むだろう。米中貿易摩擦などによる不透明感の高まりや、 米国を除く主要国の景気減速が、輸出の下押し要因となる見込みだ。なお、 11 月の機械受注(外需)は前月比+18.5%と 2 カ月連続で大幅に増加したが、 化学機械の急増が主因であり、一時的とみている。12 月の工作機械受注をみ ると大幅なマイナスが続いており、資本財を中心に輸出の減速感が強まる可 能性がある(図表 3)。 インバウンド 11・12 月の訪日外客数は、前年比プラス幅が拡大しており、緩やかに持ち 直している。台風 21 号など 7~9 月期に相次いだ災害による悪影響が収束に 向かっていると評価している。当面の訪日外客数は 2019 年 1 月からの中国人 向けの新たなビザ緩和開始などにより、緩やかに持ち直していくだろう。 輸入 (※)みずほ総研による季節調整値 輸入は持ち直している。輸入数量指数(※)は、11 月こそ前月比▲1.1%と 2 か月ぶりに低下した。もっとも、10・11 月を 7~9 月期比でみると、+3.4% と上昇しており、足元の低下は、自然災害の復旧により上昇した前月の反動 によるものとみられる。先行きは、個人消費の緩やかな拡大に伴い消費財関 連の輸入は増加するとみている。一方、国内の生産活動に一服感がみられる ことから(図表 4)、輸入全体では横ばいで推移する見込みである。 経常収支 経常収支(季節調整値)は黒字幅が縮小傾向にある。11 月の経常黒字は、 主に第一次所得収支の黒字幅拡大を受けて、17.3 兆円(年率換算値)と前月 から拡大した。ただし、10・11 月平均は 15.9 兆円と、7~9 月期(17.2 兆円) から縮小傾向が続いている。先行きは、現状程度の黒字幅で推移するとみて いる。貿易収支には輸出数量の増勢鈍化による下押し圧力が加わるとみられ る一方、第一次所得収支は大幅な黒字が続くだろう。

(5)

4 みずほ日本経済情報(2019 年 1 月号) 図表 1 米欧中の景況感(製造業) 図表 2 中国の輸出入額 (注) 指数が 50 超のとき業況拡大を示す。加重平均に用いた輸出額は後方 12 カ月移動平均値。 (資料)米サプライマネジメント協会、Markit、国家統計局より、 みずほ総合研究所作成 (資料)中国海関総署より、みずほ総合研究所作成 図表 3 工作機械受注額(外需) 図表 4 鉱工業生産と輸入数量 (注)2018 年 12 月は外需全体の値のみ。 (資料)一般社団法人日本工作機械工業会「工作機械受注実績調査報告」 より、みずほ総合研究所作成 (注)輸入は 3 カ月移動平均の値。 (資料)経済産業省「鉱工業生産指数」、財務省「貿易統計」より、 みずほ総合研究所作成 図表 5 対外部門の主要統計 (注) 1.実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 2.四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値・合計値。前期比は、その前四半期に対する変化率。 3.輸出数量及び輸入数量はみずほ総合研究所による季節調整値。 (資料) 財務省「貿易統計」、日本銀行「実質輸出入」、「国際収支統計」、「外国為替相場」、日本政府観光局「訪日外客数」、観光庁「訪日外国人 消費動向調査」、米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会、CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis

46 48 50 52 54 56 58 60 62 16/01 16/07 17/01 17/07 18/01 18/07 米国製造業PMI 欧州製造業PMI 中国製造業PMI 輸出額加重平均 (年/月) (指数) ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 50 16/09 17/03 17/09 18/03 18/09 輸出 輸入 (前年比、%) (年/月) ▲ 40 ▲ 20 0 20 40 60 80 15/01 15/07 16/01 16/07 17/01 17/07 18/01 18/07 中国を除くその他 中国 受注(外需) (前年比、%) (年/月) 90 92 94 96 98 100 102 104 106 108 110 12/01 13/01 14/01 15/01 16/01 17/01 18/01 生産 輸入 (2010=100) (年/月) 補正値 FY2016 FY2017 2018Q2 2018Q3 2018Q4 2018/08 2018/09 2018/10 2018/11 2018/12 海外経済 CPB生産指数 前期比、% 2.2 3.7 0.4 0.4 0.1 0.5 ▲ 0.5 0.2 n.a. n.a. 米国 前期比、% ▲ 1.2 2.4 1.3 1.2 0.2 0.9 0.1 ▲ 0.2 n.a. n.a. ユーロ圏 前期比、% 1.8 3.5 ▲ 0.0 0.1 ▲ 0.1 1.1 ▲ 1.0 0.2 n.a. n.a. アジア 前期比、% 4.9 5.0 0.9 0.6 0.4 0.3 ▲ 0.6 0.7 n.a. n.a. 製造業の業況 米国(ISM) DI - - - 61.3 59.8 57.7 59.3 54.1 ユーロ圏(PMI) DI - - - 54.6 53.2 52.0 51.8 51.4 中国(PMI)「国家統計局版」 DI - - - 51.3 50.8 50.2 50.0 49.4 実質実効為替レート 前年比、% 11.6 ▲ 5.9 ▲ 3.3 0.8 n.a. 0.7 1.5 2.6 2.6 n.a. 輸出 輸出数量 前期比、% 2.4 4.5 1.4 ▲ 3.2 0.9 0.2 ▲ 3.9 4.7 ▲ 2.2 n.a. 米国向け 前期比、% ▲ 0.1 5.2 2.6 ▲ 3.0 2.4 3.8 ▲ 1.6 3.1 ▲ 1.6 n.a. 欧州向け 前期比、% 4.8 1.7 3.0 ▲ 2.9 3.1 0.2 ▲ 4.9 7.0 ▲ 0.7 n.a. アジア向け 前期比、% 3.0 1.9 ▲ 1.4 ▲ 0.8 ▲ 0.6 ▲ 1.3 ▲ 1.3 2.1 ▲ 2.5 n.a.  うち中国向け 前期比、% 7.6 11.0 3.1 ▲ 2.2 ▲ 0.0 0.3 ▲ 4.8 4.0 ▲ 1.6 n.a. 実質輸出 前期比、% 4.1 6.0 0.6 ▲ 1.9 1.5 2.2 ▲ 5.5 6.3 ▲ 2.9 n.a. インバウンド 訪日外客数 前年比、% 16.2 19.9 14.7 1.8 3.1 4.1 ▲ 5.3 1.8 3.1 4.4 訪日外国人旅行消費額 前年比、% 2.3 19.8 2.6 ▲ 12.7 ▲ 0.5 - - - - -輸入 輸入数量 前期比、% 0.1 4.8 0.7 ▲ 0.1 3.4 2.2 ▲ 3.9 6.1 ▲ 1.1 n.a. 実質輸入 前期比、% ▲ 0.2 4.3 ▲ 1.6 1.3 4.4 1.2 ▲ 2.8 7.2 ▲ 2.3 n.a. 対外収支 経常収支 年率、兆円 21.0 21.8 22.1 17.2 15.9 17.0 16.4 14.5 17.3 n.a. 貿易・サービス収支 年率、兆円 4.4 4.1 2.0 ▲ 0.7 ▲ 2.9 ▲ 0.9 ▲ 2.4 ▲ 2.8 ▲ 2.9 n.a. 第一次所得収支 年率、兆円 18.7 19.9 22.0 20.2 20.7 20.5 20.5 19.7 21.6 n.a.

(6)

3.企業部門

生産・サービス活動 生産・サービス活動は緩やかに持ち直している。11 月の鉱工業生産指数は 前月比▲1.0%と 2 カ月ぶりのマイナスとなった(図表 1)。汎用・業務用機械 工業を中心に 8 業種が低下し、全体を押し下げだ。ただし、10・11 月を 7~9 月期比でみると、+2.2%とプラスを維持している。11 月の第 3 次産業活動指 数は前月比▲0.3%と 2 カ月ぶりに低下した。急上昇した前月の反動減もあっ て金融業、保険業などが下押しした。もっとも、指数自体は 106.6 と高水準 で推移しており、10・11 月を 7~9 月期比でみると、+1.3%と上昇している。 先行きは力強さを欠くだろう。サービス活動は、個人消費の回復を受けて 高水準で推移しよう。鉱工業生産は、設備投資の底堅さを背景に国内向けは 堅調な推移が見込まれるものの、中国向けを中心に資本財輸出の増勢が一層 鈍化することから、緩やかに減速する見通しだ。米中貿易摩擦の激化や中国 経済の更なる減速などの対外リスクにも注意が必要だ。 企業収益 企業収益は底堅く推移している。日銀短観(12 月調査・全規模、以下同) では、為替レートが想定対比円安で推移したことなどから、2018 年度上期の 経常利益計画(全産業)は製造業を中心に上振れた。 先行きは、横ばいで推移する見通しだ。個人消費など内需の持ち直しや原 油価格の下落が下支えする一方、中国経済の減速や人手不足に伴う人件費高 騰が重石となろう。米国の保護主義的な通商政策にも注視が必要だ。 企業マインド 企業マインドは横ばいで推移している。日銀短観の業況判断DIでは、製 造業が前回調査から横ばい、非製造業が+1%Pt 改善した(図表 2)。非製造業 は夏場の自然災害の影響が収束したことが押し上げに寄与したようだ。12 月の景 気ウォッチャーの現状判断DIは、12 月中旬からの株価下落等が下押しし、前月 から▲3.0%Pt悪化した。もっとも、1月以降は株価下落に歯止めがかかっており、 マインドの悪化は一時的なものにとどまる可能性がある。 今後の企業マインドは弱含むだろう。日銀短観、景気ウォッチャーの先行 き判断DIはともに大幅な悪化となった。人手不足に伴う人件費増や米中貿 易摩擦激化による不確実性の増大などが下押し要因となろう。 設備投資 設備投資は底堅く推移している。11 月の資本財総供給は前月比▲2.1%と 2 カ月ぶりのマイナスとなったものの、10・11 月を 7~9 月期比でみると+4.8% と底堅く推移している(図表 3)。建設財総供給も 3 カ月連続で上昇している。 先行きの設備投資は底堅く推移する見通しだ。日銀短観の 2018 年度の設備 投資計画(ソフトウェア含む、全産業)は、前回調査から非製造業が上方修 正されたことで高い伸び率を維持した(図表 4)。今後も、高水準な企業収益 や、人手不足に伴う省人化・自動化投資などが投資の下支えとなろう。ただ し、米中貿易摩擦など先行きの不透明感から製造業を中心に設備投資姿勢が 慎重化する可能性には留意が必要だ。先行指標である機械受注(船舶、電力 除く民需)をみると、11 月は前月比▲0.0%と横ばいとなり、10・11 月を 7 ~9 月期比でみると、▲4.2%と弱含んでいる。

(7)

6 みずほ日本経済情報(2019 年 1 月号) 図表 1 鉱工業生産、第 3 次産業活動指数 図表 2 業況判断DI (資料) 経済産業省「鉱工業指数」、「第 3 次産業活動指数」より、みずほ総合研究所 作成 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成 図表 3 設備投資関連指標 図表 4 設備投資計画(全規模・全産業) (注)いずれも 3 カ月後方移動平均。機械受注は企業物価の資本財で実質化。 (資料)経済産業省「鉱工業総供給表」、内閣府「機械受注統計」、日本銀行「企業物価 指数」より、みずほ総合研究所作成 (注)土地および研究開発費除く、ソフトウェア含むベース。 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成 図表 5 企業部門の主要統計 (注) 1.実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。資本財総供給は 2010 年基準、鉱工業指数は 2015 年基準である。 2.四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。 (資料) 経済産業省「鉱工業指数」、「第 3 次産業活動指数」、「鉱工業総供給表」、「特定サービス産業動態統計調査」、財務省「法人企業統計」、日本銀行「全国企業 短期経済観測調査」、内閣府「景気ウォッチャー調査」、「機械受注統計調査報告」、国土交通省「建築着工統計調査報告」、内閣府「法人企業景気予測調査」 95 97 99 101 103 105 107 90 95 100 105 110 115 120 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7 19/1 鉱工業生産 鉱工業生産 第3次産業活動指数(右目盛) (年/月) (2015年=100) (2010年=100) (年/月) (2015年=100) 予測指数 補正値 生産計画 ▲ 70 ▲ 60 ▲ 50 ▲ 40 ▲ 30 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 06 08 10 12 14 16 18 (DI、%Pt) (年) 先行き 全規模・製造業 全規模・非製造業 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 90 95 100 105 110 115 120 125 130 135 140 15/01 15/07 16/01 16/07 17/01 17/07 18/01 18/07 資本財総供給 実質機械受注・民需(船舶・電力除く) 建設財総供給(右目盛) (2010=100) (年/月) (2010=100) ▲ 4 ▲ 2 0 2 4 6 8 10 12 14 3月調査 6月調査 9月調査 12月調査 見込 実績 2015年度 2016年度 2017年度(旧ベース) 2017年度(新ベース) 2018年度 (前年比、%) FY2013 FY2014 2018Q2 2018Q3 2018Q4 2018/08 2018/09 2018/10 2018/11 2018/12 生産・サービス鉱工業生産指数 前期比、% 3.4 ▲ 0.6 1.2 ▲ 1.3 2.2 0.3 ▲ 0.4 2.9 ▲ 1.0 n.a. 活動 鉱工業出荷指数 前期比、% 4.5 ▲ 1.7 2.1 ▲ 1.9 2.0 1.8 ▲ 2.0 3.5 ▲ 1.2 n.a. 鉱工業在庫指数 前期比、% ▲ 4.1 5.2 0.8 ▲ 0.7 ▲ 0.5 ▲ 0.2 1.2 ▲ 1.3 0.1 n.a. 出荷・在庫バランス %Pt 8.6 ▲ 6.9 ▲ 0.8 ▲ 4.0 n.a. ▲ 2.2 ▲ 6.4 6.4 0.3 n.a. 製造工業設備稼働率指数 前期比、% 6.6 0.7 1.2 ▲ 1.7 4.3 2.4 ▲ 1.5 4.0 1.0 n.a. 第3次産業活動指数 前期比、% 1.2 ▲ 1.1 0.7 ▲ 0.5 1.3 0.4 ▲ 1.3 2.2 ▲ 0.3 n.a. 収益 経常利益 前年比、% 23.6 5.9 17.9 2.2 n.a. - - - - -前期比、% - - 16.9 ▲ 14.3 n.a. - - - - -製造業 前年比、% 36.0 6.3 27.5 ▲ 1.6 n.a. - - - - -非製造業 前年比、% 17.5 5.6 12.4 4.6 n.a. - - - - -マインド 大企業業況判断DI %Pt - - 22 21 21 - - - - -製造業 %Pt - - 21 19 19 - - - - -非製造業 %Pt - - 24 22 24 - - - - -景気ウォッチャー調査DI %Pt - - - 48.7 48.6 49.5 51.0 48.0 設備投資 名目設備投資(ソフトウェア除く) 前期比、% 4.0 5.2 6.1 ▲ 4.0 n.a. - - - - -製造業 前期比、% ▲ 2.0 7.0 10.3 ▲ 5.3 n.a. - - - - -非製造業 前期比、% 7.4 4.3 3.8 ▲ 3.3 n.a. - - - - -資本財出荷(除く輸送機械) 前期比、% 6.0 3.3 0.7 ▲ 1.5 3.1 3.6 ▲ 2.0 5.4 ▲ 3.9 n.a. 資本財総供給(除く輸送機械) 前期比、% 0.8 9.8 ▲ 1.9 1.2 4.8 3.8 ▲ 0.1 4.7 ▲ 2.1 n.a. 機械受注(船舶・電力除く民需) 前期比、% 11.5 0.8 2.2 0.9 ▲ 4.2 6.8 ▲ 18.3 7.6 ▲ 0.0 n.a. 建築物着工床面積(非居住用) 前期比、% 8.5 ▲ 6.8 ▲ 5.9 3.9 2.1 ▲ 14.4 9.9 3.9 ▲ 5.0 n.a. ソフトウェア受注額 前年比、% 1.9 3.6 0.9 1.2 n.a. ▲ 0.5 2.1 4.6 4.8 n.a.

(8)

4.家計部門

雇用者所得 (※)賃金の対前年変化率は、統 計改定による影響を取り除いたみ ずほ総合研究所試算値 雇用者所得は緩やかに回復している。11 月の実質雇用者所得(実勢値、※) は、前年比+2.3%と前月(同+1.1%)から伸びが加速した(図表 1)。要因 分解すると、物価上昇による実質所得の押し下げ幅が縮小したほか、名目賃 金の伸びが加速した。名目賃金の内訳では、給与全体の 7 割強を占める所定 内給与が前年比+0.9%と増加し、緩やかな増加傾向を維持した。賃金の基調 は底堅いと言えよう。11 月の就業者数は前月差+25 万人と増加した。完全失 業者(同+5 万人)も増加したため完全失業率は 2.5%と上昇したものの、労 働市場への参入増加が背景にあり、労働市場は引き続き良好である。 先行きについては、実質雇用者所得は緩やかに回復するだろう。新規求人 数は前月比▲0.6%と 2 カ月連続で減少したものの、広告媒体による求人の動 向を含めた求人数でみると高い伸びが続いており、企業の強い求人意欲が確 認できることから、雇用者数は増加傾向を維持しよう(図表 2)。加えて、原 油価格の下落による物価の伸び鈍化や名目賃金の増加によって、実質賃金が 持ち直しに向かうこともプラスに働くだろう。 消費者マインド 消費者マインドは弱含んでいる。12 月の消費者態度指数は、前月差▲0.2Pt と低下した。内訳をみると、「耐久財の買い時判断」が上昇した。一方、米中 貿易摩擦などを背景に国内経済の先行きが不安視されたことから、「雇用環境」 が低下して全体を押し下げた(図表 3)。 先行きは、エネルギー価格の上昇ペースが減速することを受けて実質賃金 に対する下押し圧力が緩和するものの、内外経済の不透明感がマイナス要因 となり、消費者マインドは力強さを欠くだろう。 個人消費 個人消費は緩やかに回復している。11 月の実質消費活動指数(旅行収支調整 済)は、前月比▲0.6%と低下した。内訳をみると、耐久財、非耐久財、サー ビスのいずれも低下した。とりわけ、非耐久財では、暖冬を背景に衣料品な どが押し下げた。もっとも、消費活動指数の 10・11 月を 7~9 月期対比でみ ると、+0.7%と緩やかな上昇基調が継続している。足元(12 月)は、新車販 売台数が 3 カ月ぶりに減少した。他方で、大手百貨店は衣料品の不調を受け て 5 社中 3 社で前年対比増収、2 社で減収とまちまちな結果となった。 先行きは、内外経済の不透明感を背景にマインドが力強さを欠くものの、 物価上昇ペースの鈍化や名目賃金の増加を受けて実質雇用者所得が回復する ことから、個人消費は緩やかに回復していくと予想する。 住宅着工 住宅着工には持ち直しの兆しがみられる。11 月の着工戸数は、前月比+0.8% の年率 95.7 万戸と 2 カ月連続で増加した。内訳をみると、持家が減少した一方、 貸家と分譲住宅が増加した(図表 4)。特に分譲住宅はマンション着工が増加に寄 与しており、増税前の駆け込み需要が徐々に現れはじめた可能性がある。 今後、2019 年前半にかけて駆け込み着工が本格化するとみられ、新設住宅 着工は回復する見込みだ。ただし、需要の平準化を狙った住宅ローン減税の 延長効果などから、駆け込みの規模が小さくなる可能性もあろう。

(9)

8 みずほ日本経済情報(2019 年 1 月号) 図表 1 実質雇用者所得の内訳 図表 2 求人数と雇用者数 (注)実質雇用者所得、名目賃金はみずほ総合研究所が試算した実勢値。 (資料)総務省「労働力調査」、厚生労働省「毎月勤労統計」より、みずほ総合 研究所作成 (注)1. 求人数は、求人広告掲載件数と有効求人数の和。 2. 求人広告掲載件数はみずほ総合研究所による接続系列。 (資料)全国求人情報協会、厚生労働省、総務省よりみずほ総合研究所作成 図表 3 消費者態度指数と政策不確実性指数 図表 4 新設住宅着工戸数 (注)1. 雇用環境、消費者態度指数は季節調整値。 2. 政策不確実性指数は逆目盛。 (資料)内閣府、Arbatli, et al.(2017)より、みずほ総合研究所作成 (注)季節調整値。 (資料)国土交通省「建築着工統計」より、みずほ総合研究所作成 図表 5 家計部門の主要統計 (注) 1. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 2. 賃金・雇用者所得の実勢値はみずほ総合研究所による試算値。新車販売台数はみずほ総合研究所による季節調整値。 3. 四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。 (資料) 総務省「労働力調査」「家計調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」「毎月勤労統計」、内閣府「消費動向調査」「消費総合指数」、日本銀行「消費活動指 数」、国土交通省「建築着工統計」、日本自動車販売協会連合会等 ▲2 ▲1 0 1 2 3 4 5 17/11 18/2 18/5 18/8 18/11 物価要因 雇用者数 名目賃金 実質雇用者所得 (前年比、%) (年/月) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 0 2 4 6 8 10 12 14 16 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7 求人数 雇用者数(右目盛) (年/月) (前年比、%) (前年比、%) 30 80 130 180 230 35 37 39 41 43 45 47 49 51 14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7 消費者態度指数 うち雇用環境 政策不確実性指数(右目盛) (ポイント) (年/月) (Pt) 80 85 90 95 100 105 110 13 14 15 16 17 18 合計 (年率、万戸) (年) 20 25 30 35 40 45 50 13 14 15 16 17 18 持家 貸家 分譲住宅 (年率、万戸) (年) FY2016 FY2017 2018Q2 2018Q3 2018Q4 2018/08 2018/09 2018/10 2018/11 2018/12 雇用・所得 完全失業率 % 3.0 2.7 2.4 2.4 2.5 2.4 2.3 2.4 2.5 n.a. 就業者数 前期差、万人 65 88 21 ▲ 12 46 26 3 23 25 n.a. 有効求人倍率 倍 1.40 1.55 1.60 1.63 1.63 1.63 1.64 1.62 1.63 n.a. 新規求人数 前期比、% 5.3 4.8 2.1 ▲ 1.0 0.6 ▲ 0.0 1.7 ▲ 0.2 ▲ 0.6 n.a. 名目賃金(公表値) 前年比、% 0.4 0.7 2.2 1.1 n.a. 0.8 0.8 1.5 2.0 n.a. 実質賃金(公表値) 前年比、% 0.5 ▲ 0.2 1.4 ▲ 0.2 n.a. ▲ 0.7 ▲ 0.6 ▲ 0.1 1.1 n.a. 名目雇用者所得(公表値) 前年比、% 1.9 2.1 4.3 3.0 n.a. 2.8 2.5 3.6 4.1 n.a. 実質雇用者所得(公表値) 前年比、% 1.9 1.2 3.5 1.7 n.a. 1.2 1.1 1.9 3.2 n.a. 名目賃金(実勢値) 前年比、% 0.5 0.5 1.0 0.2 n.a. 0.1 ▲ 0.0 0.7 1.1 n.a. 実質賃金(実勢値) 前年比、% 0.5 ▲ 0.4 0.2 ▲ 1.0 n.a. ▲ 1.4 ▲ 1.4 ▲ 0.9 0.3 n.a. 名目雇用者所得(実勢値) 前年比、% 1.9 1.9 3.1 2.1 n.a. 2.1 1.7 2.7 3.2 n.a. 実質雇用者所得(実勢値) 前年比、% 1.9 1.0 2.3 0.8 n.a. 0.5 0.3 1.1 2.3 n.a. マインド 消費者態度指数 ポイント 42.2 44.0 43.7 43.4 42.9 43.3 43.4 43.0 42.9 42.7 個人消費 消費活動指数(実質・旅行収支調整済) 前期比、% 0.1 0.7 0.6 0.3 0.7 0.4 ▲ 0.5 1.2 ▲ 0.6 n.a. 消費総合指数(実質) 前期比、% ▲ 0.2 1.1 0.7 ▲ 0.2 0.3 0.0 ▲ 0.1 0.3 n.a. n.a. 実質消費支出(二人以上の世帯) 前期比、% ▲ 1.3 0.5 ▲ 1.4 1.5 0.3 3.5 ▲ 4.5 1.8 1.1 n.a. 新車販売台数(乗用車) 年率、万台 424.3 435.0 448.2 441.3 448.0 453.3 426.8 466.1 457.4 420.7 住宅着工 合計 年率、万戸 97.4 94.6 96.8 95.3 95.3 95.7 94.3 95.0 95.7 n.a. 持家 年率、万戸 29.2 28.2 28.5 28.0 29.0 27.6 28.0 29.3 28.6 n.a. 貸家 年率、万戸 42.7 41.0 41.0 40.9 38.7 41.8 39.9 38.1 39.3 n.a. 分譲住宅 年率、万戸 24.9 24.8 26.3 25.9 27.1 25.7 25.9 26.5 27.7 n.a.

(10)

5.政府部門・物価

公的需要 公的需要は減少している。10 月の公共工事出来高は、前月比▲1.3%と 9 カ月連続で減少している(図表 1)。先行指標である 12 月の公共工事請負金額 は、前月比+5.2%と 2 カ月ぶりに増加しており、10~12 月期でみても前期比 +6.4%と増加している。先行きの公共投資は、2018 年度第 1 次度補正予算に よる災害復興事業の進捗等で増加する見通しだ。政府消費も社会保障給付の 拡大で増加傾向が続き、公的需要全体では緩やかに持ち直すとみている。 経済政策 12月21日、政府は2019年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は101.5 兆円(2018 年度当初予算比+3.7 兆円)と、当初予算ベースとしては初めて の 100 兆円超えとなった(図表 2)。消費増税対策や社会保障の充実に係る施 策を盛り込んだことで、一般歳出は+3.1 兆円増加した一方、消費税率引上げ 等を背景に過去最高水準となる税収の見通しを受けて、国債発行額は 9 年連 続で減少した。主要経費についてみると、社会保障関係費については、幼児 教育無償化などを除けば高齢化による自然増の範囲内の伸び(0.5 兆円程度) に抑制されており、一定の歳出抑制努力がみられる。また、消費増税対策に 係る「臨時・特別の措置」については、補正予算ではなく当初予算で計上さ れた。補正予算が歳出増加の抜け道として利用される「補正回し」がこれま で継続していた点を踏まえれば、財政ガバナンスの観点からは望ましいと言 える。もっとも、消費増税対策の名目で公共事業関係費など歳出が大きく拡 大し、増税の財政再建効果が減少してしまった点に変わりはなく、財政健全 化計画の達成に向けて、更なる歳出抑制努力の継続が重要だ。 国内企業物価 国内企業物価は前年比プラス幅が縮小している。12 月の企業物価指数は前 年比+1.5%と 2 カ月連続で伸びが鈍化した。電力・都市ガス・水道の伸びは 拡大したものの、原油価格の下落を受けて石油・石炭製品や化学製品が押し 下げに寄与した格好だ(図表 3)。今後、原油価格の伸びが鈍化するとみられ ることから、国内企業物価指数の前年比プラス幅は縮小すると予想する。 消費者物価 消費者物価は前年比プラス幅が縮小している。11 月の全国コアCPI(生 鮮食品を除く)は前年比+0.9%、12 月は+0.7%と、2 カ月連続で伸びが鈍化し た。電気代の上昇が続いているものの、原油価格の下落を受けたガソリン価格 の伸びが鈍化したことに加え、11 月は外国パック旅行費の伸び鈍化、12 月は 生鮮食品を除く食料などが押し下げに寄与した形だ(図表 4)。先行きは、原 油価格下落を受けてエネルギー価格の伸びが鈍化するとみられるため、全国 コアCPIのプラス幅は緩やかな縮小傾向で推移するだろう。 金融政策 日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に即して、現状程度の金 利水準を維持すべく金融緩和を進めている。12 月 19~20 日に開催された金融 政策決定会合では、現状の政策を維持することが決定された。また、同会合 における主な意見をみても「息長く経済の好循環を支えて、『物価安定の目標』 の実現に資するべく、現在の金融政策方針を継続すべきである」といった発 言があった。日銀は現行の政策を維持する見通しだ。

(11)

10 みずほ日本経済情報(2019 年 1 月号) 図表 1 公共工事出来高・請負金額 図表 2 2019 年度当初予算案の概要 (注) みずほ総合研究所による季節調整値。 (資料) 国土交通省「建設総合統計」、保証事業会社 3 社「公共工事前払金保証統計」 より、みずほ総合研究所作成 (資料)財務省資料より、みずほ総合研究所作成 図表 3 企業物価指数 図表 4 消費者物価指数 (注)エネルギーは石油・石炭製品と電力・都市ガス・水道の合計。 (資料)日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所作成 (資料)総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成 図表 5 政府部門・物価の主要統計 (注) 1. 四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。 2. 公共工事出来高、公共工事請負金額はみずほ総合研究所による季節調整値。 3. 公共工事出来高は 2017 年 4 月より新推計値に変更された。既公表系列と新公表系列を接続させるため、新推計値に基づく 2016 年度の参考数値と、既公表 値の比率により 2017 年 4 月以降の系列の水準を調整している。 4. 税収は、5 月まで旧会計年度基準、6 月から新会計年度基準に基づく計数。 5. 物価指数は実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。 (資料) 国土交通省「建設総合統計」、保証事業会社「公共工事前払金保証統計」、財務省「租税及び印紙収入、収入額調」、日本銀行「企業物価指数」 「日本銀行国際商品指数」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 2 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7 18/1 18/7 公共工事出来高 公共工事請負金額(右目盛) (兆円) (年/月) (兆円) 10月 税収  62.5兆円 (同+3.4兆円) 税外収入    6.3兆円 (同+1.4兆円) 公債金   32.7兆円 (同▲1.0兆円) 国債費 23.5兆円 (同+0.2兆円) 一般歳出  62.0兆円 (同+3.1兆円) 社会保障費    34.1兆円 (同+1.1兆円) 公共事業関係費  6.9兆円 (同+0.9兆円) 地方交付税交付金 16.0兆円 (同+0.5兆円) 歳出   一般会計総額  101.5兆円   (前年差+3.7兆円) 歳入 ▲ 6 ▲ 5 ▲ 4 ▲ 3 ▲ 2 ▲ 1 0 1 2 3 4 16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10 18/1 18/4 18/7 18/10 (前年比、%) その他 農林水産物 化学製品 非鉄金属 鉄鋼 飲食料品 エネルギー 国内企業物価 (年/月) ▲ 1.5 ▲ 1.0 ▲ 0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 2016 2017 2018 その他 携帯電話機 通信料(携帯電話) 外国パック旅行費 生鮮除く食料 エネルギー コアCPI (月) (年) (前年比、%) FY2016 FY2017 2018Q2 2018Q3 2018Q4 2018/08 2018/09 2018/10 2018/11 2018/12 公的需要 公共工事出来高 前期比、% ▲ 4.5 3.8 ▲ 0.7 ▲ 2.6 ▲ 1.8 ▲ 1.5 ▲ 0.1 ▲ 1.3 n.a. n.a. 公共工事請負金額 前期比、% 4.1 ▲ 4.3 11.4 ▲ 8.8 6.4 ▲ 5.8 9.8 3.8 ▲ 5.0 5.2 税収 一般会計租税・印紙収入 兆円 - - - 4.4 3.4 3.8 8.0 n.a. 会計年度累計、兆円 55.5 58.8 - - - 14.2 17.5 21.3 29.4 n.a. 同・前年比、% ▲ 1.5 6.0 - - - 4.0 4.1 4.2 4.7 n.a. 対外交易環境 対外交易条件 前年比、% 3.9 ▲ 4.5 ▲ 4.6 ▲ 8.2 ▲ 6.9 ▲ 8.5 ▲ 7.9 ▲ 8.1 ▲ 8.2 ▲ 4.4 輸出物価 前年比、% ▲ 6.9 4.7 2.6 2.5 0.1 2.8 2.1 0.9 0.6 ▲ 1.2 輸入物価 前年比、% ▲ 10.6 9.6 7.5 11.6 7.5 12.3 10.9 9.9 9.5 3.3 国内企業物価 総平均 前年比、% ▲ 2.4 2.7 2.4 3.0 2.3 3.0 3.0 3.0 2.3 1.5 企業向け 総平均 前年比、% 0.4 0.7 1.0 1.2 n.a. 1.3 1.1 1.3 1.2 n.a. サービス価格 (消費増税の影響を除く) 前年比、% 0.4 0.7 1.0 1.2 n.a. 1.2 1.1 1.2 1.3 n.a. 国際運輸を除く 前年比、% 0.5 0.7 1.0 1.1 n.a. 1.1 1.0 1.2 1.2 n.a. 消費者物価 総合 前年比、% ▲ 0.1 0.7 0.7 1.1 0.8 1.3 1.2 1.4 0.8 0.3 生鮮食品を除く 前年比、% ▲ 0.2 0.7 0.7 0.9 0.9 0.9 1.0 1.0 0.9 0.7 生鮮食品及びエネルギーを除く 前年比、% 0.3 0.2 0.3 0.4 0.3 0.4 0.4 0.4 0.3 0.3 酒類を除く食料・エネルギーを除く 前年比、% 0.2 0.0 0.1 0.1 0.1 0.2 0.1 0.2 0.1 0.1 都区部・総合 前年比、% ▲ 0.2 0.5 0.5 1.1 0.9 1.2 1.2 1.5 0.8 0.3 都区部・生鮮食品を除く 前年比、% ▲ 0.4 0.4 0.6 0.9 1.0 0.9 1.0 1.0 1.0 0.9

(12)

2 01 9年 1月 21 日 発 行 [ 担 当 ]

総 括

宮 嶋 貴 之 03-3591-1434 tak ay uki.miyajima@mizu ho -ri.co.jp 外 需

服 部 直 樹 03-3591-1298 nao ki .hattori@mizuho-r i. co.jp 坂 本 明 日 香 03-3591-1435 asu ka .sakamoto@mizuho- ri .co.jp 企 業

酒 井 才 介 ※ 03-3591-1241 sai su ke.sakai@mizuho-r i. co.jp 矢 澤 広 崇 03-3591-1432 hir ot aka.yazawa@mizuho -r i.co.jp 家 計

大 野 晴 香 03-3591-1243 har uk a.ono@mizuho-ri.c o. jp

越 山 祐 資 03-3591-1416 yus uk e.koshiyama@mizuh o- ri.co.jp 政 府 ・ 物 価

平 良 友 祐 03-3591-1306 yus uk e.hirayoshi@mizuh o- ri.co.jp ※ は ト ピ ッ ク 執 筆 者 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではあり ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正 確性、確実性を保証するものではありません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされ ますようお願い申し上げます。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもありま す。なお、当社は本情報を無償でのみ提供しております。当社からの無償の情報提供をお望みになら ない場合には、配信停止を希望する旨をお知らせ願います。

参照

関連したドキュメント

内外 均衡 とマク ロ経済 政策... 内外 均衡 とマク

第三に,以上に得られた複数年次の 2 部門表を連結し,それと,少し長期の経済状態を

 富の生産という側面から人間の経済活動を考えると,農業,漁業ばかりでは

(1)経済特別区による法の継受戦略

日中の経済・貿易関係の今後については、日本人では今後も「増加する」との楽観的な見

欧州委員会は再生可能エネルギーの促進により 2030

(2011)

経済特区は、 2007 年 4 月に施行された新投資法で他の法律で規定するとされてお り、今後、経済特区法が制定される見通しとなっている。ただし、政府は経済特区の