• 検索結果がありません。

誌名 園芸学研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "誌名 園芸学研究"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

リンゴ新品種‘HFF60’の育成過程とその特性

誌名

誌名 園芸学研究

ISSN

ISSN 13472658

著者 著者

林田, 大志 佐藤, 早希 藤田, 知道 五十嵐, 恵 初山, 慶道 塩崎, 雄之輔 松本, 和浩 巻/号

巻/号 19巻2号

掲載ページ

掲載ページ p. 197-204 発行年月

発行年月 2020年4月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

(2)

423 

訂 正

第19巻第2号p.197-204 新品種「リンゴ新品種 ‘HFF60' の育成過程とその特性」(林田大志•佐藤早希•藤田知 道・五十嵐 恵•初山慶道・塩崎雄之輔•松本和浩)におきまして,誤りがありましたので下記のとおり訂正いた

します.

園 芸 学 研 究 第19巻 第2号p.202 表7タイトル

(誤) 1‑MCP処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及ぼす影響 (2017年)

(正) AVG処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及ぼす影響 (2017年)

弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育研究センター藤崎農場 林田大志

なお, J‑STAGEにて掲載中のオンラインジャーナルでは修正済です.

(3)

園学研.(Hort.Res. (Japan))  19 (2) : 197204. 2020. 

doi: 10.2503/hrj.19.197 

リンゴ新品種 HFF60' の育成過程とその特性

林田大志1*•佐藤早希 1 •藤田知道 1 •五十嵐 恵2.

初山慶道 2,3 .塩崎雄之輔 la• 松本和浩 l,4* *

1弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育研究センター藤崎農場 038‑3802  青森県南津軽郡藤崎町藤崎字下袋

2青森県産業技術センター弘前工業研究所 036‑8104  青森県弘前市扇町

3青森県産業技術センターりんご研究所 036‑0332  青森県黒石市牡丹平 4静岡大学農学部 422‑8529  静岡市駿河区大谷

Breeding a New Apple Cultivar,'HFF60': Its Breeding Process and Characteristics  Taishi Hayashida1*, Saki Sato1, Tomomichi Fujita1, Megumi Igarashi2, Yoshimichi Hatsuyama2・3, 

Yunosuke Shiozaki1a and Kazuhiro Matsumoto1.4** 

1Fujisaki Farm, Teaching and Research Center for Bio‑coexistence, Faculty of Agriculture and Life Science, Hirosaki University,  Fujisaki, Minamitsugaru, Aomori 038‑3802 

Hirosaki Industrial Research Institute, Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center,  Ohgimachi, Hirosaki, Aomori 036‑8104 

Apple Research Institute, Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center, Botandaira, Kuroishi, Aomori 036‑0332  4Faculty of Agriculture, Shizuoka University, Ohya, Suruga, Shizuoka 422‑8529 

Abstract 

The yellow‑skin and red‑fleshed apple cultivar'HFF60'was bred on Fujisaki Experimental Farm ofHirosaki University. The  potential parents of the cultivar elucidated by SSR markers are'Toko'and "red‑fleshed apple strain Parent A", respectively. The  shoot growth of'HFF60'is vigorous like'Ohrin'; suitable training and pruning techniques were necessary to maintain a suffi‑ cient number of flower buds. In the Aomori region, the harvest season of this cultivar was from late September to early October.  The cylindrical fruit usually had a fresh weight of350 g with 12.4% soluble solids and around 0.5% titratable acidity at harvest.  The flesh firmness readily decreased during the cold storage period and 1‑MCP treatment could not prevent it.  Pre‑harvest AVG  treatment was effective for maintaining the flesh firmness but it  cannot be practically applied because of inhibiting flesh color‑ ation. Thus,'HFF60'was not suitable for long storage, but it  has the attractive advantage that both growers and consumers can  easily evaluate the flesh coloration non‑destructively through the yellowish permeable skin. In order to promote this cultivar, we  could emphasize not only the color contrast between skin and flesh for fresh consumption, but also highlight the utility for pro‑ cessing consumption. 

Key Words : AVG, cultivation, red‑fleshed apple, SSR marker, storability  キーワード:赤肉リンゴ, AVG,貯蔵性,栽培, SSRマーカー

1.品種開発の背景

近年,世界的な規模で赤い果肉のリンゴの育種・研究 が盛んになり (Faramarziら, 2015),我が国でも農研機構 が ルビースイート', ローズパール'(阿部ら, 2017, 2018)を,信州大学が ハニールージュ', レッドセンセー

ション'(伴野・高橋, 2016;高橋ら, 2015)を ま た , 民 間育成者が いろどり', なかの真紅'(吉家, 2018)を登 録している.果肉が着色するリンゴ系統は果芯の着色の有 無で大きく 2系統に分かれ,果心が着色するタイプ1は果

20198月5日受付. 201910月18日 受 理

* Corresponding author. E‑mail: hayashida@hirosaki‑u.ac.jp 

** Corresponding author. E‑mail: [email protected] 

a現在:弘前大学農学生命科学部

197 

心,果肉,果皮のすべてが幼果期より箸色し,枝葉も着色 するが,果心の着色しないタイプ 2は果肉が幼果期には 着色しておらず,成熟期になって初めて果肉が着色し,枝 葉は着色しない.両タイプの果肉着色を制御する遺伝子も 異なることが明らかになっており,タイプ1は連鎖群9の MdMYBJO (R6 : MdMYBI 0)に よ っ て (Espleyら, 2009), タイフ゜2は 連 鎖 群17のMdMYBIIOaに よ っ て 制 御 さ れ て いる (Chagneら, 2013;Umemuraら, 2013).タイプ1の着 色を制御するMdMYBIO(R6: MdMYBJO)は 果 皮 果 肉 と もに働くため,タイプ1の赤肉リンゴは基本的にすべて果 皮も赤色に着色する.一方,タイプ 2は,果皮および果 肉 の 着 色 が , そ れ ぞ れ 異 な る 遺 伝 子 で あ るMdMYBJO (MdMYBJ0/1/A)およびMdMYBIIOaによって制御されてい るため (Umemuraら, 2013),果肉が着色するからといっ

(4)

198  林田大志•佐藤早希•藤田知道・五十嵐 恵•初山慶道・塩崎雄之輔•松本和浩

て,必ずしも果皮も赤色に着色するわけではないつま り,タイプ2であれば,果皮が黄色で果肉が赤い品種が作 出できる可能性がある.

弘前大学は1981年に開始したリンゴ新品種育成プロ ジェクトにより,赤肉系統の選抜を進めてきた. 2010年 に品種登録した 紅の夢 は,強い酸味を有するが,渋み がないことから生食が可能で,酸味を生かした加工用リ

ンゴとしての需要も広がっている(五十嵐ら, 2011). し かし,生食用リンゴとして,甘みの強い品種が好まれる近 年の状況を考えると, 紅の夢 に比べ酸味を大幅に抑え た系統の作出も急務であった.そこで我々は, 紅の夢' に比べ酸味を大幅に抑え,かつ,収穫期が 紅の夢 と重 複しない10月上旬であり,果皮が黄色の新たな赤肉系統

'HFF60'を2016年に品種登録した.

果皮が黄色の HFF60'は,成熟すると果肉の赤色が果 皮を通過してピンク色に見えることから,見た目の珍し さ,美しさから消費を促すことが期待される.また,果皮 が黄色であれば,果皮が赤い赤肉リンゴでは不可能であっ た果肉の着色程度を外観から判断することも可能であり,

生産の面からも品質を安定させられる可能性が高い.一 方で,早生品種の貯蔵性はエチレン生成量が多いことから 一般に低く(堀込ら, 2010;壽松木ら, 1997),エチレンを 制御して貯蔵性を向上させることが課題となっている. し かし,エチレンが果肉着色に及ぼす影響はほとんど明らか になっておらず,着色を維持または向上させつつ,貯蔵性 を向上させる技術の開発も必要である.

本研究では新品種 HFF60'について,まず,登録時に は不明であった交雑親を遺伝子診断により明らかにした.

次に,樹体および果実の基本的な特性について他品種との 比較を行った.さらに,果肉着色を維持しつつ貯蔵性を向 上させる基本的な情報を得るために,エチレン作用阻害剤 である1‑methylcylopropene(1‑MCP)と1‑aminocyclopropane‑ 1‑carboxylic acid (ACC)合 成 酵 素 の 活 性 阻 害 剤 で あ る aminoethoxyvinylglycine (AVG)処理の影響について報告 する.

2.品種開発の概要 1)材料および方法 (1)'HFF60'の育成過程

弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育研究センター 藤崎農場(藤崎農場)において, 1985年, 1989年 お よ び 1994年にそれぞれ主要品種同士の交雑を行い,得られた 種子を播種し,生育した実生を新品種候補として育成し た.詳細な育成経過については当時の野帳が失われている ため不明であるが, 1997 2003年にかけて行った果実重 および食味を重視した選抜群の中で,一部に果肉が淡紅色 に着色する系統が存在したことから,当該の形質を有する 系統を選抜した.その後マルバカイドウに接木を行って,

複製樹を作成し,原木と同様の果実特性を持つことを確認 した1系統を, 2013年1月に品種登録を申請した.その結

果, 2016年3月25日に農林水産省より HFF60'として品 種登録が認められた(登録番号第25146号).

(2)'HFF60'の交雑親品種の確酪

2010年3月に藤崎農場に植栽されている HFF60'の原 木より採取した休眠枝を水挿しして,発芽した新葉0.1g  から改変CTAB法 (Bousquetら, 1990;Wagnerら, 1987)に より全ゲノムDNAを抽出し, 0.4mlのTEバッファーに溶 解 し た 後 さ ら に10倍希釈したものをPCRの鋳型DNAと

した.

阿部ら (2007)が報告したリンゴ識別最少マーカーセッ トを中心として, 19種 類 のSSRマ ー カ ー (Guilfordら, 1997; Liebhardら, 2002;Silfverberg‑Dilworthら, 2006)につ いて既報に従いPCRを 行 っ た . そ の 後 阿 部 ら (2005) が改良したポストラベリング法 (Kukitaら, 2002)により 増幅産物を標識し, GeneticAnalyzer  (ABI 3100, Applied  Biosystems, USA)および解析 ノフト (Genotyper3.6, Applied  Biosystems, USA)を用いて解析を行った. プライマーは,

公表されている配列に標識用塩基を付加して用いた.解析 は, HFF60'と相互識別可能な最少SSRマーカーセットを 特定した279品種(阿部ら, 2007)および弘前大学藤崎農 場の 赤肉親候補A"(五十嵐ら, 2011), 弘大1号', 紅の 夢', 弘大みさき', ピンクパール', アラスカ のデータ と比較した. SSRマーカー解析には,サイズ比較対照とし て, プリマ', 紅玉', ゴールデンデリジャス 他,数種 を加えて実施した.

'HFF60'のリンゴの自家不和合性遺伝子型については,

既 報 (Broothaerts,2003; Broothaertsら, 1995;Janssensら, 1995; Sakuraiら, 1997;Verdoodtら, 1998)の各対立遺伝子 特異的フ゜ライマー (S1, S2,  S3,  S4,  S5,  S7,  S9,  S10,  S20,  S23,  S24,  S2s,  S26およびS28)を用いてPCRを行い,増幅・検出 されるバンドにより決定した.

リンゴのACC合 成 酵 素 遺 伝 子MdACSIお よ び 果 皮 色 制御遺伝子Rfについては,それぞれSunakoら(1999)お よびChengら (1996)報告のプライマーを用いた改変法

(五十嵐ら, 2016)により増幅し, 2%低電気浸透度 (LE) アガロースを用いた電気泳動により分離後, EtBr染色で 確認される増幅産物のサイズに基づいて,各遺伝子型を判 別した.

細胞質型については,葉緑体遣伝子rpl16のCAPSマー カー(五十嵐ら, 2008)を用いて判別した.

2)結果および考察

(1)'HFF60'の交雑親品種の確認

リンゴ279品種・系統を互いに識別できる最少SSRマー カーセット(阿部ら, 2007)を用いて HFF60'の品種識別 を試みたところ,本マーカーにより HFF60'は他の品 種・系統と識別することが可能であった. HFF60'は主要 品種問の交雑で作出されたと考えられていたが,交配当時 の野帳が失われているだけでなく,果肉が白い主要品種同 士の交配から通常,赤肉品種は誕生しないことから,品種

(5)

園学研.(Hort.Res. (Japan))  19 (2):  197204. 2020.  199  第1表 SSRマーカーによる HFF60'親候補の遺伝子型解析

品種名 NZ23g6)0Y4 2  CH01fil7a  CHOlh02  CH02c06  CH02c09  CH02cll  CH02d08  (LG  (LGlO)  (LG9)  (LG2)  (LG15)  (LGll)  (LGll)  HFF60  86/90  174/192  242/248  242/250  245/247  219/227  232/258  赤肉親候補A 86  174/192  234/242  242/258  245/247  227/229  214/258  東光 86/90  174  234/248  238/250  245/245  219/229  228/232  陸奥 86/90/112  174/192  234/246/248  234/238/250  245/245/259  207 /219/233  226/228/232 

品種名 CH02d10a  CH02dll  CH02g8)09   CH03dl2‑FR  CH04e03  CH04fl0  C(HL0G4 11g0) 7  (LGI6)  (LG15)  (LG  (LG6)  (LG5)  (LG16) 

HFF60  220/228  124/152  118/122  121  202/225  240/248  158/182  赤肉親候補A 219/228  124  110/118  121  200/202  240  158/174  東光 219/220  122/152  122/168  121/121  202/226 (225)  191/248  182/215  陸奥 219/219/220  122/136/152  122/140/168  113/121/121  202/202/226 (225)  191/191/248  I 82/184/215 

品種名 CH05c06  CH05d03  CH05d04  CH05e03  CH05g03  (LG16)  (LG17)  (LG12)  (LG2)  (LG17)  HFF60  118/126  163/172  194/220  165/166  136/162  赤肉親候補A 104/126  172/179  194/198  165  136 

東光 118/118  163/171  192/220  166/182  162/166  陸奥 104/ 118/122  163/169/171  I 90/192/220  166/182/188  136/162/166 

SSRマーカー名

y括弧内は連鎖群を示す

各遣伝子型は,ポストラベル後のPCR産物のサイズを相対値で示したものである

HFF60'の親候補として矛盾がない品種のみを示したものである(親候補として矛盾がなく, HFF60'と同じPCR産物を増幅 している)

登録時種子親および花粉親ともに不明とした.同じ選抜 系統群に属する赤肉品種 紅の夢 は,当初, 紅玉 に

スターキングデリシャス'を交配したと記録されていた が,後にDNAマーカーを用いた解析により 紅玉 に農 場内で保存されていた赤肉系統である 赤肉親候補A'が 交配して作出されたものであることが示唆された(五十嵐 ら, 2011). このように,本新品種育成フ゜ロジェクトにお いては,主要品種同士の交配を目指したものの,誤って,

別の個体の花粉が混入し,交配した可能性が強く示唆され ることから,交配当時,弘前大学藤崎農場に植栽されてい た主要品種および赤肉形質を示す系統を中心に HFF60' の交雑親品種の推定を行った.

まず,使用した19種類のすべてのSSRマーカーについ て HFF60'の親候補として矛盾がない品種を調査したと ころ, 東光 および 陸奥 と系統の 赤肉親候補A が 選抜された(第1表). これらの親候補間で組み合わせを 検討したところ,凍光 と 赤肉親候補A", 陸奥 と 赤 肉親候補A'でそれぞれ矛盾しないことがわかった. 3倍 体品種であること,主要品種同士を交配した本育成プロ

ジ ェ ク ト の 中 で 種 子 親 と し て 使 用 し た 実 績 が な い こ と から, 陸奥 を親候補から除外すると, 東光 と 赤肉親 候補A の組み合わせが HFF60'の交雑親品種と考えら れた.

葉緑体遣伝子rpl16のCAPSマーカーを用いた解析によ り

, HFF60'と親候補である 東光 および 赤肉親候補 A'はいずれも細胞質型がゴールデンデリシャス型と判別 され(データ省略), この調査から種子親と花粉親の判別 はできなかった. しかし,本育成過程で 赤肉親候補A"

を種子親として用いていないことから, HFF60'は 紅の 夢 と同様に,交配過程で 赤肉親候補A"の花粉が何ら かの原因で混入し,種子親に受精することで作出されたも のと考えられた.つまり, HFF60'は 凍 光'x 赤肉親候 補A"の交配組み合わせで作出されたものと考えられた.

(2)既知のリンゴSTSマーカーによる HFF60'の形質関 連遺伝子型の特定

交雑和合性に関連する自家不和合性遺伝子 (S‑RNase) 型を調査したところ, HFF60'はSふであった(第2表).

第2表 形質に関連するSTSマーカーの遺伝子型 品種名 S‑RNaseZ ACS‑1  Rf 

(LG17)Y  (LG15)  (LG9)  HFF60  S2S3  1/2  Aツal 赤肉親候補A S3S?  2/2  A/A  東光 S2S7  1/2  al/a2  陸奥 S2ふS20 1/2  al/a2 

STSマーカー名

y括弧内は連鎖群を示す

x'HFF60'のA型のバンドサイズは完全には一致しなかった

(6)

200  林田大志•佐藤早希•藤田知道·五十嵐 恵•初山慶道・塩崎雄之輔•松本和浩

ふじ や 王林 などの主要品種の中で同じ遺伝子型を 持つものはなく,唯一 ゴールデンデリシャス'のみが同 型の遺伝子を持っていたまた,三倍体品種でS2ふS,の遺 伝子型を持つ ジョナゴールド および 弘大みさき', Sふふ。の遺伝子型を持つ 陸奥'とも交雑和合性の関係で

はないため,注意が必要である. しかしながら,その他の 多くの主要品種とは交雑和合性であり,開花期も主要品種 に比べやや早いことから(第3表),受粉樹としても活用 が可能である.

次に,果実におけるエチレン生成量と関連し,貯蔵性や 収穫前落果の難易との関連が指摘されているMd‑ACSJ遣 伝子 (Satoら, 2004;Sunakoら, 1999)の型について調査し たところ, HFF60'はエチレン生成量が多い1型とエチ レン生成量が少ない2型のヘテロとして検出された(第2 表). これは,既報の こうこう', HFF63'など,貯蔵性 の良い品種と同様の遺伝子型であるが,後述するように 'HFF60'は貯蔵性が低く,収穫前落果も発生することか ら,落果防止剤の使用が必須である.

果皮色を制御するRf遺伝子 (Chengら, 1996)の型につ いて調査したところ, HFF60'は赤色の果皮色を示す優性 のA型および劣性のal型のヘテロに近いバンドパターン が確認されが(第2表), A型のバンドサイズが完全には 一致せず,正常な赤色型とは判定できなかった. これは 'HFF60'の果皮色が赤色でなく黄色であることに関連す ると考えられた.

3.品種の特性 1)材料および方法 (1)形質および特性

5年生マルバカイドウ台 HFF60'5樹を用い,農林水産 植物種類別審査基準 (2010)などに従って2011 2015年 に形質および特性を調査したまた,発芽日,開花日,満 開日の調査はりんご生産指導要項(青森県りんご生産指導 要項編集部会, 2014)に従って実施した.対照品種とし て, 王林 および こうこう'を用い,比較を行った.収 穫果実の品質調査は2013 2015年の3年間行った. 2013 年は,後述する 1‑MCP処 理 試 験 の 収 穫 時 ( 貯 蔵0日目)

のデータを使用した.測定項且測定法は既報のとおりと し

, l果重の目減り率,果肉硬度,可溶性固形物含量,摘 定酸度,果皮色の明度およびHueangleについては松本ら (2018)の方法で,果肉色の明度およびHueangleについて はMatsumotoら (2018a)の方法で行った.

なお, HFF60'は当初から収穫前落果が多発すること が明らかとなっていたことから,いずれの調査年において も収穫25日前に樹全体に1000倍希釈した落果防止剤(ス

トッポール, 日産化学(株))を噴霧処理した.

(2)  1‑MCP処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及 ぼす効果

調査は, 2013年10月1日に HFF60'の原木から収穫し た果実を用いて行った.栽培管理は通常の黄色品種の栽培

体系で行い,落果防止剤を上述の方法で散布した.すべて の収穫果から30果 実 を ラ ン ダ ム に 選 択 し , そ の う ち の 5果実について直ちに果実調査を行った.残った果実のう ち10果 実 に1‑MCP処理を行った. 1‑MCP処 理 は 松 本 ら (2018)の方法で行った.

1‑MCP処理終了後に果重を測定し, 1袋5果となるよう に厚さ 0.03mmのポリ袋に封入した. これを3°cの冷蔵庫 内で貯蔵し,貯蔵後15および30日に前述の方法で特性調 査を行った.

(3)異なる濃度のAVG散布処理が冷蔵貯蔵中の HFF60' の果実品質に及ぼす効果

実験は, 2017年に HFF60'の原木の果実を用いて行っ た. AVG散布以外の栽培管理は通常の黄色品種の栽培体 系で行い,落果防止剤を前述の方法で散布した. AVG散 布はハンドスプレーを用いて果実ごとに行った. 0.1%の 展着剤加用の150または300ppmAVG水溶液を,収穫4週 間前 (8月29日)および1週 間 前 (9月18日)の2回, 1 果実当たりそれぞれ2.5mL噴霧処理した.処理濃度は日 本植物調整剤研究協会の生育調整剤試験成績収録を参考 に決定した.各処理は樹冠上でランダムに選択した30果 に対して行った.対照区には同様の方法で水のみを散布し た. 2017年9月25日にすべての果実を収穫し,各区5果 について直ちに果実調査を行った.残った果実は区ごとに 1袋5果となるように厚さ 0.03mmのポリ袋に封入し,貯 蔵後15および30日の調査に用いるまで3°cの冷蔵庫内で 貯蔵し,前述の方法で果実調査を行った.

2)結果および考察

(1)'HFF60'の樹体および果実の特性

マルバカイドウ台 HFF60'の樹体および果実の特性を 第4表に示した. HFF60'は 王林 および こうこう' に似た直立型の樹姿を示すが,両者と比べても樹勢が強

く,徒長枝様の強い枝が多数みられ,花芽を確保するため の整枝・剪定が難しく,時間も要する.果実は 王林 と 似た縦長の円筒形を示し,果皮色は 王林 と似て青味を 含むが,果点は目立たない.果皮は薄く,成熟しても こ うこう'のように濃黄色を呈することがないことから,果 肉の着色が果皮を通して透けて見える.無袋栽培では果面 に 紅の夢 に発生するような斑点状の生理障害が発生す ることがあるが (Matsumotoら, 2018a), 紅の夢 と同様 に,光を通さない果実袋を使用して栽培することにより,

発生を防止することができる.果心は比較的大きいが着色 することはなく,果肉のみがピンク色に薄く着色する.

'HFF60'の発芽日,開花日,満開日は,生育の早い 王 林 と比べると 1日程度遅いものの,主要品種の ふじ'

と比べると 1日程度早く(第3表),交雑和合性も広いこ とから,マメコバチの放飼により,容易に結実する.

'HFF60'の収穫期は育成地である青森県津軽地方で,

早生ふじ'や トキ'と同時期に当たる 9月下旬〜10月 上 旬 で あ る ( 第5表).果重が320g前後, L/D比 は1.0

(7)

園学研.(Hort.Res. (Japan))  19 (2): 197204. 2020.  201  第3表 'HFF60', ふじ および 王林 の発芽日,開花日,満開日の年次変化

発芽日(月/日)

年 開花日(月/日) 満開日(月/日)

HFF60  ふじ 王林 HFF60  ふじ 王林 HFF60  ふじ 王林 2011  4/  9  4/10  4/  8  5/12  5/13  5/10  5/16  5/17  5/17  2012  4/17  4/18  4/16  5/  9  5/10  5/  8  5/12  5/13  5/13  2013  4/13  4/14  4/14  5/19  5/20  5/18  5/23  5/24  5/23  2014  4/ 4  4/  5  4/ 4  5/  5  5/  6  5/  3  5/10  5/11  5/  9  2015  3/29  3/30  3/29  4/29  4/30  4/27  5/  1  5/  2  5/  1  発芽日は調査樹において3頂芽以上の頂芽の頂部が破れ,青味を呈すものを認めた日,開花日は調査樹において 1 2花の開花を認めた日,満開日は調査樹において頂芽花の70 80%が開花した日を示す

第4表 HFF60', 王林 および こうこう の形質および 特性 (2010  2015年の観察を総合評価)

形質名 HFF60  王林 こうこう

樹勢 強 中 中

樹の型 分枝型 分枝型 分枝型

樹姿 直立 直立 直立

果実の長さ 長 長 中

果実の形 円筒形 円箇形 扁

果皮を覆う色の面積 無または極小無または極小無または極小

果皮を覆う色 橙赤 橙赤 橙赤

果肉の色 帯桃 白 白

開花始期 中 極早 極早

収穫期 中 晩 晩

前 後 の 円 筒 形 の 果 実 を 生 産 し , 硬 度 は 平 均 で58.2Nで ある. しかし,生育が早く推移し,果肉のHue値も低く,

果 肉 清 色 が よ か っ た2015年は硬度が低い傾向にあった.

このように,果肉の良好な着色を待って,収穫期が遅れる と硬度が低下しやすいので注意が必要である.食味は,糖 度 12.4°, 酸 含 量0.5% で , 糖 酸 比 が27前 後 と 爽 や か な 酸 味を感じることができる香り豊かなリンゴ品種である.果 皮 お よ び 果 肉 のL*値はいずれも 70前 後 と 明 る い 一 方 , Hue値 は 果 皮 で90.2とやや赤みを含む黄色である. これ

は,着色した果肉が黄色の果皮を透過して測定されている た め で あ り , 果 肉 着 色 の よ か っ た2015年 は 果 皮 のHue値 も 他 の 年 に 比 べ て , 低 い 値 と な っ て い る . 一 方 , 果 肉 の Hue値 は2013年の86.5から2015年の67.1までばらつきが あり,年により果肉の着色にばらつきがあることを示して

いる.同じ赤肉系統で果肉が真紅に着色する 紅の夢 の Hue値 は 一 般 に20 40であり, HFF60'の 果 肉 清 色 は 薄 いピンク色であることが明らかである. 紅の夢 の果肉 着色は低温により促進されることが明らかになっているこ とから (Matsumotoら, 2018b),同じ 赤肉親候補A"を 花 粉 親 に 持 つ タ イ プ2の赤肉リンゴである HFF60'の果 肉着色も低温で誘導されることが予想される.そのため,

残暑が残る9月下旬〜10月上旬に収穫される HFF60'は 収穫前の気湿が高く推移する年は十分な果肉着色が得られ る前に果肉の成熟が進み,果肉硬度が低下するおそれがあ る.従って,本品種は暖地での栽培には不向きであり,収 穫期に十分な低湿が得られる寒冷地での栽培が望ましいも のと考えられた.

(2)  1‑MCP処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及 ぼす効果

果 肉 着 色 を 維 持 ま た は 改 善 し な が ら HFF60'の貯蔵性 を 向 上 さ せ る た め に , 収 穫 直 後 の1‑MCPが 貯 蔵 中 の 果 実 品 質 に 及 ぼ す 影 響 を 調 査 し た . 1‑MCP処 理 は 概 し て 'HFF60' の 貯 蔵 性 と 果 肉 着 色 の 向 上 に 効 果 を 及 ぼ さ な かった(第6表). 1‑MCP処 理 の 有 無 に か か わ ら ず , 貯 蔵 期間の延長に伴い果肉硬度は低下した. ま た , 貯 蔵 に 伴 い,糖度はやや上昇する一方, リンゴ酸含量は低下する傾 向が見られた.文乃吐拉ら (2005)は, 1‑MCP処 理 の 貯 蔵 性の向上に対する効果は品種ごとに異なること,収穫から 処理までにかかる時間により異なることを指摘しており,

特に収穫期の早い品種で品質保持効果が少ないことを指摘 し て い る . 本 研 究 で は 収 穫 当 日 に1‑MCP処 理 を 行 っ て い るため,処理の遅延が効果の減少につながったとは考えに 第5表 'HFF60'の適期収穫果実の果実品質

1果重 縦 径 横径 L/D  硬度 酸度 リンゴ 果皮色 果肉色

調 査 年 収 穫 日 (g)  (mm)  (mm)  比 (N)  (0Brix)  酸含量 糖酸比

(%)  L*  Hue値 L*  Hue値 2013  IO.I  315.2  86.4  90.7  0.95  61.6  12.7  0.57  26.4  68.4  94.3  77.5  86.5  2014  9.24  323.4  92.2  89.2  1.03  62.6  11.7  0.50  26.0  67.8  93.2  74.3  76.1  2015  9.22  325.1  89.7  88.9  l.0l  50.4  12.9  0.47  27.7  66.0  82.9  72.9  67.1  乎均 9.26  321.2  89.4  89.6  1.0  58.2  12.4  0.50  26.7  67.4  90.2  74.9  76.6  調査年はすべて落果防止剤を処理している

各年n=5 10の平均値

(8)

202  林田大志•佐藤早希•藤田知道・五十嵐 恵•初山慶道・塩崎雄之輔•松本和浩

第6表 1‑MCP処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及ぼす影響 (2013年) 貯蔵 1果重

硬度 糖度 リンゴ 果皮色 果肉色

処理区 日数 目減り率(%)Z  (N)  (0Brix)  酸含星

(%)  L*  Hue値 L*  Hue値 Cont. 

61.6 a  12.7  a  0.57  a  68.4 a  94.3  a  77.5  a  86.5  a 

Cont.  0.19 bY  55.7 a  13.4  a 

15  0.46 b  68.7 a  92.7 a  75.4 ab  83.6 a  1‑MCP  0.33  a  51.1  a  13.0  a  0.44 b  68.5  a  94.6 a  73.1  b  77.7 a  Cont.  0.15  b  48.0 a  13.2  a  0.43  b  67.8 a  95.3  a  76.1  ab  82.5  a 

30 

67.7 a  92.5  a  73.8 b  76.8  a  1‑MCP  0.32 a  47.1  a  13.1  a  0.41  b 

ANOVAX 

処理 (A) * * ns  ns  ns  ns  ns  *  ns  貯蔵日数(B)  ** *  *   ** ns  ns   ** ns  AxB   ** ns  ns  ns  ns  ns  ns  ns  汀果重目減り率の有意差検定は, 目減り率の逆正弦変換を行って実施した

y同列内の異なる英文字はTukey'sHSD testにおいて5%水準で有意差あり (n=5) x ns,*および**はそれぞれ有意差なし, 5%, 1%水準で有意差あり

くい.そのため, HFF60'の 有 す る 品 種 特 性 が1‑MCPの 処理効果を出しにくくしているのかもしれない. 紅の夢' では,果実の周囲に冷却水を循環させたところ,着色の向 上 が 報 告 さ れ て い る (Matsumotoら, 2018b). し か し , 本 試 験 に お け る 収 穫 後 の 低 温 処 理 で は 着 色 を 向 上 さ せ る 効 果 は見られなかった. HFF60'より濃い藩色が見られる 紅 の 夢 に お い て も 低 湿 貯 蔵 処 理 は1‑MCP処 理 の 有 無 に か かわらず果肉着色を徐々に退色させ,清色を向上させる効 果 は な い こ と が 報 告 さ れ て い る こ と か ら (Matsumotoら, 2018a), 果 肉 着 色 の 程 度 に 関 わ ら ず 収 穫 後 の 低 温 処 理 は 着 色を向上させないことが明らかになった. また, 紅の夢' に お い て は1‑MCP処 理 は 硬 度 の 低 下 を 防 止 し た も の の

(Matsumotoら, 2018a),'HFF60'では効果はなく,同じ赤 肉品種問でも異なる反応を示すことが明らかとなった.

(3)異 な る 濃 度 のAVG散 布 処 理 が 冷 蔵 貯 蔵 中 の HFF60' の果実品質に及ぼす効果

1‑MCP処 理 が 貯 蔵 性 と 着 色 の 向 上 の 両 者 に 効 果 を 及 ぼ さなかったことから, つがる において貯蔵性の向上に 効 果 が あ る こ と が 報 告 さ れ て い るAVGの 収 穫 前 処 理 ( 近 藤・早田, 1995)が HFF60'の 貯 蔵 性 お よ び 着 色 に 及 ぼ す効果を調査した.最も顕著な効果が表れたのは果肉硬度 で 収 穫 時 の 果 肉 硬 度 は300ppm区で対照区に比べて著しく 高い値を示した. 300ppm区 は そ の 後 も 貯 蔵 後30日 ま で 高い硬度を維持した.一方, 150ppm区 は 処 理 後15日に

第7表 1‑MCP処理が冷蔵貯蔵中の HFF60'の果実品質に及ぼす影響 (2017年) 処理区 貯蔵 1果重

硬度 糖度 リンゴ 果皮色 果肉色

目減り率 酸含量

(ppm)  日数 (%)z  (N)  (0Brix) 

(%)  L*  Hue値 L*  Hue値

55.6 abc  12.9  ab  0.36 bed  66.9 a  82.8  71.0 be  55.3 

150 

58.6 abc  12.9 b  0.45  ab  67.8 a  96.1  ab  74.8  ab  89.1  a 

300  83.1  a  12.6 b  0.56 a  68.8 a  101.6 a  76.2 a  97.2 a 

0.27 bY  44.7 be  13.5  ab  0.41  abed  66.8  a  88.5 be  70.1  68.9 be 

150  15  0.24 b  72.9 ab  12.9  ab  0.51  a  68.1  a  97.2 ab  73.6 ab  84.2 ab  300  0.21  be  62.9 abc  13.5  ab  0.48 ab  67.6  a  96.8  ab  74.0 ab  83.2 ab 

0.68  a  36.0 c  13.9  a  0.31  d  67.5  a  89.0 be  72.7 be  80.3  abc 

150  30  0.68  a  48.3  abc  13.5  ab  0.32 cd  67.3  a  92.1  abc  73.4 abc  88.3  a  300  0.40 b  78.9 ab  13.3  ab  0.46 abc  68.8  a  101.5  a  75.5  ab  97.8  a  ANOVAX 

処理 (A) *  * * ns   ** ns  * *  **  ** 貯蔵日数(B)  ** ns  * * * * ns  ns  *  ns 

AxB  ns  ns  ns  ns  ns  ns  ns  ns  汀果重目減り率の有意差検定は, 目減り率の逆正弦変換を行って実施した

y同列内の異なる英文字はTukey'sHSD testにおいて5%水準で有意差あり (n=5) x ns,*および**はそれぞれ有意差なし, 5%, 1%水準で有意差あり

(9)

園学研.(Hort.Res. (Japan))  19 (2)  : 197‑204.  2020.  203 

一旦硬度の上昇がみられ,貯蔵後30日では再び低下した が対照区に比べて高い値を維持した(第7表). AVG処理 はリンゴ酸含量の低下も抑制し,特に300ppm処理区で,

対照区に比べ高い値を維持した.収穫時の150ppmおよび 300ppmAVG処 理 区 の 果 肉 のHue値 は , そ れ ぞ れ89.1, 97.2と,対照区の55.3に比べ,著しく高い値を示し,果 肉が全く着色していないことが明らかである.その後も,

貯蔵中にHue値は低下することはなく,逆に対照区のHue 値が上昇し,果肉の退色が見られた.果皮のHue値も果 肉と同様の傾向を示したことから,果皮を透過して見える 果肉着色の有無と消長が,果皮のHue値に影響を及ぼし ているものと考えられた.一方,糖度は処理の有無にかか わらず貯蔵中に上昇する傾向が見られたが,硬度は果肉 色の変化に比べ,わずかであった. このように, HFF60'  への収穫前のAVG処理は つがる での報告(近藤・早 田, 1995)と同様,硬度の低下を防ぎ,貯蔵性を向上さ せる可能性を示したものの, HFF60'の特性として最も重 要な果肉の着色を妨げることが明らかとなったことから

(第7表),現在のままの方法では HFF60'の貯蔵性の向 上に,有効な手段とはなりえないと考えられた. しかし,

本実験ではすべての処理区を同時に収穫したものの,処理 濃度と収穫時期をさらに詳細に検討すれば,硬度を維持し ながら良好な着色を得られる可能性がある.今後はそれら の検討を行い,果肉の着色と硬度の維持を両立する方法を 明らかにするとともに,果実の硬度が低下しても活用可能 な,生食以外の利用法も検討していく予定である.

摘 要

果皮が黄色で果肉が赤色に着色する HFF60'を育成し た. DNAマーカーを利用した遺伝子型解析の結果,本品 種は 東光 に 赤肉親候補A"の花粉が予期せずに交雑 したことにより作出された品種であると推定された.樹姿 は 王林 と同様の直立型であるが 王林 と比べても樹 勢が強く,花芽を維持するための整枝・剪定が必要であ る.育成地での収穫期は9月下〜10月上旬,果実は320g 程度の円筒形で,糖度は12.4°,酸度は0.5%前後である.

貯蔵中に硬度が低下しやすく,収穫直後の1‑MCP処理で は貯蔵性を向上させることはできなかった. また,収穫前 のAVG処理は硬度の維持には有効であったが,果肉着色 を阻害したことから,貯蔵性を向上させる実用技術とする ことはできなかった. このように HFF60'は長期貯蔵に 向かないものの,果皮が黄色であることから,外観から果 肉の着色を確認できるメリットがある.今後は,果皮と果 肉の色の対比や,果肉硬度の維持が必要ない加工法を検討 し,さらなる普及を図っていきたい.

引用文献

阿部和幸・副島淳ー・岩波 宏・古藤田信博•森谷茂樹・

別所英男・小森貞男・伊藤祐司・高橋佐栄•岡田和

馬・加藤秀憲・土師岳•石黒亮・増田哲男・土屋 七 郎 2017. リンゴ新品種 ローズパール'.農研機 構報告果樹茶部門. 1:9—17.

阿部和幸・副島淳ー・岩波 宏・古藤田信博・森谷茂樹・

高橋佐栄・伊藤祐司・別所英男•岡田和馬・加藤秀 憲 ・ 小 森 貞 男 ・ 土 師 岳 ・ 石 黒 亮 . 2018. リンゴ新 品種 ルビースイート'.農研機構報告 果樹茶部門.

2:9‑17. 

阿部佳枝•藤井浩・上田高則•五十嵐恵・今智之・

深澤(赤田)朝子・工藤剛·佐藤耕•初山慶道.

2007.  りんご品種判別における最少マーカーセット 選択プログラム「Minima!Marker」の利用.園学研 6

(別1):321.

阿部佳枝•初山慶道・上田高則•五十嵐恵・神みさ お・今 智之・鈴木正彦. 2005. リンゴ品種・系統の SSR遺伝子型大量解析.園学雑. 74(別1):182. 文乃吐拉木合塔年・壽松木 章・小森貞男. 2005. 1 —メチ

ロシクロプロペン (1‑MCP)処理がリンゴ3品種の貯 蔵 性 に 及 ぼ す 影 響 園 学 研 4:439‑‑443.

青森県りんご生産指尊要項編集部会. 2014.りんご生産指 導要項(平成26年改訂版).公益財団法人青森県りん

ご 協 会 青 森

伴野潔・高橋純司. 2016. リンゴ新品種 レッドセン セーション'.園学研. 15(別I):62. 

Bousquet, J.,  L. Simon and M. Lalonde. 1990. DNA amplifi‑ cation from vegetative and sexual tissues of trees using  polymerase chain reaction. Can. J.  For. Res. 20: 254‑257.  Broothaerts, W. 2003. New findings in apple S‑genotype analysis 

resolve previous confusion and request the re‑numbering of  some S‑alleles. Theor. Appl. Genet. 106: 703‑714. 

Broothaerts, W., G. A. Janssens, P.  Proost and F. Broekaert.  1995. cDNA cloning and molecular analysis of two self‑ incompatibility alleles from apple. Plant Mo!. Biol. 27:  499‑511. 

Chagne, D., K. Lin‑Wang, R. V. Espley, R. K. Volz, N. M. How,  S.  Rouse, C. Brendolise, C. M. Carlisle, S.  Kumar, N. De  Silva, D. Micheletti, T. McGhie, R. N. Crowhurst, R. D.  Storey, R. Velasco, R. P.  Hellens, S. E. Gardiner and A. C.  Allan. 2013. An ancient duplication of apple MYB tran‑ scription factors is  responsible for novel red fruit‑flesh  phenotypes. PlantPhysiol. 161: 225‑239. 

Cheng, F. S., N. F. Weeden and S. K. Brown. 1996. Identification  of co‑dominant RAPD markers tightly linked to fruit skin  color in apple. Theor. Appl. Genet. 93: 222‑227. 

Espley, R. V., C. Brendolise, D. Chagne, S.  Kutty‑Amma, S.  Green, R. Volz, J.  Putterill, H.J. Schouten, S. E. Gardiner,  R. P.  Hellens and A. C. Allan. 2009. Multiple repeats of a  promoter segment causes transcription factor autoregulation  in red apples. Plant Cell 21: 168183.

(10)

204  林田大志•佐藤早希•藤田知道・五十嵐 恵•初山慶道・塩崎雄之輔•松本和浩 Faramarzi, S., S. Pacifico, A. Yadollahi, A. Lettieri, P. Nocera and 

S. Piccolella. 2015. Red‑fleshed apples: old autochthonous  fruits as a novel source of anthocyanin antioxidants. Plant  Foods Hum. Nutr. 70: 324‑330. 

Guilford, P.,  S. Prakash, J.M. Zhu, E. Rikkerink, S. Gardiner, H.  Bassett and R. Forster.  1997. Microsatellites in Malus x  domestica (apple) abundance, polymorphism and cultivar  identification. Theor. Appl. Genet. 94: 249‑254. 

堀込 充・中條忠久•阿部和幸・古籐田信博・岩波宏・

森谷茂樹. 2010. リンゴ新品種「おぜの紅」の育成.

群馬農技セ研報. 7:1‑7. 

五十嵐 恵・赤田朝子・初山慶道. 2016. リンゴの複数形 質を同時判定するマルチプレックスPCR法の開発づ置 伝子検査を取り入れた次世代リンゴ新品種の効率的作 出 技 術 に 関 す る 研 究 平 成26年度版地方独立行政法 人青森県産技術センター工業部門事業報告書: 50. 五十嵐 恵•初山慶道・阿部佳枝・深澤(赤田)朝子・今

智 之 ・ 工 藤 剛 ・ 佐 藤 耕 . 2008. 葉緑体DNAの多 型を利用したリンゴ細胞質型簡易判別マーカーの作 出園学研. 7(別1):269. 

五十嵐恵•初山慶道・松本和浩・塩崎雄之輔. 2011.

DNA鑑定による赤肉系リンゴ新品種 紅の夢の親の 推 定 弘 前 大 農 学 報 13:7‑13. 

Janssens, G. A., I. J.  Goderis, W. F. Broekaert and W. Broothaerts.  1995. A molecular method for S‑allele identification in  apple based on allele‑specific PCR. Theor. Appl. Genet. 91:  691‑698. 

近藤悟・早田保義. 1995. リンゴ つがる'の後期落果 および貯蔵中の果実品質に及ぼすアミノエトキシビニ ルグリシン (AVG)ならびに2,4‑DPの影響園学研.

64: 275‑281. 

Kukita, Y., K. Higasa, S. Baba, M. Nakamura, S.  Manago, A.  Suzuki, T.  Tahira and K. Hayashi. 2002. A single‑strand  conformation polymorphism method for the large‑scale  analysis of mutations/polymorphisms using capillary array  electrophoresis. Electrophoresis 23: 2259‑2266. 

Liebhard, R., L. Gianfranceschi, B. Koller, C. D. Ryder, R.  Tarchini, E. van de Weg and C. Gessler. 2002. Development  and characterisation of 140 new microsatellites in apple  (Malus x domestica Borkh.). Mo!. Breed. 10: 217241.

Matsumoto, K., T. Fujita and S.  Sato. 2018a. Effects of 1‑MCP  and pre‑harvest fruit bagging treatments on cold storability  of the red‑fleshed apple'Kurenainoyume'. Hort. J.  87:  443‑451. 

松本和浩•藤田知道・佐藤早希•五十嵐 恵•初山慶道・

林田大志・塩崎雄之輔. 2018. リンゴ新品種 HFF63'

/きみとTMの育成過程とその特性.園学研 17:115‑ 122. 

Matsumoto, K., T. Fujita, S.  Sato and T. Moriguchi. 2018b. 

Effects of low temperature, shading, defoliation, and crop  load on the flesh coloration of the type 2 red‑fleshed apple  'Kurenainoyume'. Hort. J.  87: 452‑461. 

農林水産植物種類別審査基準. 2010. りんご属(生食用).

〈http://www.hinsyu.maff.go.jp/info/sinsakijun/kijun/13 99.  pdf〉.

Sakurai, K., S. K. Brown and N. F. Weeden. 1997. Determining  the self‑incompatibility alleles of Japanese apple cultivars.  HortScience 32: 1258‑1259. 

Sato, T., Y. Wakasa, T. Kudo, T. Akada, M. Niizeki and T. Harada.  2004. Allelotype of a ripening‑specific 1‑aminocyclopropane‑ 1‑carboxylate synthase gene defines the rate of fruit drop in  apple. J. Amer. Soc. Hort. Sci. 129: 32‑36. 

Silfverberg‑Dilworth, E., C. L. Matasci, W. E. van de Weg,  M. P. W. Van Kaauwen, M. Walser, L. P.  Kodde, V. Soglio,  L. Gianfranceschi, C. E. Durel, F.  Costa, T. Yamamoto, B.  Koller, C. Gessler and A. Patocchi. 2006. Microsatellite  markers spanning the apple (Malus x domestica Borkh.)  genome. Tree Genet. Genomes 2: 202‑224. 

Sunako, T., W. Sakuraba, M. Senda, S. Akada, R. Ishikawa, M. 

Niizeki and T. Harada. 1999. An allele of the ripening‑specific  1‑aminocyclopropane‑1‑carboxylate synthase gene (ACSJ)  in apple fruit with a long storage life.  Plant Physiol. 119:  1297‑1303. 

壽松木章・高橋敦•青葉幸ニ・増田哲男・樫村芳記.

1997.  リンゴ数品種の成熟期における樹上果実および 収穫果実のエチレン生成の比較. J.Japan. Soc. Hort.  Sci. 66: 495

503.

高橋純司•森本拓也・伴野潔. 2015. 赤肉リンゴ品種 ハニールージュ'の果肉着色に及ぼす着果負担と果 実袋の影響園学研. 14(別2) : 326. 

Umemura, H., S.  Otagaki, M. Wada, S.  Kondo and S.  Matsumoto. 2013. Expression and functional analysis of a  novel MYB gene, MdMYBllOa̲JP, responsible for red  flesh, not skin color in apple fruit. Planta 238: 65‑76.  Verdoodt, L., A. van Haute, I. J.  Goderis, K. de Witte, J. 

Keulemans and W. Broothaerts. 1998. Use of the multi‑ allelic self‑incompatibility gene in apple to assess homo‑

zygosity in shoots obtained through haploid induction.  Theor. Appl. Genet. 96: 294‑‑300. 

Wagner, D. B., G. R. Fumier, M.A. Sanghai‑Maroof, S. M. 

Williams, B. P.  Dancik and R. W. Allard. 1987. Chloroplast  DNA polymorphisms in lodgepole and jack pines and their  hybrids. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 2097‑2100.  吉家一雄 2018.種苗法に基づく果樹の新登録品種.果樹

種苗. 151:17. 

参照

関連したドキュメント

ても情報活用の実践力を育てていくことが求められているのである︒

The Moral Distress Scale for Psychiatric nurses ( MSD-P ) was used to compare the intensity and frequency of moral distress in psychiatric nurses in Japan and England, where

父母は70歳代である。b氏も2010年まで結婚して

[r]

[r]

quarant’annni dopo l’intervento della salvezza Indagini, restauri, riflessioni, Quaderni dell’Ufficio e Laboratorio Restauri di Firenze—Polo Museale della Toscana—, N.1,

70年代の初頭,日系三世を中心にリドレス運動が始まる。リドレス運動とは,第二次世界大戦

カウンセラーの相互作用のビデオ分析から,「マ