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Noonan症候群とPTPN11遺伝子変異 Editorial Comment

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34 日本小児循環器学会雑誌 第20巻 第 4 号

Editorial Comment

PEDIATRIC CARDIOLOGY and CARDIAC SURGERY VOL. 20 NO. 4 (454–455)

Noonan症候群とPTPN11遺伝子変異

富山医科薬科大学小児科 市田 蕗子

 Noonan症候群は,1,000人に 1 人の発生頻度で,常染色体優性遺伝をとる疾患であるが,散発例や,まれに常染色 体劣性遺伝をとる症例も報告されている1).散発例が50%,家族例が50%であるが,加齢とともに症状が軽快するた め,親の症状が顕著でないことがあり,親の幼少時期の写真の確認が診断に役に立つことがある.Turner症候群に似 て,低身長,翼状頸,外反肘などがみられるが,臨床所見は心血管系,頭蓋顔面,骨格系,造血系,リンパ系,そ して中枢神経系と広範囲に認められ,その臨床像は多彩である.心疾患の合併は70〜80%と高率で,異形性の強い 肺動脈狭窄や心房中隔欠損,肥大型心筋症がみられる.

 Noonan症候群の疾患遺伝子の検索は,長年にわたって続けられてきたが,1994年には,大家系による連鎖解析で,

責任領域が染色体12q24上にマッピングされ2),1998年には,さらに責任領域がD12S84からD12S1341にあると報告さ れた3).この領域上には,複数の遺伝子が存在し,これらの候補遺伝子の一つであるPTPN11は,マウスにおいて半 月体弁形成に関与することが知られていた4).そしてついに2001年に,Tartagliaらが,PTPN11がNoonan症候群の疾患 遺伝子の一つであることを報告した5).彼らの解析では,PTPN11の変異は,Noonan症候群の約50%に認められ,60 種以上の変異が報告されているが,すべてがミスセンス変異である.また,PTPN11は,多彩な機能を有するプロテ インチロシンフォスファターゼ(PTP)であるSHP 2をコードする遺伝子である.SHP 2は,心臓,脳,骨格など広範 囲に発現が認められ,しかも,発生過程で細胞間のシグナル伝達に重要な役割を果たしていると考えられている6). PTPN11は,2 つのホモロジードメイン(N-SH2,C-SH2)とC末端側のPTPドメインからなっており,N-SH2は,SHP- 2の酵素活性を失わせたり,活性化させたりする役割を果たしている7).これまで報告された,PTPN11の変異は,ほ とんどが,このN-SH2ドメインとPTPドメインの接合部位における変異であり,酵素活性のスイッチの役割を果たす 機能獲得性突然変異と考えられている.

 Tartagliaらの遺伝子型と表現型の検討では,PTPN11変異を有する群と有しない群では,肺動脈狭窄は,有意に PTPN11変異を有する群に多く(70.6% vs 46.2%,p = 0.008),逆に肥大型心筋症は,変異を有する群に少ないことが 分かった(5.9% vs 26.2%,p = 0.004)8).これは,SHP-2が,心筋細胞の増殖よりは,半月弁形成において,より重 要な役割を果たしている可能性を示す興味深い所見である.ほかに,心房中隔欠損などの心奇形に関しては,両群 で差は認められなかった.同様に,低身長,胸郭変形,停留睾丸や精神発達遅滞などNoonan症候群の特徴的な臨床 所見にも,有意差は認められなかった.阿部らの症例では,PTPN11変異を有しながら,新生児期に肥大型心筋症で 発症し,肺動脈弁異形性や狭窄が明らかではなかった点が特異である.Noonan症候群は,臨床像も多彩であり,遺 伝的にも多様性があり,PTPN11の異常のみでは説明できない臨床症状が多い.今後,症例の蓄積によって,遺伝子 型と表現型の関連が明らかになっていくものと思われる.

 これまでに報告されたPTPN11変異は,すべて各exon内のミスセンス変異であるが,他のプロモーター領域の異常 やイントロンの異常など,遺伝子解析の方法で新たな異常が発見される可能性も大きい.また,Noonan症候群には 遺伝的に多様性があり,PTPN11以外の疾患遺伝子が発見される可能性も大きい.さらに,阿部らの症例では,臨床 的にLEOPARD症候群とオーバーラップしており,同じexon 7 の変異がLEOPARD症候群でも報告されていることか ら9),両者がallelicな疾患であることを示すきわめて興味深い症例であると思われる.ほかにNoonan症候群は,cardio- facio-cutaneous症候群,neurofibromatosis-Noonan症候群,Costello症候群と類似しており,今後,遺伝子解析により,

これらの疾患との関連が明らかになっていくことが期待される.

(2)

平成16年 7 月 1 日 35

455

 【参 考 文 献】

1)Bruce D Gelb: Noonan syndrome and PTPN11 mutations. Proceedings of the 1st Internal Symposium on Etiology and Morphogenesis of Congenital Cardiovascular Disease in the Post-Genomic Era. Tokyo, 2002, pp112-113

2)Jamieson CR, van der Burgt I, Brady AF, et al: Mapping a gene for Noonan syndrome to the long arm of chromosome 12. Nat Genet 1994; 8: 357–360

3)Legius E, Schollen E, Matthijs G, et al: Fine mapping of Noonan/cardio-facio cutaneous syndrome in a large family. Eur J Hum Genet 1998; 6: 32–37

4)Chen B, Bronson RT, Klaman LD, et al: Mice mutant for Egfr and Shp2 have defective cardiac semilunar valvulogenesis. Nat Genet 2000; 24: 296–299

5)Tartaglia M, Mehler EL, Goldberg R, et al: Mutations in PTPN11, encoding the protein tyrosine phosphatase SHP-2, cause Noonan syndrome. Nat Genet 2001; 29: 465–468

6)Cunnick JM, Meng S, Ren Y, et al: Regulation of the mitogen-activated protein kinase signaling pathway by SHP2. J Biol Chem 2002;

277: 9498–9504

7)Hof P, Pluskey S, Dhe-Paganon S, et al: Crystal structure of the tyrosine phosphatase SHP-2. Cell 1998; 92: 441–450

8)Tartaglia M, Kalidas K, Shaw A, et al: PTPN11 mutations in Noonan syndrome: Molecular spectrum, genotype-phenotype correlation, and phenotypic heterogeneity. Am J Hum Genet 2002; 70: 1555–1563

9)Legius E, Schrander-Stumpel C, Schollen E, et al: PTPN11 mutations in LEOPARD syndrome. J Med Genet 2002; 39: 571–574

参照

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