九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
中枢神経抑制作用を持つGABAの化学誘導体プレガバ リンの麻酔への応用に関する研究
加留部, 紀子
https://doi.org/10.15017/1500640
出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
(様式6-2)
氏 名 加留部 紀子
論 文 名 中枢神経抑制作用を持つ GABA 化学誘導体プレガバリンの麻酔への 応用に関する研究
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 森 悦秀 副 査 九州大学 教授 中村 誠司 副 査 九州大学 教授 中西 博
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
抑制性神経伝達物質GABAの化学誘導体プレガバリンは、本邦では神経障害性疼痛および線維筋 痛症に伴う疼痛の治療剤として使用されている。これまで、プレガバリンの術後鎮痛に対する有効 性は多数報告されているが、手術中の鎮痛効果や麻酔薬との相互作用については、十分に検討され ていない。本研究では、静脈内鎮静法(Intravenous Sedation: IVS)を行い、IVS前に経口投与し たプレガバリンが鎮静中の鎮痛・麻酔作用に及ぼす効果について検討した。
倫理委員会での承認後(九大院戦研弟553号)、健康な成人ボランティア10人を対象に、同一被 験者に同一条件下で3回のプロポフォールによるIVSを施行した。1回目はプレガバリンを内服せ ず(対照群)、2回目はプレガバリン 100mg(100mg 群)、3 回目はプレガバリン 200mg(200mg 群)をIVS開始1時間前に内服させ、対照群とプレガバリン内服群とで比較を行った。IVSは目標 血中濃度調節投与(Target Controlled Infusion: TCI)を用いて、BIS値が60に達するまでプロ ポフォール血中濃度を漸増させ、各血中濃度におけるBIS値、Ramsay鎮静スコアおよびMackenzie 鎮静スコアを記録した。また、プロポフォールによる血管痛、痛み刺激に対する反応、呼吸循環動 態の変化、併発症の有無を記録した。プレガバリン内服群では、各BIS値でのプロポフォール血中 濃度が対照群と比較して有意に低かった(200㎎群:BIS値80、70、60、100㎎群:BIS値70、
60)。一定のRamsay鎮静スコアおよびMackenzie鎮静スコアにおけるプロポフォール血中濃度も、
プレガバリン内服群で対照群よりも有意に低かった。プロポフォールによる血管痛に対する VAS 値は、200mg群で有意に低かった。痛み刺激に対する反応は、各群間で有意差がなかった。脈拍数
は200mg群で有意に減少していたが、血圧および経皮的酸素飽和度は各群間で有意差はなかった。
覚醒遅延、眠気、かすみ目などの併発症発生頻度および程度は、200mg群で有意に高かった。
本研究は主要な静脈麻酔薬であるプロポフォールとプレガバリンとの相互作用を静脈内鎮静法で 検討し、プレガバリン投与は一定の鎮静度を得るために必要なプロポフォール投与量を減少できる ことを明らかにした。一方で、IVS後に眠気などの併発症が多く現れることを明らかにした。プレ ガバリンは半減期が6時間と長いため、短時間の静脈内鎮静法や日帰り全身麻酔での使用には適さ ないが、長時間の全身麻酔であればプレガバリンを使用することにより、併発症を発症することな く術中の麻酔薬使用量を低減できる可能性が示唆された。これらの知見は実臨床に貢献するもので あり、本研究が九州大学大学院歯学府において博士(歯学)の授与に値するものと判断した。