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― ― 大学1年生のキャリア意識についての一考察

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大学1年生のキャリア意識についての一考察

―近畿大学を事例として―

岩 井 貴 美

概要 本研究では,大学1年生のキャリア意識について検討を行うため,大学1年生のキャ リア意識とサークル活動,大学生活の充実,親と将来についての会話との関連性について明 らかにした。まず,近畿大学経営学部の1年生132名を対象に, 質問紙による調査を実施し た。データ分析の結果,キャリア意識において,キャリアアクション,キャリアビジョンの 2因子を抽出した。さらに,キャリア意識と「サークル活動」,「大学生活の充実」,「将来に ついて親と会話」と,どのような関連性があるのか検討した。その結果,大学1年生におい て,サークル活動などを活発に行っている,また,大学生活が充実している学生ほど,キャ リアアクションの行動に影響を及ぼすことが分かった。また,将来について親と会話をする ほど,キャリアビジョンに影響を及ぼすことが分かった。

キーワード 大学1年生のキャリア意識,大学生活,将来について親と会話,Career Action- Vision Test(CAVT)

原稿受理日 2021年1月27日

Abstract In this study, in order to examine the career consciousness of first-year university students, we clarified the relationship between the career consciousness of first-year university students and club activities, enrichment of university life, and conversations between parents about the future. First, we conducted a questionnaire survey of 132 first-year students of the Faculty of Business Administration at Kindai University. As a result of data analysis, two factors, career action and career vi- sion, were extracted in career consciousness. Furthermore, we examined the relationship between career awareness and“circle activities,”“enhancement of university life,”

and“conversations about the future with parents.” As a result, it was found that in the first-year of university, students who are actively engaged in club activities and who have a more fulfilling university life are more active in their career actions. 

In addition, the more they talked with their parents about the future, their career vision were cleared.

Key word Career Awareness of first-year University Students, University Life, Conversa- tion with Parents, Career Action-Vision Test(CAVT)

(2)

1.は じ め に

 1.1 問題意識

近年,新型コロナウィルス感染の影響により,新卒採用に関して大きな変化がみられる。

厚生労働省(令和2年)「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(10月1日現在)」 によると,大学生の就職内定率は,69.8%と前年同期比7.0ポイント減少となっている。こ の時期に70%を下回るのは5年ぶりであり,リーマン・ショック直後の2009年調査に次ぐ 下げ幅である(日本経済新聞2020年11月17日)。このように,すでに「売り手市場」は崩 壊し,就職氷河期の再来と言われている状況である。企業によっては,新卒採用募集人数 の縮小,さらには,新卒採用そのものの中止を決定した企業が存在する。今後ますます,

大学生の新卒採用において,厳しい状況が続く見通しである。

さらに,苦労して就職活動を終え,就職した企業を早期に離職する学生の割合は,未だ 横ばい状態が続いている。新規学卒者の離職状況を見てみると,大学生が企業に就職して から3年以内に離職する割合が,32.8%(平成29年3月卒)と高い水準が示された状態で ある(厚生労働省 令和2年「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」)。この様に,

3 

年以内の離職率が高い1つの要因として,大学生が大学4年間において,十分に職務探 索が行えていないことが挙げられる。

安達(2004,2010)は,就職先の内定を得るという短期的で形式的な決定ではなく,自 分の力でキャリア探索に取り組み決定へ至ったという経験が,重要な意味を持つとしてい る。また,若松(2012)は,大学生の進路探索行動が十分になされていない事を指摘して いる。意思決定が遅れる学生は,受け身状態で情報収集や外的活動をほとんど行っていな いと述べている。

それでは,大学在学中のどのような経験や行動が,就職後の組織への定着に影響を及ぼ すのであろうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構(2017)によると,大学生時代に おいて,課外活動に熱心で業界や職業についてよく調べる学生が,就職してから勤続して いる傾向にあり,組織への定着を促進する可能性があるとしている。また,保田・溝上

(2014)によると, 大学生活に充実している学生ほど就職後も主体的に環境に働きかける 行動をしている可能性が分かった。また,大学1,2年生時にキャリア意識を持つことは,

日本経済新聞2020年11月17日「大学内定率5年ぶり70%割れ10月時点69.8%( https://www.

nikkei.com/article/DGXMZO66310020X11C20A1MM8000 2021年1月20日参照)

(3)

初期キャリアにおける組織社会化に直接的な影響を及ぼしていたことが分かった。つまり,

大学生が大学から社会への円滑な移行を行い,組織への定着を促進させるためには,大学 4年間は,充実した大学生活を送ることが重要であり, 大学1,2年生からキャリア意識 を持つことが重要であると考える。新卒採用の市場は,就職活動のルールが廃止され,通 年採用へと移行していく状況である。つまり,大学としては今以上に,1 

年生からのキャ リア支援が求められていることが分かる。

そこで本研究では,大学1年生のキャリア意識に注目する。大学1年生のキャリア意識 とはどの様なものなのか,大学生活において,どのような要因が関連するのか検討してい きたい。

1.2 Career Action-Vision Test(CAVT)

本研究では,大学生のキャリア意識についての効果測定として Career Action-Vision Test(CAVT)を用いる。CAVT は,下村ら(2009)により,大学におけるキャリアガ イダンスの取り組みを評価するために用いる,大学生のキャリア意識の発達を測定するた めに作成されたツールである。また,CAVT は,キャリアガイダンスに関する3つの理論 背景(キャリア発達研究「自己効力感理論」,パーソナリティ研究「ライフタスク理論」, 大学生の就職活動に関する研究)をもとに作成されている。1 

つ目の項目の「Action」は,

将来に向けてどのくらい熱心に積極的に行動を行っているのかを測定する項目群である。

つぎに,2 

つ目の項目の「Vison」は,将来に向けたビジョンや夢,やりたいことなどを どのくらい明確にしているのか,それに向けて準備しているのかを測定する項目群である。

よって本研究では,大学生のキャリア意識を測定する指標として CAVT を用いる。

2.先 行 研 究

 2.1 サークルなどの活動,大学生活の充実とキャリア意識

まず, 大学生のキャリア意識と大学生活の過ごし方との関連について考える。 溝上

(2009)は, 授業に出席し授業外学習を行い,対人的活動に時間を費やす,いわゆる「よ く遊び,よく学ぶ」タイプの学生は,大学生活が充実していて知識や技能が身についてお り,将来展望を持っていることを明らかにしている。 また, 大学生活の過ごし方と初期 キャリアの成否との関連を探求した木村(2014)は,大学生活や就職活動,最初の配属先 で成功を収めていた人は, 大学生活を振り返った際に,「豊かな人間関係」を重視した過

(4)

ごし方をしていた者が多いと述べている。この様に,大学生活において,学業以外に人間 関係の構築や大学生活の充実が重要であることが示されている。

つぎに,就職活動成果の決定要因を分析した永野(2002)は,大学での活動,勉強やゼ ミナール,サークル・部活に励むことが,就職活動において有利に作用するとしている。

また,早い時期から学生に就職について考えさせる機会を提供することが重要であるとし ている。さらに,保田・溝上(2014)は,大学1,2年生に将来の見通しを持っているこ とは,自ら学ぶ姿勢や学習に主体的に取り組む姿勢につながり,組織への適応を促進して いたことが分かった。この様に,大学生の早い時期から,将来に向けてキャリア意識を促 すことが,初期キャリアの適応に影響していることが示されている。本研究では,大学1 年生に着目しており,サークルなどの活動,大学生活の充実は,大学生のキャリア意識と 関連があると予測される。

2.2 キャリア形成支援としての親の存在

つぎに,大学1年生のキャリア意識に影響を及ぼすと考えられる要因に,身近な存在で ある「親」が考えられるのではないだろうか。中高生の職業入手の実態と職業情報ツール の効果を検討した独立行政法人労働政策研究・研修機構(2008)によると,将来について 話をする相手としては,「父または母(68.4%)」が1番多い回答結果となっている。

また,鹿内(2012)は,大学2年~4年生対象の男子学生と女子学生別に,父親,母親 それぞれの態度が大学生の職業未決定にどのように関連しているのか検討している。その 結果,母親と女子学生,父親と男子学生のように同性の親との対話の多さは,職業未決定 および就活不安の低さと関連していることが分かった。さらに,田澤・梅崎(2016)は,

保護者が就職活動へ関心を持ち,その関わり方に学生が満足していると,学生は明確なビ ジョンを持ち,積極的にアクションすることに関連があるとしている。この様に,大学生 にとっては,身近な存在である親がキャリアモデルであり,親を通して社会やキャリアに ついて学ぶと考えられる。 よって,将来について親と会話をすることは,大学1年生の キャリア意識に影響を与えると予測される。

本研究では,入学して4ヶ月ほどの大学1年生のキャリア意識を検討する。この時期は,

学業やサークル活動,アルバイトなど大学生活が落ちついてくる時期と考える。分析に関 しては,キャリアアクション・キャリアビジョンとサークルなどの活動,大学生活の充実,

将来についての親と会話,キャリア探索との関連性を検討する。よって,以下3つの仮説 を設定した。

(5)

仮説1.サークルなどの活動を活発に行う,大学生活が充実している大学1年生ほどキャ リアアクション・キャリアビジョンに正の影響を与える

仮説2. 将来について親と会話が多い大学1年生ほどキャリアアクション・キャリアビ ジョンに正の影響を与える

仮説3.キャリア探索を行っている大学1年生ほどキャリアアクション・キャリアビジョ ンに正の影響を与える

4.調 査 概 要

 4.1 調査対象

まず,大学1年生のキャリア意識を明らかにするために,近畿大学経営学部キャリア・

マネジメント学科の1年生を対象にアンケート調査を行った。実施期間は,2019年7月上 旬である。7 

月上旬は,入学して4ヶ月ほど立っており,大学生活に慣れてきた時期であ る。また,サークルなどに入り活動を開始している時期であると考える。授業担当教員の 協力を得てアンケートを授業中に配布・回収してもらった。対象者は132名, 有効回答者 は129名,有効回答率は,97.7%であった。有効回答数のうち性別に関しては,男性が81名

(62.8%), 女性が48名(37.2%)である。なお, アンケート調査の実施にあたっては, 成 績評価に関連しないこと,回答は任意であること,調査結果は研究の分析にのみ利用する 旨を口頭ならびに調査票に記載した。

4.2 分析指標

 キャリアアクション・キャリアビジョン

まず,大学1年生のキャリア意識を測定する指標として,下村ら(2009)が作成した「Career Action -Vision Test( CAVT )尺度」11項目を使用した(表1参照)。「かなりできてい る」から「できていない」まで5点尺度で回答してもらった。

 キャリア探索

安達(2008)は,男女学生への調査により,キャリア意識に3つの側面(適職信仰,受 身,やりたいこと志向)を見出している。これらのキャリア意識が行動につながるならば,

キャリア選択への支援や介入に活かせるとし,低学年にも適用可能なキャリア探索尺度を 作成し,自己探索と環境探索の2側面とキャリア意識の関連性を検討した。よって,大学

(6)

1年生のキャリアアクション・キャリアビジョンとキャリア探索の関連性を測定するため に安達(2008)の「キャリア探索尺度」13項目を一部修正して使用した(表2参照)。「よ くあてはまる」から「全くあてはまらない」まで5点尺度で回答してもらった。

 サークルなどの活動,大学生活の充実,将来について親と会話

つぎに,大学1年生のキャリア意識を検討する上で,キャリアアクション・キャリアビ ジョンとサークルなどの活動,大学生活の充実,将来について親と会話の関連性を検討す る。まず,サークル活動などの活動については,「非常に活動している」から「活動(所 属)していない」まで5点尺度で回答してもらった。つぎに,大学生活の充実に関しては,

「非常に充実している」から「充実していない」まで5点尺度で回答してもらった。 さら に,将来について親と会話に関しては,「非常に話す」から「全く話さない」まで5点尺 度で回答してもらった。

4.3 分析結果

 大学1年生のキャリアアクション・キャリアビジョンの因子分析

まず,下村ら(2009)が作成した Career Action-Vision Test(CAVT)尺度が,2  因 子構造であることを確認するため因子分析を行った。因子の抽出には最尤法,回転方法に はプロマックス法を用いた。なお,因子数の決定には,固有値1.0以上を基準として,下村 らが示したのと同じく2因子を仮定した。因子負荷量が.40以上を示す項目を各因子の解釈 に用いたところ,十分な適合度を得ることが出来なかった。そこで,パターン行列を検証 した上で,学習者の反応を混乱させると思われる1項目を分析から除外し,再分析を行っ た。その結果,十分な適合度が得られたため(x(3 4)=62.64, p=.00),5 

項目が妥当であ ると判断した(表1)。その結果,第1因子は5項目,第2因子は6項目となった。 下村 ら(2009)と同じく,第1因子は「キャリアアクション」, 第2因子は「キャリアビジョ ン」と名付けた。 つぎに, α係数を用いて各下位尺度の内部一貫性を検討したところ,

「キャリアアクション」は.87,「キャリアビジョン」は.90と十分高く信頼性が確認された。

 大学1年生のキャリア探索の因子分析

つぎに,大学1年生のキャリア探索を測定する項目の因子分析を行なった。因子の抽出 には最尤法,回転方法にはプロマックス法を用いた。なお,因子数の決定には,固有値1.0 以上を基準としたところ,安達(2008)と同じく2因子を得た。因子負荷量が.40以上を示

(7)

す項目を各因子の解釈に用いたところ,第1因子は6項目, 第2因子は7項目となった

(表2)。 安達(2008)と同じく, 第1因子は「自己探索」,第2因子は「環境探索」と名 付けた。つぎに,α係数を用いて各下位尺度の内部一貫性を検討したところ,「自己探索」

は.91,「環境探索」は.85と十分高く信頼性が確認された。

 変数間の相関関係

最後に表3は,今回の調査で用いた変数間の相関関係を示している。まず,キャリアア クション・キャリアビジョンを中心にみていくと,「キャリアアクション」と「サークル などの活動」との間に正の相関(r=.25),「キャリアアクション」と「大学生活の充実」

との間に正の相関(r=.31)がみられる。また,「キャリアビジョン」と「将来について 親と会話」との間に正の相関(r=.18)がみられる。つぎに,キャリア探索においては,

「自己探索」と「将来について親と会話」との間に正の相関(r=.18),「自己探索」と

「キャリアビジョン」との間に正の相関(r=.35)がみられる。また,「環境探索」と「将 来について親と会話」との間に正の相関(r=.23),「環境探索」と「キャリアアクション」

との間に正の相関(r=.51),「環境探索」と「キャリアビジョン」との間に正の相関

(r=.58)がみられる。

表1.キャリアアクション・ビジョンの因子分析結果

F2 F1

SD 平均

項目

F1:キャリアビジョン

-.033 .880

1.02 2.98

将来のビジョンを明確にする

-.059 .927

1.08 2.92

将来の夢をはっきりさせ目標を立てる

.092 .800

1.05 3.25

将来具体的に何をやりたいかを見つける

.100 .617

0.98 3.26

将来のことを調べて考える

.214 .594

1.00 3.38

自分が本当にやりたいことを見つける F2:キャリアアクション

.503 .280

1.10 2.92

学外の様々な活動に熱心に取り組む

.552 .079

1.10 2.92

尊敬する人に会える場に積極的に参加する

.740 .193

0.98 3.30

人生に役立つスキルを身につける

.884

-.162 1.08

3.41 様々な人に出会い人脈を広げる

.634 .122

0.96 3.45

何事にも積極的に取り組む

.494 .092

0.86 3.47

様々な視点から物事を見られる人間になる

.562 F2

因子間相関 因子抽出法:最尤法,プロマックス回転

(8)

6.考     察

本研究では,大学1年生を対象として,キャリア意識について分析を行った。まず,大 学生のキャリア意識に関連があると思われる「サークルなどの活動」,「大学生活の充実」, さらに,キャリア形成支援としての「将来について親と会話」,「キャリア探索」と大学1 年生のキャリア意識との関連性を検討した。

表2.キャリア探索因子分析結果

F2 F1 SD 平均 項目

F1:自己探索

.115 .744 0.94 3.63 自分の長所や短所について考えてみる

-.010 .841 0.91 3.65 自分という人間について考えてみる

-.077 .786 0.98 3.45 これまでの自分の生き方について振り返ってみる

.103 .748 0.94 3.45 これからの自分の生き方について想像してみる

.048 .794 0.93 3.81 自分が好きなこと,得意なことについて考える

.003 .795 0.93 3.73 自分が嫌いなこと,不得意なことについて考えてみる

F2:環境探索

.021 .529 1.00 2.92 本や雑誌インターネットなどで仕事や働く事に関連する記事を読む

.635 .040 1.01 3.35 将来の仕事について友人や先輩,家族などから話を聴く

.587 .002 0.98 仕事や働くことをテーマにした TV 番組を観たり,講演会 2.57

(セミナー)を聴きに行く

.766 .077 0.99 3.11 興味がある仕事に関する情報を集める

.535 .078 1.01 2.79 社会人から仕事や働くことについて話を聴く

.852

-.049 0.94 3.05 興味ある仕事に就くにはどの様に活動すれば良いのか調べる

.702 .026 1.01 3.37 興味がある仕事で必要とされる知識や資格について調べる

.532 F2 因子間相関

因子抽出法:最尤法,プロマックス回転

表3.主要変数の平均値,標準偏差値および相関係数

7 6 5 4 3 2

1 SD 平均 項目

0.49 1.37 1 男女

.04* 1.34 3.53 2 サークル活動

.26**

-.22*

0.82 3.87 3 大学生活の充実

.08**

-.01**

-.05* 0.98 3.32 4 親と会話

.18**

.08**

.12**

.18*

0.78 3.62 5 自己探索

.52**

.23**

-.02**

.04**

.15* 0.72 3.02 6 環境探索

.58**

.35**

.18**

.17**

.11**

.03* 0.75 3.24 7 キャリアビジョン

.66**

.51**

.55**

.09**

.31**

.25**

.04* 0.87 3.16 8 キャリアアクション

N=129  性別(女性=0,男性=1) *p<.05,**p<.01

(9)

6.1 仮説検証

 キャリアアクション・キャリアビジョンとサークルなどの活動,大学生活の充実 まず,仮説1を検証するために,キャリアアクション・キャリアビジョンとサークルな どの活動,大学生活の充実との関連性をみていく。「キャリアアクション」と「サークル などの活動」,「大学生活の充実」との間に有意な正の相関を示している。入学して4ヶ月 ほどの大学1年生だが,「サークルなどの活動を活発に行っている」,「大学生活が充実し ている」と感じている学生ほど,将来に向けて積極的に行動していることが伺える。溝上

(2009)が言うように,「よく遊び,よく学ぶ」学生は,学生生活が充実しており,将来展 望を持っていることが大学1年生においても示された。また,大学1年生は,サークルな どに所属し活動することにより,「大学生らしい生活」を満喫しているのであろう。 さら に,同級生や先輩,大学外の人々などとの新たな出会いがある。よって,サークルという 組織の中で活動することにより,社会のルールやマナー,社会で役立つスキルなどを身に つけていくのであろう。つまり,サークル活動などを通して,活動範囲が広がり,将来に 向けての探索行動が促されていると考えられる。

一方で,「キャリアビジョン」と「サークルなどの活動」,「大学生活の充実」との間に 有意な関連は示されなかった。おそらくキャリアビジョンは,将来に向けて大学生活の中 で,探索行動を行うことで段々明確なものになっていくと考えられる。1年生では,大学 生活やサークルなどの活動の経験が浅くキャリアビジョンを構築するという段階に達して いないのであろう。

 キャリアアクション・キャリアビジョンと親と将来についての会話

つぎに,仮説2を検証するために,キャリアアクション・キャリアビジョンと将来につ いて親と会話との関連性をみていく。「キャリアビジョン」と「将来について親と会話」

との間に有意な正の相関を示している。大学1年生から親と将来について話している学生 ほど,将来展望が明確になっており,準備していることが伺える。田澤・梅崎(2016)が 言うように,保護者が就職活動へ関心を持つほど,学生は明確なビジョンを持つことが分 かった。このことが,入学して4ヶ月ほどの大学1年生においても示されたと考えられる。

この様に,将来について親と会話をする機会が多くなることが,大学生のキャリアビジョ ンの構築に大きく関与していることがわかる。

一方で,「キャリアアクション」と「将来について親と会話」との間に有意な相関は示 されなかった。将来について親との会話は,主に「就職」についての内容であろう。まず,

(10)

大学生が就職に関して相談する対象は,親が多いと考える。1 

年生からキャリアセンター の進路相談を利用する学生は少ない。恐らく,将来について親との会話の中で,どのよう な企業に就職希望なのか,どのような業界や職種が希望なのかなど中心に話し合われてい るのであろう。つまり,親と将来の仕事について話をしており,将来に向けて何か行動を 起こす,人脈を広げる行動へとは繋がりにくいと予測される。

 キャリアアクション・キャリアビジョンとキャリア探索

最後に,仮説3を検証するために,キャリアアクション・キャリアビジョンとキャリア 探索についての関連性をみていく。「自己探索」と「キャリアビジョン」,「環境探索」と

「キャリアビジョン」「キャリアアクション」との間に有意な正の相関を示している。自己 探索において,今までのキャリアの棚卸しや自分自身を見つめ直す機会を持つことで,改 めて自分の将来について考えるのであろう。大学生活において将来に向けての目標を立て ることが,キャリアビジョンへと繋がっていると考える。さらに,環境探索が行われるこ とで,就職や仕事に関する情報が得られる。その結果,将来に向けて積極的に行動し,将 来やりたいことが明らかになっていくのであろう。

7.ま  と  め

本研究で得られた結果を踏まえ,本研究の学的意義について以下3点を述べる。まず1 点目は,大学1年生のキャリア意識を検討したことである。 就職活動を控えた高学年の キャリア意識については,多くの研究で検討されている。しかし,大学1年生のキャリア 意識については,筆者が調べた中ではあまり論じてこられなかった。入学して4ヶ月ほど の1年生ではあるが,サークルなどの活動を活発に行い,大学生活が充実していると感じ ている学生ほど,キャリアアクションに影響を与えることがわかった。将来,新卒採用に おいては「通年採用」が実施されつつある。さらに,新型コロナウィルス感染の影響によ り,すでに「売り手市場」が崩壊している。これらの状況を踏まえ,大学としては,ます ます,1 

年生から積極的に将来に向けて行動し,幅広い人脈の構築ができる人材を育成す るための支援や環境作りをしていかなければならない。

つぎに2点目は,将来について親と会話をしている学生ほど,キャリアビジョンに影響 を与えることがわかった。大学生活において,1年生が出会える大人(社会人など)は,

アルバイト先の社員,大学の教員・職員など限られている。つまり,大学生活において,

(11)

キャリアモデルとの出会いが少ない状況である。さらに,将来について会話をする相手は,

身近に存在する親が挙げられる。溝口・溝上(2017)は,大学生が最も影響を受けている ロールモデルは,「両親・家族」という回答が,最も多く挙げられているとしている。さ らに大学生が,将来に向けたキャリアビジョンを明確にするには,親以外の社会人との交 流する機会を増やす必要があると考えられる。大学生の早い段階から,多くの社会人と接 することで,親・家族以外の多様な働き方を学び,職業選択の幅が広がると考える。その 結果,大学3年生後半から,キャリアアクション・キャリアビジョンが不十分のまま就職 活動を始めるのではなく,1 

年生から将来に向けてじっくり時間を費やす必要がある。そ の間に,自分のやりたいことを明確にして準備を行い,就職活動へ自信を持ち,職務探索 を十分に行うことができるのであろう。よって,大学としては,1 

年生から参加出来るイ ンターンシップや社会人と出会える機会などを増やしていくことが重要である。

さらに3点目は,環境探索を行う学生ほどキャリアアクション・キャリアビジョンに影 響を与えることが分かった。よって,1年生から将来についてインターネットや本などか ら情報収集を行い,直接,社会人から仕事の話を聴く機会などは,積極的に行動すること が,キャリアの構築へと繋がる。また,情報を収集することで,仕事や将来やりたいこと などの知識の蓄積となり,具体的なビジョンが持てるようになるのであろう。よって,大 学は,大学生活において,1 

年生が情報収集出来る環境や方法を教える機会などが必要と 考える。

最後に,今後の課題について述べておきたい。本研究で使用したデータは,同じ大学の 学生を対象としていることである。本研究で得られた分析結果の妥当性を検証するために も他大学のデータを使用して検討する必要性がある。さらに,キャリア意識に影響を与え る要因としてサークルなどの活動,大学生活の充実が示されたが,具体的にどのような意 識や行動が影響を与えているのか詳細に関してさらなる検討をしていきたい。

参 考 文 献

安達智子(2004)「大学生のキャリア選択―その心理的背景と支援」『日本労働研究雑誌』No.533,

2737頁.

安達智子(2008)「女学生のキャリア意識―就業動機,キャリア探索との関連―」『心理学研究』第79 巻,第1号,2734頁.

安達智子(2010)「キャリア探索尺度の再検討」『心理学研究』第81巻,第2号,132139頁.

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)(2008)「学校段階の若者のキャリア形成支援とキャ リア発達―キャリア教育との連携に向けて」NO.104

(12)

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)(2017)「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成

Ⅱ(第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)」NO.191

木村充(2014)「就職時の探求:「大学生活の重点」と「就職活動・就職後の初期キャリアの成否」の 関係を中心に」『活躍する組織人の探求 大学から企業へのトランジション』東京大学出版会  第5章,91116頁.

厚生労働省(令和2年)「令和2年度大学等卒業予定者の就職内定状況(10月1日現在)」( https://

www.mhlw.go.jp/index.html 2021年1月10日参照)

厚生労働省(令和2年)「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」( https://www.mhlw.go.jp/

index.html 2021年1月19日参照)

溝上慎一(2009)「大学生活の過ごし方」から見た学生の学びと成長の検討―正課・正課外のバラン スのとれた活動が高い成長を示す」京都大学高等教育研究 第15号,107118頁.

溝口侑・溝上慎一(2017)「大学生のキャリア意識とロールモデルの関係」『日本青年心理学大会発表 論文集』第25号,5253頁.

文部科学省(令和元年)「平成30年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)」

永野仁(2002)「大学生の就職行動とその成果」『日本労務学会誌』,第4巻,第1号,5663頁.

就職みらい研究所(2019)「就職白書2019」

鹿内啓子(2012)「大学生における親との関係と職業未決定および就活不安との関連」『北星大学文学 部北星論集』第49巻,第1号,111頁.

下村英雄・八幡成美・梅崎修・田澤実(2009)「大学生のキャリガイダンスの効果測定用テストの開 発」『キャリアデザイン研究』Vol. 5,127139頁.

田澤実・梅崎修(2016)「保護者のかかわりと大学生のキャリア意識―保護者の就職活動への関心度 と,学生の満足度に注目して―」『キャリア教育研究』第35号,2127頁.

若松養亮(2012)「決められないのはなぜか」若松養亮・下村英雄(編)『詳解 大学生のキャリアガ イダンス論』金子書房,第3章,2742頁.

保田江美・溝上慎一(2014)「初期キャリア以降の探索:『大学時代のキャリアの見通し』と『企業に おけるキャリアとパフォーマンス』を中心に」『活躍する組織人の探求 大学から企業へのトラ ンジション』東京大学出版会,第7章,139173頁.

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