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歯科保健からみて

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Academic year: 2021

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70巻記念号(23~25)

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㌔A・小児保健の現状と調提言

歯科保健からみて

日本大学松戸歯学部小児歯科

  前 田 隆 秀

畿はじめに

 子どものう蝕は減少し,軽症化していることは厚 生労働省歯科実態調査からも明らかであり,幼児健 診,学校健診においてう蝕経験のない子どもが増加 している。一方,歯科大学病院の小児歯科外来での 最も多い主訴は,う蝕であり,う蝕症の二極化が現 れており,う蝕症に対する啓蒙は,小児保健にとっ て重要であることに変わりはない。う蝕症,歯周疾 患は生活習慣病であり,生活習慣の乱れがこれらの 口腔疾患を発症させることから,健康的な生活習慣 の獲得に導くことが極めて大切である。自分自身の

歯で生活できることは,QOLを高く保つことに繋 がることであり,それは歯を喪失して始めて認識

することである。今,多くの高齢者の口腔内環境は 劣悪な状態であることから歯科保健医療の目標とし て,8020運動が提唱された。高齢者になっても健康

な歯を残し,高齢者のQOLを保つためには,小児

期からの歯・口の健康づくりが基礎をなすことは周 知の事実である。また,見方を変えて,自らの生活 習慣が体に出現するところは口の中である。不良な 生活習慣では,歯垢ならびに歯垢と関連する歯肉炎 が増加するがその出現は,短時間で顕著であり,生 活習慣を改善することで短時間に消失するという特 徴がある。子どもが鏡を使用することで自らの体の 変調に気づき,生活習慣を見直すことによって健康 を創生することができることを歯科保健から提言し たい。また,明眸皓歯といわれるように健康的な白

い歯と美しい歯並びは健康的な美には必須である

が,この美しさを害するものはう蝕と歯周疾患と歯

並びである。最近の研究からう蝕,歯周疾患は局所 的な障害だけでなく呼吸,循環,代謝など全身に影 響することが明らかになってきた。

 生活習慣が健康的であり,健康的な食生活があっ て始めてう蝕のない児童が増加していくことが本質 である。歯・口の健康は,心身の健康のうえに立っ ていなくてはならず乖離しては本末転倒となろう。

そのためには歯科保健は,小児科医,保健師,栄養士,

臨床心理士などの学際的な連携が益々必要である。

謡う蝕・歯周疾患の発生

 う蝕・歯周疾患は環境要因と遺伝要因がかかわり あって発症するが,主たるものは環境要因である。

筆者らは,長年に亘ってマウスを用いて遺伝が関与 することを証明し,そこには唾液が強く関与すると 確信している。遺伝といってもマウスの口腔内を砂 糖づけ状態で実験しており,子どもの生活とは大き くかけ離れているが,そのような状態でもう蝕にな らないマウス系統と重症う蝕になるマウス系統がい る。この研究結果から理解すべきは,両親にう蝕・

歯周疾患がある場合は子どももう蝕・歯周疾患にな りやすいと認識して,しっかりとう蝕予防をしなく てはならないことである。

臨う蝕原性細菌と母子感染

日本大学松戸歯学部小児歯科

〒271-0062千葉県松戸市栄町西2-870-1

 う蝕・歯周疾患の発生にはバイオフィルム(歯垢)

という歯の表面に多数の細菌が生息するネバネバの フィルムが必要となる。う蝕を発症させる細菌(う 蝕原性細菌)は,ミュータンス連鎖球菌であり,砂 糖を栄養源としている。したがって砂糖の摂取がな ければ,う蝕は発症しない。当然,ミュータンス連 鎖球菌が子どもの口に生息していなければう蝕は発

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小児保健研究

症しない。子どものミュータンス連鎖球菌は主に母 親の唾液を介して伝播することが,子どものミュー

タンス連鎖球菌の血清型ならびに細菌の分類に用 いることができるバクテリオシンパターン(bacteri-

ocin;細菌の産生する抗菌物質)が母親のそれらと 一致することが多いことで明らかになった。ミュー タンス連鎖球菌が子どもの口腔内に定着するには要 件があり,母親の唾液中にミュータンス連鎖球菌が 多量に存在し,日頃,子どもの早い時期からの砂糖 摂取が多いと子どもの歯表面のバイオフィルムでの

ミュータンス連鎖球菌の定着は容易に成立する。

塾ミュータンス連鎖球菌の感染の時期を遅らせる  良好な母子関係を築くには触れ合いが大切であ

り,ミュータンス連鎖球菌の感染を考えていたら

触れ合いが不足してしまう。たとえ母からの唾液が 子どもの口に入ってもミュータンス連鎖球菌の定着

を遅らせる方法は,母親父親のう蝕歯をしっかり

と治療して感染巣をなくし,歯ブラシを励行して両 親のミュータンス連鎖球菌数を減少させることであ る。育児にかかわる人々は,歯・口をきれいにして 欲しい。一方,すべての子どもはいずれミュータン ス連鎖球菌に感染するが,低年齢時期に感染するほ

ど歯質が未成熟なため,う蝕は発症し易くなる。

塾イオン飲料水とう蝕

 イオン飲料水は身体によいと考えている人々が いるが,イオン飲料水のpHは3.6~4.6と低く,

pH5。4以下ではエナメル質の脱灰が起きるため,習

慣化するとう蝕の原因になる。筆者らはマウスに

ミュータンス連鎖球菌を感染させないでpHの異な

るイオン飲料水を離乳後28日間,摂取させたところ

pHが4.2においても脱灰がみられ, pH:3.8では,エ

ナメル質ならびに象牙質までが強く脱灰することを 勿伽。で証明できた(図1)。

陸「生きる力」を育む 初期のエナメル質と歯肉の変化

 だらだら食い,ジャンクフードの摂りすぎ,イオ ン飲料永の飲み過ぎ,夜更かしと夜間の間食,など の生活習慣の乱れは,心身の健康を害する。しかし,

その生活習慣が体の症状として出現するには長時間 を要する。しかし,口・歯には短時間でその影響が 発現し,かつ生活習慣を良好にすることによって短 時間で改善できることから,自分の健康は自分で創 れる経験を通じて,自律的に健康を創る重要性を認 識して「生きる力」を育む良き教材となるのが歯・

口である。

 エナメル質表面は,バイオフィルムによって,そ

の多寡にかかわらず被覆され常にCaが放出される

pH(5.5)の乳幼児用イオン飲料 pH(3.8)の乳幼児用イオン飲料

pH(4.2)の乳幼児用イオン飲料

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       噛,

精製水

図1 pHの違いによる乳児用イオン飲料と歯の脱灰 Presented by Medical*Online

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「脱灰」と唾液中のCaが沈着する「再石灰化」が 起きている(図2)。エナメル質表層は再石灰化が 生じ易く,エナメル質脱灰の初期はエナメル質の

表層下脱灰をする。しかし,脱灰が再石灰化を上回 るとエナメル質表面は,少し白く濁って見えるよう になり,エナメル質表層に脱灰がみられる(図3)。

また歯と歯肉の境目にもバイオフィルムは蓄積しや すいため,種々の細菌の繁殖によって歯肉に炎症が 起き,臨床的に歯肉の辺縁が赤く少し腫れる。この 状態が長期化すると,う蝕になるだけでなく,中等 度から重度の歯肉炎となり,さらに歯周組織を破壊 する歯周炎と進行する。しかしながら,歯の表面の 少しの白濁やわずかな歯肉の赤みは生活習慣を改善 して,歯ブラシを励行することによって短時間でも との健康な白い歯とピンク色の歯肉に戻る。是非,

小児保健に携わる人々は認識して欲しい。

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図3 エナメル質の表層脱灰

脱灰層

象牙質

エナメル質

う蝕発生 エナメル質表面 バイオフィルム

脱灰層

餐ゆ

●ナ

再石灰化層

(表層下脱灰)

ロ腔環境 不良

口腔環境

良好とフッ素塗布

●ミュータンスレンサ球菌●桿菌

〉一抗体       × 抗菌物質

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再石灰化 十十ドノ・

健全歯に戻る

図2 う蝕発症と再石灰化

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