70巻記念号(19~20) 19
陶A・小児保健の現状と課題提言
学校保健からみて
女子栄養大学
小 林 正 子
学校保健における子どもの健康課題は,肥満,痩 せ,体力低下,う歯,近視アレルギー疾患,朝食 欠食,いじめ,不登校,喫煙薬物乱用,性の問題 など実にさまざまであるが,これらのほとんどは小 学校入学以前の,幼少期の生活習慣に起因すると考 えられるものが多い。たとえば肥満やう歯,朝食 欠食などは,早寝・早起き・朝ご飯に代表されるよ
うな規則的な生活リズムが確立されないことに根本 的な原因があり,その他の問題も幼少期の成育環境 や発達課題の達成送主に関連しているのではないか
と思われる。
しかし,こうした幼少期の子どもの状態は学校に はほとんど伝わらない。また何らかの問題の芽がす でに内在していることも学校は把握できないまま子
どもを受け入れることになる。このため,母子保健,
小児保健,学校保健の連携の必要性が叫ばれている ものの,その連携がうまくいっている地域は数少な い現状である。しかし,この連携の鍵を握るのはほ かでもない小児保健の関係者,すなわち小児科医,
保健師,保育士,栄養士,歯科医,歯科衛生士,養 護教諭そして行政の担当者などである。学校保健の 側から連携を求めるときには,すでに問題が顕在化 して大きくなってしまった後になるかもしれない。
そこで,小児保健の側から学校へと働きかけ,子ど もの成長に沿って一貫して見守るシステムをつくる ことが重要になってくる。
こうした連携を考える際子どもの発育は絶好の 材料である。子どもの発育は途切れることがないの であるから,出生から継続して発育状況をグラフに 表して視覚的にとらえる取り組みがなされるように
女子栄養大学発育健康学研究室
〒350-0288埼玉県坂戸市千代田3-9-21
なれば,母子保健・小児保健・学校保健:が自然な形 でつながることが期待できる。そのキーパーソンは 小児科医であろう。小児科医が,子どもの心身の健 康状態は発育に現れることを確認し,発育状況をグ ラフに表すことで健康管理につながることを保護者 に伝え,また保育園,幼稚園,それらを担当する行 政そして学校に伝えていけば,子どもを継続して 見守るシステムが構築できるものと思われる。
子どもの発育状況は,出生時からほとんどの親が 母子健康手帳を利用してグラフに表しているが,保 育園や幼稚園に入るとこまめに計測しても記録だけ になってしまい,グラフとして表すことは少ない。
これではせっかく計測した身長・体重などが健康情 報としてあまり役に立たない。そこでまずこの状態 を打開し,計測値をグラフに表すことを啓発したい。
グラフは紙でもよいが,基準の成長曲線上にプロッ トできるものがインターネットでも手に入るため,
保護者はそれを利用して計測値を入力しグラフ化す る。そうしてファイルを作成しておけば,必要なと きに印刷して病院などに持参することができる。一 方で行政の担当者は,母子健康手帳の使用期間の延 長や電子化も検討する必要がある。
発育グラフは子どもが健康に発育していることの 確認になり,もし何か異常があれば早期発見するこ ともできる。発育を継続して見ていくことで,疾病 肥満,痩せ(摂食障害の発見),ストレス,成育環 境の変化等に気づくことができる。大きい小さいは 子どもの個性であるが,発育には心身の状態が反映 されるので,生活リズムの乱れた日常を送っている 場合,あるいは何らかの異常がある場合は,グラフ に大きな変動が出現するだろう(図1)。その反対 に望ましい生活リズムを維持しているならば健やか
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20
身長(cm)
130 120 110 100 90 80 70 60 50 40
0~6歳女子身長・体重発育曲線()
30
0 1 2 3 4 5
図1 体重変動が大きい女児
体重(㎏)
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06 (歳)
に発育する様子がグラフからみてとれるはずである
(図2)。学校に入れば年に3回程度の計測となるが,
それでもグラフに表せば健康情報として活用でき る。夏休みに体重がとくに増えるようであれば肥満 になる危険があるため,健康教育や保健指導が視覚 的に可能となる(図3)。
ところで,発育状況を学校につなぐことは個人情 報保護という観点から難しいと思われるかもしれな い。個人の情報は取り扱いには十分気をつける必要 があることは言うまでもないが,そのことと子ども 一人ひとりの健康を守ることとは全く別の次元であ
る。個人情報保護iに細心の注意を払いながら,子ど もの健康に資することは実行されねばならない。問 題が起きてから右往左往しても始まらない。さまざ
まな健康問題にはさまざまな方法で多くの人々が関 わって努力しているが,そのもっとも基本的な部分 として子どもの発育をグラフに表し健康情報として 活用していく方法があるということを小児保健から 学校保健に発信し,広く啓発していくべきであると 考える。
小児保健研究
身長(cm)
t30 120 110 100 90 80i
70 60 50 40 30
0 図2
0~6歳男子身長・体重発育曲線()
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1
体重
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1 2 3 季節変動はみられるが,
成長している男児
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45 40 35 30 25 20 15 to 5
0 4 5 6 (歳)
とくに大きな変動なく
0~18歳男子身長・体重発育曲線()
身長(cm) 体重(㎏)
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0123456789101112131415161718(歳)
図3 肥満傾向が強まる小学生男子(毎年9月に体重 が大幅増加していた)
一90.
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