絡み目の character variety と bifurcation locus
太田 沙樹
(奈良女子大学)∗ 2014年
1月
31日
概 要
複素平面上の変換には一次分数変換と呼ばれるものがあり、その中でも2 つの一次分数変換とその逆変換及び合成変換全体によって得られる集合のこ とを2元生成一次分数変換群(以下F2)と呼ぶ。F2からSL(2,C)への凖同型 写全体の集合をHom(F2, SL(2,C))とする。このときHom(F2, SL(2,C))に はSL(2,C)が共役により作用しており、この作用による商空間χをcharacter varietyと呼び、以下のように表される。(ここで2つの一次分数変換を行列 で表したものをa, bとした時、x=T r(a), y =T r(b), z =T r(ab)で(x, y, z) は求められる。)
χ = Hom(F2, SL(2,C))//SL(2,C)
= {(x, y, z)|x, y, z ∈C}
また絡み目群からSL(2,C)への凖同型写像を考えることにより、絡み目群の character varietyがすでに研究されている。そこで本研究では3つの絡み目 を対象に具体的に計算機実験を行い、様々な比較をすることで一次分数変換 の複雑さについて考察していく。一次分数変換群の複雑さをはかる指標とし て、本研究ではBQ条件、Lyapunov exponent、Bifurcation locusを考えて いく。Lyapunov exponentとは力学系においてごく接近した軌道が離れてい く度合いを表す量のことであり、L(ρ) = lim
n→∞
1 n
∫
G
log||ρ(g)||dµn(g)と定義 されている。またBifurcation locusは、力学系においてパラメータの小さな 動きによって一次分数変換のタイプ(eliptic,parabolic,loxodromic)が変化す る写像の軌跡のことである。
研究内容としては、まず絡み目のcharacter varietyに対応する2×2行列 とその逆行列を求め、求めた行列をランダムに発生させる。そしてそこから Lyapunov exponentとBifurcation locusを求めていく。
本研究では以下の5つの比較を行い、結果を考察する。
• BQ条件とZ set
• BQ条件とLyapunov exponent
• それぞれの目とLyapunov exponent
• CASE1とCASE2
• 様々な確率
∗〒630-8506 奈良市北魚屋西町 奈良女子大学 人間文化研究科
e-mail:[email protected]
1. 研究背景
まず初めに研究背景として基礎知識の説明をする。
1.1. 一次分数変換
複素平面上での平行・回転・拡大・縮小の変換は
T(z) =az+bと表すことが出来る。
これに変転を加えたものを一次分数変換といい、
T(z) = az+bcz+d
と表される。
(a,b,c,d
は
ad−bc= 1を満たす任意の複素数) これを
2×2行列
T =( a b c d
)
に対応させる。
T
全体からなる集合を以下で定義する
SL(2,C) ={(
a b c d
)
a, b, c, d∈C ad−bc= 1
}
行列
Tの対角成分の和を
traceといい、T r(T
) =a+dと表す。
一次分数変換は
traceの値によって以下の3種類に分類される。
• eliptic・
・ ・Tr(T) の値が-2 から
2のとき
• parabolic・
・ ・Tr(T) の値が+2,-2 のとき
• loxodromic・
・ ・それ以外のとき
1.2. character variety
2
つの生成元
X, Yからなる
2元生成自由群
(F2 =< X, Y >)を考える。F
2から
SL(2,C)への凖同型写像を
ρとし、その凖同型写像全体の集合を
Hom(F2, SL(2,C))とする。
Hom(F2, SL(2,C))
には
SL(2,C)が共役により作用している。
SL(2,C)
が共役により作用するとは、
c∈SL(2,C)においてρ(a)∈SL(2,C)をcρ(a)c−1とすることである。
この作用による商空間
χを
character varietyと呼び、以下のように表す。
χ = Hom(F2, SL(2,C))//SL(2,C)
= {(x, y, z)|x, y, z∈C}
このとき次の定理が知られている。
1.1 定理
χ
は
C3と同一視出来る
ρ →(x, y, z) = (trρ(X), trρ(Y), trρ(XY))∈C3
1.3. 2成分代数的2橋絡み目
絡み目の中でも
2成分代数的
2橋絡み目と呼ばれるものは
521,622,623の
3種類しかない。
521
は
2成分
5交点絡み目
622,623
は
2成分
6交点絡み目 である。(図
1.1,1.2,1.3:http://katlas.org.wiki)図
1.1: 521図
1.2: 622図
1.3: 623 2元生成群
G521, G62
2, G62
3
は
521,622,623の補空間の基本群である。
Hom(G52
1, SL(2,C))、Hom(G62
2, SL(2,C))、Hom(G62
3, SL(2,C))には SL(2,C)
が共役 により作用しており、これは
SL(2,C)が共役により作用している
Hom(F2, SL(2,C))の部分集合である。
521
の
character varietyは以下の多項式を満たす
C3の部分集合である。
F1 =P1×Q , G1 =P1×(y+ 2)×(y−2)
ただし
P1 =z3−xyz2 + (x2+y2−2)z−xyQ=x2+y2+z2−xyz−4
622
の
character varietyは以下の多項式を満たす
C3の部分集合である。
F2 =P2×Q , G2 =P2×(y+ 2)×(y−2)
ただし
P2 =z4−xyz2 + (x2+y2−3)z2 −xyz + 1 Q=x2+y2+z2−xyz−4623
の
character varietyは以下の多項式を満たす
C3の部分集合である。
F3 =P3×Q×(x+y+z−xyz−3) ,G3 =P3×(x+y+z−xyz−3)×(y−2)×(y+ 2)
ただし
P3 =z3−xyz2 + (x2+y2−1)z−xyQ=x2+y2+z2−xyz−4
1.4. BQ条件
BQ
条件とは
Bowditchと
Tan-Wan-Zhangにより導入された、2 元生成一次分数変換群 の複雑さを測る指標の一つである。これは
Farey triangulationと
Markov mapを用い て定義される。Farey triangulation とは単位円板を無限個の三角形に分割する方法であ る。(図
1.4)ここで
character variety(x, y, z) ∈ χが与えられたとき、markov map(φ
x,y,z : V → C)を以下で定義する。V は
Farey triangulationの頂点の集合である。
φx,y,z(v1) = x, φx,y,z(v2) =y, φx,y,z(v3) =z
その他の頂点は以下によって決まる。(図
1.5)φx,y,z(w4) = φx,y,z(w1)φx,y,z(w2)−φx,y,z(w3)
図
1.4: F areytriangulation図
1.5: M arkovmapこれらをふまえて
BQ条件を以下で定義する。
1.1 定義
Markov map
の初期値が
(x, y, z)となる
Farey triangulationの頂点を
v ∈Vとする。
以下の条件を満たすときこの
character varietyの点は
BQ条件を満たすという。
• φx,y,z(v)
が実数で、
−2< φx,y,z(v)<2となる
vが
1つもない
• |φx,y,z(v)|<2
となる
vが有限個である
1.5. Lyapunov exponent
力学系においてごく接近した軌道が離れていく度合いを表す量を
Lyapunov exponentと呼ぶ。これは距離が大きくなると値が大きくなる。
また一次分数変換群の
Lyapunov exponentは
Deroin-Dujardinにより導入されてお り、F
2の
Cayley graph上の
Random walkを用いて計算される。
1.5.1. cayley graph
2
元生成自由群
(F2 =< X, Y >)を考える。このとき
F2の
Cayley graphを
Γ(F2)と すると、Γ(F
2)の頂点の集合
V(Γ(F2))は
F2と同一視される。また
Γ(F2)の辺の集合
E(Γ(F2))は、(g
1, g2)から成り立つ。
以下の図
1.6は、群
Gが
F2 =< x1, x2 >の場合の
Cayley graphの例である。
図
1.6: Γ(F2)1.5.2. Random walk
Random walk
とは、次に現れる位置が確率的に無作為に決定される運動である。本研
究では
Cayley graph上での
Random walkを考えていく。
本研究では次の
2つの場合を考える。
• CASE1
µ({X}) = µ({Y}) = µ({X−1}) = µ({Y−1}) = 14
となる場合を考える。µは確率 測度 である。
図
1.6でスタート地点を真ん中の
Eとして、1 回目の移動で
1
4
の確率で
Xに移動し、
1
4
の確率で
Yに移動し、
1
4
の確率で
X−1に移動し、
1
4
の確率で
Y−1に移動する。
2
回目以降は前の移動で移動した場所がスタート地点となる。
• CASE2
µ({X}) = µ({Y}) =µ({XY}) =µ({X−1}) =µ({Y−1}) = µ({Y−1X−1}) = 16
となる場合を考える。
図
1.6でスタート地点を真ん中の
Eとして、1 回目の移動で
1
6
の確率で
Xに移動し、
1
6
の確率で
Yに移動し、
1
6
の確率で
XYに移動し、
1
6
の確率で
X−1に移動し、
1
6
の確率で
Y−1に移動し、
1
6
の確率で
Y−1X−1に移動する。
2
回目以降は前の移動で移動した場所がスタート地点となる。
CASE2
では
XYと
Y−1X−1の場合は
2つ分進むことになり、このことから同じ
回数移動したとすると
CASE1より
CASE2の方がよりスタート地点から遠くに
いくと考えられる。
1.5.3. Lyapunov exponent
g
を群
Gの要素とし、ρ
∈Hom(F2, SL(2,C))とする。このとき
Lyapunov exponentは 次の式で定義される。
1.2 定義
L(ρ) = lim
n→∞
1 n
∫
G
log||ρ(g)||dµn(g)
ここで
|| ||は
operator normであり、
||γ|| =√A∗A
と表される。これは
A∗Aのスペ クトル半径の固有値の絶対値の最大値の平方根を表している。ここで
A∗は
Aの転置共 役である。
また
µn(g)は
n回移動したときの
µの
convolution powerである。これは
n回移動した ときに文字
gの場所にいる確率のことである。
また
Lyapunov exponentに関しては次の定理も知られている。
1.2 定理 ([4]Theorem2.10)
ρ ∈ Hom(F2, SL(2,C))
とする。このときほとんど全ての
F2の要素の列に対して次の 等式が成立する。
L(ρ) = lim
n→∞
1
nlog|tr(ρln(g))|
ここで
gは
F2の要素列で、l
n(g)は
gの最初の
n個の列である。
1.6. Bifurcation current
Bifurcation current Tbif
は
L(ρ)を使って定義される。
Tbif
については以下の定理が知られている。
1.3 定理
1
2n ×[Z(ln(g), t)] →
n→∞Tbif
ここで
tは複素数である。
以下、Z(g, t) =
{(x, y, z)|tr2ρx,y,z(g) = t}となるところを
Zsetと呼ぶことにする。本
研究では
t= 4として計算していく。
1.7. Bifurcation locus
力学系において、パラメータの小さな動きによって一次分数変換のタイプ(eliptic,parabolic,loxodromic) が変化する写像の軌跡を
Bifurcation locusと呼ぶ。
1.1 系 ([4]Corollary 2.7)
t∈[0,4]
において、tr
2ρλ(g) = tとなるような
g ∈Gが存在し、
λ → tr2ρλ(g)
のタイプが一定ではないような
λ = (x, y, z)の部分集合は
Bifurcation locus内で稠密である。
1.4 定理 ([4]Theorem3.13)
(G, µ, ρ)
が
admissible familyであり、
∫Gexp(σlength(g))dµ < ∞
となるような
σ > 0が存在するとき以下のことが言える。
Bif urcationlocus: Bif =Supp(Tbif)
ここで
admissible familyは群
G,確率測度
µ,凖同型写像
ρが以下の条件を満たす
(G, µ, ρ)のことである。
•
凖同型写像
ρが
non-elementaryである。
•
群
G上の確率測度
µが以下の式を満たすものとして
Gを生成する。
∫
G
length(g)dµ <∞
non-elementary
であるとは、一次分数変換群において固定点と集積点が
3点以上あ
るもののことを言う。また
length(g)は文字
gの最小限の長さのことである。
2. 研究目的
2
元生成一次分数変換群の複雑さを理解することが本研究の大きな目的である。
これまで
2元生成一次分数変換群の複雑さを測る指標として
BQ条件や
Lyapunov expo- nent、Bifurcation locusの説明をした。しかし
BQ条件と
Lyapunov exponentや
Bifur- cation locusとの関係性はまだ知られていない。そこで本研究では
Lyapunov exponentや
Biburcation locusの可視化を行い、以下のような視覚的な比較を行うことで
2元生 成一次分数変換群の複雑さについて考察していく。
1. BQ
条件と
Bifurcation locusの関係性を理解する。
t∈[0,4]
において、
tr2ρλ(g) = tとなるような
g ∈Gが存在するところは
Bifurca-tion locus
である。よって前述の
BQ条件とあわせて考えると、BQ 条件を満たさ
ないところが
Bifurcation locusであると予想される。
2. BQ
条件と
Lyapunov exponentの関係性を理解する。
BQ
条件を満たさないところは
traceの値が小さくなるところが多く、満たすとこ ろは
traceの値が小さいものが少ないところである。また
Lyapunov exponentに ついては定理
1.2が成立する。よってこれらのことから、BQ 条件を満たすとこ
ろではの
Lyapunov exponentの値は大きくなり、満たさないところでは小さくな
ると予想される。
3. 3
つの代数的
2橋絡み目における
Lyapunov exponentを理解する。
BQ
判定を行った結果、それぞれ違った形をしていたので、Lyapunov exponent の違った様子が見られるのでないかと予想する。
4. CASE1
と
CASE2での
Lyapunov exponentの値の違いを理解する。
前述にあるように、Lyapunov exponent は力学系においてごく接近した軌道が離 れていく度合いを表す量であり、距離が大きくなるほど値が大きくなる。また
CASE1
よりも
CASE2の方が同じ回数移動させた場合より遠くにいくと予想出来
る。よってこれらのことから、CASE1 よりも
CASE2の方が
Lyapunov exponentの値は大きくなると予想する。
5.
確率を変えて、Lyapunov exponent の値の動きを観察する。
確率は偏りをつけた場合よりも均等にした場合の方が、同じ回数移動させた場合、
より遠くにいくと考えられる。よって
Lyapunov exponentの値は偏りがある場合
に小さくなると予想される。
3. 研究内容
この章では研究内容を述べる。
3.1. 3つの絡み目
•
絡み目
521P1 =z3−xyz2+ (x2+y2 −2)z−xy Q1 =x2 +y2+z2−xyz−4
本研究では
{(x, y, z)|P1Q1 = 0, P1(y+ 2)(y−2) = 0}
において、z
= 3、yをパラメータとし、x は
P1 = 0を解いて
(x, y, z)を求める。
その
(x, y, z)に対し、行列
X, Yで
T r(X), T r(Y), T r(X×Y) = (x, y, z)となるも のを計算し、X, Y それぞれに対応する一次分数変換を求める。
BQ
判定を行った結果が以下の図である。
図
3.7:色のついているところが
BQ条件を満たすところで、色のついていないところが
満たさないところである。また
2つの一次分数変換を求める際に
2次方程式を解
いて
xを計算しており、2 つの解それぞれを色分けしている。(後述の絡み目
622、
623においても同様である)
•
絡み目
622P2 =z4−xyz2+ (x2+y2 −3)z2−xyz+ 1 Q2 =x2 +y2+z2−xyz−4
本研究では
{(x, y, z)|P2Q2 = 0, P2(y+ 2)(y−2) = 0}
において、z
= 3、yをパラメータと し、x は
P2 = 0を解いて
(x, y, z)を求める。その
(x, y, z)に対し、行列
X, Yで
T r(X), T r(Y), T r(X×Y) = (x, y, z)となるものを計算し、X, Y それぞれに対応 する一次分数変換を求める。
BQ
判定の結果は以下の図である。
図
3.8:•
絡み目
623P3 =z3−xyz2+ (x2+y2 −1)z−xy Q3 =x2 +y2+z2−xyz−4
本研究では
{(x, y, z)|P3Q3(x+y+z−xyz−3) = 0, P3(x+y+z−xyz−3)(y+ 2)(y−2) = 0}
において、z
= 3、yをパラメータとし、x は
P3 = 0を解いて
(x, y, z)を求める。
その
(x, y, z)に対し、行列
X, Yで
T r(X), T r(Y), T r(X×Y) = (x, y, z)となるも のを計算し、X, Y それぞれに対応する一次分数変換を求める。
BQ
判定の結果は以下の図である。
図
3.9:3.2. 2つの一次分数変換の計算
character variety(x,y,z)
か
2つの一次分数変換に対応する
2×2行列
ρ(X), ρ(Y)は以下 のようにして計算する。(文献
[5])1. ta =T r(X) = x tb =T r(Y) =y
tab =T r(XY) =z
と定める。
2. tc =t2a+t2b +t2ab−xyz−2
とおく
3. Q=√2−tc
とおく
4. |tc+IQ√tc + 2| ≥2
ならば
R=√ tc+ 2|tc−IQ√
tc+ 2| ≥2
ならば
R=−√tc + 2
とする
5. z1 = (tab−2)(tb+R)tbtab−2ta+IQtab
とおく
6.
行列
A,Bをそれぞれ次のようにして求める
ρ(X) =
ta 2
tatab−2tb+ 2IQ (2tab+ 4)z1
(tatab−2tb−2IQ)z1
2tab−4
ta
2
ρ(Y) =
tb −IQ 2
tatab−2ta+IQtab (2tab+ 4)z1 (tbtab−2ta+IQtab)z1
2tab−4
tb +IQ 2
3.3. ランダムに行列を生成する
無限にランダムに文字を発生させ、先頭の
n個を左から順にかけていく。そして出来 た文字列に対応する行列を計算する。
例えば
n = 4, g1 =X, g2 =Y, g3 =X−1, g4 =Y−1の場合を考えると、
l4(g) = Y−1X−1Y X
となり、この文字列に対応する行列は
ρ(l4(g)) = ρ(Y−1)ρ(X−1)ρ(Y)ρ(X)となる。
4. 研究結果
この章では研究結果について延べ、考察を行う。
4.1. (研究1)BQとZ set
BQ
と
Z setに関係性があるのかを調べる。
x
軸が
yの実部、y 軸が
yの虚部で、青と紫
(xの
2つの解それぞれを色分けしている) が
tr2(ρx,y,z(g)) = 4
になるところである。n は
2000として計算している。
図
4.10:絡み目
521図
4.11:絡み目
622図
4.12:絡み目
623この結果から、予想とは違い今回調べた範囲では、3 つの絡み目全てでほとんどの点
が
Bifurcation locusになると考えられる。
4.2. (研究2)BQ条件とLyapunov exponent
BQ
と
Lyaounov exponentに関係性があるのか調べる。
x
軸が
yの実部、
y軸が
yの虚部、z 軸が
L(ρ)で、青と紫が
Lyapunov exponentである。
Lyapunov exponent
は
n = 5000として計算している。
図
4.13:絡み目
521図
4.14:絡み目
622図
4.15:絡み目
623この結果から
Lyapunov exponentは
BQ条件を満たすところでは値が大きくなり、満
たさないところでは値が小さくなる傾向にあると考察される。
4.3. (研究3)それぞれの絡み目とLyapunov exponent 3
つの絡み目の
Lyapunov exponentの値を比較をしていく。
上の図
3つはそれぞれ
x軸方向から見た図で、
下の図は
y軸方向から見た図である。
図
4.16: 521図
4.17: 622図
4.18: 623図
4.19: 521図
4.20: 622図
4.21: 623この結果から、3 つの絡み目では大きな変化はないことがわかった。いずれも
Lya-punovexponent
の値は上の赤のシートは真ん中一ヶ所が小さくなっていて、下の青の
シートは端の
2ヶ所が小さくなっている。4.4. (研究4)CASE1とCASE2
CASE1:µ({X}) = µ({Y}) = µ({X−1}) =µ({Y−1}) = 14
と
CASE2:µ({X}) = µ({Y}) =µ({XY}) =µ({X−1}) = µ({Y−1}) =µ({Y−1X−1}) = 16
それぞれの場合について
Lyapunov exponentの値を調べ、違いを考察していく。
CASE1
は
n= 5000、CASE2は
n= 1000として計算している。
図
4.22: CASE1 521図
4.23: CASE2 521図
4.24: CASE1 622図
4.25: CASE2 622図
4.26: CASE1 623図
4.27: CASE2 623この結果から、確率を均等にした場合、Lyapunov exponent の値に大きな違いがな いことがわかった。
そこで次は確率を変えて調べていくことにする。
4.5. (研究5)様々な確率
2
つの
CASEで確率を変えて
Lyapunov exponentの様子の変化を調べていく。
本研究では
3つの絡み目で実験を行っているが、研究
5に関しては
521のみを掲載する。
•
絡み目
521 , CASE1図
4.28: µ({X}) =1
20,µ({Y}) = 209
図
4.29: µ({X}) =2
20,µ({Y}) =208
図
4.30: µ({X}) =3
20,µ({Y}) = 207
図
4.31: µ({X}) = 204,µ({Y}) =206
図
4.32: µ({X}) =5
20,µ({Y}) =205
図
4.33: µ({X}) = 206 ,µ({Y}) = 204図
4.34: µ({X}) =7
20,µ({Y}) = 203
図
4.35: µ({X}) = 208 ,µ({Y}) = 202図
4.36: µ({X}) =9
20,µ({Y}) = 1020
この結果から、CASE1 では確率に偏りがある場合に
Lyapunov exponentの値は
より小さくなると考えられる。
•
絡み目
521 , CASE2図
4.37: µ({X}) = 121,µ({Y}) =121 ,µ({XY}) =124
図
4.38: µ({X}) = 121 ,µ({Y}) = 122 ,µ({XY}) = 123図
4.39: µ({X}) = 121 ,µ({Y}) = 123 ,µ({XY}) =122図
4.40: µ({X}) = 121,µ({Y}) =124 ,µ({XY}) =121
図
4.41: µ({X}) = 122 ,µ({Y}) = 121 ,µ({XY}) = 123図
4.42: µ({X}) = 122 ,µ({Y}) = 123 ,µ({XY}) =121図
4.43: µ({X}) = 123 ,µ({Y}) =121 ,µ({XY}) =122図
4.44: µ({X}) = 122 ,µ({Y}) = 122 ,µ({XY}) = 121図
4.45: µ({X}) = 124 ,µ({Y}) = 121 ,µ({XY}) = 121この結果から
CASE2では、確率を変化させると
Lyapunov exponentの値は変化
するが、CASE1 のような規則性は見られないと考えられる。
5. 考察と今後の課題
ここでは本研究においての考察と今後の課題を述べる。
5.1. 考察
1.
今回調べた範囲・条件では予想とは違い、代数的
2橋絡み目ではほとんどの点が
Bifurcation locusになることがわかった。BQ と
Bifurcation locusでは調べる範 囲が異なり、BQ 判定を行う範囲は
Bifurcation locusの判定を行う範囲の部分集 合になっている。当初この範囲がほぼ同じになると考えていたが、予想とは違い 範囲にかなり差があることがわかった。
2. BQ
条件を満たさないところでは、Lyapunov exponent の値は小さくなる傾向に あることがわかった。しかし
BQ条件を満たさないところでも値が小さくなって いないところもあり、BQ と
Lyapunov exponentに明確な関係性は見られなかっ た。また、一次分変換群は幾何系と力学系の両方から考えることが出来る。よっ て今回の結果から、片方だけではその複雑さを理解することが出来ず、幾何系と 力学系それぞれで違った振る舞いをすることがわかった。
3. Lyapunov exponent
は
3つの代数的
2橋絡み目では大きな変化は見られなかった。
4.
確率を均等にした場合は
CASE1と
CASE2では
Lyapunov exponentの値の変化 は見られなかった。
5. Lyapunov exponent
は確率を変えると値が変化し、確率に偏りがある場合はCASE1 より
CASE2の方が大きくなった。また
xの
2つの解
(赤・青2枚のシート) で、全 く別の動きをすることがわかった。
5.2. 今後の課題
•
本研究では
BQ判定や
Lyapunov exponentの計算を実部、虚部それぞれ-4 から
4までで行っている。これはランダムに行列を発生させ、順に掛け算を行っていく ため値が大きくなりすぎるためである。よって範囲を大幅に広げるにはどのよう にするべきか、またその場合どのような動きをするのかを調べることが今後に課 題になると考える。
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今回の実験で一次分数変換群は幾何系と力学系それぞれで違った振る舞いをする ことがわかったので、今後は双方からアプローチすることでその複雑さについて さらに研究していく必要がある。
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今回の実験で確率を変えると
Lyapunov exponentの値が変化することがわかった
ので、その変化の細かい動きや規則性について今後考察する。
参考文献
[1] Francis Bonahon
“Low-Dimensional Geometry”
American Mathematical Society(2009) [2] SHINYA HARADA
“CANONICAL COMPONENTS OF CHARACTER VARIETY OF ARITHMETIC TWO BRIDGE LINK COMPLEMENTS”
arXiv:1112.3441v2
[3] Ser Peow Tan,Yan Loi Wong and Ying Zhang
“Generalized Markoff maps and McShane’s identity”
Advances in Mathematics 217(2008) 761-813 [4] B.Deroin,R.Dujardin
“Random walks,Kleinian groups,and bifurcation currents”(2012) [5] David Mumford,Caroline Series,David Wright
“INDRA’S PEARLS”
CAMBRIDGE Univ,Press(2002) [6] 谷口里奈
“Primitive stableの判定アルゴリズムとその応用” 平成22年修士論文
[7] 大森万梨子
“Character varietyにおけるBowditch空間の補集合について” 平成24年修士論文