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住民共同出資施設を核とした地域コミュニティの発展過程に関する研究 -ソウル市におけるソンミサン・マウル(村) を対象として- [ PDF

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Academic year: 2021

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とで、発祥から現在までの発展過程と移転の現況、村 の空間上の配置を表現したマップデータを作成する。 そこで既存のコミュニティの上に新たなコミュニティ の生成過程や定着要因、地域コミュニティに与えてい る影響を明らかにする。 2. ソンミサン・マウルの歴史 2.1 ソンミサン・マウルの概要  ソンミサン村はソウル市麻浦区城山1洞に位置して いる城山周辺の半径 1km 以内に共同体文化を形成して いる村である ( 図 1)。ソンミサン村は地域的に明確 に区画されたり、 行政区域の特定領 域を意味しておら ず、物理的な空間 の境界なしに社会 的関係によって形 成 さ れ た 地 域 コ ミュニティがネッ トワークの形で連結されて拡張している共同体であ る。1994 年、地域住民 35 世帯が主体となって韓国初 の共同育児協同組合を設立し、城山周辺に人々が移住 することになり、教育を契機に強い連帯感をもとに形 成された。現在、村の人口は約 1200 人と推測される。 2.2 マウルの形成と発展  村の形成過程は①共同育児協同組合の形成以前②共 同育児合同組合が設立された初期③村の形成期④村の 拡張期⑤村の転換期の 5 段階に区分できる(図 2)。 3. 住民共同出資施設の特徴 3.1 住民共同出資施設の現況  ソンミサン村は必要な施設を住民が直接資金を共同 出資して共同体施設を運営しているのが独特な点であ る。2015 年、現地調査を実施して、現地点で、37 ヶ

住民共同出資施設を核とした地域コミュニティの発展過程に関する研究

ソウル市におけるソンミサン・マウル ( 村 ) を対象として

-李 春炫 21-1 1.はじめに 1.1 研究の背景  1982 年、韓国の第 5 共和国* 1 は「幼児教育振興法」 * 2 という、すべての幼児教育機関を幼稚園やセマウ ル幼児園* 3に二元化する法を制定して、様々な形の 保育園と保育所の制度圏を掌握し、運営権と独自性を 剥奪した。このような社会的背景により現実問題に対 する危機感が高まり、 育児問題を共同で解決するた め、1994 年にソウル市に住民が主体となって、住民 の資本で共同育児協同組合を形成してまちづくりを持 続するソンミサン・マウル (以下、ソンミサン村)が 登場するようになった。2015 年現在、村の住民が自 ら生産や経済活動をしながら、様々な共同体施設を運 営している。最近ではソンミサン村の影響でまちづく りに対する関心が高まっており、ソウル市と市民団体 もソンミサン村をベンチマーキングしてまちづくりを 推進している。よって今後、多様な村共同体が形成さ れることが期待される。 1.2 研究の目的  本研究は、ソンミサン村の形成過程に現れた住民共 同出資施設に着目し、施設の出資方式の類型とネット ワーク構造を把握する。また、村のコミュニティの成 立と変遷過程、既存の地域コミュニティの中に定着可 能だった要因を明らかにし、よって今後のネットワー ク型まちづくりにおいて、より適切な計画の示唆を得 ることを目的とする。 1-3 研究の方法  本研究は、ネットワーク型まちづくりを持続してい るソンミサン村を対象に収集した資料をもとに、住民 共同出資施設の類型と出資方式を分類して、施設ネッ トワーク構造図を作成し、ダイアグラム図に分類して 分析を行う。次に分類した施設の歴史的変遷を追うこ 共同育児協同組合の形成 共同育児協同組合の 形成以前 生活協同組合の設立城山保護運動 様々な実験と試み 他の町にコミュニティー活性化支援 幼児教育振興法の 制定時期 初期 マウルの形成期 マウルの拡張期 転換期 1980~1990 1990~2000 2001~2003 2004~2010 2011~ 城山保護運動1 ('01~'03) ('08~'11)城山保護運動2 図 2 ソンミサン村の発展過程 麻浦区 漢江(ハンガン) 0 2.5 5 10km ソンミサン村 0 2.5 5 10km 図 1 研究対象地

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21-2 所の共同出資施設を運営しているのが確認できた。  共同出資施設は 6 ヶ所の教育施設、4 ヶ所の生活施 設、5 ヶ所の住居施設、10 ヶ所の経済施設、6 ヶ所の 文化施設、6 ヶ所の福祉施設に分類できる。 3.2 出資方式及び運営手法 (1)共同出資  ソンミサン村の住民共同出資施設への出資方式は、 5 つの出資方式を使用することが把握できた。出資方 式を「世帯共同出資型」、「2 つの個人共同出資型」、「団 体共同出資型」、「団体 + 個人共同出資型」に分類して 表 1 に示す。 (2)運営手法 (a)協力的なネットワーク  運営手法の独特な点は、それぞれの施設が協力して 別のコミュニティ施設を支援したり、支援を受けて運 営している。その過程で、村の別のコミュニティ施設 として独立しており、村の新しいコミュニティ集団を 形成している。また、村の「キーパーソン」と「人と 村」が協力して施設を設立している。 (b)専門家集団(キーパーソン)  ソンミサン村は、形成初期の共同育児協同組合の設 立当時から専門家集団が活動したものと把握できた。 「キーパーソン」は大学の教授、専門家など 9 人で構 成されている。ソンミサン村のコミュニティ施設の設 立と運営が可能だった成功要因の一つは、専門家集団 が存在したためと推測される。 (c)非営利民間団体人と村  「人と村」は、2006 年 12 月、建設交通部の「住み たいまちづくり* 4 」事業に選定され、プロジェクトを 実行するために設立された社団法人の非営利民間団体 である。人と村は村全体の意思決定が必要なときに会 議を招集し、事業に関する情報を共有しており、村の 人的・物的資源を連携することによって各団体の運営 を手助けするサポートの役割をしている。 3.3 施設のネットワーク構造分析  3.2 で分類した各施設がどのような協力関係を維持 しているのかを把握するため、利益、販売、出資、運 営、支援などの協力要素を代入して各領域別 1 次協 力的なネットワーク関係 の分析を行った。次に分 類した 1 次協力的なネッ トワーク関係の施設を領 域以外の施設との 2 次協 力的なネットワーク関係 の分析を行った ( 図 4)。 図 4 の 1 次 ネ ッ ト ワ ー ク関係を見ると、領域別施設がグルーピングされ、協力 しているのが確認できており、6 つの協同組合型の施設 を運営していることが確認できる。各領域別施設のネッ トワーク関係を見ると、独立的に運営している施設が確 認されており、これはすべての施設が協力関係を維持し ているものとは言い難い。しかし、2 次ネットワーク関 係を見ると、独立的に運営する施設も別の分野の施設と ネットワーク協力関係を維持していることがわかる。ま た、一つの施設から独立して他のコミュニティ施設と協 力ネットワークの関係を維持していることも確認でき る。このような結果を見ると、他の集団とのコミュニティ が活性化されているということが推測できる。 3.4 ネットワークのコア施設  3.3 での分析結果、共同出資施設の中で学校、生協、村金 庫の 3 つのコア施設が確認できた。 3.5 住民共同出資施設に関する住民認識の特徴と分析  ソンミサン村の住民共同出資施設に対する住民の認識 の特徴を把握、分析を行うため、アンケート調査を行っ た(図 5)。アンケート調査概要は以下の表 2 の通りである。  ソンミサン村の調査対象者は施設に共同出資した経 験に対する質問に 79% が経験があると回答した。多数 の住民たちが村活動に参加しており、出資しているこ とがわかる。また、出資した理由は子供たちのために 出資したという回答が 38% で最も高い、その次に帰属 感を持つためが 32% の割合を占めている。この回答結 果を見ると、村の住民は子供たちと帰属感を持つため、 施設に出資していることを推測することができる。回 答者は、生協を最も重要な施設と考えており、その次 に、ソンミサン村に居住する契機となった共同育児保 育園と、ソンミサン学校をコミュニティ活性化に重要 な施設と考えている。共同体活性化に重要だと答えた 1次ネットワーク 領域内 領域外 2次ネットワーク 生協 経済 福祉 文化 教育 住居 生活 No. 出資方式 施設 区分 1 世帯共同出資型 4ヶ所保育園、どんぐり学童、ソンミサン学校集合住宅-ソヘンジュ(1,2,3,4号) 教育 住居 個人共同出資型1 (コミュニティビジネス) 3 個人共同出資型2(一般) 一針トゥレ、石鹼トゥレ、リサイクルショップ、弁当屋、ソヘンジュ(施工会社) 4 団体共同出資型 マポFM、リルラヒーリング、踊りの門、マウル劇場 夢場テッキョン、ケトギネの遊び場(村の本屋) ケアトゥレ、マポ希望福祉センター、マポ医療生協、 病院、ウリ動物医療生協、動物病院 ダッチ工房、村金庫、ソンミサン工房、モグラ実験室(青少年カフェ) 2 5 生協、ソンミサン食膳、惣菜屋、カフェ -利益の一部を地域社会に寄付する- 生活 文化 経済 福祉 団体+個人共同出資型 表 1 共同出資方式 調査対象 村の住民40名 村の住民200名 調査時期 2015年07月 2015年12月 回収率 40名-100%(男性22 女性18)107名-54%(男性45 女性62) • 共同出資した経験 • 共同出資した理由 • 施設の利用頻度 • 共同体活性化に重要な施設 • コミュニティの関係が持続可能な要因 アンケート調査概要 1次 2次 調査項目 表 2 アンケート調査概要 図 3 施設のネットワーク分析概念図

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21-3 施設が利用頻度調査結果でも高い利用頻度率を占めて いる。このような結果で、村共同体活性化に向けて日 常生活のための生活・経済施設と、幼児期・初等教育 期の子供の教育施設が優先的に設立されるのが重要だ という示唆を得られる。 4. 地域コミュニティの発展過程 4.1 コミュニティ施設の集中過程  3.3 で分類した施設を発祥から現在までの発展過程 と移転の現況、村の空間上の配置を表現したマップ データを作成し、分析を行った。その結果、共同出資 施設は時間の流れによって段階的に集中する現象が見 られた ( 図 6)。施設が集中した原因は、教育インフ ラが整ったところに移住民が定着してコミュニティ施 設を設立させた事とコア施設と紐帯関係を維持し、円 滑なコミュニティ関係を形成する為のものと考えられ る。また、施設の集中課程で 2011 年、2014 年に周辺 の共同出資施設が一つの建物の中に集団移転する傾向 が見られた。原因を調べてみると、ソンミサン村の住 民が共に居住するために共同出資して作った「ソヘン ジュ* 5 」という集合住宅に集団移転した事実が確認で きた。移転した理由は、賃貸料の上昇による施設の頻 図 4 住民共同出資施設の1次・2 次ネットワーク構造 麻浦(マポ)トゥレ生協 惣菜屋 Primary network

Type Secondary network

ダッチ工房 村金庫 モグラ実験室 (カフェ) ソンミサン工房 ソヘンジュ カフェ ソンミサン食膳 ソンミサン学校 保育園 学童保育所 マウル劇場 踊りの門 リルラヒーリング 夢場テッキョン 村の本屋 ケアトゥレ マポ希望福祉センター マポ医療生協 動物医療生協 協同組合 仕事共同体 動物病院 病院 石鹼ト ゥ レ 弁当屋 一 針ト ゥ レ パ ン 屋 リ サ イ ク ル シ ョ ッ プ 世帯共同出資型 団体共同出資型 団体+個人共同出資型 個人共同出資型 一 般 個人共同出資型 コ ミ ュ ニテ ィ ー ビ ジ ネス 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 利益 1 1 5 5 1 販売 2 3 1 3 出資 3 4運営 5支援 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 マポFM 教育 凡例 協力 独立 生活 経済1 経済2 文化 福祉 1 3 1 2 共同出資した経験 ある79% ない21% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 保育園 カフェ 学校 生協 劇場 村教育所 リサイクルショップ 食膳 本屋 共同体活性化に重要な施設 施設の利用頻度 - 毎週 1 回 施設の利用頻度 - 毎週 3 回以上 施設に出資した理由 回答者の年齢帯 村のアイデンティティ維持に必要な活動 子供たちのために 帰属感を持つために 周りの人の勧誘 村活動をするために 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 生協 パン屋 カフェ 弁当屋 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 学校 保育園 生協 パン屋 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 図 5 アンケート調査結果 小正月地神祭 ケアトゥレ 村企業活動 後援会 村の祭り 0% 20% 40% 60% 80% 20代 21% 30代 28% 40代 37% 50代 9% 60代以上 5%

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21-4 繁な移転と解散の危機から逃れるための方策だったと 考えられる。 4.2 共同出資施設を利用した福祉活動及び外部組織と のコミュニティ連携  3.3 で分類した施設の中で 4 つの生活施設はコミュ ニティビジネス* 6 を活用しており、利益の一部を地 域社会に寄付していることがヒアリング調査によって 確認できた。この福祉活動を通じて、既存の地域コミュ ニティとの交流、村のアイデンティティを形成し、定 着したと考えられる。また、村の発展過程中、11 の 市民団体が村に移転してきたことが把握できた。市民 団体との交流活動は村のコミュニティが既存の地域コ ミュニティに定着する過程にシナジー効果を上げる要 素だと考えられる。 4.3 小結  ソンミサン村の住民共同出資施設は、コミュニティ 集団内で協業と分業を通じて協力的な関係を維持して 運営していることがわかった。また、共同出資施設と コア施設には大きな関係があり、それにより施設が集 中される特徴が見られることがわかった。住民たちは 協力することの効果を経験しながら学習しており、自 分たちの考えを共有して、村の協力的ネットワークを 構築したと考えられる。 5. 結論  本研究では、都市内の共同体村の形成過程で現れた 住民共同出資施設を利用したコミュニティの生成と発 展の過程の様相を、施設のネットワーク関係を通じて 具体的に把握して、以下のことを明らかにした。  施設のネットワーク構造ダイアグラム図より、ソン ミサン村の住民共同出資施設の出資方式は5つに分類 可能である。 また、各施設の協力関係を 5 つに分類 し、図式化した。その結果 、生協、学校、村金庫のコ ア施設がある事実が分かった。分類した施設の歴史的変 遷を追うことで、発祥から現在までの発展過程と移転の 現況、村の空間上の配置を示した。そこでコミュニティ 施設とコア施設は大きな関係性があり、コア施設の周辺 でコミュニティ施設が集中する現象が見られた。  ソンミサン村は住民や団体、施設とのネットワークを 構築し、集団のアイデンティティを形成したと考えられ る。しかし、このような集団のアイデンティティが強力 になるほど孤立するコミュニティに転換される可能性も 有り得る。これは 2011 年から、ジェントリフィケーショ ン* 7 現象で、コミュニティ施設が漸進的にソヘンジュ に移動した現状を見れば予想できる。ソヘンジュの出現 は共同体生活を持続できる要素であるが、一方では、地 域コミュニティで孤立するかもしれない要素も含むと考 えられる。このような地域の問題を解決し、コミュニティ を維持するのが、現在のソンミサン村が解決しなければ ならない課題ではないだろうか。 【注釈】 *1:「第 5 共和国」はクーデターで成立した軍事独裁政権である。1981 年 3 月から 1988 年 2 月まで続いた。 *2:1982 年 12 月、幼児教育と保育を振興することを目的で制定した法。 *3:1982 年、幼児教育振興総合計画が策定されて作った幼稚園の名称。 *4: 建設交通部推進、ソウル市村共同体作り事業 - ソンミサン村が示範村で選定された。 *5: ソンミサン村で住民が共同出資して作ったコハウジング住宅の名称。 *6 コミュニティビジネスという用語に関する定義は、行政機関や研究者によって異な る。本稿では、地域の問題を住民がビジネスを活用して解決し、その利益の一部を地 域社会に寄付する事業で定義する。 *7: 旧都心が繁盛し、中流階級以上の人々が集まって、賃貸料が上昇し、元々住んで た住民が他の所に移住する現象を意味する用語。 【参考文献】 (1)国土研究院都市再生支援センター(2012)『ソンミサン村の歴史と考え』 (2)人と村(2014)『ソンミサン村の紹介資料』 (3)人と村(2012)『ソンミサン村の調査研究報告書』 【図版出典】 図 1,3,4,5,6: 筆者作成 図 2: 参考文献 (2) より筆者作成 表 1,2: 筆者作成 050 100200m 050 100200m 050 100200m 0 50 100 200m x x x x x x x 1994 2005 2011 2000 2014 城山 A B 教育施設 移動 独立 生活施設 経済施設 文化施設 福祉施設 住居施設 解散 A:ソンミサン学校  B:生協 (A,B:コア施設)  凡例 050 100200m 050 100200m 図 6 住民共同出資施設の空間的集中過程

参照

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