第6学年
理科学習指導案
単元名
水よう液の性質
1 指導観 ○ 本学級の子どもたちは,水溶液の性質について,身の回りの生活から「弱酸性」「アルカリイ オン水」「酸性雨」など,性質に関わる言葉は耳にしている。しかし,水溶液の性質の区別は, 色や味覚によるものにとどまり,液性による仲間わけができるという見方をする子どもはいない。 水溶液の中には,固体がとけているというイメージを持っていて,気体がとけた水溶液があると は認識できていない。また,理科の実験に対する関心が高く,身の回りの事象について意欲的に 調べようとすることができるが,問題解決に向けて,仮説を立てて推論し,多面的に追究したり 表現したりできるまでには至っていない。そこで,自然の事物・現象の変化や働きをその要因や 規則性,関係を推論しながら考えることができるようになるこの期に本単元を取り上げる。そし て,「見通す活動」と「吟味する活動」との関連を通して,水溶液の性質や働きについての考え をもつことができるようにする。このことは,自然事象の規則性を推論しながら追究する能力を 育てるとともに,自然に働きかけ,創造性を培う子どもを育てる上からも意義深い。 ○ 本単元に関しては,「粒子」についての基本的な見方や概念を柱とした内容のうちの「粒子の 結合」と「粒子の保存性」にかかわるものである。「粒子の保存性」に関しては,第5学年「も ののとけ方」の学習で,水溶液の定義やものが水にとける量には限界があり,それは温度によっ て変化すること,溶質の質量は変わらないことを学習してきている。本単元では,これらの上に 立って,水溶液が酸性,中性,アルカリ性に仲間わけできることや,水溶液には,気体がとけて いるものがあること,金属を変化させる働きがあるものがあることなどをとらえることができる ようにすることをねらっている。このことは,中学校の「水溶液とイオン」「酸とアルカリの中 和」等の学習へと発展する。 ○ 本単元の指導にあたっては,水溶液の性質や働きをとらえることができるようにする。そのた めに,「見つける段階」では,5つの水溶液の区別の仕方について話し合い,「水溶液の性質を 調べよう」というめあてをもたせ,計画を立てさせる。「追究する段階」では,まず,水溶液に 何がとけているのか,蒸発させ調べさせる。また炭酸水を調べることにより気体がとけている水 溶液があることを理解させる。次に,リトマス紙を使って液性による仲間わけができるようにす る。いろんな水溶液,液体の液性を調べ,その際使った洗剤の中の「金属に使用しない」という 注意書きに着目させ,金属をとかす水溶液について調べ,水溶液には金属を変化させる働きがあ るものがあることを理解させる。「生かす段階」では,謎の水溶液について,これまでの学習を 生かして正体を探り,水溶液の性質や働きについて理解を深めることができるようにする。 本時指導にあたっては,アルミニウム(以後アルミ)をとかした塩酸を蒸発させて出てきたも のがアルミかどうか調べる活動を通して,塩酸がアルミを別のものに変化させたことがわかるよ うにする。そのために,「つかむ段階」では,出てきたものがアルミかどうか根拠をもとに予想 させる。「見通す段階」では,アルミかどうかの確かめ方について,重さ,再度塩酸に入れると いう方法を全体のものとし,アルミならばこうなるという仮説を持たせる。「調べる段階」では, アルミと出てきたものの重さを比較させたり,塩酸に入れた時の様子の違いから考察させたりす る。「吟味する段階」では,結果と考察を出し合い,互いの結果から言えることを話し合う。「ま とめる段階」では,キーワードを使って結論を導き出すことができるようにする。 2 目標 ○ 水溶液の性質や金属を変化させる様子に興味,関心を持ち,水溶液の性質や働きを進んで調 べようとする態度を育てる。 (自然事象への関心・意欲・態度) ○ 水溶液の性質や働きについて予想や仮説を持ち,推論しながら追究し表現することができる ようにする。 (科学的な思考・表現) ○ 水溶液の性質や働きについて,実験方法に沿って安全に実験し,過程や結果を記録すること ができるようにする。 (実験・観察の技能) ○ 水溶液には,酸性,中性,アルカリ性に分類することができ,気体が溶けているものがある こと,金属を変化させる働きがあるものがあることを理解することができるようにする。 (自然事象についての知識・理解)3 計画(12時間) 段階 配時 学 習 活 動 と 内 容 具体的な支援 45 1 「もののとけ方」の学習経験を想起し,水 ○水溶液とはどのようなものだったか 溶液について話し合い,学習問題を見つける。 を想起させるために,5年時の学習 ○5つ(塩酸,食塩水,石灰水,酢,炭酸水) を提示する。 見 について,色,様子,においなどを比較す ○五感を使った比べ方や調べ方を考え つ ることで,その水溶液の正体はなにかにつ させるとともに,水溶液の中には危 け いて,話し合い,共通の問題をつくる。 険なものがあるということを知らせ る る。 ○水溶液に何がとけているかや,比べ方につ ○性質,働きによる視点をもとに分類 いて,どんな調べ方ができるか話し合う。 する。 水溶液の性質や働きを調べよう。 2 水溶液に何がとけているか調べる。 〇安全な観察・実験の方法について, 45 ○水溶液を蒸発させることで出てきたものを 助言する。 調べる。 追 60 ○炭酸水には何がとけているのか調べる。 究 3 水溶液を観点に沿って比べ,仲間わけをす す る。 る 60 ○リトマス紙の使い方を知り,酸性,アル ○水溶液の仲間分けができるように指 カリ性,中性による分類をする。 示薬の使い方を指導する。 60 ○紫芋液やブドウジュースを使って酸性,中 ○液性の強さにより分類できることを 性,アルカリ性の水溶液や液体を調べる。 とらえさせるために PH の違う液体 を準備する。 45 4 洗剤の注意書きの,金属に使えないという 疑問から,問題を見つける。 見 つ 金属を水溶液に入れるとどうなるだろう。 け る ○金属に使えない理由を考え,調べる方法に ○水溶液の金属をとかす働きについて ついて,予想・仮説を立て,金属を水溶液 着眼させるために「注意書き」を用 に入れるた時どんな変化があるか計画を立 いる。 てる。 5 金属を塩酸,水酸化ナトリウム水溶液に入 れ,金属の変化を調べる。 60 〇アルミと鉄について塩酸に入れた時の変化 ○水溶液に金属を入れた時の様子も記 追 を調べる。 録できるように,理科ノートを工夫 究 する。 す 30 〇アルミのとけた塩酸を蒸発させ,出てきた ○アルミのとけた塩酸を蒸発させ出て る ものについて予想する。 くるものについて調べる見通しもた せるために前時実験の様子を提示す る。 45 ○蒸発させ出てきたものがアルミニウムかど ○蒸発させ出てきたものを塩酸に入れ, 本時 うか確かめる。 アルミをとかした時と比較しやすい 板書を工夫する。 45 ○水酸化ナトリウム水溶液がアルミニウム ○塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を比 や鉄をとかすか調べる。 較できるように表に整理する。 生 45 6 謎の水溶液についてその正体を明らかにす ○探求的な学習ができるように,実験 か るために,これまでの学習を生かして調べる。 の方法を自分で選択できるようにす す る。
4 主眼 ○ アルミをとかした塩酸を蒸発させ,取り出した物質とアルミを比較して調べることで,元の金 属と別のものができていることをとらえることができる。 ○ 取り出した物質の色,形状,重さ,さらにそれを塩酸に入れた時の様子を比べることで,物質 の変化をとらえ,考察することができる。 5 本時の授業仮説 次のような工夫をすれば,水溶液の金属を溶かす働きについて科学的な見方や考え方ができるだ ろう。 (1)「見通す活動」における工夫 ○塩酸にアルミを入れた時の様子や5年時の「もののとけ方」を振り返ることで,根拠をもとに 仮説や実験計画を立てさせる。 ○アルミと出てきたものを比較できるような板書を工夫し,実験の方法や視点を明確にする。 (2)「吟味する活動」における工夫 ○自己考察においては,結果をアルミ片と比較して書けるノートを準備し,それをもとにペアで 話し合い,予想と比較しながら根拠をもって考察を書けるようにする。 ○全体考察においては,視点②に重点を置き,個々の結果を板書で整理し,全体の結果から交流 で出された自己考察を客観性から確認し合うことで,塩酸がアルミを別のものに変化させたこ とを導き出させる。 6 準備 試験管,試験管たて,塩酸(3Ⅿ),塩酸にアルミをとかした液から取り出したもの, 蒸発皿, アルミ片,自動上皿はかり,安全メガネ 7 展開(9/11) 段階
学
習
活
動
と
内
容
教師の支援
つ 1 塩酸によって,アルミがとけたものから蒸発して か 出てきたものを見て,本時のめあてを確かめる。 む 蒸発によって出てきたものは,アルミニウムだ ろうか。 見 2 取り出した物質について調べる見通しをもつ。 ○根拠をもとに仮説や実験計画を立 通 〈仮説〉 ・塩の水溶液は,蒸発させたら塩が出てき てさせるために,前時実験の時の す たので,この場合もアルミだろう。 様子や5年時の「もののとけ方」 ・とけるとき泡が出たり熱が出たりしたの の学習を振り返る掲示をする。 で,アルミじゃないものだろう。 〈方法〉 ・色,形状,塩酸に入れた様子,重さを比較 ○推論して考えさせるために,「も 〈視点〉 ・色,形状,重さ,塩酸にとける様子 しアルミならば~なるはずだ」と いう話型を提示する。 ・もし,アルミならば,塩酸に入れた時,アルミ と同じように,泡が出て,熱を持つはずである。 〇全 体 で 見 通 し を 共 有化 す る た め ・もし,アルミならば,重さがほぼ同じくらいに に,方法・視点・手順を共有化す なるはずである。 る。 調 3 実験の見通しをもとにペアで実験をする。 べ ○ 塩酸の扱いに注意してペアで実験を行う。 ○安全な実験について,安全メガネ る 〈色・形状〉…観察 をかけるなど指示する。 ・アルミは白っぽい銀色だが,出てきたものは, 白い。 ・アルミは板片だが,出てきたものは粉状。 ○ペアでの実験の仕方を助言する。〈重さ〉…薬包紙にのせて量る。 ・アルミの板片は,○gだが出てきたものは○g で,重くなっている。 〈塩酸にとける様子〉…観察 ・塩酸にアルミを入れると泡が激しく出て温かく なったが,取り出した物を入れても泡は出ない し温かくもならない。 ○ 色・形状,重さ,塩酸にとける様子を記録する。 吟 4 結果を整理し,考察する。 味 (1)調べたことの結果をもとに,自分の仮説に振り ○結果が比較しやすいように,整理 す 返って考察する。(自己考察) できる表を準備する。 る (2)互いの結果や考察から,言えることについて話 ○互いの結果を確認させるために表 し合う。(全体考察) に整理する。(視点①) 取り出したもの アルミニウム ○表をもとに,仮説,方法,実験の 白 色 白っぽい銀色 過程を明確に述べて,自分の考察 を発表することができるように助 粉状 形状 片状 言する。 ○g 重さ ○g ○アルミをとかした時の様子と比較 変化がない 激しく泡が出た しやすい板書を工夫する。(泡, 様子 熱があった 熱) ○蒸発によって出てきた物がアルミ ニウムだろうかを考えさせるため に「この結果から,どんなことが 言えるか」という発問をする。(視 点②) ま 5 全体考察をもとに,キーワードを使って結論を導 と き出す。 め ○水溶液の働きについてまとめる。 ○水溶液の働きについてまとめさせ る るために,「蒸発で出てきたもの」 ・蒸発で出てきたものは,アルミニウムではない。 「塩酸」「アルミニウム」のキー ・塩酸はアルミニウムをとかし,別のものものに変 ワードを提示する。 化させた。 ○本時学習をふり返る。 ○変化した物質に対する疑問が出た ・蒸発によって出てきた物はアルミではないことが 場合は取り上げ,補足説明する。 分かった。出てきた物は何だろう。 ・予想と同じで,アルミの重さと取り出した物 の重さは違っていた。このことから,アルミ は別の物になったと考えられる。 ・予想と違って,アルミは塩酸に入れた時,泡 が出て,熱があった。このことから,アルミ は別の物になったと言える。