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学位論文題名Mitigation of interspecific competition between native and nonnative salmonids

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 長 谷 川    功

     学位論文題名

Mitigation of interspecific competition between native     and nonnative salmonids

(在来サケ科魚類と外来サケ科魚類の種間競争の抑制)

学位論 文内容の要旨

1.外来種は、種間競争・捕食・交雑などの様々な種間関係を通して在来種の個体数の減   少 、さらに は絶滅 の原因と なっている。外来種の影響から在来種を保全する策として   国 際自 然 保 護連 合 は 、外来種 の(1)侵入 の予防(2) 撲滅(3)制御 を提言 してい     る。このうち、制御策には、外来種の個体数の抑制または種間関係の除去・抑制があ     るが、近年提言された種問関係の抑制策については、方法論が確立されていなぃ。種     間関係の抑制策を確立するためには、第一に在来種と外来種間にどのような種間関係     が存在するかを把握する必要がある。

    サ ケ科魚類 は、水 産資源として世界各地に移殖され人々に利用されてきた反面、そ   れ らの地域 で在来 サケ科魚 類から移殖された外来サケ科魚類への生息種の置換現象が

・ 在来種保 全という 点で問 題となっている。本研究は、北海道に生息する在来サケ科魚     類アメマス(Salvelinus leucorriaenis).サクラマス(〇ncorhynchus masou)と外来サケ科     魚類ブラウントラウト(Salmo trutta).ニジマス(O. mykiss)の4種を用いて、サケ科   魚 類におけ る外来 種と在来 種の種間関係の抑制策の確立に向けて基礎的な知見を得る     ことを目的とした。なお、本研究でいう抑制策とは種問関係の抑制策のことを示す。

2.共 進化を遂 げてこ なかった 近縁の在来サケ科魚類と外来サケ科魚類問では、資源分割     が充分でなぃために、それらを巡る強い競争関係が生じることが多い。サケ科魚類で     は、個体間で採餌場所を巡る攻撃行動を介した干渉型競争が見られ、競争能カが優れ     た個体ほど高い採餌効率、さらには高い成長率を得ることができる。そこで、在来サ   ケ 科魚類と 外来サ ケ科魚類 の競争 能カを比 較する ため、人工水路に在来種1個体と外     来種1個体を入れ、行動観察を行い・、干渉型競争における優劣関係を判断した。その     結果、外来種ニジマスはアメマスに対して優位であり、また別の外来種であるブラウ     ントラウトは在来種であるアメマスとサクラマスのどちらに対しても優位であった。

    ま た、河 川を模し た人工水 路で、 各種の生 息場所 選好性と外来種が在来種2種の共     存に与える影響を検証した。アメマスとサクラマスが同所的な場合は、サクラマスが     淵の表層、アメマスが淵の底〜中層を利用した。これは、在来種間での空間資源の分     割利用を反映していると考えられた。ー方、ブラウントラウトとニジマスは選好性が     アメマスと類似していた。外来種存在下では、アメマスの生息場所はサクラマスと重   複 (淵の表 層)し 、在来種 間での種間競争が強く生じた。よって、外来種は単一の在     来種だけでなく、複数種からなる在来サケ科魚類群集全体にも影響を与えることを示   唆 した。す なわち 、外来種 の侵入はヾ従来なかった種間関係(在来種間の種間競争)

    を生み出す可能性が考えられた。

‑ 1037

(2)

3.種間競 争の帰結 は、生 息場所の環境要因の影響を受けることがある。アメマスとブラ     ウントラウトが同所的に生息する河川の場合、競争関係において劣位であるアメマス     は、倒木などの物理的障害物が多い場所を利用していた。これは、サケ科魚類は視覚     で攻撃対象を認識するために、物理的障害物が個体の視野を狭めるとブラウントラウ     トからアメマスヘの攻撃頻度が緩和されるためだと考えられた。っまり、物理的障害     物には、アメマスからブラウントラウトヘの置換を抑制する効果があると予測された。

    このこ とを確か めるた めに、人 工水路 で実験を 行った。実験では、アメマスを3個     体導入した場合(アメマスのみ)、アメマス2個体とブラウントラウト1個体の計3個     体を導入した場合(2種混成)、これらに物理的障害物を加えた場合と加えなぃ場合の     計4通りの条件で、各個体の攻撃対象個体と攻撃回数および採餌回数を比較した。2種     混成の場合、障害物が無いとアメマスが同種個体を攻撃する回数よりもブラウントラ     ウトがアメマスを攻撃する回数の方がはるかに多かった。しかし、障害物が有るとこ     れらの攻撃回数は激減した。また、アメマスの採餌回数は2種混成の場合では、障害     物が無 い場合と アメマ スのみの場合を比べると5分の1程度に減少したが、障害物が     有る場合にはアメマスのみと2種混成問で差は無かった。これらの結果から、アメマ     スとブラウントラウトが同所的に生息する場合、アメマスの種内競争よりもブラウン     トラウト優位の種間競争の方が強く生じ、さらに種間競争はアメマスに対して採餌回     数の減少という成長・生存に不利な影響を与えることが明らかになった。したがって、

    種間競争がアメマスからブラウントラウトへの置換の原因となっていることが示唆さ     れた。しかし、物理的障害物は、種間競争のアメマスに対する不利な影響を緩和する     ことが明らかになった。したがって、物理的障害物には、アメマスからブラウントラ     ウトヘの置換を抑制する効果があると考えられた。

4.アメ マスの単 独生息 域(単独 域)とアメマスとブラウントラウトの混成域で、アメマ     スの生息場所利用における物理的障害物への依存度を比較して、障害物が外来サケ科     魚類への置換を防止するのに有効か否かを検討した。調査は、北海道中央部の紋別川     で行った。紋別川には堰堤があり、その上流側は単独域、下流側は混成域である。両     種共に淵が主な生息場所であるため、単独域と混成域でアメマスとブラウントラウト     の個体数を淵ごとに調べた。淵の環境要因として、淵面積、物理的障害物(倒木・川     岸のえぐれ)の大きさ・個数、水深、流速を計測した。アメマスの個体数を従属変数、

    環境要因とブラウントラウト個体数を説明変数として一般化線形モデルによるモデル   選択 を行った 結果、 単独域で は、アメマス個体数に対して淵面積が正の影響を与えて     いた。混成域では、アメマス個体数に対して物理的障害物の個数が正、ブラウントラ     ウト個体数が負の影響を与えていた。ブラウントラウトの影響がない単独域では、ア     メマス個体数は生息場所の大きさ(淵面積)の影響を受けたと考えられた。混成域で     は、ブラウントラウトはアメマス個体数に種間競争を通して負の影響を与えたが、物     理的障害物は攻撃を緩和するためアメマス個体数に対して正の影響を与えたと考えら     れた。以上の結果から、アメマスは、元来の性質として物理的障害物の多い淵を生息     場所として利用するのではなく、ブラウントラウト存在下では種間競争の影響が抑制     されるため、物理的障害物の多い淵を利用すると考えられた。したがって、河川内へ     の物理的障害物の設置は、サケ科魚類の種間競争を抑制し、在来種から外来種への置     換防止策として有効であると考えられた。

5.既 存の撲滅 策や制 御策は、 効果が種特異的でなぃ致死性薬品や防壁を設けて外来種を     限られた区域に封じ込めるため、管理対象外の生物種に対しても個体数の減少や移動     の妨げなどの影響が出ることがある。本研究で示した物理的障害物を利用したサケ科   魚 類の種問 競争の 抑制策は 、サケ科魚類特異的な行動を対象としているため、対象外     の生物種への影響は既存の策と比べて小さいと考えられる。また、種問関係の抑制策

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(3)

は、外来 種の個体数を抑制することを目的としないので、地域によっては重要な水産 資源とみ なされている外来サケ科魚類の持続利用と在来サケ科魚類保全の両方を計る ことがで きると期待される。

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(4)

学 位論文審 査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授

教授

教授

助教授

前川光司 齋藤  裕 後藤  晃

  (北方生物圏フイールド科学センター)

齊藤  隆

     学位論文題名

Mitigation of interspecific competition between native     and nonnative salmonids

(在来サケ科魚類と外来サケ科魚類の種間競争の抑制)

  本 研 究 は114ベ ー ジ の 英 文 論 文 で 、 引 用文 献84を 含 み 、6章 で 構 成さ れ て いる 。 他に参考論文4編(英文)が添えられている。

  外来種は、種問競争・捕食・交雑などの様々な種間関係を通して在来種の個体数の減少 や絶滅の原因となっている。外来種の影響から在来種を保全する策として、外来種の(1) 侵入の予 防(2)撲滅 (3) 制御が考 えられ ている。このうち、制御策には、外来種の個 体数の抑制または種間関係の除去・抑制があるが、近年提言された種間関係の抑制策につ いては、方法論が確立されていない。

  本研究は、北海道に生息する在来サケ科魚類アメマス(Salvetinus leucomaenis).サクラマ ス(Oncorhynchus masou)と外来サケ科魚類プラウントラウト(Salmo trutta).二ジマス(O.

mykiss)の4種を用いて、サケ科魚類における外来種と在来種の種間関係における抑制策の 確立に向けて基礎的な知見を得ることを目的とした。

  サケ科魚類では、干渉型競争が見られ、競争能カが優れた個体ほど高い採餌効率と高い 成長率を得ることができる。そこで、在来サケ科魚類と外来サケ科魚類の競争能カを比較 するため 、人工水 路に在 来種1個体と 外来種1個体を入れ、優劣関係を判断した。その結 果、外来種ニジマスはアメマスに対して優位であり、また別の外来種であるプラウントラ ウ ト は 在 来 種 で あ る ア メ マ ス と サ ク ラ マ ス の ど ち ら に 対 し て も 優 位 で あ っ た 。   また、人 工水路 で、各種の生息場所選好性と外来種が在来種2種の共存に与える影響を 検証した。.アメマスとサクラマスが同所的な場合は、サクラマスが淵の表層、アメマスが 淵の底〜中層を利用した。一方、プラウントラウトとニジマスは選好性がアメマスと類似 していた。外来種存在下では、アメマスの生息場所はサクラマスと重複(淵の表層)し、

在来種聞での種間競争が強く生じた。従って外来種は単一の在来種だけでなく、複数種か     −1040一

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ら な る 在 来 サ ケ 科 魚 類 群 集 全 体 に も 影 響 を 与 え る こ と が 示 唆 さ れ た 。   アメマスとブラウントラウトが同所的に生息する河川の場合、競争関係において劣位で あるアメマスは、倒木などの物理的障害物が多い場所を利用していた。これは、物理的障 害物 がプラウ ントラ ウトから アメマ スヘの攻 撃頻度が緩和されるためだと考えられた。

  この ことを 確かめる ために、人工水路で実験を行った。実験では、アメマスを3個体導 入し た場合( アメマ スのみ)、アメマス2個体とブラウントラウト1個体の計3個体を導入 した場合(2種混成)、これらに物理的障害物を加えた場合と加えない場合の計4通りの条 件で、各個体の攻撃対象個体と攻撃回数および採餌回数を比較した。2種混成の場合、障害 物が無いとアメマスが同種個体を攻撃する回数よりもプラウントラウトがアメマスを攻撃 する回数の方がはるかに多かった。しかし、障害物が有るとこれらの攻撃回数は激減した。

また、アメマスの採餌回数は2種混成の場合では、障害物が無bゝ場合とアメマスのみの場 合を 比べると5分 の1程 度に減少 したが 、障害物 が有る 場合には アメマ スのみと2種混成 間で差は無かった。これらの結果から、アメマスとブラウントラウトが同所的に生息する 場合、アメマスの種内競争よりもプラウントラウト優位の種間競争の方が強く生じ、さら に種間競争はアメマスに対して採餌回数の減少という成長・生存に不利な影響を与えるこ とが明らかになった。さらに物理的障害物には、アメマスからブラウントラウトヘの置換 を抑制する効果があると考えられた。

  アメマスの単独生息域(単独域〉とアメマスとプラウントラウトの混成域で、障害物が 外来サケ科魚類への置換を防止するのに有効か否かを検討した。北海道中央部の紋別川に おいて単独域と混成域でアメマスとブラウントラウトの個体数を淵ごとに調ぺた。淵の環 境要因として、淵面積、物理的障害物(倒木・川岸のえぐれ)の大きさ・個数、水深、流 速を計測した。アメマスの個体数を従属変数、環境要因とブラウントラウト個体数を説明 変数として一般化線形モデルによるモデル選択を行った結果、単独域では、アメマス個体 数に対して淵面積が正の影響を与えていた。混成域では、アメマス個体数に対して物理的 障害物の個数が正、プラウントラウト個体数が負の影響を与えていた。単独域では、アメ マス個体数は生息場所の大きさ(淵面積)の影響を受け、混成域では、ブラウントラウト はアメマス個体数に種間競争を通して負の影響を与えたが、物理的障害物がある場合は攻 撃 を 緩 和 す る た め ア メ マ ス 個 体 数 に 対 し て 正 の 影 響 を 与 え た と 考 え ら れ た 。   以上の結果から、種間関係の抑制策は、外来種の個体数を抑制することなく外来サケ科 魚 類 の持 続 利 用と 在 来 サケ 科 魚 類保 全 の 両 方を 計 る こと が で きる こ とを 論議し た。

  以上のように本研究は、外来魚類が在来魚類に与える影響とその解決策について明らか にしようとしたものであり、得られた成果は学術的に貴重なものであり、その応用のため の基礎資料としても高く評価される。よって審査員一同は、長谷川功が博士(農学)の学 位を受けるに充分な資格を有するものと認めた。

参照

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