博 士 ( 医 学 ) 細 田 充 主
学位論文題名
UFD2a mediates the proteasomal turnover of p73 without promoting p73 ubiquitination
(UFD2a によるp73 分解機構についての解析)
学位論文内容の要旨
p73は が ん抑 制 蛋 白p53に 対す る 初め てのホモ ログと して同定 され、p53と同 様にp53標 的遺伝子群の発現調節を介して、がん細胞の細胞死や細胞周期の停止を誘導するが、腫瘍組 織 にお ける 変異は 極めて稀 である 。また、p53とは 異なりp73にはp73aやp73ロなど、 そ のカル ボキシ ル末端の 構造に 違いを持 つ複数のスプライス変異体が存在する。p73Bはp73 aの カルボ キシル末 端領域を 欠いた 変異体のーっである。p73aのカルボキシル末端領域に はp73ロには ないSAM(8terilIeamotめ ドメインが存在し、このドメインは蛋白問相互作用 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る が 、p73に おけ る そ の機 能 は 未だ に 不 明で あ る 。 抗 癌剤 であ るシス プラチン 処理な どに起因 するDNA損傷に 応答して 、非受 容体型チ ロシ ンキナ ーゼcーAblによる耽 .99のり ン酸化を介してp73が安定化しその細胞死誘導能が促 進 す る こ と 、 な ら び にPKCに よ るp73のSer289の り ン 酸化 がp73の 安 定化 に 強 く 関与 することが既に報告されている。また、プロテアソーム阻害剤によって、細胞内のp73蛋白 量が増加することから、p73はユビキチン・プロテアソーム系の蛋白分解システムによる制 御を受 けてい ることが 示唆さ れている 。p53のユビキチン化を介した分解を触媒するMDM2 は、p73のアミノ末端に結合しその転写活性化能を阻害するが、同時にその安定性を増強す る。従 ってp73の安定 性はE3ユ ビキチン リガーゼ活性を持つ別の蛋白により制御されてい ると考 えられ る。一方 、p73はcychnGとの結合を介したユビキチン化非依存性の蛋白分解 を 受 け て い る と い う 報 告 も あ る が 、 そ の 詳 細 な 分 子 機 構 に つ い ては 不 明 であ る 。 U‐box型のユ ビキチン リガーゼ であるUFD2aはユ ビキチ ン鎖を伸 張させ る活性を 持つE4 ユ ビキ チン リガー ゼとして 同定さ れた。U・boXの3次元構造 はRINGフィ ンガーの それと 類 似し て お り、UFD2aはE3と し て の活 性 を も持 つ こ とが 示 さ れてい る。最近 、我々は 朋晒ぬ遺伝子が神経芽細胞腫に対する癌抑制遺伝子が座位すると考えられるlp36.2.p36.3 領域にマップされていることを報告した。しかし、神経芽細胞腫においては朋7:功ぬ遺伝子 の変異 は稀で あること が判明 した。興 味深いこ とに、 細胞死を 誘導する刺激に応答して UFD2aはca8pa8e6あ る い はg職nZymeBに よ っ て分 解 さ れ、 そ の 活性 が 失 わ れる こ と が 明らかにされた。従って、UFD2aは細胞死の制御に関与している可能性が指摘されている。
本 研究 では 、UFD2aがp73aとの 物理的な 結合を介 して、 その分解 を促進 するとと もに細 胞 死誘 導能 および 転写活性 化能を 抑制する ことを明 らかに した。UFD2aによ るp73aの分 解はプ ロテア ソーム阻害剤により抑制されるが、ユビキチン化には影響を与えなかった。
UFD2aはE3凪4で あ り 、 その ア ミ ノ末端 に活性調 節ドメ イン、お よびカ ルボキシ ル末端 にU―Boxを 持 つ 。UFD2a蛋 白 の 発現 量を調べ る目的 でUFD2aに 対する 特異的な 抗体を 作 成し、 各種培 養細胞を用いてウェスタン解析を行ったところ、翻兜協領域にホモ欠失のあ る 細胞 以 外 のす べ て の細 胞 株 でUFD2a蛋 白の発現 が検出 され、UFD2a抗体 の特異性 も同
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時に確認された。また、細胞を細胞質および細胞核に分画して行ったウェスタン解析では、
UFD2aは 核 お よ び 細 胞 質 で 検 出 さ れ た 。 次 に 、 我 々 はDNA損 傷 に 応 答 し たUFD2aお よ びp73の 発現 解析 を行 った 。SH‑SY5Y細胞 は24時間 のシ ス プラ チン 処理 によ り濃度依存 的に細胞死に陥る。この実験系を用いてウェスタン解析を行うと、以前の我々の報告にもあ るようにp73はシスプラチン 処理に応答して安定化しその蛋白量が増加する。一方、UFD2a はp73とは異なルシスプラチ ン処理によりその蛋白量が減少することが判明した。また、同 時 に 行 っ たRTPCRに よ る 解 析 で はUFD2a mRNAの 発 現 量 に は シ ス プ ラ チ ン 処理 によ る 変化 は認 めら れな かっ た。 以上 の実 験結 果よ り、DNA損 傷に 伴うUFD2aの発 現量の減少 がp73の 蛋 白 と し て の 安 定 性 の 制 御 に 深 く 関 与 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 UFD2aとp73の 細胞 内で の物 理的 結合 の有 無を 調べ る目 的 で免 疫沈 降法 によ る解析を行 った 。そ の結 果、 細胞 内でUFD2aとp73Qは 安定 な複 合体 を形 成す るが 、p53とは結合し なぃ こと が判 明し た。 次に、UFD2aとの結合に必須の領域を探索する目的でp73の様々な 人為的欠失変異体およぴスプライス変異体であるp73口を用いた免疫沈降法による同 様の 解析 を行 った とこ ろ、p73aのみ に存 在す る&Wドメイ ンを含む領域が両者の結合に必要 不可欠であることが明らかになった。
次に 、UFD2aがp73aの 安定 性 の制 御に 関与 して いるか 否かを調べる目的でウェスタン法 によ る解 析を 行っ た。 その 結果 、UFD2aの 過剰 発現に 伴ってp73aの蛋白量は顕著に減少 した 。し かし なが ら、UFD2aとの 結合 能を 持た ないp53お よびp73ロの 蛋白 量は、UFD2a の過剰発現による影響を受けなかった。また、UFD2aの過剰発現によってシスプラチ ンに 応答 した 内在 性p73aの 発現誘導が抑制された。さらに 、p73a蛋白の半減期を調べると、
UFD2aと の共 発現 によ って 顕著に短縮することが判明した。興味深いことに、UFD2aによ るp73aの 分 解 は プ ロテ アソ ーム 阻害 剤処 理に よっ て抑 制さ れる が、UFD2aはp73aの ユ ビキ チン 化に は影 響を 与え ず、U‐boxを 人為 的に 欠いたUFD2aの変異体でもp73aの分解 を促進する能カを維持していた。これらの実験結果より 、UFD2aはユビキチン化非依 存性 の分 子機 構を 介し てプ ロテ アソ ーム によ るp73aの 分解 を 促進 する こと が示 唆された。
p73aの 転 写 活 性 化 能に 及ば すUFD2aの影 響の 有 無を 調べ る目 的で ルシ フェ ラー ゼレ ポ ータ ーア ッセ イを 行っ た。 その 結果 、ア ンチ セン スUFD2aとの共発現によって内在性の UFD2aを ノッ クダ ウン した と ころ 、p73aに よる その 標的 遺伝 子で あるp21wAFl、およぴ B弧 プロ モー ター の誘 導活 性 が増 強さ れた 。さ らに 、UFD2aがp73aの細 胞死 誘導活性に 対す る影 響を 調べ る目 的で 、ア ンチ セン スUFD2aとp73aとの共発現によるコロニーフオ ーメ ーシ ョン アッ セイ を行 った とこ ろ、 アン チセ ンスUFD2aとの共発現によってp73a依 存性の細胞死誘導が亢進した。
以 上 の 実 験 結 果 か ら 、U.boX型E3厄4ユ ビ キ チン リガ ーゼ であ るUFD2aはp73aとの 物 理的な結合を介してそのプロテアソームによる分解を促 進するとともに、p73aの転写活性 化能およぴ細胞死誘導能を阻害することが明らかになっ た。しかしながら、UFD2aに よる p73aの分解はそのユビキチン化の程度には無関係であり 、その詳細な分子機構は不明であ る。ヒト腫瘍の約50%で機能喪失を伴う変異が検出され るp53とは異なり、ヒト腫瘍 組織 にお けるp73の変 異は 極め て稀である。従って、特にp53の変異を持つ腫瘍組織における UFD2aの 特異 的な 阻害 は、p73の安定化に伴う活性化に よる新たな抗癌治療の戦略のーつ となりうることが期待される。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 畠 山 鎮 次
副 査 教 授 今村雅寛 副 査 教 授 藤堂 省
学位論文題名
UFD2a mediates the proteasomal turnover of p73 without promoting p73 ubiquitination (UFD2a による p73 分解機構についての解析)
p73は がん 抑 制蛋 白p53の ホモ ログ であ り 、p53と同様に標 的遺伝子群の発現調節を介 して細胞死や細胞周期の停止を誘導するが、腫瘍 における変異は稀である。また、p53と は異 なりp73に は複 数の スプ ライ ス変 異体 が存 在する。p73aのカルボキシル末端領域に はSAMドメインが存在 し、蛋白問相互作用に関与していると考えられているが 、その機能 は未 だに 不明 であ る。DNA損傷に 応答して、p73が安定化しそ の細胞死誘導能が促進する ことが既に報告されている。また、プロテアソー ム阻害剤によって細胞内のp73蛋白量が 増加することから、p73はユビキチン・プロテアソーム系の蛋白分解システム による制御 を受けていることが示唆されているが、詳細な分 子機構については不明である。UFD2aは E4ユ ビキ チン リガ ーゼ として同定され、またE3としての活性 をも持っと示されている。
我々はUF〇2a遺伝子が神経芽細胞腫に対する癌抑 制遺伝子が座位すると考えられる領域に マップされていることを報告した。しかし神経芽細胞腫においてUFD2aの変異は稀であり、
細胞死誘導刺激に応答してUFD2aは活性が失われることが明らかにされた。従って、UFD2a は細 胞死 の制 御に 関与 して いる 可能 性が 指 摘さ れて いる 。SH‑SY5Y細 胞 はCDDP(シスプ ラチン)処理により細胞死に陥る。この実験系を 用いて解析を行うと、p73はCDDP処理に 応答 して 安定 化し その 蛋白 量が 増加 する ー 方、UFD2aはCDDP処理によりその蛋白量が減 少し た。 同時 に行 ったRT‑PCRで はUFD2a mRNAの 発現 量に は変 化は 認め られ なかった。
UFD2aとp73の 物理 的結 合の有無を調べる目的で免疫沈降法に よる解析を行った結果、細 胞 内 でUFD2aとp73Qは 物理 的に 結合 する が、p53と は結 合し なか った 。p73の様 々な 変 異体 によ る同 様の 解析 を行 った とこ ろ、p73aの みに存在するSAMドメインを含む領域が 両者 の結 合に 必要 不可 欠で あっ た。UFD2aがp73aの安定性の 制御に関与しているかを調 べる 目的 でウ ェス タン 法に よる 解析 を行 っ た結 果、UFD2aの 過剰発現に伴ってp73aの蛋 白量 は顕 著に 減少 した 。ま た、UFD2aの過 剰発 現に よっ てCDDPに 応答 し た内在性p73ロ の発 現誘 導が 抑制 され た。 さら に、p73Q蛋 白の 半減期を調べると、UFD2aとの共発現に よっ て顕 著に 短縮 する こと が判 明し た。UFD2aによるp73aの 分解はプロテアソーム阻害 剤処 理に よっ て抑 制さ れる が、UFD2aはp73aの ユビ キチ ン化 には 影響 を 与えず、U‑box を人 為的 に欠 いたUFD2aの変 異体 でもp73aの分 解を促進する 能カを維持していた。これ らの実験結果より、UFD2aはユビキチン化非依存性の分子機構を介してプロテ アソームに よるp73aの分 解を 促進 することが示唆された。p73aの転写活 性化能・細胞死誘導活性に
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及ぼすUFD2aの影響の有無を 調べる目的でルシフェラーゼレポーターアッセイ・コロニー フオ ーメ ーシ ョン アッ セイ を行 った 。ア ンチセンスUFD2aとの共発現によって内在性の UFD2aを ノッ クダ ウンしたところ、p73aの標的遺伝子の誘導活性 が増強され、また、p73 a依 存性 の細 胞死 誘導が亢進した。以上より、UFD2aはp73aとの物理的な結合を介して、
ユビ キチ ン化 非依存性にプロテアソ ームによるp73aの分解を促進するとともに、p73aの 転写活性化能および細胞死誘導能を阻害することを示し た。
公開発表後、副査の今村教授より1)他抗癌剤での同結果の有無、2)p73の生物学的機能、
3)他分子での非ユビキチン分解系の有無についての質問があった。それに対して1)同様の 結果が期待されること、2)p53との比較も含めたp73の機 能、3)文献の引用にて同系の他 分子を示す等の回答があった。藤堂教授からは1)臨床応用について、2)非ユビキチン分解 系の具体的内容、3)p53とp73の役割の違いについての質 問があった。それに対して1)p53 変異腫瘍におけるその可能性、2)UFD2aがp73を直接プロテアソームに結合させる可能性、
3)p73がp53を 補完しうること等の回 答があった。また、主査の畠山教授より1)p73とp63 の関係、2)ユビキチン化アッセイの方法、3)p73とプロテアソームの結合の有無についての 質問があり、1)p63とp73の類似性とその違い、2)実験法と今後への応用、3)p73とプロテ アソ ーム の結 合は 確認 され てい ない 等の 回答 がな され た 。こ の論 文はp73とUFD2aが結 合しp73の分 解を 促進することを示した初めての報告であり、UFD2a阻害による抗腫瘍効 果への臨床応用が期待されることを示した。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や単位取得なども 併せ 申請 者が 博士 (医 学) の学 位を 受け るの に充 分な 資 格を 有す るものと判定した。
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