1. は じ め に
博 士 ( 薬 学 ) 松 村 裕 司
学 位 論 文 題 名
ニッケル,パラジウム触媒を用いた 3 ―ハロプロベン酸類の反応
学位論文内容の要旨
3― ハ ロ プ ロ ペ ン酸 誘 導 体 は 複数 の 官 能 基 を 有し て い る こ とか ら 、 特 に 立体 選 択 的 に 合成 さ れ た も の は 天 然 物 合 成 の 鍵 化 合 物 と し ても 用 い ら れ 、有 機 合 成 ー の利 用 に お い て 、そ の 可 能 性 は計 り 知 れ な い も の が あ る 。 そ こ で 著 者 は 、 ま だ 効 率 的 な 合 成 法 が 確 立さ れ て い な い二 置 換3― ハロ プ ロ ペ ン 酸 ア ミ ド 合 成 法 の 開 発 を 目 指し 研 究 に 着 手し た ( 第2章) 。 次 に 、 著者 は3ー ハ ロプ ロ ペ ン 酸 誘 導 体 と 、 ニ ッ ケ ル 、 パ ラ ジ ウ ム触 媒 を 用 い た、 新 た な 炭 素・ 炭 素 お よ び 炭素 一 ヘ テ ロ 元素 結 合 生 成 反 応 の 開 発 を 目 指 し 研 究 に 着手 し た ( 第4章 ・ 第6章 )。 ま た 、 ジ ルコ ノ セ ン 錯 体と ニ ッ ケ ル 錯 体 を 用 い る 新 た な 反 応 系 の 開 発に 着 手 し 、 アル キ ン の 三 量化 反 応 に 関 す る興 味 深 い 結 果を 得 る こ と が で き た の で ( 第3章 ) 、 以 下 報 告 す る 。
2.ジ ル コ ナ サ イク ル を 用 い たア ル キ ン の ハロ ア‑ピiヒ医 応
ア ル キ ン に 対 し 、 位 置 選 択 的 、 立 体選 択 的 に ニ 種 類の 変 換 可 能 な官 能 基 を 導 入す る こ と は 有機 合 成 上 重 要 な 反 応 で あ る 。 今 回 、 著 者 は ジル コ ナ シ ク ロペ ン テ ン と 、イ ソ シ ア ン 酸 エス テ ル と の 反 応 に よ り 得 ら れ る ジ ル コ ナ サ イ ク ル に 対 し 、 塩 化 銅 存 在 下 ハ 口 ゲ ン 化剤 ( ヨ ウ 素 、NBS、NCS) を 加え る こ と で 、ア ルキ ンに対 しハロ ゲンと アミド 基を 導入し た2,゛3一二 置換( カ―3ーハ ロプロ ペ ン 酸 ア ミ ド を 合 成 す る こ と が で き た 。 ア ルキ ン と し て 、脂 肪 族 お よ び芳 香 族 ア ル キ ンの ど ち ら も 用 い る こ と が で き た 。 尚 、 こ こ で 合 成 し た3― ハ ロ プ ロ ペ ン 酸 ア ミ ドは 第 四 章 お よ び第 六 章 で 原 料 とし て 使 用 し た。
3.二 種 塰 整 金 属 鐘 体 一 Zr、 Ni・ を 用 い た ア ル キ ン の 触 堪 的 三 量 坐 医 座 通 常 、 遷 移 金 属 錯 体 を 用 い た ア ル キ ン の三 量 化 反 応 とい う の は 、 ベン ゼ ン 誘 導 体も し く は フ ル ベ ン 誘 導 体 を 与 え る こ と が 一 般 的 で あ る 。 今回 、 著 者 は ジル コ ニ ウ ム 錯 体と ニ ッ ケ ル 錯体 と を 組 み 合 わ せ た 新 し い 触 媒 系 を 構 築 し 、 ア ル キ ンの 三 量 化 体 とし て は 希 有 な シク ロ ペ ン タ ジエ ン 誘 導 体 を 高 選 択 的 に 得 る こ と が で き た の で 報 告 す る 。
Cp2ZrCl2 (0.1 mmoDのTHF溶 液 に ―78℃ でEtMgBr (0.2 mmoDを 加 え1時 間 攪 拌 し 、 ア セ ト ニ ト リ ル(0.1 mmoDを 加 え 室 温 で1時 間 攪 拌 し た 。 こ の 溶 液 にNiCl2(PPh3)2 (0.1 mmol)と3ー ヘ キ シ ン(3.0 mmoDを 加 え 、50℃ で 反 応 を 試 み た 。 そ の 結 果 、3ー ヘ キ シ ン が 三 量 化 し た シ クロ ペ ン タ ジ エ ン 誘 導 体 が 高 収 率 で 得 ら れ た 。 様々 な ニ ト リ ルや メ タ ロ セ ン 、グ リ ニ ヤ ー ル試 薬 を 用 い て 反 応 を 行 っ て も 、 同 様 の 反 応 が 進 行 す るこ と が わ か った 。 条 件 検 討 の結 果 、 本 反 応の 触 媒 調 製 に 用 い る 試 薬 :Cp2ZrCl2、 ニ ト リ ル 、NiCl2(PPh3)2は シ ク ロ ペ ン タ ジ エ ン 誘 導 体 を 高 選 択 的 に 合 成 す る 上 で 必 須 で あ る こ と も 明 ら か に し た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 本 反 応 の 活 性 種と し て 、 Ni‑H種 の 存 在 が 示 唆 さ れ た 。
4.ニ ッ ケ ル 錯 体 を 用 い た3− ハ ロ プ ロ ペ ン 酸 誘 導 体 の 触 媒 的 二 量 化 反 応
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ハロゲン化物の二量化反応は 対称化合物を合成する際に よく用いられる方法である。中でも、
ヘ キ サジエ ン二酸誘導体が生物活性物質 であることから、その前駆 体となる3―ハロプロペン酸 誘 導 体の 効率 的な 二量 化 反応 の開 発は 重 要な 研究 テー マの1っであ る。今回、著者は触媒量の NiCl2(PPh3)2(10 mol%)と亜鉛存在下、(Z)ー3―ヨウ化プロペン酸エステルを基質として反応を試 み たところ、二量体であるへキ サジエン二酸誘導体が生成 することを見出した。種々、反応を検 討 したところ、(Z)←3―ヨウ化 プロペン酸エステル上の置換基の数が増加するにっれ、幾何異性体 の生成を抑制でき、2,3一二置換(Z)−3ーヨウ化プロペン酸エステルを用いた場合には基質の立体化 学を保持した二量体(z Z体)のみを得ることができた。また、2,3―二置換(Z)―3―ヨウ化プロペン 酸 アミドを用いて同様の反応を 行った場合にも、幾何異性 体を生じることなく、基質の立体化学 を保持した二量体(Z Z体)を良好な収率で得ることができた。
5.パラジウム触甚を用い たフル釜Z透婆笠堕金處
現在、シクロペンタジ エニル基とヘテロ原子とが 架橋した形の配位子を持つCGCs (Constrained Geometry Catalysts)が高 い触媒活性の点などから注目 を集めている。様々なCGCsの骨格を構築 する ため には 、2っも し くは3っ の原子によってへテロ 原子と架橋し、なおかつ任 意の置換基を 持ったシクロペンタジエ ンを効率的に合成する一般 的な方法を開発する必要があ る。フルベン誘 導体 は6位の炭素を求核攻 撃することで容易にシクロペ ンタジェン誘導体へと変換 可能であり、
CGCsの骨格を構築するた めの良い前駆体であると考 えられる。
今回、著者は触媒量のPd(OAc)2(5 moI%)と炭酸 銀存在下、ヨウ化プロペン酸 エステルとアル キン類を基質として反応 を行ったところ、対応する フルベン誘導体が高収率で得 られることを見 出した。種々のアルキン を用いて検討したところ、 アルキル基や芳香環を有する アルキン類でも 反 応 は 問 題 な く 進 行 し 高 収 率 で 対 応 す る 多 置 換 フ ル ベ ン を 得 る こ と が で き た 。
6.パラジウ杢筮盤による盒窒塞塑塞璽!ヒ合物の合成
含窒素複 素環化合物は天然物や医薬品 に数多く見られる骨格であ り、それらの合成法というの は 現在までに 数多く報告されている。中 でも、v.ラクタムやピリド ンというのは環内にカルボ ニル基を有 するという特徴的な骨格を持 った化合物群であり、その 合成法には非常に興味がもた れる。
今回、著 者は第2章で得られた2,3ー 二置換(Z)ー3−ハロプロペン酸アミドを基質とし、触媒量 のPd(PPh3冫4(lmol% )と 炭酸 セ シウ ム存 在下 、DMF中n0℃で反応 を行った。その結果、同じ ハロプロペ ン酸アミドという骨格を持っ にもかかわらず、ハロプロ ペン酸アミド上の置換基がア ルキル基の 場合には、五員環であるッ― ラクタム誘導体が、置換基 がアリール基の場合には六員 環であるピリドン誘導体が得られるという興味深い結果が得られた。2,3−ジアルキル―3−ハロプ ロペン酸ア ミドを用いた場合には、基質上のハロゲンがヨウ素、臭素で反応がスムーズに進行し、
良好な収率でッ―ラクタム誘導体が得られた。2,3ージアリール−3ーハロプロペン酸アミドを用いた 場合には、臭化体、塩化体が良好な収率で対応するピリドンを与えた。
7.結 語
著者 は1)ジルコナ サイクルを用いることによ り二置換ハロプロペン酸アミ ドの合成法を確立 し た。2)ジルコニウ ムとニッケル、両錯体を組 み合わせた新たな触媒系を開 発し、アルキンの 三 量化 反応としては 珍しいシクロペンタジエンを 高選択的に合成することに 成功した。3)ニツ ケル 触媒を用いたヨウ化プロペン 酸誘導体(エステル、アミド)の二量化反応の開発に成功した。
4)パ ラジウム触媒を 用いてヨウ化プロペン酸エ ステルとアルキン類から多置 換フルベン誘導体 を 得る ことに成功し た。5)パラジウム触媒を用 いて二置換のハロプロペン酸 アミドから含窒素 複素 環化合物を合成することに成 功した。この時、ハロプロ ペン酸アミド上の置換基がアルキル 基の 場合はッ‐ラクタムを、置換 基がアリール基の場合には ピリドンが得られるということがわ かっ た。
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学 位論文審 査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
高橋 橋本 小笠原 中島
学 位 論 文 題 名
保 俊一 正道 誠
ニッ ケル,パ ラジウム触媒を用いた 3 ―ハロプロベン酸類の反応
松村裕 司君の 「ニッケ ル、パ ラジウム 触媒を 用いた 3 ーハロ プロペ ン酸類の反応」と 題され た博士 論文は全 六章か らなり、 3 ―ハ ロプロペン酸アミドの合成法、および 3 −ハ ロ プ ロ ペ ン 酸 類 を 基 質 と し た 新 規 合 成 反 応 に っ い て 述 べ ら れ て い る 。 第一章 (序論 )では、本論文の研究背景について述べられている。従来、 3 −ハロプ口 ペン酸 誘導体 はプロピ ン酸誘 導体と無 機塩を用 いた方法により合成されていたが、多置 換ー3 ―ハロプロペン酸誘導体にっいては、合成が困難であった。これに対し、松村君は、
ジルコ ナサイ クルに着 目し、アルキンからの二置換一3 −ハロプロペン酸アミドの効率的 な合成 法の開 発に着手 した。さらに、ニッケル、パラジウム触媒を用い、3 ―ハロプロペ ン 酸 類 を 基 質 と し た 新 た な 結 合 生 成 反 応 の 開 発 を 目 的 と し て 研 究 を 行 っ た 。 第二章 では、 二置換―3 ―ハロプロペン酸アミドの合成法について述べられている。ジ ルコナ シクロ ペンテン と、イ ソシアン 酸エステ ルとの反応により得られるジルコナサイ クルに 対し、 塩化銅存 在下ハ ロゲン化 剤を加え ることで、アルキンに対しハロゲンとア ミド基が導入された2 ,3 ー二置換一3 −ハロプロペン酸アミドを合成した。一方、シリル基 を有す るジル コナシク ロペンタジェンからの合成法にも着手し、対応する二置換一3 −ハ ロプロ ペン酸 アミドが 得られ ることも 見出して いる。 尚、ここ で合成 した3 ―ハロプロ ペン酸アミドは第四章および第六章で原料として使用している。
第三章 では、 ジルコニ ウム錯 体とニッ ケル錯 体を用いたアルキンの触媒的三量化反応 に つい て 述 べら れて いる。0.1 当量の ジルコ ニウム錯 体と 0.1 当量の ニッケ ル錯体存 在 下、3 ーヘ キシンが 三量化し、シクロペンタジェンを与えることを見出している。種々の 条件下 で反応 を試み、 得られ た結果に 対し議論 を行っている。また、本反応の触媒調製 に用い る試薬 :ジルコ ニウム 錯体、ニ トリル、 ニッケル錯体がシクロペンタジェン誘導 体 を 高 選 択 的 に 合 成 す る 上 で 必 須 で あ る こ と も 明 ら か に し て い る 。 . 第四章では、ニッケル触媒を用いた3/ ヽロプロペン酸誘導体の触媒的二量化反応につい て述べ られて いる。触 媒量のNiCl2(PPh3)2 と亜鉛存在下、 3 −ヨウ化プロペン酸エステル を基質 として 反応を行 い、二 量体であ るへキサ ジエン二酸誘導体が生成することを見出 してい る。こ の反応の 興味深い点は、3 −ヨウ化プロペン酸エステル上の置換基の数が増
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