博士(経営学)牛丸 学位論文題名
国際合弁の安定性に関する実証研究 学位論文内容の要旨
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本研究は,欧米に進出した日系合弁企業 を対象とする実証研究を通じて,国際合弁の安定性の決定 要因に関する理論構築を目指したものであ る。
第1章では, 国際合弁の安定性に関する研究が要請される背景,および研究の課題と本論文の構成 を説明した。
第2章ではま ず,国際合弁の安定性,自発的協調および強制的協調の3つの概念を説明した。次に 国際合弁の安定性に関する分析枠組を提示 し,それに則して,国際合弁の安定性に関する仮説を析出 した。なお本研究では,国際合弁の安定性 ,自発的協調,強制的協調の間の相互関係を分析するため の視角としてゲーム理論を採用している。
第3章では, 第4章における分析対象組織 として欧米に進出した日系合弁企業が適切であることを 明らかにするために,欧米およびアジアに 進出した日系企業の安定性にっいてマクロ分析を試みた。
第4章では, 第2章において析出した諸仮 説を検証するために,欧米に進出した日系合弁企業への 質問票調査の結果を共分散構造分析および 分散分析により解析した。
第5章では, 本研究によって得られた国際合弁の安定性に関する主要命題を整理するとともに,研 究の意義と今後の課題について言及した。
研 究 に よ っ て 得 ら れ た 国 際 合 弁 の 安 定 性 に 関 す る 主 要 命 題 は , 次 の よ う に 整 理 さ れ る 。
(1)国際合弁 の安定性
O合弁型子会 社の寿命は,完全所有型子会社の寿命より短い。
◎主として水平提携型の多い欧米に進出 した国際合弁の寿命は,主として垂直提携型の多いアジ アに進出した国際合弁の寿命よりも短い。
国際合弁企業の寿命は,一般的に考えられているよりも長い。
自発的協調と安定性との関係
境 界 結 合 活 動 が 多 い ほ ど , ノ く ー ト ナ ー の 機 会 主 義 的 行 動 は よ り 少 な い 。 境界結合活動が多いほど,未来志向性はより高い。
機会主義的行動は,パートナー間の信頼形成を弱める。
未来志向性が高いほど,自発的協調関係が形成される。
未来志向性が高いほど,機会主義的行動は抑制される。
自発的協調の程度が高いほど,国際合弁の安定性はより高い。
相互の信頼関係が強いほど,自発的協調の程度はより高い。
日本企業の初対面の海外パートナーに対する信頼は低い。
強制的協調と安定性との関係
日系国際合弁企業においてはI日本企業のノくヮーが強くなるほど,安定性はより高い。
安定性ー自発的協調―強制的協調の間の相互関係
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自発的協調は 国際合弁の安定性に対して,強制的協調よりも大きな影響を及ばす。
自発的協調と強制的協調は,トレードオフの関係にある。
国際合弁の安定性の高さは,1)自発的協調型(高い自発的協調,低い強制的協調),2)強制 的協調型(低い自発的協調,高い強制的協調)の順である。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 小 島廣光 副査 教授 金 井一頼 副査 助教授 岩田 智
学 位 論 文 題 名
国際合弁の安定性に関する実証研究
1本論 文の 概要
本 論文 は, 欧米 に 進出 した 日系 合弁 企業 を対 象とする実証研究を通じて, 国際合弁の安定性に 関す る理 論構 築を 目 指し た研 究で ある 。
従 来の 経営 学に お ける 国際 合弁 研究 は, 全社 戦略を遂行する際にいかにし て国際合弁を組み込 むべ きか に関 する も のが ほと んど であ り, 国際 合弁の安定性を詳細に分析し た研究は皆無に等し い。 本研 究は ,こ の よう な未 開拓 の研 究領 域を 解明するための分析枠組を独 自に構築し,その枠 組に 則し て, @マ ク ロ分 析, ◎サ ーベ イ型 研究 ,◎ 事例 研究 の3っ を巧 みに 組み合わせ,詳細な 分析 を試 みて いる 。
本 論文 は6っ の章 から 構成 され てい る。
第1章で は, 国際 合弁 の安 定性 が研 究さ れる 必 要性 を論 じる とと もに ,本 研究の分析課題を提 示し てい る。
第2章で は, まず ,国 際合 弁の 安定 性に つい て 考察 して いる 。次 に, 国際 合弁の安定性を分析 する ため の視 角と し て採 用す るグ ーム 理論 の研 究成果を検討している。この ゲーム理論の研究成 果の 検討 結果 にも と づき ,分 析枠 組お よび パー トナー企業の行動一自発的協 調・強制的協調―国 際合 弁の 安定 性間 の 関係 に関 する10の 仮説 を析 出し てい る。
第3章で は, 欧米 およ びア ジア に進 出し た日 系 企業 の安 定性 につ いて マク ロ分析を試みること によ り, 第4章 の分 析対 象組 織と して 欧米 に進 出 した 日系 合弁 企業 が適 切で あることを明らかに して いる 。
第4章 で は , 第2章 で 析 出 さ れ た10の 仮 説 を 検 証 す る た め に ,欧 米に 進出 した 日 系合 弁企 業 を対 象と した サー ベ イ型 研究 が試 みら れて いる 。
第5章 で は , 欧 州 に 進 出 し た 日 系 合弁 企業2社 の事 例 研究 を試 みる こと によ り, 第4章 の仮 説 検証 結果 の再 確認 と 新た な仮 説の 開拓 を試 みて いる 。
第6章で は, 本研 究に よっ て支 持も しく は開 拓 され た主 要命 題を 下記 のよ うに整理するととも に, 本研 究の 含意 と 今後 の研 究課 題に っい て言 及し てい る。
@ 合弁 型子 会社 の 寿命 は, 完全 所有 型子 会社 の寿 命よ り短 い。
◎ 主 とし て水 平提 携型 の 多い 欧米 に進 出し た国 際合 弁の 寿命 は, 主と して 垂直 提 携型 の多 い アジ アに 進出 し た国 際合 弁の 寿命 より も短 い。
◎ 国際 合弁 企業 の 寿命 は一 般的 に考 えら れて いる より も長 い。
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境 界 結 合 活 動 が 多 い ほ ど , パ ー ト ナ ー の 機 会 主 義 的 行 動 は よ り 少 な い 。 境界結合活動が多いほど,未来志向性はより高い。
機会主義的行動は,パー卜ナー間の信頼形成を弱める。
未来志向性が高いほど,自発的協調関係が形成される。
未来志向性が高いほど,機会主義的行動は抑制される。
自発的協調の程度が高いほど,国際合弁の安定性はより高い。
相互の信頼関係が強いほど,自発的協調の程度はより高い。
日本企業の初対面の海外パートナーに対する信頼は低い。
日系国際 合弁企業 においては ,日本企業のパワーが強くなるほど安定性はより高い。
自発的協調と強制的協調は,相互にトレードオフの関係にある。
国際 合 弁の安定 性に対し て,自発 的協調は 強制的協 調よりも 大きな影響 を及ばす 。 国際合弁の安定性に対する自発的協調と強制的協調の影響は,国際合弁の発展段階によっ て異なる。a)成長期では,自発的協調および強制的協調により合弁関係が形成されており,
合弁の安定性は中程度である。b)成熟期では,もっぱら自発的協調により合弁関係が形成さ れており,合弁の安定性は高い。c)衰退期では,もっぱら強制的協調により合弁関係が形 成されており,合弁の安定性は低い。
2本論文の評価
本論文の学術上の貢献としては,次の4点を上げることができる。
第1に,研究対象の新規性である。本論文は,国際合弁の安定性とぃう極めて重要であるにも かかわらず,ほとんど解明されてこなかった問題に関して理論構築を試みている。戦略提携や組 織間の協働が興隆し,そのメカニズムの解明が要請されている現在,本論文は極めて時宜を得た ものである。
第2に,分析視角の斬新性である。本研究では,協調には自発的協調と強制的協調の2っが存 在し,現実の合弁企業の協調関係はこの2つのバランスの上に成り立っていると捉え,分析を試 みている。パートナー企業の行動ー自発的協調・強制的協調←国際合弁の安定性問の関係に関す る分析枠組は,説明力・記述カの点で優れている。
第3に,国際合弁研究への貢献である。詳細な実証研究の結果,国際合弁の安定性に関する分 析枠組の妥当性が証明されるとともに,15の仮説命題が支持もしくは開拓されている。これらの 仮説命題は,この研究分野の大きな知的資産となろう。
第4に,いくっかの理論的・実践的含意を有していることである。実証研究の結果は,組織問 関係に関する取引コスト理論,資源依存理論,オープンシステム理論の発展可能性を示唆するだ け で な く , 企 業 が 国 際 合 弁 の 安 定 性 を 高 め る た め の 具 体 的 方 策 を 提 示 し て い る 。 以 上 の よ う に , 本 論 文 は 高 い 学 問 的 価 値 を 有 す る が , 問 題 が な い わけ で は ない 。 第1は,研究結果の普遍性に関する問題である。本論文の分析対象組織は全て日系合弁企業で ある。したがって分析結果が,日本企業に固有のものか,それとも海外企業にも妥当する普遍的 なものかを明確に識別できない。
第2は,分析範囲に関する問題である。本論文では,国際合弁に関わる2組織間の関係に焦点 を合わせ分析を試みている。しかし,実際の組織は極めて複雑なネットワークの中に存在してお り,多様な連合関係を構築している。本論文では,ネットワークの影響は考慮されていない。
第3は,国際合弁の安定性の規定要因に関する問題である。本論文では,もっぱら国際合弁設 立後における安定性の規定要因が分析されている。しかし,国際合弁の安定性は,パートナー企
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業の過去の提携経験等の合弁設立以前の要因にも規定されるであろう。本論文では,こうした設 立以前の規定要因については考慮されていない。
しかし,これらの不十分さは,今後さらに研究を深める際の課題であり,本論文の学問的価値 を損なうものではない。
3結論
以上の評価にもとづき,われわれは本論文が博士(経営学)の学位を授与するに値するもので あることを認める。
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