家庭の教育機能を高めるための支援の在り方に関する研究 −市町村における行政支援の視点から− [ PDF
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(2) (2) 研究の方法. なるのかなど家庭教育の特性について明らかにした。. 一つは先行研究分析を通して、他の一つは実態調査の. さらには、家庭教育に対して国や県などの行政機関は. 分析を通して研究テーマに迫ることとした。. どのような対応をしているのか(対応してきたのか)に. 先行研究分析においては、研究者・実践者の書かれた. ついて、法律、施策、各種審議会や報告等を基に、明ら. 文献や国における各種審議会や懇談会の答申や報告書等. かにしようと試みた。. を基に家庭教育に関わる基本的概念や家庭教育に関する. 第3章では、子育て・家庭教育をめぐって、今日、ど. 今日的課題を明らかにしようと試みた。. のようなことが問題になっているのかについて、先行研. 実態調査においては、アンケート調査と聴取調査を実. 究や各種資料等を基に 、「家庭に関する問題」と「地域. 施した。アンケート調査では市町村行政担当者、保育園. 社会に関する問題」に分けてその実態を明らかにした。. 及び幼稚園・小学校・中学校の学校関係者と保護者の三. 第Ⅱ部調査編は、本研究を実証的に進めるために実施. 者を対象に、子育て・家庭教育の実態、家庭教育支援の. したアンケート調査と聴取調査について、その調査計画. 実態、家庭教育に対する考え方や行政に対する意見や要. と調査結果の内容、分析考察の結果について整理した。. 望等について把握した。. 第1章では、調査の目的・内容・方法等の調査計画と. 聴取調査においては、子育て・家庭教育を所管してい. 調査票の回収状況及び調査結果の見方について提示し. る行政機関を訪問し、子育て・家庭教育に対する考え方. た。ちなみに、調査対象は三者(行政担当者・学校等関. 及び現状や課題について拝聴した。また、児童センター、. 係者・保護者)で、調査項目42、依頼調査票数2,6. 地域子育て支援センター、子育てサークル、子育てを支. 77、回収票数は、1,883(行政44、学校等31. 援している団体等を直接訪問して活動の実際を見聞する. 5、保護者1524)で、回収率は70.3%であった。. とともに、参加者や運営担当者から意見を拝聴した。. 第2章では、アンケート調査で回収した1,883の. これらの先行研究分析や調査結果の分析を踏まえて研. データを分析・考察し 、「市町村における取組の基本姿. 究テーマに迫った。. 勢」、「市町村における家庭教育支援の実態」、「学校及び PTAにおける支援に実態」、「子育て・家庭教育支援ネ. 3. 本研究の概要. ットワークの実態」、 「家庭教育支援に対する意見・要望」. (1) 各章の概要. の5つの視点から、その実態と課題を明らかにした。. 本論文の構成は、量的に多かったために、第Ⅰ部理論. 第4章では、聴取調査を実施した中から、子育て・家. 編、第Ⅱ部調査編、第Ⅲ部提言編と三部構成にし、それ. 庭教育の支援を行っている地域婦人会(「地域のおばあ. に序章と終章を付加した。以下ぞれぞれの章の概要につ. ちゃん事業」)、豊津寺子屋実行委員会(「 豊津寺子屋事. いて述べる。. 業」)、地域子育て支援センター(行政運営と民間運営) 、. 序章では、私的な教育であるといわれている家庭教育. 子育てサークルの活動の実際を観察した様子、担当者や. に対して、なぜ支援の必要が叫ばれているのか、その背. 参加者から直接に聴き取った活動の成果や問題点等につ. 景にあると思われる家庭や地域の教育に関わる現状につ. いて整理し、考察を試みた。. いて概略的にまとめた。. 第Ⅲ部提言編は、第Ⅰ部理論編、第Ⅱ部調査編の結果. 第Ⅰ部理論編は、研究の目的や仮説、研究方法及び本. を基に、筆者の経験等も踏まえ、本研究の究極のねらい. 研究テーマの中核となる家族・家庭・家庭教育の概念規. である「家庭の教育機能を高めるための支援の在り方」. 定を明確にするとともに、家庭教育の特性や家庭教育に. について、特に行政の立場からの支援の在り方について、. 関する行政の動向及び今日的課題について、先行研究を. 整理した。. 基に整理した。. 第1章では、家庭教育は、基本的には私的な教育領域. 第1章では、本研究の目的と特に究明したいと考えた. であり、他者が立ち入ることは本来の姿ではないこと、. 視点を提示するとともに、研究に迫るための研究の方法. また、中央教育審議会でも「家庭は全ての教育の出発点. を提示した。. であり、原点である」と指摘しているように、第一義的. 第2章では、研究テーマの中核である「家族」や「家. には親の自覚と責任で行われるべきものであることか. 庭」の定義を明らかにするとともに、特に家庭の教育機. ら、特に、家庭教育の主体者である親に対し、期待も込. 能についてその概念を明確にしようと試みた。また、家. めて「家庭教育に対する親の在り方」についてまとめた。. 庭教育の定義を明らかにするとともに、家庭教育の目標. 第2章では、家庭教育に対する行政支援の在り方につ. や内容、家庭教育は学校教育や社会教育とどこがどう異. いて提言する前に、「家庭教育とは、親が子どもに対し -2-.
(3) て行う教育」と定義されるが、この定義は抽象的でその. ④ 今日、懸念視されている親及び子どもに関する問題. 方向性が見えないので、どのような観点から教育にあた. は、経済的要因や階層的要因とは関係なく、どのような. るべきか、すなわち、親が家庭教育を行うにあたっての. 家庭においても起こり得る要素を持っている。従って、. コンセプトを明らかにした。(第1節). 問題のある親、学びたい親、興味関心のある親、参加を. また、私的な教育といわれる家庭教育に対して、なぜ. 希望する親だけをターゲットに対応するのではなく、全. 支援するのか、社会的支援の必要性や支援にあたっての. ての親をターゲットにした支援の在り方が必要である。. 基本的なコンセプトを明らかにした。(第2節). (全ての親を対象にした支援対策). さらには、社会的支援の中にあって、特に行政が支援 を行う場合の基本的な考え方(第3節)と、具体的な行. ⑤ 全ての親が子育て・家庭教育の重要性をしっかりと. 政施策と展開の方向性について明らかにした。 (第4節). 認識し、親としての自覚と責任を涵養することが極めて. 終章では、本研究のベースにあった調査は、宮崎県内. 重要である。そのため、現在の親はもとより現在妊娠中. の全市町村教育委員会と保育園・幼稚園、小学校、中学. の夫婦やこれから親になる結婚を控えた若者に対して. 校及びその保護者を対象に実施したことから、宮崎県の. も、子育て・家庭教育に関する学習の機会をセットする. 実態でもある。そこで、調査に対する理解と協力いただ. 必要がある。(親になる前からの学習の必要). いた御礼と感謝の気持ちも込めて 、「宮崎県・宮崎県教 育委員会への期待」をあえて記載した。. ⑥ 近年、子育て中の親を支援するサークルやNPOな どが組織され、従来には見られなかったような支援活動. (2) 本研究から明らかになったこと. が見受けられる。これらのサークルの活動は、子育て中. 本調査研究から明らかになったことはいろいろある. の親にとって身近な存在であり、気軽に利用でき利点が. が、主なことは以下の点である。これらのことは裏返せ. ある。今後は、子どもを持つ親と地域の子育て経験者と. ば今後の課題ともいえる。. の交流の機会を拡充したり、子育て支援サークルを積極 的に育成し、日常生活圏の中に相互扶助の仕組みをつく. ① 民法第820条に「親権を行う者は子の監護及び教. り、ネットワーク化することが望まれる。(日常生活圏. 育をする権利を有し、義務を負う。」とある。子どもの. の中での子育て支援ネットワークづくり). 誕生は、何物にも代え難い尊い「生命体」である。この 生命体を愛しみ、育み、一人の人間として成長させるこ. ⑦ 子育てと家庭教育は密接な関係にあるとはいえ、基. とは、法律に定めがあろうがなかろうが、何はさておい. 本的には異なり、行政機関においては所管が分かれて対. て親の責任であることをしっかりと自覚すべきである。. 応している。しかし、子育てと家庭教育とを区別して捉. (親は責任と自覚と自信を). え、対応することは、親のニーズに適切に対応すること にはならず、効果の上からも問題がある。従って、子ど. ② 学習機会の提供は、大変有効な支援の手段ではある. もの養育と教育に関わる関係行政部局が、縦割り行政の. が、参加がなければ意味がない。そこで、週末や夜間の. 発想を打破し、横断的・総合的な行政対応が求められる。. 開催、保育付き講座、発達段階に応じた学習内容、受動. (行政部局間の横断的・総合的な対応). 型から能動的な参加型の学習形態、単発型から継続発展 的な学習など受講者のニーズを踏まえ、魅力ある学習機. ⑧ 今日の子育て・家庭教育に関わる問題は、複雑多岐. 会の提供を工夫する必要がある。(ニーズを踏まえた多. にわたっており、裾野の広い問題である。従って、限ら. 角的な学習機会の提供). れた人材と予算の行政のみの対応では、全ての親を対象 にすることは難しく、また、真の親のニーズに対応しに. ③ 従来、「学習機会の提供」といえば、学級講座の開設. くいなど、細かいところまで支援の手をさしのべること. や講演会の開催などが定番になっていたが、子育てサー. が困難である。行政機関は、子育て支援サークル等の民. クルの活動を見ると、そこは日常的な様々な「学びの場」. 間団体を積極的に育成するとともに、それらの団体のネ. となっている。行政はこれらの「子育てサークル」を親. ットワーク化を組織する必要がある。そして、これらの. が自主的・主体的に学ぶ「学習の場」として位置づけ、. 団体との連携を密にし、協働して事業を展開するなど、. 組織化し、育成強化することが期待される。(自主的・. 今まで以上に民間団体との連携強化が求められる。(行. 主体的に学ぶ環境づくり). 政と民間団体との連携・協働の必要) -3-.
(4) ⑨ 従来は、血縁・地縁が住民交流の基盤になっていた. 本研究論文を完成させるまでには、当然のこととして. が、今日では都市化、個人主義の浸透などによって、家. 一朝一夕にはいかず、試行錯誤の連続で平坦ではなかっ. 庭を取り巻く地域の共同性が崩壊し、住民による相互扶. た。宮崎と福岡とを行き来しながらの、しかも仕事と研. 助の機能が難しくなっており、親たちが地域や社会の支. 究の両立であったこともあって、研究に充てる時間が見. えを得られなくなってきている。そこで、子育て中の親. いだしにくく、土曜・日曜は殆ど図書館通いで、平日も. や子育てを支援する人々が気軽に集まって活動する 「場」. 勤務を終えて帰宅後も入浴・夕食もそこそこに夜遅くま. や「機会」を新たに構築する必要がある。(新たな地域. で机に向かう毎日で、時には徹夜をすることもあった。. 共同体の再生). この年齢にして、よくも堪えられるものだと我ながら感 心することもあった。. ⑩ 子育て・家庭教育はあくまで学校外のことであり、. 特に、調査には多くの労力を要した。調査対象を「行. 学校に期待を寄せることは酷であるが、家庭の教育力が. 政担当者」、「学校等関係者」 、「保護者」と三者にしたこ. 高まることは学校にとってもメリットである。子育て中. と、調査サンプルを欲張ったこともあって、調査票の作. の親の支援に当たって学校は有効な場であり、学校が子. 成から印刷、依頼、回収、データの処理、分析考察と予. 育てに役立つ情報を提供したり、親の意識を啓発したり、. 想以上の時間と労力を必要とした。しかし、指導担当の. 学習の場として学校施設を開放することなど、今まで以. 南里悦史教授の適切な助言と励まし、多くの関係者のご. 上に家庭教育をサポートする取り組みが期待される。. 協力によってどうにか完成にこぎつけることが出来た。. また、未来の親を育むという観点から保育体験学習の. また、一方では本研究に取り組んで様々な経験をする. 拡充が期待される。これらの活動を円滑に進めるため、. ことができ、新たな自己発見もあった。例えば、多くの. 学校と地域(家庭)とをコーディネートする人材を配置. 研究者や実践者の文献を読むことができ、自分なりに識. し、校務分掌に位置づけることが望まれる。「 ( 開かれた. 見を広めることができたこと、現役時代に仕事で培った. 学校」の更なる実践). 経験や取り組んできた研究資料等を再活用することがで きたこと、これまでに構築してきた人間関係(人脈)を. ⑪ 子育て中の親の大半は、企業等に勤めており子育て. 本研究活動に活かすことができたこと、文献や資料等を. に関わりにくい状況にあり、子育てに参加しやすい雇用. 見る目が変わってきたこと、すなわち、文献や資料を鵜. 環境づくりが課題である。また、職場内で子育て・家庭. 呑みにするのではなく、批判的・懐疑的に観るようにな. 教育に関する学習の機会を設定したり、企業等が所有す. ったことなど、今まで以上に好奇心が旺盛になり、興味. る施設を親子が活動する場として提供するなど、企業等. 関心が深まり、新鮮な気持ちで前向きな生き方をするよ. が子育て・家庭教育に協力することが求められる。その. うになったような気がする。まさに学ぶことは甦ること. ため、企業等の雇用主の理解と協力を得る取り組みも併. である。. せて求められる。 (企業等職場の理解と協力体制づくり) 4. 主要参考文献. ⑫ 子育てに関わる問題は、しつけや教育の問題のみに. 石川. 限らず、健康面や精神面、経済面に係わるものまで多岐. 小田・日浦・中橋編著「家族援助論」北大路書房 2005年. にわたっており、専門的な対応が必要になってきている。. 改訂保育士養成講座編集委員会編「家族援助論」全国社会福祉協議会2005年. また、今後、共働き家庭が増加することを考えると、. 森岡・望月共著「新しい家族社会学」培風館1997年. 実著「現代家族の社会学」有斐閣2004年. 家庭教育支援に当たっては、仕事と子育ての両立の方法. 四方寿雄著「家族の崩壊」ミネルヴァ書房1999年. や仕事への復帰の仕方など職業生活のあり方の問題に至. 畑中宗一著「家族支援論」世界思想社2005年. るまで幅広い助言が必要になってくる。. 山根常男著「21世紀の家族を考える」1996年 湯沢雍彦著「データで読む家族問題」NHKブックス2004年. 従って、これらの問題にまで対応するためには、ある 程度専門的な情報や知識を有するアドバイザーが求めら. 原田正文著「子育て支援とNPO」朱鷲書房2003年. れる。なお、養成されたアドバイザーは、親に対する助. 山田昌弘著「家族というリスク」勁草書房2001年. 言のほか、子育て交流事業の企画、子育てネットワーク. 尾木直樹著「子どもの危機をどう見るか」岩波新書2003年. 活動のコーディネート、行政と民間団体とのパイプ役を. 佐藤一子著「子どもが育つ地域社会」東京大学出版会2002年. 果たすことなどが期待される。(家庭教育アドバイザー. 「こころの科学103―育児不安―」日本評論社2002年. の養成と配置). 中央教育審議会「新しい時代を拓く心を育てるために」1998年 -4-.
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