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時効の援用権者についての一反省

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Academic year: 2021

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(1)

− ー − 戸 r r − 〆 − − − 可 一 一 一 一 一 一 一 一 ‑ − − − − −

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− 一 一 − 一 一 一 = タ マ マ ュ ロ ー ー − 士 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 P 一 一 一 一 一 一 . ← マ ー ー ー ー マ ー 一 F 一 一 一 一 両

..,''

64

一︑問題の所在

従来︑時効の援用をなし得る者の瞳囲に関して︑時効の利益を直

接に受くべき者に限るとなす説︑多少その瞳囲を拡張する説︑およ

び︑・訴訟の当事者だと解する説の三つに大別できることは周知の通

りであるが︑判例および諸学者がそれん︑採る標準に依って﹁当頚者

﹂に属するか否かを区別しているところを見ると︑結果は区々であ

って︑同じ説を採る者必ずLも同一の結果を筒してはおらず︑未だ

その明確な範囲は倒されていないようである︒

以下において︑各の説の解釈o拠るべき根拠︒その合理性を考察︒

批判L︑最後に卑見を展開Lてこの問題の解決への提案を示ざんと

するものである︒ 一︑問題の所在二︑従来の解釈三︑従来の解釈の検討四︑卑見五︑むすび

時効の援用権者についての一反省

凹〃

二︑従来の解釈

先ず第一に︑民法第一四五条に所調﹁当事者﹂とは時効により直

接に利益を受ける者に限るとなす説︵直接受益者税︶は︑判例およ

び多数の学説の採るところであるが︑判例は︑民法第一四五条に所︑︑︑謂﹁当班者﹂とは﹁時効により直接に利益を受くべき者︑即ち取得

時効により権利を取得し︑または消滅時効によって梅利の制限もし︑︑︑くは義務を免れる者凌指称する︒故に︑時効により間接に利益を受

ける者は所詔当事者ではない︒もLかくの如き者も独立して時効を︑︑︑授用十ることを5るとすると︑直接に利益を弓ける者例えば俵務者

は︑時効の利益を受けることを欲せずして時効を援用せずもしくは︑︑︑︑これを捌棄したがため俄務の弁済を命ぜられたに拘らず︑間接に利

益を受ける者例えば抵当権を設定した第三者は︑時効を援用して抵

当権の行使を免れることを得ぺく︑俵権者は主たる俄梅を有しなが

ら従たる抵当権を失うが如き不合理なる結果をみるに至るであろ

う︒これはよもや洪律の望むところではあるまい︒尤も︑当事者の

承継人は当事者の瀞効援用権を承継するから︑当事者と同視せらる

︽●■凸︶︸べきものであるから︑時効を援用L5べきは当然である﹂とし︑更

に一︲時効は公益のために設けた制度であるから︑・当事者の援用する

(2)

I

65

と否とに拘らず裁判所はこれによって裁判をなすも不可なしとすべ

Iきもの典ようであるが︑時効の利益を受くべき者がこれを受けるこ

とを欲せずして証拠により理非を争わんとする上とあるべく︑かL

ろ場合において強いて時効の利益を得せしめることは︑その必要なきのみならず却って当事者の意思に惇るものである﹂巫十ろ︒

判例はか上る根本的立場にたって︑具体的には﹁当事者﹂に属するものとして︑保証姫連帯鑑羅パをあげ︑﹁当事童に属せざる者

︽5︾には︑物土保証人・担保不動産の第三取得者を含ましめ︑更に︑詐

一6−︵7︶害行為の受益者・暦称相続人の談受入・売買予約の目的物につき所

︵8︶有権もしくは抵当権を取得した者についてもその当事者性を否定し

ている︒

ところで︑判例が保証人に当事者性を認めるのは﹁主たる債務が

時効によって消滅するときは保証償務もまた消滅すべきものである︑︑︑から︑保証人は時効を援用するについて直接の利益を有し︑その当事者なること疑いをいれ液い︒果して然らば︑保証人において時効

を援用する以上は︑たとえ主たる侭務者が他の訴訟においてこれを

援用しなくても︑侭務は時効の完成した時に消滅すべきであるから

︵9︶保証人はこれによって保証侭務を免かるべきものである﹂ことを

理由と十る︒連帯保証人については﹁保証人が主たる俵務者と連帯

して価務を負担したときでも︑なお保証恢務の特有たる主たる便務

に附従する性質を失わないから︑主たる依務が消滅したときは保証

憤務もまた消滅に帰するものといわなければならない︒而して︑保

証人が主たる侭務者の償権が時効により消滅したことを主張するを

うろことはつとに本院判例の認めるところであるから︑本件の如き

I

主たる侭務者と連帯して保証侭務を負担した甲もまた︑自己恢務に

対する消滅時効が中断せられもしくは時効の利益を拠棄したときで

も︑主たる侭務者の侭務が時効により消滅したことを主張するを妨

げないと共に︑右の如き事悩があったからといって単にこの一事に

より甲において主たる俄務が時効により消滅したことを主張するの

︵叩︶意思なきものというをえない﹂と説明する︒

その当事者性を否認する抵当不動産の第三取得者の如きについて︑︑︑は﹁か入る者は抵当便権の消滅時効にか上ったがため直接に利益を

うぐべきではない︒抵当便権が消滅するときは︑その取得した不動

産上に存する抵当権が消滅するの結果その所有権が安固となるの利︑︑︑益はこれをりけるであろうが︑その利益は時効の直接の効果ではな

いから︑抵当債権の消滅時効を援用しうべき当事者というぺからざ

︵Ⅷ︶ること︑論をまたない﹂と解Lている︒︑︑︑すなわち判例は時効援用の当事者を︑直接に時効の利益を受くべ

きか否かという基準のもとにその範囲を翻せんとしているわけであ

る︒互・直接受益者説を採る学説には︑﹁援用﹂の性賀を判例と同じく訴

訟手統に関する規定と解する説︵訴訟行為説︺と︑﹁援用﹂を実体

法的に解する説︵実体行為説︺との二つがあるが︑いずれも時効援

用権者の範囲を定める華準としては判例と同様で︑﹁時効により直

接に利益を受くる者﹂をたて上いるが︑説くところ必ずしも同一の

結論には達してはいない︒例えば﹁時効によりて土地の所有権を取

得する者より地上権等の設定を受けたる者﹂は時効によって直接に

利益を受くる者ではないから︑﹁当事者﹂ではないとするのは直接受

I

(3)
(4)

「=冒云

● 〜 T‐‐一一ロ ー ト , ト ‐一‐' 一.ゞ .1

67

当事者が時効完成を知る場合に限らないのであるから︑援用権を実︲

体法上の権利と櫛成し︑その権利の行使︑不行使を条件と解する論三︑従来の解釈の捻肘

理によっては問題は解決されない︒そして結局か上る弁済・承認は時効の援用権者の瀕囲についてかくの如く諸説が対立十るのは︑I少くとも農時智勇庵l卜鴇消滅蕩豐と矛厚る鶯噺の恩厘の農についての農の賀︑時効の勢にっ

有力なる証拠方法藷構成するものと考えられ︑﹁援用﹂をこの証拠いての見解の相異︑更には時効制度の存在理由についての立場の相

方法の援用としての訴訟法上の行為と解することによってのみ上記異に寮で遡って出て来るものLように思われる︒

︽Ⅳ︸の弁済を弁済として認め得ると説かれる︒で援用権者の範囲につい・側直接受益者についてて農判圭当譽l訴訟当譽説lだと考え鳶られると見〃直接受欝驚︑霊屋の農嘉訟上の防禦方鴬と嘩る

へ⑲︶てよいであろう︒説と︑時効の利益を受けようとする実体法上の行為︵意思表示︺だ次に川島教授は︑﹁援用﹂を時効抗弁権の裁判上の主張だとして援と解する識どに分れるが︑いずれも時効制度の存在理由の第一次的

用権者を訴訟の当事者だと解される︒教授は時効の裁判規範的効力なものとして︑法律が社会の法律関係の安定のために︑一定の期間

に着眼されて︑時効の主な理由を︑裁判の根拠たるぺき事実関係の硫継続した事実状態を覆えさないことが至当だと考えていることをあ認が長い時の経過により困難となることにありとぎれ︑従って問題げI社会秩序維持説l﹁援厘の規定は︑時効の効果をして一

は権利そのものではなくて︑裁判ににょる権利保謹すなわち訴権な面社会の永規した事実状態を尊重するとLもに︑他面個人の意思を

いし請求権に関するのであり︑私権の喪失はこのことの反射的効果も認めることLしてこの間の調和を図らんとするものであるとみ

であると解される︒そこでドイツ法流に︑時効を請求権e園や昌島︶ろ︒﹂︑b︑の消滅という裁判上の平面における権利の現象型態に関わるものとかくして直接受益者説は︑援用権者を︑時効により直接に利益を

観念し︑判例・少数の学説と同じく︑﹁援用﹂を︽裁判をして時効受ける者という基準で決定しようとするものであるが︑直接にとい

の効果に基き裁判させるための裁判上の主張だと考えて︑民法第一う表現は甚だあいまいであって︑その窓味を描捉し難く︑援用椛者

四五条の﹁当事者﹂を裁判上の当事者だと解される︒そして︑当該一の範囲を定めるための明砿な基準となり得ない︒か坐る表現は判例

の訴訟上の請求において時効の主張をなす法律上の利益を有する者・学説が各額の﹁利害関係人﹂などを定義するに当って応脅採る常

を標準に採つ富か上る利益を有する者はこ上に所謂当事者で︑使套的手段なのであるが︑援用権者の範囲はなるべく明砿に示すべき

務者のみならず︑連帯保証人●保証人等はこの﹁当事者﹂であるが︑物ものであって︑明砿に示し得るものまでもあえてあいまいにする必

︽咽︶上保証人︒抵当不動産の第三取得者については疑問だとされている︒要はおるまい︒具体的な場合を考えてみても︑その結果或いは援用

誕︑

︽.7

︸ゞ#︒﹃︲Lも●0︒︒←P 少Eqlh

1

I

(5)

権者となり或いは援用権なしとせられ︑標準とするところにはつき5に思われる︒

館りした理論的根拠が示されておらず︑多少なりとも便宜的な解釈に②多少拡張説について

終っているようである︒それならば多少拡張説はどうかといえば︑やはり問題が残る︒こ︑︑︑判例の解釈によれば援用梅ありとせられる保証人も︑直接にといの説では﹁援用﹂の性質を援用権者の単独行為だと解されるのであ一口

うことを厳密に考えた場合︑彼は主たる恢務が時効により消滅したるが︑援用権者の範囲を縮限することは時効によって折角社会の法

︐坐め保証侭務の附従性からして︑それによってむしろ間接に恢務を律関係を確定しようとする趣旨を破るおそれのある所から︑多少そ︑︑免れるのであるから︑保証人自身にとってみれば時効の利益はむしの範囲を拡張して解釈されるわけであるが︑何故多少その範囲を拡

ろ間接に受けるというべきである︒それにも拘らず保証人に主憤務張Lなければならないか︑およびその所謂多少の範囲如何をたずね︑︑︑︑

者の時効援用梅を認め乍ら︑物上保証人・抵当不動産の第三取得者のた場合︑理論的に明砿な標準を示すことが難しく︑充分に説明し得︵鋼︶時効によって受ける利益は間接であるからとして援用権を否定するない難点を蔵しているのではないかと考えられる︒のは︑そこに理論として一賀しないものがあるといわざるを得ない︒③訴訟当班者説について

直接受益者説を採る学説についても︑例えば﹁僧称相綴人より相然らば訴訟当或新説はどうであろうか︒この税によれば﹁当馴者﹂

続財産中の或る物を譲けたる者が民法第八八四条所定の時効を援用とは裁判上の当事者を意味するものであり一応援用権者の範囲につ

︵訓︶し得るや﹂の問題について︑三潴博士がこれを否定されるに対し︑き明硴な標準が示されているかの如くである︒然し乍らやはり理論

︵一︾.●一同じく直接受益者説を採られる穂種博士は時効の直接受益者に含ま的にいって尚不充分な点が残されているように思われるのである︒しむべきであるz説かれている︒どの説をとられる吾妻教授は︑時効制度の存在理由としてそれが

次に例えば﹁物上保証人は侭務者の債務の消滅時効を援用し得べ︑一種の法定証拠を形成するものである所に第一次的な理由を考えら

きや﹂の問題について︑判例がこれを否定していることは理解できるれ︑﹁援用﹂をかLる証拠方法の援用という訴訟法上の行為だと解︷型﹀︲︵理︶が︑同じく直接受益者説を採られる鳩山博士や三潴博士が肯定されされている︒そして従来の学説が時効完成嬢の弁済・承認の効力にていることは一貫しないものがあるように思はれる︒ついて採った説明に批判を加えられた点には賛成だと考えるわけで

︵幻︶更に例えば﹁抵当不動産の第三取得者は当該抵当権に依って担保あるが︑だからといって直ちに実体法に規定されている時効の規定

されている俵権の時効を援用しうべきか﹂の問題について︑判例が・を訴訟法上の規定だということを得ないのではあるまいか︒近代司

︵班一否定するのは分るがハ直接受益者説を採られる穂穣博士が判例に反法々においては︑ともかく実体法と訴訟法とは減然区別して規定さ

対して﹁再考を要する﹂と述べていられるのは理由が鮮明でないよ・・れて発展して来たものであって︑それをわざノ︑混滑して考えるの

(6)

F 一 一

P

↓9

I

は理論に無理が来るのではなかろうか︒

教授は︑時効は法定の証拠方法を提供するものであるから︑裁判官

は時効の完成があった場合には︑権利の得喪があったものとして裁

判すべしというのであり︑民法第一四五条により援用した者にのみ

それを許し︑援用しなかった場合にはそれを証拠として裁判するこ

とはできないのだから︑﹁援用の当頚者﹂というのは裁判上の当事

者を意味するものであると解釈しておられるわけであるが︑もしそ

うであるとすれば︑訴訟上証拠を提出しない当事者がそれに基く判

決を得られないのは︑民事訴訟法上の弁論主義・対立当事者主義の

立場からいえばむしろ当然のことであって殊更﹁援用するにあらざ

れば裁判所これによって裁判をなすことを得ず﹂と規定する必要は

ないであろう︒また︑職権による証拠調の規定が民事訴訟における

フェアプレイの原則の要舗に基き民事訴訟法上の規定から削除され

た現在︑その間の説明を如何にしてなされるのであろうか︒

川島教授も︑時効制度の第一次的な根拠を時効が法定証拠なるこ

とに認められ︑時効にか坐るのは請求権e愚壱昌一︾sであり︑時

効は︑時効にか上った請求権を極絶するところの︑これに対する抗

弁権を発生せしめるのであり︑︵詣謹用﹂ほこの抗弁権の行使すなわち裁判上の主張であるとされる︒そして援用権者は裁判上の当事者

であり︑当該の訴訟上の請求において時効の主張をなす法律上の利

益を有する者であると解していられるが︑吾民法の時効の建前は権

利そのもの上取得又は消滅の効果を生ずるのであり︑独逸民法は︑

の消滅時効においては権判そのもの上消滅とせず︑椛利から生ずる諸

求梅色目名目︒gの消滅とする点に特色があるといわれている︒

l

I

以上︑時効援用権者の範囲についての諸説を述べて来たわけであ

るが︑結局学説の大勢の赴く方向は時効制匪の根拠・時効の効力o援

用の性質等に関する理解を異にするにしても︑時効を基として種み

重ねられて現存する法律関係の安定化l取得時効にあっては現権

利者︑消滅時効にあってはそれによって現存利益を受くべき者︑の

保謹lを目指しているものといえるであろう︒すなわち援用権者

の範囲をできるだけ拡く解釈することによりこれらの者の保護を図

らんとしているものLよ5である︒判例にもまたか異る兆しのみえ

るものがあるのである︒

而してその反面︑時効利益の享受を喜ばない者の意思をもあくま

で尊重しようという周到なる用意のもとに︑援用の効果の相対性も

脱かれている︒詳言すれば︑援用権者が数人あるとみられる場合︑

それが同時併存する場合であっても或いは異時亙畷的であっても︑

一人の援用・不援用の効果は他の援用権者に影響を及ぼさないと解 教授は︑時効を純実体法的な私権の消滅として観念することから時︑︑︑効に関して様堂の問題が生ずるのであって︑もし時効を請求権の消滅という︑裁判上の平面において考えれば技巧的なスコラ的解釈論の迷宮に入りこむ必要もなくなり︑すべて簡嘩に解決され得ると述べておられる︒

然し︑このことは︑立法論としてなら既に諸学者も独逸民法と同様

ム︶に消滅時効を樅成した方がよかったと指摘しているところであるが

法制を異にする吾民法の時効制度において同様の解釈を採るのは無

理ではないかと思われるのである︒

I

(7)

一・ ー ニーー −− 一

I I

70

することである︒このことは具体的な一例をおげると例えば︑暦称

相瞬人から相税財産を渡受けた者において︑僧称相綴人の援用・不

援用は趨受人に影轡を及ぼさないこと上なるのである︒

従来の学説が時効援用権者を言々・して来たのは︑たとえその範囲

に関し明砿な基準は与えられなかったにしろ︑或いは理論に無理が

あったとしても︑結局如何にして現存の法律関係を守るかIl如何

にして時効による現存受益者を保護するかI︑そしてそれと同時

に如何にして受益者個人の意思をも尊重しようとして来たかに︑そ

の努力はあったものと考えていLものと思う︒

三︑卑見.

然らば最後に︑この問題の解決についての私の提案を述べてみよ

シ﹃ノO

結局援用権者の範囲を如何に定めるかは︑時効の援用の意義・時

効の効力を如何に解するか︑更に遡って時効制度の第一次的な存在

理由を何処に求めるかによって︑それん︑異った結論が現れること

は既に述べた通りである︒こLでは時効の援用権者の範囲を示すに

必要な限度で他の問題にも触れてゆくこと比する︒

先ず︑時効の援用の性質を実体法的に解すべきか或いは訴訟法的

に解すべきかが問題となるし︑そして時効の効果を絶対的と解すべ

きか否かが問題となる︒

民法第一四五条の文言はその点甚だあいまいな表現であると思わ

れるのであって︑﹁援用﹂を訴訟法的に解するのは直接受益者説中の

一説と訴訟当事者説とであるが︑前者は時効による権利の得喪は絶

1

対的に発生L︑民法第一四五条は裁判所の権限の制限にすぎぬとす

︵釦︶るものであるが︑取得時効にあってはまだしも︑消滅時効において

は実体関係と裁判との間に矛盾が生ずることLなり︑時効完成後の

弁済並びに承認の効力の説明に窮してしまう︒

そこで直接受益者説中の他の脱は時効の効果を絶対的ではなく可

動的であるとしてその間の理論の矛盾を解消せんとし︑これを条件

︵瓠︶的に解釈しようとする学説の生ずるのは当然である︒

而して吾民法においては︑﹁援用﹂は時効の効力の発生要件では

なく︑単に裁判をする要件にすぎないものL如くであるが︑それで

は法律関係が極めてあいまい不徹底なものとなる︒従って﹁援用﹂

は時効の効力発生のための実体要件であると解すべきだと思う︒

訴訟当事者説の有力なものは︑時効を法定証拠だと見︑援用をこの

証拠方法の援用としての訴訟法上の行為なりと解するものである︒

然しながら時効を実体法上の規定ではなく訴訟法上の法定証拠だと

見るならば︑民法第一四五条は論者のいわれるのとは反対にむしろ

却って意義のないものとなろう︒何となれば︑訴訟法上の対立当事

者主義・弁論主義の建前からいって︑証拠をあげないものが裁判上

その利益を受け得ないことは当然だし︑また裁判所は当醸者の援用

しない証拠に基いては判決のしょうがない︒ましてや職椛による証

拠調の規定の削除された民酬訴訟法においてはことは当然である︒

また形式的に考えても︑近代司法々における実体法・訴訟法分離

の建前からみて︑実体法に規定されている以上︑実体要件の規定で

一︑あると考える方が無理がないのではなかろうか︒

すなわち私も﹁援用﹂の性質については︑実体法上の実体効果を

l

(8)

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71

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一 ‐ 一

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一 ・1 7−−−一一一一F

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発生せしむべき実体要件なり.と解し勺これを時効の利益を受けよう

とする単独行為だとする説に従いたい︒

次に時効の効力は絶対的か否かについてであるが︑時効の効力に

絶対的な効力を認め得ないことは前に述べた通りであるが︑その効

力は時効制度において援用の規定が設けられ当事者の意思をも尊重

Lたものだということを考えれば︑停止条件説に養成するものであ

ヲ︵︾︒

ところで当事者の意思を尊重する仁はいっても︑実体法上その意

思が尊重さるべきは時効の直接の当事者すなわち︑時効により直接

に権利を得または義務を免れるべき者に限らるべきである︒何故な

ら計算可能な合理的近代市民法においてか上る意思が尊重されるの

は極めて例外である以上︑その髄囲は極く限縮して尊重されるべき

であるし︑またか入る意思を広範囲に認めたのでは︑時効の完成を〃

基として種み重ねられた現存の法律関係の不安定を招くおそれが生

ずるからである︒

従ってか上る意思は時効の直接の当事者に限縮して認めらるべき

であり︑且つその援用・不援用は相対的な効力しか持たないものと

解せねばならない︒詳言すれば︑か比る個人意思が尊重せらるべきは

時効の直接の当事者間においてのみであり︑筒また対外的には社会

意思との関聯において相対的に尊重せられてはじめて︑時効制度の

目的とする現存法律関係の安定化l現存受益者の保護lと︑援

︒ノ

用という規定における個人意思尊意との調和が保たれるであろう︒

それでは現存法律関係の安定化と個人意思の尊璽とを右のような

立場から考えた場合︑具体的にはどのような解釈がなされるである

1

うかが考察されねばならない

保証人・連帯保証人について

保証人・連帯保証人に主侭務の時効援用権を認めることは判例・

学説とも異論のないことは前に述べたが︑その標準とするところの

理論に街不充分なものを感ずることもまた指摘したところである︒

私はこの点につき︑次のような理論樅成を施して保証人に主侭務の

時効﹁援用権﹂を否定したい︒すなわち主恢務の時効援用梅は︑﹁

援用﹂を実体法的に栂成し︑﹁当事者﹄には消滅する権利そのもの

上直接の当事者たる主侭務者のみが該当すべきである︒

﹁援用﹂が認められるのは時効においてその個人意思が尊薫され

るところの︑権利消滅の直接の当事者たる主使務者のみに限る︒而

してか坐る個人意思は︑時効制度が目的とする現存法律関係の安定

・保護との調和のために相対的に尊重せらるべきであると考えるか

ら︑その結果援用の効果は対外的には影響を及ぼさないものと解し

︑保証人には主侭務者の援用・不援用の効果は影響を与えないこと

Lなる︒然らば︑か上る意味では保証人に主侭務の時効援用権は認め得ない

こと上なるが︑援用言狩が問題にされるのは時効における直接当事

者たる主憤務者のみについてであり︑保証人はた堂時効の効果を確

定的に主張︵﹁援用﹂ではなじLさえすればい上ものと解する︒

再言すれば︑援用・不援用は主使務者のみの問題として︑その効果

は主恢務の消滅時効に関しては第三者たる保証人に影響を与えず︑

第三者たる保証人は主彼務の時効の効果を絶対的に受け︑時効の効

果を確定的に主鰻し得るものとの解釈を採るものである︒

1

(9)

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→ ノーーーーーーー ‐一一

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' ロ , て3 一 一 − 一一 一 一 − −一 一 ‑G ー ̲ 一 一 一・ I一 一

72

物上保証人について︽.

次に物上保証人については如何であろうか︒これについても保証

人の場合と同じく︑﹁援用﹂言冬は債務者のみの問題として取扱い

その援用・不援用の効果は債務の消滅時効に関しての第三者たる物

上保証人に影響を与えず︑物上保証人は債務の時効の効果を絶対的

に受け︑その効果を確定的に主張I援用ではないlすればよい

わけである︒

担保不動産の第三取得者について

これについてもことは同様である︒判例がこれに援用の当事者性

を否認するのは我妻教授の御指摘の如く理由がないし︑また我妻教

授の御説にしてもその標準とされるところ︑筒理論的に不充分では

ないかと思われるのであり︑訴訟当事者説を採る学説にも不満をお

ぼえる︒私は援用の意義・援用の効果についての私なりの考え方から︑﹁

援用﹂は恢務者のみの問題だとして考え︑援用・不援用の効果は当

該不動産の第三取得者には影響を及ぼさず︑第三取得者はた壁憤務

の消滅時効の効果を確定的に主張出来るものと解して時効制度にお

ける現存秩序の維持と個人意思尊重との間の調和を図ろうとするも

のである︒

更に︑判例及び往時の学説が援用の当事者性を否定し︑近時の学

説が肯定する心信称相競人よりの譲受人についてもまた以上述べた ものと解するのである︒ 連帯保証人についても同様に考え︑連帯保証人は主俄務者の援用・不援用の如何を問わず︑主侭務の消滅時効を確定的に主張し得る

むすび

以上によってこの小論を終える︒個々の問題について筒述ぶべき

点も少くないし︑且つ重要なる問題を逸脱せることも少くないであ

ろう︒また文献・判例の引用も寡少であったかも知れない︒然しな

がら︑時効援用施考の範囲について従来の解釈にあきたらぬものを

おぼえ︑時効制度が果さんとする現存秩序の維持と︑個人意思の尊重

とを︑個人意思の社会意思との対比における相対的認容という華準

をたてL︑その間の調和を図ることを提案するのが私の目的であっ

た︒従って多くの欠点があるであろうが︑多くの御批判・御教示を

仰ぐ次第である︒殊に学説の引用に際しては夕私の臆測が著者の真

意を誤解したであろう点についてはひとえに御宥恕を請いたい︒

仙明四三・一・二五民録一三頁︹傍点I筆者︺︒ と同様な解釈を採るものである︒否定説・肯定説.いずれもその判断の基準とするところあいまいであり︑また理論的にいっても不充分だと考えることは︑こ上には繰返すまでもないと思う︒.こ上にお︑いても私は︑援用言冬は倍称相糠人のみの問題とLて取り扱い︑その時効の援用・不援用の効果は譲受人には相対的な効力しかもたず︑譲受人は時効の効果を確定的に主張できるものと解釈するのである︒

更にまた︑詐害行為の受益者︑売買予約の目的物につき所有権も

しくは抵当権を取得した者についても右の各の例について述べたと

︵鍼一同様に解釈し︑時効制度の目的を達せしめたいと考えるのである︒

(10)

I

73

倒大四・二一・二民録二○五一頁︒

③大四・七.一三民録一三八七頁︑大四・二一・二民録二○五

一頁︑昭八.一○・二一罠集二五二頁.

㈱昭七・六・一二民集三八六頁p⑤明四三・了二五前掲︒Y

⑥昭三・二・八民集五八○頁︒〃

例昭四・四・二民集二三七頁︒

⑧昭九・五・二民集六七○頁︒

⑨大四・一二・二前掲︵傍点11筆者︶︒

⑩昭七・六・二一前掲︒

⑪明四三・一・二五前掲︵傍点11筆者︶︒

⑫三潴博士﹁民法提要﹂四九○頁︒

⑬石田博士﹁現行民法総論﹂四九四頁︒

⑭判例民事法昭和四年度一○六頁︵前記判例とは大正八・六o

一九民録一○五八頁︶︒

⑮我妻教授﹁抵当不動産の第三取得者の時効援用雛﹄民商法雑

誌三巻一号一頁以下︒

教授は判例の理由を二つに分け側は直接の当事者に限るべ

きは当然だとする思想であるが︑判例が保証人について主た

る侭務の消滅時効を援用し得るとしながら︑第三取得者恒つ

き否定するのは明かに矛盾だと非難され︑卿の便権者が﹁主

たる伎権を有しながら従たる抵当権を失うが如き﹂ことは﹁

不合理だ﹂との理由については心民法第三九六条から見て雨主

︑が消滅せざるに従のみが消滅すること自体は少しも不合理で

ないと論破され︑結局︑主たる便務の時効消滅と抵当権の消滅

との関係を︑主たる債務の時効消滅と保証債務の消滅との関

係とは別異のものなりとなさんとす多判例の態度は︑理論的

に見て何等根拠なきものであり︑矛盾せるものであるとされ

︑る○更に独逸民法の櫛成を見討され︑結局は判例と同一にな

るも︑それは抵当権が主たる債務の消滅後にも一種の物的有

限壷住として存するからで︑吾民法の解釈とは異るとされ︑

仏民法においては恢権の時効消滅の場合にも抵当梅は附従性

を理由とLて消滅することは吾民法と同様であり︑判例・学

説は均Lく第三取得者の援用権を認めていることを例示され

て判例の立場を惇理としめ抵当不動産の第三取得者に時効援

用権を認むくきことを主張されて・いる︒.

⑱我妻教授﹁民法総則﹂民法諦義I︑三四五頁以下︒

⑰吾妻教授﹁民法総論﹂二八四頁以下︑筒同教授﹃私法に於

ける時効制度の意義﹄法協四八巻二号一頁以下参照︒

⑱川島教授﹁民法識義第一巻序説﹂六五頁以下︒

⑲富井博士﹁民法原論第一巻﹂六三七頁︑中島博士﹁民法釈

義巻之こ八○一頁︑三潴博士﹁民法総則提要下﹂五四五頁

石田博士前掲書四九一頁など︒・

鳩山博士﹁民法総諭﹂五八三頁以下︑穂種博士﹁民法総論

﹂四六二頁︒

伽三潴博士前掲四九○頁︒

⑫穂積博士前掲判例民事法昭和四年度一○六頁︒

鰯鳩山博士前掲番五八三頁︒

(11)

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一 − 了 示 一 一

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凶三潴博士前掲醤四九○頁︒

倒穂敏博士前掲﹁民法總諭﹂四六二頁︑間これらの批判につ

いては末弘博士﹃時効を授用し得る当事者﹂︵﹁民法維肥幌﹂

︺一○一頁以下参照︒

剛末弘博士前掲﹁民法雑記帳﹂一○三頁参照︒

鋤吾妻教授前掲﹁民法総論﹂二八七頁以下︑同教授前掲論文

参照︒

田川島教授前掲番七三頁︒

鋤例えば穂種博士前掲﹁総論﹂四五七頁など︒・

剛註⑲の文献︒

剛解除条件説は鳩山博士が唱えられた︵前掲﹁総論﹂五八二頁︑

五九一頁︑﹁法律行為乃至時効﹂五八四頁︑六○五頁︑六一

四頁︶停止条件説は穂稜博士が唱えられ︵前掲﹁総論﹂四五七

頁︶︑︑我妻教授もこれを採られる︵前掲﹁総則﹂三四五頁︶︒

倒か坐る解釈を採るに至ったについては於保教授の御説に示

唆を得た︒同教授﹁民法総則﹂二五四頁以下参照︒教授は︑

﹁時効の利益を直接受ける者は時効制度の存在理由からする

反射的利益として︑其の利益をうけるものである︒だから当事

者間においては紛争を起さない限り︑本来の権利状態を回復

することが好ましいq法律は一方では時効制度を立てながら

もこのことを考慮して時効の援用及び時効利益の放棄︑時効

消滅値権による相殺ということを許したのである︒だから︑

時効の効果は対社会的には絶対的砿定的であるべきであるが

当駆者間においては︑当事者の道義心に訴える余地を残して

不砿定的ならしめられていると解すること必ずしも無理では

ない︒近時の不硴定説はこの意味において正当である︒只対

社会的にも不破定的に解し︑当事者間においても種極的に援

用権及びその放棄として考える所に疑問がある︒時効完成後

の承認又は弁済を有効と解するについて︑完成についての知

・不知を問わないのはすでに援用権説を放棄しているものと

考えられる︒然らば一歩を進めて援用又は放棄は当事間の問

題として第三者は時効の効果を砿定的に主張しうるものと解

し︑叉放棄の能力も中断承認と同様に解することもさして困

難ではなくなるであろう︒又援用の撤回を許しても妨げなく

なる︒このように解すれば︑時効の効果は対社会的には確定

的であり︑時効についての直接の利害関係人間では不確定的

であって当事者の援用によって利益亨受が確定し︑放棄によ

って不享受に確定する︒又放棄は必ずしも祇極的になされる

ことを要しないということLなる﹂・と説かれる︒

間.時効制鹿の存在埋由に関し︑これを法定証拠だとする

立場に対して︑その鋭く所には多くの賛成点を見出すのであ

るが︑これはあくまで時効制度のいわば発生論的意義だと考

え︑規定の上からはやはり実体効果を発生せしむる実体法の

規定だと考えたい︒然しこ上ではこれ以上たちいらないとと

Lする︒︑

︹一九五三.一○・二○︶

1

参照

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