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あ と が き

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Academic year: 2021

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(1)

―39―

あ と が き

人文科学研究所長   木 村 琢  ﹃清泉女子大学人文科学研究所紀要﹄第四十号をお届けする

本号には論文七編が収録されており︑著者︵共同論文については

筆頭著者︶の内訳は本学の専任教員︵所員︶四名︑非常勤教員三

名︵うち客員所員一名︶である︒

掲載論文はすべて査読をへている︒応募論文九編中︑一編を

載不可﹂︑三編を﹁条件付き掲載可﹂︑五編を﹁掲載可﹂とした︒

応募者に対しては︑採否の結果をお知らせするとともに︑査読者

の所見をあわせて通知した︒﹁条件付き掲載可﹂となった三編の

うち一編の著者が投稿を取り下げられたため︑論文総数は七編と

なった︒ 昨年︵二〇一八年︶四月に人文科学研究所の所長に就任し︑あ

らためて﹁清泉女子大学人文科学研究所規程﹂を読んでみた︒本

研究所の目的は︑その第二条に次のように謳われている︒

﹁本研究所は︑人間にかかわるすべての現象を包括的かつ総合

的に研究することを目的とする︒

なんという壮大な目的であろう︒ローマの喜劇作家テレンティ

ウスの﹃自虐者﹄にある﹁私は人間である︒人間に関わることで

自分に無縁なものは何もないと思う﹂という宣言を想起させる︒

清泉女子大学のウェブサイトにも人文科学研究所を紹介する

ページがある︒その説明は次の文で始まっている︒

﹁人文科学研究所は︑一九七八年四月に︑文学部のみの単科大

学である本学の内部に学際的な機運を高め︑外部からの新風を自 由に迎え入れる目的で設立された研究所です︒

これは一見︑文学部のみの単科大学では視野が狭くなりがちで

あるから文学部で扱われないような分野との交流も必要であり︑

そのためにこの研究所が作られたのだ︑というふうにも読める︒

しかし︑文学部で扱われる分野人文科学の対象は決して狭

くない︒なにしろ﹁人間にかかわるすべての現象﹂なのである︒

実際︑人文科学とはそうしたものなのだろうと思う︒本号の目

次をご覧いただいてもわかるが︑寄せられた論文のテーマはきわ

めて多岐に亘っている︒しかも本号はその第四十号である︒本研

究所が毎年刊行しているもうひとつの出版物である﹃清泉文苑﹄

の巻末には︑これまでの﹃人文科学研究所紀要﹄の総目次が掲載

されており︑そこに見ることのできる論文題目の多彩さは目も眩

むほどである︒それでいて︑そのすべてが﹁人文科学﹂と呼ばれ

る範囲の研究になっている︵社会科学との区別の問題はひとまず

措く︶︒なぜか︒﹁人間は何をするのか︒どんなことをするのか﹂

という問いがそこに通底しているからである︒

人間は何をするのか︒どんなことをするのか︒人間の活動が地

球全体の環境を変化させるほどの威力を持つようになった現在︑

今までになく真剣に問われなければならないこの問いが︑今の日

本では不当に軽んじられているのではないか︒

学生時代にオーウェルの﹃動物農場﹄を読んだ︒結末近くに現

れる﹁すべての動物は平等である︒しかしある動物はほかの動物

よりももっと平等である﹂というスローガンを読み︑この種の言

葉遊びが好きな私は大笑いした︒今は笑えない︒ほとんどこれに

等しい言辞を日常的に︑しかも国の舵取りをする人々の口から聞

くようになったからである︒

(2)

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経済的利益に直結しない学問を軽視し︑自国の近現代史の真摯

な研究に公金を充てることを攻撃するのも︑またこれらの人々で

ある︒人間は何をするのか︒どんなことをするのか︒それを明ら

かにしようとする営みを妨害して︑どんな未来を見据えているの

だろう︒最近では︑まさかと思うような統計手法の不適切な操

作︑データの改ざんなどが次々に明らかになっている︒これもま

たオーウェルが代表作﹃一九八四年﹄で描いた状況そのものであ

る︒優れた文学者は見抜いているのだ︒人間は何をするのか⁝

二〇一九年四月をもって︑文学部のみの単科大学は日本で清泉

女子大学ただひとつになると聞いた︒人文科学の拠点としての矜

持からこうなったのか︑単に大学改革の波に乗り遅れただけなの

かは︑さほど重要ではない︒こうなった以上︑言葉を軽んじる︑

学問を尊敬しない風潮に抗うしかない︒この紀要も︑そんな抵抗

のささやかな発露としたい︒

本号の完成は多くの方々のご尽力に拠っている︒新米で役に立

たない所長とは対照的に︑経験豊かな姫野敦子編集委員長は厳し

い時間的制約の中でスムーズに作業を進めてくださった︒職員の

永塚尋子さんの緻密で献身的な働きにも深謝したい︒執筆してく

ださった先生方︑編集委員の先生方︑そして短期間のうちに真剣

に査読してくださった︵所員でない方も含む︶先生方︑本当にあ

りがとうございました︒

参照

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