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S1P1アゴニスト作用に基づく新規免疫抑制薬の探索研究

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Exploring studies of novel S1P

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agonists for

discovering the immunosuppressive agents

March 2015

Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences

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(5)

iii

略 語

B oc te rt -but oxyc arbon yl

Al l oc all yl ox yc arobon yl

P CC pyri di ni um chl orochromat e MS 4A mole cul ar s ie ve s 4A

KOH pot as si um hydroxi de N a2S2O3 s odi um t hi os ul fate DM S O di me t hyl s ul foxi de

TB AF tet ra n -but yl a mmoni um fl uori de DM AP di me t hyl ami nopyri di ne

TFA t ri fl uoroace ti c aci d P d-C pall adi um on charco al DM PU N , N' -di me t hyl prop yl e ne ure a mC P B A m -chl orope roxybe nz oi c aci d t -B uOOH te rt -but yl hydr ope roxi de

p-Ts OH p-t ol ue ne s ul foni c aci d ( = PT S A) p-Ts C l p-t ol ue ne s ul fon yl chl ori de ( = Ts Cl )

N aH s odi um hydri de

EDTA et hyl e ne di ami ne te t raace t i c aci d

HEP ES N -[2-hyd rox ye t hyl ]pi pe raz i ne -N '-[2-e t hane s ul foni c aci d]

GD P guanos i ne 5'-di phos phat e DTT 1, 4-di t hi o -D L-t hre i t ol Val vali ne

Le u le uci ne Arg argi ni ne P he phe nyl al ani ne Gl u gl ut ami c aci d Ile is ole uci ne

EC5 0 hal f maxi mal ( 50%) e ffe cti ve conce nt rat i on ID5 0 hal f maxi mal ( 50%) i nfe ct i ous dos e

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1

第 1 章

緒 言

第 1 節 免 疫 抑 制 薬 の 現 状 ヒ ト を 始 め と す る 高 等 生 物 か ら ア メ ー バ ー 等 の 下 等 生 物 ま で 、 生 体 が 生 命 活 動 を 維 持 し て い く 上 で 免 疫 応 答 は 必 要 不 可 欠 で あ る 。 生 体 内 で は 、 病 原 微 生 物 な ど の 有 害 な 非 自 己 成 分 ( 外 来 異 物 ) か ら 生 体 ( 自 己 細 胞 ) を 守 る た め 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ や 好 中 球 な ど の 食 細 胞 に 加 え 、 非 自 己 成 分 の 認 識 、 排 除 を 担 う リ ン パ 球 な ど の 免 疫 細 胞 が 免 疫 反 応 に 関 与 し て い る ( Figure 1-1_ a)。 こ の 生 体 を 外 敵 か ら 守 る 免 疫 応 答 機 構 は 生 体 内 の シ ス テ ム が 複 雑 に 絡 み 合 っ て 成 立 し て お り 、 そ の バ ラ ン ス が 崩 れ る こ と は 様 々 な 疾 患 に 繋 が る こ と が 知 ら れ て い る 。1 ) 例 え ば 、 免 疫 活 性 が 低 下 す る と 外 来 異 物 か ら 生 体 ( 自 己 細 胞 ) を 守 れ な く な り 、 そ の 結 果 、 様 々 な 症 状 を 引 き 起 こ す よ う に な る ( Figure 1-1_ b)。 こ の 免 疫 活 性 が 低 下 し た 状 態 は 免 疫 不 全 症 と 呼 ば れ る 。 免 疫 不 全 症 は 、 先 天 的 に 免 疫 活 性 が 低 下 し て い る 原 発 性 免 疫 不 全 症 と 、 後 天 的 に 免 疫 活 性 が 低 下 す る 続 発 性 ( 後 天 性 ) 免 疫 不 全 症 と に 分 類 さ れ 、 リ ン パ 球 や 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ な ど の 免 疫 担 当 細 胞 の い ず れ か が 機 能 欠 損 や 、 機 能 低 下 を 起 こ す こ と が 原 因 と さ れ る 。 代 表 的 な 疾 患 に は 、 ヒ ト 免 疫 不

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2 全 ウ ィ ル ス ( HIV) 感 染 症 に よ る 後 天 性 免 疫 不 全 症 候 群 ( AI DS) や ガ ン な ど が 挙 げ ら れ る 。 一 方 、 免 疫 系 が 過 剰 に 活 性 化 し た 場 合 に も 様 々 な 疾 患 を 誘 発 す る こ と が 知 ら れ て い る ( Figu re 1-1 _ c)。 例 え ば 、 リ ン パ 球 の 自 己 、 非 自 己 の 認 識 不 足 に よ り 免 疫 系 が 自 己 成 分 に 対 し て 攻 撃 を 加 え る よ う に な る 自 己 免 疫 疾 患 や 、 本 来 無 害 で あ る 物 質 に 対 し て も 過 剰 な 免 疫 応 答 を す る こ と に よ り 生 じ る 様 々 な ア レ ル ギ ー 疾 患 な ど が そ れ に 含 ま れ る 。 代 表 的 な 疾 患 に は 、 関 節 リ ウ マ チ 、 乾 癬 、 ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 、 気 管 支 喘 息 な ど が 挙 げ ら れ る 。ま た 、炎 症 性 腸 疾 患 や 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス( SLE) と い っ た 難 治 性 疾 患 2 ) も 自 己 免 疫 疾 患 の 一 種 で あ り 、免 疫 系 の 過 剰 な 活 性 化 が 原 因 で あ る と 言 わ れ て い る 。1 ) 上 記 し た 免 疫 関 連 疾 患 の 中 で も 、 特 に 、 過 剰 な 免 疫 応 答 が 原 因 と 言 わ れ る 患 者 数 は 年 々 増 加 傾 向 に あ り 、 ま た そ の 患 者 層 も 小 児 か ら 高 齢 者 ま で 多 岐 に 渡 っ て お り 、 早 急 な 対 策 が 求 め ら れ て い る 。 事 実 、 免 疫 関 連 疾 患 に 対 し て は 国 を 挙 げ て の 精 力 的 な 施 策 が 講 じ ら れ て い る 。3 ) 免 疫 関 連 疾 患 の 治 療 に は 、 従 来 、 過 剰 な 免 疫 反 応 に よ っ て 生 じ る 炎 症 反 応 を 抑 制 す る 目 的 で ス テ ロ イ ド な ど の 抗 炎 症 薬 が 広 く 使 用 さ れ て き た が 、 そ の 治 療 法 は 対 症 療 法 に 過 ぎ ず 根 本 的 治 療 で は な か っ た 。 免 疫 関 連 疾 患 の 治 療 、 予 防 と い う 観 点 で は 免 疫 応 答 を 抑 制 す る 薬 剤 で あ る 免 疫 抑 制 薬 が 有 効 と さ れ 、 今 日 ま で 多 く の 薬 剤 が 開 発 、上 市 さ れ て い る 。Figure 1-2 に 現 在 使 用 さ れ て い る 代 表 的 な 免 疫 抑 制 薬 を 示 す 。

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M yri oci n の 免 疫 抑 制 作 用 は 、in v it ro の 免 疫 抑 制 作 用 測 定 試 験 と し て 多 用 さ れ る 混 合 リ ン パ 球 反 応( M LR)試 験 に お い て 、シ ク ロ ス ポ リ ン A よ り も 強 力 な 活 性 で あ る 一 方 、 そ の 作 用 機 作 は シ ク ロ ス ポ リ ン A と は 全 く 異 な る 物 で あ っ た 。す な わ ち 、カ ル シ ニ ュ ー リ ン 阻 害 剤 で あ る シ ク ロ ス ポ リ ン A や タ ク ロ リ ム ス は ヘ ル パ ー T 細 胞 に お け る I L-2 な ど の サ イ ト カ イ ン 産 生 を 抑 制 す る こ と で 免 疫 反 応 を 抑 制 す る の に 対 し 、新 た に 見 出 さ れ た myriocin は 拒 絶 反 応 に 直 接 関 わ る 細 胞 障 害 性 T 細 胞 や ナ チ ュ ラ ル キ ラ ー 細 胞 ( NK 細 胞 ) に 対 し て ア ポ ト ー シ ス を 引 き 起 こ す こ と で 免 疫 抑 制 活 性 を 発 現 す る こ と が 見 出 さ れ た 。11 ) 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 有 す る myriocin で あ っ た が 、毒 性 が 強 く 実 用 化 に は ほ ど 遠 い も の で あ る こ と が 判 明 し た た め 、そ の 後 、毒 性 軽 減 を 目 的 と し た myriocin の 化 学 修 飾 が 行 わ れ る こ と に な っ た ( Figure 1-4)。 そ の 結 果 、 myriocin の 構 造 を 簡 略 化 し た 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 が 免 疫 抑 制 作 用 発 現 に 必 須 で あ る こ と が 示 唆 さ れ ( 5)1 2 ) 、 さ ら な る 構 造 最 適 化 に よ っ て FTY720( fingolimod)6 が 見 い だ さ れ る に 至 っ た 。1 3 ) 驚 く べ き こ と に 、誘 導 体 展 開 の 過 程 に お い て 、fingolimod の 示 す 免 疫 抑 制 作 用 は 、 myri oci n が 有 す る S PT 阻 害 活 性 に 基 づ く T 細 胞 に 対 す る ア ポ ト ー シ ス 誘 導 作 用 と は 異 な り 、 リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ ( 回 帰 ) 作 用 に 基 づ く も の へ と 変 化 し て い る こ と が 明

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5 ら か と な っ た 。1 4 ) 以 下 に リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 に つ い て 説 明 す る ( Fi gu r e 1 - 5 )。 通 常 、 骨 髄 や 胸 腺 な ど の 一 次 リ ン パ 組 織 で 生 産 さ れ た リ ン パ 球 は 、 血 管 系 を 介 し て パ イ エ ル 板 、 リ ン パ 節 、 脾 臓 な ど の 二 次 リ ン パ 組 織 に 移 行 し た 後 、 血 管 を 通 じ て 全 身 を 循 環 し 、 免 疫 反 応 部 位 に 集 積 す る と い う 性 質 を 有 し て い る ( Figure 1-5_ a)。 こ の よ う に 、 生 体 内 で は リ ン パ 球 が 体 内 を 循 環 し 、 必 要 な 部 位 に 働 き か け る こ と で 免 疫 応 答 を 示 し て い る 。 一 方 、 fingolimod が 投 与 さ れ る と 、 リ ン パ 球 が リ ン パ 節 な ど の 二 次 リ ン パ 組 織 内 に 隔 離 ( リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ ) さ れ た 状 態 に な り 、 末 梢 血 中 の 循 環 リ ン パ 球 の 著 し い 減 少 が お こ る 。 循 環 リ ン パ 球 が 減 少 す る こ と で 免 疫 反 応 部 位 へ の リ ン パ 球 の 浸 潤 量 が 減 少 し 、そ の 結 果 、免 疫 反 応 が 抑 制 さ れ る( Figure 1-5_ b)。 本 反 応 は こ れ ま で の 免 疫 抑 制 剤 の 作 用 機 作 に は な い 特 徴 的 な も の で あ っ た が 、 fi ngol i mod 発 見 当 初 、 そ の 強 力 な リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 の 作 用 機 作 に つ い て は 不 明 の ま ま で あ っ た 。 第 3 節 ス フ ィ ン ゴ シ ン -1-リ ン 酸 ( S1P) と S1P 受 容 体 ( S1Px) Fi ngol i mod が メ カ ニ ズ ム 不 明 の 新 規 免 疫 抑 制 薬 と し て 発 見 さ れ る 傍 ら 、 リ ゾ リ ン 脂 質 の 一 種 と し て 体 内 に 存 在 す る ス フ ィ ン ゴ シ ン -1-リ ン 酸 ( Sphingosine -1-phos- phate : S 1P) 8 に つ い て も 、 そ の 機 能 解 明 に 向 け た 研 究 が 進 め ら れ て い た 。1 5 ) 今 日 で は 、リ ン 酸 化 酵 素 で あ る ス フ ィ ン ゴ シ ン キ ナ ー ゼ ( SphK)の 働 き に よ り ス フ ィ ン ゴ シ ン 7 か ら 生 成 す る S1P 8 が 、 生 体 内 で 様 々 な 生 理 活 性 を 持 つ 重 要 な 脂 質 メ デ ィ エ ー タ ー と し て の 役 割 を 有 す る こ と が 知 ら れ て い る が 、そ れ が 判 明 し た の は 1990 年 代 に 入 っ て か ら で あ っ た 。1 6 ) 1998 年 、 Hl a ら に よ り 、 S 1P 8 が 血 管 内 皮 分 化 遺 伝 子 ( Endotherial Differentiation Gene: EDG )と し て ク ロ ー ニ ン グ し て い た G タ ン パ ク 共

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役 型 受 容 体( G-protein-coupled receptor: GPCR)の 生 体 内 リ ガ ン ド で あ る こ と が 報 告 さ れ た 。1 7 ) こ の GPCR は 発 見 当 初 E dg 受 容 体 と 呼 ば れ て い た が 、そ の 後 新 た に 、S1P 受 容 体( Sphingosine -1-phosphate receptor)と 呼 称 さ れ る よ う に な り 、現 在 ま で に S1P1 ( Sphingosine -1-phosphate receptor 1)か ら S1P5( Sphingosine -1-phosphate receptor 5) ま で 5 種 類 の サ ブ タ イ プ が 見 出 さ れ て い る ( Figure 1-6)。1 8 ) 7 回 膜 貫 通 型 タ ン パ ク 質 で あ る 5 種 類 の S 1P 受 容 体 は 、 サ ブ タ イ プ に よ っ て 発 現 部 位 は 大 き く 異 な る 。 す な わ ち 、 S1P1、 S1P2、 S1P3 は 比 較 的 広 範 な 組 織 ・ 細 胞 で 発 現 し て い る の に 対 し 、 S1P4、 S1P5 は そ れ ぞ れ 造 血 ・リ ン パ 球 系 と 神 経 系 に 主 に 発 現 し て い る こ と が 知 ら れ て い る 。 近 年 、 各 S1P 受 容 体 の 生 体 内 で 担 っ て い る 機 能 に つ い て は 、S1P 受 容 体 の ノ ッ ク ア ウ ト( KO)マ ウ ス を 用 い た 実 験 等 に よ り 徐 々 に 解 明 さ れ つ つ あ る 。中 で も S1P1に つ い て は 様 々 な 生 命 現 象 に お い て 重 要 な 役 割 を 担 っ て い る こ と が 明 ら か に さ れ て お り 1 9 )、 後 に 、 こ の S1P 1が fingolimod の 免 疫 抑 制 作 用 発 現 メ カ ニ ズ ム に 大 き く 関 与 し て い る こ と が 判 明 す る こ と と な る 。 第 4 節 fingolimod の 作 用 機 序 お 互 い に 独 立 し た 研 究 対 象 で あ っ た fingolimod と S1P 受 容 体 で あ っ た が 、2002 年 、 Me rck 及 び N ovart is の 研 究 者 に よ り fi ngol i mod の 薬 効 発 現 は S 1P 受 容 体 へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 に よ る も の で あ る こ と が 報 告 さ れ た( Table 1-1)。2 0 )

す な わ ち 、fi ngol i mod 6 は 生 体 内 に 投 与 さ れ た 後 、 血 中 で ス フ ィ ン ゴ シ ン キ ナ ー ゼ ( S phK) の 働 き に よ り

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7 速 や か に リ ン 酸 化 さ れ 、 リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P へ と 変 換 さ れ た の ち 、 S1P2を 除 く 他 の S1P 受 容 体 に 対 し 非 選 択 的 に ア ゴ ニ ス ト 作 用 を 示 す こ と に よ り 免 疫 抑 制 作 用 を 示 す こ と が 明 ら か と さ れ た 。ま た 、そ の 活 性 は 内 在 性 リ ガ ン ド と し て 機 能 し て い る S1P 8 と 同 様 に 非 常 に 強 力 な も の で あ っ た 。 a

B in d in g af f in ity to e a ch S 1P re cep to r was ca lcu la ted b y G TP-S b in d in g ass ay an d th e d e ta ils ar e s h o wn in ex p e r im en t a l s e ct io n . 今 日 で は 、 5 種 類 存 在 す る S1P 受 容 体 の う ち 、 S1P1へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 が リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 を 誘 導 す る こ と が 判 明 し て お り 、 次 の よ う な 作 用 機 序 が 提 唱 さ れ て い る ( Figure 1-7)。2 1 ) ま ず 、 生 成 し た リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6-P が T リ ン パ 球 上 に 存 在 す る 受 容 体 S1P1 に ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 し 、 S1P1 を 細 胞 表 面 か ら 内 在 化 さ せ る ( 機 能 的 ア ン タ ゴ ニ ス ト )。 細 胞 膜 上 か ら S1P1を 失 っ た T リ ン パ 球 は 、S1P1の 生 体 内 リ ガ ン ド で あ る S1P の 濃 度 勾 配 を 感 知 で き な く な り 、二 次 リ ン パ 組 織 か ら 血 中 へ の 移 行 が 阻 害 さ れ る 。 そ の 結 果 、 末 梢 血 中 の T リ ン パ 球 が 減 少 す る と い う も の で あ る 。

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8 ま た 、リ ン パ 球 ホ ー ミ ン グ 作 用 に は S1P1へ の ア ゴ ニ ス ト 作 用 が 重 要 で あ る と 同 時 に 、S1P3に 対 す る ア ゴ ニ ス ト 作 用 は fingolimod の 主 な 副 作 用 で あ る 催 徐 脈 作 用( 一 過 性 の 徐 脈 )の 増 悪 因 子 で あ る こ と が 、ノ ッ ク ア ウ ト( KO)マ ウ ス を 用 い た 実 験 に よ り 示 唆 さ れ て い る 。2 2 ) こ れ ら の 報 告 を 受 け 、多 く の 製 薬 会 社 や 研 究 機 関 に お い て 、 S 1P1 選 択 的 ア ゴ ニ ス ト の 開 発 研 究 が 活 発 に 実 施 さ れ る こ と に な っ た 。 ま た 、 fi ngol i mod 自 身 も 田 辺 三 菱 製 薬 、N ovart is に よ る 約 20 年 間 の 臨 床 開 発 を 経 て 、2010 年 に 多 発 性 硬 化 症 治 療 薬 と し て 承 認 、 上 市 さ れ て い る 。 現 在 で は 、 fingolimod か ら 派 生 し た KPR-203 9 ( Phase I , Kyorin)2 3 )

や CS-0777 10 ( Phase I , Diichi -Sankyo)2 4 ) に 加 え 、ponesimod 11 (Phase II, Acte lion)2 5 )、BAF-312 12 ( Phase II I, Novartis)2 6 ) の よ う な 、 こ れ ま で 薬 効 発 現 に 必 須 と 思 わ れ て い た ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 分 子 内 に 持 た な い 化 合 物 な ど も 臨 床 開 発 段 階 に 入 っ て い る ( Figure 1-8)。 第 5 節 研 究 成 果 の 概 略 上 述 し た よ う に 、 fingolimod は 非 常 に ユ ニ ー ク な 作 用 機 序 と 、 そ の 強 力 な 免 疫 抑 制 効 果 も 然 る こ と な が ら 、 そ の 分 野 に お い て 最 も 広 く 使 用 さ れ て い る タ ク ロ リ ム ス な ど の カ ル リ ニ ュ ー リ ン 阻 害 剤 に 見 ら れ る 腎 毒 性 、 肝 毒 性 回 避 ( 軽 減 ) が 期 待 さ れ る 薬 剤 と し て 、 開 発 段 階 か ら 多 く の 研 究 機 関 か ら の 注 目 を 浴 び て い た 。 こ の よ う な 魅 力 的 な プ ロ フ ァ イ ル を 有 す る fingolimod で あ っ た が 、催 徐 脈 作 用( 一 過 性 の 徐 脈 ) と い う 副 作 用 に 加 え 、 活 性 本 体 で あ る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 6- P が 非 常 に 長 い 血 中 半 減 期 を 持 つ こ と が 知 ら れ て お り 、改 善 の 余 地 を 残 す 薬 剤 で あ る と 考 え ら れ た 。そ こ で 、

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9 こ れ ら の 点 を 改 善 し 、 よ り 安 全 性 に 優 れ 、 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 有 す る 薬 剤 の 創 製 を 目 的 に 、 fingolimod の 構 造 を 基 と し た S1P1ア ゴ ニ ス ト の 創 薬 研 究 に 着 手 し た 。 Fi ngol i mod 6 を リ ー ド 化 合 物 と し た 研 究 を 開 始 す る に あ た り 、 ま ず 、 そ の 立 体 配 置 が 薬 効 発 現 に 重 要 と さ れ る ア ミ ノ プ ロ パ ン ジ オ ー ル 部 位 を 一 般 式 13 で 示 す 光 学 活 性 メ チ ル ア ミ ノ ア ル コ ー ル 骨 格 へ と 変 更 し た 。 そ の 上 で 、 中 心 の フ ェ ニ ル 基 を 各 種 へ テ ロ ア リ ー ル 基 へ と 変 換 し た 一 般 式 14 で 示 さ れ る 化 合 物 、及 び 、中 心 芳 香 環 と ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 繋 ぐ リ ン カ ー 部 位 に エ ー テ ル 結 合 を 有 す る 一 般 式 15 で 示 さ れ る 化 合 物 を 基 本 テ ン プ レ ー ト と し て デ ザ イ ン し 、 2 系 統 で の 誘 導 体 展 開 を 実 施 し た ( Figu re 1-9)。 な お 、 中 心 芳 香 環 か ら 伸 長 す る 疎 水 性 側 鎖 に つ い て は 、 各 種 検 討 の 結 果 、 薬 効 面 、 新 規 性 面 、 合 成 面 等 に お い て 総 合 的 に 優 れ て い た カ ル ボ ニ ル 基 を 有 す る 側 鎖 へ と 変 換 し た 。 本 学 位 論 文 で は 、こ の 2 系 統 の 誘 導 体 展 開 を 行 う に あ た り 、一 般 式 14 で 示 さ れ る 化 合 物 合 成 に 必 要 で あ っ た 各 種 合 成 技 術 の 開 発( 第 2 章 、第 3 章 、第 4 章 )に 加 え 、 そ の 合 成 技 術 を 活 用 し た 、一 般 式 15 で 示 さ れ る エ ー テ ル 化 合 物 の 構 造 活 性 相 関 研 究 ( 第 5 章 ) に つ い て 述 べ て い る 。 以 下 、 各 章 の 概 略 を 紹 介 す る 。 第 2 章 で は 、一 般 式 14 の 周 辺 化 合 物 合 成 を 効 率 良 く 行 う た め 、中 間 体 と し て 設 定 し た 16 の 合 成 に お い て 、リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 を 利 用 し た 構 築 法 に つ い て 述 べ て い る 。2 7 )

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10 本 研 究 で は 、2-tert-ブ ト キ シ カ ル ボ ニ ル ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 18 が 有 す る 対 称 性 に 注 目 し、薬 効 発 現 に 重 要 と 考 え ら れ る 光 学 活 性 な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 ( 青 点 線 枠 ) の 構 築 法 と し て 、 リ パ ー ゼ に よ る エ ス テ ル 化 反 応 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 Pseudo mona s 種 由 来 の 固 定 化 リ パ ー ゼ を 用 い た 場 合 に 高 収 率 、 高 選 択 的 に モ ノ エ ス テ ル 化 が 進 行 す る こ と を 明 ら か と し た ( 88%収 率 , 89%e e)。 得 ら れ た 17 か ら は 、 各 種 へ テ ロ ア リ ー ル を 有 す る S1P1ア ゴ ニ ス ト 中 間 体 16 に 加 え 、 α -置 換 ア ラ ニ ン 誘 導 体 の 合 成 素 子 と し て 利 用 可 能 な ア ル デ ヒ ド 19 へ 数 工 程 で 導 く こ と が 可 能 で あ っ た( Figure 1-10)。ま た 、本 反 応 に よ り 得 ら れ る 光 学 活 性 ア ミ ノ ア ル コ ー ル は 、 後 の 5 章 に お け る 誘 導 体 合 成 の 有 用 な 中 間 体 と し て も 機 能 し た 。 続 く 第 3 章 で は 、ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と ア ル デ ヒ ド 25 と の Wittig 反 応 を 利 用 し た 中 間 体 20 の 構 築 法 に つ い て 述 べ て い る 。2 8 ) 従 来 法 で は 、キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ア ル デ ヒ ド 21 と 、各 種 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 か ら 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Wittig 反 応 に よ り 、鍵 中 間 体 20 の 合 成 を 行 っ て い た 。そ の 手 法 は 、幅 広 い 中 間 体 合 成 を 実 現 す る 優 れ た 方 法 で あ っ た が 、 中 心 環 と し て 電 子 豊 富 な 芳 香 環 を 導 入 す る 際 に は 、 対 応 す る ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 の 不 安 定 さ ゆ え 、ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 合 成 が 困 難 に な る 等 の 欠 点 を 有 し て い た 。 本 研 究 で は 、 従 来 法 の 欠 点 を 補 う 合 成 的 手 法 と し て 、 極 性 転 換 の 考 え に 基 づ き 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b と ア ル デ ヒ ド 25 と の 反 応 に よ る 中 間 体 20 の 調 製 法 検 討 を 実 施 し た 。 反 応 に 必 要 な ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 、 安 価 で 入 手 可 能 な L-s e ri ne 塩 酸 塩 27 よ り 導 か れ る ア ル コ ー ル 体 26 か ら 数 工 程 で 調 製 可 能 で あ っ た ( Figure 1-11)。

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11 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は 様 々 な 脂 肪 族 、芳 香 族 ア ル デ ヒ ド と 良 好 に 反 応 す る こ と が 判 明 し た 。 特 に 、 本 Wittig 反 応 は 、 対 応 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 が 調 製 困 難 で あ る 電 子 豊 富 な 芳 香 環 を 有 す る ア ル デ ヒ ド に 対 し て も 進 行 し 得 る も の で あ り 、 従 来 法 に 対 し て 相 補 的 に 機 能 す る 反 応 で あ っ た 。さ ら に 、本 手 法 は S1P1ア ゴ ニ ス ト 研 究 に お け る 鍵 中 間 体 30 や 他 グ ル ー プ に よ り 報 告 さ れ て い る S1P1ア ゴ ニ ス ト( 28、29) を 短 段 階 で 与 え た ほ か 、 Trace Amine -Associated Receptor 1( TAAR1 ) ア ゴ ニ ス ト 31 の 合 成 に お い て も 有 用 で あ っ た ( Figure 1-12)。

Figu re 1 -11 . S umme ry i n C hapte r 3.

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12 第 4 章 で は 、 親 化 合 物 の ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 か ら 活 性 本 体 で あ る リ ン 酸 エ ス テ ル 体 へ の 微 生 物 変 換 を 利 用 し た 効 率 的 合 成 法 に つ い て 述 べ て い る 。2 9 ) S 1P1 ア ゴ ニ ス ト の 活 性 本 体 は 、 fingolimod 6 が そ う で あ る よ う に 、 親 化 合 物 32 の 一 級 水 酸 基 が リ ン 酸 エ ス テ ル 化 さ れ た 32-P で あ る 。そ の た め 、S1P 受 容 体 に 対 す る ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 測 定 す る 際 に は 、 リ ン 酸 エ ス テ ル 体 ( 標 品 ) を 別 途 合 成 す る 必 要 が あ っ た 。 し か し な が ら 、 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 か ら リ ン 酸 エ ス テ ル 体 へ の 一 般 的 な 化 学 合 成 に お い て は 、 ア ミ ノ 基 や リ ン 酸 エ ス テ ル 基 上 の 水 酸 基 に 対 す る 保 護 基 の 着 脱 が 必 須 で あ り 、 多 検 体 の ス ク リ ー ニ ン グ を 実 施 す る 際 に は 直 接 的 で 簡 便 な 手 法 が 望 ま れ て い た 。 そ こ で 、 所 有 す る 独 自 の 微 生 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( 糸 状 菌 、 細 菌 、 放 線 菌 ) を 用 い て 、 親 化 合 物 で あ る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 の 一 級 水 酸 基 を 直 接 的 に リ ン 酸 エ ス テ ル 化 す る 作 用 を 持 つ 微 生 物 の ス ク リ ー ニ ン グ を 実 施 し た 。 検 討 に 用 い る 反 応 基 質 に は 、一 般 式 14 の 誘 導 体 展 開 に よ り 見 出 さ れ た 、強 力 な 免 疫 抑 制 活 性 を 有 す る ピ ロ ー ル 化 合 物 32 を 選 定 し た 。検 討 の 結 果 、強 力 な リ ン 酸 エ ス テ ル 化 能 を 有 す る Circinella muscae を 見 出 し 、 さ ら に 、 そ の 菌 体 を 凍 結 乾 燥 状 態 に す る こ と で 飛 躍 的 に 反 応 性 を 向 上 さ せ る こ と に 成 功 し た 。 ま た 、 本 手 法 と 質 量 分 析 計 を 用 い た 自 動 精 製 シ ス テ ム を 組 み 合 わ せ る こ と に よ り 、 親 化 合 物 か ら 1 工 程 で リ ン 酸 エ ス テ ル 体 を 得 る 効 率 的 な リ ン 酸 エ ス テ ル 誘 導 体 合 成 を 実 現 し た ( Figure 1 - 1 3 )。 第 5 章 で は 、 短 半 減 期 型 S1P1ア ゴ ニ ス ト を 志 向 し た エ ー テ ル 化 合 物 33 の 構 造 活 性 相 関 ( SAR) 研 究 に つ い て 述 べ て い る 。3 0 ) こ れ ま で 述 べ て き た よ う に 、 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 示 す fingolimod は 副 作 用 と し て 一 過 性 の 徐 脈 作 用 に 加 え 、 非 常 に 長 い 血 中 半 減 期 を 持 つ こ と が 判 明 し て い た 。 ま た 、第 2 章 か ら 第 4 章 で 述 べ た 各 種 合 成 法 を 活 用 し た 一 般 式 14 の 誘 導 体 展 開 か ら 見 出 さ れ た 、 32 や 臨 床 開 発 化 合 物 CS-0777 10 な ど も 、 強 力 な 免 疫 抑 制 薬 効 を 持 つ 有 望 な 化 合 物 で あ る 一 方 で 、 fingolimod と 同 様 に 比 較 的 長 く 体 内 に 貯 留 す る 傾 向 が あ っ た 。そ こ で 、創 薬 の 成 功 確 率 向 上 の た め 、一 般 式 14 で 示 す 化 合 物 群 と は 異 な る プ

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13 ロ フ ァ イ ル と し て 、 適 度 な 半 減 期 、 か つ 催 徐 脈 作 用 の な い 化 合 物 の 獲 得 を 目 指 し 、 中 心 芳 香 環 と ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 繋 ぐ リ ン カ ー 部 位 に エ ー テ ル 結 合 を 持 つ 33 を デ ザ イ ン し 、 そ の S AR 研 究 を 実 施 し た ( Fi gure 1 -14)。 そ の 結 果 、 33 a は 、 fi ngol i mod 6 と 比 較 し て 血 中 半 減 期 が 短 く 、さ ら に 良 好 な S 1P3/S 1P1選 択 性 と 強 力 な in v ivo 薬 効 を 有 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、 中 心 ベ ン ゼ ン 環 上 の 置 換 基 導 入 は 選 択 性 を 大 き く 向 上 さ せ る こ と や 、 in vivo 薬 効 が 親 化 合 物 の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 効 率 と 相 関 す る こ と を 明 ら か と し た 。各 種 検 討 の 結 果 、適 度 な 血 中 半 減 期 を 持 ち 、fingolimod 6 と 同 等 の 強 力 な in vi vo 薬 効 を 示 し 、 さ ら に 徐 脈 作 用 に 対 し て 十 分 な 安 全 域 を 有 す る 化 合 物 ( 33b、 33e) を 見 出 す こ と に 成 功 し た 。 第 6 節 結 語 以 上 、 第 1 章 で は 、 新 規 な 免 疫 抑 制 薬 と し て 期 待 さ れ る fingolimod と 、 そ の 作 用 機 序 に 関 与 す る S1P 受 容 体 の 機 能 に つ い て 述 べ た 。本 文 中 に も 示 し た よ う に 、ス フ ィ ン ゴ 脂 質 類 の 生 体 内 シ グ ナ ル と し て の 作 用 解 は 近 年 に な り 急 速 な 発 展 を 遂 げ た も の で あ り 、 S1P1ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 と し て の fingolimod に 代 表 さ れ る よ う に 、 S1P 関 連 の 分 野 は 今 後 も 重 要 な 創 訳 標 的 に な る こ と が 予 想 さ れ る 。 本 博 士 論 文 中 で 紹 介 す る fingolimod を リ ー ド と し た 誘 導 体 展 開 に お い て 、 薬 効 面 、 安 全 性 面 で 優 れ た 化 合 物 の 創 製 は 然 る こ と な が ら 、そ れ ら S1P1ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 の 新 規 合 成 法 の 確 立 も 非 常 に 重 要 な 意 味 を 持 つ と 考 え ら れ る 。

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第 2 章

2-ア ミ ノ -2-メ チ ル -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化

反 応

第 1 節 序 論 第 1 章 で 述 べ た と お り 、 fingolimod( FT Y720) 6 は こ れ ま で に な い 新 し い 作 用 機 序 を 有 す る 免 疫 抑 制 薬 と し て 期 待 さ れ る 新 薬 で あ り 、 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 が 重 要 な pharmacopho re で あ る こ と が 判 明 し て い る 。 Fingolimod 6 は 、 生 体 内 に 投 与 さ れ た 後 、 血 中 に て 二 つ の 等 価 な 水 酸 基 の う ち 、 一 つ が リ ン 酸 エ ス テ ル 化 さ れ る 。 ま た 、 そ の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 は 高 エ ナ ン チ オ 選 択 的 に 進 行 し 2 0, 3 1 )、 生 じ た S-リ ン 酸 エ ス テ ル 体 (S) -6-P が 標 的 で あ る S 1P1 に 作 用 す る こ と で 薬 理 作 用 を 発 揮 す る こ と が 知 ら れ て い る 。さ ら に 、S1P1に 対 し て ア ゴ ニ ス ト 活 性 を 示 す の は S-リ ン 酸 エ ス テ ル 体 (S)-6-P の み で あ り 、 生 体 内 で の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 で は 生 じ な い R-リ ン 酸 エ ス テ ル 体 ( R)-6- P の ア ゴ ニ ス ト 活 性 は 非 常 に 低 い こ と も 明 ら か と さ れ て い る ( Table 2-1)。3 2 ) こ の よ う に fi ngol i mod の 2-ア ミ ノ -1, 3 -プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 は 血 中 で の リ ン 酸 エ ス テ ル 化 、お よ び S1P 受 容 体 へ の 作 用 の 両 過 程 で 厳 密 な 不 斉 認 識 を 受 け て い る こ と が わ か る 。 a

B in d in g af f in ity to e a ch S 1P re cep to r was ca lcu la ted b y G TP-S b in d in g as s ay an d th e d e ta ils ar e s h o wn in ex p e r im en t a l se ct io n

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上 記 結 果 は 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 の 立 体 化 学 が 薬 効 発 現 に 非 常 に 重 要 な 要 素 で あ る こ と を 表 し て い る が 、 同 様 の 結 果 は 、 他 グ ル ー プ で 実 施 さ れ た 誘 導 体 展 開 に よ っ て も 得 ら れ て い る 。3 3 ) す な わ ち 、 fingolimod 6 を 基 に 合 成 さ れ た 二 つ の エ ナ ン チ オ マ ー (R)-28 と ( S)-28 は 、臓 器 移 植 を 模 し た in vivo モ デ ル の 一 つ で あ る HvGR( Host ve rs us Graft Re act i on) 試 験 に お い て 、 R 体 ( R)-28 が 薬 効 を 発 現 し 強 力 な 免 疫 抑 制 作 用 を 示 す 一 方 で 、 逆 の 立 体 で あ る S 体 (S)-28 は 全 く 活 性 を 示 さ な い こ と が 報 告 さ れ て い る ( Figu re 2-1)。 上 記 の 結 果 か ら 、 fingolimod の 有 す る 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 部 位 を 構 造 変 換 す る 際 に お い て は 、 厳 密 な 光 学 活 性 体 の 作 り わ け が 重 要 で あ る こ と が わ か る 。 世 界 中 で S1P1ア ゴ ニ ス ト 研 究 が 脚 光 を 浴 び る 中 、 私 も 新 規 な S1P1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 を 獲 得 す べ く 、 fingolimod の 構 造 を 基 に 各 種 変 換 を 行 っ て き た 。 ま ず 、 fingolimod が 持 つ 2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) に つ い て は 、 ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 へ と 変 換 す る こ と と し た 。 そ の 上 で 、 中 心 の フ ェ ニ ル 基 ( 赤 点 線 枠 ) に つ い て は 各 種 へ テ ロ ア リ ー ル 基 へ と 変 換 し た 化 合 物 を デ ザ イ ン し た 。 な お 、 fingolimod の フ ェ ニ ル 基 は 、 大 き な 極 性 変 化 を 伴 わ な い ヘ テ ロ 芳 香 環 と し て チ オ フ ェ ン 、フ ラ ン 、ピ ロ ー ル 環 へ と 変 換 し た 。Fingolimod の 右 側 疎 水 性 側 鎖 部 位 ( 緑 点 線 枠 ) に つ い て は 、 様 々 な 検 討 の 結 果 、 カ ル ボ ニ ル 基 を 有 す る 側 鎖 が 合 成 面 、 新 規 性 面 、 活 性 面 な ど に お い て 総 合 的 に 優 れ て い る こ と が 判 明 し て お り 、結 果 と し て 、一 般 式 14 で 表 さ れ る 一 連 の 化 合 物 群 に 強 力 な 免 疫 抑 制 薬 効 が 見 出 さ れ た 。一 般 式 14 で 表 さ れ る 誘 導 体 を 合 成 す る に あ た り 、疎 水 性 側 鎖 部 位 は 最 終 段 階 で 導 入 す る こ と と し 、鍵 と な る 中 間 体 と し て 16 を 設 定 し た 。こ れ に 伴 い 、 種 々 の ヘ テ ロ 環 導 入 に は 、 利 便 性 を 有 し 、 大 量 合 成 に も 対 応 可 能 な (2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) の 合 成 法 の 確 立 が 必 要 と な っ た ( Fi gu re 2-2)。

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16 光 学 活 性 化 合 物 の 合 成 法 は 、 光 学 分 割 と 不 斉 合 成 と い う 二 手 法 に 大 別 す る こ と が 可 能 で あ り 、 そ れ ぞ れ 円 熟 し た 化 学 手 法 と し て 膨 大 な バ リ エ ー シ ョ ン が 存 在 す る 。 光 学 分 割 法 で は 、 不 斉 認 識 部 位 を 担 持 し た 固 定 相 を 用 い て カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー を 行 う 方 法 が 、HPLC 装 置 の 発 展 や そ の 簡 便 さ か ら 一 般 に 広 く 用 い ら れ て い る 。 ま た 、 分 割 し た い ラ セ ミ 混 合 物 に 安 価 な キ ラ ル 化 合 物 を 作 用 さ せ て 二 種 類 の ジ ア ス テ レ オ マ ー へ と 誘 導 し 、 そ の 溶 解 度 の 差 や 極 性 差 を 利 用 し て 分 割 す る 方 法 な ど も 一 般 的 に 用 い ら れ る 手 法 で あ る 。 こ れ ら の 方 法 は ラ セ ミ 体 さ え 合 成 で き れ ば 適 用 可 能 で あ る た め 、 少 量 の ラ セ ミ 体 の 分 割 や 、 安 価 な ラ セ ミ 体 の 分 割 に は 有 用 か つ 強 力 な 合 成 手 法 と な る が 、 半 分 量 の 不 要 な 光 学 活 性 体 を 不 可 避 な 副 生 物 と し て 伴 う と い う 点 で 本 質 的 に 無 駄 の 多 い 手 法 と も 言 え る 。 一 方 、 不 斉 合 成 法 は 、 最 高 収 率 が 理 論 上 50%を 超 え な い 分 割 法 に 比 べ て 洗 練 さ れ た 手 法 と も 言 え る 。 中 で も 、 野 依 ら に よ る 不 斉 水 素 化 反 応 3 4 ) や 、 Sharpless ら に よ る 不 斉 酸 化 反 応 3 5 ) に 代 表 さ れ る 不 斉 配 位 子 と 金 属 触 媒 を 組 み 合 わ せ た 不 斉 反 応 は 、 い ま や 欠 く こ と の で き な い 科 学 技 術 で あ る 。3 6 ) そ の よ う な 不 斉 合 成 法 の 一 つ で あ る 不 斉 非 対 称 化 反 応 は 、 プ ロ キ ラ ル な メ ソ 体 を 原 料 と し 、 同 一 環 境 下 に 置 か れ た 複 数 の 反 応 点 の う ち 、 一 つ の 反 応 点 に 対 し 選 択 的 に 反 応 を 進 行 さ せ る こ と で キ ラ ル な 化 合 物 へ と 導 く 反 応 で あ る 。 ま た 、 こ の よ う な 反 応 は 、 金 属 触 媒 よ り も 微 生 物 や 酵 素 な ど の 生 体 触 媒 が 得 意 と す る 分 野 で あ り 、 多 く の 利 点 を 持 つ こ と が 知 ら れ て い る 。 3 7 ) す な わ ち 、生 体 触 媒 を 用 い た 不 斉 合 成 法 の 多 く は 、加 熱 な ど の 処 理 が 不 要 で 温 和 な 条 件 化 で の 反 応 が 可 能 で あ る 点 や 、 基 質 中 に 存 在 す る 反 応 点 以 外 の 官 能 基 を 無 保 護 状 態 の ま ま 目 的 の 変 換 反 応 の み を 行 う こ と が 可 能 で あ る 点 な ど に お い て 優 れ て お り 、 現 在 も 活 発 に 研 究 が 行 わ れ て い る 分 野 で あ る 。3 8 ) こ の よ う な 優 れ た 特 徴 を 有 す る 生 体 触 媒 を 利 用 し た 不 斉 非 対 称 化 反 応 は 、 私 が デ ザ イ ン し た 化 合 物 の 中 間 体 合 成 に お い て も 有 効 で あ る と 考 え 、そ の 検 討 を 実 施 し た 。 本 章 で は 、 光 学 活 性 体 ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 ( 青 点 線 枠 ) 構 築 法 と し て の 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 と 、 得 ら れ る ア ル コ ー ル 体 の 応 用 例 に つ い て 述 べ る 。

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17 第 2 節 リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 当 時 、 (2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 化 合 物 ( 36 な ど ) の 多 く は キ ラ ル HPLC を 用 い た ラ セ ミ 体 ( rac -35 な ど ) の 光 学 分 割 に よ り 合 成 さ れ て い た( Scheme 2-1, eq. 1)。3 3 ) し か し な が ら 、既 述 し た よ う に 、そ の 手 法 は 無 駄 が 多 く 、 多 検 体 の 合 成 に は 不 向 き な も の で あ っ た 。 そ の 後 、 キ ラ ル 補 助 基 を 用 い た 不 斉 ア ル キ ル 化 合 成 法 が 開 発 さ れ た が 、 そ の 合 成 法 に お い て も 、 用 い る 保 護 基 の 脱 保 護 に 強 力 な 塩 基 や 還 元 剤 が 必 要 で あ り 、 官 能 基 許 容 性 の 観 点 か ら も 十 分 な 手 法 と は 言 い 難 か っ た ( Scheme 2-1, eq. 2)。3 9 ) そ こ で 、 よ り 効 率 的 な 合 成 法 確 立 を 目 的 と し 、 新 た に ( 2R ) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 化 合 物 16 の 製 法 検 討 を 行 う こ と に し た 。 16 の 合 成 法 に お け る 逆 合 成 ル ー ト を Scheme 2-2 に 示 す 。 鍵 中 間 体 16 の 合 成 は 、光 学 活 性 体 (2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る ア ル デ ヒ ド 40 と ヘ テ ロ ア リ ー ル を 含 む ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Wittig 反 応 に よ

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18 り 構 築 す る こ と と し た 。ま た 、光 学 活 性 ユ ニ ッ ト を 持 つ ア ル デ ヒ ド 40 は 、そ の 構 造 が 有 す る 対 称 性 に 注 目 し 、安 価 に 市 販 さ れ て い る 2-メ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の N-Boc 保 護 体 1 8 を 出 発 原 料 と し た 不 斉 非 対 称 化 反 応 と 、 続 く 酸 化 反 応 に よ り 合 成 可 能 と 考 え た 。 当 時 、 1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の 不 斉 非 対 称 化 反 応 に つ い て は 、 2-モ ノ 置 換 体 に 対 す る 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 の 合 成 例 は 多 く 存 在 し て い た が 4 0 )、 2,2-二 置 換 体 に 対 す る 報 告 例 は あ ま り な か っ た 。4 1 ) そ こ で 、 当 時 報 告 さ れ て い た 中 か ら 、 2-モ ノ 置 換 体 で あ る 2-ア ミ ノ 置 換 体 1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル に 対 す る 酵 素 を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 4 0 i, j) に 注 目 し 、目 的 と す る 不 斉 非 対 称 化 反 応 の 検 討 を 開 始 し た 。 初 め に 、 基 質 で あ る 2-メ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の N-Boc 保 護 体 18 に 対 し 、 溶 媒 と し て ジ イ ソ プ ロ ピ ル エ ー テ ル 、 ア シ ル 化 剤 と し て ヘ キ サ ン 酸 ビ ニ ル を 使 用 し 、 各 種 リ パ ー ゼ 存 在 下 、 室 温 で 3 時 間 反 応 さ せ た 場 合 の モ ノ エ ス テ ル 体 (R)-17 a へ の 変 換 に つ い て 検 討 し た ( Table 2 -2)。 a

E ach re ac t io n w as p e rfo rm ed fo r th r e e h o u rs an d th e d et a ils a re s h o wn in ex p e r im en ta l s e ct io n . b

P ro d u ct y ie ld s w e re th e is o lat ed y ie ld s . c

Th e en an t io m e r ic ex ces s v a lu es o f th e p ro d u c ts w er e m e asu red b y ch ira l HP LC c o lu m n .

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そ の 結 果 、 用 い る リ パ ー ゼ に よ っ て 収 率 、 光 学 純 度 は 大 き く 変 化 す る こ と が 判 明 し 、 Pseudo mona s 種 由 来 の 固 定 化 リ パ ー ゼ が 最 良 の 結 果 を 与 え 、 目 的 と す る R 体 (R)-17 a が 88%収 率 、 89% ee で 得 ら れ て き た ( E nt ry 1 -6)。 一 方 、 ほ と ん ど の リ パ ー ゼ が 目 的 と す る R 体 を 主 生 成 物 と し て 与 え た の に 対 し 、Mu co r java nicus 由 来 の リ パ ー ゼ と CHI RAZYME を 用 い た 場 合 に は 、今 ま で と は 逆 の エ ナ ン チ オ マ ー で あ る S 体 を 主 生 成 物 と し て 与 え る こ と が 判 明 し た 。こ の CHI RAZYME を 用 い た 反 応 と 、得 ら れ る S 体 の 応 用 例 に つ い て は 、後 ほ ど 紹 介 す る 。な お 、(R)-17a の 絶 対 配 置 と 光 学 純 度 の 確 認 は 、 Scheme 2-3 に 示 す 方 法 に よ り 既 知 化 合 物 で あ る 414 2 ) へ 導 い た 後 、 比 旋 光 度 の 比 較 、 及 び 、 キ ラ ル HPLC 分 析 に よ り 決 定 し て い る 。 続 い て 、先 の 検 討 で 最 も 良 い 結 果 を 与 え た Pseudomona s sp.か ら 得 ら れ た 固 定 化 リ パ ー ゼ を 用 い 、 ア シ ル 化 剤 と 溶 媒 に つ い て 検 討 を 行 っ た ( Table 2-3 )。

Sc he me 2 -3 . Re a ge nt and condi t i ons: ( a) P C C , M S 4A, C H2C l2; ( b) P h3P C H3B r,

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a

E ach re ac t io n w as p e rfo rm ed fo r th r e e h o u rs an d th e d et a ils a re s h o wn in ex p e r im en ta l s e ct io n . b

P ro d u ct y ie ld s w e re th e is o lat ed y ie ld s . c

Th e en an t io m e r ic ex ces s v a lu es o f th e p ro d u c ts w er e m e asu red b y ch ira l HP LC c o lu m n .

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21 に は 、溶 媒 と し て ジ イ ソ プ ロ ピ ル エ ー テ ル と ほ ぼ 同 等 の 結 果 を 与 え た tert-ブ チ ル メ チ ル エ ー テ ル を 使 用 し た 際 の 結 果 を 示 し て い る 。 そ の 結 果 、 本 反 応 は 非 常 に 早 く 進 行 し て い る こ と が 判 明 し 、反 応 開 始 後 1 時 間 と い う 短 い 時 間 で も 、 3、4 時 間 反 応 さ せ た 場 合 と 収 率 、 選 択 性 共 に 同 等 の 結 果 が 得 ら れ た ( E ntry 1-3)。 一 方 で 、 8 時 間 反 応 さ せ た 場 合 に は 、ジ エ ス テ ル 体 の 増 加 に 伴 う ( R)-17 a の 収 率 低 下 に 加 え 、立 体 選 択 性 の 低 下 も 認 め ら れ 、 そ の 減 少 値 は 時 間 経 過 と 共 に 増 加 し て い く こ と が 判 明 し た ( Entry 4,5)。反 応 時 間 が 長 く な る こ と に よ る 立 体 選 択 性 の 低 下 に つ い て は 、一 度 生 成 し た ( R)- 17a の 一 部 が 、 本 反 応 条 件 下 に お い て ア シ ル 転 位 を 起 こ す こ と が 原 因 と 考 え ら れ る 。な お 、一 度 単 離 し た (R)-17 a は 比 較 的 安 定 に 存 在 し 、冷 凍 保 存 条 件 下 で は 、 1 週 間 後 で も 、 そ の 光 学 純 度 を 維 持 す る こ と が 判 明 し て い る 。 a P ro d u ct y ie ld s we re th e is o lat ed y ie ld s . b Th e en an t io m e r ic ex ces s v a lu es o f th e p ro d u c ts w er e m e as u r ed b y ch ira l HP LC c o lu m n . 上 記 検 討 に よ り 得 ら れ た 最 適 条 件 は 、 2 位 置 換 基 が メ チ ル 基 に 限 定 さ れ る も の で は な く 、 原 料 と し て エ チ ル 体 を 用 い た 場 合 に も 問 題 な く 進 行 し た 。 す な わ ち 、 2-メ チ ル 体 18 の 代 わ り に 2-エ チ ル -2-ア ミ ノ -1,3-プ ロ パ ン ジ オ ー ル の N-Boc 体 42 を 出 発 原 料 に 用 い て 、 上 記 検 討 に よ り 得 ら れ た 最 適 条 件 に 付 し た と こ ろ 、 メ チ ル 体 よ り も 高 い 選 択 性 で ア シ ル 化 反 応 が 進 行 し 、目 的 物 で あ る R 体 (R)-43 が 87%収 率 、93%ee で 得 ら れ た ( Scheme 2-4)。

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22 さ ら に 、 本 酵 素 反 応 は 逆 の 立 体 で あ る S 体 合 成 に も 有 効 で あ っ た 。 す な わ ち 、 先 の 検 討 時 、 CHI RAZYME を 用 い た 場 合 に 得 ら れ る 化 合 物 の 立 体 が 逆 転 し た こ と に 注 目 し ( Table 1, E ntry 8)、 収 率 、 選 択 性 の 向 上 を 目 的 と し て 条 件 検 討 を 行 っ た 結 果 、 ア シ ル 化 剤 に ブ タ ン 酸 ビ ニ ル を 用 い 、溶 媒 と し て tert-ブ チ ル メ チ ル エ ー テ ル を 用 い る こ と で 、 S 体 (S)-44 の 収 率 、 選 択 性 を そ れ ぞ れ 66%収 率 、 89%ee ま で 向 上 さ せ る こ と に 成 功 し た ( Scheme 2-5)。 第 3 節 S1P1ア ゴ ニ ス ト 中 間 体 合 成 酵 素 反 応 に よ り 得 ら れ た 光 学 活 性 ア ル コ ー ル 体 ( R)-17 a か ら 鍵 中 間 体 16 へ の 合 成 は Scheme 2-6 に 従 い 実 施 し た 。4 3 ) ま ず 、 R 体 の ア ル コ ー ル ( R)-17 a を PCC 酸 化 し 、 ア ル デ ヒ ド 体 40 a を 得 た 後 、 40 a に 対 し 、 別 途 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド か ら 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と tert-BuOK を 用 い た Wittig 反 応 を 行 う こ と で 45 を ジ ア ス レ テ オ 混 合 物 と し て 得 た 。45 の エ ス テ ル 部 位 に 対 し 、水 酸 化 ナ ト リ ウ ム を 用 い た ア ル カ リ 加 水 分 解 を 行 っ た 後 、 続 け て tert-BuOK で 処 理 す る こ と で 速 や か に 分 子 内 環 化 反 応 が 進 行 し 、 オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 体 46 が 得 ら れ た 。 ジ ア ス レ テ オ 混 合 物 46 の オ レ

Sc he me 2 -4 . An as ymme t ri c re acti on of compound 42 wit h i mmobi l ize d l i pas e from Ps eudomona s s p.

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23 フ ィ ン 部 位 は メ タ ノ ー ル 中 、水 素 雰 囲 気 下 、Pd-C を 用 い て 接 触 還 元 し 、還 元 体 で あ る 30 へ と 変 換 し た 。 ま た 、 得 ら れ た 30 の 光 学 純 度 向 上 は 、 以 下 に 示 す 再 結 晶 操 作 に よ り 達 成 し た 。 ま ず 、 オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 環 を ア ル カ リ 加 水 分 解 し 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 体 へ と 変 換 し た 後 、D-( -) -酒 石 酸 を 加 え て 有 機 塩 と し た 。得 ら れ た 有 機 塩 を エ タ ノ ー ル 、 水 の 混 合 溶 媒 中 で 再 結 晶 す る こ と に よ り 、 99%ee 以 上 の 光 学 純 度 を 有 す る ア ミ ノ ア ル コ ー ル 中 間 体 16 を 得 る こ と に 成 功 し た 。 な お 、 16 の 光 学 純 度 は 、 Scheme 2-7 に 従 っ て 対 応 す る オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 体 30 へ と 導 い た 後 、 キ ラ ル HPLC 分 析 を 行 う こ と に よ り 決 定 し て い る 。

Sc he me 2 -6 . R e age nt and C ondit i ons: ( a) P CC , MS 4A, C H2C l2, 95% ; ( b) 22 , t -B uOK, T HF, 96 -98%; ( c) N aO H aq. , T HF, Me OH; ( d) t- B uOK, T HF, 81 -100% ( 2st e ps); (e) H2, 10% P d -C , M e OH, 78 -91% ; ( f) KO H aq. , T HF, Me OH; ( g) D -( -) -t art ari c aci d, Et OH; ( h) Re cr ys t al li z ati on from E t OH and H2O, 38 -65% ( 3s te ps) .

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24 第 4 節 -Meth yl Garn er ’s Al d eh yde 合 成

-ア ル キ ル --ア ミ ノ 酸 構 造 は 、fi ngol i mod に 代 表 さ れ る S 1P1ア ゴ ニ ス ト の 重 要 な 部 分 骨 格 と し て 存 在 し て い る だ け で な く 、 そ の 他 の 生 理 活 性 物 質 中 に も 散 見 さ れ る 構 造 で あ る 。4 4 ) ま た 、天 然 物 と し て 存 在 す る 化 合 物 は も と よ り 、創 薬 化 学 の 分 野 に お い て も 、位 に 導 入 さ れ た ア ル キ ル 基 は 立 体 制 御 効 果 と 、 そ れ に 伴 う 薬 理 活 性 向 上 効 果 を 発 揮 す る な ど 、 ペ プ チ ド 化 合 物 の ド ラ ッ ク デ ザ イ ン に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。4 5 ) そ れ に 伴 い 、 -ア ル キ ル --ア ミ ノ 酸 合 成 に つ い て も 、 現 在 ま で 多 く の 反 応 が 開 発 さ れ て い る 。4 4 ) 中 で も N-Boc-N,O-isoprop ylidene serinal( Garner ’s Al de hyde)タ イ プ の 中 間 体 19 は 有 用 性 の 高 い キ ラ ル な 合 成 素 子 と し て 認 識 さ れ て お り 、 Scheme 2-8 に 示 す よ う に 、 様 々 な 化 合 物 の 合 成 に 利 用 さ れ て い る 。 例 え ば 、 Horne r-E mmons 試 薬 よ り 導 か れ る 4 7 や 4 9 は そ れ ぞ れ ( +) -ge ran yl l i nal ois oc yani de 484 6 ) や ent-M anzacidin C 494 7 ) の 合 成 に 利 用 さ れ て い る 他 、銅 触 媒 を 用 い た ア ル ド ー ル 反 応 生 成 物 51 は M anzacidine 類 縁 体 524 8 ) 合 成 の 前 駆 体 と し て 用 い ら れ て い る 。 さ ら に 、 創 薬 化 学 の 分 野 で も 、 そ の 有 用 性 は 示 さ れ て い る 。 例 え ば 、 総 合 失 調 症 治 療 薬 と し て 報 告 さ れ て い る Trace Amine -Associated Receptor 1 ( TAAR1)ア ゴ ニ ス ト 544 9 ) も ア ル デ ヒ ド 19 の 還 元 的 ア ミ ノ 化 反 応 に よ り 生 成 す る 53 を 経 由 し た 手 法 に よ り 合 成 さ れ て い る 。こ の よ う に 重 要 な 中 間 体 と し て 機 能 す る ア ル デ ヒ ド 19 の 調 製 に お い て 、 今 回 の 酵 素 反 応 に よ り 得 ら れ る 光 学 活 性 化 合 物 が 利 用 可 能 と 考 え 、 そ の 合 成 に 着 手 し た 。

(30)

25 19 は S che me 2 -9 に 従 い 合 成 し た 。 ま ず 、 ( R)-17 a に 対 し 、 ト リ エ チ ル ア ミ ン 存 在 化 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン 中 、 tert-butyldimethylsilyl chloride (T BDM SCl) を 用 い て 、 一 級 水 酸 基 を シ リ ル 基 で 保 護 し た 後 、 続 い て 、 エ ス テ ル 部 位 を ア ル カ リ 加 水 分 解 す る こ と で 55 を 得 た 。 得 ら れ た 55 に 対 し 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン 中 、 BF3-E t2O 存 在 下 、 2, 2-ジ メ ト キ シ プ ロ パ ン を 作 用 さ せ 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 を ア セ ト ナ イ ド 化 し た 後 、 TB AF を 用 い て シ リ ル 基 の 脱 保 護 を 行 い 、 56 を 4 工 程 73%収 率 で 得 た 。 最 後 に 、 56 の 一 級 水 酸 基 を Swern 酸 化 す る こ と で 、 目 的 と す る 19 を 全 5 工 程 で 得 る こ と に 成 功 し た 。さ ら に 、R 体 (R)-17 a に 代 わ り 、シ リ ル 保 護 体 55 と 同 等 に 機 能 す る S 体 (S)-44 を 出 発 原 料 と す る こ と で 、一 級 水 酸 基 の 保 護 を 必 要 と せ ず 、よ り 短 工 程 で 19 の 合 成 が 可 能 で あ っ た 。 す な わ ち 、 CHI RAZI ME を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 に よ り 得 ら れ た S 体 (S)-44 に 対 し 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 を ア セ ト ナ イ ド 化 し 、 エ ス テ ル 部 位 を 加 水 分 解 す る こ と で 、 ア ル コ ー ル 体 19 を 全 3 工 程 で 得 る こ と が で き た 。 第 5 節 結 語 本 章 で は リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 反 応 を 中 心 に 、S1P1ア ゴ ニ ス ト の 重 要 な pharmaco phore と し て 知 ら れ る ( 2R) -ア ミ ノ -2-メ チ ル -1-プ ロ パ ノ ー ル 構 造 を 有 す る 各 種 ヘ テ ロ 環 合 成 中 間 体 の 合 成 法 に つ い て 述 べ た 。 本 手 法 は 、 プ ロ キ ラ ル で 安 価 な 化 合 物 を 出 発 原 料 に で き る だ け で な く 、 同 一 原 料 か ら 、 用 い る 酵 素 を 変 え る だ け で 両 立 体 の 光 学 活 性 化 合 物 を 作 り 分 け る こ と が 可 能 で あ る 点 に お い て も 優 れ た 手 法 で あ る と 言 え る 。 ま た 、 得 ら れ た 両 立 体 の ア ル コ ー ル 化 合 物 を 出 発 原 料 に す る こ と で 、 S 1P1ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 の 鍵 中 間 体 に 加 え 、様 々 な ペ プ チ ド 合 成 の 合 成 素 子 と し て 利 用 価 値 が 高 い Garner ’s Aldehyde タ イ プ 化 合 物 も 短 工 程 で の 合 成 が 可 能 で あ っ た 。上

(31)
(32)

27

第 3 章

キ ラ ル な

,

-二 置 換

-ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の

創 製

第 1 節 序 論 第 2 章 で 紹 介 し た よ う に 、私 が 実 施 す る S1P1ア ゴ ニ ス ト の 誘 導 体 合 成 に あ た っ て は 、キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ア ル デ ヒ ド 21 と 、各 種 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 か ら 調 製 し た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 と の Witti g 反 応 に よ り 中 間 体 20 を 合 成 し て い た ( Figu re 3-1, route a)。2 7, 4 3 , 5 0 )

本 手 法 は 中 心 芳 香 環 の バ リ エ ー シ ョ ン を 合 成 す る 上 で 非 常 に 有 用 な 手 段 で あ り 、 効 率 的 な 化 合 物 合 成 を 可 能 に す る 優 れ た 反 応 で あ っ た 。 し か し な が ら 、 中 心 環 と し て 電 子 豊 富 な 芳 香 環 を 導 入 す る 際 に は 、対 応 す る ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23 の 不 安 定 さ ゆ え 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22 の 合 成 が 困 難 な 場 合 が あ る な ど の 欠 点 を 有 し て い た 。 例 え ば 、ピ ロ ー ル 環 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a を 調 製 す る 場 合 、原 料 と な る N-メ チ ル ピ ロ ー ル N-メ チ ル ハ ラ イ ド 23a が 不 安 定 で あ り 、 ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と の 反 応 の 際 に 並 行 し て 進 行 す る 分 解 反 応 が そ の 調 製 を 困 難 に す る こ と が 判 明 し て い る (S che me 3 -2, e q. 1) 。4 3b )

(33)

28 そ の た め 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a は 、 ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23a を 経 由 し な い 代 替 法 に よ り 調 製 し て い た 。 す な わ ち 、 N-メ チ ル ピ ロ ー ル 5 8 の M annich 反 応 生 成 物 59 に 対 し 、ヨ ー ド メ タ ン を 反 応 さ せ た 四 級 ア ミ ン 60 を ア リ ー ル メ チ ル ハ ラ イ ド 23a に 代 わ る 前 駆 体 と し て 用 い る 手 法 に よ り 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 22a の 調 製 が 可 能 で あ っ た 。5 1 ) し か し な が ら 、 上 記 合 成 法 に お い て も 、 前 駆 体 60 が 不 安 定 で あ る こ と に 加 え 、 最 終 工 程 で 低 沸 点 悪 臭 物 質 の ト リ メ チ ル ア ミ ン が 発 生 す る な ど の 問 題 を 抱 え て い た ( Scheme 3-2, eq. 2)。 そ こ で 、 そ れ ら を 補 う 合 成 的 手 法 と し て 、 極 性 転 換 の 考 え に 基 づ き 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 構 造 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 と ヘ テ ロ ア リ ー ル ア ル デ ヒ ド 25 と の 反 応 に よ る 中 間 体 20 の 調 製 法 に つ い て 検 討 す る こ と に し た ( Scheme 3-1, route b)。 本 章 で は 、 キ ラ ル な ア ミ ノ ア ル コ ー ル 骨 格 を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 調 製 と 、 そ の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 を 用 い た 各 種 ア ル デ ヒ ド と の Wittig 反 応 に 加 え 、 各 種 生 理 活 性 物 質 合 成 へ の 応 用 に つ い て 述 べ る 。 第 2 節 ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 と,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 を 有 す る 生 理 活 性 物 質 ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト を 有 す る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 に つ い て は 、当 時 、Itaya5 2 ) Si bi5 3 ) ら の グ ル ー プ に よ り 61 や 62 な ど が 報 告 さ れ て お り 、 そ れ ら ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 と 各 種 ア ル デ ヒ ド と の 反 応 生 成 物 は 、 非 天 然 の-置 換 ア ミ ノ 酸 合 成 の 前 駆 体 と し て 利 用 さ れ て い た ( Figure 3-1)。

(34)

29

-置 換 ア ミ ノ 酸 と 同 様 、,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 は 数 多 く の 生 理 活 性 物 質 中 に 見 ら れ る 部 分 構 造 で あ り 、 Figure 3-2 に 示 す よ う に 、 天 然 物 の myriosin 45 4 ) s phi ngo fun gi n E 6 3、s phi ngofun gi n F 645 5 ) な ど の 部 分 構 造 に 見 ら れ る だ け で な く 、創 薬 化 学 の 分 野 に お い て も 、 多 く の 化 合 物 中 に 重 要 な 部 分 骨 格 と し て 存 在 し て い る 。 例 え ば 、 先 に 紹 介 し た fingolimod 62 0 , 5 6 ) に 加 え 、 そ の 他 の S1P

1 ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 2 4 , 5 7, 5 8 ) の 多 く は

,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 を 有 す る も の で あ る 。 さ ら に 、 R oche ら の グ ル ー プ に よ り 総 合 失 調 症 治 療 薬 と し て 報 告 さ れ て い る Trace Amine -Associated Re ce pt or 1 (TAAR 1) ア ゴ ニ ス ト 314 9 ) も 、,-二 置 換 ア ミ ノ 酸 構 造 か ら 誘 導 さ れ る 4, 5-di h ydro -1, 3 -oxaz ol -2-yl a mi ne を 部 分 構 造 に 持 つ こ と が 知 ら れ て い る 。以 上 の よ う な 背 景 か ら 、今 回 デ ザ イ ン し た 光 学 活 性 四 級 炭 素 を 持 つ ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 調 製 と 、 そ の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 を 用 い た ア ル デ ヒ ド と の Wittig 反 応 の 確 立 は 、 私 が 実 施 す る S1P1ア ゴ ニ ス ト 化 合 物 合 成 に 応 用 で き る だ け で な く 、様 々 な 生 理 活 性 化 合 物 に 対 す る 新 規 合 成 法 に な り え る と 考 え ら れ た 。

Figu re 3 -1 . S t ruct ure s of Wi tt i g re a ge nt s be ari ng t he t e rt i ary carbo n ce nt e r at

(35)

30 第 3 節 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 合 成 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 は 対 応 す る ア ル コ ー ル か ら 、ハ ロ ゲ ン 化 を 経 た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 化 に よ り 合 成 可 能 と 考 え た 。 そ こ で 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 前 駆 体 と な る 光 学 活 性 四 級 炭 素 を 有 す る ア ル コ ー ル 体 の 合 成 に 着 手 す る こ と と し た 。 当 初 、 光 学 活 性 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 骨 格 の 構 築 は 、 第 2 章 に て 述 べ た リ パ ー ゼ を 用 い た 不 斉 非 対 称 化 法 2 7 ) 採 用 し て お り 、そ の 手 法 を 用 い て ア ル コ ー ル 体 56 の 調 製 を 行 っ て い た 。そ の 後 、私 の 所 属 す る 研 究 グ ル ー プ は 、S1P1ア ゴ ニ ス ト 創 薬 研 究 の 中 で 各 種 製 法 検 討 を 実 施 し 、 光 学 活 性 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 中 間 体 の 改 良 合 成 法 を 見 出 す こ と に 成 功 し た 。5 0 ) そ の 反 応 は 、 ア ル コ ー ル 体 56 と 等 価 で あ る 26 の 合 成 法 と し て 、L-s e ri ne 塩 酸 塩 27 を 出 発 原 料 と す る 反 応 で あ り 、 光 学 純 度 向 上 の た め の 再 結 晶 操 作 を 必 要 と せ ず 、 安 価 で 入 手 し 易 い 原 料 を 用 い る こ と が 出 来 る 点 で 優 れ て い た 。 そ こ で 、 光 学 活 性 ユ ニ ッ ト の 構 築 法 に は 後 者 の 合 成 法 を 採 用 す る こ と と し 、 Scheme 3-3 に 示 す 手 法 に 従 い ア ル コ ー ル 体 26 を 合 成 し た 。

Figu re 3 -2 . Bi ol ogi cal a ct i ve compounds , pos se s si n g t he ,-di s ubst it ute d

(36)

31 は じ め に 、安 価 に 市 販 さ れ て い る L-se ri ne 塩 酸 塩 27 を 出 発 原 料 と し て 用 い 、ト リ エ チ ル ア ミ ン 存 在 下 、 ピ バ ル ア ル デ ヒ ド を 用 い て ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 の ア セ タ ー ル 環 化 を 行 っ た 。 そ の 後 、 ワ ン ポ ッ ト に て ア ミ ノ 基 の メ チ ル カ ル バ メ ー ト 保 護 を 行 い 、 既 報 化 合 物 で あ る 665 9 ) を 得 た 。 得 ら れ た 66 に 対 し 、 THF 溶 媒 中 、 リ チ ウ ム ヘ キ サ ジ シ ラ ジ ド ( LiHMDS) と N,N'-ジ メ チ ル プ ロ ピ レ ン 尿 素 ( DM PU) 存 在 下 、 ヨ ウ 化 メ チ ル を 作 用 さ せ る こ と で 、ア セ ト ナ イ ド 上 に 存 在 す る tert-ブ チ ル 基 と は 逆 方 向 か ら 選 択 的 に メ チ ル 化 が 進 行 し 、目 的 の 立 体 を 有 す る 光 学 活 性 体 67 を 得 る こ と に 成 功 し た 。 最 後 に 、 水 素 化 ト リ エ チ ル ホ ウ 素 リ チ ウ ム ( LiBH4) を 用 い て 四 級 炭 素 上 の メ チ ル エ ス テ ル 基 の 還 元 を 行 い 、光 学 活 性 ア ル コ ー ル 体 26 を 全 3 工 程 、80%収 率 で 合 成 し た 。 な お 、 26 の 絶 対 配 置 と 光 学 純 度 の 確 認 は 、 後 の Scheme 3-5 に 示 す 方 法 に よ り 、 既 知 化 合 物 で あ る 716 0 ) へ 導 い た 後 、 比 旋 光 度 の 比 較 、 及 び 、 キ ラ ル HP LC 分 析 に よ り 決 定 し て い る 。6 1 ) 次 に 、 得 ら れ た ア ル コ ー ル 体 26 を 用 い て 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 の 合 成 検 討 を 行 っ た 。各 種 検 討 を 行 っ た が 、26 の 一 級 水 酸 基 を ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 へ と 変 換 す る こ と は 不 可 能 で あ っ た 。す な わ ち 、26 の 一 級 水 酸 基 を ヨ ウ 素 化 す る 反 応 は 低 収 率 な が ら 進 行 し た も の の( 68)、続 く ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン を 用 い た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24a へ の 変 換 が 全 く 進 行 し な い こ と が 判 明 し た 。

(37)

32 ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と ヨ ウ 素 体 68 と の 反 応 性 の 低 さ は 、ア ミ ノ ア ル コ ー ル ユ ニ ッ ト 上 の 嵩 高 い 置 換 基 ( 保 護 基 ) に よ る 立 体 障 害 が 原 因 で あ る と 考 え ら れ た 。 そ こ で 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 上 の 置 換 基 を よ り 小 さ な 置 換 基 へ と 変 換 す る こ と と し た 。 そ の 際 、 当 時 Sibi ら に よ っ て 報 告 さ れ て い た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 625 3 ) を 参 考 に し 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 部 位 を オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 骨 格 へ と 変 換 す る こ と と し た 。 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は Scheme 3-5 に 従 い 合 成 し た 。 26 に 対 し 、 DM F 中 N aH を 用 い て ベ ン ジ ル ブ ロ ミ ド と 反 応 さ せ る こ と に よ り 、 一 級 水 酸 基 の ベ ン ジ ル 保 護 体 69 を 得 た 後 、 酸 性 条 件 下 で tert-ブ チ ル メ チ リ デ ン を 脱 保 護 し 70 へ と 導 い た 。次 い で 、THF 中 tert-BuOK を 作 用 し 、オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 環 化 体 71 を 得 た 。得 ら れ た 71 に 対 し 、水 素 雰 囲 気 下 、Pd-C を 用 い た 接 触 還 元 反 応 に て ベ ン ジ ル 基 の 脱 保 護 を 行 い 、 ア ミ ノ ア ル コ ー ル 上 の 保 護 基 を オ キ サ ゾ リ ジ ノ ン 骨 格 へ と 変 換 し た ア ル コ ー ル 体 72 を 得 た 。 7 2 は 、 ト シ ル 化 を 経 由 し た ヨ ウ 素 化 反 応 を 行 い 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 の 前 駆 体 で あ る ヨ ウ 素 体 7 3 へ と 変 換 し た 。 73 は 予 想 通 り 、 ヨ ウ 素 体 68 よ り 高 い 反 応 性 を 持 ち 、 DMF 中 、 ト リ フ ェ ニ ル ホ ス フ ィ ン と 反 応 さ せ る こ と で 目 的 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b を 粉 状 結 晶 と し て 得 る こ と に 成 功 し た 。

Sc he me 3 -4 . R e age nt s and condi ti ons : ( a) P P h3, I2, i mi daz ol e , t ol ue ne : ( b) PP h3, DMF.

(38)

33 第 4 節 Witt ig 反 応 条 件 検 討

得 ら れ た ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b の Wittig 反 応 に つ い て 、基 質 に ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a を 用 い た 各 種 条 件 検 討 ( 塩 基 の 種 類 と 等 量 、 イ リ ド の 調 製 温 度 ) を 実 施 し た 。 そ の 結 果 を Table 3-1 に 示 す 。

Tab le 3-1 . Wi tt i g re act i ons wit h phos phoni um s al t 24 b and be nz al de hyd e 25 a.

Ent ry C ondi t i ons

P hos phoni um s alt 24 b (e q.) B ase (e q.) Yi el d (%) E/Z a ee( %)b 1 n-B uLi , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 1. 2 2. 3 46 > 99/ 1 N.T.c 2 n-B uLi , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 1. 2 1. 2 t race N.T. N.T. 3 n-B uLi , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 1. 5 2. 9 83 > 99/ 1 N.T. 4 n-B uLi , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 2. 0e 3. 9 99 > 99/ 1 98. 6 5 n-B uLi , 0oC , 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 2. 0 3. 9 N. R .d -- N.T. 6 Li HMD S , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 2. 0 3. 9 80 > 99/ 1 N.T. 7 N aHMD S , -78oC, 0. 5 h, t he n r. t. , 2 h 2. 0 3. 9 76 > 99/ 1 N.T. a Es tab lis h ed b y 1H N MR . b

Es t im a ted b y ch ir a l H PLC co m p a red w ith th e co r r esp o n d in g r ac em ic co m p o u n d . c

N . T. = n o t t es t ed . d

B en z a ld eh y d e w as 9 0% r eco v e red . ( N. R . = n o r e act io n ) e

(39)

34 2. 3 当 量 の n -B uLi と 1. 2 当 量 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24 b を -78℃ で 30 分 間 攪 拌 す る こ と に よ り 調 製 し た イ リ ド に 対 し 、 -78℃ で 1.0 当 量 の ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド を 加 え た 後 、 室 温 ま で 昇 温 し 、 2 時 間 反 応 さ せ た と こ ろ 46%の 収 率 で 目 的 の オ レ フ ィ ン 体 20 a が 得 ら れ た 。 さ ら に 、 そ の 立 体 は E 体 に 制 御 さ れ て い る こ と が 判 明 し た ( Entry 1)。 な お 、 得 ら れ た オ レ フ ィ ン 体 の E/Z 比 は 1 H NMR 測 定 に よ り 決 定 し て い る 。 ま た 、 そ の 後 の 条 件 検 討 の 結 果 、 Wittig 反 応 を 進 行 さ せ る た め に は 、 ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 に 対 し て 2 当 量 の 塩 基 が 必 須 で あ り ( E ntry 2)、 さ ら に 、 反 応 収 率 は 用 い る ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 を 増 加 さ せ る こ と で 向 上 し 、 2 当 量 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 を 用 い た 場 合 に 99%ま で 向 上 す る こ と が 判 明 し た( E nt r y 3, 4)。な お 、本 反 応 条 件 下 に お い て 光 学 純 度 が 損 な わ れ て い な い こ と は 、 反 応 生 成 物 20a を キ ラ ル カ ラ ム 分 析 す る こ と に よ り 確 認 し て い る 。 ま た 、 本 Wittig 反 応 に 使 用 し た 余 剰 の ホ ス ホ ニ ウ ム 塩 24b は そ の ま ま の 状 態 で の 回 収 は 出 来 ず 、 代 わ り に ホ ス フ ィ ン オ キ サ イ ド 2 4-O が ほ ぼ 定 量 的 に 回 収 さ れ た 。 こ の 回 収 さ れ た ホ ス フ ィ ン オ キ サ イ ド 24-O は ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a と は 反 応 せ ず 、 残 念 な が ら 再 利 用 は 不 可 能 で あ っ た 。6 2 ) 本 反 応 系 に お い て 窒 素 原 子 の ベ ー タ 脱 離 体 等 の 副 生 成 物 が 生 成 す る こ と な く 目 的 の 反 応 が 進 行 す る 理 由 に つ い て は 、-78℃ の 極 低 温 下 で は 、オ キ サ ゾ リ ン 環 の 窒 素 原 子 上 の 脱 プ ロ ト ン 化 に よ り 生 じ た ア ニ オ ン ( 74) が 窒 素 原 子 の ベ ー タ 脱 離 ( 75) を 妨 げ る た め と 考 え ら れ る ( Scheme 3-6)。 こ の よ う に 、 イ リ ド 調 製 時 の 温 度 は -78℃ で あ る こ と が 必 須 で あ り 、 0℃ ま で 昇 温 し た 場 合 に は オ レ フ ィ ン 体 が 全 く 得 ら れ ず 、 原 料 の ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド 25a が ほ ぼ 定 量 的 に 回 収 さ れ る と い う 結 果 が 得 ら れ て い る ( Entry 5)。 続 い て 、 イ リ ド 調 製 時 に 用 い る 塩 基 に つ い て 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 イ リ ド 調 製 時 の 塩 基 は 反 応 に あ ま り 影 響 を 与 え ず 、 ヘ キ サ メ チ ル ジ シ ラ ザ ン リ チ ウ ム ( LiHM DS) や ヘ キ サ メ チ ル ジ シ ラ ザ ン ナ ト リ ウ ム ( NaHM DS) を 用 い た 場 合 に お い て も 、 若 干 の 収 率 低 下 は 見 ら れ る も の の 、 反 応 は 問 題 な く 進 行 し た 。 そ の 際 、 生 成 物 の 立 体 は 、 両 反 応 と も E 体 の み で あ る こ と が 判 明 し た ( E ntry 6, 7)。 一 般 に 、 Wittig 反 応 の E /Z 選 択 性 に つ い て は 、 反 応 系 か ら リ チ ウ ム イ オ ン を 除 く と E 選 択 性 が 減 少 63 ) す る こ と が 知 ら れ て い る 。事 実 、Sibi ら に よ る 報 告 の 中 で も 、

Figu re  1 -1.  C orrel at i on  bet we e n  i mmune  re act i ons  and  de si es e s .
Figu re  1 -2. M aj or  i mmunos uppres s ant s .
Figu re  1 -6.   S phi ngos i ne -1-phos phat e  (S 1P)   and t hei r  re ce pt ors  ( S 1P x )
Figu re  1 -7.  M e chani s m  of l ympho c yt e   homi ng  a ct i on .  Tab l e  1 -1
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参照

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