資本の投資行動と
利潤率・実質賃金率・相対価格
資本蓄積の2部門分析−
浅 利 一 郎
Ⅰ は じ め に
景気循環における好況期の特徴は、なによりも、資本の累積的拡大にともな う超過需要と諸価格・利潤率の上昇である。無制限な価嘩増殖を内的衝動とし 諸資本の競争を外的強制として自己を拡大しなければならない資本にとって、
好況期の諸価格・利潤率の上昇は資本の累積的拡大の Wirkungenであると ともに、更なる拡大への Motiveでもある。もちろん、好況期における資本 の累積的拡大と諸価格・利潤率の上昇は、無限にすゝむわけではない。資本の 累積的拡大過程は同時に、それ自体の展開のうちに諸矛盾・不均衡を累積して いく過程でもあり、好況期は恐慌期の前段階でしかない。
本稿の目的は、景気循環の好況期を考察対象として、資本の累積的拡大と諸 価格・利潤率等との構造的関連を、マルクス再生産表式論を基礎に据えなが
ら、価格・利潤(率)次元にまで上向することにより考察することにある。
こうした問題設定は、景気循環の好況期の蓄積構造を対象とする点において も、またその分析方法においても、マルクスの再生産表式論(『資本論』第2 部第3篇)の論理段階とは異なる。マルクスの再生産表式論は、資本の蓄積・
再生産が景気循環をつらぬいて進行していく限りにおいて、それがいかにし て、諸資本の運動や所得流通との絡み合いをとおして行こなわれていくかを明 らかにすることを課題としている。したがってまた、その考察対象も、現実の 資本の運動態様=景気循環過程から抽象され措定された理想的・平均的な資本
の蓄積過程である。それゆえ、商品資本循環視点、二部門、三価値構成という 社会的総資本把握の枠組みのもとで、総資本の運動を考察する時にも、不変資 本・可変資本・剰余価値の間の比率(資本の有機的構成、剰余価値率)や、剰 余価値の蓄積部分と消費部分への分割比率(蓄積率)の変動は、マルクス再生
産表式論の課題にとって、特に大きな意義をもっていたわけではない0
それに対し、景気循環の諸局面とりわけ好況期の資本蓄積の構造を明らかに し、諸矛盾・不均衡の累積を把えようという問題意識においては、価値次元の 表式分析においてさえ、これらの比率の変動こそが問題であり、資本蓄積と諸 比率の相互関係を理論的に解明することが課題となる0
更に、価値次元から価格・利潤(率)次元にまで上向して好況期の蓄積構造 を考察しようという本稿の問題設定においては、資本の累積的拡大と諸価格・
利潤率・実質賃金率等の変動の構造的連関に焦点があわせられねばならない。
すなわち、好況期の諸価格・利潤率等の変動は、資本の累積的拡大のWirkun・
genであると同時に、資本の本性からして更なる拡大へのMotiveとして位 置付けられるのである。資本の最大の関心事は利潤率であり、できるだけ多く の利潤量の獲得ある。そして、利潤率を直接支配することのできない個別資本 にとって、超過需要が支配的な好況期には、生産規模を拡大し資本蓄積をおし すゝめることが、最大限の利潤量を獲得し諸資本の競争にうちかっていく方法 となる。こうして、資本の累積的拡大が、更なる市場における超過需要を呼び おこし、諸価格・利潤率等の変動を規定することになる。本稿では、こうした 資本蓄積と諸価格・利潤率等の運動の構造的連関を基軸に、価格次元で再生産 モデルを構築することにより好況期の資本蓄積の構造を明らかにすることを試 みる。
さて、価値次元での表式分析をも含めて、何らかの再生産モデルにおいて資 本蓄積の動態を考察する場合、理論的に最も重要な問題は、そのモデルでどの ような資本の投資行動、あるいは蓄積様式を想定しているのかという問題であ る。たとえば、理想的・平均的な資本の蓄積過程を対象としたマルクスの再生 産表式でさえ、拡大再生産を問題にする限り、第Ⅰ部門の蓄積率50%、第Ⅱ部 門の蓄積率の調整という蓄積パターンをもっているのである0
ましてや、本稿の問題設定では、資本の投資行動が明示的に導入されねばな らない。従来、価格・利潤(率)次元で資本の行動を明示的にあつかっている 研究は必らずしも多いとは言えないが、置塩氏の一連の研究は貴重な成果とい
2(129)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価終 える。われわれはまず、われわれの試みにとって、たとえそれが第1次接近に せよ、いかなる条件をみたす資本の投資行動が想定されなければならないか を、置塩氏の成果を検討することにより考えてみよう。
琵
(1).W・C・Mitchell(1874−1948)は、景気循環の膨大な統計的資料研究のなかでまとめ た著作において、好況期を需要の増大、諸価格上昇、利潤の増大等で特徴づけている、
〔11〕p.17〜47参照。なお Mitchellらの研究により、好況期の価格・費用・利潤 の変動を理論的に整理した種瀬〔10〕も参照のことり
(凱 この点については、拙稿〔14〕p・101〜110参照っ
(3).価値次元の再生産表式における資本蓄積の動態把握の方法については、拙稿〔15〕参 照。
仰.これらのうち、本稿にかかわる文献は、末尾の参考文献にあけておく。
lt.資本の投資行動と利潤率
無制限な資本価値の自己増殖運動をその本質とする資本の蓄積は、最大限の 利潤量の獲得をめぐる諸資本のなかでつらぬかれる。諸資本の競争を外的強制 として、累積的に拡大していかなければならない資本にとって、資本蓄積の Motiveは利潤率である。しかし、好況期における資本の投資行動と利潤率の 関係は決して単純ではない。利潤率が相対的に高い場合、資本の蓄積衝動が強 く蓄積需要も大きいのは言うまでもないが、利潤率が相対的に低い場合でも、
資本の蓄積衝動は弱いということにはならない。それどころか、この場合に も、利潤量の獲得をめぐる諸資本の競争は一層激しく、資本蓄積・生産規模拡 大への衝動がより強いこともありうる。このように、個別資本の蓄積に対し外 的強制力となる諸資本の競争は、総資本の運動にたいして「不均衡の均衡化」
に作用するだけではなく、「不均衡の累積化」にも作用するのである0 むしろ より正確にいえば、競争の「不均衡の均衡化」作用は、景気循環の恐慌局面に おいて暴力的集中的に貫徹するのである。
われわれは、こうした資本蓄積と利潤率の関係を何らかの資本の投資行動の 定式化に反映させねばならないが、まず、資本の投資行動と利潤率の運動に注
首した置塩氏の所説を検討してみよう。
困 置塩『蓄積論』における資本の行動論
置塩氏が『蓄積論』において展開された再生産モデルにおける資本家の行動 は二段階にわたる。すなわち、資本家による生産水準決定に関する態度と、蓄 積需要決定に関する態度である。まず第一段階の生産水準決定態度から検討し
よう。
置塩氏は、『蓄積論』第1章第4節「実質賃金率の決定機構」において、次 のように説明される。「生産財部門の資本家は、単に彼の商品が販売可能であ るだけでなく、彼が生産を決意するに満足するに足ると判断するほどの利潤率 をあげうるのではなくては、生産を決定しない。生産水準を引上げると、その 販売の可能性についての疑惑は増加していく0にもかかわらず、生産能力ぎり
ぎりまで生産を行なうことを資本家に決意させるには、資本家がかなり高い利 潤率を期待できる場合であろう。それゆえ、第1次接近として、一定の生産能 力を所有する資本家が生産水準を決定するのは、利潤率の高低を基準にしてで
あり、利潤率が高かければ生産水準を高かめ、利潤率が低ければ生産水準を低 めると考えることができ、
れ=′(れ),′>0
となる。」(置塩〔4〕、p.77。傍点は引用者)。ここで範は生産水準、れは 利潤率、サブスクリプトf=1,2はそれぞれ生産財部門、消費財部門をしめす0 以下同じ。
同様にして、消費財門門の資本家の生産水準決定態度を次のようにしめされ
る。
∬2=ゐ(r2),ゐ/>0
置塩氏はこのように、資本家の生産水準決定態度を当該期・当該部門の利潤 率の増加関数と想定されたが、ここで問題なのは、この「利潤率」とは、当該 期・当該部門の期待利潤率(又は、要求利潤率)なのか、実現利潤率なのかと いう問題である。置塩氏自身は、この簡処ではこの「利潤率」がいかなるもの か何も言っておられない0しかし、この「利潤率」が期待利潤率なのか実現利
4(127)
投資行動と利潤率・実質賃金率・対相価格 潤率なのかという問題は、以下の行論でしめすように、置塩体系にとって決定 的重要性をもっている。 .
上の引用において、引用者傍点で強調しておいたように、置塩氏は「第1次 按近」として、資本家は高い利潤率が期待されるとき高い生産水準を決意する と想定されており、この限りでは、この「利潤率」は期待利潤率と考えられ る。また、もしこの「利潤率」が実現利潤率だとしたら、資本家は生産水準を 決める以前に、その期の実現利潤率を知っていることになる。実現利潤率と は、生産された商品生産物がある価格水準のもとで売買された後、明らかにな る利潤率であり、生産開始以前に実現利潤率を知るためには最少限、当該期の 諸商品の価格水準がわかっていなければならない。しかし、資本家は生産開始 以前に、貨幣賃金率に関する情報を得ることぐらいはできても、他の諸商品の 価格水準は予想することができるだけである。置塩氏の説明において資本家の 生産水準決定態度に最初に登場する「利潤率」は期待利潤率として考えられ
る。
ところが、置塩氏の想定される資本家の行動の第2段階たる蓄積需要の決定 においては、この同じ「利潤率」が明確に実現利潤率とされる。置塩氏は、生
(2)
産能力を正常に稼働して生産される生産水準を∬*、現実の生産水準を∬とし て、稼働率∂を∂=∬/∬*で定義され、つづいて、資本蓄積率g=〃且を前期 の稼働率の増加関数と想定される。すなわち、
ム_ム_1
 ̄琵 ̄ ̄頂こ +ダ(∂卜1);ダ(1)=0,ダ′>0
ただし、∫は追加的生産手段、方は既存の生産手段であり、下ツキサブスク リプトは期間をしめす。
そこで置塩氏は次のようにいわれる。「第1章第4節で、われわれは第1次 接近として各部門の資本家の決定する生産量は、その部門の実現利潤率の増加 関数とした。これをいまの議論にあてはめていえば、各部門の稼働率は、各部 門の利潤率rの増加関数である。したがって、資本家の蓄積需要に対する態度 は、
..■:
ム_ム_1
首 ̄項=; +ダ〔∂卜1(r卜1)〕;∂′>0
とかける。このようにして、稼働率に着目して資本蓄積率を決定するというこ とは、利潤率に着目して資本蓄積率をきめるということをふくむことになる。」
(置塩〔4〕,p.192,傍点は引用者)。置塩氏によれば、明らかに資本家の生産 水準決定に登場する「利潤率」は実現利潤率なのである。
それでは、置塩体系におけるこの期待利潤率から実現利潤率へのきり替え は、どこでどのようにしておこなわれ、また、そのきり替えは何を意味してい るのであろうか。
すでにのべたように、置塩氏の想定する資本家の生産水準決定態度における
「利潤率」が、実現利潤率だとしたら、(i)生産水準の決定には当該期の実現 利潤率を知らなければならない。また、(ii)実現利潤率を知るためには、諸価 格の水準を知る必要がある。史に、(iii)諸価格の水準を知るためには各部門 の生産水準がわかっていなければならない。これは明らかにCircularreason・
ingである。置塩氏は、この循環論を、均衡論的に、生産水準(又は稼働率)、
実現利潤率、実質賃金率(抑/九,ぴ/♪2;紺は貨幣賃金率)の同時的決定によ って解決される。すなわち、以下6本の方程式による6個の未知数(利,∬2,
れ,r2,ぴ/九,紺/♪2)の決定である。
∬1=∬1(rl), ∬1′>0
∬2=∬2(γ2), ∬2′>0
l
r2二一
∬1=α1∬1+α2∬2+ム+ム
∬2=芸(Tl折72∬2)+Cl+C2
\
i
ノ
(2・1)
(2・2)
(2・3)
ただし、(仇,Td)はそれぞれ、第才財1単位生産するのに必要な生産手段の量 及び直接必要な労働量である。また、(2.3)における蓄積需要(ん,ム)及び 資本家の個人的消費(Cl一十C2)は与えられたものとする。(2・1)は生産水準決 定態度、(2・2)は利潤率の定義式、(2・3)は需給一致条件である。
こうして、資本家の生産水準決定態度に最初登場する期待利潤率の実現利潤
6(125\ニー
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 率へのきり替えが完了することになる。第1章第4章の論理は、「実質賃金率
の一時的決定」だけではなく、同時に、生産水準、実現利潤率の決定をもふく むことになる。
それでは、この期待利潤率の実現利潤率へのきり番にともなう、生産水準
(又は稼働率)、実現利潤率、実質賃金率(これは相対価格をもふくむ)の同 時的決定体系(simultoneous decision system)は、置塩塩系においていか
なる位置にあり、いかなる意味をもっているのだろうか。
(21置塩体系の問題点
われわれは置塩体系の資本家の行動論の検討から、上記の問題に到ったが、
この間題の全面的検討のためには更に、置塩体系全体にはいっていかなければ ならない。ここでは、議論をより簡潔にすゝめるために置塩『蓄積論』体系の 本質的特徴をそのまま保持する「数学附録4.不均衡の累積性」のモデルを検 討する。この場合の置塩体系は以下である。
(仮定)
①.生産物は投資財としても、労働者用の消費財としても使用可能である。
.資本家の消費の捨象。
④.生産設備は摩損せず、補填は無視される。
㊥.生産設備は正常稼働水準以上のある一定レヴェルまで稼働できるが、そ れ以上は物理的に不可能である。
(置塩体系)
生産物の需給一致条件 為=尾州+ム
ここでは、ズ生産量、忍は実質賃金率、Ⅳは雇用労働量
利潤率の定義式 為=れ乾+尾州
打は既存の生産手段の量。
生産技術の条件
(0・1)
(0・2)
凡=Jズ;
為=∂f♂f穐
ただし、Jは生産物1単位生産するのに必要な労働量
。は設備1単位を「正常」に稼働するときの生産量 蓄積率の定義式
gf=妾
資本家の蓄積態度
g机=g汗β(∂「1);β>0
稼働率の決定式
∂f=∂(れ);∂′>0,∂(γ*)=1
(0・3)
(0・4)
(0・5)
(0・6)
(0・7)
以上で置塩体系は完結するが、塩沢氏の最近の論稿〔13〕の置塩体系理解と比 較するために、塩沢氏と同様に置塩体系の「暗黙の了解」となっている丁と打
の関係式を加えておく∩
乾.1=乾+ム (0・8)
さて、まずわれわれの問題の考察にはいる前に、塩沢氏の置塩体系理解をみ ておく。塩沢氏は「経済的なものはつねに過程の中にあり、そのなかでのみ把 握される」とし、「過程がいかに進行するか、その機微を解明しようとすること から対象にせまる方法」を<過程分析>と名づけ、過程分析のkey概念として
「決定関係」を強調される(塩沢〔13〕,p・71)0そして、この「決定関係」を 中心にして置塩体系を次のように理解される0
(0・1)は「ケインズの『短期均衡式』にあたり、右辺が左辺を決定」する、
(0・2)については、「この方程式で決定されるのは利潤率」である0また
(0・3)では「予定生産量が雇用量を決め」、(0・4)は「第1式から生産量y
(本稿では㌃一引用者)が決まれば∂の決定式」である0(0・5)は「gとだ
8(1231
■ l r r 邑 ト
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投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 とを既定として丁を決定する式」であり、(0・6)の「決定方向は∂からg」
である。(0・7)は「稼働率∂は利潤率γの函数」であることをしめし、
(0・8)はけが好を決定する。」
塩沢氏は各式をこのように理解し「置塩体系の決定関係図」を(図一1)の ようにまとめられる。
(図−1)塩沢氏による「置塩体系の決定関係図」
(註)塩沢〔13〕(2).P.76.より。()は決定関係の式の番号をしめす。
ただし、次の修正をする。○はt期おいては既知値である。
===妻>は、t+l期にわたる決定関係である。また、塩沢氏のYは、
本稿ではXである。
ここから塩沢氏は、置塩体系における2つの問題点すなわち実質賃金率の体系 内未決定の問題と稼働率の二重決定の問題を指摘され、置塩体系の非整合性を 主張される。
われわれは塩沢氏の過程分析における決定関係の重視という考え方には、大 いに賛同できる。しかし塩沢氏の置塩体系理解は、(0・1)及び(0・4)にか かわる生産水準決定についての置塩『蓄積論』の論理にたいする誤解があるよ
うに思われる。そこで、『蓄積論』本論にもう1度もどって考えてみよう。
置塩体系においては需給一致条件は確かに「短期均衡式」であり、置塩氏も
「現実の生産水準は、需要に等しいと想定する。」(置塩〔4〕,p.182)といわ れる。この想定自体は生産水準が需要を決定するとも、需要が生産水準を決定 するとも表明しているわけではない。『蓄積論』本論では需給一致条件は2部 門分析で次のようにしめされる。
∬1=α1∬1+α2∬2十八十も
∬2=尺(Tl∬1+72∬2)+C
これより、「生産技術、実質賃金率を所与とすれば、ム+友Cがきまれば ∬1,
井貫は
∬lT
∬2=
(ム+ム)(1−月丁2)+Cα2 行−α1)(1−月丁2)−α2月Tl
(ム+ム)点Tl+C(1−α1)
(トα1)(1−月72) −α2月Tl
である。純生産可能条件α1<1、剰余条件卜尺f2>0が充たされていれば、
利,∬2は正値をとる。」(同、p.183〜184)
ここにおける2つの式の解釈は微妙である。これらの式自体は需給一致条件 からえられたものであり、したがって需給一致の「想定」のそれ以上でも以下 でもない。しかしこの「想定」は「生産技術、実質賃金率を所与とすれば」、
ム+ふ,Cがこの「想定」をとおして、利,∬2を決定することを意味する0 と ころがすでにみてきたように置塩体系では、生産水準は当該期当該部門の「利 潤率」の増加関数という独白の決定論理をもち、他方ム+ム(ム+ム=〃C;〃
は定数)は前期の稼働率の増加関数という決定論理をもつ。それゆえ実質賃金 童女を㌫与と与れな、需給一致の「想定」は偶然の一致をのぞくと、一方の決 定論理が他方の決定論理を支配または排除することを意味してくる〔こうし て、塩沢氏は実質賃金率を所与として、したがってまた体系内未決定として、
「右辺が左辺を決定」すなわち独立需要が生産水準を決定すると理解されたの である。それゆえ、蓄積需要ム+ムの決定論理は他方の生産水準決定論理を 支配し逆転させる。そして逆転した生産水準決定の論理(rf→∂f→為)は分断 され、(0・4)は生産水準が決定したときの稼働率の決定式として理解される ことになる。ここに、実質賃金率の体系内未決定と稼働率の二重決定の問題が あらわれることになる。
しかし、置塩体系では実質賃金率を所与としているわけではなく、独自の決 定機構をもつ。すなわち、需給一致条件のもとで生産水準決定の論理のうち に、総需要決定論理の一構成部分たる実質賃金率の決定をふくむことによって
需 需
給一致の「想定」が常に保特されているのである。生産水準の決定は同時に 給一致を保障する実質賃金率の決定をふくむ。『蓄積論』第1章第4節でし めされるように、置塩体系では、需給均衡式は生産水準、実現利潤率、実質賃 金率の同時決定体系のまさに構成部分なのである。したがって『蓄積論』本論 に即して「数学附録」の置塩体系を解釈すると、(0・1)式は、「右辺が左辺を
10(121)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 決定」するのではなく、蓄積需要∫と生産量ズ(したがってまた(0・3)より 雇用量叫がわかっているときの実質賃金率点の決定式であり、また(0・4)
は生産量方が決まった時の稼働率∂の決定式ではなく、稼働率∂が決まった 時の生産量ズの決定式である。この関係を塩沢氏にならって決定関係図とし て書くと(図一2)になる。
(図−2)置塩体系の決定関係図
−− 「
闇)破線枠内r」が期間内均衡体系(後述)
(図−2)からわかるように、『蓄積論』本論に即して考えれば、置塩体系 における諸変数の決定にはそれぞれ1つの式が対応し、未決定も二重決定もあ
らわれない0 しかし、体系の数学的整合性の確認がここでの目的ではない。わ れわれの問題は生産水準・実現利潤率・実質賃金率の同時決定体系の置塩体系 における位置及びその意味の考察である。(図−2) でいえば、この同時決定 体系は破線枠内のγ→∂→ズ→点でしめされる。置塩体系では蓄積需要丁 が前期の実績から決まれば、この同時決定体系を中核とする破線枠内の関係に より、∫をのぞく他の期間内変数が均衡論的に同時決定される。この期間内均 衡体系は、まさに資本家の生産水準決定態度に最初に登場する期待利潤率の実 現利潤率へのきり替えにより均衡の連鎖が閉じられ、完結している。置塩体系 の基本的な特徴は、資本蓄積を基礎におく動学体系であると同時に、期間内の 関係としては均衡体系であるという点にある。そして、置塩体系が期間内均衡 体系をその構成部分としてもつということは、期間内変数を決定できるという
こと以上の理論的にはより根本的な問題を置塩体系が、内包していることにな る0すなわち期間内均衡の模索の問題である。前期の実績からg及び∫がわ かっているとき、期間内均衡体系は置塩体系の(0・1)から(0・4)及び(0・7)
で構成され、そこで最も重要なのは(0・7)の稼働率∂を利潤率rにむすび つけた式である。(0・7)は生産水準の決定問題という生産開始以前のexante
な関係を、実現利潤率というexpostな数値とむすびつける関数である0そ れゆえ、(0・7)を中心に構成される均衡体系をして、一期間終了後に諸変数 が決定されると解釈することはできない∩なぜなら均衡は事後のそれではな く、事前値と事後値の均衡だからであるロ残された可能な解釈は、事前におけ る事前値と事後値の均衡の察知である0とすると、資本家は生産開始以前に、
自己の生産水準はもちろん全体の需要と供給、実現利潤率、実質賃金率(これ は相対価格水準をも含む)等のすべての期間内の情報を得てから生産にはいる ことになる。個別資本においてこうした情報入手が不可能とすると、事前の均 衡の模索はある意味ではワルラス的な模索過程が考えられることになる0置塩 氏はもちろん事前の均衡の模索などということについて何もいわれてないし、
我々もこれ以上たちいる必要はない0しかしこの模索過程がどのようなもので ぁれ、置塩体系の資本家は、過去及び現在の完全情報をもち生産を開始するの である。そして、当該期の生産開始以前に過去及び現在の完全情報を得るとい ぅことは、置塩体系では将来にわたる情報の入手が可能であることを意味する0 置塩体系の資本家は今期の生産開始以前に稼働率、実現利潤率、蓄積需要等の 情報をもつことになるから、今期の実現利潤率(又は稼働率)から来期の蓄積 需要を、また今期の蓄積需要から来期の生産能力を知るのに十分であり、必要 な模索をくりかえせば来期の稼働率、実現利潤率、実質賃金率等の情報を、今 期の生産開始以前に知ることができるのである0こうして、置塩体系の資本家
は、新古典派体系の経済主体にも比肩すべき、完全情報・完全知識の資本家と なる。
そして、置塩体系が「不均衡の累積性」と恐慌の不可避性を証明するとき、
新古典派の経済主体に比すべき資本家は恐慌に至る過程の完全な知識をもちつ っ恐慌へ突入するという極めて滑稽な存在となる0これが置塩体系の帰結であ る。こうした置塩体系における資本家の存在は決して現実の資本の矛盾を反映 するものではないことはいうまでもなく、体系それ自身のもつ矛盾の反映であ る。置塩体系の矛盾は、それが動学体系であると同時に事前と事後の期間内均 衡体系をふくむという点にある0塩沢氏は、均衡分析でもある置塩体系を、
「『均衡』概念を否定する立場」(塩沢〔13〕(1)p・171)から、「過程分析」の
「決定関係」で割り切ろうとされたために、均衡体系をみつけ出すことができ ず、未決定・二重決定の問題指摘になってしまったのである0
12(119)
投資行動と利潤率・実質黄金率・相対価格 以上、われわれは置塩『蓄積論』の資本の行動論の検討から置塩体系そのも のにはいり、体系が期間内均衡体系をもち、その中心に「資本家の生産水準決 定態度」に最初登場した期待利潤率の実現利潤率へのきり替えがあることをみ てきた〔そしてこのきり替えが置塩体系の「矛盾」の根本的な原因であること をみてきた。かつて置塩氏は、HorrodやR.Nelsonの不安定性論批判のな かで次のようにいわれたことがある。
「warranted growth pathの安定性の議論をおこなうためには、資本家の 投資態度が中心的な役割をはたすが、その際、次の諸点が注意されなければな
らないことが、上述から明らかとなった。
1.資本家のど時点での投資態度を想定する場合、資本家はf時点の投資を 行って後に実現する実現値にもとづいて投資を決定するとしてはならないこ
と。
2・資本家の一定の投資態度を想定したとき、そのもとで .warranted growth ……が達成可能であること。」(置塩〔3〕p.122)。われわれは、資本 の投資行動を定式化するとき、この2つの基垂は保持されるべきものとして置 塩氏からひきつぐことができるが、置塩体系の資本家の生産水準決定態度につ いても、次のように言うべきである。すなわち、「資本家のf時点での生産水 準決定態度を想定する場合、資本家はf時点の生産を行って後に実現する実現 値にもとづいて生産水準を決定するとしてはならない。」と。
(3)資本の投資行動定式化について
これまでみてきたように置塩体系における資本の行動は2段階である。第1 段階は生産水準の決定についてであり、第2段階は蓄積需要の決定についてで あった0この2段階にわたる資本の行動はそれぞれ、生産及び需要における資 本と資本蓄積の本質を反映させようとしたものである。もちろんその表現方法 は唯一ではないし、置塩氏の方法にも重大な問題点があることはすでにのべ
(5)
た。以下われわれは、われわれの目的にとって資本の本質を反映する資本の行動 を想定することになるが、その際、生産面での行動を特に独自に想定すること はせず、当該期の生産能力の完全稼働を前提にする。それは第1に、好況期を 対象とする我々のモデルでは、単純化として生産能力の完全稼働を前提しても 好況期の資本の行動として資本の本質から大きく逸脱することにならないと考
えるからであり、第2に、資本の投資行動と諸価格、利潤率等の相互連関を純 粋に把えるためである。
それでは、資本の投資行動はどのように定式化されるべきか0この定式化に おいては様々な要因を考えることができるが、ここでは資本蓄積と利潤率との 間の関係に注目する。はじめにのべたように、利潤率の運動は資本蓄積により 規定され、また資本の更なる拡大への主要な誘因である。われわれは極めて単 純ではあるが、こうした資本の蓄積と利潤率の関係を次のよう考えでみる0す なわち、今期の蓄積需要の部門間の格差は前期の部門間利潤率格差を反映す
ると。そこであくf)=ム( )/乾くf)として、
訊くf)一助(,)=′(γ1(卜1)−r2(ト1));′>0,′(0)=0
rl(卜1)
gi(f)
または
r2(f−1)
;ゐ′>0,ゐ(1)=1
(2・4)
ただし、g2≒0、r2≒0
この定式化では、蓄積需要丁は実現された蓄積需要に一致する必要はない0こ れはいわば両部門の蓄積需要の構造をしめしており、生産能力の完全稼働によ ってきまる生産財の供給との関係をとおして、実現される追加生産手段が決ま るのである。この定式化は、置塩体系の「蓄積需要の資本家的決定」すなわち、
妾=患+和一1(r卜1));ダ′>0,∂′>0 (2・5)
とくらべるとき、以下の諸点は注意されるべきである。第1に、置塩体系の定 式化では当該部門の利潤率にのみ関係をもつのに対し、我々の定式化では両部 門の利潤率の運動が問題である。第2に、置塩体系では前期の実績により各部 門の蓄積需要の絶対量がきまり、それが必らず実現される。それに対し(2・4)
では、実現される蓄積需要の絶対量がきまるわけではなく、蓄積需要の構造が きまるだけである。第3に、(2・4)の想定は、後述するように、資本の投資行 動に関する置塩氏の基準をみたす。
それでは、(2・4)の資本の投資行動を中心にして好況期の資本蓄積の構造と 諸価格・利潤率等の関係を考察しよう。
14(117)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 琵(1).第1版は1968年、第2版は1976年、以下の議論は第2版による。
r凱 置塩〔4〕、p.187〜193参照。
(3).置塩〔4〕、p.315〜317参照。
(4).塩沢〔13〕、(2),p.74〜76参照。
(5).置塩氏の「資本家の生産水準決定態度」と「稼働率」概念批判をおこなってい る文献としては、滝田〔8〕、塩沢〔13〕等がある。
(6).この形の資本の投資行動の定式化は、滝田〔9〕p.471がある。
gl(り一g2(り=′〔pl(り−〃2(り〕 戸は利潤率
滝田氏の定式化は、第1にJ期の資本蓄積率差をf期の実現利潤率差にむすび つけるという時間関係における誤りをおかし、第2に、滝田氏のモデルでは
「資本家の個人消費を捨象」(同p.470)しているために、必らず、g£(り=川上)
(f=1.2)となり、滝田氏のモデルにとって、この投資行動をあらわすとした 闇数は何の働さもせず無用である。
川.好況期における資本蓄積の基本構造 困 仮定と記号
以下の考察のためにあらかじめ主な〔仮定〕と〔記号〕を明らかにしてお
く。
〔仮定〕
1.生産財生産部門(Ⅰ)と消費財生産部門の2部門構成(Ⅱ)
2.生産財は両部門で使用可能であり、労働は同質である。
3.才期に雇用された労働者はf期末に賃金をうけとり、それをすべてf期 に生産された消費財に対する需要として支出する。
4.技術進歩、技術選択にかかわる問題の捨象。
5.生産財は一期間で生産的に消費され、補填される。固定的生産財の捨 象。
〔記号〕
生産量
生産手段 雇用労働量 追加的生産手段 資本家の個人的消費 実質賃金率
‰‰ 払毎 払‰
利潤率 第才財の価格 相対価格
生産手段の投入係数 労働の投入係数
資本蓄積率又は成長率 部門構成
rd(f)
Pd(f)
P(f)=
P2(;)Pl(f)
α =麹(一定)
荒くf)
Jd=
ム古くf羞(f) (一定)
紬)=塵1
乾(f)
Q(≠)=
亀(f)穐(f)
以上、よ(=1,2)は部門、(f)は期間をしめす。
(2)基本モデル
(れ 産出量体系
好況期を対象とする我々のモデルでは、生産能力の完全稼働を前提とするか ら、生産量は当該期の生産能力により規定される。第Ⅰ部門の産出は今期の生 産手段の補嘆と次期への生産手段の追加を形成する0
為(f)=(私(f)+んf))+(穐(かトム(f)) (3・1)
(3・1)は生産財に関する物的均衡を表わすが、超過需要が存在する場合には、
単純な均衡を表明するのではなく、むしろ需要にたいする供給制限を意味す る。(3・1)を上記の記号で書きかえると、
⊥Q(f)=Q(f)(1」一gl(f))+(1」威炬))
α1
(3・2)
なおここで、純生産可能条件1>α1は常にみたされているとする0
第Ⅱ部門の産出は、仮定.3により今期雇用された労働者の消費部分と資本 家の消費部分とにわけられる。
為(,)=私)(エ1(f)+エ2(f))+(Cl(f)−トC2(f))
16(115)
(3・3)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格
(3・3)もここでは消費財に関する物的均衡を表わすだけでなく、消費財の供給 制限をしめす。資本家は自己の消費Cl+C2を今期生産された消費財のうちか
ら、いかなる価格関係のもとでも引き出すことができるとすると、消費財の供 給制限をあらわす(3・3)は労働者の消費にたいする制限を意味することにな る。すなわち、今期契約された貨幣賃金率のもとで、市場で成立する価格関係 をとおして労働者の消費はこの供給制限内の実質賃金率におさえこまれるので ある。ここで単純化のため、資本家の消費は蓄積需要と次の関係にあると仮定
しよう。
ム(f1−_ム(≠)
Cl(f) C2(≠)
二二/〈 (一定)
(3・4)により(3・3)は次のように書きかえることができる。
忘=恥(Q(接−上意)+÷(紬)Q(か十払∽)
ところで、(3・2)より
gl(f)恥)−ト蝕が4−Q(f)一一一Q。f)−1
α1
したがって(3・5)は、
去=恥(Q(接十老)十三烏rQ(f)…Q(f)−1)
(3・4)
(3・5)
(3・6)
われわれは、生産能力の完全稼働とその補填を仮定するから、(3・1)より余剰 生産手段の供給量は一意に決まり、それが両部門にどのように配分されるかに かかわらず、(3・4)より資本家の消費合計Cl+C2も決まる。したがって、(3・
6)は部門構成の水準により実質賃金率が決定されることを意味している。
(b).価格一利潤率体系
仮定.3より、賃金の後払いを仮定するから次の価格一利潤率体系をもつ。
Pl(f)=(1+れ(f))αlPl(≠)+Jl私)P2(≠)
P2(f)=(1+γ2(f))α2Pl(≠)+72私)P2(f)
(3・7)
なおここで、れ>0,r2>0なるための条件、すなわち、純生産可能条件1>α1,
及び剰余条件1>恥(
対価格でかきかえて、
γ1(f)=二
γ2(f)=
α271
1−α1
1−ん忍(f)P(f)
α1
+弓は常にみたされているとす(芸
一1
P(≠)(1−72月(f))
α2
ー1
は常にみたされているとする。(3・7)を相
(3・8)
(3・8)は実質賃金率私)及び相対価格P(f)が決まった時の利潤率の決定式で
ある。
(C).資本家の需要
資本家の今期の生産物にたいする需要は、生産手段の補奨需要をのぞくと、
蓄積需要と消費需要である。ここでは前節でのべた次の蓄積需要のパターンを 想定する。
gl(f)一曲(f)=′(れ(行1)−γ2(卜】));′>0ノ(0)=0
又は、
れ(卜1)
r2(卜】)
);ゐ′>0,カ(1)=1
ただし、g2≠0、r2≠0
(3・9)
すなわち、今期の資本蓄積率の格差は前期の利潤率格差を反映するとしよう0
(3・9)はそれ自体では在f),長く≠)の決定式ではなく、蓄積需要の両部門の強さ の差をしめす。そして、(3・1)の生産財供給制限にたいし超過需要の場合に は、価格関係を通じて(3・9)のパターンが実現される。また消費需要は両部
18(113)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 門の追加生産手段ん長がきまると、(3・4)より、
Cl+C2=⊥(ム+場;〃1は定数
〃
となる。
(3・10)
(d).市場と相対価格
われわれのモデルでは、生産量は当該期生産能力の完全稼働の想定により決 定される0他方、需要は仮定・3の労働者の消費財需要パターンと資本家の生 産手段補填需要及び蓄積需要、消費需要のパターンがある。もちろん生産量と 需要が一致する保障はないが、超過需要の場合、市場での価格関係をとおして 供給制限内でそれぞれの需要パターンが実現されるとしよう。すなわち(3・1),
(3・3)の物的均衡が成立するように生産財と消費財の交換比率(相対価格)が 決まると考えるのである。
市場における関係は市場での物的な配分関係だけではない。重要なのは物的 な配分がいかなる価格関係のもとで実現されるかである0マルクスの再生産表 式論における素材視点と価値視点の統一は、市場における関係を物的均衡だけ に解消することの誤りをおしえている0われわれは、(a)産出量体系と(b)価格一 利潤率体系を分離して考えたが、ここでふたたび両体系の統一をおこなわなけ ればならない。
(叫産出量体系に価格(Pl(f),P2(f))をかけてもう1度かくと、
Pl(溝(f)=(Pl(≠)私くわ+Pl(f)在f))+(Pl(≠)穐(f)+Pl(f)ム(f))
P2(f)量(f)=(P2(成≠)エ1(わ+P2(f)私)エ2(f))+P2(f)Cl(わ+P2(‡)C2くま) (3・11)
また、(b)価格一利潤率体系に生産量(芽工範)をかけてふたたびかくと、
Pl(f)為(≠)=Pl(f)私(f)+P2(≠)私)エ1(f)+玖…
P2(fつあぐf)=Pl(≠)穐(f)+P2(≠)&f)エ2(f)+筏(≠−
ただし、
(3・12)
吼(≠)=rぜ(f)Pl(≠)乾(f),f=1,2
ここで、(3・11)の物的均衡が(3・12)の価格体系のもとで成りたつとする と、
Pl(f)私(f)+Pl(f)んゎ+Pl(fつ穐rf)+Plr証書)=Plrf)私(f)
+P2(f)教書)ム1rf)+〃1rfつ
P2rf、&f)エ1rf)+P2rf)私止1(f+P2(f)Cl(f)+P2(t)C2(f)
=Pl(f)穐(まつ+P2(f)粘つム2(f)−ト為(f)
(3・13)
ところで板書)は蓄積需要Pl(訪(f)と消費需要P2(f)C・£(y)をおぎなわなけれ
(3)
ばならないから
玖(f)=Pl(f)左の+P2(≠)Cぜ(f),f=1,2
である。したがって(3・13),(3・14)より、
Pl(f)穐(わ+Pl(f)も(f)=P2(f)敢f)エ1(わ+P2(f)C2(f)
(3・14)
(3・15)
(3・15)はマルクスの再生産表式論の部門間均衡条件にあたる式であり、市場 における価格関係をもふくめた均衡条件である〔(3・15)より、
亀(七つ+ム(f)
Pl(f) 孔(f)エlrか十Cl(f)
P2( )_
P(f)=「元「一一一
(3・16)
(3・16)は、生産財(穐(わ+ふくf))と消費財(粘つム1(f)+Cl(f))が交換されるこ とおよび、その物的交換比率をしめす〔(3・16)を整理すると、
P(f)=
1−卜gb(f)
Q(≠)(如意+÷gl(f))
(3・17)
(3・17)は、それぞれ独自にきまる生産量と需要のパターンのもとで需給一致
20(111)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 をさせる価格水準をしめす。
(e).資本蓄積と部門構成
追加生産手段の形成は次期の生産能力の増加であるから、
乾(…)=乾(f)+左f),f=1,2
また部門構成の定義より
Q(什1)=
したがって
乾くf)+ム(f)
Q(打1)=Q(ハ 1+glくわ
1+曲(f) (3・18)
である。また、各期の生産は両部門ともに剰余生産物を生産しなければ無意味 だから、
あくf)>乾く≠)+乾くf)
量(f)>&f)(エ1(f)+エ2(f))
(3・19)より
α1 1−α1
(3・20)より
Q(f)>
ここで
<Q(f)
α1(1−72&f))
α271&f)
(3・19)
(3・20)
α1(1−72&f))_
α271&fl
α1 1−α1
(1−71私))−α271私))
α271&f)(1−α1)
(3・21)は、純生産可能条件1>α1、剰余条件1>点(
ているかぎり正である。したがって、
i告<Q(f)<
勘(1−72&電))α271敢≠)1一α1
(3・21)
がみたされ
(3・22)
(3・22)は両部門において剰余生産物が存在するために部門構成がみたさねば ならない条件である。以下、各期において(3・22)は常にみたされているとす
る。
以上でわれわれの体系は完結する0すなわち、両部門の資本蓄積率(gl(f),
如))、実質賃金率(恥)、相対価格(P(f))、両部門の利潤率(れ(f),γ2(fつ)お よび次期の部門構成(Q(机つ)は(3・2),(3・6),(3・8),(3・9),(3・17),(3・18)
の7つの方程式によりその運動が規定される0この体系の決定関係を期間を明 示してかくと(図−3)になる0
(図−3)体系の決定関係
(3)体系の運動(1工−定常蓄積径路
まず、前期において両部門の実現利潤率が等しい場合、今期以後いかなる蓄 積径路をあゆむかを考察する∩前期においてれ(卜1)=r2(卜1)になったとする
と、(3・9)より今期の両部門資本蓄積率は等しくなる0
22(109)
訊くf)=曲(I)=g*(f)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格
(3・23)
これを(3・2)に代入して、g*(f)をもとめる。
Q(f)
α11+Q(f)
g*(f)=⊥・
実質賃金率は(3・6)より、
点(fつ=
ー1
友一(忘Q(f)−Q(f)−1)
Q(f)β1+β2
また相対価格は(3・17),(3・23)より、
P(≠)=
1+g*(f)
Q(f)(恥β1+÷g*(f))
ただし、β宜=
これに、(3・24)を代入して整理すると、
P(f)=
&f)β1(Q(f)+1)+ Q(f)−Q(f)−1
(3・24)
(3・25)
(3・26)
(3・26)′
なお、Q(f)が、(3・22)の範囲にあるかぎり(3・26)′ は正である。ところ で(3・6)より
㌃(忘Q(f)−Q(f)−1)=忘一触(Q(f)β1+β2)
これを、(3・26)′に代入して整理すると、
P(f)=−
&f)(β1一β2)+
(4)
(3・26)′′
(3・26)′′でしめされる相対価格水準においては、今期の両部門の利潤率は均等 になる。なぜなら、(3・8)において均等利潤率がなりたつ相対価格をもとめる
と、rl(f)=r2(f)より
1一点(f)JIP(f)
α1
これより、
P( つ=
P(f)(1−&f)72)
α2
点(f)(β1−β2)+
したがって、(3・26)でしめされる相対価格水準にあるとき、今期の両部門の 利潤率は等しくなる(れ(f)=r2(f))0
以上をまとめると、前期において両部門の利潤率が均等になると今期の資本 蓄積率が等しくなり、その結果今期の利潤率も両部門均等になる0そして
(3・18)より次期の部門構成も不変であり、(3・2),(3・9)から次期以後も(3・24)
でしめされる資本蓄積率が両部門で維持され、両部門が均等に拡大していく蓄 積径路にはいる0この径路においては、部門構成、資本蓄積率が一定であるか
ら、(3・25),(3・26)から明らかなように実質賃金率、相対価格も不変であり、
したがって(3・8)から実現利潤率も両部門で均等で一定にたもたれる0 この 径路は体系内諸変数がすべて不変であり、一定の資本蓄積率で均等に拡大して いくという意味で、定常蓄積径路ということができる0この意味での定常蓄積 径路は、(3・22)でしめされる範囲のあらゆる部門構成(したがってまた(3・25)
よりその部門構成に対応する実質賃金率)のもとで存在しうる0
我々は以上の考察を(図−3)でしめされる体系の決定関係を追うことによ ってすゝめてきたが、資本蓄積率と利潤率の関係にのみ注目するならば、より 直接的・明示的にあつかうことも可能である0すなわち、資本蓄積率の定義か
24(107)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格
銑(f)=
ら、
ム(f)_ 布く ) 乾くf) Pl(f)乾くf)
Pl(f)ふくf)
〟£(f)
膏=1.2 (3・27)ここで、〃すなわち利潤の定義および(3・14)から、(3・27)は次のようにな る。
gl(f)=rl(f)●
助(i)=r2(f)●
1十一⊥・P( )
〃
1+⊥p(f)
〃
(3・28)
(3・28)は銑(f)が決定された時、r.g(f)とP(f)が保たなければならない関係を しめしている。また、(3・28)は、今期の両部門の資本蓄積率が等しくなった とき、今期の相対価格水準にかかわらず、今期の両部門の利潤率は均等になる ことを明瞭にしめしている。
㈲ 体系の運動(2)、−資本蓄積の累積性
以上の考察で、定常蓄積径路が存在しその径路上では実質賃金率、相対価 格、利潤率は一定であり、両部門は同じ資本蓄積率で拡大していくことを明ら かにした。次に、定常蓄積径路から離れた場合、資本蓄積はいかなる径路をと るか考察しよう。蓄積径路そのものに議論を集中するためには、前期の利潤率 と今期の資本蓄積率、今期の資本蓄積率と今期の利潤率の関係に焦点をあわせ ればよいから、(3・9)の投資行動と、(3・28)をとりあげよう。すなわち資本 は次の投資行動をおこなうとしよう。
);三二三三,誓fl
rl(シー1)
r2(卜1)ノ 由一≒二0,γ2主二0
(3・29)
さて、前期の資本蓄積率と前期の利潤率の間には(3・28)より次の関係にあ
る。
1 gl(卜1)=rl(f−1)●
g皇(f−1)=r2(f−1)●
1+⊥p(f_1)
/
1+⊥p(卜1)
/′上
ヽ
したがって、P(卜1)の水準にかかわらず、前期の利潤率比は、前期の資本蓄積 率比に等しい。
gl(わー1) rl(f−1)
gb(卜1) γ2(卜1)
(3.30)を(3・29)に代入すると、
)
gl(卜1)
;ゐ′>0,ゐ(1)=1,
蛮(卜1)ノ 蛮キ0
(図−4)
26(105)
(3・30)
(3・31)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格
(3・31)は(幻/助)の才に関する漸化式となる。もちろん、(3・30)でゐ′>0,
カ(1)=1だから、訊くト1)≒gk卜1)ならば幻(f)≒gkf)である。しかし、ここで問 題なのは定常蓄積径路の安定性の問題である。そこで、ゐ(1)=1の近傍で
(3・30)のグラフをかき(図−4)のようになったとしよう。
(図−4)からわかるように、カ(1)=1の近傍で、ゐ′>1のとき、定常蓄積径 路は不安定であり、いったんこの径路から離れる(訊くf)≧ぬぐf))と、ますます 率離していく方向で運動をはじめることになる。またゐ(1)=1の近傍で、
0<カ′<1のときは、定常蓄積径路は安定である。
このカ′≧1の意味は、前期の利潤率比の反映して今期の資本蓄積率比が決 まるにしても、利潤率格差を解消する方向でgl≧劇となるか、その格差を拡 大する方向で臥≧段となるかの問題である。しかしこの問題は単なる「想定」
の問題ではない。最初にのべたように資本蓄積と諸資本の競争の作用をどのよ うに把えるかというまさに理論的問題でなければならない。諸資本の競争は
「不均衡の均衡化」に作用するだけでなく、「不均衡の累積化」にも作用する のである。とりわけ好況期においては「不均衡の累積化」作用が支配的であ り、恐慌にいたってはじめて「不均衡の均衡化」作用は暴力的集中的に貫徹す る。資本蓄積と競争の問題は.恐慌・産業循環論研究の最も重要な問題である が、ここでは競争の「不均衡の累積化」作用を、カ′>1で把えておくことにす る。(3・31)でゐ′>1とすると、定常蓄積径路からいったん離れると上方への 畢離にしろ下方への帝離にしろ、ますます定常蓄積径路からはなれていくこと になる。
次に定常蓄積径路から乗離していく場合の利潤率、実質賃金率、相対価格に ついてみておこう。ただし(3・31)の関数形が特定化されてないためその考察 は限定される0ここでは定常蓄積径路からの上方への畢離の場合をとりあげ る。上方への乗離過程において資本蓄積率比は大きくなっていく。そこで、
=p(f)
とおき、(3・31)を書きかえる。
P(f)=カ(p(卜1));ゐ′>1
(3・32)
(3・33)
したがって、p=1からの上方への乗離過程は連続分析で、
甘榊>0
(3・34)
であらわせる。以下、微分演算子意をドット(・)であらわすことにする0 また上方への畢離において部門構成は上昇していくから、
Q(f)>0 (3・35)
となる。すなわち、定常蓄積径路からの上方への畢離を、当面(3・34),(3・35)
で把えることになる0そこでまず、(3・32)及び(3・2)から紬),紬)は次 のようになる。
glrf)=
助(f)=
AQ(f)pQ)−p(f)
Q(f)p(f)+1
AQ( )−1
Q(f)P(f)十1
ここから、
転f)=(
如月重言
Q(f)p(f)+1
Q(f)p(f)+1
ただし、A=
1−α1
α1
)2・(白くf)p(f)(A+p(f)冊(f、(鮎) ̄1))
)2〈d(f)(A+守(f)トQ(f)み(f)(AQ(f) ̄1)〉
(3・34),(3・35)からみ(f)>0、0(f)>0、またA0−1>0だから、あくf)>0で ある。またあくf)は、
≧Q(f)(AQ( )−1)
A+P(f)
におうじてあくf)郭である0すなわち第1部門の資本蓄積率は連続的に上昇
28(103)
投資行動と利潤率・実質賃金率・相対価格 していくが、第2部門の資本蓄積率は上昇・不変・下落のあらゆる場合をふく み、(3・31)の関数形が未定のため確定できない。次に実質賃金率の動きをみ ょう。(3・6)から
点(f)=
したがって
忘÷(AQ(f)−1)
Q(電)β1+β2
忍(f)=
Q(f)β4−トβ2
)2上告(4飢+β2)+由(接桓すなわち実質賃金率は部門構成の上昇にともなって確実に下落していく。
相対価格は(3・17)と(3・2)から1+助(f)を消却すると、
P(f)=
A−gl(f)
恥β1+⊥gl(f)
〃
したがって、
P(f)=
β1(gl(≠ヽ粘つ−あくf)私))−A・
(払β1十七あくf))i
P( )の分子第1項は私)<0,あ(f)>0だから負であるが、第2項は正負の判 定はできない。特殊なケースとして、
_剋∠_⊥_
あくf)=/′β1
のとき、すなわちgl(f)の上昇に対する点(f)の下落の比率がある特定値以下 であるとき、P(f)<0であり相対価格は下落することになる。